三栄町LIVE×fukui 劇 Vol.2 「2108 年岐阜五輪正式競技 WAITING」 2

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今日はどうぞ、よろしくお願い致します。fukui劇の福井しゅんやさんにお話を伺います。今回三栄町LIVEで上演されている「WAITING」。摩訶不思議なスポーツを取り上げた作品でした。福井さんのスラップスティックな言語感覚が生きた作品だったと思います。
福井 
ありがとうございます。実はなかなか受け入れられない回とかもあったんですけど。今日で5ステージ目でしたが、この回の反応が一番良かったです。反応が返ってくるのは嬉しいですね。地獄みたいな回もありましたから。
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そうなんですか。
福井 
肌感なんですけど、主人公である鰻登り早手(うなぎのぼりはやて)がお客さんに好かれていないな、と感じる回があったんですよ。今一緒にやらせてもらってる三栄町LIVEのプロデューサー・清さんからは「フリとオチのフリの部分が、分かる人にしか分からない」という意見をもらいました。ついていける人とついていけない人を選んでいる舞台だと。特にこういう特異な設定、題材だと、誰にでもフリとオチが分かるようにしないといけない。でも今の回はお客さんもちゃんと見てくれたような気がしました。他の回は僕か、僕が出ているときは逆班の熊田くんが前説をしているのですが、この回は実況役の堤くんが前説をしていい導入になったんで、それが功を奏したんじゃないかと思います。
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会場自体がエキシビション会場になりましたね。
福井 
この劇はそういう趣向なのかな、という入り口が出来たんだと思います。
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お客さんに確定した立場を与えれば成立しやすいのかな。
福井 
お客さんにツッコミを入れてもらう、みたいな。
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この間取材させて頂いたスタンダップコメディアンが言っていたんですけど、日本のツッコミというものは、観客に動かない部分をお客さんと共有して、ボケという世界観に切り込みを入れることで笑いを提供すると。そんなことをおっしゃっていました。
福井 
WAITINGは片来泰子という女性アナウンサーが物語を進行しているんですけど、この劇での新たな挑戦として"動じる語り手"というものをやってみたかったんです。物語の進行を担う語り手が急に個人的なことを話しだしたり物語自体をないがしろにするのってあまり見たことがなくて。大仰かもしれませんが、もし動じる語り手という手法が成立したら、演劇そのものが今より少し広がるんじゃないかって。今回の裏テーマだったんです。
1fukui劇
福井しゅんやが主宰する企画。
2三栄町LIVE×fukui 劇 Vol.2 「2108 年岐阜五輪正式競技 WAITING」
世界初の“待つ”競技をめぐる、新感覚スポーツ劇!
2108 年、オリンピックが開催されることとなった首都、岐阜。
岐阜五輪では新競技として前代未聞の“待つ”競技、『Waiting』が採用されることに。
ペットトリマーの専門学校に通う鰻登り早手(うなぎのぼりはやて)は、ひょんなことから Waiting に出会う。
やがてシンプルながらも奥深い Waiting の魅力に取り憑かれた早手は、 来る日も来る日も Waiting に明け暮れる。
そして彼は、迫り待つ強敵を待ち倒し、 岐阜五輪で金メダルを取るという夢に向かって、だいぶ頑張るのであった…。
これは、そんな Waiting に命を懸ける男たちや女たちの、魂の物語である。

キャスト
佐々木幸志朗 宮崎利貴 花岡翔太 仙洞田志織 田澤葉 大高孟之 堤敏樹 磯部伸二郎 熊田修 須田明子 横滝今日子 福井俊哉 真優花 石井彩友美
11月21日~12月2日
会場
三栄町LIVE STAGE(旧フラワースタジオ)
スタッフ
 宣伝美術:加納和可子 キャスティング:福井俊哉/若宮亮 制作:松尾智久/井原正貴 制作指揮:小畑幸英 プロデューサー:清弘樹

バランス

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そこで、今回の作品はまさにスラップスティックコメディだなと私は思っていました。口が悪い登場人物たちがエゴ丸出しで、お互いに遠慮なく、口汚くなじりあうし裏切りあう。
福井 
たぶん僕自身ができていない人間だから、より一層鬱屈してる部分が出ちゃうんだと思うんですけど。
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主人公の早手の彼女が「コーチとの浮気が初めてではない」とか面白かったです。
福井 
早手の血で誓約書を書かすというのが絵が浮かぶあたりが好きで。
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そういうエピソードを高速で流していくあたりが好きなんですよ。単に露悪的な思考で出ているんじゃなくて、面白いという方向になっているのが素晴らしいと思います。
福井 
先ほど言ったように、主人公の早手が愛されていない回というのがあって。微妙なところなんですが、少し声を張り上げすぎてちょっと怖く見えてしまったんですよね。社会の端くれにいるようなクソ雑魚が小さい声を張り上げているのが面白いのであって、彼が強さ、怖さを持ってしまうと違う。普段絶対主役やってないんだろうなっていう人物をチョイスしないとできないんですよね。のび太的な主人公と言うか。のび太よりももっと焦点が当たらないような人物。
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それが粋がっているみたいな。
福井 
早手役である佐々木君の、黒タイツに日の丸というルックス。彼を見てるだけで面白いんですけど、彼にどこまで怖さと面白さのバランスを取ってもらうかがポイントでした。
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いや、きっと大丈夫だと思います。ノリというものがあると思いますよ。劇場の外にもそれはあって、SNSに何も書かれなくても伝わっていくと思います。
福井 
今回西田シャトナーさんに勇気を出してリプライを送って、明日見に来ていただけることになったんです。そもそもこのWAITINGを書き始めたきっかけは、平昌五輪でスピードスケートの選手がずっと待ってる姿を見て、これをスポーツにしたら面白そうだという発想があったんです。それと西田シャトナーさんのスポ根的なSFの芝居が大好きでインスピレーションを受けたんです。尊敬する先輩に見ていただけるのは嬉しいですが、とても緊張します。

次は女子死闘編!

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これから一週間のロングランですね。
福井 
皆さんの助けと、役者のみんなのおかげもあって成立に向かっているなと思います。この感じで向かっていければ。
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選手も全員良かったですね。この競技をやってる奴は全員やばい、全員どこかしら精神を病んでいるというのが面白かったです。
福井 
あの台詞は今日追加しました。
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それから、ウェティングとストップは全く違う、というセリフが面白かったですね。
福井 
骨、筋肉、臓器、全てを待たせるというのをほじくりたかったですね。
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しかし、あんな意味不明な競技がなぜオリンピック競技に選ばれたのかは疑問ですよね。
福井 
そうですね。でもダンスや即興劇もスポーツ化する流れもあるので、待つというのがスポーツになるという可能性も少しはあるのかなと。
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意義が全く分からないのに、ルールやマナーに関してはスポーツとしてちゃんと考えられてるのが不条理極まりないと感じました。劇中に出てくるポーズが数種類だけあって、そのアレンジが実際の競技では使われるというのが面白い。歴史を経て洗練されていったんですね、きっと。
福井 
テキストからはカットしちゃったところがあるんですけど、WAITINGは「ウェイトタイム」と「芸術点」で勝敗が決まるんですよ。芸術点の高いポージングは点が加算されるんですよ。その説明は全部省いたんですけど。省くなよ、でもそれはいいか、と。ウェイトタイムが長ければ長いほどいいんですけど、それより短く終わっても良いポーズだった場合は勝つ可能性もあるんです。フィギュアスケートの要素もあるんですよね。
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各ポーズに印象的な名前がついてますよね。「マカオコネクション」。
福井 
「インディ・インディ」とか。あれはインディアンの勝利と敗北という意味を込めています。
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水泳でいう自由形が実質的にはクロールになるみたいに、名前の付いていないポーズをやる選手がいなかったのがリアルでした。
福井 
色々なことがあって、そのポーズに落ち着いたという時代の流れがあるんですよね。2100年代は「アウトバイアウト」が世界的に流行する、とかね。体操のつり革とかもそうじゃないですか、その技って大体決まっていて、変則的なポーズはあるけど、大体のポーズは研究され尽くされてる。
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未知のスポーツを見に来ているのに、その辺りの事情を見せつけられる割に、説明は省かれる絶望感。
福井 
僕はWAITINGが架空の競技だとは思っていなくて、変な話、サッカーだって段々と形成されていったんですよ。逆に言うと、待つことすら競技になりうる。待つことと競技は表裏一体。じゃあその待つことが主体のスポーツは、逆にスポーツそのものだと思うんですよね。競技性という面では魅力のないスポーツだとは思うんですけど。
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みんなつまんないと思いながら競技してますけどね。
福井 
仕方なくやっている競技なんですよね、最後の滑り止めのスポーツ。
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でも世界記録36時間が出ましたね。
福井 
あれはもう伝説的な記録なんですけど、公式記録ではなくて参考記録です。実は、今回の続編である女子死闘編を考えてるんですよ。またどこかで発表できたらと思います。

環境

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そうか、福井さんは今東京にいるんですよね。
福井 
そうなんですよ。前回していただいた歪ハイツの時の僕のインタビュー記事を読ませてもらったんですけど、むちゃくちゃ調子に乗ってたなと思って。東京にいる同じジャンルの人を一人ずつボコボコにするとかテラスハウスがクソだとか、どんだけ調子乗ってんねんと。ここで仕事についてから、自分のものが作れない時期もあって。最初映像の会社に入ったんですが、その上司が凄い人で、すごくよくしてもらったし、色々教えて頂いたんですけど、その期待に応えられなくて。「お前には才能がないんだからやるしかないんだ」と言われながら、いろんなことを迎合しないといけないのか、と。でも今は、これから上にあがっていくしかないという、環境にいるんだと思います。お客さんの顔色をただ伺うんじゃなくて、誰もみたことない世界にみんなを連れて行く。お客さん、役者、自分も含めて。そういうことは今、強く思っています。
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今回は?
福井 
パッケージングの話なんですけど。こういう本を書きますよ、という前提がなにもない、まだ世間にも浸透していないような状況で、あえてお客さんを選ぶような作り方はしなくてもいいんじゃないか、と三栄町LIVEのプロデューサーの清さんには言われます。正論も正論で、もっとも過ぎてイラッとしちゃうこともあるんですが、すべてが僕ないし、僕の劇をもっと上にあげる為に言ってくれていることなので、そういう人と劇を一緒に作れるのは本当にありがたいです。そういう並走してくれるプロデューサーさんと出会ったのは初めてなので。多少、セリフも含めて小屋入り後の変更点が多く、役者に迷惑をかけることも多々あるんですけど、日に日に進化させていくことが、僕は劇づくりをしていく上で健全だと信じています。恥ずかしいことはしたくないので。それは東京で、色々なことを経験して、叩かれて、萎縮して、わやくちゃになりながら学んだことです。

質問 苧環 凉さんから 福井 しゅんやさんへ

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前回インタビューさせて頂いたO land Theaterの苧環凉さんから質問を頂いてきております。「死後の世界はあると思いますか?」
福井 
あったらいいなとは思いますけどね。死後の世界はなくて、輪廻転生はあるかもしれませんね。死んだらロケット鉛筆みたいな形で魂が飛ばされて、生まれる前の人に宿るのかも。前世はあると思います。死後の世界に何年いたらいいか、みたいなのを考えると、死んだら天国に行くというのはおとぎ話なのかなと。死んだ後の魂は半分信じてます。受精卵に死んだ人の魂が宿るというのはある気がするんですよね。

ゼロイチ

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fukui劇の今後の意気込みを教えてください。
福井 
今後も新たな、“ゼロイチ”を探していきたいなと思います。何かの派生形ではなくて、誰もやっていなかった、掘り下げられなかった、枠組の外にあるものをポップに伝えていければいいなと思います。
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福井さんのいいところは、その井戸の枠をはみ出して、気づかない魅力を掘り出してくれるところですよね。
福井 
枠の外ですか。自分では気づいていないと思います。周りにはそのことを注意して欲しいですね。新しくて面白いと思ってもらえたらいいなと思います。

「漬けものレシピ」

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今日はですね、お話を伺ったお礼にプレゼントを持って参りました。
福井 
ありがとうございます。あ、漬け物。
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WAITINGと絡めてみました。
(インタビュー終了)