豊満

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岩田さんはお芝居を始められて何年くらいになるのでしょうか。
岩田
学生の時からなので、十年・・・十二年くらいですね。演劇人では結構多いですね、私の世代は。
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岩田さんといえば、トリコ・Anoteの。
岩田
そうですね、ほとんどあそこに出させてもらってますね。
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はい。
岩田
よく呼んでもらってるんですよ。こないだも。
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『豊満ブラウン管』noteに出演されましたよね。
岩田
ええ。鈴木君や森洋君とお話されてたみたいで。
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まあ、『豊満』は結局見れなかったんですけれども。
岩田
そうなんですか。結構、名古屋は、最終的には良いものが出来たと思うんですけれど。稽古を始めたのが去年の九月からで。長かったです。衛星さんだったらそういう長い期間もあると思うんですけど、私、あんまりなれてなかったので。結構大変でしたけど。
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なるほど。
岩田
えと、私の舞台を見てもらった事はあるんでしょうか。
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あ、「壁ノ花団」noteの第二回公演を拝見しました
岩田
「たまごの大きさ」ですね。
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それを拝見しています。あと、なんだったかな。「肉付きの面」だったかな。
岩田
3、4年前ですね。アートコンプレックスで。懐かしいですね。あと、田辺さん、水沼さんとかと関わったくらいですね。あ、77年企画もか。あとはほとんど、トリコが間をおかずに公演してたので、それに乗っかっちゃって。凄い長い付き合いで。トリコになる前から彼女の芝居にでていました。
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魚船の。
岩田
そう、そうです。OMS戯曲賞を取った作品の一つか二つ後かそれぐらいからなので。長い付き合いですね。
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確か、大学は佛教大学でしたよね。
岩田
そうですね、同じ世代だとニットキャップシアターnoteの旗揚げメンバーが同朋です。
noteによる演劇上演団体。
noteトリコ・Aプロデュース『豊満ブラウン管』
公演時期:2006年11月29日~2007年5月13日、京都・東京・名古屋各地で上演。公演紹介ページ:豊満ブラウン管 | トリコ・Aプロデュース [演劇公演紹介] ★CoRich 舞台芸術!公演記録:トリコ・Aプロデュース『豊満ブラウン管』
note「壁ノ花団」
2004年に結成。京都を拠点に活動している演劇ユニット。
noteニットキャップシアター
京都の劇団。代表・演出はごまのはえ氏。個性的な俳優陣と高い集団力をもってごまのはえ氏の独特な世界観を表現する。
note山口茜氏
主に京都を拠点に活動する劇作家。トリコ・Aプロデュース主宰。

キャリア

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もう芝居を続けられて12年くらい、ですよね。
岩田
俳優しかやってないですけどね。学生劇団の頃はスタッフワークとかもやらないといけないんですけど、そればっかり十年。ちょっと引いちゃいますか?(笑う)
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今はお仕事をされながら続けておられるのですか?
岩田
そうですね、みんなそうだと思うんですけど、生活が出来なくなるので。今のバイトも長くなりましたね。関わる人関わる人、結構長い付き合いになることが多いですね。
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それでも長いキャリアがありますよね。
岩田
いえ、キャリアも大事かもしれないですけど。例えば、最近芝居を始めた人でも素直な感受性があれば、もっと面白い演技が出来ますよね。こないだやった芝居で、ある女の子と共演してたんですね。京都教育大の大学生で陶芸をされている方。舞台が二回目だったんですが、すごくいい役者ぶりで。本当に感受性が豊かだったんです。舞台に立ったらみんな対等ですから。
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最近、俳優の仕事そのものについてよく考えるんですよ。質の向上についてとか。要求されたものを作るだけで、果たして十分なんだろうか、とか。それに対しての工夫はどのように行えば良いのか、とか。
岩田
考えますね。
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私はプログラマの仕事に就いているんですけど、言われた事だけをやる、いわゆるワーカーになってはいけないなと最近感じておりまして。そこへ行くと、ワーカー俳優なんて本当に、ないなと思うんですよ。難しいですよね。
岩田
難しいといえば難しいかもしれませんね。技術をつけるというのは凄く難しい事なんですけど、それに頼ってしまうというのはやだなと思っていて。
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はい。
岩田
それで安心するというのはちょっと、面白みがないかなと。役者の仕事として。何か、一つの役があって、それを演じるための技術があるんだったら誰でもいいという場合に、別に私がやらなくてもという事になってしまう。技術も持っていなくてはいけないんですけど、そうじゃない所。人間の未知の部分とか、そういう所を掘り下げていかなくてはならないなと思いますね。仕事と言えるのか、と。うーん。仕事なんですけど、私は割りと楽しむようにはしていますね。
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人間性を描くというのが演技の根本的な所だと思うんですね。あまり面白くない芝居は、絵が先にあって、それを実現させるためにやっている、みたいな感じですね。その絵も、自分達で発見したものではなく、予め決められたものであるがために、追求する伸びしろがない。
岩田
そうですね、それは。私も思いますね。言ったらモノマネみたいな事ですよね。
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そうなんですよ。本当に面白いエンタメ系芝居はそういう事では決してないですから、ハマりますよね。
岩田
分かります。芝居を始めた初期は、私もそうだったんですよね。何かのマネをすることが技術だと思っていて。ある程度簡単にモノマネが出来ちゃったりとか。芸能人の誰っぽいとか。でもそこから、全然動かなくなっちゃって。拡げられないんですよね。内側から出ないというか。自分のリズムも勝手に決めちゃうので、相手の心身の動きを無視していましたね。学生劇団の時は。それを反省しなければと思い、山口茜ちゃんの所に出させて下さいとお願いしたんです。

方法

岩田
彼女は遊劇体noteの野外劇で大暴れしていた人なんですけど、ああいう事をやっている人が会話劇をやったらどういう事になるんだという趣旨で始めたのが魚船だったそうです。だから、稽古は内面を深く探るというものだったので。とりあえず私も訓練がてら、とりあえず出してくれと。
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なるほど。
岩田
最初は野外劇でしてたのをそのまま持ってきていたので、本当に筋肉を鍛えるというトレーニングでしたね。発声練習も、喉を枯れるまで出すみたいな感じだったんです。魚船をやっていく元々の趣旨は、会話劇をどうやるかという事なので、一緒に勉強をさせてもらったというか。山口さんがワークショップを受けにいったりとか、演出方法を学びにいったりとか。色々拾ってきて。私は私で、石田陽介君というダンサーのカンパニーに出させて貰ったりして。で、体と心が・・・どうやって繋がっていったらいいのかとか、勉強していますね。やっと、説明が出来るようになったところですね。納得して人に言えるようになったというか。
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それは、例えばどういう事なんでしょうか。
岩田
無意識の行動って、面白いじゃないですか。それをどういう風に演技にするかとか。すごく楽しいですね。
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それが、作品になったりもするわけですね。
岩田
そうですね。壁ノ花団の第二回公演の時は、言葉と体を分けた演技を行いましたね。水沼さんの演出が、「わざと棒読みでやってくれ」というものだったので。それはそれで面白かったですね。色んな実験をしたり。
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なるほど。
岩田
(コップを手に取る)これから他のものに興味が移った時に、どういう人格が見えるか、またはどういう人格だからこういう興味の移り方をするんだ、みたいな事ではなく、役の「コップを持つ」という行動で、これを持ったらどういう人間になるかという・・・何とか分かりますかね。
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ええと、形から、じゃなくて先に与えられたシークエンスから内部を再構築、みたいな。
岩田
あ、そうです。ご名答。色々、持つ物があったんです。じゃがいもとか電話とか。興味をどういうふうに振るか、とか、足が悪い事をどういう風に思っているかとか。そういう事を色々。面白かったですね。
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なるほど。
岩田
でもそれだけじゃ、自己満足かなと。で、この間の芝居では、物語というか設定をきちんと語れる役を内部からも外からも考えてやったんですけど。
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内部とは、どういう事でしょうか?
岩田
単に、感情ですね。例えば(コップを持つ)この、コップを持つというのは感情があるから触っているとは限りませんよね。ただ単に触っているだけかもしれない。そういう、行動から考える中身ですね。後は役としての関係性とか、台本上の役柄とか。そういう事をうわーってやって、大変でした(笑う)。本当に一年掛かりました。けど、面白かったです。やっとスタートに立ったって感じです。
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素晴らしい。それを私は見れなかったという訳ですね。
岩田
でもね、本当に実験的というか、初の試みだったんですよ。一つの役に対して、山口さんと話す事なんて無かったんですよ。「この役はこうだよね」とか。一切。それはどうなんだ、っていう抵抗があったんですよ。演出が求めているだけのものではなく、こちらからも提示したいし。時間掛けてそれをすり合わせていくのが良いと思っているんですけど。今回は役についての話をし、だから物凄い大変だったんですよ。
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すり合わせですか。
岩田
でも、彼女の演出自体も、「この役はこう思っているからこうやってくれ」という事は一切言わないし、そこは彼女の好きな所なんですけど。単純に、「低い声で言ってくれ」とか、「間を詰めてやってくれ」とか、そういう事なんですね。「上を向いてくれ」とか、「ちょっと焦ってみて」とか。
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そういう、方向性だけのチューニングというか、私の見方かもしれませんが、そう難しくはないですね。
岩田
そうですね、だから自分の持って来たものとは大きくぶれないですね。演出と考えている事が、刷り上っていく。
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へえー。面白いですね。
岩田
面白いですよ。
note遊劇体
1983年12月、京都大学演劇部を母体として団体結成。1984年7月キタモトマサヤの作・演出で野外劇を上演、旗揚げ。1990年までは京大西部講堂でのみ公演活動。91年より現主宰キタモトマサヤが実質上の主宰となり、野外劇場での公演のほか小劇場にも進出し公演活動を行う。(公式サイトより)

タグ: 例えばこのコップ 実験と作品の価値

追求

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岩田さんは、今後、どんな感じで。
岩田
私は、芝居を始めた頃は焦ってたんですよ。職業として、がんがん行ってやろうとか、メディアにもばんばん出て、とか。今は表現をするということを、自分も、周囲にも受け止められるようにしていきたいですね。
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周囲にも、だけではなく自分にも。
岩田
芸術的なものを追求したいなあというのがあって。日本じゃ中々難しいですけどね。山口が今度フィンランドに行くんですが、それで海外の事情について話すんです。やっぱり、演劇が日常の文化として根付いているんですね。劇場に行く事だとか。そういう状況に、一歩でも近づければいいなと。漠然と思っていますね(笑う)どんなやねん。
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一歩でも近づく。
岩田
そうですね、一人でも多くの一般のお客さんがもっと気軽に見に来てくれるようにしたい、そう思いますね。

小さい絵皿

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今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
岩田
あ、見ましたよ、このページ。いいんですか、こんなんしか喋ってなくて。
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いえいえ。どうぞ。
岩田
わ、すっごい嬉しい。開けていいですか。
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どうぞどうぞ。
岩田
へえー。これはもしかして・・・。これ、戻せるかな・・・。
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あ、どうぞ適当にして頂いて。
岩田
あ、めっちゃかわいいー。私、びっくりする事に、器がなかったんですよ。
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おお。
岩田
しかもこないだ岡山に行って、大きい器を作ったんですよ。何か最近、縁がある。何だろう。
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ああ、良かった。
岩田
ありがとうございます。使えないなこれ、勿体無くて。飾っておきます。
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今日はありがとうございました。

(インタビュー終了)