劇団なかゆび「45分間」 2

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今日はどうぞ、よろしくお願いします。同志社大学の第三劇場出身で「劇団なかゆび」の代表、神田真直さんにお話を伺います。さて、最近、神田さんはどんな感じですか?
神田 
よろしくお願いします。演劇以外の活動なんですけど、この間卒業論文を書き上げました(ちなみに卒業ができないので来年も学生なんですけど)。ちなみに卒論のテーマは「ニッチ」市場における商品開発の特性についてという、経済学・経営学系のテーマです。
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演劇とは関係ない感じですね。
神田 
僕のゼミは経済系で、学問的にも文学部畑の人間ではありません。演劇からは遠い所に籍を置いていたりもします。だから演劇にとらわれない(演劇自体を問題とする)ことができるというのが強みなんじゃないかなと思います。演劇活動としては、2月に劇団なかゆびとして第2回全国学生演劇祭に出場するということと、3月に第三劇場卒業公演を控えています。そのどちらも作演出を担当します。でその間に、なかゆびメンバー綱澤くんの、演劇集団Qとしての卒業公演があります。
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活躍されてますね。ですが、まずは「45分間」ですね。
神田 
はい。劇団なかゆびの「45分間」。京都での「45分間」再演になりますが、脚本と演出は大きく見直す予定です。脚本は多くの問題点を指摘されましたし、演出面については、会場もロームシアターですし、同じというわけにはいかない。題材はそのままに、上演内容は全く違うものになる予定です。そこで目をつけたのが、三島由紀夫でした。どういうことかというと、『青の時代』、『宴のあと』、『金閣寺』等で彼は、現実に起こった事件を元にして芸術作品をつくっています。今はそれを参照しつつ、創作しています。さらに、それがその次の第三劇場の卒業公演にもつながっています。『アプレゲール ーーー〈賢者〉の時代』は「45分間」で参照した三島由紀夫が着想の契機にあります。内容は現時点ではまだあまり固まっていませんが1970年、学生運動の近くにはいたけれども、学生運動に加担していなかった学生に、焦点を当てた芝居にしようと計画中です。続けてご覧になっていただければ、知的好奇心が刺激されるとても楽しい3週間になるんじゃないかなと思います。
1劇団なかゆび
排泄の片手間、社会になかゆびを立てています。赦してください。
主宰・神田真直
嗜好品:LARK(9mg)、マウントレーニア
好きなタイプ:波多野結衣、里美ゆりあ
団員:神田真直が公演ごとに参加者を募っている。
初演は第三劇場、演劇集団Q、同志社小劇場の団員により構成。
拠点:同志社大学新町別館小ホール
これまでの公演記録
「滔々と流れゆく」 (2014) 脚本・演出:神田真直
「動悸」 (2015) 脚本・演出:神田真直
「45分間」(2016)脚本・演出:神田真直 〈京都学生演劇祭2016審査員特別賞受賞〉
NAVERまとめでもっと知る (公式サイトより)
2第2回全国学生演劇祭 Bブロック劇団なかゆび「45分間」
脚本・演出 神田真直
出演 神田真直 綱澤秀晃

●日時
2017年2月24(金)~27(月)Bブロック開演時刻
24日(金)18:30
25日(土)13:30
26日(日)18:30
※受付開始は開演の30分前、開場は開演の20分前となります。
※各団体の上演時間は45分以内、間に休憩があります。
※27日の公演終了後、授賞式を行います。無料でご覧いただけますが、先着順でのご案内となります。
●会場
ロームシアター京都ノースホール
詳細はこちら。

事件の「風化」に向かい合う

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全国学生演劇祭での「45分間」。どんな感じになりそうでしょうか。
神田 
初演からだいぶ形を変えたものになるのかなと思います。構成や演出を大幅に変更しています。
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また別の視点から戯曲を捉える事になりそうですね。
神田 
この戯曲を書いた時は、相模原市の事件を踏まえていないんですよ。「老人ホームを襲撃したテロリスト」、というお話なんですが、その脚本が書きあがって次の日に相模原市の事件があったんです。これはまずいなと思って・・・。そこに関しては上手に作品に取り入れられる部分もあり、うまくいかなかった部分もあり。今回に関してははっきりと、事件を取り込んでいることを出した作品にしようかと思っています。まさに現代的な作品になると思います。
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現在の姥捨てに関しての問題に、正面から取り組んだ作品となるんですね。
神田 
僕はこれは、近代の宿題だと思っています。デカルトの「我思う故に我あり」から近代が始まっていてその問題の先に、第一次世界大戦、第二次世界大戦が起こって行ったと思うんです。観念論上、解決できていなかった問題が、現実の人間を傷つけるという事態に発展してしまっている。普遍的な解決に至らないまま続いてしまっている。弱者切り捨てという課題については、ずっとそういう事態が起こっている。
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解決策なんて、あるのでしょうか。
神田 
再演にあたり、相模原事件についての新聞記事をもう一度リサーチしたんです。事件発生の1か月後にはその事件を風化させてはならないという論調が出たんですけど、その言葉の時点で風化が始まっているんです。さもなければ、世界大戦のようにいずれ世界を揺るがす事件になっていたのかもしれない。だからこそ、事件を風化させないためにも、演劇はひとつの有効手段なのではないか、作品に昇華させることで、今後普遍的なものとして残るんじゃないかと思っています。

明晰過ぎる故の・・・

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京都学生演劇祭での上演に向けて、現時点ではどのような思いがありますか?
神田 
はい。去年の学生演劇祭では審査員賞を頂いたんですけれども、観客投票では著しく低いものでした。14団体あって12位、データから見ると、僕らは、全然面白いと受け取られていなかった。
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見る目ねえな。
神田 
放置していい問題ではないと思ってます。気に入っていただけた人にはすごく気に入っていただいたんですけど、ほとんどの人にはよくわからなかった、つまらなかったという声を頂いてしまいました。それは、僕にとっては衝撃だったんです。僕はこれ以上、説明がいらないぐらいわかりやすくやってたんですけど、でもそれは観客にとっては全然残らなかったんだと思うと。それはどういうことかというと、カントは『純粋理性批判』の序文で、「多くの書物はこれほど明晰にしようとしなければもっとずっと明晰になったであろうに」と言っています。わかりやすくしようとしすぎて、逆説的に分かりにくくなっている。成る程、明晰な言葉は部分部分のつながりを分かりやすくするけれども、全体のまとまりを損なう。
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ああ、分かりますよ。
神田 
結果として、お客さんには何も残らなかった。「45分間」の台詞一つ一つは強靭なセリフだと思ってるんですけれども、結局最後には残らなかった。
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確かに、放置出来ない問題ですね。
神田 
丸山交通公園さんがツイキャスで、「情報量を減らしていくのは違う気がする」と仰っていました。それは僕も同じ意見です。ですから、今回はむしろ情報を多くしようと思っています。新しい知見も視野に入れて、もうちょっと補助線を引いてわかりやすくしようと思ってます。
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補助線という発想は、なんだか良いですね。良い捉え方をされている気がします。
神田 
観客に寄り添うというと月並みな言い方になるんですけど、できれば、観客にとって嫌だなと思わせるぐらいの寄り添い方がこの作品の題材に合ってるのかなと思います。お客さんが目を背けたくなるような現実がこの作品の主題なので。

誰に向けた中指か

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本題に入りたいと思います。劇団なかゆびは誰に向けた存在であるのか。どうお考えですか。
神田 
元々の旗揚げの経緯としては、第三劇場のレパ選(脚本を選ぶ会議)で自分のが選ばれない、というのが続いたんですね。自分がやりたいことしたい、という思いが理由の一つです。自由にやりたいように人を集めて作品を作れる、そういう場を求めました。今はもう自分が楽しくやるためにやろうかなと思っています。もちろん、自分の問題意識が向いている題材を作品に昇華する場ですね。作品が役者とスタッフに波及して、それがお客さんに届いて帰ってきて、で、自分にフィードバックしていく。自分はもちろん、関わったみんなが一緒に成長することができる、そういう場にできたらなと思ってます。
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なるほど。
神田 
観客にとっては、ちょっと大きい事を申しますと、演劇の始まりであり同時に終点でありたいと思ってます。なかゆびから演劇を見始めて、最終的にはなかゆびに戻ってくるような。それは、岡本君「安住の地」とも近いのかという印象を持っています。まあ彼らにどんなコンセプトがあるのか、あまりわからないので、今度聞いてみようと思っています。

果てなき諍い

神田 
僕は、才能は「ゼロから生み出す力」、センスは「1から生み出す力」と定義しています。才能は先天的なものですが、センスは修練がものを言うんですね。僕は18になるまであまり本も読んでなかったし、映画も観ていなくて。中学校の頃は年に2冊ぐらいしか本を読んでいなかったんです。同じ世代の人と比べてだいぶ遅いんじゃないかと思う。だから、それをまずやっていかないとならないですね。三島由紀夫は『若きサムライのために』のなかで、「人は人生を始めてから徐々に芸術を始める」と言っています。僕は20歳から突然、演劇(つまり芸術)を始めたというのもあって、明らかに洗練が足りていない。本番を迎えるまでに、その洗練する作業というのが間に合っていないとならないのに。課題が分かっていても、出力に追いつかないというところがありますね。そういうギャップをどうしていくのかというのが、これからしばらくの課題だと思っています。
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最近の学生劇団の俳優は非常に良いと思います。でも、あと3年あればもっと良くなる。ある線を超えたらきっと、非常にいい役者になるんですよ。
神田 
いい役者と良くない役者の分岐点が僕の中にはあって、「役作りの形而上学」を越えられるかどうか、なんです。例えばAという役を演じることになったとして、そのAは実在しないわけじゃないですか。それなのに、Aの立ち方を探さないといけない。その形而上学に落ちてしまうともう、駄目なんじゃないかなと思うんです。認識の限界があるので。カントの言う、「果てなき諍い」になってしまうので。完全になりきる瞬間なんてあるはずがないのに。そういう認識がないと、どこかで心が折れるんじゃないかなと思います。若い人たちは勢いで何とかなってるけど、その痛みに耐えられなくなって終わってしまうんじゃないかなと思う。
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役作りの内的なスパイラル。そこを抜け出すには・・・。

ふまじめな演劇人

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神田さんが頑張れる秘密を教えてください。
神田 
僕は、顰蹙を買うかもしれないんですけど、実は演劇を真面目にやってはいないんです。それが頑張れる秘訣です。
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おお、不真面目なんですか。
神田 
森山先生に以前、「今後どうして行ったらいいか」というようなアドバイスを伺っていたんですけど、「まあISに行くというのは面白そうだというのは自然な若者の感情として認めなければならないことだ、でも、それより演劇は面白くなければいけない」と仰っていました。中世ヨーロッパの異端者排除とか、人間はやっぱり、神経を尖らせ過ぎると危ないんじゃないか。第二次世界大戦の日本もそうだったんじゃないか。やっぱり僕は演劇もそうだと思うんですよ。先日、少し上の世代の学生演劇の方々とご飯行ったんですが、みんな演劇を真摯に真面目にやってるんです。僕は皆のように演劇を好きだと思ってやってなくて・・・僕の場合はモテたいつまり性欲とか、かっこよくいたいつまり自己顕示欲、そういうのが僕の演劇の根本的な動機なんです。それはもうずっと変わらないんじゃないかなと思ってます。
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良いんじゃないですか。それで良いと思いますよ。

その理由

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神田さんが演劇を選んだ理由は何ですか?
神田 
真面目にやってないという話に繋がるんですけど、手を出しやすい所にあったからというくらいです。もし近くに映像とかがあったらそちらの方に入っていたかもしれない。でも今は抜け出せない、という・・・それは何ら積極的な姿勢ではなくて、今から別の形式で成り立っているジャンルに手を出せる余裕がないだけですね。消極的なんですけど、だからダメだとは思わなくて。ここにしかいられないんだ、ということですね。我々だって日本に特別の思い出があるというわけじゃないのに、アメリカとか中国に移住するわけでもない。捉えようによっては消極的な根拠なんですけど、強力な根拠でもあると思っています。演劇を好きでやっているわけではない、ズレている人間だからこそ見えてくるものもあるかもしれません。
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というと?
神田 
共同製作者の綱澤君と一致してるところなんですけど、僕らが演劇史上に位置しているのは太田省吾さんから始まる潮流なんじゃないかなと思います。綱澤君は、人生で初めて演出したのが太田省吾だったんです。太田省吾は自らを「既存の新劇への不満の権化だった」と言っています。そして僕らは現代演劇への不満の権化です。演劇それ自体を一つの問題としています。たとえば、なぜ台詞を覚えないといけないのか、みんな当たり前と思ってるけれども。はたまたなぜ同じ場所に合わせる必要があるのか、なぜ同じ空間を共有しないといけないのか、云々。考え始めたら普通すぐ本番がやってきてしまうので、僕らはいつも哲学者に助けてもらっています。カントとかデカルトとかヘーゲルは、僕らに重要なモーメントを与えてくれています。後はフロム、ハイデガー、ニーチェにも。だからあんまり稽古という感じじゃなく、ディスカッションという色合いが強いですね。実質的つまり一般的な稽古(台詞があって、読んで、読み方や立ち位置を決めるみたいな)をしたのは2週間程度です。
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確実な知識に裏付けられているという手応えがありまして。非常に安心して拝見することができました。様々な哲学体系が、ショーとパフォーマンスの方向へ踏み出すというのが非常に良かったです。頭のいい人が頭のいいことをやりすぎてスクエアダンスを始めるというのがすごく好きなんですよ。私の趣味だったんですよ本当に45分間という作品は。とても完成されていた気がする。変な言葉かもしれないけれども、演劇に選ばれているというようなそんな感じがした。そういう言葉が嬉しいかどうかわからないですけど。
神田 
嬉しいです。ありがとうございます。初演では実は作品の冒頭にベケットを引用してるんですよ。というかそのままやってるんです。『ブレス』という世界最短の戯曲をそのまま上演してるんですけど誰も触れてくれなくて。気づかれないか!?って。ベケット以降、不条理の演劇は変化がなくて、俺たちはそこを一歩踏み越えたいんだ、と。気づいてもらえないというのはちょっとショックでしたね。

演劇の有限性について

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演劇でこそ与えられるお客さんへの影響について、何かを考えがありましたら教えてください。
神田 
あります。演劇はどんな価値があるかと考えると、人間の有限性を享受するのに一番適したメディアではないかと思っています。ぼくらは若いので、目上の人から「人間には可能性がある」みたいな激励をよくいただくんですけど、いやいやむしろ人間は限られてるし、それを認識してこそ一歩前に踏み出せるんじゃないかと思っています。
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「演劇の有限性」。
神田 
映画やアニメーションの技術力の向上は、以て人間の有限性から目を背けさせてしまったのではないか。人間を現実の檻から解放させてしまう。やっぱり人間は物理法則に境界づけられているものだと思う。『マトリックス』という映画がそれを如実に表している。ですがもちろん、演劇はすごく物理法則に囚われているじゃないですか。限られた空間で表現しないといけない。劇場にゴジラはやっぱり出てこないし、『君の名は』みたいに、身心二元論で心だけが本当に入れ替わる事はない。入れ替わっているということを何かを使って表現しないといけない。物理法則に従ってどう表現しているのか、演劇は人間が囚われているということを教えてくれる、数少ないメディアだと思うわけです。台詞も人間の有限性を教えてくれます。好きでもない人を「好きだ」と、嘘をつきまくるわけじゃないですか。嘘付くって最低じゃないですか。でもやっぱり、そういう風にしてやるしかないと。神という存在も感性でとらえることはできない。嘘をついて表現するしかない。でもその先に、生きる上で大事なことが見てくるんじゃないかと思うんですね。それが演劇の良いところなんじゃないかと思うんです。
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現実の有限性、現実の限界性を観客に再認識させるということについて、神田さんは悲観的ではない。
神田 
いえ、悲観でも楽観でもなく、とにかく演劇はそれに適してるんだろう、と思うんです。現実は結局、こうなんだから頑張ろうと。

事実についての客観

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抽象的な質問ですが、ファクターはどのように見出されるべきだと思いますか?抽象的なお答えでお願いします。
神田 
知覚されることで満たされるべきだと考えています。役者の演技が観客の眼球に受け止められて、それぞれの経験に基づいて解釈された時に、ようやく客観的と形容される「それ」に至る。でもそれは主観の延長であると結論づけられているんです。その限界を肝に銘じている人とそうでない人では、見えてくるものが違ってくるのではないかと思っています。そのことを忘れると、カントの言う「果てなき諍いの競技場」ですが、そこに立たされて血まみれになって死んでしまう。
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自分の観察が客観的ななものにはなりえないということについて、私はポジティブになれるだろうか・・・。
神田 
やっぱりアイデンティティの確立ですよね。「この論文を書こうと思った理由を客観的に説明してください」、こないだ大学で聞かれたんですよ。ゼミの担当教官に口を酸っぱくして「やりたいからやってるではダメなんだよと」言われていました。芝居を書くときもやりたいからやるではダメなんだと思って。常に社会的意義や位置づけをしないといけない。僕の場合は、合理的な観方を探して答えたんですけれども。完全に客観的に見えるポジションなんてないんですけど、もっともらしい意見を述べていかないと。そうしないと生きていけないと思うんですね。
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それは、全ての者が本来的に引き受けないといけない矛盾ですね。
神田 
そこは演劇に通じる部分があるんじゃないかと思います。

恋をする

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神田さんは、恋愛についてどう思いますか?
神田 
さまざまな作品において恋愛は重要な題材となっていますが、岸田國士の『恋愛恐怖病』という戯曲に「人は誰しも、恋愛に真剣になると平凡になる」というセリフがあります「平凡」になるという衝撃。それは非常に大きいんじゃないかなと思っています。舞台で恋愛を題材にする時にその感覚を知らないと、無意識に自分を卑下したり他人を蔑ろにしてしまうのではないか。相手が平凡になった経験があるかどうかは、1時間話したらわかってしまうんじゃないかと思う。稽古って濃密な時間を共に過ごすことなので、そういう部分は如実に出てきてしまうじゃないかと思う。だから恋愛って一つの演劇ワークショップなのかもしれませんね。まあ恋愛をしなければならないというわけではないんですが、恋愛経験がないというのは他者への配慮を浅はかにしてしまうんじゃないかなと僕は考えています。

質問 しらとりまなさんから 神田 真直さんへ

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前回インタビューさせていただいたしらとりまなさんから質問をいただいております。「もし1万円を渡されたらどう使いますか?」
神田 
劇団地点を5回みます。以上。

今後の劇団なかゆびと神田さん

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今後どんな感じで攻めて行かれますか?
神田 
劇団なかゆびは、しばらくしたら学生劇団ではなくなります。僕も就職活動をして、働きながら演劇活動を続ける方法を模索していくでしょう。一番関心があるのはやっぱり、製作時間の短縮、及び予算の削減。安い予算で上質な作品を制作するにはどうすればいいのかなと。地点と同じように品質の高い作品を繰り返し繰り返し上演する、みたいな。京都が素晴らしいのは地点という素晴らしいモデルがあるということだと思います。地点は太田省吾の演劇の潮流の上にある。僕らも少し変わった演劇の流れを汲んでいると思っていて。僕は演劇があんまり好きではなく、苦手だ、そういうところから出発して、どうやって自分達にそぐうように作れるのか・・・これからも議論し、検証を続けていきたいと思います。
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非常に重大な仕事ですね。とても楽しみしています。

コーヒーの絵本

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今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
神田 
本当ですか。ありがとうございます。(開ける)あ、これ知ってる。喫茶店の奥にこの本置いてあった。ありがとうございます。
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インテリア代わりに。気になった時にふとめくっていただければ。
(インタビュー終了)