二月の夜

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今日はどうぞ、よろしくお願いします。BokuBorgの川本さんにお話を伺います。川本さんは最近、どんな感じでしょうか。
川本 
よろしくお願いします。最近は稽古したり、バイトしたり。今年の4月から拠点が東京になるんですけど、その準備をしたり。
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そう、東京で就職するんですよね。
川本 
最終的にはいつか戻ってきたいというのはあるんですけど。
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どんな所で働くんですか?
川本 
建築事務所です。地元に帰ってきたいというのも、いつか独立したいというのがあって。それは関西で、と思っていて。
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東京でも頑張ってください。
川本 
はい。はは、なんだか「東京に行ってみる」、みたいなノリなんですけど。
1BokuBorg
ボクボルクと読みます。 京都を拠点に活動する川本泰斗(元劇団ケッペキ)のソロユニットです。独りぼっちの豚はヒトに助けられて生きる。(公式Twitterより)

BokuBorg vol.2「幸のナナメ」

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3月17日からBokuBorgの「幸のナナメ」、スタジオヴァリエですね。旗揚げ公演から3年、区切りとしての公演という形ですが、チラシの感覚からしてとても楽しみです。どんな感じの作品になりそうでしょうか。
川本 
ありがとうございます。そうですね、簡単に言うと、幸せというものに執着しすぎてバランスを崩してしまった女の人の話です。身近な女性がモデルになってるんですけど。
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女性の話なんですね。女性、に興味がある?
川本 
そうですね、興味がありますね。好きなんですね、そのままの意味で。なんか、愛憎が深いような気がして。何かしらをすごく嫌いなんだけど同時にぎりぎりのところで好きだったり。
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幸せにこだわっている女性の話。
川本 
いつのまにか「幸せになりたい」、にとりつかれている女性。「幸せになりたい」という言葉って面白いなと思って。漠然としてるけど、結局そういうところに向かって言ってしまう。僕自身、戒めているつもりなんですけど、気づいたらいつのまにかそれに動かされている。
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ええ。悔しいですが。
川本 
例えば、「幸せな家庭」というイメージに対するこだわり。僕自身にも「男たるものデカめの車に乗って週末にはキャンプに行って一軒家を買って庭にブランコがある、そういう家庭を築くものだ」、みたいな。で、僕自身もそうなりたいと思ってるんですよね。そして僕の周りの先輩の男性たちは、そこになりたいと思ってなってるというよりは、やりたい事を自然とやっていたらそうなっていた、みたいなもんで。
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3年前のBokuBorgの旗揚げ公演を拝見しているのですが、またかなりカラーが違うような気がしますね。前回は結構、アバンギャルドな雰囲気だったでしょう。それが、チラシはもちろんタイトルからして・・・そのあたりの変遷がまた楽しみですが。
川本 
そうですね。でもどうなんでしょうね、書きたい話の内容としては、家族愛とか孤独感とか、そういうものなんですよ。あの時と変わらず。違うのは味付けだけ、なんです。今回はもうちょっとホットな感じになると思いますね。味付け自体は結構、コロコロ変わるものなのかなと思います。
2BokuBorg vol.2『幸のナナメ』
彼となら、私はごくごく普通の、いたって平穏な、なんでもない幸せとかいうやつを手に入れることができるだろう家族の、幸せに向かうお話。
会期:2017年3月17日(金)~2017年3月20日(月・祝)
出演者:ピンク地底人2号(ピンク地底人)、勝二繁、土肥希理子、野村眞人(劇団速度)、藤居里穂、堀内綜一郎
スタッフ:脚本・演出:川本泰斗
舞台監督:北方こだち(GEKKEN staffroom)
照明:真田貴吉
音響:アーサー
演奏:山田佳弘
イラスト:廣部萌
制作:溝端友香

自分のための場所

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次の「幸のナナメ」が最後の公演になるんでしょうか・・・
川本 
まあでも、一つの節目となる行為なのかなと思います。東京でどんな生活になるのかもまだわからないですからね。でも、語弊があるかもしれないですが、やりたいからやる、というスタンスは常に持っておきたいと思います。一人のユニットなので、僕がやりたいからやりたいと思った時に、ものすごく小さい規模でやるかもしれませんし、人を集めて公演をするかもしれません。
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その時機会があったら是非、拝見したいです。
川本 
ぜひぜひ。BokuBorgは僕が関わる活動全般につけている名前なので、何かでお目にかかれたら嬉しいです。別の媒体で出来てもいいかな、と、
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BokuBorgの由来とは。
川本 
Boku=僕で、Borgはドイツ語で、去勢された豚です。豚が好きなんですよ。豚、可愛いじゃないですか、でも肉とか、欲とかの象徴にされているのに可愛くてポップな存在。なるべく露悪的な表現は避けたいという感覚があります。人間の欲とかのテーマも好きなので、そういう表現も織り交ぜますが。
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確かに露悪的ではないですね。
川本 
当初はそう考えていました。今はどうかわからないです(笑う)。書いてない嫌な事の方がより嫌かなと。
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お客さんが想像してようやく届く嫌さ、ですね。それ、成功したらいいですよね。迂遠な嫌がらせというか。

舞踏を見に行ってから生じた変化

川本 
しばらく前に、舞踏を見に行った時にショックを受けて。
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と言うと?
川本 
まず演劇って、しゃべるじゃないですか。ということは嘘をつくと。すごい嫌いやのに好きやと言えたり。その逆もできるし。それをうまく使うのが演劇の利点なのかもしれない。
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なぜ、演劇でなければならないのか。つまり演劇の蓋然性を問う、と。
川本 
旗揚げ公演で、アフタートークに出て頂いた演出家の方に「よくまとまっている」という言葉を頂いたんです。だから面白くない、という言葉も。ああ、確かになと思ったのは、まとまっていないものを舞台に上げる勇気が無かったんです。あの時は、自分の言葉で100%を説明できるものを完成品として舞台に乗せるのが礼儀だと思っていたんです。でもそれは恐怖感だったのかもしれない。もしかしたら、「何かわからへんけど大切で、説明出来るかどうか自信はないけれども舞台上に上げる必要性を強く感じているもの」、を、なるべくそのまま舞台上にあげるようにしたいなと。そっちの方がしんどいとは思うんですけど。
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「分からないこと」、が舞台に上がっている。それは非常に歓迎すべきことだと思うんですね。説明しようがないものは、大抵、輝いているように見えるんですよ。その瞬間、それまでの上演時間全てが結実したような。そういう美しい瞬間が生まれれば、と思う。ただし、一つでいい。
川本 
僕も、それは一つでいいと思います。明確か不明かはともかく。僕は建築をやってるんですけど、建築の考え方で「Less is More」という言葉があるんです。より少ないことはより良いことである。学生時代の頃に習って、まあ聞き流せてたんですけど。でもダンスとかパフォーマンスをやっている先生がその言葉を使ったんですよ。ああ、ダンスの世界に浸透してるんだな、と。クリエイションをする時の基本概念として、「Less is More」の考え方は敷衍しているんだな、と。舞台上にあげたいと思ったものを過不足なく伝えること、そのために他の要素を削ぎ落とす。それを面白くするためには、周りの諸条件が見えていると面白くない、と。「Less Is More」を言い出したのは20世紀初頭の人々なんです。ある種のクリエイションの答えがそれで、それに対するアンチテーゼも生まれてはいますが、「Less is More」は強いんだなあ、と。演出をするときも、そんな感じにはなりがちですね。もっと言うなら、編集する、みたいな感じですね。だからあまり創作をするっていう感じじゃないんですよ。悪意ある編集をしたらえげつないドキュメンタリーになったりするし。NHKの宮崎駿のドキュメンタリーとかみたいに。

夜を明かし語った日々

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川本さんが演劇を始めた経緯を教えてください。
川本 
京都大学の劇団ケッペキに入ってからです。始めた理由としては、僕はちっちゃい頃からクラシックバレエをやっていて。男の子なのにちょっと嫌やったんですけど、舞台上にいるのは楽しかったんですね。だから大学に入ったら演劇サークルとかに入るんやろうなと思っていました。京都工繊大だったんですけど、近いところに演劇部のある大学といえば京大。劇団ケッペキに入りました。
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そして今は、京大院生ですよね。ケッペキでの一番の思い出を教えてください
川本 
よく飲んでましたね。破滅的な飲み方をしていました。周りから見ればすごく嫌だったんでしょうけど、演出をやってる先輩とかと一緒に、グダグダネチネチと。最後はよくわからなくなって、寝る、みたいな。もっとさらっと俳優をやりたい子達もいたと思うんですけど。あれはあれで。
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それはそうですよ。
川本 
あの輪のなかのひとたちは楽しかったんですよ。
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もし、悔いがあるとすれば?
川本 
途中で楽しくなくなっていた、というのが、悔いですかね。どうだろうな、自己顕示欲の強い役者さんっているじゃないですか。僕も子供の頃は、バレエにしてもピアノにしても自己主張が強くて。自己主張が強い延長で演劇をやっていたのに、いつのまにか、演劇論を考えたり曲解したり。難しいことばっかりやろうとして、特に俳優をやるのが楽しくなくなっていった、というのはありますね。そういうのが、ここ一年ぐらい休憩していたというのもあって、演劇を伸び伸びやるのが面白いなあと思うようになりました。
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ちょっと、休憩するというのは良いと思いますよ。
川本 
実は僕、ダンスをやるようになったんです。コンタクトプロビゼーションのワークショップに行ったりして、ダンサーの人と触れあうことが多いんです。というのがちょっと大きいと思います。俳優さんもワークショップに来ることがあるんですけど、なぜか、俳優さんはできないんですね。なぜかと言うと正解を求めちゃうから。
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はいはい。
川本 
どう動くのが良いのか、ということになってしまう。ダンスをやってる人達は、答えを全然求めていないんです。
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そこですよね。
川本 
言われていることをただやる、ということにちゃんと集中できる。その上で、話し合いをした時に「特に私は何も思いませんでした」という発言をすることに躊躇がない。周りのダンサーさんも、その意見に対して何か言うわけではない。 俳優さんは、そういう話し合いの場で、ウィットに富んだことを言わないといけないような、そういう思いに囚われているように思えるんです。
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前に取材させていただいたかたとそういう話になったんです。ダンスと演劇でどう違うかという話題で、演劇はシーンを固定して、だから観客は俳優の人間を見ている。だが、ダンスの方は、観客とダンサーが、肉体でぶつかりあっている。そういう側面があるなと思って。
川本 
そういうこともあるのかな。感覚的なところなんですけど、ダンサーの方は喋ってて気持ちいいですね。 いい俳優さんもそうなんですけど、ぐじぐじしていないと言うか。テキパキしてるって言うか。

質問 江藤 美南海さんから 川本 泰斗さんへ

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前回インタビューさせて頂いた、江藤美南海さんから質問を頂いてきております。ちなみに江藤さんも、春から東京だそうで。文学座の研修生になるそうです。
川本 
そうなんですね。
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もしよかったら、何かの機会に見に行ってあげてください。質問は「好きなお酒は何ですか?」
川本 
日本酒ですね。「風の森」という、有機発酵の美炭酸のものです。それと、差し入れをするときはその人の出身地のお酒を手に入れられるなら手に入れてお贈りしています。地元の酒を貰ったら嬉しいかなと思って。
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おしゃれですね!

「あるある」を発見する

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いつか、どんな作品を作りたいですか?
川本 
なるべくいろんな人に当てはまる「あるある」です。マイノリティに向けて、という感じではなくて。やっぱりいろんな人に見てもらわんと、と思ってます。みんなちょっと思っているあるある、ってあるじゃないですか。すごくたくさんの人にも通じる、ニッチな。 あんまり芸術家だから、みたいな敷居が好きじゃなくて。
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最低でもエンターテインメントでありたいと。
川本 
エンターテインメントでなくなっちゃうともったいないな、と思ってしまうんですよね。アバンギャルドな作品でもいいんですけど、お客さんがどんどん引いてしまう。むしろ、お客さんにずっと寄り添って、距離を詰めて、最後に殴る、というようでありたいと思ってます。

100点の演技のために

川本 
努力クラブの佐々木さんが好きで、何回か一緒に飲みに行ったんですよ。その中で盛り上がった話があって。僕はお芝居って、減点方式のゲームだと思っていて。初めは0点から始まって、そこから、「良い演技をする」「プラマイゼロのことをする」「マイナスのことをする」という三択があって。まず最初にマイナス1点の演技をすると、その次にプラス1点のアクションをしても0.5という評価になってしまう。マイナス1点をするとー2.5点。
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面白い。そうですね、ケチが付き始めると良くない、という奴ですね。
川本 
でも、プラスの方にも加速度があるかというとそうではなく、1点ずつの積み上げになんですよ。最終的には、平均点はおしなべてマイナス寄りになっているのでは、という考え方を話したんです。佐々木さんと意見が合わなかったのは、「その状態でも+100点になる演技がある」「そこだけを探してやっている」と言っていて。学生の頃はプラマイ0点をとり続けていたら、 平均点がマイナスになるカルチャーなんだから、相対的に絶対上に行く、と。カチカチな頭だったんですけどね、今はもう少し柔らかくなりました。佐々木さんの言うことも分かるし。
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成長ですね。それはきっと。
川本 
そして今は、お客さんに近づいて、最終的に殴る、ということを目指しています。

innovatorのカレンダー

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今日はですね、お話を伺えたお礼に、プレゼントを持って参りました。どうぞ。
川本 
ありがとうございます。開けますね。(開ける)あ、カレンダーですね。これはとってもありがたいです。
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3月17日が初日ですね。楽しみです!
(インタビュー終了)