吉田寮食堂大演劇 vol.1『三文オペラ』 1

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今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。2月に上演される吉田寮大演劇「三文オペラ」のプロデューサー、小林欣也さんにお話を伺います。稽古は今、どんな状況でしょうか。
小林 
よろしくお願いします。稽古はまだ始まっていないんです。明後日が初顔合わせで、僕はまだ全然誰とも会っていないんです。
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今回、参加者がとても多いらしいですね。
小林 
アンサンブルキャストだけで40人ぐらい、スタッフが20人ぐらい。メインキャストが11人、音楽隊が5人で歌手が2人。
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それは、何と言うかビッグプロジェクトなんじゃないでしょうか。
小林 
そうなんです。やっぱり劇団子供鉅人の益山貴司さんと同劇団員の出演者、それに吉田寮食堂での演劇企画ということで、注目度は高いですね。実はチケットの予約もかなり入ってきていて、早めに申し込まないとお席が取れない可能性が高いです。
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ただのお祭りじゃないなあという感じがしますね。もはや全国的にも注目されているのでは。
小林 
そうですね。やっぱり今の吉田寮の状況があって、この話をしないわけにはいかないんですけど、去年の9月に吉田寮生は京都大学当局から退去勧告を受けていて。これを受けて退寮する人もいれば残っている人もいますが、話し合いもなしに廃寮の段階に移った京大に対して、僕は何もしないではいられませんでした。そういう訳で去年、前回の吉田寮大芝居の「今」を企画・上演しました。だから、言ってしまうと今回の「三文オペラ」も、明らかに運動の道具として僕は意図しています。
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分かりますよ。
小林 
サイトにも書いていますが、今回の三文オペラの演出を務める益山貴司は「次は僕がやる」、と。今回はそういうことのために使う芝居であると、最高のエンターテイメントを作るけれども、目的としてはそういう趣旨であるということをはっきり分かった上で芝居をすることに決めているんですね。そういう意味で、普通の芝居とは作品のゴールが違います。稽古に関しては、もう年末に益山貴司が台本の編集を終えて、各参加者に送っているので。最初の稽古から通しが始まります。3週間しかないので、詰め込みで稽古していきます。
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劇団子供鉅人メンバーが、クオリティの低い芝居を持ってくるわけがないですからね。
小林 
はい。最初に「運動としての芝居」みたいな言い方をしましたけど、芝居が面白くなかったら両方に悪く出ちゃいますからね。
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緊張感がありますね。
小林 
めちゃくちゃ厳しくなると思います。参加者やお客さんにも、ご自分の好きなスタンスで来て下さったらいいと思うんですが、この場所と企画自体を体験しに来てほしいなと思っています。そういうスタンスで作っています。一方、前回企画の「今」の時、芝居が終わった後に酒を飲みながら話せるような場を重視していました。お芝居の内容と同じぐらい大事に思っていたんです。今回の場合はさらに豪華に、寮食の前に闇市が7・8店舗並ぶし、出店もあります。お酒とご飯を楽しみながら喋れるような楽しい空間になればいいなと思ってます。
1吉田寮食堂大演劇 vol.1『三文オペラ』
舞台は19世紀ロンドン。貧民街の顔役、メッキースは街で偶然出会ったポリーを見初め、その日のうちに結婚式を挙げる。
ところが彼女はロンドンの乞食の元締めの一人娘だった……。
(『三文オペラ』裏表紙のあらすじより)
演目 三文オペラ
作 ベルトルト・ブレヒト
訳 谷川道子
演出 益山貴司(劇団子供鉅人)

入場料  予約 2000円 当日 2500円 小学生以下無料
会場 京都大学吉田寮食堂
上演時間 約2時間15分

2019年2月8日(金)19:00
2019年2月9日(土)18:00
2019年2月10日(日)18:00

メインキャスト! 影山徹 億なつき 地道元春 益山貴司 益山寛司 (以上、劇団子供鉅人) 根本コースケ(ベビー・ピー) 高瀬萌 延命聡子(中野劇団) 花本ゆか わしやみちこ 森脇康貴(安住の地) 日下七海(安住の地) 北川啓太

歌手! 下村ようこ(かりきりん)
演奏! 4日目バンド
イガキアキコ(ヴァイオリン/たゆたう) かんのとしこ(アコーディオン/Ryokan da familiar) 宮田あずみ(ベース/かりきりん) 中林キララ(ギター/オシリペンペンズ) 三原智行(トロンボーン/Green Parade) ワタンベ(ドラムス/PATO LOL MAN)

アンサンブルキャスト!
  石川信子 今泉 治はじめ 金子美咲 神山慎太郎 葛川友理 小林紀貴 酒井そら 佐々木十千 申愛渚 杉林志保 タケダナヲ 田村真澄 西川晴華 狭間要一 はやしやすみ 前島舟 松村珠子 柳澤俊介 李勇雅 草壁カゲロヲ 斉藤 杏奈 高本和美 橘カレン 松田早穂 みかみ 山﨑大夢 山本真莉 尹素香 キサ 南佳菜 林葉月 GEN (1月6日発表分)

吉田寮食堂10月公演『今』 2

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「今」は、どんなきっかけで企画されたんでしょうか。
小林 
2018年の3月ごろに吉田寮に遊びに行ったんです。その時点で、ちょっと「やばい」という話を寮生から聞いたんです。退去費用としての家賃補助が当局から出ていて、どんどん退去者が増えていると。寮に住んでいる大部分の人はお金がなくて住んでいるわけだから、効果的なやり方だなと思う。でも、今回退去する人はそれでいいと思うんですが、補助を受けられるのはこの代だけなんですよ。来年度からは安く住める寮はなくなってしまう。寮というだけではなく、近所の子供の遊びに来る場所としても、劇団やバンドが活動する文化的な活動の場としても吉田寮並びに吉田寮食堂はあるわけで。
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そうですね。
小林 
それと、吉田寮独自の話し合いの場の形成の仕方もあって。そういう文化みたいなものって、非常に新しいものを発掘していってる場なんですよね。当局の経済事情であっさり無くなって良い訳がないんですよね。僕はそういう危機感を抱いて、何かしないといけないなと思ったんです。でもアジテーションをするみたいなことはできない(僕自身、退寮から十年も経っているので)。だから芝居しかないなと。3月にはどういうお話にするかということは決めて、公演に向けて人とか場所とかを集める作業を丁寧にやっていました。
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めちゃくちゃ面白かったです。
小林 
良かったです。寮の事を知らない、関係ないと思っている人にどこまで届くんだろうか、不安に思いながら頑張っていました。
2吉田寮食堂10月公演『今』
公演期間:2018/10/12~14 会場:京都大学吉田寮食堂。

運動のゆくえ・1

小林 
「今」が終わった時に益山貴司が「やる」と言ったんです。その時は驚いたし、それ以上に嬉しかったんです。実は、誰か僕以外にも、ここで公演をする人が増えないかなと期待していたんです。やっぱり運動って、広がっていかないと意味がないんです。
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運動は、広がるべきものだと。
小林 
「三文オペラ」が終わった後も、次のバトンが繋がっていく。どんどんそういう風になっていくというのが理想ですね。
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そうですね。「今」という運動が誰かに伝わったというのが嬉しいですよね。
小林 
ドミノの二個めが倒れたという事ですから。
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最近考えてることがあって、感情の転移って、ネガティブな感情ははっきりと誰かに伝わって、なかなか消えずに継承されていくんですよね。ポジティブな感情も転移するけど、前者よりずっと早く減衰する。運動は基本的にはネガティブにポジティブが複雑に入り混じっている。それがどこまで強く誰かを動かすかは・・・何に依っているんだろう。
小林 
運動の本質はリアクションですからね。
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この作品に参加した人々が、どう反応するか。そんなことも楽しみです。ところで、吉田寮という場所。私個人は、建物が損失してしまうというのに非常に懸念しています。取り壊されてしまったらもう取り返しがつかないので。
小林 
なんて言うんですかね、もちろん建物は大事に思っていますが、やっぱり僕はソフトの方に重点を置いていて。ハードが保証してくれていたソフトでもあるんです。僕の偏った考えですが、ちょっと非衛生的で猥雑なあの場所は人を多少、ふるいにかけてるんですよね。この社会の中で、あの場所でしか受け入れられない人も何パーセントかいるんですよ。そういう人は、吉田寮的な場所が無ければ家に引きこもるしかないんじゃないか。自分が楽にいられる場所がないんだったら、ネットぐらいしか行き場がない。誰でも来ても構わないと言うオープンな場所でありながら、人を逆のふるいにかけている場所でもあるなと思っていました。その場所が担保されていることが素晴らしいことだと思っています。
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ええ。
小林 
建物自体にもやっぱりパワーがあるし、その居やすさを人にもたらしてくれる、考える時間をたっぷり与えてくれる、人とゆっくり話す時間を持っている。そうしたソフトの部分を支えているハードだと思っています。
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これは思ったよりも大問題ですよね。
小林 
僕の話を聞いてくださったら、段々と、高い段階での話も見えてくるのかなと思います。感じてくれるものはあると思います。

運動のゆくえ・2

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もちろん、吉田寮やそれに類する場所を社会から抹消したとして、モラトリアム的なものが社会から消えるかと言うとそうではないんですよ。でも確実に減衰はする。だから運動は必要なんですよね。吉田寮というのは京都大学の中でたまたま生き残っている場所だと思うんですが、これが大学側の経済的な事情によって抹消されてしまうというのは、モラトリアムのアイコンが経済によってなすすべなく排除されてしまうということになってしまう。
小林 
そうですね。僕はもちろん消えてほしくないと思ってやっていますが、やりながら、一方で、「消えてしまってもいい」と思っています。吉田寮がなくなっても、無くならないですからね。いや、なんでしょう。なくならないというのは、思い入れとか概念とかの話ではないですよ。僕は本気で無くならないと思っていて。狂気とかじゃなく。
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形を変えて残るということですか?あ、いやそうじゃないな。
小林 
「今」という芝居で、僕はそういうことを伝えたかったんです。
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うん、柳沢さんのセリフでありましたね。無くなる、無くならないは問題じゃない、みたいな・・・
小林 
正しくは「悲しくなんかない。この場所は私が守る。何百年経っても、何千年経っても絶対に守る。早く行きなよ。」このセリフに結構込めていたので。一言で言えば、僕の思い込みなんです。

モラトリアム

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私は結局体制側の人間だからこういう発想になるのかもしれないけれども、社会とか世間って、大学入学して4年ないし8年の時間のモラトリアムをどうとらえているんですかね?
小林 
モラトリアムが重要だということは思われてると思います。吉田寮が無くなっても、作るし。モラトリアムの場所が与えられなくたって勝手に作る。だから「このままだとなくなっちゃうよ」みたいなのは大きなお世話なんですよ。でも、年をとった人も多国籍の人も、寝そべったり漫画を読んでたりするような巨大なたまり場って、そうそう作れないよ、と。もう一度作るなんて難しいですよ。シェアハウスとかはこれからたくさん出てくると思うんですけど、歴史のある吉田寮みたいな場所はもう二度と作れないと思います。十八歳の時、初めて吉田寮に泊まった時、朝目が覚めて天井が目に入った瞬間、何と言うかめっちゃ安心したんです。初めて泊まった家なのに。
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危険だな。
小林 
(笑う)
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実家のソファで安心感に襲われて骨抜きになりそうなことがあって、慌てて立ったことがあります。
小林 
実家は既視感じゃなくて既視じゃないですか。僕のは、初めて見た天井なのに既視感があったんです。ずっとそこに住んでいた感覚。だからもっと危険かもしれませんね。
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今でもそれはありますか?
小林 
今はさすがにないですね。安心感はずっとありますけど。

質問 淀川工科高校演劇部の皆さんから 小林 欣也さんへ

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前回インタビューさせて頂いた淀川工科高校演劇部のみなさんから質問を頂いてきております。「もし演劇をやっていなかったら何をしていましたか?」
小林 
何でしょう。仕事以外だったら、例えば今日この時間帯だったらゲームをしていたり、だらだらとしていたと思います。そうするのが好きだから。

これから

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これからどうしますか。
小林 
三文オペラが終わったら、ベビー・ピーのテント芝居に取り掛からないといけなくて。これが本当に大変なことになるだろうから気が重いです。新年一発目のヨーロッパ企画の暗い旅の企画が「演劇蟹工船の旅」で、テント芝居の苦労を熱く語りすぎました。思わず叫んでしまったり。楽しみだけどめっちゃ大変なんです。前回の苦労が身にしみているので。今回はどうなるんだろうなという不安はあるんですけどね。それはそれとして、全国に会いに行きたい人がいるのでやります。
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楽しみです。
小林 
「今」の再演をどこかでやりたいです。本当は、遠方で見れないという人なんでしょう結構聞いているので、いつになるかわからないけどやりたいです。あと、重いものばっかりじゃなくてコント集をやりたいです。ちょっと力を抜いた感じの公演をやりたいですね。
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作家としての小林欣也をもっと見たいですね。
小林 
ありがとうございます。前回は泣きながら書きました。

どこへ

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この運動はどこへ行くのでしょうか。
小林 
この手の運動が勝つのって、撤回しますという事にはならないです。1981年に一度こうなっていて。でも京大総長の河合隼雄さんが終戦宣言を出して一応の区切りはついたんですが、本当の意味では区切りは付いていなくて。いまは地図では吉田寮は空白の、何も名前がついていない場所ですから。
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いっそ、この状態で100年続いてほしいですね。
小林 
そういうことだと思います。でも、こういう運動は先鋭化したら終わりなんですよ。真面目な人ばかりになってしまったらカルト化して負けるんです。隣にいる人に対して厳しくなってしまう。
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体制が大好きな人たちね。
小林 
いつも僕もそのことを気を使ってます。だから、吉田寮に24時間いる、たまり場に入って喋っているだけのひとって結構重要なんですよ。そういう人が必ずいないといけない。
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そうですね。
小林 
コミュニティの作り方というものを学問として学ぶ、僕にとっての吉田寮はそういう場所です。

岩倉酒造場 麦焼酎 三段仕込み

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今日はですね、お話をお聞かせ頂いたお礼にプレゼントを持って参りました
小林 
ありがとうございます。せっかくなので、顔合わせの後の飲み会とかで開けさせていただきます。
(インタビュー終了)