KUNIO「更地」 2

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今日はどうぞ、宜しくお願い致します。小林さんは、最近はどんな感じでしょうか。
小林 
9月22日からKUNIOの公演があるのでその準備ですね。それから、トリコ・Aの公演が11月にあるのですが、そのチラシを作成中です。
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どちらも楽しみです。KUNIO「更地」。もう一ヶ月を切りましたね。珍しく二人芝居ですね。
小林 
そうですね。KUNIOに付くのは初めてなんですけど、いつも多人数の作品が多いみたいなので。関西では久しぶりに少人数での公演です。
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しかもKYOTO EXPERIMENT参加ですね。
小林 
そうなんですよ。公式プログラムの中では相当若手なので。杉原の持ち味を生かした公演を打ち出せたらと思います。
1KUNIO
杉原邦生が既存の戯曲を中心に様々な演劇作品を演出する場として、2004年に立ち上げる。俳優・スタッフ共に固定メンバーを持たない、プロデュース公演形式のスタイルで活動する。最近では、杉原が2年間務めた“こまばアゴラ劇場”のサミットディレクターの集大成として、初めて既存戯曲を使用せず構成から杉原自身が手がけた、KUNIO07『文化祭』や、上演時間が約8時間半にも及ぶ大作『エンジェルス・イン・アメリカ』を一部、二部を通して上演するなど、その演出力により戯曲はもちろん、劇場空間自体に新しい風を吹き込むことで、作品を生み出している。(公式サイトより)
2トリコ・A
トリコAは、山口茜が「自分で戯曲を書いて演出をしてみたい」という安易な気持ちを胸に、1999年、勢い余って立ち上げた団体です。当初の団体名は、魚船プロデュースと言いました。以来11年間、基本的には上演ごとに俳優が変わるプロデュース形式で、京都を拠点に演劇を上演してまいりました。やってみると意外と大変だった事が多い様に思いますが、皆様の暖かいご支援のもと、現在も変わらず活動を続けております。(公式サイトより)
3【KYOTO EXPERIMENT 2012 公式プログラム】 杉原邦生/KUNIO KUNIO10『更地』
公演時期:2011/9/27~30。会場:元・立誠小学校 講堂。

いきなり、キャリアスタート

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まず伺いたいのですが、小林さんは一体どういうところからお芝居を始められたのでしょうか。
小林 
高校卒業後、しばらくしてお芝居を観るのが好きになって。休みの日とかによく劇場に行っていたんです。就職してしばらく、ずっと好きだった劇団、リリパットアーミーがボランティアスタッフを募集したんですね。当時としては珍しく。そこに応募したのが最初です。
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応募されたのはどのような理由が。
小林 
当時は小劇場ブームで、テレビでもサブカルっぽい番組が多く、小劇場の俳優さんもかなり出演していたんですよ。実は、最初から制作をやろうとは考えていなかったんです。好きな人達のお手伝いが出来たらと思って、スタッフに入ったんです。
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制作のお仕事を始められたのはいつ頃からですか?
小林 
最初は2年ほど、お手伝いをしていたんです。当時の私の勤め先が、不定休だったんですね。休みが結構自由に取れたんですが、そういう関係で受付のお手伝いに入る事も多くて。しばらくして、わかぎゑふさんが「事務所で働いてみる?」って言ってくださって、それで入る事になったんです。
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なるほど。
小林 
そこは公演の製作だけではなく、俳優のマネジメントも行う業務があったんですが、私が入る直前に担当のマネージャーさんが辞めてしまわれて。急遽、制作としてではなく、マネージャーとして・・・。
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いきなりですか!そこがキャリアのスタート。凄いですね。
小林 
出来るのかなあと思いながら。まあやるしかないので。8年ぐらい事務所にいて、最後の2年ぐらいにはマネージャーと公演制作を兼任していました。制作をやろうと意識的になったのは事務所を辞めてからです。やっぱり、制作は補助だけだったので、公演の立ち上げについてはあまり把握してなかったんです。
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大変でしたね。
小林 
人には恵まれたし、中々出来ない経験ですし、そこでのマネージャー経験が今凄く役に立っていると思います。今でも、自分にはマネージャーの方が合ってるのかな?と思う事もあるんです。

縦横で考える

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ボランティアのサポートスタッフから、事務所に入ってすぐマネージャーって、波瀾万丈ですね。
小林 
確かにそうですね(笑う)その頃は若かったので、プレッシャーはあまり無かったと思います。劇団と作家が多くを占める仕事だったので、マネージャー的な仕事は最初は多くは無かったです。大変には、あまり感じなかったですね。・・・会社って大きくなればなるほど、各個人の意思とはまた違う、会社としての動きが生まれて来るんです。入った当初の自分の意思からは想像もつかない仕事をする事もありました。でも、入る前からそこの人たちとは知り合いでしたし。不安でガチガチという事はありませんでしたね。
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今のお仕事に、マネージャー時代の経験が生かされていると仰いましたが、具体的にはどのような事でしょうか。
小林 
当時覚えた事ですが、未来の仕事や企画などのスケジュールを踏まえて動く事です。それと同時に、その仕事に関わる人達という、「横の広がり」を意識する事ですね。先と横を見て、自分たちのやりたい事を実現する力です。人に教えて貰ったり実践して身につきました。例えばテレビとかラジオの仕事。自分たちだけではどうしようもない事が、局の方々のご協力を頂く事で面白い事が出来るようになったりとか。フリーで制作をするようになってから、そういう見方の大事さを思い知るようになりました。やっぱり、自分一人だけで出来る事って物凄く限られていて広がりがない。いつまでも同じ場所で同じ事を続けるだけになってしまう。そうじゃなくて、一緒に仕事する人達とどういう進め方をすれば面白いのかを考える。もちろん、本人達がやりたい事というのは前提にあるんですけど。
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戦略的な思考と言えるかもしれませんね。
小林 
企画をすすめる上で、色々な要素を捉えて考えます。今の仕事の進み具合、メンバーの志向や長所を考えてそれを生かす仕事や時期を考えたり。
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そうした要素を、曖昧にではなく、明確に定義付けて認識する。それがまず大変そうに思えます。さらに、先と横の思考。ごく個人的には非常に苦手な作業でして。
小林 
あ、そうなんですか。
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他人に任せるのが苦手で、自分だけで出来れば全てやってしまいたいという志向なので。小林さんは縦軸と横軸を知覚し、予見し、戦略すると。流石だと思うんですが、では、そうした能力に、ご自身ならではの個性が現れているとすればそれはどこでしょう。
小林 
うーん。やっぱり、自分の好きなものを知ってほしいんですね。これは下世話な言い方かもしれませんが、お芝居以外でも「これは売れるだろうな」という勘が結構当たるんです。でも、それが私の好きなものとは限らないんですね。事務所を離れてフリーになると、自分の好きなもので仕事が出来るのが強みです。
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世の中に知ってほしい。
小林 
そう、世の中の人に。凄く好きな作家さんや演出家さんがいて、でも知らない人が沢山いるというのがもどかしいんです。それを如何に知ってもらうかを考えるのが凄く楽しいです。
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ご自身が面白いと思うものを、売りたい。
小林 
そうですね。本当にそう思うものを。だからこそ、自分が見た作品に対する評価には厳しくありたいなと考えています。何を観ても「面白い」と言ってしまうと説得力が無くなってしまうと思うんです。私は本当に面白いと思う物しか「面白い」と言わないようにしています。
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自分の好きなものを広めたい。その為に戦略する。それは、古今東西時代や地域を問わず、あらゆる制作者がそう思ってきたんでしょうね。再生性の無い演劇というジャンルだったら特に。
小林 
そうですね。

タグ: 他人に任せることの難しさ

アピ力

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同じアーティストでも、作品を深める事に集中する人もいれば、作品を社会にコミットさせたい人もいると思います。もちろん、例えの上での大別ですが。KUNIOはまさに後者でしょうか。
小林 
確かに、杉原はそういう面には長けているとは思います。プロデュース能力でしょうか。自分の作品をどう観てほしいか、この作品をどのような経緯や視点で製作を始めて、こういうところを見て欲しいと言える。「観てもらったら分かるんですよ」とかじゃなくて。そういう部分は秀でている。小劇場の中ではちょっと珍しいかもしれません。
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それはそうですね。何によらず、アピールする力は本当に重要ですね。きっと、プロデューサーはもちろん俳優も磨いていくべき分野かもしれません。
小林 
俳優さんとなると、きっと照れがあるかもしれません。それに舞台はナマモノなので、観てもらってなんぼ。でも一年の内、そう何度もやっている訳じゃない。そう考えたらもっと、ワンチャンスをもっと大事にしないといけないですね。
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オーディションというのもありますけどね。ネットの動画とかで充分に伝わればいいんですけどね。
小林 
やっぱり、自分がどういう思いで今の作品に関わっているかとか、好みの話に戻りますけど、自分の趣味や考え方をちゃんと表現してみたらいいんじゃないかなと思いますね。そういう人、少なくないですか。
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そう考えてみれば、あまりいないですね。
小林 
好きな事や思想でもいいですけど、それを通した、その人の感性が分かればいいのかな。
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アピールしたい人自身が持っている批評を通して、問題意識が分かればいいんですよね。
小林 
その人がその作品を通してどう考えたかを読めたら、その人自身への興味は湧くと思うんですね。さらに、その人がどういう人に影響を受けたかというのは、結構大事な情報なんじゃないかと思います。観に行くものを選ぶための。
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文学でもその辺りの情報ははっきりしていますね。それが大きな潮流になっていくんでしょうね。そして、それが裏切られない作品が作られれば。

タグ: 俳優を通して何かを見る 批評から見える人間像

質問 角田行平さんから 小林 みほさんへ

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前回インタビューさせて頂いた、男肉duSoleilメンバーであり映画監督の角田行平さんに質問を頂いて来ております。「効果のある集客方法を教えて下さい。特に映画上映会の。」
小林 
えー、集客・・・?それは私も教えて欲しいくらいです(笑う)。
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こうすればお客さんが来る、近道という意味ならどうでしょうか。
小林 
まず、角田くんが映画を撮っている事をそんなに知っている人が少ないんじゃないかなって。まずそれを知ってもらう事かな。
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映画監督角田行平を認知してもらうと。そういう事ですね。
小林 
私もお客さんを集めるコツ、知りたいです(笑う)。もし分かったら、今度こっそり教えて下さい。

次に行く

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今後、どんな感じで攻めていかれますか?
小林 
KUNIOに関しては、杉原がこの先にやりたい事がはっきりしているので。それをいい形で出して行けたらなと思います。順番とかタイミングがすごく大事なので。いい結果に結びつけるために。もちろん、途中の経過で結果が変わってしまう事もあるので、その時は戦略を考えなおしたり。
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途中でやり方を変える。
小林 
逆に、最初は期待していなかった事が評価が高かったり、結果的に良い物が出来たりする事もあります。その時はすぐに変えます。その為の手札はいつも持っているつもりです。
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柔軟であるために、ですね。そんな手練の小林さんから、若手の制作者達になにかメッセージを頂いても宜しいでしょうか?
小林 
いえいえ、そんなのは(笑う)。私が手伝ったり、付き合いのある人達、例えば突劇金魚 3の制作の安部さんや悪い芝居 4の有田さんとかはあの年代にしては極めて優秀だと思うので。燃え尽きないようにしてほしいですね(笑う)。一生懸命やりすぎて、一公演終わると燃え尽きてしまう人が多いので。制作は俳優さんのように、ピークの瞬間はなくて。公演が終わった瞬間でさえ、次につながるものが見えるというのが大事だと思うんです。そうして次の戦略を練る時に、楽しく思える。そういう風にモチベーションを保つ事も大事ですね。
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小林さんは、若手達と同じ時代の先端を一緒に走っている感覚がある。だから、アドバイスは無いという事でしょうか。
小林 
おお・・・(笑う)。そう仰って頂けると。
4突劇金魚
関西学院大学の演劇グループSomethingの99年度生(OG)、サリngROCKを中心に結成。2008年12月に蔵本真見が入団。2012年4月に个寺ギンと山田まさゆきが入団。現在6名で活動中。独特な関西弁のセリフまわしで、他にはない世界をつくる。不器用な登場人物たちのチョット毒あるお話を、派手目の極彩色でイロドる世界観。音で刺激。見た目で刺激。プププと笑って、チクッと刺される新感覚。2008年「愛情マニア」で第15回OMS戯曲賞大賞。2009年「金色カノジョに桃の虫」で第9回AAF戯曲賞優秀賞。2010年夏には渡辺えりユニットえりすぐりに関西女流作家の1人として脚本を提供している。(公式サイトより)
5悪い芝居
2004年12月24日、旗揚げ。メンバー11名。京都を拠点に、東京・大阪と活動の幅を広げつつある若手劇団。ぼんやりとした鬱憤から始まる発想を、刺激的に勢いよく噴出し、それでいてポップに仕立て上げる中毒性の高い作品を発表している。誤解されやすい団体名の由来は、『悪いけど、芝居させてください。の略』と、とても謙遜している。(公式サイトより)

タグ: 一生懸命を描く 今後の攻め方

IT SHAKES HANDSのランチョンマット

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今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
小林 
ありがとうございます。何だろう。(開ける)おおー。
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ランチョンマットです。
小林 
ありがとうございます。ちょっと広めですね。夏は冷たいグラスに水滴がつくのが嫌なので、ありがたいです。

(インタビュー終了)