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今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。最近、益田さんはどんな感じでしょう。全般的に。
益田 
全般的に!2016年は、とても嬉しいことにダンサーとして割とバタバタしていました。色々な踊りに関わることで、充実した一年だったと思います。
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良かったですね。どんな充実でしたか。
益田 
良い意味で考え込む事のない感じでした。次から次へと・・・。充実していると感じられるのは幸せな事ですね。でも、ダンス以外の事はあんまり出来ていないです。映画を見に行くのが好きなんですけど、今年6本くらいしか見れていなくて。今は少し落ち着いたので、KYOTO EXPERIMENTを見に行ったりとかしました。

KIKIKIKIKIKI マーラー交響曲第7番ホ短調「夜の歌」 1

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KIKIKIKIKIKIのマーラー交響曲第7番ホ短調「夜の歌」。とっても良かったです。
益田 
ありがとうございます。
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どこがどう良かったかと言うと、ダンサー全員が格好付ける感じが凄く爽快だったんですよね。まるで見栄を切っているようで、見ていると元気をもらえたというか、私の代わりに啖呵を切ってもらっているような気がしたんです。本当は、みんなあんな風に格好良くなりたいんじゃないかなあ、って思いました。
益田 
「見栄を切る」という感想は意外な感じです。もちろん最初はそんな風に気張ってた部分もあったんですけど(今回、初めて共演する方ばっかりだったので)、稽古が進んでいくうちに、そういう格好付けた部分をどんどん取り払っていったような。もっともっと、いい意味で体裁を忘れていく、言葉は間違っているかもしれませんが、ばかになっていくというか。
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なるほど。
益田 
演出のきたまりさんも、最後までちゃんと向き合ってくださいました。きたまりさんは、何が良くて何が悪かったかきちんと評価してくださるんですね。もっと出せるところを出していったり、逆に削ぎ落としていったり。きたまりさんの作品の作り方は、言葉による創作というより、とにかくやらせるところなんです。体で見せてなんぼというか。でも、だからと言って言葉を置き去りにするんじゃなくて、ちゃんと説明をしてくださって、こちらの意見もちゃんと聞き入れて下さって、特には厳しく・ただ厳しいだけじゃなくて、作品を作る上で大切な事を仰って下さいました。
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だからかな、全員で、「夜の歌」というダンス作品を大切に作り上げたという印象が強くあります。だってあんなに盛りだくさんの作品を、全員で余すところなく織りあげたんですから。後半はドラマチックなダンサー同士の掛け合いがまるでオペラのように連鎖して。
益田 
本当に盛りだくさんでした。ほかのダンサーさんとの掛け合いもありましたが、個人的には自分の中にあるものが自然と出てくるような感覚になっていました。例えば作品の中で、私ではないのですが、1人の演者が他者を傍観している時間があったんですけど、あれも「即興でマーラーの音を聞いて動いて下さい」という指示の時にたまたまその人が傍観している姿が自然で良かった、って。作者の想像からの演出というよりも、一人一人のその時のテンションや姿が作品に反映されていたと思います。
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チラシに「大変だと思いますが今回もマーラーを踊って頂きます」とありましたが、そういう意味だったんですね。振り付けはするけれど、その人にしか出来ない踊りをファーストにしている。
益田 
きたまりさんは、たぶんなのですけど、そのダンサーがどんな動きをするのかをまず見てくださったと思います。ある型にはめ込むという事はしていなかったと思います。
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ええ。益田さちさんにしか出来ない踊りでしたね。
益田 
私は即興が苦手で、ずっとクラシックバレエをやってきた人間なので、最初は試練でした・・・でも、ちゃんと向き合ったら楽しいし、それがちゃんと作品として成立していくのを見ると嬉しかったです。
1KIKIKIKIKIKI マーラー交響曲第7番ホ短調「夜の歌」
公演時期:2016/10/14~18。会場:アトリエ劇研。

高野裕子新作ダンス公演「Sheep creeps the roop」 2

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そのすぐ後に出演された「Sheep creeps the roop」、これももちろん、とても良かったんです。こちらの作品は、心のあり方というか、そんなのを感じました。語弊を承知で申し上げると「女」を凄く強く感じました。きっと、女の中から生まれてきた作品なんじゃないかって。女性の中の女性性だけが持つ、理性とはかけ離れた自然。これが人間をどのように動かしているのか、みたいな。彼女たちがお互いに関係しあう様子も、なんだか群であったり村だったり、お互いの精神に深く関係しあいながら、その中でいつか生まれる悲しさがだけが特権的に持つ美しさが浮上していたと思うんですよね。彼らダンサーが、なんとなく納豆みたいにお互いに引き寄せられあいながら、ばらばらとほどけていって。何となく彼らの成長があったと思うんですよね。女が自然の中でどのように自立をするのか、その様を見たような気がするんです。
益田 
いまちょっと嬉しかったのが、演出の高野さんに「今の動き納豆みたいにして」って言われたんです。そう見えてたんですね。
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納豆当たってましたか。
益田 
お互いの関係性もだし、見えない糸で繋がっている感覚をイメージして動いたところがあったので。でも、女性性というところは、今回踊っていて全然気にしていなかったワードでした。ダンサーも振付の高野さんも全員女性だから、そうなってしまうのかも・・・
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いえ、全然。私が勝手に女性を見出していたんです。お互いに干渉しあったりする時の間合いとかにもね。
益田 
でも、すごく意図と近いなと思ったのは、作品の冒頭は羊水をイメージしてたんですね。まだ自分に形がない時をイメージしていました。空間全体が女性になっていたのかな。
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踊っていて、どうでしたか?
益田 
ひつじ(Sheep creeps the roopって長いのでそう略してるんですけど)を踊る時は、毎回違う旅をしているかのような経験でした。最初のシーンは、真っ暗な中でゆっくりゆっくり立ち上がるんですけど、ある程度時間は決まってるんですけど、毎回する度に全然違う立ち方なんですね。ちょっとだけ決められた事はあるんですけど、言ってみれば自由に動いていいから、自分の中の感覚を探っていくというか。その時に室内が暑かったり寒かったりで全然違う感覚。最初のシーンも、その時の自分の認識(自分の身体が床に触れているな、とか、演出の高野さんの言葉が聞こえたりとか)その時々で全然感覚も違う。
2高野裕子新作ダンス公演「Sheep creeps the roop」
公演時期:2016/10/23。会場:OVAL THEATER。
益田 
「ひつじ」には作中、仮面が小道具として登場したんですが、その存在が私にとっては大きくて。作品の中心になっていたと思っています。
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ああ、出てきていましたね。ちなみにあれは、本人に似せたものなんでしょうか。
益田 
そうなんです。似てましたか?
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はい。とても。
益田 
良かったです!美術は白水麻耶子さんという方が担当してくださって。普段は尾道で作家をされていて、ギャラリーに訪れたお客さんの似顔絵を描かれているんですね。その仮面と向き合う事が、自分と向き合う事だったんですね私にとっては。葛藤していたときの事をたくさん思い出さざるをえなくて。その時の気持ちが、作品にも表れていたと思います。
__ 
辛い気持ち。
益田 
今は薄れてきているけれども、当時は大ごとなわけで、その時の気持ちを純粋に思い出していました。ずっと仮面を付けて踊っていると何故か、付けている事を忘れていくんですよ、不思議な事に。自分のつもりで踊っているけれども、観ている人にとっては私の素顔は見えていない。自分は自分でいると思っているのに。そして、いざ仮面を外して素顔をさらしても、本当はもう一枚仮面を付けているのかもしれないと思ってしまったり。偽りがある自分。仮面というレイヤーを付ける事で気付きました。
__ 
私ももちろん仮面を被って日常を送っているんですが・・・
益田 
そういう方は多いですよね。
__ 
その為に感情を上手く出せなくなってしまう事もあるんですよね。ひどくなると、自分の感情が分からなくなってしまうのかもしれない。
益田 
いつ、その仮面を外したらいいのか、外したくても外せなくなったり。
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洗練されたダンス作品であり、同時に、非常に示唆的な構成の作品でしたね。
益田 
演出の高野さんが丁寧に深く考えて作られた作品でした。出演者としても大切に踊りたいという気持ちでした。
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あえて伺いますが、あの作品をご覧になったお客様にどう感じてもらいたいですか?
益田 
うーん、私の場合はあんまり無いですね。どの作品を見て頂くときも、どう感じて頂いても良いと思っています。こんな作品をします、とお誘いして、来ていただくでも、来れないです、でも、お返事なしでも結構ですし・・・それを誘導しようとするのはちょっと違うのかな、と思います。自分自身が、純粋にこう踊りたいとか、こう踊るべきと思って向き合っていれば良いのかなと。どう感じて欲しいかとまで狙って深読みしてしまったら。例えばここで笑いを取ろうだとか、ある種の反応を期待し演技して、もしそれが違う、と感じたら、失敗だったという気がしてしまうんです。
__ 
舞台に立つ時、あなたにとって観客はどんな存在であってほしいですか?
益田 
来て頂いたからには、楽しんで見て頂きたいです。でも、一番は、偽らないで見てほしいです。
__ 
というと?
益田 
眠たかったら眠って頂いてもいいし(笑う)楽しいだったら楽しい、素直に受け止めて下さったら。難しいなと思っても、素直にそのまま受け止めて頂きたいですし、分からなかったらその事を、出演者と話す機会があったらそれは私にとって凄く嬉しいことですし。何を思われても間違いじゃないと思うんですね。
__ 
ダンスを始めた経緯を伺ってもよろしいでしょうか。
益田 
3歳になる前にクラシックバレエを始めました。母親が、女の子が生まれたらバレエを習わせたいということで。でも無理やり習わせるのは嫌だったみたいで、私が自ら習いたいと言うまで見学に連れられました。2つ上の女の子の友達もずっとバレエをしていて、その子の踊る姿を見て始めました。
__ 
今はどんな理由で踊っていますか?
益田 
松本芽紅見さんというダンサーの踊っている姿を見て。それまでコンテンポラリーダンスはあんまり知らなかったんですが、その方を見て凄い衝撃を受けたんです。凄く素敵な方なんです。私もこの方のように踊りたいと思ったのが大学生の頃です。それからどっぷりハマっていって。大阪でクラスを受け持っていらっしゃったので、受けに行って。コンテンポラリーダンスをしたいと言ったら、京都で毎年開催されているWSを教えて下さって。きたまりさんともそれがキッカケで出会いました。
__ 
どんな衝撃だったんですか。
益田 
・・・正直、その作品の事はあんまり覚えていなくて。でも、愕然としたんですよ。なんで私、これをしていないんだろうって。
__ 
それは凄いですね。
益田 
なんだか分からないけど、これをしなきゃ、って。根拠はないけどそう思ったんですよ。ものすごく憧れを持ったんです。
__ 
その憧れは、いまも尾を引いていますか?
益田 
当初は松本さんの影響を受けて模倣ていたりしたんですが、今はそうでなくって自分の中にコンテンポラリーダンス自体が大切なものとしてしっかりあって。もちろん今もとても憧れていて叶わない目標なんですけど。ずっと追っかけいくよりは、ほかの方の踊りを見たり自分と向き合ったりしたいなあと思っています。
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私は今の益田さんの踊りに興味がありますよ。
益田 
ありがとうございます!
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今は、どんな分野に興味がありますか?
益田 
最近は何か作品を見ていて、一つだけの感想・好きか嫌いか、だけで受け止めていない、色んな感情が混ざり合うんですね。何を見ても興味が持てるようになったんですね。違うジャンルのダンス、例えばHIPHOPとかを見ても面白いなと思うので。それこそダンスじゃなくても興味があります。もっと、見れる人になりたい。
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それはなぜ?
益田 
しっかりと見ている人・捉えている人は、自分の作品にも生かせているなあと思っていて。知らないことは言えないのと同じで、見えていないと作れない。より、色んなものを見たいですね。一つのものも、よりしっかり見る。一つのものにしても結構色々な見方が出来るんですよね、タイトルから受け取る先入観もそうですし。

質問 FOペレイラ宏一朗さんから 益田 さちさんへ

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前回インタビューさせて頂いた、FOペレイラ宏一朗さんからです。「あなたにとって、音楽は何ですか?」
益田 
音楽。最近、ダンスをするのに音楽って良くも悪くも重要だなあと思っていて。パーカッションだけでの演奏を見たことがあるのですけど、音楽の力が強すぎてなんだかショックをうけた覚えがあります。「音楽とは何ですか」という質問には答えきれないですね。
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そうなんですね。
益田 
でも音楽って、BGMとしてどこでも鳴っているし、気付いたら鼻歌で歌っていることもあるし、あと最近、不思議だなと思うんですが、頭の中で再生する音楽が不思議で不思議でしょうがないですよね。
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ああ、音声情報ってかなり正確に再生されますよね。
益田 
そうなんです。最近そういうことが気になりますね。全然、質問の答えになってなくてすみません。でも、音楽っていう、それだけで成立するものに合わせて踊るのって、プレッシャーというか、どんな意味のある事なんだろうと考えちゃったりして。でも、「マーラー」の稽古で即興の時に言われたのは、例えばシンバルの音が鳴った瞬間、その音を取るか、それとも真逆に、無視して静かにしておくことも出来るということです。音楽を聴いているだけでは実現出来ない騒と静が同時にある状況を、ダンスで作り出すことも出来る。そういう広がりというか、可能性があるんだ、って勉強をさせて頂きました。
__ 
いつか、どんなダンスが踊れるようになりたいですか?
益田 
これは、こんな事がありえるかどうか分からないんですけど、自分が100%納得するダンスが踊ってみたいです。見に来ていただいたのに申し訳ありません。でもやっぱり、100%の納得をしたことがないので。でもそうなったら満足してやめちゃうのかもしれません。
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志、というところもありますよね。非常に丁寧に構成された作品であっても、心が整っていなければ、みたいなところもあるかもしれない。

5’00” vol.20参加作品 ソロ「ナナリフ」 3

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来月、ソロを踊られるんですよね。
益田 
さっきもちょっと言いましたが、あんまり先入観を持たずに見て頂きたい作品になると思います!今回、自分自身が純粋に音楽を聴いて楽しめるダンスをしたいと思っています。
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楽しみです。
35’00” vol.20
公演時期:2016/11/13。会場:a.room
__ 
益田さんは今後、どんな感じで攻めていかれますか?ポジティブな意味で。
益田 
あまりゴリゴリと攻める感じではないのですが、今後の目標は、もっと周りをちゃんと見る。そのためにはまず自分の事をちゃんと把握して、いつでもレディな状態でありたいです。自分だけが突っ走るというよりは、周りを見て。
__ 
それは真のレディネスですね。
益田 
ありがとうございます!

和菓子のブローチ

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今日はですね、お話をうかがえたお礼にプレゼントをご用意いたしました。
益田 
ありがとうございます。蔦屋書店、大好き。(開ける)あ、可愛い。美味しそうな・・・
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和菓子ですね。
益田 
こんな可愛らしいものを選ぶんですね。どこに付けようかな。
(インタビュー終了)