松井 周

演出家

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『自慢の息子』サンプル07

__ 
本日はよろしくお願いします。東京・アトリエヘリコプターでのサンプルの公演「自慢の息子」を拝見させていただきました。大変面白かったです。お疲れ様でした。
松井 
ありがとうございます。無事終わりました。
__ 
ご自身としては、どのような公演でしたか?
松井 
やりごたえのある公演でした。以前から、台本と俳優と照明と音響、それぞれの要素で一つの空間を作っていくというスタイルでやっているのですが・・・。
__ 
あ、俳優同様スタッフもシーンの創作に参加するんですね。スタッフが演出をするというわけではなく。
松井 
はい。台本を持った俳優がシーンを作っていくというのではなく、台本も一つの要素で。エチュードではなく、ある空間でどれだけ遊べるかというスタイルです。それが今回、結構うまくいったかなと思っています。
noteサンプル
松井 周(劇作家・演出家・俳優)の主宰する劇団。その作品世界は、価値を反転させることと空間・身体・時間の可能性を探り続けることを特徴としており、虚無的で独特の質感は、中毒性の高いことで知られている。(公式サイトより)
note『自慢の息子』サンプル07
東京公演・・・公演時期:2010/9/15〜21。会場:アトリエヘリコプター。 大阪公演・・・(精華演劇祭2010特別企画)公演時期:2010/09/25〜26。会場:精華小劇場。

五感を頼りに物語を

__ 
アフタートークで、脚立に色々飾り付けたセットを用意するのに、最初に完成型を決めるのではなく制作しながら作っていくと。意識せずに生まれた要素が作品の本質を表現するという。それが、今回の作品にははまっていたように思います。
松井 
たとえば一つの物をそこにおいただけでも、いろんな関連性が出来るんです。そのうちのどれを使うかは台本や、あるいは俳優によって違うかもしれないですけど。偶然で要素を置くのが、面白いんですよね。物語を先に用意するのではなく、物に物語をはっつけるんです。
__ 
まず物をおいて、それがどこから発生した物かどうかは置いといて、物語を張る。非常に発想の広がりを持つスタイルですね。そういう着想というのはどこから。
松井 
僕は俳優なので、やっぱり俳優はある状況を勝手に作り出してそこになりきるんですけど、たとえば思い出の本を読むというシーン。小道具が白紙のノートだったとしても、そこに物語と状況を与えるというのがすごく面白い作業だと思うんですよ。
__ 
白紙のノートを大事な本に変える。
松井 
なら、俳優はどこにその物語の根拠を見いだすのか。僕はまず、もしかしたら手触りとかにおいとか、そういった感覚が記憶の大部分を形成しているんじゃないかと思ったんです。そうした外面にある五感を頼りに物語を探すのが、面白いやり方なんじゃないかと思っているんです。内面に根拠を探すんじゃなくて。それが今回の作品にいい形で反映されたんじゃないかと思いますね。

幸福な交差

__ 
サンプルの公式サイトの松井さんのプロフィールに、「受動的で信用ならない俳優の姿を肯定する」ありますね。
松井 
受動的というともしかしたらネガティブに思われるかもしれません。でも僕はそういう捉え方を疑っています。人間、どうしたって受動的にしか生きられない、ならざるを得ないように思えるんです。しかもそれに自覚出来ない。能動的に生きていると錯覚している、理性でそういう風に思おうとしているんじゃないかと。
__ 
ええ。
松井 
五感を手がかりに人間像を作れば、人間を肯定出来るんじゃないかと思うんですね。
__ 
「自慢の息子」を見ていて感じたのは、たとえばノートに手が触れる瞬間の緊張感がすごいなと。感触が言葉や思想になる時の、境界の一瞬に緊張感があって。スポーツなり格闘なり、そういう、一瞬を争う感覚がありました。
松井 
そうですね。そこは俳優に求めたところだし、俳優もそこをやるのは刺激的だったと思います。その一瞬にこそ、生々しく自分が存在出来ると思っているんです。
__ 
一瞬・・・。動物は何かと相対する一瞬に、言葉じゃなくて感覚と概念だけで考える、が人間は言葉に置き換えてしまう。舞台上に上がった俳優は、動物の属性も持っていますね。
松井 
人間は何かを知覚した時に、そこに言葉を貼り付けてしまう。意味というか。言葉ってどうしても、生まれた瞬間に一つの物語が始まるんですよね。動物的な反射と、言葉の語る物語との交差があれば、それは幸福なんじゃないか、演劇としてやる価値が非常にあるんじゃないかと思っています。

質問 宮川 サキさんから松井 周 さんへ

Q & A
__ 
前回インタビューさせていただいた、sundayの宮川サキさんからご質問を頂いてきております。1.生まれ変わったら何になりたいですか?
松井 
中性的な人になってみたいですね。男性でも女性でもない人と言うのに憧れていてですね。両性具有というのとはちょっと違うんですけど。
__ 
というと。
松井 
男性らしさ・女性らしさから離れてみたいんですよ。
__ 
いしいひさいちの「ののちゃん」で、あのクールな女の先生が「男らしさ・女らしさ」を「あいまいな部分を抱えておく事の出来ない度胸のない人間が飛びつく言葉」だと言い切っているコマがtwitpicで話題になっていました。
松井 
いいですね、それ。やっぱいしいひさいち凄いな。僕はどっちにも引っ張られている状態の人が好きで。身動きとれないけど、安定している。自分が偏見をもっているかもしれないけど。
__ 
2.最後の晩餐。何を注文して誰とどう過ごしたいですか?
松井 
あー・・・僕は納豆が好きなので、納豆とご飯と味噌汁と、あとは家族と過ごしたいですね。
__ 
どんな納豆ですか?
松井 
ひきわりも好きですし、藁納豆も。冷蔵庫に納豆が六個以上納豆がないと不安なんですよね。毎食食べています。
__ 
最後の晩餐として、たとえば、納豆のグレードをあげますか?それともいつも食べている納豆ですか?
松井 
いつも食べているものですね。
__ 
素晴らしい。最後だから高いものを食べる、それもありだと思いますけど。
松井 
死に備えた時、ニュートラルでいられない事自体に恐怖すると思うんですよね。死に怯えるかもしれないのに、ちょっと頑張っちゃったものを用意するのは、それはそれであるかもしれませんが。僕は、最後の日だからといって乱されたくはないですね。

研究所じゃないですけど・・・

__ 
今後、松井さんはどんな感じで攻めていかれますか?
松井 
サンプルとしては、東京でずっとやっていくというよりは国内も回りたいし、国外にも行きたいですね。
__ 
なるほど。
松井 
あとは、研究所じゃないですけど演劇を研究する実験室的ワークショップをやりたいですね。これまで培ってきた、与えられた空間に物を持ってきたりスタッフ総出で空間作りをしたりというやり方を磨いていったりしたいなと思います。

精華演劇祭2010 特別企画サンプル07「自慢の息子」

__ 
大阪公演がもう、今週末ですね。頑張って下さいませ。どんな感じになりますか?
松井 
精華小劇場という、小学校を改装した劇場なんですよ。
__ 
あそこは面白い空間ですよね。
松井 
アトリエヘリコプターでの空間の感じは出せないんですが、そこでしか生まれないものもあるので、楽しみにしています。脚立は向こうにあるものを使うし、変な箱があったらそこに人を潜ませてみたり。
__ 
それに、黒幕をめくると全然違う空間になりますからね。
松井 
思ってもみない方向になるかもしれません。楽しみです。

ViV/シリコンスチーマー

__ 
今日はですね。お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
松井 
いいんですか。ありがとうございます。(開ける)あー、これすごくうちの奥さんが欲しがってたんです。
__ 
やった。
松井 
買おうか買うまいか迷ってたんですよ。ありがとうございます。
__ 
お子さんがいらっしゃるとアフタートークで仰っていたので、離乳食などに使えるかなと思って。

(インタビュー終了)