ルドルフ「授業」note

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今回はルドルフ「授業」(作=ウージェーヌ・イヨネスコ)の演出を務められる、MONOでは俳優、壁ノ花団noteでは作・演出を務める水沼さんにお話を伺います。よろしくお願いします。
水沼 
よろしくお願いします。
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本番が6月10日から13日まで、会場は京都芸術センター、ですね。1ヶ月をきりました。本日の稽古はいかがでしたか?
水沼 
まだまだアイディアを探している段階です、最終的にどうしたいのかが決まっていないので。結論をまだ出さずに芝居の方向性について考えている状態です。
noteMONO
京都を拠点に活動する劇団。軽妙な会話劇から古典劇まで手掛ける。
noteルドルフ「授業」
作・ウージェーヌ・イヨネスコ。演出・水沼健。出演・金替康博[MONO]・筒井加寿子・永野宗典[ヨーロッパ企画]。公演時期:2010年6月10~13日。会場:京都芸術センター。
noteルドルフ
京都で演劇を上演する集団。
note壁ノ花団
MONO所属俳優、水沼健氏が作・演出を務める劇団。独特な手法を用いて豊穣なユーモアの世界を紡ぎだす。

タグ: MONO

もう一つ、別の面白さを

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今回のイヨネスコ「授業」。水沼さんが原作を読まれてどんなご印象を持たれましたか?
水沼 
こういう言い方は不遜かもしれないけど、イヨネスコ作品の中ではよく書けているんじゃないかと。
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あ、まとまっている。
水沼 
イヨネスコの作品はたいてい後半にかけて破綻していくんだけど、「授業」はその度合いが少ないんです。珍しいんじゃないかなと思います。
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今回、一番破綻する教授役は金替さんですね。
水沼 
言ってしまえば、教授役の人の個人技で持っていける作品なんだけれども。それだけじゃなくて三人の俳優が有機的に働けるように作っていきたいです。普通にやってやれない事はないんだけど、もう一つ、別の面白さを見つけたいなあと思って。

タグ: 有機的に関わりあう

何やってんだ、一人遊び

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今回、どんな印象を与える作品にしたいですか?
水沼 
そうですね・・・。なんだろう、これはちょっと的確じゃないかもしれないんですが。色川武大という小説家の作品の一つに彼の子供時代の話があるんです。
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というのは。
水沼 
自分の右手と左手で、力士のような形を作って、授業中ずっと勝負させてるんです。一人で遊んでる。そんな印象にしたいなと思います。
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うーん。
水沼 
それは、どう説明したらいいのかな。まあ、指を使って力士のようにさせる、いじらしいバカバカしさみたいな。そういうのが舞台化されたらいいのかな。
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教室で、みんながいようが授業中だろうが関係なく一人遊びなんですね。
水沼 
そうそう。家でもやってる。星取り表までつけていって、力士も一人一人作るんですよ。幕内力士、十両力士、莫大な数の力士が。しかも右手と左手だから、勝負の内容も自分で決められるんです。何やってんだ、みたいな。
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そのお話のエピソードはいじらしいと思うのですが、私はその話を聞いてぞくっとしました。
水沼 
ある種常識的なところではなく、自分で勝手に作り上げたルールの中で、どんどん大変な労苦を背負うようになるってのは面白いなと思って。醒めたら終わり、みたいな。そんな作品は毎回目指していますね。

蛸と戦う

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その一人相撲の子。何故そんな遊びをしているんでしょうね。
水沼 
いや、理由はないと思いますよ。自転車みたいなもんで、最初に動かしたら転ばずに進んでいく。最初の理由なり必然性なりはあってもいいけど、僕はそこには興味がなくて。動かしてしまったものをどうキープするのか。運動自体が自己目的化していく様の面白さですね。
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実は今日、探偵ナイトスクープの昔の回を見ていたんですよ。タコに襲われたい女性の依頼で、その人は夢でタコに殺された夢を見たのかなんだかして、ずっとタコに勝つ方法を考えていたそうなんです。
水沼 
ほう。
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探偵に連れられて、その間中ずっと意味不明な自信でタコとの戦いに思いを馳せている。その様子が面白く、何だか怖かったんです。そして、格好良かった。きっとこの人はタコと戦いたいのではなく、タコに勝たなくてはならなかったんだろうなと。最低でも、自分の考えた方法を試さなくてはならなかったんだろうなと。
水沼 
うん。
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タコに取り憑かれたんじゃないかとスタジオでは言われていましたが、私にはそんな彼女がタコと戦う為に生きている者に見えたんです。
水沼 
たぶん、この「授業」も不条理劇というジャンルなんだけど、不条理劇作品に共通する必然性のなさ、なんですよ。それまでの演劇というのは状況をしつらえてそこに人物を放り込んでいたのが、不条理劇は状況を作らずに人物だけを登場させたんですよね。そのタコの話も、必然性を問われない。何故という問いを拒絶するような。
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こだわりなのでしょうか?
水沼 
そこまで自覚的なものじゃないと思うんですよ。問えない質問があるという状況が私たちの世の中だ、生きている事に理由なんかない、と提示したのが不条理劇なんじゃないかなと。タコと戦わないといけないのは何故か、そんなことは問えないんですよね。
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世界にタコはいて、そいつと戦わなくてはならない。

タグ: 外の世界と繋がる

質問 金替 康博さんから 水沼 健さんへ

Q & A
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さて、前回インタビューさせていただいた金替さんからのご質問です。「これは旨いというようなB級グルメはありますか」?
水沼 
僕はグルメとはほど遠いからねえ・・・。毎週木曜日は近畿大学に泊まっているんだけど、そこの近くの百均のサラミがうまいかな。
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百円で一袋という感じですか。いいですね。ちなみに、ご出身地での名物ってありますか?
水沼 
うまいもの。鯛飯かな。あと、小学一年くらいの頃に友達のお姉さんが作ってくれた山菜料理ですね。その子の家の周りで取れた蕨やゼンマイの卵とじがおいしかったですね。
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家の周りで取れたものですか。
水沼 
大人から与えられたものではなくて、自分たちで取ってきたものを、小学3年くらいのお姉さんが作ってくれた。その辺の状況があったからあんなに美味しかったんだろうな。

トランクはなぜ吊られたのか

水沼 
逆に聞きたいんですが、僕の作品を見て、どういう印象でした?
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「象を使う」noteです。アトリエ劇研に行くと、いつも「アルカリ」のセットを思い出します。舞台上の大量のトランクと、天井に一つだけつり下げられたトランク。あれがずっと引っかかっているんです。何かがそこから出てくるわけでもなく、照明も当たらないし言及もされない。後日、出演者の方に聞いても、あそこにセットされていた明確な理由は返ってこない。水沼さんの作品を見る度に、あのトランクのような、飄々しながら確固としてあり続ける存在を思うんですよ。
水沼 
(笑う)
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こっちが認識したらずっとそこに残り続けて、こちらを見返してくるんですよね。そういう奇妙なものを見たくなったときに、丁度よくやっているのが水沼さんの作品なんです。もちろん、演技のあれこれですとか、そういうのはもちろん見事ですし。
水沼 
まあ、そういう意味では、あのトランクもあまり理由はないですね(笑う)。一つの空間を遊び尽くしたいというのが、自分が作っている時の目的なんだと思います。トランク、上にもあっていいんじゃない、と。そういうのはこれからも続けていきたい。
note「象を使う」
公演時期:2005年9月17~25日。会場:京都芸術センター フリースペース。
note壁ノ花団第四回公演『アルカリ』
十三夜会奨励賞受賞。演出・水沼健。京都・東京にて公演。初演:2008年11月20~24日(京都)。

タグ: 奇妙さへの礼賛 会場を使いこなす

洛北の銘酒 御陰

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今日はですね、水沼さんにお話を伺えたお礼にプレゼントがあります。どうぞ。
水沼 
(開ける)御陰。ありがとう。京都のお酒?
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はい。左京図書館の近くで、量り売りをやっている酒屋があるんですが、そこのお酒です。
水沼 
どうもすみません。かえって悪いね。
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いえいえ。ほんのりとですが、バナナの香りがするお酒ですよ。

タグ: プレゼント(アルコール系)

(インタビュー終了)