劇団ショウダウン「パイドパイパー」 2

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今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、ナツメさんはどんな感じでしょうか。
ナツメ 
最近はですね、次回公演「パイドパイパー」の台本に追われています。もう終わりが見えていて、大団円になりつつあるんですけど。最初は勢いに任せて書いていたんですが、最後の方で伏線がちゃんと回収されているかも見ながら、という作業ですね。止め時が分からない部分でもあります。あっさり終わらせてももったいないし、かと言って長すぎても退屈になるので。同時に、稽古も正念場を迎えつつあります。
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劇団ショウダウン「パイドパイパー」。この作品は、ハーメルンの笛吹き男の伝記を元にした作品なんですね。
ナツメ 
そうですね。この事件については実際に結論が出ている訳ではないのですが、そこに着目して当時の時代状況も元に荒唐無稽な作品に仕上げたという形ですね。
1劇団ショウダウン
作演出ナツメクニオを中心し、2001年5月に京都にて旗揚げ。既成の劇団という枠にとらわれず、いろいろな物を貪欲に吸収しながら、「頭のいらないエンターティメント」をテーマに大衆娯楽の王道を追及し表現しています。特に近年のナツメクニオが取り組む実在の歴史をもとに したシリーズが人気。今までに切り裂きジャック、乗組員が忽然と消えたマリーセレスト号の事件など現代も様々な憶測が飛び交う物語を作家ナツメクニオが大胆解釈した歴史エンターテインメント として上演、好評を博しています。(公式サイトより)
2『パイドパイパー』

時は13世紀、西暦1284年
とあるヨーロッパの街で笛を吹いた一人の笛吹芸人。
子供たちを集め、どこかへ消えた伝説のトリックスター。
目的も、正体もわからぬまま、物語だけが残され、
そしてそのミッシングリンクは千年後の未来に甦る。
歴史の陰にその姿を見せる謎の笛吹。
戦争の中で、平和の中で、王宮で、死の間際で、
そして生誕の傍らで何かを探し求める彼ら、彼女らは、
いつしかこう呼ばれていた、
笛を吹く者、『パイドパイパー』と。

さらに東京公演のみにて
パイドパイパーの舞台裏で進行する
もうひとつの奇跡の物語を
林遊眠の一人芝居でスピンオフ!!

林遊眠一人芝居、
最新作『千年のセピラ』 こちらもお見逃しなく。

大阪公演
2015年8月1日(土)~2日(日) 
HEP HALL
※『千年のセピラ』は東京公演のみの上演です。

東京公演 (東京公演のみ2作品を上演!)
2015年9月4日~6日
あうるすぽっと

これは、ハーメルンの事件の謎から生まれる・・・

ナツメ 
ハーメルンの笛吹き男。ドイツに伝わる、実際に起こったとされる事件。街に巣食う大量のネズミが笛吹き芸人によって退治されて、けれど街の人が報酬を支払わなかったために、笛吹き男がその街の子供を全員連れ去ってしまったというお話ですね。「パイドパイパー」の前半ではその謎が見所になります。
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そもそも、これは史実かどうか定かではないんですよね。
ナツメ 
そうですね、当時の文献が今では残っていないという事情もあって。ただ、実際に子供が行方不明になった事件はあったそうです。大人もいなくなっただとか、全員少年十字軍に徴収されただとか、ペストがあっただとか。ただ、百人以上の人がいなくなった事件は確かにあったそうです。
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なるほど。
ナツメ 
ハーメルンの事件は1284年なんですが、1260年にハーメルンの北の方で紛争があったそうなんです。そこでハーメルンの警備隊の人たちがそこで全滅してしまって、それが人さらい事件に繋がったんじゃないか、みたいなウワサもあるんですね。当時のイスラムの国々との関係だとか。詳しいお客さんにはニヤリと笑って頂けるようになっていると思います。
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どんな公演になりそうでしょうか。
ナツメ 
あえて言えば、いつも通りだと思います。出演者と場所が違うだけで、そこに掛ける労力は一緒なんですね。一人芝居も同じですね。とにかく、2時間の枠の中でご覧頂いたお客さんが、驚いたり面白いと思っていただいたらそれで成功なので。
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ありがとうございます。現在、稽古はどんな感じでしょう。
ナツメ 
台本を書きながら、全体のシーンを中心に作っていっています。今回、21人もキャストがいるんですが、どの方もそれぞれ面白いし、武器を持っている人だと思うんです。どんな人がいるのか、お客さんに見に来てもらえたらなと。

生々しい殺陣

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『パイドパイパー』の見所を教えて下さい。
ナツメ 
殺陣が見所ではあるんですけど、物語がカスカスならしょうが無いですよね。一人の騎士が主役の物語なんですけど、彼が何に葛藤し、どう答えを出すのかを見てもらえたら。演出としては、やはり映画みたいなビジュアルを構築するというのが作る側としての楽しみなんですよね。それがどこまでリアルを追求出来るのか。もちろんリアルにはなれないんですけどね。日本人の僕らが中世ヨーロッパの人々を演じるというのは難しい。どこまで受け容れてもらえるよう追求出来るのかな、と。これは見所というよりは僕らのやり甲斐ですね。
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今回は殺陣もあるんですよね。楽しみです。
ナツメ 
実は今回、カンフー系の殺陣は出ないんです。あくまで戦士同士の剣の打ち合いなので、素手というのはないんですよね。一撃で決める、という感じです。あとやっぱり、中世ヨーロッパを舞台としたような映画で凝った殺陣をされても冷めてしまうんですよ。もっとこう、肉弾戦でやってくれよ、と。今回はそれに近い事をやる予定です。
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つばぜり合いとかじゃなく、剣を斬り抜いたり?
ナツメ 
剣を華麗にかわすとかもあるんですけど、こけつまろびつ逃げ惑うとか、そういう生々しい殺陣、ですね。

「マナナン・マクリルの羅針盤」 3

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「マナナン・マクリルの羅針盤」、去年の池袋演劇祭での大賞を受賞されたんですよね。お疲れ様でした。私はCM大会での映像しか拝見出来ていないのですが、とても面白そうでした。林遊眠さん、凄いですよね。視線や身体のふるえなどの細かい表現で、とてもスケールの大きな世界を描き出す、そんな高い実力を感じました。見ていて気持ちよかったです。あれが2時間続くと伺っていますが、一度拝見したいですね。
ナツメ 
自信作です。あれはSP火曜劇場でも流れると思います。是非一度。
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さて、最近テーマにしているのが「役者は舞台上でどんな意識状態であるべきなのか」という事なんです。無意識状態であるべきなのか、自分の役者の状態をずっと管理しているべきなのか。トリップしているのかメディテーション状態なのか。まず伺いますが、林遊眠さんは、あの芝居をしているとき、どんな状況になっているんでしょうか。
ナツメ 
たまに、乗り移っているのかなと思う瞬間はあるんですが、僕は毎回「酔いながら醒めて」いてほしいと言い続けていて。トランスしている状態だとしても、トランスしている演技をしてください、と。かといって冷めてしまうと自分の中での回転数が上がらないので、乗るべきところはノッてください。彼女はそれを一人芝居の2時間の枠の中でバランス良く使い分けていると思います。それがズレると上手く行かなくなる。どちらかに傾くという事はないんじゃないですかね。ノリっぱなしだと、「私酔ってます」みたいになってしまう。冷めっぱなしだと頭良さそうな事をしているだけのように見える。急なミスに対応出来て、でも熱い魅力のある人。
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林さんはその二つを使い分けている。
ナツメ 
そのスイッチが分からないぐらい素早く、そしてたくさん切り替わるんですよね。役者が2時間ずっと集中し続けるというのは出来ないんですよね、オフの時間を作らないといけない。彼女の場合はその時間を凄く上手に取る事が出来る。
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オフの部分。
ナツメ 
そうですね、彼女の編み出した方法ではあえて給水時間を作るんです。一旦ハケて、あからさまにペットボトルを持ってきて役になりながら飲むんです。空調の温度を聞いたり、腰をストレッチした方がいいぞみたいな時間を作ったり。グダグダなんですけどね。あと、舞台を走り回る演技の時。Uターンして反対の方向の切り返す時に一瞬タメを作るんですけど、そのタメが彼女にとってはオフなんです。
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素晴らしい。では、林遊眠さんを見たことの無い人に一言お願いします。
ナツメ 
見る・見ないは個人の自由だと思いますけど、見なきゃ損するぞと。彼女も発展途上ではあるんです、彼女より演技が上手かったり可愛い女優もいっぱいいるんですけど、彼女より凄いい女優は僕は見たことないんです。
3「マナナン・マクリルの羅針盤」
第26回池袋演劇祭 大賞受賞作品。公演時期:2014/9/5~7。会場:シアター風姿花伝。

質問 田辺 剛さんから ナツメクニオさんへ

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前々回インタビューさせていただきました、下鴨車窓の田辺さんから質問です。「京都で公演しないんですか?」
ナツメ 
うーん、分からないですね。一度凱旋はしてみたいんですけどそれなりの説得力を持たないといけないですし。話題性をもっと持ってからだと思います。

質問 三木 万侑加さんから ナツメクニオさんへ

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前回インタビューさせていただきました、三木万侑加さんから質問です。「何のために表現しているんですか?」
ナツメ 
考えた事もないですね。あるのかな?書いて上演した芝居がお客さんに喜ばれたのでやり続けています。何のために・・・それはやっぱり、自分のためですかね。皆そうだと思うんですけど。
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ええ。
ナツメ 
書きたいものを書いて、自分のやりたいようにやった作品が、観に来たお客さんに褒められたりまた観に来るよと言われたのが繋がって今にこれたんです。煙草と一緒で、一番最初にしんどかったらやらないと思うんですよ。もちろんお客さんを喜ばせるのが大前提なんですけど、受け入れられるのは自分の感性が間違っていないという事ですから、それを証明する為という感じですかね。最初からこういう考えは変わっていないですね。極端な話、面白くなくなったら辞めてしまえるものでいいと思うんですよ。でもその時がなるべく遅くなるように、自分の感性を磨き続けていきたいです。

突きつけたいことがある

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いつか、こんな演劇を作りたいというのはありますか?
ナツメ 
物凄い長尺の大作を作ってみたいです。3時間の作品を作った事はあるんですが、6時間の作品を作りたいですね。前編後編と分けての。やってみたいです。それをやらせてもらえるだけの資金力があったら。
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300億あったら?
ナツメ 
それぐらいあったら小屋を買いますね、そこで稽古出来るし公演も出来る。あとは世界中に取材で旅行に行きたいです。
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今後、どんな感じで攻めていかれますか?
ナツメ 
そうですね、謙虚を装いつつ、目の上のたんこぶをぶっ潰していく感じ(笑う)。結局劇団を続けるって、一つの信仰を保ち続ける事だと思うんですよ。自分達が面白いと思うものを作っていくだけだと思うんですよ。もちろん作品作り以外の労力もあるんですけど、核は作品だと思うんです。どれだけお客さんが入ってもつまらなかったら・・・。僕はやっぱり自分の信じる面白さをもって脚本を書き続けていきたいです。突きつけたいですね。見てくださいとかじゃなく、見ろよ、みたいな。
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はい。
ナツメ 
ビラに関してもそういう姿勢で、お芝居のビラと勝負してないんです。お芝居のビラって興味をそそらないと思うんですよね。映画館においても遜色ないビラを作って欲しいですね。結局、お芝居より映画の方が市民権を得ているじゃないですか。有名な映画俳優がスクリーンで1800円で見れるのと、全然知らない役者さんが出る芝居を3000円で見るというのは、相当な自信と戦略が無ければ難しいじゃないですか。お芝居が何故3000円も取れるかというと、製作費用という意味もありますが、自分達で作った面白さは3000円です、と宣言する訳じゃないですか。だとしたら勝負すべきは他の芝居ではなく、映画の方ですよね。こちらは数倍の感動を与えますよというのを突き付け続けないといけないと思うんです。目標としては、映画館にビラが並んで欲しいですよね。芝居のビラとして。夢ですよね。

グラス

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今日はですね、お話のお礼にプレゼントを持ってまいりました。大したものではないですが。
ナツメ 
ありがとうございます。(開ける)おお・・・いいですね。ちょうどグラスが無かったので。嬉しいです。

(インタビュー終了)