最近のこと

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今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。最近、大原さんはどんな感じでしょうか。
大原 
最近は本当に、舞台の仕事ばっかりで。ちょっと無理言って演劇の仕事ばかりさせてもらっていました。結果として色々と気づくことがあって。意外とまだまだやれることがあるな、とか、もっとこうすることができたらいいのに、とか。小劇場界だけじゃなく、演劇界・映画界ひっくるめて演者がやりやすくなるための諸々の課題にぶつかることができました。ある演出家からは「君のやり方はキチガイか」と言われました。今年は本当に面白かったです
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素晴らしい。キチガイは褒め言葉みたいなところありますよね。
大原 
一緒にやりたいと思う人たちにもそういう部分はあるから、変な話ですけど、励みにはなりますよね。
1DULL-COLORED POP
2005年11月、明治大学文学部演劇学専攻および明治大学脱法サークル「騒動舎」を母体に、『東京都第七ゴミ処理施設場ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』で旗揚げ。主宰・谷賢一を中心にゆるやかにメンバーを入れ替えながら活動する演劇ユニット。重厚な悲劇からくだらないコメディ、ロック・ミュージカルや翻訳劇まで手掛け、演劇の可能性を隅々まで追求する欲張り劇団。人間性の最も暗くグロテスクな一面を、物語性に立脚したあくまでポップな言葉とスタイルで描きたい。(公式サイトより)

悪い芝居リインカーネーション「春よ行くな、」 2

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悪い芝居リインカーネーション「春よ行くな、」もうすぐですね。
大原 
そうですね。
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私は一番最初のステージを拝見します。
大原 
是非是非、楽しみにしていただいて結構です。僕も初演を拝見していて(実はそれが山崎彬君の作品を見た最初のものでした)、彼はすごく自分自身の作品を作る人だなあと思いました。再演に選ばれたのも分かる気がします。山崎くん自身も、劇団初の再演として「春よ行くな」が選ばれるのは自然だったみたいで。彬くんにとってもひとしおの印象が残っている作品なんだなあ、と。
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個人的にも存在感のある作品です。恋愛の不条理感そのものに向き合わせてくれるというか・・・私にとっては大事故のような出会いだったんですよ。
大原 
僕は外からも中からも見ているから思うんですけど、ドラマチックな事が起こる作品ではないじゃないですか。大きな出来事があってからの話。じんわりじんわり、奥の方をなでられていくような手触りみたいなのはより感じます。これがこの作品の肝なんだろうなと思う。この間彬くんも言ってたけど、言葉にならないけれども言葉にしようとしている何か、みたいな奴が立ち上がってくることを期待していて、お客さんにも「何だこれ」と思ってもらえるようなことを期待しています。
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この戯曲、人間が葛藤に直面してどうこうという話ではなく、起こってしまった過去にひたすら傷付けられる。それをもう一度見るというのは、どういう体験なんだろう。
大原 
キャストが変わって、若干の書き直しもあって。登場人物全員コミュニケーションが上手じゃないんですけど、そんな中でもみんな幸せになろうとしてるじゃないですか。賛否あれど。そこがもどかしくも愛おしいところですよね。絶望してたらもっと何も起きないし、もぞもぞしないで生きていけるんだろうなあ、むしろ生きていけるんだろうなあ、全員まだ幸せになりたいという希望を持てているから苦しくて、愛せちゃうんじゃないかなあと。
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見ている側はたまったものじゃないですけどね。
大原 
僕自身、今回の「春よ行くな、」の反応が読めなくて。自分としても見に来てほしい作品です。スカッとする芝居じゃないし、心がキュウッとするんですけどそれは希望の裏返しだから。観ている人も絶望していたら多分ムズムズしない。それは自分を何とかしたいという心の証なのかもしれない。是非見に来て、ムズムズしてほしいですね。
2悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』
【作・演出】山崎彬 【美術】杉原邦生(KUNIO) 【音楽】岡田太郎

純愛と偏愛のあいだにある溝に挟まって身動きが取れなくなった人間たちは
舞台一面に広がる空っぽの客席から睨む存在しない無数の目に怯え
やがて劇場から逃げ出した

2013年に散った悪い芝居vol.15『春よ行くな』が人知れず再び咲き誇る

愛や情や正義や希望に姿を変える前の
言葉や行為や花束や歌や演劇に姿をかえる前の
「なにか」

上演してしまった瞬間に消えてしまうその「なにか」を『春よ行くな、』と呼んでみたい

過去を今だと感じ今を未来だと信じられないすべての人たちに送る異情演劇です

春よ行くな と叫ぶときには もう春は 行ってしまっている

出演
奥田ワレタ (クロムモリブデン)
大原研二 (DULL-COLORED POP)
永嶋柊吾
片桐はづき
北岸淳生 (悪い芝居)
斎藤加奈子 (ろりえ)
植田順平 (悪い芝居)
山崎彬 (悪い芝居)

京都公演
終了しました。
2016年9月22日(木・祝)~26日(月)
京都芸術センター 講堂 地図
東京公演
2016年10月4日(火)~10日(月・祝)
テアトルBONBON 地図

4日(火) 19:00 [A]
5日(水) 19:00 [B]
6日(木) 19:00
7日(金) 19:00
8日(土) 13:00/18:00
9日(日) 13:00/18:00
10日(月・祝) 14:00
※受付開始は開演の1時間前。開場は30分前

[A][B]]はアフタートークあり
[A] … 谷賢一 (DULL-COLORED POP) さん
[B] … 奥山雄太 (ろりえ) さん

一般:3900円
学生:2900円 ※要学生証
※全席指定。税込。当日は各500円増。

ずらされている言葉

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意気込みを伺えれば。
大原 
今回は珍しい役柄なんです。いつもはもっと派手な演技が多い役所なんですけど(現代劇なのにギリシャ悲劇のような)、今回は本当に生々しいシーンも多いんですけど、とっても自然体に近い演技体だと思います。言葉に出来ない何かが体に乗っている状態。普段とはちょっと違う状態で演技してるなあと思います。それが段々と楽しくなってきてますね。
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最初は違和感がありましたか。
大原 
普段自分が重要だと思っているのは言葉なんですけど、それにノイズになってしまうような身体の動きが多かったり、あとは「たどり着けない言葉を出してほしい」と演出されたり。どういうことかというと、しゃべっている本人にもそこまで確信が持てない状態、という・・・それは、大丈夫なのか?と最初は思っていました。本当にもぞもぞせざるを得ない状態って。でもそれが今は楽しいですね。お客さんにどう届くのか、反応が待ち遠しい。今では、多少なりとも、行きたいところに手が掛かっている状態です。
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もぞもぞする・・・。ですよね。あーと・・・私、時々たまに、左中指の内部の筋の、掻けない部分が痒くなるんですよ。それは筋の内部の連動の問題だけじゃなくて、人体っていろんな機序を内部に持ちながら外界内界の様々な仕組みにさらされながら揺らいで、その中で適応するために日々色々なシステムを改良したり編み出したり保守したりするじゃないですか。生殖もある。ただ、この痒みはいやにハッキリすぎていて、何らかの過ちでも犯さない限りここまでにはならない。
大原 
一つのバグのような痒み?
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一つには、変な力の掛け方をしているからなんじゃないかと思っています。それには絶対に生き方が影響していて、だから、リラックスは人間の獲得した高度で悲しい身体制御だと思う。だって獣は死んでも出来ませんからね。
大原 
なるほどね。
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「春よ行くな、」の「むずむず」は、身体がリラックスしているときに突然襲う反響のようなものなのではないかと思う。
大原 
むしろ、リラックスした状態、構えていない状態から生まれているそれは、とても本人性を反映しているという事ですね。それは言い得て妙かもしれませんね。人間って結局、伝えたいからこそ言葉を選ぶし探している。捕まえられる人はともかく、捕まえられない人は、何もない状態でいるしかない。その場の反応に寄りながらしゃべるしかない。やっぱりそこにはその人だけの生きざまが出ちゃうんでしょうね。
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そうですね。
大原 
掴まれる言葉もないし、揺れながらしゃべるしかない。僕自身は多分真逆なんですよ。捕まえてから喋りたい、それまでは喋りたくないかな、誤解は言葉の産物だから、簡単に出てくる言葉じゃなく、せめて自分が捕まえた言葉で喋りたいですね。「春よ行くな、」の登場人物は、僕からすればものすごくチャレンジャーで、ある意味そちらの方が自然なんでしょうね。

質問 西村 麻生さんから 大原 研二さんへ

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前回インタビューさせていただいた、VOGAの西村麻生さんからの質問です。「落ち着く場所を教えてください」。ちなみに西村さんは美術館、だそうです。
大原 
最近は、意外と、自分の家が好きです。特に自分から落ち着くようにした訳じゃないんですよ。家の中のものをほとんど全て居抜きみたいな感じでもらい受けたんですけど、だから全然手を付けてないので生活感があまりないんですが、キレイに維持されていて。ぼーっとするにも考えごとをするにもちょうどいい。最初に今の家に会った時から、ここをきちんと自分の家にしようと思ったから、かな。「帰ってきた」というスイッチの切り替えが出来ていますね。

矛盾、と、届かないところ

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最近、俳優として考えているテーマは何ですか?
大原 
さっきもちょっと言ったんですけど、言葉の使い方というか、その言葉を選んだ、使わざるを得なかった背景というのがあるんですよね。いい俳優さんって、その言葉に反映されている価値観や背景が聞こえてきて、何でもないセリフから聞こえてきて感動する。その積み重ねが、人物そのものを紡いでいて、人間だから太刀打ち出来ない矛盾とか葛藤、ただ喋っているだけでそこに届くような事があるんですね。その瞬間が好きんですよね。僕はどれだけ、その人物の価値観に裏付けられた言葉に近づけられるんだろう。一語一語に人物が乗り切らないこともあって、その乗り切らないという事自体もまた人物の性だったりする。それを紡いでいけたら、僕の好きな瞬間が起こせるんじゃないかな。という事は考えています。この間長塚圭史さん演出の「浮標」の再々演を見たんですけど、言葉で伝わってきたものが、再演とは劇的に受け取るものが違ったんです。楽屋に挨拶に行かせてもらったんですが、ちょっと熱っぽくなってしまってました。感じ取れるものの量が劇的に変わっていて。再演もおもしろかったけど、再々演は俄然面白い。作品が育つ、という事があるんですね。芝居が深まるって、こういう事なんだなあとそのとき思ったんです。
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役者は喋れますからね。
大原 
そう、ダンサーと違って、役者は真っ正面からセリフを喋る、というのが大前提というところがあります。そうなると、言葉からは逃げられない。とはいえ、セリフを言う機械であってはならないんですよね。そんな中の「春よ行くな、」ですね。
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俳優って、テクニックを用いて、価値観そのものを問い直す仕事なんじゃないかと思っているところがあります。言葉を通して価値観を作ったり壊したり、それはもちろん人生で誰もがしている事で、しかしそれを「上演」するのは役者だけですよね。
大原 
お芝居という大仰な言い方をしなくても、誰しもが演じている。でも、セリフを言うという行動は、普段の自分たちに出来るかというと別で。目の前にある「コーヒー」を指した時でさえ、各々にとって味も受け取り方も違う。それぞれが背負っている価値観はそれぞれに違う、ということがはっきりしたときが面白い。役者はそこを自覚しながら、無意識でいることにしなければならないというところがあるので。そこで結局、テクニックが必要とされるのかなと思います。

心の積み上げ

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最近、児童心理学の本を読んで影響されまくってるんですけど・・・
大原 
ははは。
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心は幼児から積み重なるようなモデルで成長していくらしいんですね。それは人類共通で。そこに精神医学は成立していると思うんです、そして、俳優も演技をするときに、心の機序を無視して役作りをすることは出来ないし、また一方では、それを無視した方がいい場合もある。
大原 
そういう部分でアプローチする人もいるし、離れようとする人もいる。どんなやり方をするにしても、役作りするうえで意識する意味はあると思います。見ている人にも同じように心がありますからね。
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役作りという、ありふれていながら非常に謎めいた作業。もしかしたら、そのあたりもお客さんが楽しめるようになったら、きっともっと面白いと思うんですよ。
大原 
それに触れられるようになったら、どのぐらい反応があると思われますか?実は自分も自主稽古を開催していて、誰でも来て良い、僕が好きな役者さんと試したいことをするだけの時間なんですけど・・・役者が、どんな事を考えているか。お芝居をあんまり見ないけれども、潜在的に興味のある人がきっといて、そんな人に見てもらいたいと思うんですけど、中々来てもらえず(笑う)果たして、どれぐらい面白がって貰えるのかな、と。
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役者のテクニックって、見えにくいし数値化出来ないし、でも実感は強いし確固としてそこにあるし、つまり主観そのものだから。でもそこに付き合うと非常に新鮮な知的満足があるんです。文学的な。
大原 
だから、エンタメ的な楽しみ方ではないですね。
__ 
そうですね、でも、知的満足という言葉だけでは括れない何かがある気がしています。というのは、最初に大原さんが仰っていた事が引っかかっていて、「役者が演じている人物のセリフが、その人物が本当に言いたい事や価値観に届いていない瞬間」。私はその瞬間は非常に面白いなと思っていて。幼児の泣き声が聞く人の心を締め付けるのと同じで、あれは「悪いお母さん」への恨みだったり、表現する事の出来ないムズムズだったり、そういうもどかしいモゾモゾするような演技体なんですよね。もしそこを演劇ベースで取り扱うことがあったら、これは興味を引くと思います。
大原 
いつも観て下さるお客さんがそういう楽しみ方をしてくださるのはやっぱり、なんとなく分かります。演技の深いところまでマニアックに追求する人を目の当たりにすることで、そういう知的な満足があって、お芝居が面白いという認識がもっと深まったりしないかなあと期待しています。もしそれが広まるんだったらもっと色々なところでやりたいなあと思っています。でも何せ、求める人がいないんだったら難しいですからね。
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もしこれを読んでいて、興味がある人がいたらぜひ。
大原 
是非。本当に、そういう瞬間を楽しめる時間を用意します。

これから

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お芝居を始めた頃に衝撃を受けた作品は?
大原 
惑星ピスタチオの「破壊ランナー」です。当時知り合った人たちに話を聞いて、こんな演劇もあるんだなあと。
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いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
大原 
あはは、夢みたいな理想でいいなら。舞台の上で、何か知らないけど期待してしまう人。何でもないんですけど注目してしまうような役者。どんな空間にするのか、何をするのか、そこにいるだけで期待してしまうような役者さんが素敵だと思います。夢です。
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それはそうなっていると思いますけどね。
大原 
ははは。
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今後、どんな感じで攻めていかれますか?
大原 
結局、手強い人たちとストレートプレイをやりたいと思ってるんですね。ここ数年は舞台を詰め込んだんですけど、それも善し悪しで、色んな機会を逃しちゃったりしたので。少し、とんがった会話劇を、上の人たちとやれるように首を突っ込んでいける時間をかけようと思っています。その代わりに、もうちょっと映像の仕事を作る機会を作りつつ、むしろ舞台にも出る機会も・・・って、こんな事言うとお前映像の仕事やる気ないだろと思われそうですけど(笑う)

箸置き

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今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
大原 
え、そんなのがあるんですか。
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大したものではありませんが、どうぞ。
大原 
ありがとうございます。(開ける)いいじゃないですか。なにこれ可愛い。
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箸置きですね。
大原 
いいですねこの平和な感じ。
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使っていただければ幸いです。
大原 
ありがとうございます。是非使います。
(インタビュー終了)