「わたしじゃない」

__ 
6月の「わたしじゃない」について少し伺えればと思います。この作品は、以前アトリエ劇研で上演した記憶がありますが。
伊藤 
そうなんです。前回の出演者である増田美佳さん、三田村啓示さん、私に加え、今回はさらにもう1人加わるんじゃないかという話をしています。東京でも上演する予定です。出演者の方からもこういうことをやりたいっていうアイデアが出てきたりしてるので、新しいことにもチャレンジしたりするんじゃないだろうかと思っています。
__ 
カメラオブスキュラを使った演出ですよね。室内の、映像灯ではない明りを用いた映像という事で、その場の空気感が如実に反映されるんですよね。それがすごく面白いなと思っていて。
伊藤 
5月後半ぐらいから稽古が始まる予定です。東京で上演して、京都に戻ってくる予定です。木村君が演出と、テキストの翻訳をするんです。出版されている「わたしじゃない」の翻訳は女性の言葉で書かれてるんですが、三田村さんが演じることを想定して、フラットな言葉に置き換えるように翻訳し直してくれてました。
__ 
あの独特な空気感がもう一度見れるのが楽しみです。

軟着陸

__ 
一つの物語演劇ではなく、ピースで構成されたパフォーマンス作品を構成演出するにおいて、複数のパフォーマーの間で「これがいいよね」という同意が同時に出来たということに、何か重要なものを感じるんですよ。例えばそれは「勢い」というものではないか。
伊藤 
勢い。
__ 
ある1人の演出家によるイメージがメンバー全員から同意された時、作品そのものにエネルギーが宿り、傑作として立ち上がるという事がやはりあると思うんですよ。でも、gallopの「石飛び込む、」の場合はトップダウンの演出家が1人いたわけではなく、しかし4人が「これだよね」という合意に着地したということに、強く惹きつけられるものがあります。
伊藤 
私もそう思う、これだよね、となっていったのはすごく変な時間だったなと思ってます。なんであんなにスムーズだったんだろう。
__ 
例えばメンバーのうち1人が、自分のやり方やイメージに強いこだわりを持っていたとしても、それがうまく共有されなければ動かないじゃないですか。
伊藤 
そうですね。
__ 
他のメンバーに、まるで決定事項であるかの如く意思を強く伝えようとしても「そんな事聞いていない」となるわけじゃないですか。根回しと言うか調整や呼びかけをしないといけないんですよね。
伊藤 
そうですね、事前の打合せとか裏会合みたいなのを必要だったりとかはしますよね。再結成からまだ2回目ですが、演出家が1人の方がスムーズに決まっていたんだろうなと思います。同じ事をひとつ決めるにも、全員の歩調が合っている事を確認しながら進むからめちゃくちゃ効率悪いなとは思います。
__ 
そうなんですよね。全員で同じ段階を、例えば1人が一つ飛びにならないようにする。チームプレイだなと思います。
伊藤 
皆がある程度バラバラの方向を見ているけれども、共有するところも多々あってみたいな。これを繰り返していくうちにもっと面白いものが生まれてくればいいなと期待しています。
__ 
お互いの懐に、ちょうど良く踏み込むのがきっと重要なんでしょうね。
伊藤 
そうですね、拒否とか否定ではなくてちゃんと批評をする。「これは面白くない」と一瞬で蹴る事は出来るけど、そうしないように気をつけています。どれだけ馬鹿馬鹿しいことを提案されたとしても、普段の私なら絶対やりたくないような事だって一度はやってみて、その上で改めて自分の意見を言う。そういう風にやってくのが大事なのかも。

同じ方向

__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか。
伊藤 
横浜で話していたのは、メンバーの間で共通する基礎的な身体性を作る稽古をしてみてもいいかなと。一瞬、全員が同じ方向を向く、そんな光景を作り出せるような。変な例えですけど、朝顔を育てる経験が必要なら、馬鹿馬鹿しくても朝顔を育ててみる。私には私なりの朝顔の育て方があって、木村君や三鬼さんのやり方もそれぞれあって、きっと朝顔に対する感想も違う。でも朝顔を育てた結果、なんか「分かるわー」と、共通するような部分も生まれる、みたいな。今はバラバラの状態だから何か共通の経験とか体験をやってみて、その上でメンバーの方向性がどういう風にバラバラなのかを考えてみるのもいいのかなと思ってます。今年は葵マコちゃんがお休みなので、また作品や作り方も変わるかもしれないんですが。
__ 
なるほど。
伊藤 
私は何年か舞台に関わってなかった時期があったんですけど、ここ何年かまた色々な方からお声をかけていただいたりして嬉しいです。今年は8月にはカイテイ舎の公演も予定しているので、もしよかったらそちらの公演と、その後のgallopもぜひいらしてください。
__ 
ありがとうございます。楽しみです。

二人静

__ 
今日はお話を伺いたお礼にプレゼントを持って参りました。
伊藤 
ありがとうございます。
__ 
おやつかな。(開ける)あ、可愛い。見たことない。これは和三盆のお菓子?ありがとうございます。

にさわさんの最近

___ 
今日はどうぞ、よろしくお願い致します。安住の地の俳優・制作者、にさわまほさんにお話を伺います。にさわさんは最近、どんな感じでしょうか。
にさわ 
よろしくお願いします。最近は集団迷子の制作と、安住の地の次回公演のオーディションの準備をしていたりしています。
___ 
お忙しいんですね。
にさわ 
公演終わって少しは暇になるかなと思ったんですけど、全然忙しかったです。休みの日の方が動いてるかもしれません。
___ 
休む暇もなく。
にさわ 
ちょいちょい休んでます。
___ 
演劇以外ではどんな感じですか?
にさわ 
最近、着物が好きで。休みの日に着物でその辺に出かけたりしています。メンバーにはまだ言ってないですけど、こそこそ着てます。
安住の地
2016年7月に結成。京都を拠点に活動。
安住の地のラジオ「の地ラジ」
Twitter @nochiradio

安住の地「ポストトゥルースクレッシェンドポリコレパッショナートフィナーレ」

___ 
安住の地の「ポスト」・・・覚えさせる気がないと評判のタイトルですね。メンバーの皆さんは覚えたんでしょうか。
にさわ 
そうですね、最初は全然覚えられなかったんですけど、だんだんと呪文みたいに言うのが楽しくなってきて。最初は「ポスコレ」って略してたんですけど。このタイトル、まずどういう意味だろうと思ったんですけど、意味は特にないということでした。かっこいいという印象を受けたメンバーも多かったです。プリキュアの必殺技です、って会う人会う人に言ってました。最後ビックリマークだし。
___ 
「ポスコレ」、大変面白かったです。複雑な演劇作品でした。他の出演者と同様、にさわさんも複数役を演じられていましたね。
にさわ 
私は、お母さん役と女子高生役でした。他の人がもっと役は多かったので、大変だー、って。
___ 
複数役なのに、あんまり衣装を変えずに演じてましたよね。普通はちょっと、布や帽子とかを使いますよね。
にさわ 
一応、見てて目印になるような物を役の切り替わりとしてつけてはいるんですが、場面で連続して出ている人とかもいるので、アイテムを変えるので精一杯みたいな。
___ 
それにしては混乱は少なかったように思います。
にさわ 
今回はあんまり混乱しなかったという声がアンケートには書かれていました。どうしてなんだろうと思ってたんですが、それぞれの役が境遇が違ったり世界線が違ったりしていたからかも。
___ 
その辺りもなんだか不思議と、作品の内容と絡んでるような気がしたんですよ。もちろん衣装を変えて「これは違う役ですよ」と宣言するのは効果的な演出だと思います。ですがそれをあえてせず、しかしてアノニマスな味の衣装でもなく、しっかりオシャレで可愛い特徴的な衣装。で全く違う別の役を演じている。そこには何かの暗示があるような気がする。というより、何らかのメカニズムがあるような気がしますね。演技の説得力の方が勝ってたんですよね。
にさわ 
そういうところが小劇場演劇っぽいんですよね。ウチは。そういうところにアナログさが出るのが。早着替えでも何かの効果でもなく、演技の力でやろう、というのが。
ロームシアター京都×京都芸術センター U35創造支援プログラム”KIPPU” 安住の地「ポスト・トゥルースクレッシェンド・ポリコレパッショナートフィナーレ!」
会場|
ロームシアター京都
住所: 〒606-8342京都府京都市左京区岡崎最勝寺町13 https://rohmtheatrekyoto.jp/access/ 

公演日程|
2019年1月
17日(木)19:30
18日(金)14:30 / 19:30 
19日(土)14:30  / 19:30
20日(日)11:00 / 15:00
受付開始は各回45分前
開場は30分前

料金|
一般:3,000円 当日:3,500円
U25:2,500円 当日:3,000円
高校:1,000円(前売・当日一律)

出演|
中村彩乃 森脇康貴 日下七海 にさわまほ 山下裕英
武田暢輝 柳原良平(ベビー・ピ―) タナカ・G・ツヨシ
【映像出演】ぶんけい(パオパオチャンネル)

スタッフ|
作・演出:岡本昌也・私道かぴ
舞台監督:平林肇
舞台美術:森脇康貴
音響:椎名晃嗣(劇団飛び道具)
照明:河口琢磨(劇団飛び道具)
映像:岡本昌也
衣装:大平順子
宣伝美術:岡本昌也・日下七海
イラスト提供:JewelSaviorFREE(http://www.jewel-s.jp/)
物販:大平順子・日下七海
制作:安住の地
制作協力:渡邉裕史(ソノノチ)
ライター:朴健雄 一人静
カメラマン:中谷利明 大平順子
メイク:篁怜
協力:CoRich舞台芸術!・劇団飛び道具・鍵山千尋
主催:安住の地
共催:ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団) 京都芸術センター(公益財団法人京都市芸術文化協会)・京都市

没頭1

___ 
「ポスト-」。ご自身としてはどんな経験でしたか。
にさわ 
私が岡本昌也の作品に初めて出演したのは妖怪SOHOで開催したPLOWでの「impedance mismatch」という3人芝居だったんです。その時に、演技に対する意識がものすごく変わったところがあって。公演中は必死だったんですけど、それが自分にとっては衝撃的でした。このことは次の舞台に絶対に生かそうと思っていたんです。それが「ポスト-」でした。そういうこともあってか、今までと違う感覚で演技が出来たと思います。
___ 
それはどのようなことでしたか?
にさわ 
私は中学高校と演劇部で、大学は同志社小劇場という演劇サークルに入っていて、ずっと同じメンバーの中で作るということをしていました。内輪の悪い癖で、自分の演技に没頭してしまうということが多かったんです。自分の役の感情に。安住の地の座長の中村さんは「自分の演技に酔っ払う」という言い方をよくするんですけど、それを良しとしていた部分が多々あって。恥ずかしいんですけど。それをPLOWの時に、岡本昌也さんに徹底的に「それは違う」、と具体的に言われはしなかったんですけど、ダメ出しの言葉で気付かされることが多くあって。ポスコレの時はできるだけ自分の中に没頭しないようにしようと、できるだけ目の前にいる俳優、舞台上にいる全員との空気感を感じてやろうというテーマが自分の中にありました。
___ 
没頭するというのは、表現をする次元においては、時には良くないことなのかもしれないと?
にさわ 
はい、あんまりよくないなと思いました。特に自分の場合は。没頭していた方がいいんじゃないかなと思っていたんですが、自分のことを客観的に見れていないので・・・今でも客観的に見れているかわかんないんですけど。でもポスコレが終わった後、メンバーに「上手になったね」と言われて。
___ 
直接的やな。
にさわ 
打ち上げには遅れて顔を出したんですけど、その瞬間に「今まほちゃんの話をしてたんだよ、上手になったって言ってたよ」って、謎の盛り上がりをしてました。

没頭2

___ 
自分の創造活動に没頭するということには大きな快楽を感じるものですが、それは逆に言うと、誰にも連絡をしなくなってしまい、コミュニケーションがとりづらくなる、という副作用がありますね。
にさわ 
ありますね、やってしまいます。
___ 
それが実は、制作している内容そのものにも好ましい効果があるとは言えないのではないか。自分の中だけで完結しているだけで、お客さんにはその井戸の中にある物が伝わらなくなるのかもしれない。そういう体制を作ってしまう結果になるのかもしれない。
にさわ 
そうなんですよね、自分の中で作れていたら伝わるんじゃないかと思っていたんですけど、お客さんが見ているものと私の中で動いているものはやっぱり別なので。そういうことに「impedance mismatch」で気付いたんです。それが露骨にお芝居全体の完成度に結びついてしまっていたので。本当にダメだった時は自分の中で没頭していた部分がある。3人のうち誰かがそうなってしまうと崩れてしまう。
___ 
「impedance mismatch
」の場合はセットが複雑でしたからね。場所を生かした演出が面白かったです。
にさわ 
下に張り巡らせている糸に気を取られないように、三人の会話と空気に集中しないといけない。
___ 
そう、シャッターを開け閉めしたり、ビルを出て、道路を渡って行くのが窓の外から見えたりして。
にさわ 
妖怪SOHOでは、いつかまた公演がやりたいです。

没頭3

___ 
雑な質問かもしれませんが、安住の地では、例えばどんな演技が求められますか?脚本・演出家は、岡本昌也さんと私道かぴさんの二人がいらっしゃいますが。
にさわ 
二人とも、最終的に求めているものはそんなに違わないはずで。でもそこに行くまでの道筋の示し方が、岡本さんと私道さんとでは違うんです。私道さんは、最短距離をまず示してくれることが多くて。「こういう風に見せたい」という方針があったらその道をまず示してくれるんです。それがうまくいかない場合はじゃあこっちで、というのを示してくれることが多いんです。岡本さんの方は、「どういうイメージにしたいか」というのをまず示してくれて、でもそこにたどり着くまでの道筋は割と演者に任せているんです。時々、手段としての演出は付くんですが。
___ 
今回の「ポスト-」は岡本さんと私道さんの共同制作でしたね。
にさわ 
だから、二人の言うことがやっぱり途中で食い違うことが時々あって、役者は混乱することもありました。でも道の示し方が二人で違うだけだと気づいてからは自分で行き方を探すしかないなと。俳優それぞれの、道を探す能力が根本的なところで求められている稽古場だったと思います。つまり、上手に行けなくてもいいから自分で道を探してたどり着ける俳優。
___ 
にさわさんのお母さん役の時、お姉ちゃんがVRの世界に行ってしまったじゃないですか。するとお母さんはそのことだけに必死になってしまって、普通の女子校生である妹の姿が全く見えなくなってしまう。見るべきものが見えなくなってしまう。そうした演技を作る時に、にさわさんはどういう道を辿りましたか?
にさわ 
正直なところ、「どういうお母さんなのか」という指定はあんまりもらえていなくて、とにかく台本の中では妹のユーナちゃんが主軸になっていて。とりあえず、妹から見て理不尽な存在であるほうがいいのかなと思っていたんです。そう見えることが最終的な目標で、お母さん視点で作ったら失敗するということに途中で気づいたんです。ユーナからはお母さんはこう見えるというのを主軸にして考えてました。私の感情というのは置いといて。
___ 
お母さんをそういう風に見せたいということについて、どこまで意思の共有をしていましたか?
にさわ 
それ、その確認は結構直前だったんですよね。ぶっつけ本番になってしまった感じで、ゲネの時点で手探り状態だったんです。小屋入り直前の通し稽古で、家族3人で「ちょっとまだ違うね」と話し合ってる段階でした。
___ 
その、お母さんが自発的には妹の方を見ない、という演技が印象的だったんですよ。ふと妹の方を見てしまうということはなかったんです。あれはよい演技プランだったなと思いました。
にさわ 
見ないようにしようとまでは思っていなかったんですが、無関心でいようと思ったわけでもなく。長女のことだけで頭がいっぱいになってしまうという状態であろうとは思っていました。

没頭4

___ 
にさわさんは女子高生も演じてましたね。柳原良平さん演じるおじさんとパパ活をしていた女子高生。どうでしたか。
にさわ 
楽しかったですね。元々安住の地では歳が上の役をやることが多かったので(多分これからもやりますが)、どうしたら若い女子高生に見えるかというのを考えた時に、自分の中のキャッキャッとした部分を開放する形になったので。演じてる時にすごく居心地が良かったです。女子高生の無敵感と言うか。
___ 
キラキラした演技でしたよ。
にさわ 
本当の意味で高校生を再現することなんてできないんだろうなと。結構、自分の中で意図的に幼い部分を卒業しようとしていた時期があったから、今それを再現しようとするとどうしても難しいというのがあったので。本当の女子校生にはやっぱりもう勝てないんですよ。

集団迷子「星の王子さま」

___ 
次は集団迷子「星の王子さま」ですね。
にさわ 
私が主催する企画は毎回、作品とメンバーによって団体名を変えているんです。今回は同世代と下の年代のメンバーで企画しています。このメンバーでもう一度一緒にやることは、ほとんどないだろうと思っています。卒業公演じゃないですけど最後の締めくくりにやろうっていう話になりました。今いるメンバーでこの作品をこのタイミングでやる意味を引き出せたらいいなと思っています。
___ 
どんな公演になったらいいと思いますか?
にさわ 
寺山修司の「星の王子さま」は大人と子供の話で、ちょうど就職したぐらいの私たちのような世代がやるのはちょうどいいんじゃないかなと思って。今この年齢でしかできない作品になったらいいなと思っています。
集団迷子『星の王子さま』

Twitter @maigo_pecora

【日程】
3月23日(土)15:00/19:00
3月24日(日)11:00/14:00


【会場】
東山青少年活動センター
創造活動室


【チケット料金】
前売り:600円/当日:800円
ダブル観劇セット券:1000円

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安住の地第4回本公演「Qu’est-ce que c’est que moi?」

___ 
そして、安住の地の次回公演「Qu’est-ce que c’est que moi?」、どんな公演になるでしょうか。
にさわ 
私、西一風での初演を見ていて。ストーリーを追おうとするとすごく難しいだろうなと思うんです。そもそもストーリーと表現を分けて再構成しているので、私も見ていてよく分からないなと思ったりしたんですけど、そこで話されていた言葉やリズムやビジュアルは凄く印象に残るんです。
___ 
そんな作品なんですね。
にさわ 
ストーリーと、人物の関係性と、作者の意図。普通の演劇はその三つで成り立っているけれども、3つを完全に分けてしまって一つ一つを見せるというコンセプトだったみたいで。ある場面では会話は全然成立していなくて、日本語のセリフだけど日本語のイントネーションで話されないみたいな。
___ 
難易度SSですね。
にさわ 
大変難しいと思うんですが、岡本さんはその作品にすごく思い入れがあって。多分一番自信を持って出す作品なので、きっと面白くなると思います。
___ 
お客さんには、分からない、ということを退屈だという感想に結びつけずに見て欲しいですね。
にさわ 
そうですね。分からないものを分からないままに面白いなと思ってもらえればいいと思います。お客さんの中に、何かわからないけれども残るような物があればいいなと思います。
___ 
その何かが、会場に足を運ぶ苦労に勝てばいいですよね。
安住の地第4回本公演「Qu’est-ce que c’est que moi?」
公演時期:2019年9月13日(金)-16日(月)。会場:Theatre E9 Kyoto。

質問 森谷 聖さんから にさわまほさんへ

___ 
前回インタビューさせていただいた、森谷聖さんから質問をいただいてきております。「京都のおすすめカフェを教えてください」。
にさわ 
難しいことを・・・同志社大学に通っていたので、その近くにあるAMUCAというお店がおすすめです。そこに友達と一緒に行ってました。ドーナツが美味しくて、お店の方も雰囲気が優しくて。

これから

___ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか。
にさわ 
俳優を仕事にできたらいいなとずっと思っています。そのために頑張っていきたいです。

カトラリー・クロック

___ 
今日はお話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
にさわ 
ありがとうございます。(開ける)あ、かわいい。飾ります。

最近

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。京都造形芸術大学の森谷聖さんにお話を伺います。森谷さんは最近、どんな感じでしょうか。
森谷 
よろしくお願いします!最近は卒業制作公演が終わって、卒業制作の展示の準備をしたりしています。
__ 
去年12月の.com(ドットコム)「大感謝祭」とミンストレルズの公演「かわらせくんの研究」ですね。
森谷 
あとは個人研究の発表をやる人も中にはいます。私自身はそんなに関わってはいないんですけど。
__ 
この時期になると、そんな感じなんですね。
森谷 
卒業制作の授業についても、一年間の計画を座組で立ててくださいという感じなんです。月2回、演技トレーナーの先生が様子を見に来てくれるという感じで。

ミンストレルズ「かわらせくんの研究」

撮影:京都造形芸術大学 舞台芸術学科
__ 
森谷さんが出演された卒業制作公演の、ミンストレルズ「かわらせくんの研究」、大変面白かったです。作品前半、とてもコミカルだったからこのまま進むのかなと思っていたんですが、途中からだんだんとシリアスな展開になっていって。森谷さん含め、各世代のかわらせくんはダブルキャストで「実験マウス」という、研究のお手伝いをしてくれる謎の助手達を演じていましたね。
森谷 
いつの時代も一貫して、実験マウスだけはコミカルでいようという共通認識がありました。研究のために映画のミニオンズを見たり、USJに行ったり。
__ 
しかし実験マウスたちだけは謎に包まれていましたね。人型なのか本当のネズミなのかどうかも分からない。最後の5代目になるまで、その存在については言及されないですもんね。
森谷 
作・演出の小林桃佳さんは、アニメとかの物語に影響を受けていて。可愛らしいキャラクターを使って、安心させながらもナイフでグサッと刺すような。そういう作風なので、自分たちも役者としてそこにプラスしていきたい、「これはきっと私たちがどんどん付け加えていいものなんだ」と思ったんです。役者間で、これはこうやらせてくださいというのが結構飛び交っている稽古場でした。自分の中では劇作家の書く物語の中身にもっと迫ろうというテーマがありました。
__ 
実験マウスたちは、すべての時代で大体同じ性格っぽいですね。というか、代替わりはしないんですか?
森谷 
しないですね、半永久的な永遠の命なんです。
__ 
サイボーグとかでもなく?
森谷 
ロボットと言うかドラえもんみたいな感じなんです。猫型ロボットならぬネズミ型ロボット達なんです。意思は持ってるんですがチップが埋め込まれている。
__ 
そういう彼らがかわらせくんについているけれども、かわらせくんの孤独の足しにはならないんですよね。
森谷 
そうなんです。四代目かわらせくんはまるで道具のように扱われている時代で。実験マウスたちも心配はしてるんですが、彼女には響いていないんですよ。孤独で干渉が難しい。
__ 
3代目ぐらいから神として扱われていましたからね。5代目かわらせくんからは実験マウスは去っていて、でも大切な局面に彼らが戻ってくるというね。
ミンストレルズ「かわらせくんの研究」
◎作・演出◎
小林桃佳
◎出演◎
足立功至
嶋崎美都輝
髙島絵里
髙田瑠璃
高橋空
森谷聖
◎スタッフ◎
演出助手:髙田瑠璃
美術:明隅友香
照明:椛島睦未
音響:辻村実央
映像:小林ち乃
衣装:大窪真祐
制作:野田遥

公演時期:2019/1/19~20。会場:春秋座。

「クリエイション」

__ 
森谷さんは静岡出身なんですよね。大学から京都からに来て4年間。どんな経験でしたか。
森谷 
今まで自分のことは何も知らなかったんですけど、京都に行きたいとか、演劇がしたいという直観のままに来たんです。行くだけ行くぞ、って飛び出してきて。でも静岡の人とは違う土地の、演劇をやる人たちと触れ合って、逆に自分のことを知ることができました。自分のことを知らないと演劇ってできないということを痛感しました。
__ 
なるほど。
森谷 
四年間はとても楽しかったです。月並みですけど。自分とは全然違う人がいっぱいいて、仲間といいものができたと思うんです。その仲間も何を考えてるのかわからない、なぜこの人はこういうことをしてるのかわからないみたいなことがたくさんあって、すれ違いながら切磋琢磨していました。でも本当に楽しかったです。楽しかったと言うとあれなんですけどね。
__ 
そんな中、ベスト3の思い出を挙げるとしたら?
森谷 
私は仲間と何かをするということについて重きを置いてたんですが、その仲間の一人がいなくなってしまったことがあって。大学を辞めたのかどうかも分からないんです。生きてるとは思いますけど、それが結構自分の中では大きくて。
__ 
その人に向けて何か一言ありますか。
森谷 
元気に過ごしてくれていれば嬉しいです。まず生きていて欲しい。
__ 
それはおそらく人間関係リセット癖ですね。
森谷 
そういう人は芸術の大学には多いみたいで。芸術関係に進む人って繊細な人が多いから。私は大雑把だから分からないんですけど、何か傷つけてしまったのかもしれない。
__ 
アーティストの方は、自分の位置についてはこだわっているからその人にとってはもしかしたら森谷さんと縁を切ったつもりは全然なくて、いつか再開することもあるかもしれませんよ。
森谷 
そうだったら面白いですね。
__ 
ベスト2は。
森谷 
ああ、迷ってしまう。ベスト2は、N2(エヌツー)さんとの出会いはとても大きなものでした。四年間の思い出ベストに入れていいのかな、杉本さんに怒られないかな。
__ 
きっと大丈夫だと思いますよ。「雲路と氷床」は芸術センターで上演しましたね。
森谷 
芸術センターでクリエイションしたんですけど、クリエイションの意味を初めて理解した経験だったと思います。杉本さんは魅力的でミステリアスな、鋭くもあり柔らかな方でもあって。この人はすごいなという感覚がずっと残っています。相方の益田萌さんとは実は元々、バイト先が一緒で、演劇とは全く関係ないところで知り合っていたんです。顔見知りレベルでしたけど、半年間のクリエイションで関係性を構築して行ったんです。
__ 
偶然ですね。
森谷 
杉本さんもそれを面白がって、バイトでの動きとかをやってみて、って。「雲路と氷床」は、稽古場で話し合うことで作品を作っていったんです。世の中に溢れているものを自分たちでよいしょ、って持ってきて詰めていきましょう、という。演劇の話もしますけど個人的な話もいっぱいして。
__ 
印象的な作品でした。ベスト1は。
森谷 
やっぱりミンストレルズが一番大きかったです。「雲路と氷床」でクリエイションを知って、それから物語演劇から離れていたんですね。見る分には好きなんですけど、やる分にはちょっと抵抗が生まれ始めていて。そこから、物語演劇でもどこでもクリエイションというものはあるということを教えてくれたのがミンストレルズの稽古場でした。気付くのが遅かったんですけど、試してやってみて考えてみて、役とはちょっと違うけれども、やってみたらそれもまた役の演技になるかもしれないという体験をしました。演出と役者で、アイデアを出すと言う仕事については変わらないんだなということを思ったんです。
__ 
演技は一体誰が作ってるのか問題。
森谷 
古典的なイメージとしては、演出家が役者に演技のリクエストをするというのがあると思うんですけど。俳優もそれと同じぐらい「あれがやりたい」「これがやりたい」というのを持っていないといけなくて。50%50%かなと思うんです。作品の責任は役者は追わないですけど、作品の顔にならないといけないということもあります。このアイデアはこの人が持ってきたからこの人のもの、というものでもないですし。それを採用した演出家だっているわけで、でも誰に最終的な責任や功績があるかというと難しいですよね。
__ 
会話劇となると相手役とのやり取りや駆け引きがありますしね。抽象的なところだって会話劇ならできる。きっとそういうのも、造形大なら1回生の時に習うだろうと思うんですが。
森谷 
そこは、うーん、具体的に「こうすべき」とかいうのは習ってはいなくて。でも、「こうあった方がいいですよ」という感じで示されていて、「でも自分で全て決めていいばかりじゃない」とか、逆に、「言いなりになると飲まれてしまって、意思を持たないとつまらない役者になっちゃうよ」て言われていました。
撮影:京都造形芸術大学 舞台芸術学科

モノローグ

__ 
京都造形大の授業で、一番影響を受けた授業は何ですか。
森谷 
私、よく他のクラスの聴講に行ってて。2回生の時に1回生の聴講に行っていたんです。平井愛子先生の授業で、チェーホフのモノローグをやってるんですよ。そこで一つ下の子の演技を見た時の衝撃が一番でした。その当時の私は、先輩だから「スン」って感じで涙は見せまいと頑張っていたんですが裏でボロボロ泣いてて。
__ 
そんなにすごかったんですか。
森谷 
ちょっと悔しくなっちゃったんですよ。元々技術を持って大学に入ってきた生徒がその授業でよく言われることなんですけど、「上手くやろうとしなくていい」。それはスタニスラフスキー・システムなんですけど、1回生の頃はソーニャのモノローグでは分からなかったんです。
__ 
なるほど。
森谷 
大学から演劇を始めた私には、感覚が囚われていないぶんビギナーズラックで何をしてもうまくいってたんですよ。のびのびとやれてたんです。演劇、楽しいなと。でもしばらくして自分が同じことしかできないんじゃないかって、壁に当たったんですね。会話劇だと相手役との共同作業で解消できたことも多々あったんですが、それでも限界に阻まれていて。4年間中、3年間は壁に当たっていましたね。最初の頃は何でもできる気がしていたんですが、それが何もできなくなる。セリフって何だろう、物語って何だろう、みたいな。1回生の頃はそれが何かわからなかったから楽しかった。やればやるほど限界が見えてきたんですよ。
__ 
そんなタイミングで、平井愛子先生のクラスで1回生がやっていたのを見て衝撃だったんですね。
森谷 
のびのびやっていたんです。その姿が役の演技なんですよ。それがまた悔しくて(自分の気持ちと、登場人物の気持ちが噛み合っている。気持ちが噛み合っていればいい演技なのかと言うとそうとも言い切れないんですが)。ある一瞬の、役者自身の感情が、ソーニャみたいに見えたのは何でだろう。
__ 
今回、森谷さんにこのタイミングでインタビューができてよかったですね。壁という言葉が出てきたのは良かったです。
森谷 
今も、壁と共にという感じなんです。先生からのアドバイスで指摘された点は全て潰すようにしているんですが、その上に自分が何ができるかというのを壁と共に考えて行っています。3年生ぐらいになってわかってきたんですが、その最初の授業だったな、と思います。

劇団たんぽぽへ

__ 
森谷さんはこれから劇団たんぽぽに入るんですよね。
森谷 
こんなこと言うとすごく夢物語みたいになっちゃいますけど、小学校の頃に胸をときめかせてたんですよ。見てこんなに面白いんだったら、やったらどれくらい面白いんだろうって。演劇に導いてくれたのが劇団たんぽぽなんです。大学卒業して、社会人として働くということは何なんだろうって考えた時に、たんぽぽが演劇の楽しさを紹介して、嫌いならその理由を考えてもらったりとか、何か別のジャンルの演劇に繋がっていてくれたらいいなと思って。入り口としての役割が大きいのかなと思っていて、それが社会に貢献するということなのかなと。もちろん私も、自分のやりたいことはやりたいと思います。