東京に行った西岡さんが京都に戻ってきた日

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。お久しぶりですね。最近、西岡さんはどんな感じでしょうか。
西岡 
こちらこそ、よろしくお願いします。私、今は新国立劇場の演劇研修所の研修生です。今年で3年目で、研修所の最後の年なんですよ。いくつか試演会を重ねてから修了という感じです。まずは、9月に2本の試演会があります。ちょっと遠いんですけど、関西の方々も観にきて頂けると嬉しいです。
__ 
ありがとうございます。頑張ってください。東京に来て、自分は変わったと感じますか?
西岡 
色々と、変わったとは思います。でも根本的な部分が変わったとは思わないですね。無理矢理変わろうとしても無駄だし、変えるには自分はなかなか頑固だなあって。ぜんぜん変わらないというのもなかなか辛いものがありますね。なすがままという感じで行こうと思います。
新国立劇場 演劇研修所
演劇研修所は、3年の研修期間を設け、芸術表現としての演劇を主体的に実践し、組織していく俳優を育てることを中心にカリキュラムを編成しています。1.2年次は基礎的俳優訓練とともに、第一線の演出家や俳優指導の専門家を軸とする講師陣によるシーンスタディを展開し、3年次には修了公演に向けて数本の舞台実習公演を行っています。修了生は、新国立劇場公演のみならず、さまざまなプロデュース公演に出演するなど、活躍の場を広げています。(公式サイトより)新国立劇場 演劇研修所 Facebook

タグ: 『東京』 演劇研修所


脚本のパワーに飲まれないように

__ 
さて、新国立劇場演劇研修所の公演が、9月ですね。
西岡 
9月の5日から10日に一本目「親の顔が見たいと、9月の23・24日に二本目「朗読劇「少年口伝隊一九四五」を上演します。
__ 
一ヶ月に二本の大作ですね。
西岡 
はい。たまげました(笑う)。私たち八期生と、研修所の修了生と文学座の俳優さんを客演に招いて、色んな分野の一線で活躍するスタッフさんが参加されています。そこも含めて、かなり、勉強になると思います。
__ 
見所を教えてください。
西岡 
一本目の「親の顔が見たい」は、現代劇です。ほとんどの登場人物が実年齢より上の世代で。ちょっとキャラクター作りの難易度が高いんですけど、どうなるか楽しみです。劇構造としては、「12人の怒れる男」のカトリック系女子校バージョンですね。密室劇で、いじめを苦に自殺した生徒が主軸の話だったのが、どんどん父兄の社会的に隠している部分が噴出する展開になっていくのがとても面白いです。
__ 
見てみたいなあ。
西岡 
朗読劇「少年口伝隊一九四五」」は井上ひさしさんが研修所の2期生のために書き下ろして下さった作品で、毎年、研修生が朗読劇公演として上演しているんです。皆さん必ず言うんですけど井上さんの言葉の使い方が本当にすごいんですよ。体を通して実感しました。
__ 
分かります。
西岡 
言葉の全てが質素なんですよね。華やかな言葉はなくて、でも的確に伝わるんです。それがすごいなあって。台本上の延ばし棒一つにしても意図が伝わる。脚本のパワーに飲まれないように、でも余分な事をしないように。無理矢理をやってしまって、無理無理なんて思わないように。
新国立劇場演劇研修所 第8期生試演会「親の顔が見たい」
公演時期:2014/9/5~10。会場:新国立劇場 小劇場。
新国立劇場 演劇研修所公演 朗読劇「少年口伝隊一九四五」
公演時期:2014/9/23~24。会場:新国立劇場 小劇場。

タグ: 朗読劇についてのイシュー 次の公演


本来の気持ちに

__ 
研修所での西岡さんの様子を伺えればと存じます。今、どんな生活をされているんですか?
西岡 
一年目は、月曜日から金曜日までフルタイムでしたね。朝9時半から夕方くらいまで研修でさまざまな講義や、実技を受けています。二年目になると、現在バリバリ活躍されている演出家の方々と芝居を作る授業も始まり、月~金曜+αで不規則になりました。大学と同じくらい、毎日勉強してます。
__ 
それは、楽しい楽しくないという尺度で言うとどうですか?
西岡 
うーん、時期によって違います。研修生1人1人によっても違うでしょうし。私は、当初は本当に、やりたくてやりたくて仕方なく入りました。でもいつからか日々の生活がルーティン化してくると、ちょっとダレるというか。贅沢なことに、与えられている事が当たり前になってしまって、気持ちが崩れてしまいました。そういう変化を講師の方も分かっていらしたみたいで、喝を入れてもらったりとか、自分でも奮起したり、また初心を思い出して、本来の気持ちに戻ったり、そういう繰り返しでした。
__ 
ルーティン化。
西岡 
私の場合は、周りに「このままじゃ駄目よ」とハッキリ言ってくれる方がいたんです。講師や、同期の8期生も。それから、研修所以外の芝居仲間や同世代の人たちが頑張って公演を重ねているのをみて気付かされる、そんな瞬間がありました。
__ 
なるほど。
西岡 
2年目までは外の公演には参加出来ないのですが、3年目からはカリキュラムが試演会と修了公演のみになるので、外の仕事を受けても良いんです。
__ 
あ、そうなんですね。
西岡 
そういう自分の状況もありつつ、外で仲間がめっちゃ面白い事をやっていると、うわあ~って凄く焦りました。

タグ: 演劇研修所


ふたりの会話

__ 
2年、学んだ中で一番ショックを受けた事は何ですか?
西岡 
一番最初の演技の授業。イギリスのRADAでも教えられているローナ・マーシャルさんの授業ですね。二人一組のダイアローグを、とりあえず貴方たちの思ったように作ってきて、と課題を出されまして。ペアの子と試行錯誤して作って、実際見て頂いたら、「お芝居をしているわね」と言われたんです。
__ 
なるほど。
西岡 
それまでやってきた事を根底から覆された気がして。私、今まで何をしてきたんだろう・・・いや、芝居をしているわねって言われたけどそれはどんな事なんだろう? 一年目は、演じるというよりも、まず自分が何者か、どこに立っているのか、その上で自分の癖を見直す、とかそういう、パーソナルな部分に触れる授業がほとんどでした。1年目の授業は、ほぼ毎回ショックを受けまくりでした。こんなにも、自分の体はコントロール出来ないものか、こんなにも私は人の話を聞いていないのか、というように。
__ 
自分の事を見つめる一年だったんですね。
西岡 
私はすごく、怖がりだという事が分かりました。
__ 
怖がり?
西岡 
芝居を始めた頃に自分がどういう演技の作り方をしていたかはあまり覚えてないんですけど・・・パッケージングするのが得意だったんじゃないかと思ってます。パッケージするというのは、例えばいまここで喋っている時、お互いに刺激を感じていますよね。
__ 
ええ。
西岡 
でも、会話している役を演じるとなると、相手からリアルタイムで刺激を受けている事実を忘れてセリフを吐いていたんです。しかも、やりたい絵を最初から決めてしまっていて、そこに向かう為にはどうすればいいのか?というのがある程度「かたち」として出来てしまう。
__ 
会話の交流を予測したり決めたりする事は、安心ですね。たしかにその意味では怖がりと言えるかもしれない。
西岡 
けれども、それはもう相手が誰であっても良いという事なんじゃないかと。多分、講師が言いたい事はそういう事だったんじゃないかと思います。人とどうやって対話するべきかと、それを考えるようになりましたね。
__ 
異なる存在と接する時の、エモーショナルな瞬間、ですね。
西岡 
そうですね、そういう、エモーショナルな状態のフリをしていたんだと思います。本当にそういう状態になる前に、まず「かたち」を作ってしまった。会話先行、頭先行だった。本来なら、もっと何が起こるか分からないのが演劇と交流の醍醐味なんですけど、私は多分それを見過ごしたまま、無自覚に絵を作って出来た気になっていたんです、きっと。でも、そういう事じゃなかったみたいだと。
__ 
それはきっと、舞台と観客席の間でも起こるべき事で。例えばいい映画って、全部の動きにワクワクするじゃないですか。一つ一つの動きや曲線が目に入る度、その効果が純粋に心に響く。意味や意図さえ伝わる。あれは舞台でも起こる。
西岡 
はい。
__ 
とにかく、一年目のスタート地点から、「交流」が本来持つべき価値が見えた。
西岡 
もしかしたらそうかもしれません。今まで関わった戯曲に対しては失礼な事をしていたのかも。答えを一つに決めて掛かってしまうなんて。それが、スタート地点に立つ上で一番大切な事だったのかもしれないなと。
__ 
なるほど。

タグ: 俳優の提案作業 演技それ自体への懐疑 見えないぐらい濃い交流 相互承認 観客との関係性 SeizeTheDay


人が集まってきてくれる

西岡 
その後も、ジャンルを問わず様々な分野の講師に教わりました。二年目の芝居を作る授業(シーンスタディ)では今まで触れたことのない役にも出会えたり。価値のある事ばっかりだったなあと思います。すごくいい環境だと思うんですよ。それが自主的にできなくなったら終わりだというのも経験しました。自分がこういう事をしたいとか、こうなりたいと思っているところに、定期的にアドバイスをくれる人が集まってきてくれる。それは新劇関係だけ、小劇場関係だけという事ではなくて、多面的な見方が出来るんですよね。知識や体験が増えていくと、その都度ハテナが溜まっていくんですけど、色んな言い方をされるぶん、答えにたどり着けるという感じです。
__ 
なるほど。
西岡 
それは一つのメソッドを追求する劇団や団体とはまた違う価値があると思いますね。

タグ: 演劇研修所


コアラからつかむシェイクスピア

__ 
最近、学んだ中での気づきを教えてください。
西岡 
ちょっと大きな話になってしまうかもしれないんですけど、欲望を持ち続ける事かもしれません。結構、欲を表に出しても、すぐ諦めちゃったり、抑制するタイプだと自分では思っています。講師の方のエクササイズの一つで、アニマルエクササイズというものをやったんです。ある動物の事を研究して、完全に動物になっちゃう。私の場合はコアラでした。コアラを研究して擬態する。そこを起点にして、段々とシェイクスピアの登場人物の一人にスライドしていくんですよ。シェイクスピアに出てくる人物は欲求が強いんですよね。
__ 
ええ。
西岡 
その人物の欲求に、自分自身の欲求から近づいていっても分からなかった点が、本能的な動物の形態を借りてそこからスライドさせて行くことによって、「今何がしたい」とか「アイツを叩きのめしてやりたい」とか、ビビッドな欲求になって出てきたんですよ。それが必要なんだなと思いました。日常を切り取った演劇だって、中には非日常なものが紛れ込んでいると思うんですよ。それを全部、日常の自分でやってしまうのはもったいないな、と。自分にはないタフさが必要なんですけど、日常から欲求を閉じこめていると、演じる時に息切れしてしまうんですよ。だから、そういう時の為のトレーニングとして、自分の欲求を素直に出そうと思います。
__ 
アニマルエクササイズか。
西岡 
他の人のアニマルも、どこかその人の個性が出ているんですよ。私自身も、コアラの事を他人とは思えなくなりました。

タグ: 動物と俳優 役をつかむ 一瞬を切り取る 非日常の演出 続ける事が大事 シェイクスピア


俳優について

__ 
西岡さんが考える、良い俳優とは?という事を聞こうと思うのですが、今までの話で言うと、欲望を持つ事が出来る俳優という事になるのかな。
西岡 
そういう捉え方ももちろん出来ますが、でもまだ、いい俳優とは何かというのを自分の言葉では表せなくて。教えてもらった事を受け売りで言う事は出来るんですが。色々細かい要素を言う事は出来るんですけどね、人の話が聞けるとか、交流出来るとか、欲望を持てるとか。何なんですかね・・・?でもみんないい俳優だとは思うんですけどね。
__ 
そうですね。
西岡 
みんないい俳優だけど、良くない部分もある。でも、本来はみんないい俳優だと思うんです。

タグ: ギラギラした俳優


身体に目を向ける

__ 
東京に移って、どんな事を考えるようになりましたか?
西岡 
自分の身体と思考について、とか、何かに関わっている時のそれぞれの自分の事をその都度観察する事が多くなりました。
__ 
ええ。
西岡 
京都にいたときには、フワフワしているのは悪と思っていて、目的をバチーンと決めようとしてました。いついつまでにこうなるんだみたいな猪突猛進な自分だったなと思っていて。東京に来たら、誰も私の事は知らない他人ばっかりだし、ギュウギュウの満員電車にいたら、いま何をしてるんだろうなあ自分は、と思う。日頃無視していた自分の身体に目を向けるようになったと思います。それは、研修のプログラムから影響を受けた部分もあります。
__ 
内面に目を向けるようになった?
西岡 
「こうしなきゃいけない」という意識から、「今自分はどういう状態であるか」という意識が強くなった。(今私はこの人が嫌いかもしれない)とか、(この人と仲良くなりたいけど、身体がバタバタしているようだ)とか。決めてかかってた時より呼吸がしやすくなりました。
__ 
なるほど。
西岡 
頭でっかちな性質と、自分の身体との連動性を付けようとしているのかもしれないですね。結構、バラバラしている傾向があるので。
__ 
完全に把握したいと。
西岡 
完全に把握は出来ないと思いますけどね。だけど以前は今より自分本来の性質に無自覚だったのかもしれません。
__ 
精神と身体を同時に常に把握する事は、とても有効な俳優のトレーニングかもしれませんね。
西岡 
まだ、分かってるつもりだったり分かっているだけの状態かもしれませんけどね。自分が分かっていないと感じたら周りに指摘してもらう、それぐらいの気持ちでいたいですね。東京に来てからは、人に頼るという事も増えたかもしれません。以前は全部自分でやろうとしていました。人に頼ったり任せる事も大事だな、って。
__ 
なるほどね。

タグ: 俳優の身体認識 出立前夜


質問 肥後橋 輝彦さんから 西岡 未央さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた方から質問を頂いてきております。京都ロマンポップの肥後橋輝彦さんからです。「プロポーズの言葉は何にしたいですか?」自分からする場合を教えてください。
西岡 
自分から!?口には出さないかもしれません。手紙にするかもしれませんね。前置きを書いて、言葉を組み立てて、これで完璧だと思ってから投函したいです。直接伝えようとすると、言葉に詰まってしまうかもしれない。キレイな便箋を探して、長い手紙を書くと思います。

生き残る

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか。
西岡 
攻めない方向で行きます。(笑う)私には「攻める」という語感が強烈なので、攻めずに、どうしたらすくすく健康に演劇を続けられるかを考えていきたいと思います。最終的に生き残れればいいなー。
__ 
なるほどね。

タグ: どんな手段でもいいから続ける


ムーミンの小物入れ(ミィ)

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
西岡 
ありがとうございます。
__ 
どうぞ。
西岡 
(開ける)あ、ムーミンですね。好きなんですよ、ミィが。
__ 
良かったです。
西岡 
荷物がよくバラけてしまうので、こういうポーチとかはありがたいです。

タグ: プレゼント(ムーミン系) プレゼント(ポーチ系)


舞台美術のためのワークショップ公演、準備中

___ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。肥後橋さんは最近、いかがでしょうか。
肥後橋 
お芝居の事で言うなら、8月の「舞台美術のためのワークショップ公演」の準備をしています。初めてのプロデュース業なので、大変といえば大変ですね。演劇以外としては、僕は非常勤講師として働きながらお芝居をやっているんですけど、職場で僕の役者写真が流出して教室で張られていたりしています。白塗りのピカチュウの写真とか。
___ 
そう、先生をされているんですよね。教科は何でしたっけ。
肥後橋 
理科を教えています。
___ 
そうなんですね!そういえば。いきなり話が脱線しますが、昔の笑の内閣のサイトの肥後橋さんの役者紹介の写真。フレミングの法則のポーズしてましたよね。
肥後橋 
それを難しそうな顔で見てましたね。
___ 
白衣でね。
肥後橋 
笑の内閣は楽しいですね。僕が学生劇団の頃、一番多く客演していたのは内閣でした。
___ 
肥後橋さんのレスリング、とても面白かったです。
京都ロマンポップ
「物語は幸せへの通り道」京都ロマンポップは、2005年京都を拠点として旗揚げしました。作品は、よりふじゆきによる脚本:本公演と、向坂達矢による脚本:さかあがりハリケーンの二本を支柱としています。現在は、向坂達矢による脚本:さかあがりハリケーンを主に発表しています。本公演の舞台設定は、古代ローマ、中世ドイツ、昭和初期日本、そして現代と多岐にわたっていますが、一貫して描かれているのは普遍的な人間の悲しさや苦悩であり、そこから私たちの「生」を見つめなおす作品です。哲学的な言葉を駆使しながらも、役者の熱や身体性を重視する、ストレートプレイ。「ロマンポップ」の名前の通り、エンターテイメント的な要素も取り入れながら物語を紡ぎます。さかあがりハリケーンは、短編作品集です。その作品群は「コント」ではなく「グランギニョール」ただ笑える作品ではなく、どこか屈折した退廃的な空気が作品に漂います。歌やダンス、身体表現を最大限に取り入れていますが、対峙するは「現代の演劇手法」です。(公式サイトより)
第1回 舞台美術のためのワークショップ公演
公演時期:2014/8/15~17。会場:東山区総合庁舎2階 東山区青少年活動センター。
笑の内閣
プロレス芝居や言論を舞台にしたお笑い芝居政治的な分野にアプローチする劇団。

タグ: 次の公演 会場を使いこなす


どくの沼地歩くから命へる 歩かなければすぐに死ぬ

___ 
京都ロマンポップの前回公演、「どくの沼地歩くから命へる 歩かなければすぐに死ぬ」が素晴らしく面白かったです。今一番、脂の乗った時期と言えるかもしれないですね、ロマンポップ。ここ最近で見た中で一番面白かったかもしれない。
肥後橋 
ありがとうございます。
___ 
2本目の作品。肥後橋さんは、主人公のライバル役を演じられましたね(主人公は向坂さん)。
肥後橋 
そうですね。基本的には凄くいい人でみんなから好かれていて、でも主人公にとっては迷惑な部分がある。コンビニで会ったらグイグイと近寄って来られて、少し空気が読めないところが、ネガティブな人を傷つけてしまう。そんな人物を描きたかったんだと思います。
___ 
そうそう。しかし反面、主人公が作った作品を本当に評価してたり・・・
肥後橋 
ええ、一番上手く解釈して、自分がやりたい事の理解者だったという。そこが主人公にとってはやりきれないですよね。本当はいい奴で、でも認める訳にはいかない。逃げ場がないですよね。
___ 
そして、「僕を理解するな!」と拒否して終幕しました。プライドはとっくに傷つけられていて、そのうえ愛されてしまった苦しみ。
肥後橋 
そうですね。「愛されてしまった」というのはありますね。
___ 
それは本当は、彼が求めていたものではあるのですが。ラストシーンの直前に彼は、四条通で無差別テロをするためにトラックならぬ自転車を借りてましたね。武器を持って世界を壊そうとするけれども、ライバルに出くわしてしまい、彼の本質である芸術性を愛撫されてしまった、その混乱。
肥後橋 
現代では、テロの対象としての特定の場所がないという事もあるんですね。事件を起こす舞台がない。昔だったら二・二六事件のように、場所があるんですが・・・
___ 
認められない事が、攻撃心に結びつき、対象を見つけられないまま・・・
肥後橋 
不意に現れたライバルこそが攻撃対象かと思っていたら自分の唯一の理解者だったという。

タグ: 死と性と ユニークな作品あります 愛を厭う 成長拒否


猿にしか見えない熊の話

___ 
3本目のコントでは肥後橋さんは泥団子のバイヤーでしたね。複雑というよりは歪つな構造の作品でした。話の時系列が入れ替えられたりして。ライブハウスの中でやっているのが信じられないぐらい、広がっていく詩情を感じさせる出来でした。
肥後橋 
向坂さんがリーディング公演に参加していたのが影響しているのかなと思っています。3本目の主人公も向坂さんだったんですけど、心象風景を他の役者が演じるのかと思っていたら、彼が小道具の単行本で過去の語りをやっている方が面白かったですね。と思えば、熊の・・・
___ 
ああ、猿にしか見えなかった熊の。
肥後橋 
泥団子の小屋を荒らすシーン。最初は、役者の体に「熊」と書いた紙を貼ろうかという案が出ていたんですけど、稽古場でそれはナシになって。そうしない方が何なのか分からないし、面白いなと。皆、共通で思ってましたね。
___ 
それは大事な事だと思います。実際、そちらの方が面白いです。
肥後橋 
バカバカしくて下らない、ちょっとダサい事をするのが僕らの作風だと考えてもらえたら。

タグ: 下らなさへの礼賛


舞台を組んでみよう、作ってみよう。きっとすごく刺激的

___ 
肥後橋さんがこの度プロデュースされる、舞台美術のためのワークショップ公演。既に受講生が集まり、公演に向けて準備が進んでおりますね。本番は8月15日から東山青少年活動センターにて。成果としての舞台美術を出発点に、5つの劇団が作品を作って競演する本公演ですね。まず、企画の発端を教えてください。
肥後橋 
舞台美術の人って大変だなと前から思ってまして。作業時間が多すぎてバイトも出来ないし、知り合いから「安く頼むよ」って言われたら友達料金で引き受けざるを得ないし。大変ですよね、とそういう事を話してたんです。
___ 
分かります。舞台のタタキ作業は実際、やり甲斐がありますからね。
肥後橋 
反面、京都は素舞台の作品が多いですよね。実は、僕が以前舞台監督の仕事を引き受けた時、舞台のセットはほとんど何もない素舞台だったんですよ。小道具のTVを用意しただけ。
___ 
そうですね。
肥後橋 
この流れがずっと続いたら、学生の子らは「この舞台美術、凄い!」って思うような経験が無くなってしまうんじゃないかと思ったんです。以前、MONOの「なるべく派手な服を着る」を見た時に、(すごいなこの舞台、どうやって作るんだろう)ってなったんですよ。学校に帰って2階立てのセットを組んだりしました。そういう経験が取っかかりですね。
___ 
なるほど。
肥後橋 
素舞台もいいですけど、ちょっと舞台を組んでみませんか?という発信ですね。講師を外部から呼んできて、WSの受講生を集めてきて、一つのセットを作る。そういうプランです。
___ 
そのセットが良かったら舞台美術という役割の価値も上がると。

タグ: 舞台美術


驚きの舞台を起点に生まれた、人気劇団の作品に注目

___ 
今回は舞台を作るというだけじゃなく、5劇団による公演もありますね。
肥後橋 
演劇を作る時、普通は脚本ありきでセットが作られますよね。でも、学生の時に「ただただこんなセットが作りたい」という衝動ってあったんじゃないかと。
___ 
ありますあります。分かります。
肥後橋 
昔の先輩が、巨大な二枚貝がパカッと開くセットを作った事があって。でも、そんな台本世の中に無いんですよ。
___ 
そうですね。
肥後橋 
そして先日、竹内良亮が「城を作りたい」と言い出して始まった伝舞企画。なら、舞台のテーマが先行する演劇というのもあるんじゃないか。それを、僕ら京都ロマンポップだけがやるのはもったいないから、ゲスト団体さんをお呼びしたら面白いんじゃないかと。
___ 
素晴らしい。京都ロマンポップステージタイガー壱劇屋劇団ZTON、カメハウスですね。どうやって作品作りが進められていくのかも楽しみですね。
肥後橋 
今回、「Sketchup」というCADソフトでセットの設計を進めています。それを先日、各劇団さんにお送りしたんですね。その後脚本を書いていただき、テクニカルミーティングでプランのすり合わせをして。結構大変ですね(笑う)。
___ 
実は、ワークショップ公演という触れ込みから作品に目が向いてない部分があったんですけど、それぞれ、どんな作品を作っていくのかも楽しみですね。壱劇屋とか。
肥後橋 
西分さんが高校の後輩で。今回の窓口になってもらったんです。壱劇屋は普段、舞台セットを建て込まないので楽しみにしてると言ってくれて。
___ 
ステージタイガーは安心して期待出来るし、ZTONは時代物なのかな。他の劇団とのギャップとかも含めて面白そうですね。
伝舞企画
公演時期:2013/9/20~23。会場:京都大学西部講堂。
ステージタイガー
俳優達の鍛え上げられた圧倒的な筋肉。それに最大限の負荷をかける事により、人間の奥深くに眠る野生のエネルギーを創出する。そんな超体育会系演劇を目指すステージタイガーは、関西を代表する強く、切なく、そして狂おしい劇団です。15名を越える劇団員で、自主公演だけに収まらず、ライブハウスから廃校まで、年10本以上のイベントにも出演中。今日もあなたの元へステージタイガー。もう、君にムキキュン。(公式サイトより)
壱劇屋
2005年、磯島高校の演劇部全国出場メンバーで結成。2008年より大阪と京都の狭間、枚方を拠点に本格的な活動を開始。主な稽古場は淀川河川敷公園で、気候や時間帯をとわず練習する。マイムパフォーマンスを芝居に混ぜ込み、個性的な役者陣による笑いを誘う演技にド派手な照明と大音量の音響と合わせ、独自のパフォーマンス型の演劇を行う。イベントではパントマイムやコントをしたり、FMラジオにてラジオドラマ番組を製作するなど、幅広く活動している。(公式サイトより)
劇団ZTON
2006年11月立命館大学在学中の河瀬仁誌を中心に結成。和を主軸としたエンターテイメント性の高い作品を展開し、殺陣・ダンスなどのエネルギッシュな身体表現、歴史と現代を折衷させる斬新な発想と構成により独自の世界観を劇場に作りあげ、新たなスタイルの「活劇」を提供している。(公式サイトより)
カメハウス
近畿大学文学部芸術学科舞台芸術専攻演技コース出身の代表・亀井を筆頭に旗揚げしたパフォーマンス演劇集団。亀井が作・演出・振付を行い、彼の作り出す世界は多人数が動き回るエンタメ作品から、少人数で構成された繊細な文学的作品まで幅広い。楽曲のPVの様なパフォーマンスが芝居の中に多用されるのが特長で、身体全てを使った独特な表現を追求している。本公演以外にも、チャリティー企画や文化祭、前説など各種イベント及びコンテストや、LINX'Sなどの演劇祭に出演。映像製作にも力を入れている。(公式サイトより)

タグ: 繊細な俳優 京都と大阪・大阪と京都 町とアートと私の企画 世界観の作り込み


モノづくりの体験から・・・

肥後橋 
今回の企画が始まってから僕の中でも考え方が変わってきて。7人の受講生が集まって一つのものを作るのは難しいんですね。しかも、今回は脚本がない。話し合いばかりで無駄な事も多い。でも、そんな機会ってもしかしたら他に全然無いんじゃないか。これはもしかしたら、参加者にとっては凄く貴重な経験になるんじゃないかと思うんです。
___ 
というと。
肥後橋 
簡潔に言うと若者支援というか、社会とつながりを持てないけれども、集団で一つのプロジェクトに参加して、自分の意見と相手の意見をぶつけながら一つの成果を生んで、そこに評価が付いたら、若者による若者の支援という形になるかもしれない。
___ 
なるほど。自分達の作ったセットから生まれた作品が、観客に届く体験。それは自信が付くでしょうね。
肥後橋 
以前、友人がそういう福祉関係の仕事に就いていて。自分の演劇を通して、人の役に繋がれたらなと思います。そういうところにも足を運んで、裾野を広げて行けたらと思います。
___ 
それはもちろん、参加者の積極的な態度が必要になると思いますけどね。
肥後橋 
そうですね。今回の場合、モノづくりに対する主体性は、通常の劇団の中での活動とは違うかなと思います。
___ 
あえて言いますが、「ワークショップ公演」という触れ込みからは、正直、品質の高い演劇作品は想像出来ませんでした。ですがお話を伺っているとどんどん楽しみになってきますね。レベルの高い上演を期待しています。

タグ: その題材を通して描きたい 若者支援


こだわりが交流する場

___ 
「自分で舞台空間を作る」。それはとてもワクワクするものですよね。
肥後橋 
言ってしまうと、今回製作する舞台のテーマは「時間」です。時計の絵を出して来たり、地層の話になったりしました。一つのセットにものすごくこだわっている子もいたり。面白い物を用意するので、楽しみにしていてほしいです。美術的に凝ったある物が登場しますので期待してほしいです。
___ 
楽しみですね。
肥後橋 
時間をテーマに、ある大きな物と小さな物の対比があって、その二つが対比する様子や、噛み合わなさについて延々と喋ってるんですよ。結局、うまいこと配置出来る事になりましたが。
___ 
舞台セットと演劇が化学反応を起こして、観客がいて、その時間が統一されるというのが理想的ですよね。もちろん簡単な道のりではない筈で、劇団側にとってはセットから決められるという状態が不利であり、魅力的な条件と言えるでしょうね。
肥後橋 
各劇団の作り方の個性がハッキリ出ると思います。お題を出す側として、受講生も色々考えてみてくれていますね。さらに、楽しみに見に来てくれたお客さんがいればいるほど、色んな立場の人が交流する場になると思うんです。
___ 
そういう場になってくれればいいですね。

タグ: どう思ってもらいたいか?


___ 
芝居を始めたキッカケを教えてください。
肥後橋 
高校生の時のクラス演劇がキッカケです。その時期、休み時間になると廊下には必ずと言っていいほどどこかのクラスの女の子が泣いてたり揉めたりするんですよ。それぐらい熱くなる。
___ 
へえ。
肥後橋 
みんなで一つの事をやるって面白いなあと思って、大学でも演劇をやろうと思っていたんです。その当時、クラスに大学生の講師が来て下さったりして。福田恵さんという。
___ 
ああ、福田さんが講師の時代ですか。その時代、福田さんにインタビューしてますからね
肥後橋 
それから高校3年の時にNFに出させてもらったのが、京都での初舞台でした。
___ 
役者としての肥後橋さんが面白いですよね。勢いのある人で、顔芸も凄い面白いのに、内面を表現する芝居をふとした時にされると意外性とともにいとおしくなる感じ。肥後橋さんは、いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
肥後橋 
僕、よく顔芸だよねって言われるんですよ。あまり意識はしていないんですけど。その、あまりセリフは得意ではないかもしれません。
___ 
ええ。
肥後橋 
セリフが減って悲しむ役者もいるんですが、僕はあまりそういう事もなく。セリフじゃない部分が好きですね、ノンバーバルの一人劇とかしてみたいなと思います。
___ 
IN SITU大石さんが「理想としては、役者の小さい動きだけで全ての意味が変わるような、人物の心の動きが全て分かるようなそんなシーンがしたい」と言ってましたね。
肥後橋 
gateで彼の芝居に出た時、共感する事が多かったです。まあ、細かい動きまでは覚えられないですけど(笑う)。役者をやってて一番影響を受けた事件があって、nono&liliの「カラのウラのソラ」という作品で伊藤えん魔さんと共演した事があるんです。
___ 
ありましたね!
肥後橋 
ゲネが終わった後で、めっちゃ怒られたんですよ。「お前舐めてるのか」「表出ろ」って。僕も若僧だったんでイラっとしてしまって「はあスミマセン」って感じだったんですけど懇々と言われている内にかき立てられたというか。居残って、最後のシーンの稽古を付けてもらったりして。
___ 
素晴らしい、というか羨ましい。
肥後橋 
その時の影響が今でもあります。「ソウルだ、ソウルを持て」と言われました。で、1ステが終わった後、再前列のお客さんが泣いてたんですよ。
___ 
おお!
肥後橋 
終わった後、「おう、ちゃんとやって良かったな」と言われまして。裏で握手しました。その時の経験は財産です。感情を大切に、そこを始まりにして演技する事。えん魔さんにバチバチ怒られながら、「もっとだ、もっと震えろ」と言われながら最後の稽古をしたのが大きいです。
IN SITU
ラテン語で「あるべき場所」という意味で、イン・サイチュと読む。大石達起が、劇団ケッペキ卒団後に自らの新たな表現の場として立ち上げる。主に近代の海外戯曲を上演し、そこに描かれた普遍的な人間の生活、人と人との繋がりを現代に復活させる事で演劇の、あるいは自分自身の「あるべき場所」を追求する。(こりっちより)
nono&lili.
京都を拠点に活動する劇団。
nono&lili,『カラのウラのソラ -弁慶の泣きどころ-』
公演時期:2010/11/26~28。会場:間座スタジオ。

タグ: 自分を変えた、あの舞台 「核心に迫る」 いつか、こんな演技が出来たら 伊藤えん魔さん 美しい1ミリ


質問 山野 博生さんから 田中 次郎さんへ

___ 
前回インタビューさせていただいた、山野さんから質問です。
肥後橋 
あ、最近仲良いんですよ。
___ 
そうなんですね。「演劇と野球は似ていると思いますか?」
肥後橋 
え・・・似てないんじゃないですか?あんまり野球は好きではないのでよく分からないですね。
___ 
山野さんによると、野村克也のID野球が、演劇の考え方と同じだとか。
肥後橋 
そう言われればそうかもしれませんね。