そんな所まで行けたらいいわね

__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
髙橋 
私が尊敬してやまない青年座の先輩、高畑淳子さん。人間的にも尊敬しているんですけど、先日、入団10年目にしてやっと一緒に仕事させていただいたんです。藤山直美さんと高畑さんがW主演をした『ええから加減』という舞台に、方言指導という形で付いて回ってました。そこでお話した時に、あの高畑淳子さんでさえ、本番前は手が震えるぐらい緊張するって。でも散々悩んで決めて進んで、必死で覚えて、自分が作ってきたものを出すしか無いんだ、って仰ってたんですね。本当に素敵だなあと。方言に関しても大阪弁を血の滲むような努力をされて。私なんて全然努力してないわと思うぐらいの。
__ 
いえいえ。
髙橋 
尋常じゃないぐらいの努力を。やっぱりこれぐらいストイックに努力しないといけないんだ。あの淳子さんが袖で「怖い、本当に怖い」って言うんですよ。一緒に焼き肉に行った時、「いつか、セリフを吐き捨てるように言えるようになりたいわ」と仰ったのが印象的で。
__ 
セリフを吐き捨てる?
髙橋 
セリフがその演技の上で「これはセリフです!」って存在しているんじゃなくて、吐き捨てているけど表現として届く、みたいな。そんな所まで行けたらいいわねって。まだまだ高みを目指していらっしゃって。目指す所が無くなったら壁を伝っていくんじゃないかと思うぐらい。
__ 
なるほど。
髙橋 
下に対しても気を遣われる姿勢が素晴らしくて・・・最高に尊敬する先輩です。

タグ: セリフを吐き捨てるように発する


視界に余裕が生まれる?

__ 
これまでに一番、ご自身を変えた舞台は何ですか?
髙橋 
出演させて頂いた舞台の全てにおいて、沢山の事を吸収しています。有り難いことに、外部で出演させて頂く機会も多く頂いて。例えば松平健さんや藤山直美さん、石原さとみちゃんとも共演した事もあって。やっぱり一線で活躍されている方を間近で見ると、その姿勢にシンパシーを頂くんです。
__ 
青年座というホームとは全然違う経験でしょうね。
髙橋 
実を言うと、当初は「ああ、青年座っぽいよね」って目で見られる事に凄く抵抗がありました。でも今はいい意味で逆手に取って、その現場に合わせて「青年座の」自分だけのものを持っていくようにも出来るようになったり。結婚してからは、これまでの経験にも別の視点から見れるようになりましたね。
__ 
そういう風に、自分を変えていけたんですね。
髙橋 
これまでキリキリとした意識で現場に向かっていたんですけど、結婚の節目を越えてからは視界に余裕が生まれた気はします。

タグ: 結婚について 色んなものを吸収 演劇人同士の繋がり ホーム/アウェイ 結婚したら・・・ 人生の節目


少なくとも11,175よりも多い絆

__ 
その頃に見た衝撃作を教えて下さい。
髙橋 
青年座の作品ですが、高畑淳子さんが主演された『パートタイマー・秋子』に衝撃を受けましたね。あと、映画だと『CHICAGO』。キャサリン・ゼタ・ジョーンズの演技が凄くて、10回以上見ましたね。東京で見た初めての映画で、女がのし上がっていくストーリーなんですね。自分も東京でやっていく!という思いがあって。それと、ミュージカルへの思いが残っていたんですね。の割に青年座に入ったんですけど(笑)
__ 
青年座ではミュージカルは難しい?
髙橋 
研究所時代、授業で「バルタン星人になってください」というお題が講師の方から出された時に、ちょっと戸惑い・・・(笑)その後、入団して“ああ、私はミュージカルとは本当に関係ない劇団に入ってしまったんだ”って。今はあまり思わないですし、それまでやっていた日舞やダンスは今でも現場で役に立つので、何も無駄じゃないんですけど。
__ 
青年座の稽古で、どんな時間が好きですか?
髙橋 
家族というか、同じ釜の飯を食う、みたいな。同じ青年座という絆は感じます。でも約150人もの役者さんがいるのでまだ会った事のない方もいらっしゃるんですけどね。
__ 
ええ。
髙橋 
先輩が、後輩を何とかしてあげようという気持ちも色んな状況で感じるんですよ。アプローチはそれぞれ違うんですけど、後輩も先輩に相談しに行きやすくて。そういう環境が、すごく素敵ですね。お酒の席でも、大先輩に「あのシーン、どうでした?」って言い合えるんですよ。
__ 
いや、それはそういう事が積極的に出来る髙橋さんが素晴らしいですね。
髙橋 
いえ、それでも行き詰まってしまう自分が情けないという気持ちは強いです。

タグ: ミュージカルの話題 演劇研修所 自分を変えた、あの舞台 日本舞踊 後輩たちへ 衝撃を受けた作品


今も、それぞれの場所で

__ 
髙橋さんがお芝居を始めた経緯を教えてください。
髙橋 
私、兵庫県出身なんですけど、宝塚歌劇に憧れて。どうしても入りたかったんです。「あそこは入るところやない、見るところや」って母には言われたんですけど親不孝して受験スクールに通わせてもらって。入学試験に最終まで残ったんですけど落ちてしまったんです。それで1年、ダンスのレッスンを受けながらバイトして、お金を貯めて。お芝居をしようと思って東京に来たんですね。
__ 
近くに宝塚歌劇団にあった、というのがまずはキッカケだったんですね。東京に来てからは?
髙橋 
まず、関西でお芝居をやる環境を探そうと思うと、今ほど情報が溢れている訳じゃなかったので。新劇の劇団の養成所の内、青年座だけ受かったんです。受験がボロボロだったので、もう発表を見ないで帰ろうかなと思ってたら、受かってました。
__ 
おめでとうございました。
髙橋 
それがキッカケでした。“あ、家探さなアカン”となりました。上京した翌週から養成所で鬼のカリキュラムが始まって、その集大成としての公演をして。その時のメンバー達とはすごく絆が深いです。毎日毎日、12時間以上一緒に過ごしたんです。自分にとっては大事な経験です。今も、それぞれの場所で頑張っている同期を誇りに思います。

タグ: 演劇研修所 厳しいレッスン 入団の経緯


私のホントと嘘の質

__ 
今回、髙橋さんが配役を演じるうえで大事にしたいポイントは。
髙橋 
そうですね。私の演じるのは嘘つきな女の役なんで・・・毎回、早川さんの脚本で私に振られるのは、本当にこれ、私が演じるべき役なのかなと思うんです。でもまあ、毎回、途中から「これが面白いんだ」って思えるようになるので。これでいいんだと。
__ 
今回も違和感があるんですか?
髙橋 
早川さん曰く、私には「虚飾」を感じるらしく。たぶん、そういう本質を付いたキャスティングなんだと思うんです。正直、個人的には好きになれない女性像なんですけど、でも、だからこそ私の本質に近いのかもしれない。本当は私の本質はこういうものなのかもしれない。だからピンとこなくて苦しんでいるのかも・・・。他の作品とはまた違うアプローチを掛けていく感じですかね。
__ 
なるほど。それが今回演じられる、リサ・ブライアントですね。
髙橋 
そうですね。彼女自身が、何が本当なのかわからなくなる程自分の嘘に辟易していくような気配が出せたらいいなと思います。
__ 
現時点で、役作りの上での気付きは何かありますか?
髙橋 
いや~、もう行き詰まって困ってしまって・・・でも、舞台上の世界観の中で、板の上でちゃんと生きている事を最低限にしようと思っています。分からなくなったら、とにかく嘘を付かずに、その場にいる。という事を大切にしようと思っています。今回のリサ役はウソツキなので、嘘の質を考えて演技をしないと。
__ 
嘘の質?
髙橋 
嘘と分かる嘘なのか、見破れないくらいリアルな嘘なのか。私個人は基本、嘘を付けない人間らしいので。
__ 
本当に嘘を付くのが上手い人は、「嘘がヘタだと思われている人」らしいですよ。
髙橋 
えっ、そうなんですか。
__ 
いや、私もこれの意味は良く分かってないんですけど。
髙橋 
(笑う)
__ 
相手の、嘘を見破らせる洞察の深さまで調節させられるという事かもしれませんね。
髙橋 
そうなんですね。
__ 
では、公演の見所を教えて下さい。
髙橋 
青年座の、キャリアある素晴らしい俳優達を早川さんがどう料理するのかというところですね。稽古場でも、上は70歳の俳優まで幅広いメンバーが若手の早川さんを尊重して、早川さんも俳優達を一人一人尊重して、誰に対してでも真髄を付く駄目出しをしています。劇団の中にも新鮮な風が吹いているというのが、客席にも伝わればいいなと思います。

タグ: 登場人物が好きになれない キャスティングについて 役をつかむ 優しい嘘 次の公演 嘘のない


60周年の原点回帰

__ 
UNIQUE NESS』。青年座創立60周年記念公演第2弾の三部作「Act3D」の内の1本、髙橋さんが企画された公演ですね。凄いですね。ではまず、企画の経緯を教えて頂けないでしょうか。
髙橋 
青年座は、演技部と文芸部と演出部、製作部で劇団の中でセクションが分かれているんですね。私は演技部なんですが、役者だけが集まった演技部会の中で公演をしようという事になったんですよ。
__ 
60周年!記念する価値がありますね。
髙橋 
60周年の原点回帰というコンセプトもあるんです。企画自体は10本以上あったんですが、早川さんの作品はキャッチーなものも多いので、中でも立ち上げ委員会の目を引いたというか。
__ 
それはもう、プレゼンも上手くいったんでしょうね。劇団ガバメンツとはどんなキッカケで?
髙橋 
元々、3年前に劇団ガバメンツの作品を東京で見たんです。劇団員の西岡(裕子)さんがお友達だったんですけど、観に行ったらドハマリして。公演直後に主宰の早川(康介)さんに「出してください」と言ったら「じゃあ、出て下さい」と即決して。青年座ではなかなか触れる事のない演技だったんですよ。
__ 
というと。
髙橋 
たとえば、ガバメンツ公演に出演した時、自主稽古をしていたんです。その時、芸人さんに求められるようなギャグを求められて困ったワタシに劇団員の方が、「ここは理由とか裏の描写とかではなくてノリでやってみたら?」って言われて。カミナリが落ちたくらいの衝撃を受けて。何より早川さんの作品は、裏付けもリアルも大切にちゃんと芝居をした上でのコメディ。青年座の役者さんて、「何故この人物はここでこう言うのか」と深めて深めて芝居するんですよね。だったら、ノリも加わった芝居が出来る上に裏付けのある演技が出来たら最強やなと。そうなれたら素敵やなと。そう思ったのがきっかけです。青年座はこれまでブッとんだ事をやってきた劇団なので、今回の企画をこういう風に許してくれる懐の深さが、60年続いた所以なのかなとも思います。
__ 
「ノリ」で芝居を作る。それが衝撃だった?
髙橋 
関西人の多い現場だったし、私も関西人なんですが、俳優は上京してから始めたので。芸人顔負けの面白いメンバーの中にポッと新劇の俳優が出てくると、全然違う空気をまとっていたみたいで。裏付け裏付けでがんじがらめになっていたんですけど、そこから次のステップに行く、いい契機だったんです。
劇団ガバメンツ
「コメディしかできません、でもいろんなコメディができます」シュチュエーションコメディばかりがコメディじゃないラブコメディ、サスペンスコメディ、スクリューボールコメディ、トラジコメディにコメディコメディ。喜劇はこんなにあったのか。喜劇を愛する全ての人と、そうでもない全ての人へ。1年に1回しか演劇を見ない人の為に、さまざまなスタイルの喜劇に挑戦している。(こりっちより)

タグ: コンセプチュアルな作品 衝撃を受けた作品 大阪演劇と「出会う」


劇団青年座創立60周年記念公演 第2弾Act3D ~役者企画 夏の咲宴~『UNIQUE NESS』

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。
髙橋 
はい!よろしくお願いします。
__ 
最近、髙橋さんはどんな感じでしょうか。
髙橋 
ええと、3月30日に念願の東京ディズニーリゾートで挙式しまして。その後、ハネムーンにも行かないまま青年座の芝居の稽古に参加しまして。その『見よ、飛行機の高く飛べるを』が終わってほっとしてたら、息をつく間もなく、『UNIQUE NESS』の稽古に突入して。なんかもう、旦那さんを完全に放置してしまい、後ろ向きな気持ちが・・・。7月1日から稽古が始まったんですけど、起きてる旦那さんを見ていない感じですね。
劇団青年座
劇団青年座は「創作劇の上演」を趣意書に謳い、1954年5月1日森塚敏、東恵美子、成瀬昌彦、天野創治郎、土方弘、中台祥浩、初井言榮、山岡久乃、氏家慎子、関弘子、ら十人の俳優によって結成いたしました。同年12月17日俳優座劇場で椎名麟三作『第三の証言』をもって第一回公演をおこない、以後、矢代静一、八木柊一郎、宮本研、水上勉ら多くの劇作家と共に数々の創作劇を上演してきました。1994年の創立四拾周年以降はマキノノゾミ、永井愛、ふたくちつよし、中島淳彦、鈴木聡、土田英生、齊藤雅文、太田善也、野木萌葱ら、現代演劇を代表する劇作家の新作を次々と上演し、高い評価を受けております。(以下省略)(公式サイトより)
劇団青年座創立60周年記念公演 第2弾Act3D ~役者企画 夏の咲宴~『UNIQUE NESS』
公演時期:2014/8/1~10。会場:青年座劇場。

タグ: 最近どう?


経験と総括・1

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、山野さんはどんな感じでしょうか。
山野 
最近はありがたい事にとても充実しております。去年は実は色々しんどくて・・・。ご存じかもしれませんが努力クラブも辞めて・・・。余談なんですが僕四柱推命とかタロットカードとか占いが好きなんですけど専門の方に聞いた話だと大殺界の1番しんどい時だったそうで(苦笑)。もう演劇をやめようとまで思ってたんですけど。
__ 
ええ。
山野 
でも努力クラブを辞めてから自分はやはり演劇を求めているんだと。演劇が大好きだと気づいて。
__ 
あごうさんのWS公演に参加されてますね。その影響があったりしますか?
山野 
ありますね。大きいです。芝居を全く0の状態から、しかも全く初めて会った人達と造るということは難しいことなんですよね。付き合いも短いし、まだお互いのことがよくわかっていない状態から造っていかなくてはならないわけですから・・・。しかしそこがWS公演の難しいところでもあり、同時に醍醐味でもあると思っているんです。今は楽しいですよ。
__ 
なるほど。
山野 
そういう訳で立ち直れたんですが、やっぱり大きかったのはTHE ROB CARLTONの「シガールーム」に出演した事ですね。すごく良い経験でした。まず、脚本がとても難しかったんです。全然上手くできなかったんです。
__ 
残念ながら見逃してしまったんですけど、相当面白かったそうですね。どんなお話だったんですか?
山野 
19世紀初頭の大富豪達の話です。大富豪達がシガールームで葉巻とブランデーを楽しんでいるうちにドタバタ騒ぎになるという(笑)人生初めての外国人役で、シガールームで優雅なひとときを過ごすというシチュエーションも初めてで。大富豪の流麗な動きなんて映画で観たことがあるくらいで実際に芝居でやった事もなかったので(苦笑)あんな緊張した舞台は初めてでした。それで周りの皆さんにすごく迷惑を掛けてしまったんです。でも、THE ROB CARLTONのみなさんがとても気を使って良くしてくださって。嬉しかったですね。「こんな大舞台を経験させてもらった自分はなんて幸運なんだ」と。
__ 
ご自身では、「シガールーム」はどんな体験だったと総括していますか?
山野 
「自分は一人で生きているんじゃないんだ。」と思い知らされましたね。色んな人のお世話になって色んな人に優しくしてもらって・・・すごく嬉しかったし、人生観が変わったような気さえしています。
努力クラブ
2011年3月に佛教大学劇団紫で団長をしていた合田団地と立命館大学劇団西一風で座長をしていた佐々木峻一を中心に結成。現在団員は四名である。京都を中心に活動している。(公式サイトより)
THE ROB CARLTON
京都で活動する非秘密集団(こりっちより)
THE ROB CARLTON 7F「ザ・シガールーム」
公演時期:2014/2/7~2/11。会場:元・立誠小学校 音楽室。

タグ: THE ROB CARLTON


vol.364 山野 博生

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2014/春
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山野

猿そのものは死んだ

__ 
「猿そのもの」という芸名から、本名に戻りましたが、どんな心境の変化がありましたか。
山野 
「猿そのもの」という芸名に最初はちょっと抵抗があったんですよね。ただ、そのおかげで多くの方に知ってもらえて人気が出たというのも間違いのない事実なんです。THE ROB CARLTONの「フュメ・ド・ポワソン」に「猿そのもの」の名前で出演した時も評価してもらえましたから・・・。正直にお話しすると本名の山野博生(ひろき)に戻すのもちょっと迷ったんです。実は今も「猿そのものでいいんじゃないのか?」という方は割といらっしゃるんですよ。覚えやすいし、良い名前だと(笑)そう言ってくださる方達には申し訳ないんですけど僕はずっと不安で・・・。長い目で見たらいつかツケが回ってくるんじゃないかと思っていたんです。「猿そのもの」と名前だけ知っている方が多くなって、「自分は有名になった。」と勘違いしてしまうんじゃないかと、調子に乗ってしまうんじゃないかと。
__ 
なるほど。
山野 
僕は役者としてはまだまだですから。あくまでも舞台上で演劇を成立させることを第一に考えるべきだと。あくまでも演劇に真摯に向かい合うべきだと思っているんです。自分の今の実力には不自然な、自分の実力で勝ち得たわけではない知名度を得てしまうのは良くないと考えたんです。
__ 
「猿そのもの」を辞めた事で、今はどんな気持ち?
山野 
楽ですね。「猿そのもの」で覚えてくださった方には申し訳ないですが、憑き物が取れたというか・・・。ただ誤解のないように言いますと今も愛称として猿、猿と呼んでくださる方はいらっしゃるんですけどそれは別に構わないんですよ(笑)そう呼んでくださる方に悪意がないのはよく分かりますから(笑)あくまでも自分の中のけじめとしてはっきりしておきたくて。「猿そのものという俳優は死んだんです。私は山野博生です。」と。

タグ: キャスティングについて 調子のってた


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2014/春
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山野

不器用の効用について

__ 
役者としての山野さんが好きです。不器用で素直で、嘘がないというか。その受け止めやすさがユニークな俳優だと思うんですよ。
山野 
ありがとうございます。そうですね、器用な人間ではないという事は自覚しています。ただ、不器用だという事は悪い事ではないと思っています。
__ 
というと。
山野 
野村克也さんの教えに「便利は弱い、不便は弱い、器用は弱い、不器用は強い」という言葉があるんです。「便利なものに頼りすぎる者は弱い。不便なものは使えない。器用に何でもこなす者も、いざというピンチで対応できないことがある。不器用な人間は、それを克服する努力を重ねたとき、底力を発揮する。」この言葉に出会った時、「これだっ!!」って(笑)僕は不器用なので、失敗の度にボコボコに言われるんですけど、20年先ぐらいに「言われておいてよかったな」と思える気がしています。長い目で見ればこれはずっと得な経験なんだと。だから、不器用だと言われるのは別に恥だと思っていません。
__ 
そこが山野さんの味でもあるんだと思いまして。そういう部分が好きですね。

タグ: 努力を重ねる 器用さ・不器用さ 嘘のない


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2014/春
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山野

経験と総括・2

__ 
山野さんがお芝居を始めた経緯を教えてください。
山野 
高校2年の時に文化祭で、クラスで演劇を作る事になったのが人生最初の舞台でした。ちなみに、高校の時の担任の先生が劇研アクターズラボの田中遊さんの公演クラスに参加していたんです。渋谷善史さんという方で現在も田中遊さんのユニットの正直者の会.labで活動されています。その渋谷さんのクラスで文化祭に出て舞台に立ったのが最初です。
__ 
いかがでしたか。
山野 
良かったです!!すごく褒めてもらえて・・・。高校時代の唯一のいい思い出ですね(苦笑)重要な役でプレッシャーも大きかったし、仲間同士で衝突もしたりで大変でしたけど・・・。本当にやっておいて良かったです。僕の人生を大きく変えた出来事でした。しかし、その舞台の直後に急激に体調を崩しまして・・・病院に行ったところある精神科の病気になってしまっていたんですね・・・。実は育った家庭の環境が非常に悪くて・・・物心ついた頃からあまり自分の家庭が好きではなかったんです。そのストレスからか高校に入学した頃から体調も精神状態も悪く、騙し騙し必死に耐えていたんですが、ついに溜まりに溜まったフラストレーションが爆発してしまって・・・。以来学校にもまともに通えなくなり、処方薬依存でボロボロの状態で勉強どころではなくなってしまって・・・。なんとか高校は卒業できましたが当然受験勉強も進学出来ずそのまま自宅に引きこもるようになってしまったんです。
__ 
なるほど。
山野 
それからしばらくブランクが空くんですが、22歳の時にインターネットで某演劇サークルがメンバーを募集していてそこに入ることにしたんです。理由としては当時の僕は仕事も勉強もできていない、友達もほとんどいない、まあニートだったわけで・・・(苦笑)それが嫌で少しでも社会との接点を持たなくてはと思ったんです。「あの時素晴らしい経験を与えてくれた演劇なら自分に希望を与えてくれるのでは・・・」という思いで(苦笑)で入団してしばらく活動していたんですが正直ものすごく面白くなかったんです。考えが甘くて、だらだらしてて。あまりにも演劇を趣味として見ていたので。
__ 
つまり、良くなかったんですね。
山野 
そうですね・・・。そこでしばらく悩んでいたんです。「そのサークルを辞めようか・・・しかし辞めたところで全くの無名の僕がどうやって芝居を続けるのか?いや自分が頑張ってそのサークルを立て直すべきなのか?しかしそのサークルの方達とは根本から考え方が違うのでは?」とかウダウダ考えている矢先にふつうユニットの廣瀬信輔さんと出会ったんです。確か2011年の1月だったと記憶しています。そこで廣瀬さんに気に入ってもらえてふつうユニットの「スペーストラベラーズ」という作品に出演させていただいたんです。その現場で廣瀬さんや他の共演者の皆さんに良くしてもらって・・・随分久しぶりに同年代の人達と関わることができて、喋って、遊んで、作品を造って・・・本当に楽しい現場でした。これをキッカケとして人と関わることを覚えて、徐々に引きこもりからを脱出することができたんです。
__ 
廣瀬さんと出会ったのはどんな経緯が。
山野 
谷さんが参加されていた、劇研アクターズラボの「恋愛論」という作品の挟み込みに、ふつうユニットの出演者募集のチラシがあったんです。当時の僕は今以上に演劇のことを何もわかっていませんでしたから・・・堅苦しいチラシとかだったら逃げ腰になってしまって絶対行けなかったと思うんですけど、そのふつうユニットのチラシがまあ、そのあまり上手くない絵が表にデカデカと描いてあって(笑)書いてあることも砕けた内容だったのでここなら自分でもと思い連絡をとってみたんです。そしたら連絡してきたのは僕一人だけだったらしくて(笑)それがきっかけで(苦笑)もしそれが無かったら現在の自分はなかったかもしれませんね(苦笑)

タグ: 俳優のブランク 自分を変えた、あの舞台 文化祭前夜 劇研アクターズラボ 高校演劇 ひきこもり もう、辞めたい


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2014/春
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山野

経験と総括・3

__ 
これまでに苦労した作品はありますか。
山野 
いっぱいありますね・・・。一番難しかったのは先ほどもお話に出た「シガールーム」でした。何回も言いますが難しかったです。ただ確かに技術的にはしんどく、プレッシャーも大きかったわけですが、現場は楽しく、やりがいも感じていました。苦労した分得たものも大きかった公演でしたね。苦労というならほかには、烏丸ストロークロックの柳沼昭徳さんの現場ですね・・・。柳沼さんが劇研のアクターズラボの公演クラスの講師をされていて僕は2011年?2012年の1年間だけ受講したんです。「山下君が死んだあとのこと」という作品に出演させていただきました。廣瀬さんに紹介していただきまして。この現場で僕は柳沼さんにボコボコに叱られたんです。完膚なきまでにボコボコに(苦笑)具体的な内容は言えませんが・・・(笑)その時は辛かったし、なんでこんなこと言われるんだろうと思っていましたが今から考えると言われておいて良かったです。柳沼さんの元で学べたことが自分の大きな糧となったと思っています。
__ 
なるほど。
山野 
それからココロからだンス8期の発表公演ですね。今となっては貴重な経験でしたが、全体的に出席率があまり良くなくて稽古が上手くいかなかったんですね。僕自信も足を負傷してなかなか稽古に行けず迷惑をかけてしまって・・・申し訳なかったんですが・・・。参加者の一人一人の距離がなかなか埋まらず、信頼関係が構築できなかったんですね・・・。そしてそのままの状態で通し稽古をしたんですがこれがひどいもので・・・。「本当にこのままの状態で公演を打つのか?!」という話になって・・・。皆で車座になって話し合いました。そしてこのままではいけない、もっと頑張ろうと皆で決意を固めて何とか間に合わせたんです。正直悔いは残りました。もっとできたんじゃないかと・・・。しかし舞台に対する思いが変わった公演だったように思います。舞台の恐さをほんの少しではあるが体験できたというか・・・。今から思えばこういう辛い公演の全てが僕をいい方向に変えてくれたと思います。ちなみに苦労無しで手放しで楽しかったのはTHE ROB CARLTONの「フュメ・ド・ポワソン」でしたね。この現場は楽しくて楽しくてしょうがなかったです。やっと自分の人生でもいい時が来たんだなと思いましたね。

タグ: 出来ない!難しい!演技


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2014/春
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山野

どんなに努力をしても100%にならない

__ 
山野さんが考える、魅力的な俳優とは?
山野 
どうなんでしょうね・・・満足しない事・・・ですかね・・・?。僕は常にそう考えようかと。そうやって自分を律したいと思っているのですが(できているかは別として)、今やっている芝居が最高のものだと思わないことかなと。「金を取って芝居をしていることを事を自覚しろ」ってよく言われますよね。それは単純にレベルの高いものを見せろということだけではないような気がしていて。その線引きも曖昧なわけですから。そもそも演劇に限らず勝負事というものは100%にはならないのではないかと。どんなに努力をしても100%にならない。もちろん目指すべきです。しかし、自分がやっていることに満足した瞬間、終わりが始まるのではないかと。自分より下手な誰かと比べて満足を得ることだけは絶対にしないようにしようと思っています。常に自分より上の人を探し続けたいし、そうなるためにはどうすればいいかと考えていきたいです。それから・・・これも演劇に限らないと思うのですが、必ずしも成功するとは限らないし、賞賛を得られるとは限らない。それどころか酷い失敗に終わる可能性もあるし、アンケートに「観ていられなかった」とか書かれるかもしれない。実際僕書かれたことがあって・・・。つまり負ける恐怖からは逃れられないわけで・・・。なんというか、いい作品を造って賞賛を得たいと思う、或はそれを目指して努力することの裏側には失敗してもそれを受け入れる責任があるのだということを自覚すること・・・が必要になるかなと思います。
__ 
なるほど。
山野 
だからといって勝てる勝負だけするか?いや、それは違う。
__ 
勝てようが負けそうだろうが、そこに戦があるなら逃げないという事でしょうか。
山野 
そういう事かもしれません。不安はなくならないけれども、ここまでやったんだからどんな結果になっても受け入れようと。逃げ口上じゃなく、心からそう思えるまでやるのがいい俳優に必要な事だと思います。

タグ: 最高の研鑽は成功を担保する訳ではない 俳優同士の闘争心 曖昧さへの礼賛 演劇は勝ち負け?


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2014/春
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山野

質問 田中 次郎さんから 田中 次郎さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、枠縁の田中さんから質問です。「占いについてどう思いますか?」
山野 
本能的に興味がある、という事ですかね。オカルトじゃないですけど、人知を越えた不思議な力はあると思っているんです。演劇にも直感や本能が必要になることはあると思うし。余談ですがコンテンポラリーダンスにもすごく興味があって・・・自分の肉体や直感、本能にアプローチする作業だと思っていて。生まれつきそういうことに興味があるんでしょうね。

タグ: 肉体、重心


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2014/春
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山野

質問 平林 之英さんから 田中 次郎さんへ

__ 
平林さんからも質問を頂いてきております。京都でオススメのスポットを教えてください。
山野 
京都でオススメですか。この近辺(河原町周辺)じゃないですかね。ブラブラするのに丁度いいと思います。僕、生まれは左京区なんですけど左京区にも色々見所はあります。ただ、このあたりの方が好きですね。

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2014/春
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山野

自分が溶けだして、役に絡んでいる

__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
山野 
どんな演技・・・難しいですね。それを探しているところです。そうですね、自分の癖だとか、欲だとか、そういうのを一旦抜きにしたいです。自分が溶けだして、役に絡んでいるイメージ。それを俯瞰している自分がいる、そういう事が出来たら理想なんじゃないかと思います。
__ 
俯瞰する?
山野 
自分に自分でツッコミを入れるというか。欲とか癖を全部客観的に見ることができて、それを把握できることというかなと・・・。

タグ: いつか、こんな演技が出来たら 自分の演技を客観的に見る


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2014/春
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山野

サングラス

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
山野 
ありがとうございます。
__ 
どうぞ。
山野 
(開ける)あ、夏だから。
__ 
よくお似合いです。

タグ: プレゼント(装飾系)


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2014/春
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山野

これから

__ 
今後、一緒に作品を作りたい人や劇団はありますか?
山野 
予定として既に決まっているんですが、自分の所属する背泳ぎの亀の公演が8月にあって、それ以降は10月にドキドキぼーいずに出演致します。12月にはkatacottsというユニットの戸谷彩さんの演出で菅原陽樹さんという方と2人芝居を造ります。それからこれは完全に僕の願望で大変僭越なお話なんですが、許されるなら悪い芝居の山崎彬さんと御一緒してみたいです。すれ違った瞬間になぜか身震いして、「なんて恐ろしい人なんだ」と思ってしまって。WS行った時も、どこか別の世界に行っているような気がしてしまって。
__ 
凄いですよね、あの人。さて、山野さんは今後、どんな感じで攻めていかれますか?
山野 
絶対に辞めないでおきたいです。演劇で食べるってもの凄い難しいと思うんですけどね、このまま定職に就かず、演劇を続けたら後戻りできないぞとたくさんの人から言われるし。でも、辞めてしまうと何も残らないんです。とにかく辞めない事。
__ 
どんな形でもいいから続けていってほしいですね。
山野 
ありがとうございます。それと、俳優以外の分野として劇作・演出・コンテンポラリーダンスと、今年から来年に掛けては手あたり次第、やれる事を思いつく限りやりたいです。勉強する欲が高まっている感じですね。

タグ: どんな手段でもいいから続ける 外の世界と繋がる 「悪い芝居」の存在


vol.364 山野 博生

フリー・その他。

2014/春
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山野

sunday play日本の名作#2「友達」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。平林さんは最近、どんな感じでしょうか。
平林 
最近はsudayの次回公演、「友達」の稽古ですね。公演は7月11日から。もう再来週ですね。
__ 
凄く楽しみです。安部公房の傑作「友達」。平林さんは主人公の家に押し掛けてくる一家、の父役を演じられるんですよね。「善意」がキーワードの戯曲だと思うんですが、ズバリどういうポイントを大事にして演じられたいと思われますか?
平林 
議論をたくさんする作品なんですけど、いい案配でお客さんまで納得させて、共感させるようになればいいなあと思ってます。
__ 
議論と説得力・・・そういえば、ウォーリー木下さんの作品で台詞のある芝居は久しぶりに拝見します。今回の作品、ウォーリー演出ならではのお楽しみポイントを教えてください。
平林 
そうですね、振り付けだったり音楽だったりはもちろん魅力なんですが、あるシーンでイメージがぽんぽんと切り替わっていくのがあって。振り付けと演技の区別が付かなくなるかもしれません。そもそも、この芝居における「振付」が一体どういう事なのか、今から楽しみにしてほしいです。
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振り付けは冨士山アネットの長谷川寧さん。主演も務められるんですよね。とても楽しみです。意気込みを教えてください。
平林 
なんか、カラッとした感じになればいいなと思います。みんなが幸せになるお話じゃないですが、それも悪くないな、って思ってもらいたいかな。押し付けがましくなく演じられたらいいなと思います。
sunday
2004年、劇団☆世界一団、第1期終了。ふたつのinterludeを経て、sundayに改称。「今面白いと思うことを、遊びながら作る」というメッセージ性の少ないカンパニー。しかしその現代性とファンタジー性が融合した世界観は、ポップでありながら実験的。物語とパフォーマンスの絶妙なバランス、そして実力派の役者たちによる見応えのある演技は、公演回数が少ない割には確固とした評価と動員を得ている。目指すは「世界一おもしろい演劇部」。(公式サイトより)
sunday play日本の名作#2「友達」
公演時期:2014/7/11~14。会場:AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)。

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出会い・不条理

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まず、平林さんがお芝居を始めたのは、どういう経緯があるのでしょうか。
平林 
大学からです。中学高校とずっとブラスバンド部でサックスをやっていて、大学でも軽音楽部に入ろうと思っていたんですが、クラブを覗いてみたらあまり興味をひかれなくて。じゃあ何しようと思ってたら、ある日、仮装して学内を練り歩いている人達に出くわしたんです。面白そうなのでついていったら、すごく狭い部屋に閉じ込められて地べたに座らされて。そのまま芝居が始まったんですよ。間近で大きな声を出されるし、音楽もがんがん掛かるし、びっくりしました。
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それが演劇との最初の出会いだったんですね。
平林 
そうですね。やっぱり不条理な感じでしたね。いきなり大きな声を出したりとか。
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ショックな体験でしょうね、それは。
平林 
終わって、役者の人と喋ってみたら全然普通のおとなしい人で。そういうところも面白いなと思いましたね。

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