二つの意味で透明なモノローグ

__ 
異彩を放っていたシーンがありましたね。渡辺さんの、最後に落語という形のモノローグ。そこだけが具体的にはシチュエーションという訳じゃなかったなと。
大崎 
クールキャッツ高杉が演じた落語家も、劇中、ラジオで落語を口演するんですよ。そのシーンは舞台上で演じられるんですが、だんだんとモノローグへと変わっていく。ラジオはラジオで演じられているんですが二重になっているんですね。そんな彼と一晩一緒にいたインタビュアーの女の子にも、その演じ方が移ってしまう。マイケルジャクソンの隠し子で、本当はキャビンアテンダントの彼女は、普段本音はあまり口に出していなくて。それが落語っていうカタチで、飛行機の客席に向かって自分の事を喋ってしまう。その客席から見ていた一人が近づいてくる。彼は初恋の女の人をようやく見付けたんですね。彼女は彼女で、ようやく自分の事をずっと見てくれていた人に会えたって感じで。
__ 
なるほど。
大崎 
発見してもらう事で面白い物に出会えた。ちゃんと物事を見てる人間はちゃんと他の物からも見てもらえると思います。

タグ: 落語 本音の価値


質問 鄒 樹菁さんから 大崎 けんじさんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、ツォウさんからです。
大崎 
おお!知り合いです。
__ 
ジャンケンのグー・チョキ・パー。どれが一番好きですか?
大崎 
グーです。勝った時、一番気持ちいいじゃないですか。

ポジション

__ 
今回、クールキャッツ高杉さんは最終的に裸にコート一枚という格好になりますね。
大崎 
あれは劇中でプレイされていた「ポポロクロイス物語」の主人公の格好なんですよ。緑コートに金髪。
__ 
あ、そういえば。
大崎 
山本・村松演じる幼なじみは、劇中ずっと部屋の中でゲームしているんですけど、最終的に他の登場人物全員がポポロクロイスのキャラと同じ服装になります。それは本人たちも自覚していなくて、お客さんしか分からない。そういうおいしいポジションをお客さんに味わってほしいと思ってます。例えば「男はつらいよ」では、渥美清の本当に辛い顔は妹の桜しか知らないのに、見てる人は知る立場にいる。寅さんは、東京じゃ絶対見せないような格好良い表情で旅をしていて、彼が関わった誰かが彼の行動の余波で涙を流したりすることもある。すべてを見られるポジションを観客に提供するのが大事なんだろうと思っています。それと同時にまあ、いろいろと好きに想像してもらって。

退屈な時代の歩き方

__ 
いつか、どんな演劇を作りたいですか?
大崎 
お客さんが劇場出たあともしばらく退屈しないような、、、普段の生活が面白くなってしまうぐらい。一年くらい前に、「暇と退屈の倫理学」という、國分功一郎さんという哲学者の方が書いた本を読んでそれがすごく面白かったんですけど。人はいかにして退屈とつきあっていくのかを考えてみるという。
__ 
暇を有意義に過ごす方法という事でしょうか?
大崎 
その本には解決策は書いてないんです。それぞれ全てのケースが個別で特殊な問題だから、答えなんて出しようがない。でも、退屈ってのはなかなか恐ろしいものだという仮説があって。僕の芝居に出てくる人々は基本的に退屈しているんですよね。その退屈からどう抜け出していいか分からない。退屈な生活が普通の状態だと思いこんで生きている人たち。でももっと楽しく生きられるような状況が作れるんじゃないか。自分の力だけじゃなく、他人の力も借りたりして。見方をちょっと変えるだけで人生を楽しく生きられるかもしれない。楽しく退屈さと付き合う方法があるはずだ。そこに対しては、まだまだ掘り下げたいと思ってます。ヨーロッパ企画さんも、そういうところを見ているんじゃないかなって、作品見ると思ったりします。
__ 
なるほど。
大崎 
パッと見騒いでいるだけのように見えて、その先の希望を見据えているんじゃないか。その上で舞台上でシュールな事が起きても「なんかいいな」ってなっちゃいますね。
__ 
大崎さんにとっては、人生を楽しく生きる事がテーマなんですか。
大崎 
そうですね。それが、逞しく生きていく事なんじゃないかと思います。もののけ姫で、「曇りなき眼で見据えて生きよ」って台詞があるんですけど、なんか心に留まってますね。なかなか自由に生きてくってのは難しくて。ものを見るときにバイアスが掛かったり、思考がどうしても自分を慰める方向に向かったり。それを振り切って楽しくね。
__ 
自分は捉われていると自覚する。
大崎 
なるべく忘れないようにしたいですねえ。ちゃんと物事を見ようってのは、大人にだなという事でもあるし、子供だなという事でもあるんです。それは、「オール」で書きながらも考えてました。
__ 
実存的な、リアルな生き方。それは確かに逞しい生き方ですね。ただ、人によってはマッチョな考え方だととられるかもしれない。
大崎 
いやあ、楽しく生きていくってのはどこかしらマッチョなんじゃないかなあ。言い方変えれば、楽しく生きることとか、自分の好きなことにたいしてマッチョな人はほんとにイキイキしてると思うし、僕はそういう人を素敵だと思う。子供って遊ぶことに対してマッチョだと思いますし。ただ、こだわりというか好き嫌いというか、善悪というか、意志をはっきりすると損することもあるのが世間ですから。こだわりを持ったまま楽しい方向にするっと抜けれるのが逆にストイックでいいんじゃないですか。マッチョマッチョ言ってますね。マッチョってなんでしたっけ?
ヨーロッパ企画
98年、同志社大学演劇サークル「同志社小劇場」内において上田、諏訪、永野によりユニット結成。00年、独立。「劇団」の枠にとらわれない活動方針で、京都を拠点に全国でフットワーク軽く活動中。(公式サイトより)

タグ: 知識を付けよう 下らなさへの礼賛 正体不明のエネルギー


明日から

__ 
次は、どんな芝居を。
大崎 
次のザゴーズのイベントにイッパイアンテナで出す作品が、次の作品の雛形になるかもしれません。
__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
大崎 
ひとまず、目の前の事をしっかりやっっていきます。ザゴーズのイベント、Hauptbahnhofの演出助手。それが終わってみないと、次の事はあんまり考えられない気がします。何せ、前回の公演に全てを突ぎ込みましたから。こっちにいったら、面白いかなと思いつつ進んでいます。
__ 
もったいない事に、全てを選びとる事はできませんからね。
大崎 
突拍子もない事を始めるかもしれませんね。

BEAMSのハンカチ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
大崎 
ありがとうございます。これ、BEAMSじゃないですか。
__ 
いや、大したものじゃないですけどね。
大崎 
(開ける)これは、実用的ですね。僕にBEAMSか。ちょっと意外な。でも嬉しいです。
__ 
何となく、柄は「オール」を意識しました。何となくですが。

タグ: プレゼント(衣服・布小物系)


あの時代の事と、こないだの公演の事

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近は大崎さんはどんな感じでしょうか。
大崎 
4月4日にザゴーズ(悪い芝居)のイベントがあるので、イッパイアンテナで出ます。それと、金田一央紀さんのHauptbahnhofの演出助手をやっています。
__ 
演劇以外では、どんな感じですか?
大崎 
最近、パトレイバーにハマってますね。あとはM_Produceのリーディング公演を見ました。
__ 
私も見ました。面白かったですね。
大崎 
面白かったですよね。あの時代の土田さんとか花田さんの戯曲の読後感に、しばらく出会ってないなあと、ふと思ったりして。
__ 
そうそう、そういう感触でしたね。
大崎 
あの雰囲気や気分を京都っぽいと言うのかなと思いましたね。小さな声で「ちょっとここで立ち止まって感じてみない?」みたいなのが聞こえる。切なかったけど、楽しかったです。懐かしかったり寂しかったりな空気感で。好きですね。
イッパイアンテナ
同志社大学の学生劇団「同志社小劇場」のOBを中心に、2007年に旗揚げしたコメディ集団。京都を中心に活動中。 宇宙船や野球部の部室など、作品特有の空間を忠実に建て込んだ作品、また町家や銭湯、小学校など既存の空間を使った作品、主にはこの2種類の空間使いが特徴。メンバーの外部での活動も活発に行い、より自立した集団を目指し勢力的に活動を続けている。劇団の脚本・演出家、大?けんじ以外の役者による作・演出作品の上演企画「イッパイアンテナジャック」も不定期で開催。(公式サイトより)
ザゴーズPresents SHITAGOKORO vol.1
公演時期:2014/4/4。会場:二条 公○食堂。
Hauptbahnhof
Hauptbahhof(ハウプトバンホフ)は、金田一央紀によって2010年末に結成されたパフォーマンス団体です。読みにくいのと書きにくいので、「Hbf」と呼んでいただいてもかまいません。Hauptbahnhofはドイツ語で「中央駅」という意味。見知らぬ町にやってきても「中央駅」にとりあえず行けば町の大まかな形は見えてきます。そんな駅のような存在が演劇にもあっていい。演劇といってもどんなものを見ていいのかわかんないという人たち、演劇とは全く縁のないところにいた人たちや、これまでもこれからも演劇に携わっていく人たちにとって、とりあえず集まって自分の位置を確認したり、自分の活動の拠点にしたりする場所を作ろう、という気概で設立されました。(公式サイトより)

タグ: 空気感を大切にした 銭湯の話題


あかりのなかへ

___ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近はツォウさんはどんな感じでしょうか。
ツォウ 
最近は、照明会社の契約社員として働きつつ、劇団の照明として活動していますね。
___ 
あ、そうなんですね。
ツォウ 
実は会社では演劇の照明はあまりやらないんですけどね。でも、会社で得た経験を劇団にフィードバックする事が出来たら、またその逆も出来たらと思います。
___ 
仕事で照明をやるって、きっと相当好きなんだろうなと思うんですよ。どういう経緯があるのでしょうか。
ツォウ 
高校で和太鼓の部活に入ってたんですよ。その最後のステージで、僕がアドリブで動いちゃった時にですね、照明の方が光を当ててくれたんです。それが嬉しくて、照明って凄いなと。学びたくなって造形大に入って。ドキドキぼーいずに入ったのがキッカケですね。新潟でデビュー公演をしたいと。照明もやってくれないかとも言われて。それが5年前ですね。
ドキドキぼーいず
2013年、代表である本間広大の学生卒業を機に再旗揚げ。京都を拠点に活動する若手演劇チーム。虚構性の強い演劇を目指し、『リアル過ぎる嘘っぱち』の創作に挑んでいる。生み出されていく衝撃を、時に優しく、時に激しく、作品として観客に提示することで、人間の本質を描き出す。いつまでも青臭い、カワイイ奴らでいたい。(公式サイトより)

タグ: フィードバック 外部活動を持ち帰る


空間があって、灯体があって

___ 
さて、今回のドキドキぼーいずの「だらしない獣」。面白かったです。ツォウさんとしてはどんな感触でしたか。
ツォウ 
現代人が語る昔話として、本間がうんうん考えながら。京都演劇フェスティバルに参加して、奨励賞をもらったんですよ。「空間の使い方が巧かったね」と色んな人に言ってもらいました。照明としては、やっぱり他の団体さんとの兼ね合いがあるので、その点ではなるべく無難な照明プランだけど、スタイリッシュになるようにしました。
___ 
というと。
ツォウ 
舞台上にはセットとして脚立があるんですが、照明も舞台上に置いたんです。前に上演された団体さんの撤収を待ってセットするためあまり時間は無かったんですが、それでも考えてきた絵が出来るように。シュートする時間がないので、もう勘と経験で。
ドキドキぼーいずの恋煩い#03「だらしない獣」
公演時期:2014/2/15。会場:京都府立文化芸術会館。

月の光ってこんなに明るかったんだ

___ 
ツォウさんがものを美しいと思うのは、例えばどんな時ですか?
ツォウ 
景色を見た時とかですね。沸点が低いのか、ちょっと高いところに上って景色を眺めると「美しい」と感じますね。それと、夕日が好きなんです。照明の勉強がてら、この光はどうすれば作れるのか考えたり。それと月光が好きですね。
___ 
月の明かりはいいですよね。あれはとても明るいと感じるんですよね。
ツォウ 
そうですね、街灯の下にいると分かんないんですけど、田舎の方にいくともの凄く濃い影が出るんですよね。明るすぎて。月明かりを照明で作るというのが夢です。なかなか難しいところなんですけど。
___ 
あれは月という衛星に太陽光が当たってるだけなのになぜあんなにも明るいのか。
ツォウ 
太陽光、凄いですよね。

タグ: 月についての話題


___ 
景色を見ると美しいと感じる?
ツォウ 
スペインのサグラダ・ファミリアの、今出来ている天辺に上った時は、本当に凄いなと。
___ 
景色を美しいと感じさせる、共通の美意識にちょっと興味があって。たぶん、私もサグラダ・ファミリアに行ったら同じような美を感じるんじゃないかと思うんです。ある程度までは。でも、その人にしか感じ得ない部分が出てくるんだろうと。演劇において照明家って、一枚一枚の絵に対しての美意識を最も求められるポジションなんじゃないかと思うんですよ。
ツォウ 
そうなんですよね。オリジナリティに関してはもっと見出していきたいと思っています。プランする時にも、必要性から始めているところがありますし。
___ 
必要な明かり。
ツォウ 
これは先輩から伺ったんですけど、「役者の顔を見せるのにはシーリングを使えばいいけど、本当にそこで役者の顔を見せるべきなのか?そこまで考えてからシーリングを作ればいいじゃないか」。
___ 
なるほど。
ツォウ 
前回の「浮いちゃった☆」という公演、ちゃんとした地明かりを作らなかったんですよ。夜の町という指定を受けていたので。まあ、舞台写真と映像の方には暗いと言われてしまったんですけど。でも、人間の目って凄いですよね。暗くても見えて、記憶には残る。そんな仕事にはなったと思います。次の作品のタイトルが「闇」で、果たして僕の仕事がどれだけあるかというところなんですけど、闇だからこそ照明の仕事になるんじゃないかと思ってるんですよ。暗い、見えていない部分を意識したいですね。明るい部分だけじゃないんですね、照明って。そこは最近、プランをする中で考えている事ですね。

タグ: 照明・光


オペレーターの失敗

___ 
あるシーンでの照明が、本当にそのプランが最も妥当なのか?というのは観客からはわからないんじゃないかな、と。別に地明かりでも影響ないんじゃないか。そういう事を考えたとき、その光が代替可能ではない、つまり貴重な、それだけで傑作に値する、そんな照明を作るにはどうすれば良いのでしょうか。
ツォウ 
一つ言えるのは、照明プランナーの考え方としては、お客さんに気付かれないのがいい明かりと言えるんですよね。「いい明かりだな」と思われると、その瞬間、舞台の役者さんや作品から、お客さんを持っていってしまうんじゃないかというのがあって。「役者さんがきれい・かっこ良い」と思われてほしいですね。その辺はオペレーターの腕にも掛かっていると思いますね。
___ 
なるほど。
ツォウ 
矛盾しているんですよね。プランナーとしてはやっぱり「キレイだな」と思ってもらいたいし、オペレーターとしては光をキレイだと思われてしまったらある意味失敗だし。

タグ: 傑作の定義 わたしとわたしの矛盾


丁寧だよね

___ 
照明のオペレーターをやる時の勘どころがあるんですよね。役者さんとお客さんの意識を感じながら変えていくとか。
ツォウ 
オペレーターは、やっぱり本番でかなり神経を削る役なんですよね。役者さんとなるべく呼吸を合わせるようにしています。大学一回生の時、岩村原太さんの現場を手伝わせて貰ったんです。二つの作品を上演する公演があって、その内片方を任されたんです。マジかよと思って、しかもその芝居が外人さんがずっと出ている、前編ほとんど英語の作品で、もう呼吸を見るしかないんですね。初めての他の人のプランで、経験も多くないし、もう緊張してましたね。でも上手に出来た時は、腑に落ちて。それからは他の現場でオペをさせていただいた時も、「丁寧だよね」と言ってもらえるようになりました。
___ 
照明オペの実作業。
ツォウ 
フェイダーを下げると暗くなる、「これをしたからこうなる」、そしてシーンが動いた。別のシーンになったから、ここは見せなくても良い。
___ 
作品と息を通わせた操作が大事なんですね。
ツォウ 
そうですね、なるべく意識はしますね。やっぱりキッカケのシートをずっと見ている人も多いんですけど、いや僕も見てしまうんですけど、向こう(舞台)で起きている事に集中しないといけないんです。

タグ: 音効照明との息合わせ


質問 佐藤 和駿さんから 鄒 樹菁さんへ

Q & A
___ 
前回インタビューさせていただいた佐藤さんから質問を頂いてきております。「プロとは何でしょうか」。
ツォウ 
それは僕も考えています。ただお金が貰えるからプロと呼べる訳ではないんですよ。お金を貰う事は自覚した上で、それに見合った以上のものを出せる人かなあ、と。偶然出たものではいけないんです。自分で考えて出したものであるべきなんですね。
___ 
偶然に良いものが出来る事はままある。しかし、美意識だとか研鑽は全くない。そんな空っぽの結果じゃない、実力を積んだ人が考えの末に作ったもの。
ツォウ 
そうですね。期待以上のものをどんどん作っていける人、なのかなと。

タグ: 自分で考えてきたもの、の価値


広げる

___ 
今後、演劇とどう関わっていきますか?
ツォウ 
芝居はウチの劇団でやっていきます。会社ではなかなか、演劇はやらないので。でも、自分のプランはどんどんやっていきたいので、引き受けられる限りはやらせてもらいたいです。
___ 
いつか、どんな演劇に関わりたいですか?
ツォウ 
いつかやってみたいという意味では、やっぱり新感線とかかっこいいじゃないですか。突き進んだエンタメ、作ってみたいです。
___ 
劇団としては。
ツォウ 
いまのところ、ドキドキぼーいずが個人的には理想的な環境で。自分の趣味と合っているんですよ。
___ 
すばらしい。もっとドキドキぼーいずの世界が広がっていけばいいですね。
ツォウ 
頑張ります。

GooglePlayのカード

___ 
今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントを持って参りました。
ツォウ 
ありがとうございます。
___ 
これ、使えるか分からないんですが・・・
ツォウ 
あ、iPhoneなので使えないですね・・・でも、劇団で使う奴がいるので。ありがとうございます。

タグ: プレゼント(音楽・楽曲系)


ドキドキぼーいずの恋煩い#03「だらしない獣」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い致します。最近、佐藤さんはどんな感じでしょうか。
佐藤 
最近はドキドキぼーいずの次回公演の稽古ですね。
__ 
そう、京都演劇フェスティバルにドキドキぼーいずが参加する作品「だらしない獣」ですね。
佐藤 
僕は主人公たちに山の掟や物語の背景を伝える、マタギの役なんです。劇団としては珍しいテイストの作品なんですが、実は第一部と第二部に分かれている作品でして、第二部ではだいぶ印象が変わるんです。
__ 
というと。
佐藤 
第一部はまるで絵本を読み聞かせるような演出ですが、後半になるとドキドキぼーいずが得意としてきた、個人の内面に迫る描写になるんです。演劇フェスティバルなので色んな層のお客さんが来ると思うんですが、最初からとっつきにくい描写をしてしまうと、お客さんを遠ざけてしまうから。そんな狙いもあるんじゃないですかね。
__ 
そうした作品は、とても好きです。本当のところ、個人の内面に迫る過程というのは非常に難しい作業だと思うんですよ。だから嘘は介在出来ない。では、ドキドキぼーいずにそれを行える資格はあるのでしょうか。
佐藤 
どうでしょうね。生々しい描写は、実は僕自身はそんなに好きじゃないんです。でも、演劇でこそそういうネガティブな表現をやる意味はあると思うんです。本質に近づく行為なんです。
__ 
なるほど。
佐藤 
実は僕らはこういう方法しか知らないですしね。いやキレイな表現で本質に近づければいいんですけど、でもその為にはこの過程を通らないといけないんじゃないか。それはお客さんもきっとそうなんです。
__ 
核心に迫る行為を知らなければ、本音への志向性を持っていなければ・・・。
ドキドキぼーいず
2013年、代表である本間広大の学生卒業を機に再旗揚げ。京都を拠点に活動する若手演劇チーム。虚構性の強い演劇を目指し、『リアル過ぎる嘘っぱち』の創作に挑んでいる。生み出されていく衝撃を、時に優しく、時に激しく、作品として観客に提示することで、人間の本質を描き出す。いつまでも青臭い、カワイイ奴らでいたい。(公式サイトより)
ドキドキぼーいずの恋煩い#03「だらしない獣」
公演時期:2014/2/15。会場:京都府立文化芸術会館。

タグ: 私の劇団について 本音の価値


新潟と三重、どちらに行くべき

__ 
佐藤さんがお芝居を始めたのはどのような経緯があったのでしょうか。
佐藤 
高校演劇からです。子供の頃から特撮が好きで、小学校の卒業文集に夢は俳優だと書くような子供だったんですよ。高校の演劇部で本間と知り合って、大学でも演劇サークルをやっていて、卒業後に本間に誘われて、いま京都で演劇をやっています。
__ 
大学ではどんな演劇を。
佐藤 
新潟の大学だったんですが、僕らの代は部員が少なくて。しばらくしたら同学年は僕一人になってたんです。代表として頑張って、最終的な成果としては別の劇団のプロデュース公演に、演劇サークルで参加した事です。あの公演は盛り上がりましたね。
__ 
素晴らしい。
佐藤 
今でも彼らとはtwitterで繋がっていて。次回公演のチラシを送ってもらったら、なんと30人ぐらいの名前が載ってたんですよ。何故なのかは意地悪で教えてくれないんですけど、そういう意欲を後輩が見せてくれて僕は嬉しいです。
__ 
それは間違いなく佐藤さんの功績でしょうね。先輩としての。
佐藤 
僕が卒業した翌年から、演劇サークルから演劇部に昇格したみたいで。それも嬉しかったです。
__ 
その公演、行った方がいいでしょうね。
佐藤 
迷ってますね。公演は2月の22日なんですけど、丁度その日は劇団員の松岡咲子が三重で公演をしているんです。
__ 
両方に行ければいいですよね。
佐藤 
そうですね、昔世話になった後輩達を確認してくるか、今の劇団員の仕事を見るか。過去と未来ですよ。どちらにも行ければいいですけど。

タグ: 高校演劇 迷っています


質問 ヰトウ ホノカさんから 佐藤 和駿さんへ

Q & A
__ 
前回インタビューさせて頂きましたヰトウホノカさんから質問です。「あなたにとって表現とはなんですか?」
佐藤 
表現はツール、なんですよ。それを使ってするべき芸能について、考えた事があります。芸能は生き方や価値観を伝え、鑑賞者に問いかける行為ですね。もしそれを伝えるのに演劇を使うのであれば、伝えやすさが強みだと思います。もちろん劇場に来てもらわなければならないし、入場料もいりますから限定的なメディアですけどね、でも、来てくださったなら密に伝える事が出来るんです。舞台に立っている側も、伝わっているという事が分かるんです。ギャグがウケたりすると嬉しいですし。

快楽を演技する

__ 
これまで芝居をしてきた中で、最も衝撃を受けたのは?
佐藤 
大学の頃に主演させて頂きました映像作品が強く心に残っています。あまり大きな声では言えない、ある種の性癖を持つ役の演技の時は、まあ色々悩みました。学生の作品でしたが、アレは本当に・・・。感じているという演技をカメラの前でしたんです。映像はありますが、一回も見た事はありませんね。
__ 
自分で見る気になれない。
佐藤 
でも、不思議な事に他人が見る分には構わないんですよ。別に、という気分です。割りきってやっていたから、かな。未だにDVDを封印しています。いつか見れる日が来るかもしれません。
__ 
なるほど・・・もしかしたら、佐藤さんはその演技に納得が行っていないんじゃないですかね?
佐藤 
ああ・・・そうか。
__ 
どんな演技者でも意に染まない演技をすることはあるはずなんですよ。逆に、一生を誇れる演技を成し遂げた時は一つの誇れる成果を得る事になる。それには、役者として演技を作るという作業をしなければならない。自分で見返す気にならない演技とは、自分が作った訳ではないからそう思うんじゃないですかね?何故なら、肉体的な快感を演技作りのスタートにし、その周囲を巡って終わったから。
佐藤 
確かに。僕にはその趣味は無かったので、そこへのこだわりが無かった、だから人為的な快感を作り、演技に換えてしまった。

タグ: 自分を変えた、あの舞台 難しくて、厳しい 衝撃を受けた作品 とんでもない失敗をしてしまった