イシコロの髪留め

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今日はですね、お話を伺いたお礼にプレゼントを持って参りました。
阿僧祇 
ありがとうございます。開けてもいいですか。
___ 
どうぞ。
阿僧祇 
あ、これは恵文社の袋。(開ける)あ、可愛い。凄い。いしころ。すごく嬉しいです。ありがとうございます。

ロームシアター京都×京都芸術センター U35創造支援プログラム”KIPPU” 安住の地「ポスト・トゥルースクレッシェンド・ポリコレパッショナートフィナーレ!」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。安住の地の俳優、森脇康貴さんにお話を伺います。最近、森脇さんはどんな感じでしょうか。
森脇 
安住の地の稽古にがっつり入っています。その後には吉田寮の三文オペラに参加させて頂く予定なんですが、それ以外の出演舞台を探しています。
__ 
安住の地の次回公演「ポスト・トゥルースクレッシェンド・ポリコレパッショナートフィナーレ!」ですね。どんな作品になりそうでしょうか。
森脇 
脚本の内容は、書いている二人が説明したいと思うので僕からはあまり何も言えないんですが、ゲームとかおもちゃとか、色々取りまとめて扱っている作品になりそうです。ポップであり、人間の機微に関わるところを描こうとしていて。今回はダブルで作・演出をする岡本昌也と私道かぴの作品のいいところを取ってるみたいな感じがします。
__ 
そう、安住の地には作演出が二人いらしゃるんですよね。以前拝見した私道かぴさんの「来世のご縁ということで。」面白かったです。あの人の書いている人間性は、いい意味でほどほどなんですよね。ほどほどに欲があり、ほどほどに己に対して客観的・批判的で反省はするけど後悔まではしないというか。
森脇 
自分の劇団の作家ですけど、人間の心情を書くのが上手なんですよね。すごく色々な事を調べてるんだと思うんです。その題材の当事者の方から感想で「そうそうそういうことなんですよ」って言われるぐらいちゃんと書けているみたいで。一方の岡本は岡本で、脚本の「世界」を大切にしています。二人の作家のいいところが合わさった作品になってるんじゃないかなと思います。ただ、脚本に関してはお互いが「面白いね」といい合ってるんですけど、演出に入ると方向性が結構変わるみたいで。
安住の地
2016年7月に結成。京都を拠点に活動。
安住の地のラジオ「の地ラジ」
Twitter @nochiradio
ロームシアター京都×京都芸術センター U35創造支援プログラム”KIPPU” 安住の地「ポスト・トゥルースクレッシェンド・ポリコレパッショナートフィナーレ!」
会場|
ロームシアター京都
住所: 〒606-8342京都府京都市左京区岡崎最勝寺町13 https://rohmtheatrekyoto.jp/access/ 

公演日程|
2019年1月
17日(木)19:30
18日(金)14:30 / 19:30 
19日(土)14:30  / 19:30
20日(日)11:00 / 15:00
受付開始は各回45分前
開場は30分前

料金|
一般:3,000円 当日:3,500円
U25:2,500円 当日:3,000円
高校:1,000円(前売・当日一律)

出演|
中村彩乃 森脇康貴 日下七海 にさわまほ 山下裕英
武田暢輝 柳原良平(ベビー・ピ―) タナカ・G・ツヨシ
【映像出演】ぶんけい(パオパオチャンネル)

スタッフ|
作・演出:岡本昌也・私道かぴ
舞台監督:平林肇
舞台美術:森脇康貴
音響:椎名晃嗣(劇団飛び道具)
照明:河口琢磨(劇団飛び道具)
映像:岡本昌也
衣装:大平順子
宣伝美術:岡本昌也・日下七海
イラスト提供:JewelSaviorFREE(http://www.jewel-s.jp/)
物販:大平順子・日下七海
制作:安住の地
制作協力:渡邉裕史(ソノノチ)
ライター:朴健雄 一人静
カメラマン:中谷利明 大平順子
メイク:篁怜
協力:CoRich舞台芸術!・劇団飛び道具・鍵山千尋
主催:安住の地
共催:ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団) 京都芸術センター(公益財団法人京都市芸術文化協会)・京都市

演技と理解

__ 
稽古は今、どんな感じですか?
森脇 
今は、ちょうどみんな悩んでいます。うまく行かないところが結構ポツポツと出てきていて、ただただ大変ですね。ここを超えると良くなると思うんですが。
__ 
どんな大変さを抱えていますか?
森脇 
役者が持っている視線と、演出が持っている視線が明らかに違っていることを実感しています。演出が俯瞰で観ている面白さを、理解はできているんですが、それを実際にやろうとしていても出来ないもどかしさにぶつかっています。演出からしたら、「そこはそんなに力を入れるところじゃないし単純にいってくれたらいいよ」と言われたとしても・・・多分何か、頑張って何かを変えるというよりかは考え方の切り替えをすればすっとハマると思うんですが。
__ 
鈍感になろうにもなれない?
森脇 
考えすぎと言うといえばそうかもしれないですが、しっくりきてないまま演技をしても再現が出来ないので。そこは役者の範囲で頑張らないといけないところなんだと思います。
__ 
「役者はその演技の意味を理解できていないと再現できない」。
森脇 
そうですね。ただ難しいと思うのが、「再現する」と言葉で表してしまうと、まるで記号化された演技の再現、というイメージになってしまいます。僕は、演劇の実際の上演では再現よりもその場で実際に起こってることの方が大事だと考えていて。再現が必要でありつつ、その場所で生きる、矛盾していてすごく変なんですけどそこが面白いと思っています。
__ 
プログラムを作って実行させるような感じの話ではないですからね。まあ実際には、PC上でプログラムを実行するにしても、全ての実行は同一のものではないんですよ。同じパラメーターを与えれば同じ挙動をするかのように見えますが、深いレベルでは実は違う。
森脇 
まさにそうなんですよ。だから結構、脚本全体に書かれている文脈とニュアンスから出るセリフが僕は結構言えないことが多くて。エラーを起こすんです。でも、そのエラーの方が脚本家としては面白いらしくて。
__ 
もしかしたら、演出はそのエラーの処理を充実させるのが面白いのかもしれませんね。
森脇 
はい、エラーしていても捕まえてくれるというのを演出がやってくれてるんですが、それはただただありがたいです。単に否定されない。岡本の言葉を借りれば、規格外の面白さって言ってるんですけど。当てはまらない時の方が面白いと。ただ、僕にとってはそのエラーはうまくいっていないという感触があるので。いまはもどかしい気持ちがあるんですけどそこは大事にしたい。シーンの要素は大事にしつつ、決められる段取りだけは決めておいて・・・
__ 
その場でしかやれないことは大事にする。
森脇 
はい。
__ 
ただ、エラーの面白さをどこまで咀嚼して伝えるかというのは、また別の問題のように思えますね。
森脇 
そこはもう、完璧にあります。「規格外の面白さ」は彼の中では理解されているんですが、それが伝わらないということがままあるので。
__ 
どの演出家でもそれは直面する問題でしょうね。様々な向き合い方があると思います。お客さんを信じる、恐れる、信じない、色々ですね。一つにには、「筋道を強く作る」たとえば劇団子供鉅人のうらじぬのさんは、『チョップ、ギロチン、垂直落下』に出演した時のインタビューで、最初のシーンが始まってから最後のシーンまで、一つの物語に付き合ってくれるってなんていう奇跡なんだろう、と仰っていました。お客さんに感謝しているんですね。自分達が掴んだ「面白い」を伝える方法に、どう向き合いどう考えるかはとても大切だと思います。
森脇 
先日子供鉅人の影山さんのインタビューを拝見したんですが、その時お答えになっていたことが、僕が今考えてることとちょうど同じだったんです。当初はリアリズム演劇をされたかったそうなんですが、益山貴司さんに「演劇はエンタメだから」と言われたって。僕の考えている「面白い」はいまその境目にいるような感覚なんです。演技自体の泥臭さは大事だなと思っていて。その、泥臭さ以外のところで、ちゃんとお客さんに、プラスの方向で発信をしていかなくてはならないなと思っています。僕のやる「規格外の面白さ」も、まだ内側に向いている気がする。
__ 
が、簡単に外に出してしまうと今度は中身が壊れてしまう。
森脇 
そうなんですよ、そこが難しいんです。
__ 
お客さんの思考の侵入度をある程度まで抑える、みたいなことをしないといけないのかな。伝えすぎると、お客さんが理解に要する時間が短くなるので、深入りしなくなるのかもしれない。本当はもう少し奥まで来てほしいのに。
森脇 
難しいですよね。できることなら期待感はずっと失わないようにしつつ、大体こういうことなのかな、にしたいです。でも僕は、分かる・分からない、ぐらいのところで止まってしまうともったいないなと思います。理解できた、理解できない、それが主題にされてしまうともったいないなと。
__ 
私は、お客さんは一歩ずつの理解を元に作品を見ていくものと思っているから。ただ、理解させすぎるという事に警戒はしています。
森脇 
僕は地点の作品が好きなんですけど、(言葉はちょっとあれですけど)物語を全く理解できなくても面白いんですよね。僕は小林洋平さんが特に好きなんですけど、あの人の面白さをあんまり言葉にしたことがない。
__ 
そうですよね、根本的なところで笑ってるような気がする。
森脇 
あの人に対する期待感というのが常にあるんですよね。僕もそういう状態でありたいと思います。こいつ何かするやろうな、みたいな。

おもちゃとその時代

__ 
今回はおもちゃを集めるという企画もありますね。
森脇 
この作品では平成にあったことを取り扱かう事にきまって、ゲームとかおもちゃとか、僕らの視点から感じている平成を集めようという話になりました。それがいっぱい集まって、今稽古場ではすごいことになっています。
__ 
どんな風に光を当てるのか、二つの意味で楽しみです。
森脇 
今回ものすごく面白いなと思ってるところが、主人公がいないんですよね。というか、ちょっと多面的で。演劇は演劇の枠の中で捉えようとする頭が働くんですが、今回の作品はどのジャンルにも流れるような印象の公演だなと思っています。
__ 
例えば。
森脇 
漫画、アニメ、音楽、色々な方向で楽しめる作品になるんじゃないかなと思います。演劇という、ニッチな趣向じゃなくて、「いいものはいいよね」。見る人にとっての間口が広い作品になるんじゃないかなと。「エンタメ」が好きな人も苦手な人も、演劇の敷居が高くて興味があっても足が向かない人も。僕はRIPSLYMEが好きなんですけど、彼らはヒップホップだけを洗練してやってるわけじゃなくて、綺麗な音の流れも取り入れて発信している印象があるんですよ。いい意味で、これと決めずにこだわりを持たずに行っていると思います。それに似た空気を感じるんです。

質問 うめいまほさんから 森脇 康貴さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、VOGAのうめいまほさんから質問を頂いてきております。「この間ソフトバンクで大規模な通信障害がありましたが、携帯が全然通じなくてひとりぼっちになってしまったらどうしますか?」
森脇 
その土地をぶらぶら散歩してみます。しょうがないかという気持ちで。
__ 
1年ぐらいそれが続いたら?
森脇 
無責任に回答するんだったら、そのままそこに住んじゃった方が楽かもしれません。

演技という仕事

__ 
演劇を始めた頃に影響を受けた作品や人はいますか?
森脇 
僕は滝藤賢一さんが一番好きな俳優なんですけど、それこそゴールデンスランバーの一番最後のシーンでエレベーターに立ってる滝藤さんがめちゃくちゃよくて。主演じゃなくてこんなにすごい演技ができる人がいるんだ、って。その瞬間から、演技そのものが好きになったんだと思うんですよ。演技でこんなに衝撃を与えるなんてすごいことだなぁと思って。その裏にある膨大な作業とかがあるんやろなと思ったら・・・どんなジャンルでもいいから、演技という仕事をしたいなと思ったんです。
__ 
俳優の仕事の一つ、「役作り」だけ考えても、それを支える膨大な仕事があるでしょうね。
森脇 
客演にいらした方や、自分が客演に行った時でも、全然違うと思って。色々な現場によって色々な方法でそういう仕事がされているんですよね。地域とかでも違う。これからもっと、見て学んでいきたいです。

演技と反応

__ 
エラーの話を聞いていて思ったんですが、そして私が最近考えていることなんですが、「演技をする」というとまず台詞を喋ること、が思い浮かばれると思うんですが、リアクションの演技ってどこまでコントロールできるのかなと。台詞を喋る、行動する、そういう能動的なアクションっていくらでも設計出来るけど、同じ舞台にいる役からの投げかけに、体制としてまず反応し対応するのは身体じゃないですか。そこでは俳優は反応をどこまでコントロールできるのか疑っていて。
森脇 
反応すること自体が、演劇に関しては嘘になりがちで。出来る限り、自分が本当の反応をできるように準備しています。その前の段階まではコントロールできるんじゃないかなと思うんですけど。リアクションか・・・難しいですね。
__ 
役者がどう反応するかというのは、お客さんはかなり観ていると思う。
森脇 
心構えとしては、そこにあまり嘘がないようにしたいです。完全に、台本には書かれていない表現をリアクションは担っていて、1mmでもそこに嘘があると、一気に「作ろうとしてるな」ってなってしまう。だから、自分で反応が出来るような心構えは準備しています。
__ 
一人芝居でもリアクションってありますからね。自分で自分の言葉にいるリアクションする演技をこの間観て、凄いなと思って。

風景

森脇 
僕も最近、ちょっと考えていることがあって。自分の役や他の人の役や、セリフを喋ることについて考えていたんですけど、役じゃなく風景の事を考えています。世界ってもっと広いなあと。風景とか背景とかの目に見えないことの方が大事なんじゃないかなと思っています。そういう視点で芝居を作った方が面白そうだなという方向に考えが向いていて。役作りにおいて、その人の年表を作るとか言うじゃないですか、そういうのも大事だと思うんですけど、もっと実感をもって風景を作ると言うか。その時の季節感や温度、歩いた時のじゃりっとした音とか。その空間はそれを持っているのか。もしそれを作り上げることができたら、どんな場所に誰がいるという風景でも、見られるものになるんじゃないかと思うんです。メインで喋っていない役が例えば舞台の隅っこにいたとして、その風景のことを考えて人や物の在り方を考えられたら面白いんじゃないかと思っています。
__ 
箱庭的に何かを配置するという指向性かな、ちょっと違いますかね。
森脇 
そうですね、無理やりそこに箱を立ててその中にどうしようという話ではなくて。もっとその箱を、外に飛び出させていこうみたいな話です。
__ 
小説の中で描かれる風景は人類でしか共有出来ない純粋な自然ですが、そういうことかな。
森脇 
イメージで見れる範囲ってあるじゃないですか。視野で見れる範囲を越えた、その場所に元々在る背景。頭の中にある360度の風景を思い描くべきだと思うんですよ。表現方法の問題として、エンタメとリアリズムのどちらに行くのか、という問題の隣に、実は風景への問題意識があるという気がします。

これから

__ 
今後どんな感じで攻めて行かれますか?
森脇 
安住の地をめちゃくちゃ頑張ろうと思います。安住の地をもっと盛り上げるためにも、色々な現場で勉強したいです。

ルパン三世のフィギュア

__ 
今日はお話を伺いたお礼にプレゼントを持って参りました。
森脇 
ありがとうございます。クリスマスカラーだ(開ける)。ルパン。ありがとうございます。
__ 
今回はおもちゃということなので。
森脇 
舞台に出します。ありがとうございます。

VOGA「直観と情熱」

撮影:井上嘉和
___ 
今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。VOGAのうめいまほさんにお話を伺います。
うめい 
よろしくお願いします。
___ 
さて、VOGAの前回公演「直観と情熱」。大変面白かったです。お疲れ様でした。非常にストイックな作品で、短いシーンがイメージや思想を次々と呼び込む、そうした作品だったと思います。なんと、いつも2時間半以上あるVOGAの作品が90分とコンパクトになっていたんですよね。
うめい 
確かにそうですね。「何回も見ないと分からない」とおっしゃっていた方が、今回は見やすくてよかったって。でも幻覚を見るまで入り込んで行きたいタイプの人にとっては少し物足りなかったみたいでした。
___ 
作品を作っている側としては、いつも長い上演時間を誇る作品を、短くしたということに対してどう思ってるのでしょうか。
うめい 
いつも長い作品に慣れすぎていて、「えっ、もう終わり?」ていう感じもちょっとあるんですよね。作・演出の近藤自身も、色々な構想や設定をバックグラウンドに用意してるんですけど、それを全部書きたいんですけど、都合上書けない・・・そんなことはこれまでもたくさんあって。これだけ短くしていてわかるのか?と。でも、これだけすっきりしても、意外とわかるんだ。そういう実感がありました。
___ 
氷山の一角しか描かれていなくても、氷山でさえあればその底の方まで分かるものかもしれませんね。お客さんは。
うめい 
VOGAの作品は練習内容が多くて。稽古場の都合上、横の方でアンサンブルだけ練習しといてみたいな状況が多いんですよ。だから表から見る機会が少ないんです。でも今回は、舞台監督をしてくださった方が芝居の見え方を客観的に教えて下さったんですよ。ここはこうなってるから、こういう面白さが生まれる、って。なるほど、そういう風にお客さんから見えるんだ、というのが本番する前にわかったんですよね。自分たちがどういうことをしてるのか。
___ 
ちょうどいいところから自分たちの作品を見ることができたと。
うめい 
そうそう、そうなんです。別の観点からわかりやすく見る事が出来て。VOGAはプロジェクションマッピングが重要な演出方法なんですけど、本番直前にしかその中で稽古することは出来なくて、それまで視覚的には分からないんですよ。自分達は自分たちのことをやっているだけ。でも、どういう風に見えるか、というのを途中で教えてもらえました。。
___ 
変わった芝居で、変わった演出でしたね。
VOGA
関西を中心に活動する舞台芸術集団。1997年、劇団維新派に在籍中、草壁カゲロヲ・近藤和見が結成。以来、動員1000人規模の本公演を重ねる。古典的物語や現代舞台に必須とされる身体表現も行いつつも、その、演出手法・劇場空間設定の異質さで、他の小劇場劇団や商業劇のいずれとも違う舞台表現が特徴。近年では東西、出身母体の垣根を越えた実力派役者が多数参加する。公演は観客にとって一種の『旅』と考え、「日常から地続きの非日常へ迎え入れる」ことをコンセプトとし、一般劇場の他、神社・教会・現代美術館・ライブハウス・造船所跡地など、屋内、野外を問わず上演。野外公演ではスタッフ・役者、総勢約70名超の一座が組まれ表現者交流のターミナルとしても機能している。2011 年8月より劇団名をLowo=Tar=Voga(ロヲ=タァル=ヴォガ)からVOGA(ヴォガ)に変更。2015年現在、結成19年目を迎えた。(公式サイトより)
VOGA「直観と情熱」
公演時期:2018/11/3~7。会場:大阪市立芸術創造館。
撮影:井上嘉和

自由なコロス

___ 
「直観と情熱」で、こだわりのあるシーンはどこでしたか?
うめい 
ずっと練習していたのはオープニングのシーンです。うちは劇団員が少ないので、VOGAの子と一緒にチームを組むのは少ないんです。ほぼ誰とも一緒になったことがなくて。だから初めてVOGAに出演する人と一緒に、突き詰めて考えていくんです。
___ 
突き詰めて考える。
うめい 
けど難しいんです。オープニングは最初に出来上がったシーンなんですけど、ずっと悩んでいました。よくみんなついてきてくれたなと思いました。
___ 
非常に美しいオープニングでした。間といい、構成といい。
うめい 
中盤の方に作品として話がバーッと進むシーンがあって。そこから話自体が回転して進んでいくんだろうなと。
___ 
回転していく?
うめい 
よくわからないままバーッて巻き込まれていくんですよね、そこを境に。今回はそれぞれがそれぞれの世界で生きてる感があるんですよ。メインキャストには彼らのバックグラウンドがあって、それぞれの背景や行動している理由とかがあるんです。けど、アンサンブルもアンサンブルで一人歩きする瞬間があるんです。そこに翻弄されるメインの登場人物もいる。
___ 
自由になる瞬間とは?
うめい 
メインキャストの女の子を頂点に、アンサンブルがピラミッドを作るシーンとかは、その女の子のためのアンサンブルなんですけど、なんかその理屈では繋がらないよな、と思っていて。でもふと、その地点からアンサンブルが一人歩きし始めるんだと気付くと、その自由さに気づけるようになったんです。作品を通して、ただの群衆ではなくなる瞬間なんですよね。それを理解してるのと理解してないのでは全然違うんですよ。それが分かってると、自由になれるんですよ。一人歩きする瞬間が面白いと感じていました。
___ 
そうなんですね。あえて伺いたいんですが、コロスが全体を把握するのは果たして本当にいいことなのかどうか、は?
うめい 
そうですね、分かっていなくても全然いい。でも、こういう風に見えてるのがわかったら、まずやっている側としては面白い。

何も考えなくていいから・・・

___ 
先ほどからお話を伺っていて、理論と実践の違いってなんだろうなと思っていて。完璧なレシピがあったとしても、目の前の材料に手を着けるかどうかというのはまた別の問題。何かのきっかけがなければ作業を始めることができない。逆に言うと、どんな小さなことでも必然性があれば、例えばVOGAみたいな複雑な作品を上演する団体のアンサンブルの稽古に参加することはできるかもしれない。
うめい 
最初はほんまに、あわあわしてますね。VOGAのメソッドが体に入っていない、和見さんが良く言う、体と脳が接続出来ていない状態から始まるので。私が初めてVOGAに出演した時、要領は良くないし運動神経も全然駄目だったのでめっちゃ怒られたんです。ずっとやってても全然分からなくて。一人で練習したり、みんなにつきあってもらって、でも出来なくて。でも、当時の副座長に「何も考えなくていいからおれの後を付いてこい」と言われてから、本当に何も考えなくなりましてね。その世界の中でただ生きているだけ。何も考えてない、というと変ですけど、タイミングやきっかけを意識しなくても、曲が入った瞬間にそのものになって、自由が感じられる事に気付きました。
撮影:井上嘉和

今まで

___ 
うめいさんが舞台を始めたのはいつからですか?
うめい 
子供の頃から、おやこ劇場とかによく連れて行かれていて。観るのは凄く好きで、何がきっかけとかはないんですけど。とはないんです。高校に入った時、田舎の町おこしみたいなので倉本聰さんが名誉校長の演劇学校が出来て1年間そこに入ってて。でもその後何もやってなくて。
___ 
なるほど。
うめい 
大学2年の時に、TEAM発砲・B・ZINのきだつよしさんが座長の一年劇団に入って。でも1年だからその後することが無くなって。チラシで募集をみて新転位・21の演劇学校に入り、山崎哲さんに教えてもらって。卒業したらどうしようかなと思ってたんですが、普通に働き始めました。
___ 
そうなんですか。
うめい 
働きながら資格を取ったり、20代はほとんど演劇は何もしていませんでした。でもある時、一緒に演劇学校に通っていた人から、舞台出演を誘ってもらったんです。で、VOGAが東京公演したときに友達に誘われて当日のお手伝いして、そこでVOGAと出会って、その後近藤から電話が掛かってきて「京都に来ないか」と。
___ 
おお。
うめい 
「VOGAはこれから毎年公演するから」って。私のお芝居を見たことがないのに、それで駄目だったらどうするんだ?とか思ってたんですが誘われて。どうしようかなと思ったんですが、なんか、後悔したくないなあって思って。京都に来てから7年になります。大体の人生がお芝居とともに。

質問 福井 しゅんやさんから うめいまほさんへ

___ 
前回インタビューをさせていただいた、福井しゅんやさんから質問を頂いてきております。「あなたにとって待つとはどういうことですか」?
うめい 
待つことは仕事柄多いんですよ。芽が出るのと一緒で、楽しみですかね。どのタイミングで来るんやろう、って。今の仕事(精神保健福祉士)を始めてから、待つことは苦ではなくなりました。彼らにはきっと、言いたいタイミングがあるんですよね。延々待とうと思います。待っている時は楽しいです。殻を破って芽が出そうな瞬間。来るか来るか、って。

必然性を求めて

___ 
VOGAの魅力を教えてください。
うめい 
やってて、ですか?私は結構ぼんやりしてるんですけど、結構VOGAのやり方ってはストイックなんですよ。どんどん突き詰めていけると言うか、そういうのがやっていて気持ちいいですね。
___ 
突き詰める。
うめい 
そんなところかな。あとは、「動きが揃ってるのが綺麗だね」と言われることは多いんですが、揃ってることは前提で、決まり事の中でどうやって表現性を持っていくかを求められるのが面白いです。
___ 
具体的には?
うめい 
アンサンブルの同じ動きの中で、それにどういう意味があるのかを探さないといけないです。演出は動きだけを付けていって、意味はほとんど教えてくれないんですよ。
___ 
つまり、アンサンブルそれぞれで考えている意味が違ってくるということですか?
うめい 
あ、それぞれバラバラな時期があるんですよ。なんか、なんとなくみんな振りが揃っていない時があって。は?ってなって。なんだこれはと。これはこういうことでしょ?というのをみんなで合わせていくのが面白いです。「風音」の振り付けで、手を掲げたポーズで前進する動きがあるんですが、気づいたら全然違う動きしてる人がいて。「風を箱の中に入れる」という解釈をしてたんです。風が抜けていくんじゃない?とか、いやいや風を腕にぶつけるんじゃないか、とか。そして、どれに合わせるか、というのは結構任せてくれています。
___ 
任されるんですね。
うめい 
こういう意味なんでしょ?ってやってたら「それは違うぞ」って言われるんですけどね。でも意味の内容自体は教えられたことはありませんし、何を考えているのかも教えられてない。
___ 
アンサンブルと演出で対等なんですかね。でも最初から、全部意味を教えてもらったら、他のもっと大事な部分に時間を割けるんじゃないか、と言われたら?
うめい 
自分たちで考えるという指向性が大事にされてるんだと思います。「手を掲げてその先を睨むポーズが『眩しい、でも狙う』でもいい。『ただ自分を大きく見せたい』でもいい。理由は人によってバラバラで良い、でも形を保ってほしい」と言われるんです。ストイックに追求し続ける、決まり事の中でのアンサンブルの自由度がVOGAの面白いところだと思います。
___ 
確かに、全ての角度やタイミングがぴったりと揃ってるわけではないですよね。少しずつ動きの中に見出されている意味が違うということに着目すると俄然面白くなる。
うめい 
アンサンブルも人間、一人一人意思を持っているんですよね。例えば私は結構アンサンブルでいる時、楽しくて笑っていることが多いんですけど、それは別に何も言われないんですよね。

これから

___ 
今後、どんな感じでやってくれますか?
うめい 
いま、演劇友達が少なくて寂しいんですよ。VOGA以外で演劇仲間もいない。ただ演劇見て、面白かったねって言える友達を探しています。

クリスマスのドライフラワー

___ 
今日はですね、お話を伺えてお礼にプレゼントを持って参りました。
うめい 
ありがとうございます。見ていいですか?
___ 
どうぞ。
うめい 
(開ける)めっちゃ可愛い。ありがとうございます。クリスマスですね。
___ 
よければ毎年飾ってください。
うめい 
年中出しときます。

三栄町LIVE×fukui 劇 Vol.2 「2108 年岐阜五輪正式競技 WAITING」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い致します。fukui劇の福井しゅんやさんにお話を伺います。今回三栄町LIVEで上演されている「WAITING」。摩訶不思議なスポーツを取り上げた作品でした。福井さんのスラップスティックな言語感覚が生きた作品だったと思います。
福井 
ありがとうございます。実はなかなか受け入れられない回とかもあったんですけど。今日で5ステージ目でしたが、この回の反応が一番良かったです。反応が返ってくるのは嬉しいですね。地獄みたいな回もありましたから。
__ 
そうなんですか。
福井 
肌感なんですけど、主人公である鰻登り早手(うなぎのぼりはやて)がお客さんに好かれていないな、と感じる回があったんですよ。今一緒にやらせてもらってる三栄町LIVEのプロデューサー・清さんからは「フリとオチのフリの部分が、分かる人にしか分からない」という意見をもらいました。ついていける人とついていけない人を選んでいる舞台だと。特にこういう特異な設定、題材だと、誰にでもフリとオチが分かるようにしないといけない。でも今の回はお客さんもちゃんと見てくれたような気がしました。他の回は僕か、僕が出ているときは逆班の熊田くんが前説をしているのですが、この回は実況役の堤くんが前説をしていい導入になったんで、それが功を奏したんじゃないかと思います。
__ 
会場自体がエキシビション会場になりましたね。
福井 
この劇はそういう趣向なのかな、という入り口が出来たんだと思います。
__ 
お客さんに確定した立場を与えれば成立しやすいのかな。
福井 
お客さんにツッコミを入れてもらう、みたいな。
__ 
この間取材させて頂いたスタンダップコメディアンが言っていたんですけど、日本のツッコミというものは、観客に動かない部分をお客さんと共有して、ボケという世界観に切り込みを入れることで笑いを提供すると。そんなことをおっしゃっていました。
福井 
WAITINGは片来泰子という女性アナウンサーが物語を進行しているんですけど、この劇での新たな挑戦として"動じる語り手"というものをやってみたかったんです。物語の進行を担う語り手が急に個人的なことを話しだしたり物語自体をないがしろにするのってあまり見たことがなくて。大仰かもしれませんが、もし動じる語り手という手法が成立したら、演劇そのものが今より少し広がるんじゃないかって。今回の裏テーマだったんです。
fukui劇
福井しゅんやが主宰する企画。
三栄町LIVE×fukui 劇 Vol.2 「2108 年岐阜五輪正式競技 WAITING」
世界初の“待つ”競技をめぐる、新感覚スポーツ劇!
2108 年、オリンピックが開催されることとなった首都、岐阜。
岐阜五輪では新競技として前代未聞の“待つ”競技、『Waiting』が採用されることに。
ペットトリマーの専門学校に通う鰻登り早手(うなぎのぼりはやて)は、ひょんなことから Waiting に出会う。
やがてシンプルながらも奥深い Waiting の魅力に取り憑かれた早手は、 来る日も来る日も Waiting に明け暮れる。
そして彼は、迫り待つ強敵を待ち倒し、 岐阜五輪で金メダルを取るという夢に向かって、だいぶ頑張るのであった…。
これは、そんな Waiting に命を懸ける男たちや女たちの、魂の物語である。

キャスト
佐々木幸志朗 宮崎利貴 花岡翔太 仙洞田志織 田澤葉 大高孟之 堤敏樹 磯部伸二郎 熊田修 須田明子 横滝今日子 福井俊哉 真優花 石井彩友美
11月21日~12月2日
会場
三栄町LIVE STAGE(旧フラワースタジオ)
スタッフ
 宣伝美術:加納和可子 キャスティング:福井俊哉/若宮亮 制作:松尾智久/井原正貴 制作指揮:小畑幸英 プロデューサー:清弘樹

バランス

__ 
そこで、今回の作品はまさにスラップスティックコメディだなと私は思っていました。口が悪い登場人物たちがエゴ丸出しで、お互いに遠慮なく、口汚くなじりあうし裏切りあう。
福井 
たぶん僕自身ができていない人間だから、より一層鬱屈してる部分が出ちゃうんだと思うんですけど。
__ 
主人公の早手の彼女が「コーチとの浮気が初めてではない」とか面白かったです。
福井 
早手の血で誓約書を書かすというのが絵が浮かぶあたりが好きで。
__ 
そういうエピソードを高速で流していくあたりが好きなんですよ。単に露悪的な思考で出ているんじゃなくて、面白いという方向になっているのが素晴らしいと思います。
福井 
先ほど言ったように、主人公の早手が愛されていない回というのがあって。微妙なところなんですが、少し声を張り上げすぎてちょっと怖く見えてしまったんですよね。社会の端くれにいるようなクソ雑魚が小さい声を張り上げているのが面白いのであって、彼が強さ、怖さを持ってしまうと違う。普段絶対主役やってないんだろうなっていう人物をチョイスしないとできないんですよね。のび太的な主人公と言うか。のび太よりももっと焦点が当たらないような人物。
__ 
それが粋がっているみたいな。
福井 
早手役である佐々木君の、黒タイツに日の丸というルックス。彼を見てるだけで面白いんですけど、彼にどこまで怖さと面白さのバランスを取ってもらうかがポイントでした。
__ 
いや、きっと大丈夫だと思います。ノリというものがあると思いますよ。劇場の外にもそれはあって、SNSに何も書かれなくても伝わっていくと思います。
福井 
今回西田シャトナーさんに勇気を出してリプライを送って、明日見に来ていただけることになったんです。そもそもこのWAITINGを書き始めたきっかけは、平昌五輪でスピードスケートの選手がずっと待ってる姿を見て、これをスポーツにしたら面白そうだという発想があったんです。それと西田シャトナーさんのスポ根的なSFの芝居が大好きでインスピレーションを受けたんです。尊敬する先輩に見ていただけるのは嬉しいですが、とても緊張します。