質問 木村 雅子さんから 坂本 見花さんへ

__ 
もう一つ、トランク企画の木村雅子さんから質問を頂いてきております。トランク企画はインプロショーですね。役者はこの先何が起こるのか全く分からないんですけど、それが面白いんですよ。さて、質問です。「今、メチャクチャワクワクしている事はなんですか?」
坂本 
次に書く台本です。それしかない、私(笑う)。

「そこで本当に起こっているんだ」

__ 
見に来たお客さんに、どう思ってもらうのが理想ですか?
坂本 
「ここで起こっている事は本当の事なんだ」と思って欲しいですね。ドキュメンタリーという意味じゃなくて。役者の演技が「そこで本当に起こっているんだ」と感じてもらいたいですね。
__ 
鬼気迫る、という事ですね。物語の再現という訳じゃなくて、いま目の届く距離にかの人がいる事。それは、何故でしょうか。
坂本 
私が興奮して見ている時、「本当の事なんだ」と思うから、ですね。現代劇でも歌舞伎でも、同じように思います。私の書くものはファンタジーであり、一見するとただの「つくりごと」なのですが、私、座右の銘的に思っている事があって。「リアリティとは現実に似ていることから生じるのではなく、わたしたちの魂の願望を言い当ててくれることによって生じるのではないか」って。これは「十二国記」の評論にあった一節なんですが。
__ 
魂の願望からリアリティが生まれる。
坂本 
「十二国記」は、主人公の女子高生が色んな超人的能力を得て一国の王になるという英雄譚で、それは現実にはあり得ないけど、魂の奥底にある願望を汲み取っているからここまでのリアリティがあるのだ、と。これも受け売りですけど(笑う)現実と似てるからリアリティを感じるんじゃなくて、現実からは遠いけれども、私達の根源的な望みや悲しみをすくい上げてくれているから共感出来るし、リアリティがあるのだと。そのことは思い続けていますね。
__ 
魂が震える、揺れるところを見たいですね。
坂本 
はい。それを書きたいです。演劇が面白いのは、役者は何回も同じ芝居を演じていて、もちろん結末も全て知ってるんですよね。そうした存在が、また自分の運命を頭からたどり直している。そこには、潜在的な色気を見る気がするんです。
__ 
構造が生む、かすかな色気。
坂本 
そうだと思います。それは狙う所じゃないんですけどね。まるでファンタジーです。見ようと思っても見えない。でも視界の隅でチカチカと光っている。でも焦点を合わせようとすると見えない。そういうものをつかみとろうとすることが、ファンタジーを書くという行為なんだと思います。

タグ: ドキュメンタリー ファンタジー 色気なるものの謎 今、手が届く距離にかの人がいる事 焦点を絞った作品づくり


赤い曖昧

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生まれて初めて、面白いと思った経験は何ですか?
坂本 
生まれて初めてではないと思うんですが、幼稚園の時に先生がパンドラの箱のおはなしをしてくれて、それが面白いと思った経験がありますね。
__ 
パンドラの箱。
坂本 
たぶん。それと、小学校一年の時に童話の「赤いくつ」のダイジェスト版を読んで、それにハマりました。2つに共通するのは禁忌ですね。やっちゃだめ、というところから深くなったり発展していくのが面白いと思ったのかな。
__ 
「赤いくつ」って、どんな話でしたっけ。
坂本 
ある女の子が赤い靴を買ってもらってとても喜ぶんですけど、お母さんのお葬式にまでその靴を履いていってしまうんですね。それはもちろんけしからん事で、女の子には呪いが掛かってしまい、脱げなくなった赤い靴が勝手に踊り出すんです。そのまま踊って森の中にまで入っていってしまって、イバラで足が傷付いても踊りは止まらず、最後は木こりに両足を切断されて助かるという。
__ 
そんな話でしたね。キツイですね。
坂本 
でも子供向けの絵本だから、最後には女の子と木こりが笑顔で立っているというシーンで終わったと記憶してます。
__ 
無理矢理ですね。
坂本 
そうですね、無理矢理です。でも、潜在的な色気は隠していても見えますよね。男性が足を切るというのは残酷だけど、何かのメタファーなんだろうと思います。「フランケンシュタインと赤い靴」という副題もこのお話からとりました。

タグ: 赤色


青の曖昧

__ 
いつか、どんな演劇を作りたいですか?
坂本 
作りたいもの・・・。演劇かどうか分からないですね。それは小説かもしれないし、メディアアートかもしれない。浮遊許可証に関わってくれている人が、私の物語はメディアアートに向いていると言ってくれていて。・・・どんな物語が作りたいか。それを思うと、いつも青空が出てきます。
__ 
青空。
坂本 
視界の中に青空しかないか、凄く高いところにいるか。いつの頃からか、螺旋の塔みたいなものがずっと私の頭の中にあるんです。子供の頃から、ふとした瞬間に思う風景です。その塔に住んでいる人たちは物語が生活の一部になっていて、生まれた頃から何がしかの物語を持っているんですよ。壁が全くない空中回廊、あるいはどこからでも空が見える螺旋の形の塔と、そこで暮らしている人たちの物語、を、私はいつか書くんです。でもそれは今の私には書けないから、おばあちゃんになってから書こうと子供の頃は思ったんですね。
__ 
その風景があるんですね。
坂本 
その風景しか出てこない。
__ 
それは、塔なんですか?
坂本 
街かもしれません。とにかくどこからでも空が見えるんです。遠藤彰子さんの絵、だったのかな、が小学生の図工の教科書に載っていて、その絵も簡素な布だけをまとった人たちが白い建物の中にいて、多分一つの大きなお城みたいな街みたいなところで、空があり得ない方向から見えている。そういう世界を作りたいと思うんです。
__ 
そこに行きたい?
坂本 
いや、自分がそこに行きたいとは思わないですね。行けたら楽しいと思うんですけど。
__ 
でも描きたいと思う。
坂本 
そっちの思いの方が強いかな。いい景色を見た時に、それを描きたいと思うんです。そんな貧乏根性があるんです。

ワイヤー・ブックエンド

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
坂本 
やったー。大きい。クリスマスらしい事をしなかったから、いまクリスマスが来たみたいです。(開ける)あ、バッチリです。欲しかったんですブックエンド。


絵皿(干菓子等用)

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
延命 
ありがとうございます。
__ 
さあ、何が出てくるんでしょうか。
隣の子供がプレゼントの箱を見つめている。
子供 それ何が入っているんだろう。
延命(子供に見せて上げるようにして、開ける)わあ。
パパ あっ、お皿だ。
ママ かわいい。
__ 
お菓子などを入れるための。
延命 
こういう一段階を踏むのが大事ですよね、生活って。放っておくと袋や鍋から直接食べたりして。
__ 
使って頂ければ嬉しいです。

タグ: プレゼント(食器系)


理想の自分は演劇やってないんです

__ 
延命さんは、自分を変えたいと思った事はありますか?
延命 
ありますよ。理想の自分は、演劇とかやらずに働いて結婚して子供を産んで。
__ 
今からでも遅くないんじゃないですか。演劇をやりながらでも。
延命 
演劇をやるのは好きなんですが、本当は良くないという思いもあるんです。祖父母と住んでいたんですが、祖父の影響があるのかもしれない。
__ 
というと。
延命 
両親が共働きで、主婦といえば祖母、子供を叱るのはおじいちゃん。しっかりしなきゃという価値観があるんじゃないかと思います。
__ 
今は、ご家族はどう思っているのでしょうか?
延命 
まあ今は働いてるし、支障がなければ、かな。
__ 
支障というのは、結婚生活を仮定した上での?
延命 
どうなんですかね。その辺はあまり話したことがないので。祖父が落語は聞くので、祖父母は落語なら気にしないと思いますが。働いて、芝居やってて、家庭を持って、全部両立出来ていればそれが一番いいんですけど、どうやらそうじゃないぞ、と。

タグ: 家族という題材


好きな事をやっているのがあまり好きじゃない

__ 
延命さんは、幸せになりたいと思った事はありますか?
延命 
あると思うんですけど。あの、私、好きな事をやっているのがあまり好きじゃないんですよ。こんな事をやっていていいのかな、みたいな。限度ありますけど、ちょっとやりたくない事をやらされていた方が安心するというか。
__ 
楽をしたくない?
延命 
そう・・・でも楽をするのは大好きなんです。私にとって、楽しい事とラクな事は同じカテゴリなんです、きっと。演劇は苦しいけど楽しくてラクなこと。でも後ろめたい。本質的には凄いめんどくさがりなんです。幸せには、きっとなりたいです。

タグ: カテゴライズされる俳優


等身大の彼女

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いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
延命 
そこがすぐには出てこないのが問題なんですよね。求められる演技がすぐに出来るようになりたい。それが達成出来なかったという経験も積み重ねていけばいいと。これは伊藤えん魔さんに言ってもらったんですけど。
__ 
というと?
延命 
「お前に生活感とか等身大とか出来る訳無いだろう」と。こっちもそんなの求めてないし、みたいな。
__ 
百物語の時、延命さんは山姥役だったじゃないですか。この人は、こういう事をせざるを得ない人なんだろうなと思いましたけどね。
延命 
えん魔さんも、百物語でしか呼ばないかもしれない、本公演はちょっと、呼ぶかどうか分からない、みたいな事を言われましたね(笑う)。

タグ: いつか、こんな演技が出来たら 伊藤えん魔さん


質問 山本 正典さんから 延命 聡子さんへ

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前回インタビューさせていただきました、コトリ会議の山本正典さんから質問です。「水にどれぐらいこだわりを持っていますか?」
延命 
蛇口から出した水は飲めないです、でも学校の飲用水蛇口のは飲めます。ウォータークーラーの水も飲めます。
__ 
普段は家でどうしているんですか?
延命 
ミネラルウォーターを使っています。京都の水道水って飲めるんですが、私は飲めないですね。「京都の水道水」「大阪の水道水」のペットボトルが売ってるじゃないですか。それは飲めます。
__ 
料理も?
延命 
料理は全然水道水です。お湯を沸かしてお茶を飲むのも水道水ですね。でも、蛇口から出たのは、そのまま飲めないんです。

タグ: クッキングの話題


ナントカ世代「その十字路の先を右に曲がった。」

__ 
今年の延命さんで印象深かったのは、やっぱりナントカ世代だったんですよ。屋敷の女主人でしたね。悪役という役回りをきっちりとこなし、その役自体が作品の魅力となっていたように思うんです。「役割をこなす」以上に。今までの延命さんだったら、最後まで延命さんの枠からは出ずにいたんじゃないかなと思っていました。
延命 
・・・。
__ 
私の中での延命さんのイメージは、美人だけどとても気持ち悪い演技が出来る人で、それが段々と小さい工夫をこらしたネタをされるようになって。落語とかも。ご自身では、延命さんの演技はどのように変遷していったと思われますか?
延命 
前回のインタビューで、いろんな表情をコントロールしてやらないといけないんだろうなと気づいたと話したと思うんですが。劇研アクターズラボのWSを受けた頃ぐらいから、よく分からないものをそのまま出す、出してみよう、みたいなそういう事を考え始めました。
__ 
整理の付いていないものを出す、みたいな。
延命 
それに近いですね。私が「こういう表情です」にしてたら、それ以上の表情にならないというか。出てくるものに任せる。前のインタビューで、「雑になりました」と言ってましたが、その延長に、この考え方があるのかなと。それと・・・以前アクターズラボに出た時、田中遊さんから「出来ているように見える演技」と言われた事があって。それがずっと残っているんです。中身がなにも詰まっていないのに、やってしまっている演技というか。
__ 
俳優になるのに資格はないと思う。でも、素晴らしい演技を行う人は、本人も選べないような使命を持っているのかもしれない。強烈な理由を持っている奴も中にはいて。でも、ただのイントネーションがそう感じさせるのかもしれないけどね。
延命 
あ、こんな感じでしょ?みたいな。
__ 
いや、延命さんは会話でコンタクトする演技の時に語尾が半音下がる癖があって、それじゃないかな?と思う。いっこいっこの演技を置いていく感じ。
延命 
そうそう、ここで喋り終わりますよ、みたいな。私がやってたのはただの演技、みたいな。
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それが、この間のナントカ世代の時は全然そんな事が無かったけどね。
ナントカ世代14「その十字路の先を右に曲がった。」
公演時期:2013/6/21~23。会場:アトリエ劇研。(公式サイトより)

タグ: 役をつかむ 劇研アクターズラボ 落語


中野劇団「イレカワ」の思い出

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今年の延命さん。2月の壱劇屋への出演に始まり、中野劇団、伊藤えん魔さんのプロデュース公演、ナントカ世代、落語と充実していましたね。
延命 
その通りです。ありがとうございます。
__ 
中野劇団はほぼ主演でしたね。登場して最初のセリフ、面白かったですね。「あの、私、あれ何だこの声」って。
延命 
あれは本当に中野さんの筆の力で。
__ 
全体的に、どんな思い出でしたか?
延命 
今回は中野さんが最初から最後まできっちり作るんじゃなくて、オーディションで選んだメンバーと一緒に稽古を通して作っていくという方式で。この作り方は、以前参加した長編公演と同じなんです。
__ 
なるほど。もしかして、中野さんの完璧さがないから、ちょっと不安だった?
延命 
でも、今回出演されてなかった三条上ルさんが稽古場で「これ絶対面白いで」って言ってはって、確かに本番でもウケてて、安心しましたね。
中野劇団
2003年に京都で旗揚げした劇団です。長篇の公演と短篇(コント)オムニバス公演と2つの形式があり、どちらもほとんどが「笑い」が主体の内容です。長篇はほぼ全てが一幕もので、シチュエーションコメディの要素を含むことが多いです。(公式サイトより)
中野劇団 第15回公演「イレカワ」
公演時期:2013/8/11~13。会場:in→dependent theater 1st。(公式サイトより)
壱劇屋
2005年、磯島高校の演劇部全国出場メンバーで結成。2008年より大阪と京都の狭間、枚方を拠点に本格的な活動を開始。主な稽古場は淀川河川敷公園で、気候や時間帯をとわず練習する。マイムパフォーマンスを芝居に混ぜ込み、個性的な役者陣による笑いを誘う演技にド派手な照明と大音量の音響と合わせ、独自のパフォーマンス型の演劇を行う。イベントではパントマイムやコントをしたり、FMラジオにてラジオドラマ番組を製作するなど、幅広く活動している。(公式サイトより)
劇団壱劇屋第19回公演「突撃!八百八町!!~人斬りピエロ軍団vsタケミツナリタ~」
公演時期:2013/2/23~24。会場:中津芸術文化村ピエロハーバー。
伊藤えん魔プロデュース「百物語」2013
公演時期:2013/8/16~18。会場:in→dependent theater 1st。(公式サイトより)
ナントカ世代
当初は、すべての公演タイトルを『?世代』とすることを約束事として北島淳の脚本を上演する企画であった。が、そもそもは「タイトルを考えるのが面倒」という安易な理由から導入したタイトルシステムにより、徐々に狭まる選択肢に逆に苦しむハメになり約束を破る。つまり、今ではただの不条理劇とコメディが好きなだけの、京都の演劇企画である。(公式サイトより)

タグ: エネルギーを持つ戯曲 京都と大阪・大阪と京都 今年のわたし


映画『星を継ぐ者/Inherit The Stars』

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今日はよろしくお願いします。最近の延命さんはどんな感じでしょうか。
延命 
よろしくお願いします。この間、生まれて初めて自主映画に出演したんですが、私のシーンがクランクアップしました。沢大洋さんと吉岡里帆さんが出演する映画で、私の役どころは日系のロシア軍人役でした。
__ 
面白そう。見たいですね。
延命 
沢さんがめっちゃカッコイイんですよ。元自衛隊員の役です。ロケ地は六甲と交野で、劇場で映せるぐらい細かい性能のカメラで。私、南方系の顔立ちだから大丈夫かなと思ってたんですが、カメラアングルで鼻が高くなる絵があるんです。多分、来年の春先に公開かなと思います。
__ 
楽しみです。
少・F・年
松本健吾(少年A)と延命聡子(少・F・年)を中心とした演劇サークル。(公式サイトより)
映画『星を継ぐ者/Inherit The Stars』
製作:星海電影制作公司。

タグ: 映画の話題


みんなと一緒に自由になれる

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木村さんは今後、どんな感じで攻めていかれますか?
木村 
そもそも攻めるのが苦手なので。どうしたらいいかな。でも、仲間が勝手に自由に感じる事が出来る場所が出来たらいいなと思います。みんなと一緒に自由になれる場所。

タグ: 今後の攻め方


赤ワイン塩と、ハーブチョコレートのアソート

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
木村 
もうありがとうございます。私、プレゼント無いですよ?
__ 
いえいえ。どうぞ。
木村 
ありがとうございます(開ける)あ、すごい。
__ 
それは赤ワインの塩と、スパイスのチョコレートです。
木村 
おいしそう。小洒落たものをいっぱい知ってそうですよね。

タグ: プレゼント(食品・飲料系)


質問 宮階 真紀さんから 木村 雅子さんへ

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前回インタビューさせて頂いた方から、質問を頂いてきております。宮階真紀さんからです。「好きな指はどの指ですか?」
木村 
考えた事なかったです。私の指、短いから嫌いなんですよね(笑う)。でも唯一、人と長さが同じだから親指です。

上も下もないんです、舞台には

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インプロをご覧になったお客さんに、どう思ってもらいたいですか?
木村 
家に帰って思い出し笑いしてもらいたいですね。プププって。何かずっと思いに残るものを持ち帰ってもらいたいですね。その場で終わりじゃなくて。
__ 
なるほど。
木村 
これはランディが言っていたんですけど、お客さんはお話を見に来るんじゃなくて、自分のことを語りに来る。自分の物語を体験しているように感じるのが一番いいんだ、って。
__ 
個人史を語りに来る。そうですね、それが共感なんですね。
木村 
即興はお客さんと一緒に作るものでもあるので。だから、一緒に感じてもらえたらなと。客席と舞台の間の境界線が無くなったらいいのに、と思いますね。初めて絹川友梨さんに連れられてシアトルに行った時に、お客として舞台に上がったことがあって。
__ 
お客さんを舞台に上げる?
木村 
そうなんです。一緒に舞台をお客さんとつくるんですけれど。私も「行ってきなよ」って背中を押されて。客席から舞台に上がると、そこはきっと空気が違うんだろうと予想してたんですが、いざ舞台に上がったら何も変わらなかったんです。素人だから余計に感じるのか。全然空気が変わらない。これがインプロなのかって。舞台の上も下もないんです。素敵ですよね。

タグ: どう思ってもらいたいか? 即興、インプロについて


もっと、沢山の人とセッションしたいから・・・なのかもしれません

__ 
木村さんがインプロを始められた経緯を伺ってもよろしいでしょうか?
木村 
私、以前、劇団にお世話になっていて。でも物凄い落ちこぼれで、憧れているけれども何をしたいのか分からない状態で劇団にいる、という恐ろしく迷惑な存在だったんです。そもそも、切磋琢磨してコラボレーションして面白い作品が作られていくのが本当なのに、何をしたいのか分からない人がいる。なんじゃそりゃ、ですよね。
__ 
いえいえ。
木村 
本当によく受け入れてくださっていました。でもダメダメで、人としてすごく自信を無くしていた頃、増田記子さんという今も大好きな先輩が、絹川友梨さんのインプロの本を貸してくださって。それを読んで凄く感動したんですね。すぐに絹川さんのWSに行ったのが始まりです。絹川さんのワークショップで、私は私のままでいいんだ、って思えたんです。舞台というか、癒されに行ったようなものでした。
__ 
癒やし。
木村 
当時から周りに素敵な人が沢山いて、でも私はすごくダメだ、と勝手に思い込んでいて。そんな私でもいいんだって思わせてくれたという経験だったんです。
__ 
そして、現在、トランク企画を続けているのですね。その原動力は。
木村 
何でしょうね。インプロを始めてからは、いつも目の前に階段が出来ていくんです。何でしょうね。目の前の人たちが自由になればいいなと思っているんです。自分が自由でありたいために、周りの人も自由であってほしい。自分だけ自由というのはあり得ないですもんね。たとえば、周りの人がリラックスしていたら自分もリラックスできたり。
__ 
なるほど。
木村 
ショーは、それはそれは面白い瞬間で、みんなと積み重ねていく面白さっていったら無いんですよね。全身がワクワクする。周りもそうだと分かる。それをもっと、沢山の人と経験したいから、かもしれません。

タグ: コラボレート 留学して表現を学ぶ 自分は何で演劇を


重なりあって生まれる、その瞬間が大切

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もちろん、「LIFE」を見ていて全て面白かった!楽しかった!という訳じゃなくて。やっぱり、観客はもの凄くフワフワしながら見ていたと思うんです。不安になる事もあった。お話が用意されていないという点で、観客の態度って相当違うんだなあって思いましたね。
木村 
なるほど~。何も決まってないから、そうですよね。そして、台本のお芝居と、絶対に違うのは、役者が自分自身の言葉で語っているという事なんじゃないかな、と思います。
__ 
役者が、自分の言葉で語っている?
木村 
即興は、その人の人生を反映したものしか出てこないんです。たとえば、台本は、作家さんの言葉、世界、その時代が再現されていきます。もちろん稽古で俳優とコラボレーションしながら作ると思うのですけれど。即興の場合は、一人一人の演者の言葉が瞬間に積み重なってどこまで行けるか、なんです。どんな人の人生も素晴らしいもので、それが重なっていく面白さ。
__ 
その人の生の言葉ですね。
木村 
だから色んな人、年齢層の人がいればいるほど面白いんですよね。さらに言うと、その役者の「今」の言葉しか出てこないんですよ。今の私と去年の私が同じシチュエーションに置かれたとしたら、全然違う事を喋っていると思います。

タグ: コラボレート


許し

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「LIFE」を見ていて、どこか浮遊感があったんですよ。次に何が起こるか分からない事による浮遊感。実はこの間、舞台映像家の方にインタビューしていたんですが、記録映像にした演劇と生の演劇とでは、その情報のあり方が全く違うという事が分かりました。過去の記録映像はその戯曲の物語性が浮かび上がり、生の演劇は俳優が放つ衝動を受ける事が出来る。しかし、戯曲の俳優は何も知らない体でありながら物語の結末を知っている・予定された未来を持っている。であれば、演劇の映像作品とインプロショーは逆の関係にあるなあと。インプロは観客はもちろん俳優も次に何が起こるか知らない。
木村 
ほんとに、何が起こるか知らないからこそ面白いと思います。一緒に発見していく面白さというのでしょうか。
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怖いですけどね。何が起こるか分からない。
木村 
前のめりになって見てしまうお客さんもいますよね。
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俳優が失敗するかもしれなくて、心配になってしまう。
木村 
失敗も見せどころなので、そこも楽しんでもらいたいです。皆が心の中に持っていないといけないのは、「失敗しても良い」という事なんですよ。
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「失敗しても良い」?
木村 
シアトルにいた時、ランディさんという方にインプロを教わっていたんです。「君たちがどんなに失敗してもシアトルの市民にはなんの関わりもないから、どんと楽しんでおいで」と言って下さって。それが凄く素敵だなと。そうあれたらと思います。だいたい、即興の舞台に立つだけで凄い勇気なんですよ。みんな、よくぞ立ってくれているなと。
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そうですね。
木村 
日本は失敗を許さない意識が結構社会に根強くあるけれど、人間は失敗して成長するものだと学んできました。そのような社会であればいいな、って。全部まとめて見せられればいいなと思っています。
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失敗を許す。
木村 
失敗したね、あははって。自分自身を許すし、誰かの失敗も許すし。失敗を楽しんでいくというか。だってそれは面白い事だから。失敗も含めて、その人自身を見せるのが面白いんです。
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素晴らしい。「失敗してもいい」か。
木村 
それは凄く大きなインプロのメッセージで、失敗出来るのであれば役者さんはチャレンジ出来るし、失敗出来るという事は進化のスピードも違うんです。失敗を許されないと、いつの間にか果敢なチャレンジが出来なくなってしまう。失敗を楽しめるのは、ワクワクする環境なんじゃないかと。まあこれはインプロの基本的な考え方なんですが、そういう意識をお客さんが感じて帰ってもらえたら、それが最高ですね。失敗した場面をプププって笑ってほしいし、そうしたらきっと豊かになるんじゃないかなって。

タグ: 相互承認 オーガナイザーの企み 失敗を許容する社会