社会人役者のなぞ

__ 
廣瀬さんがお芝居を始めた経緯を教えて下さい。
廣瀬 
僕は大学二年の時に仮面NEETをしていまして。実は1年の時にロボットサークルに入っていたんですが、人間関係がいやになって。別に問題があった訳じゃないんですけど。その1年で水曜どうでしょうにハマり、TEAM NACSにハマり、演劇サークルに入ったんです。基本的には、文化芸術は趣味でやってこそと高校の頃からそう思っているんですね。
__ 
ええ。
廣瀬 
まあ京都にはセミプロの人がたくさんいるんで「何言うてんねん」言われそうですけど、まあまあそう思っていて。で、サークルを卒業するとやはり寂しくなって、アクターズラボに入ったんですね。僕は就活が嫌でフリーターに成り下がったんです。演劇をやっている人って、普通の仕事したくないから芸術系の仕事をやりたいと思っている人が多いと思うんですけど、僕は就活というまどろっこしいものが嫌で、そんなややこしい事で仕事を決めなあかんというのが嫌で。それだったらアルバイトしつつ社員登用を狙ったほうが、いろいろ経験も積めるし、演劇もし易いだろうし。ようやく、ちょっとずつその足場固めが出来つつありますね。
__ 
素晴らしい。
廣瀬 
アクターズラボをやっていて、他のクラスの公演にも行くんですけどね。プロの役者はそりゃ皆さん上手だと思うんですけど、僕は社会人役者の方が面白いと思っているんです。プロの方々はもちろん尊敬しますけど、僕の趣味志向で言うたら、面白いのは社会人役者なんですよ。会社取締役をしながら計5公演くらい出演されてる人がいるんですが、ものすごく面白い役者でした。社会人劇団でいうと、ベトナムとか中野劇団とか柳川とか、面白いでしょう?
__ 
社会人俳優の身体が面白いというのは、よく分かります。
廣瀬 
アクターズラボの杉山さんは「責任感の違い」と仰っているんですけど、きっと、言語化出来ないですけど決定的な何かが責任感の他にあるんだろうなとどこかで思っていて。職業・職場が醸し出す個性が絶対あるんだろうなと。
__ 
社会人俳優の身体がこの世界に見られ慣れていないから、経験的に飽きられていないから、かもしれませんね。
廣瀬 
確かに、見られ慣れていないというのが、一つの圧になっているのかな。社会人の方が、見られるという圧力を自分の力に変換する能力を持っているんじゃないかなと思うんです。まあ、ハリウッド俳優とかは別にして、外からの圧を出力に変えるメカニズムは普通に働いていた方が養われると思うんですよ。さらに、観客の圧に慣れていないから、それを変換する作業がエネルギッシュになるんじゃないかと。その2つの構造があるんじゃないかと思うんです。
__ 
分かります。しかも、意気込みの種類が違いますからね。
廣瀬 
アクターズラボに参加する人は、次に出られるかどうか分かりませんからね。そういう意味で、責任感は違うかもしれません。
アクターズラボ
劇研アクターズラボはNPO劇研が主催する、総合的な演劇研修の場です。舞台芸術がより豊かで楽しい物となる事を目指して、さまざまなカリキュラムを用意しています。全くの初心者から、ベテランまで、その目的に応じてご参加頂く事ができます。現在、京都と高槻を拠点に、アクターズラボは展開中です。(公式サイトより)

タグ: 大学卒業後に・・・ 演劇のない地に演劇を現出 劇研アクターズラボ 見えないぐらい濃い交流 プロの仕事 ロボット演劇 社会人俳優についての考察


学んで帰ってもらいたいんです

__ 
廣瀬さんの作品をご覧になったお客さんに、どう思ってもらいたいですか?
廣瀬 
おこがましいかもしれませんが、学び取ってもらいたいですね。僕より圧倒的に知識量がある人が見に来たとしても、僕しか知り得ない事ってあるんじゃないかと。そのために、SFをやろうと思っています。単純に最新科学を勉強しようとしたらNewtonを読んだ方が早いんです。そうじゃなくて、人間の生活に活かせる科学哲学的なところを演劇を通して伝えたいな、と。もちろん、それとは別に、僕の考えている事も知ってもらいたいし。
__ 
そうですね。
廣瀬 
僕が見に行く時も、何か学び取って帰らないと。どんなに趣味が合わなくても学ばないともったいないし、学ぶところがなければどんなに笑っても損したな、と感じますね。
__ 
これまでご覧になった中で、最も学ぶところが大きかったのは?
廣瀬 
TEAM NACSの「Looser」ですね。初めて見た舞台演劇なんです。DVDでしたけど。感情を発散する事を初めて学びました。現代の日本にはそれが恥ずかしいと思っている人が多いと思うんですけど、そこを僕にブレイクスルーさせてくれた作品でしたね。それと、チェルフィッチュの「3月の五日間」。こんなに狭い範囲で人間を事細かに観察して表現出来るんだなあと。

タグ: どう思ってもらいたいか? その題材を通して描きたい


見つける喜び

__ 
ふつうユニットのロゴマークが気になりますね。これは・・・?
廣瀬 
ブロック図ですね。僕、大学でロボット工学勉強してたんですけど、入力から出力までの計算式を分割したり統合したりするためのツールです。これはフィードバック系ですね。作品を出力して、その後フィードバックするみたいな。お客さんが自分の中でフィードバックが帰って来るようになってほしいですね。あと、functionのfが普通のFだったんですよ。
__ 
なるほど。理系の演劇人は珍しいかもしれない。
廣瀬 
結構いるんですけど、理系である事を諦めた演劇人が多い気がするんですよね。僕は理系である事を捨てたくないなあと。理系の考え方って確実に演劇にプラスになると思うんですよ。俳優ならバイオメカニクスの考え方が本当に役に立つんですよ。
__ 
ふつうユニットの公演、一坪シアタースワンで拝見したことがあります。本当にハードSFでしたね。色恋とか一切関係なしの。
廣瀬 
結局、演劇って何かといえば生き死にと色恋が出てくる。それが感情の高ぶる本質的な原因とはいえ、そうじゃないところで盛り上がれるところはあるんじゃないかと。理系が心を震わせる瞬間って、何かを発見した時なんですよ。

タグ: SFについて


使えるテクノロジー・売れないテクノロジー

__ 
廣瀬さんは、いつかどんな演劇を作りたいですか?
廣瀬 
最近思っているのは、死んでから評価されるものを作りたいという浅はかな思いがありますね。昔のSFを見て、「この時代にこんな事を考えている人がいたんや」と驚く事があって。たとえば映画のTRONとか、あの時代にこんなにネットワークに関して、専門家でもない人がここまで詳しく考えられるんだと。そういうものを今作りたいですね。あ、モダンタイムスを作りたいですね。あの時代の機械化への憧憬や恐怖をこの時代に置き換えたいですね。それと、R.U.R.(エル・ウー・エル)という、カレル・チャペックの戯曲を現代に置き換えて書きたいです。あとは、何か架空の発明を作りたいです。今の時代には無理だけど、50年後には実用化出来るみたいなそんなデバイスを作りたい。
__ 
例えばスマートフォンとかね。腕時計型テレビ電話もそうですね。
廣瀬 
Google Glassも正直普及しないと思いますけどね。あれもSFの賜物ですから。なって現代アートですね。
__ 
埋め込み系ですかね。あとは。
廣瀬 
埋め込みは結構簡単だと思うんですよ。今でも出来るんですけど、あまり研究されていないのは人道的な問題とリターンに対してのリスクが大きすぎるからじゃないかと。
__ 
だったらやっぱり、今のスマートフォンが最も便利で最適だと思えるなあ。今後何十年かはこれが使われるんじゃないか。
廣瀬 
いや、2~3年の内に次のデバイスは出ると思いますね。携帯電話にネットが付く以前から、「携帯電話より便利なものはもう出ないだろう」と言われていたので。
__ 
そんなものですかね。何が出るんでしょうね。
廣瀬 
それを産み出す人がいたとして、その人もまだ何も考えついていないでしょうね。Google Glassは普及しないですけど、確実にスマホの次世代のモノなんです。その次に来るものが、普及するものになるんじゃないかと思います。まあ入力装置として脳波は確実でしょうね。技術革新としてはPCぐらいの大きな波になると思いますね。

タグ: とにかく作品を作ろう わたしの得意分野 自分で考えてきたもの、の価値 自分は何で演劇を


続けていく

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
廣瀬 
これまで年に3回から4回、舞台に立たせてもらったり自分で上演したりしてきて。それぐらいのペースじゃないと辞めてしまうやろうなという恐怖感に囚われながらやってたんです。でも、そろそろ働きながら演劇を続けるという事をガチに考えないといけないとなると、1・2年に1回でもいいんじゃないのと。続けていくという事が大切なんじゃないかと。ペースが落ちてもいいから、続けていますと言える事が大事なんじゃないのと思っているので。
__ 
素晴らしい。
廣瀬 
今までも、30分から1時間の小作品を2年に一回のペースでしか書けていないので。そのペースでいいんじゃないかと。演劇を見るということだけでも、つながりが消える訳じゃないんだから。
__ 
ご自身のペースに合わせる事で傑作が作れるのであればそれが正解だと思います。今日はありがとうございました。
廣瀬 
ありがとうございました。

タグ: どんな手段でもいいから続ける 傑作の定義


円錐型のロウソク

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。どうぞ。
廣瀬 
ありがとうございます。angersだ(開ける)今まで、こんなでっかいプレゼントあんまり無かったですよね。
__ 
そうかもしれません。
廣瀬 
あ、ローソクですね。電気を滞納してる時に便利ですね。
__ 
クリスマス用ですね。

タグ: プレゼント(可愛らしい系) プレゼント(インテリア系)


「悪魔のしるし」

__ 
今日はどうぞ、宜しくお願いします。演劇などを企画・上演する集まり「悪魔のしるし」の危口さんにお話を伺います。危口さんは最近、どんな感じでしょうか?
危口 
今年は企画が大中小色々ありまして、結構忙しくしていましたね。
__ 
素晴らしい。しんどいという思いはありますか?
危口 
いえ、もしこれが仕事だったら、毎日働くのは当然だし、きついとは言えません。いや、きついですけど。普段は僕も、ほとんどの小劇場関係者がそうであるように、バイトしながらやってます。まさか食えるとは思ってないです。いや、思ってなかった。というのも、今年だけは何だかんだいって、やっていけてるんです。助成金をもらいながらなので興行収入とは言えないんですけどね。今は瞬間風速で、じきにまた食えなくなってバイトを始めると思います。
__ 
どんな仕事をしているんですか?
危口 
工事現場で建築資材を運ぶバイトです。肉体的にはキツいので、一日で辞めてしまう人も多い職場なのですが、僕はけっこう長い間勤めてるんで、社内で存在感が上がってしまってますね。
悪魔のしるし
危口の思いついた何かをメンバーたちが方法論も知らず手さぐりで実現していった結果、演劇・パフォーマンス・建築・美術など多様な要素をもつ異色の集まりとして注目される。作風は基本的に、演劇的な要素の強い舞台作品と、祝祭的なパフォーマンス作品という二つの系統。団体名は、主宰・危口統之の敬愛する英国のロックバンドBLACK SABBATHの楽曲 「SYMPTOM OF THE UNIVERSE」に付けられた邦題、「悪魔のしるし」に由来。2008年結成。(公式サイトより)

タグ: 大学卒業後に・・・ 今年のわたし 名称の由来 糊口


なにかが動いてる

__ 
危口さんは、いま、どんな創作に興味がありますか。
危口 
元々、主体的に自分の興味に基づいて創作するというタイプじゃないんですよ。昔はそういうこともあったけど、最近は、お話を頂いてお受けする事が増えてきて。その場合、自分で扱いたい主題があろうがなかろうが、上演環境が先にあるので、理由とか意義は後付けで捏造することになります。自分の興味が最初のモチベーションにはならない。
__ 
危口さんには、モチベーションはいらない?
危口 
人によってモチベーションって言葉の意味も違うと思います。僕自身にも何かしら動機と呼べるものはあるとは思うんですが、ことさらそれを明示しなくても、形にすれば何らかの痕跡は残ると思うので。結局、形にするかしないかという話ですよね。
__ 
確かにそうですね。痕跡。
危口 
動機がはっきりしてない人でも、形に出来てしまう。そういう場合は、もっと大きなからくりが働いているんだろうなあとは思いますね。強いて言うなら、そのからくりに興味があります。任意の作家にやらせたいという誰かがいて、大きな力が働いて、制度が整えられたり、施設が建てられたり、フェスが運営されたり。この世に演劇があってほしいと欲望し、作動しているからくりがあるんでしょうね、きっと。

タグ: 社会、その大きなからくり


「TACT/FEST2013」での悪魔のしるし

__ 
悪魔のしるしの作品を、ロクソドンタの「TACT/FEST2013」で拝見しました。それは子供をテーマにしたもので、もちろんお子さんがたくさん来ていて。なのに、悪魔のしるしの作品だけ、会場の子供が何人も泣き出すような作品でした。子供番組のお姉さんが出てきて、みんなと一緒にトトロを呼ぶ。「トトローっ」て呼んだら菓子袋の寄せ集めにくるまれた怪物や、真っ赤な妖怪が出てくるという。
危口 
ええ。
__ 
今考えると狼少年の逸話を借りた啓蒙作品だったのかもしれないし、期待したものが出てくるとは限らないという、社会の厳しさを教えるものだったのかもしれない。とても面白かったです。どのような意図があったんでしょうか?
危口 
そうですね、あれは最初にイベントの企画担当の方からお話を頂いて、とても面白そうだ、でも何をしよう?と考えたんです。どうしても我々は、やるのは大人、観るのは子供、そんな二項対立で考えてしまいがちですが、もう少し細かく、自分の子供時代も振り返りつつ考えてみれば、3歳・5歳・7歳・9歳と、成長するに従って興味の対象ってどんどん変わっていきますよね。だから、結論として、全年齢の子供を単一の理由で面白がらせる作品は不可能だと。本当は大人だって、年齢層や生活習慣が違ったら面白いと思うポイントは違うんですから。でも、最終的に作る作品は一つでしかない。だったら、それぞれの年齢層の子が面白がる理由を個別に用意した方がいいんだろうなと。例えばちょっと物心がついた小学校3年くらいだったら、呼んでも呼んでもトトロが出てこないズッコケ感は楽しめるだろうなとか、幼稚園ぐらいの子だったら、おねえさんが出てきてコールアンドレスポンスするだけで面白いだろうなとか。
__ 
お子さんを不気味がらせるという演出意図だと思っていたんですが。
危口 
怖がらせる危険性はあると思ってましたけど、まあそれはしょうがないと。狙っている訳じゃなかったです。役者が悪ノリしていた部分はありましたけどね。真っ赤な着ぐるみを着た、どぎついメイクの化け物が出てきて、泣き出す子もいるけど、一方で笑う子もいるんですよ。かといって、どちらかを選ぶことはできない。否定的な反応が出ることは、ある程度は覚悟してましたけどね。という訳で、最初に考えるのは複数化です。「子供向け」という条件だったら、「子供」を複数に分類しつつ、何歳以上、或いは以下の子はこのネタ通じないだろうな、ごめんなさい、と判断しながら、各年齢層へ届くであろう要素を個別に設計していく。児童向け作品に限らず、他の作品を考えるにしても同様です。
__ 
大人もびっくりしてましたよ。悪魔のしるしにものすごい興味をそそられました。
TACT/FEST2013
大阪 国際児童青少年アートフェスティバル2013。公演時期:2013/7/29~8/11。会場:大阪府阿倍野区各会場。

タグ: 必殺メイク術 子供についてのイシュー どう思ってもらいたいか? イベントの立ち上げ 印象に残るシーンを作りたい 言葉以前のものを手がかりに 児童演劇の難しさ あの公演の衣裳はこだわった 会場を使いこなす


図る

__ 
悪魔のしるしという集団について、こういう言われ方をして事があるんじゃないかと思うんですが、どこか建築的ですよね。
危口 
ちょいちょい話には出ますね。
__ 
例えば全員で一つの複雑な構造物を運ぶ作品「搬入プロジェクト」はまさに建築をモチーフにしているし、「注文の夥しい料理店」はまさに作品のコンセプトそのものがとても構造的だなと感じたんです。登場人物の人肉が出てきて、それを食べる作品というのは、これはもう驚きを覚える仕組みだと。
危口 
そうですね。お客さんを強制的に舞台空間に強制的に組み入れてしまう。
__ 
それは、どのような考え方で作るのでしょうか?
危口 
まあ、学生時代に建築をずっと勉強していて、その考え方が今でも生きているというのはあります。まず、ダイアグラムが大事であると。一旦図式化して、関係性を考えながら作る。
__ 
図式化する。
危口 
お客さんが演劇を鑑賞する際に、お金を払って劇場に来て、椅子に座って見るだろうと。そういう図式を前提としつつ、そこをちょっといじる事で、他の作品と比べにくくするという事なのかなと。同じ土俵で勝負したら勝てないという卑屈な自覚があるので。身体も強い、脚本も強い人たちには勝てないから、そうじゃないやり方をする我々が、スキマ産業的にいられればいいかなと思ってます。というのがこれまででした。最近はまたちょっと違ってきたかもしれませんが。
「搬入プロジェクト」
通常、演劇において舞台上の演者の動きは脚本と演出、すなわち言葉によって導かれる。しかし、ひとを動かすのは何も言葉だけではない。たとえば、ものすごくデカくて複雑なカタチの物体を運び入れねばならないとしたら――その物体の重量や形状こそが、このパフォーマンスの“脚本”と言えるのではないか。(公式サイトより)
「注文の夥しい料理店」
宮沢賢治の名作「注文の多い料理店」を元にした悪質剽窃舞台劇。原作では一命を取り留める猟師たちだが、本作では腕を切り落とされ目玉をえぐられ最後にははらわたを食い荒らされる。観客席をS席とA席に分け、倍近く価格は高いうえ正装を強いられたS席の客は特等席に座り、 話題のフードアーティスト諏訪綾子(food creation)による、場面展開に添った食事を食べながら観劇できるという仕掛け。逆にA席側から観ると、晩餐に興じる観客もまた舞台世界の住人のように感じられる。なお、本作のテーマとなる絵は画家である危口の父親が描きおろした。(公式サイトより)

タグ: クッキングの話題 コンセプチュアルな作品 ユニークな作品あります


ツメを研ぐ悪魔

__ 
最終的に、上演が終わった時に、観客がどう思っていれば理想ですか?
危口 
今年9月に行った公演の当日パンフレットに、「お客さんに笑顔で『金返せ』と言われたら嬉しい」と書いたんです。会心の笑顔でそんな事を言われるんだったら、いい試みだったんだろうなと。期待していたものとは全然違うけれども、劇場に来た事自体に対して良かったと思ってもらえれば。もちろん、真顔で『金返せ』と言われたら非常にマズいですけど。

タグ: B級の美学 わたしの得意分野 ネガティブ志向 現動力


村を出る

__ 
お客さんを驚かせたい、という意図があるんじゃないかという印象がありました。むしろ、そういう悪意があるのかと。
危口 
うーん。必ずしも驚かせるのが目的じゃないですけどね。でも、前提を崩したいという志向はあります。演劇に関わっている人達が持っている前提ってそんなに強固なのかなと素朴に疑問に思うんです。
__ 
悪意ではなく、疑問がある。
危口 
えーと、これから偽悪的な発言をします。「演劇人口を増やしたい」であるとか「何でこの作品の良さがわからないんだ」とか、そういう発言を多く見ますけど、この世の人々全てが自分と同じ価値観を持ったら、そんな社会は面白いのかと。少なくとも僕はそういう世界には住みたくないですね。そういう人達全員で村作って住んでたら?3000人ぐらいで、みたいな。僕としては、みんなそれぞれの立場で踊ったり仕事したりしてるんだし、個別に自分が立っている足場を、それが生まれ成長してきた歴史も含めて確認していけばいいんじゃないかと思います。
__ 
危口さんは?
危口 
子供演劇という足場が与えられればそこで踊るし、踊りつつも、その足場がどんな構造になっているのか分析するのが好きです。

タグ: 「多様性と受容」への批判


「注文の夥しい料理店」

__ 
危口さんが演劇を始めた経緯を教えてください。また、悪魔のしるしを結成したきっかけは。
危口 
これはもう、完全な事故ですね。(詳しくはこちら
__ 
それにしても、ただただ驚き続けるであろうと思うんですよ、「注文の夥しい料理店」は。
危口 
いやあ、料理の内容や出し方はこだわったんですけど、演技面とか脚本はあまり稽古する時間がなくてぐだぐだだったんです。形式の面白さと料理でなんとか持ったという。
__ 
いやあ、そこはもう・・・出演者の肉がだんだんと減っていく舞台なんて、食い入るように見ると思います。
危口 
悪趣味と言われるかもしれませんね。
__ 
そうした思いつきやアイデアが、仰るように図式化と複数化から導き出されるというのが信じられなくて。悪意がきっとあると信じたくなっているんです。
危口 
あの作品については最初のきっかけとなった一撃がありますね。映画の「ホステル」です。雑誌か何かであらすじを読んだ時に、直感的に、図式としては宮沢賢治の「注文の多い料理店」と同じ作りだなと考えたんです。「搬入プロジェクト」よりも、むしろこのような舞台作品を作る時の方が、建築的な考え方を活かせているように思います。
完全な事故
interview#023 危口統之

タグ: 悪意・悪趣味


質問 小沢 道成さんから 危口 統之さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、虚構の劇団の俳優、小沢道成さんから質問を頂いてきております。「1.何故、悪魔のしるしという劇団名にしたんですか?」
危口 
僕が大好きなブラックサバスのある曲の邦題が「悪魔のしるし」で。響きがいいなと思って付けました。(詳しくはこちら
__ 
ありがとうございます。「2.働いている自分と演劇を作っている自分はどのように関係していますか?」
危口 
そこなんですよね。工事現場で働いていると、同僚がすごくいい動きで仕事しているのを発見し、そこから演目を思いついたりする。要するに、わざわざ公民館を予約して稽古しないといけないというのは思い込みにすぎないと。仕事=稽古みたいにしちゃえば、わざわざ稽古らしい稽古をしなくてもいいんじゃねえかと。なまけものの発想ですね。普段やっている事がそのまま作品になるような逆算をしようと。枠組みは後から作る。演劇ってこういうものでしょうという枠組みが最初から強固にありすぎるからバイトを切り上げて稽古をしなくてはいけなくなるのであって、じゃあ、再設計すればいいんじゃないかと。
__ 
それが搬入プロジェクトですね。確かに、全員で一つのものを一緒に運んだらものすごく面白いですよ。
危口 
搬入経路の途中に障害物となる看板が立ってたりして、これさえなければって全員で悩んだり。
__ 
面白そう!運ぶのってやっぱり仕事なんですよね。
危口 
バイトを作品(稽古)にするという仕組み。この考え方を捩子ぴじんさんが引き継いで、コンビニのアルバイトを主題に「モチベーション代行」という作品を作ってくれたときはとても嬉しかったです。

タグ: 「変身願望」 わたしの得意分野 社会人俳優についての考察


夕焼け

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
危口 
今は、先程も話題に出た「注文の夥しい料理店」を12月に横浜で再演するので、その準備と、来年作る作品の準備を並行して進めています。父親と二人芝居をしようと考えています。
__ 
おお。何故お父様と。
危口 
うちの父親は画家をやっていて、抽象画を描くんですけど、かといって、ポロックなどの、戦後アメリカの抽象表現主義などには全然興味がないしそれほど勉強もしてないんです。絵画の歴史を、ある程度のところ、セザンヌ、マティス、クレー辺りでストップさせているんですよ、あえて。絵とはこういうものだと定義して、自分なりに活動してるんです。
__ 
アップデートをしていない。
危口 
一方僕は何やら、新しい世代というところにカテゴライズされているみたいで。果たして自分は、新しさや驚きを提供し続けるタイプなのか。それとも、これだと決めたらそれを追求し続けるタイプなのか。ある程度スタイルを固定化して、バリエーションを作り続けるのか。親父とそういう話をしてみたいです。

タグ: 関係性が作品に結実する 今後の攻め方 家族という題材


TRUE UTILITY クリップテレペン

__ 
今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントがあります。
危口 
ありがとうございます。それはそれは。開けてみてもよろしいでしょうか?
__ 
もちろんです。
危口 
ペンですか?携帯型極小ボールペン。
__ 
はい。どこかに付けて頂ければ。

タグ: プレゼント(文具系) プレゼント(ツール系)


僕のむこうの風景

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。虚構の劇団「エゴ・サーチ」大阪公演、大変面白かったです。本当に面白くて。一番凄いと思ったのは、最後の修羅場のシーンからラストにかけての展開でした。情報量が凄くて、掛け合いの流れがまるで全員で一つの表現をしているかのような、物語演劇なのに、レビュー公演のようなあの一体感。そして清々しい、爽やかなラスト。
小沢 
ありがとうございます。関西での劇団公演はこれで2回目だったのですが、こんなにも喜んでくれる方が多くてびっくりしました。そうですね、清々しく終わったと思って下さったのは、もしかしたら一つには沖縄の離島でラストを迎えるというのが大きいんじゃないかと思うんです。誰もが一度は憧れを持つ場所だと思うんですよね、「南の島」。
__ 
確かに、作品の最初のシーンも島でしたね。
小沢 
この作品の稽古が始まる前の8月後半くらいに、物語の舞台のモデルになっている鳩間島に行ったんです。
__ 
沖縄の離島ですね。
小沢 
そこは本当に、1時間程度あれば徒歩でも一周出来てしまうくらいの小さな島で。風や光や、何か言葉にしてしまうとちっぽけに感じてしまいますけど、その通り大自然の中の島だったんですよ。
__ 
小沢さんは、その島を象徴するような役柄を演じられましたね。
小沢 
そうですね。初演と同じく、その島に住む沖縄の妖精・キジムナーという役柄です(笑)あの島にはじめて行って、改めてもの凄くプレッシャーを感じました。もう圧倒されて。この大きな風景の中、僕はただ一つの点だった。それを前に僕には何が出来るんだろうとか思った時に、役者として出来る大きな楽しみであり、大切な役割について気付いたんです。
__ 
役を演じる以外の?
小沢 
自分がここで受けたエネルギーを、舞台上から生で「伝える」ことです。すごくシンプルで当たり前のことかもしれないですが、それは実は一番大切なことなんじゃないか、って。島で実際に生きている人たちからもらった、生きる力。風景が持っている力。あの島で体験した空気の味や、波の揺れを思い出すと、イメージがぱーっと開いていくんですよね。僕にはそれが見えているし、それを感じているだけで、その僕を見てくれているお客さんはそこから想像をしてくれる。きっとこれは、僕が見ているものに真実味があれば、届くはずだと。ということは、そうか、伝えるというよりは「忘れない」ことなのかもしれないですね。感動を受けた風景を忘れないこと。出会った人たちとの感触を忘れないこと。それを舞台上で想う。そうすればきっと伝わるはずだと。それが、役者としての最大の楽しみだし、それをやらなくてはいけないのかもしれない、と。
虚構の劇団
劇団。詳細はリンクを参照のこと。
虚構の劇団「エゴ・サーチ」
公演時期:2013/10/5~20(東京)、2013/10/24~27(大阪)。会場:あうるすぽっと(東京)、HEP HALL(大阪)。

タグ: 役者の積み上げ 演技の理解、その可能性 キャスティングについて 情報量の多い作品づくり 俳優を通して何かを見る


すこしずつすこしずつ好きになっていく

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小沢さんが演劇を始められた経緯を教えて下さい。
小沢 
僕の姉は画家なんですが、姉の友達の関係である舞台のチラシデザインをしていたんですね。僕はそれまで、映画に興味があってワークショップだったりオーディションを受けていたんです。でも中々上手くいかなくて。そこに姉が「こういうのがあるよ」と教えてくれたのが「阪神タイガーウッズ」という名前の、いまはもう無き京都の劇団のワークショップだったんです。そこの主宰である方に興味を持ってもらえて。エチュードをやったりしたんですが、今までそういう事をしたことが無かったので新鮮だったんですよね。皆で何かでっち上げたり、お話にしたり。自分以外の人物になるという事がこんなに楽しいのかと。
__ 
なるほど。
小沢 
当時はガラスの仮面の北島マヤみたいな天才になりたかったですね。あんなに深く、そしてたくさんの他人の人生を生きる事が出来たらと。当時、自分の事が嫌いでコンプレックスをずっと抱いていたんです。少しでも現実逃避出来たらという気持ちもありました。自分とは違う人間になりたかった。それでもコンプレックスや嫌いな部分は拭いきれなくて、だから今でも基本的には、なぜ役者をやっているか、と聞かれたら、小沢道成という人間を魅力的にしていきたい、と答えると思います。
__ 
ご自身を魅力的にしていく?
小沢 
一年に4~5本舞台で役をやらせてもらっているんですが、色んな役の人生を味わえるんですね。舞台が一本終わると、確かに自分が何か変わっているんです。強くなったり弱くなったり、嘘をつくのが上手くなってたり下手になってたり。人とコミュニケーションを取るのが昔から下手だったんですが、役者を続けていて、少しは好きになっているんですよ。という事は小沢道成という人間が少しは魅力的になっていて、いろんな要素を吸収している。もしかしたら、悪いものを吸収しまくるかもしれないですが、それはそれで楽しみです(笑)最終的にはお爺ちゃんになった時に、いい人生だったと思いながら死んでいけたらいいかなと。
__ 
初めてお会いするタイプの方です。
小沢 
そうなんですか。
__ 
役者の生き方としては珍しいような、いや、それこそが最高の理由のような。
小沢 
「人を楽しませたい」という気持ちが前提にあるんですが、突き詰めていくとそういう理由になっていきますね。

タグ: 目を引く役者とは 役をつかむ 僕を消費してくれ 北島マヤ とにかく出演していこう 自分で考えてきたもの、の価値 新人の不安


一秒ごとに発見するぐらい

__ 
これは自分を変えた、という作品はありますか?
小沢 
沢山ありすぎて、どれを言えばいいかな。大きく自分を変えたのは、劇団に入ってからかな。京都で芝居をやっている時はどこにも所属をせずにフリーでやっていたんです。東京にでてきてから今の劇団と出会ったのですが、フリーの時とは違って、何年も一緒にお芝居をつくる仲間がいて、環境があって、もちろん今回みたいに再演をやる時もあるんです。その「再演」というのをやった時に、特に思うことなんですが、初演と比べて周りの仲間も僕も明らかに「変化」しているんです。そりゃ3年も経てば少しは成長するだろと思うのですが、そういう気付ける場所というのは今までありませんでした。今回の「エゴ・サーチ」をやっていてもそうなんですが、全てが新鮮で、あれだけ稽古も本番もやったのに発見することが面白いぐらいにでてきて。そういう気付ける環境が出来たことは、もの凄く大きな変化ですね。自分を変えれる場所、というか。

タグ: 再演の持つ可能性について


カーテンコール

__ 
舞台に立っていて、どんな瞬間が好きですか?
小沢 
カーテンコールの時です。
__ 
なるほど! 昨日拝見した「エゴサーチ」のカーテンコールは、全員、何だか潔い感じがしましたが。
小沢 
本当ですか。でも、そんな感じになったのは最近だと思います。それも覚悟が付いたからじゃないかな。2時間の舞台を確実に面白いものにする。そういう意思を皆で確認するところから始まるんです。舞台が終わった時に、お客さんと一緒になって作り上げた結果がカーテンコールなので。感謝を込めたあの瞬間ですね。
__ 
私は初めて虚構の劇団という集団を拝見したのですが、大変強い集団力を感じました。ラストの流れるようなシーン展開は、全ての演技が整理されていて、全員で一つのセリフを喋っているぐらいの、キレイで見事な演劇だったんですよ。
小沢 
嬉しいです。
__ 
お客さんが、笑っているんだけど同時にすすり泣いているような人もいて。
小沢 
鴻上さんの作品の特長だと思うんですよ。人を救えるくらい大事な言葉をエネルギーを、鴻上さんの作品は持っていると思います。

タグ: 泣く観客 エネルギーを持つ戯曲 鴻上尚史