全国区をここに作る試み・カラフル3

__ 
イベントプロデューサーとして一番最初の仕事は何でしたか。
大橋 
高校の演劇大会の実行委員会でしたね。合コンじゃないですけど、他校との合同カラオケ大会はいつも盛況でした。
__ 
カラフルという演劇イベントが私と大橋さんの最初のキッカケだったと思います。名古屋の長久手でのカラフル3でしたね。どのような経緯があったのでしょうか。
大橋 
僕が関わり始めたのは第二回からです。第一回の時は、裏で学生演劇合同プロデュースのスタッフをしていました。その翌年、企画者の一人として呼ばれて。3回目のカラフル3は僕の仕切りです。
__ 
なるほど。カラフル3は、東京大阪を主に全国から劇団が集められていましたね。
大橋 
僕個人の思いとしては、名古屋の演劇はこのままじゃ死ぬなと。
__ 
死?
大橋 
名古屋では若手の劇団が中々育っていなかったんですね。その頃はまたお客さんも減っていて。小劇場の折込も数年前に比べて4割くらい減っていたんです。どこかで食い止めないと、と思ったんです。地理的に愛知は東京からも関西からも寄りやすいハブ的な土地なんですが、それなら、全国区をここに作ればいいんじゃないかと。
__ 
というと。
大橋 
東京イコール中心という考え方って、どうしてもあるじゃないですか。東京イコール全国区というイメージにも繋がるんですけど。東京一極集中に対応して「地方」を「地域」と呼ぶ人もいますが、それでもやっぱり閉塞していくんじゃないかと思うんです。地域じゃない、全国区を、日本の中心である名古屋にこそ実現出来るんじゃないか。
__ 
なるほど。
大橋 
だからショーケースという形式が相応しかったんですね。アウェイで来る人の方が本気になるのが理想でした。会場は長久手でしたが、そこで高い評価を受ければ、ホームでも高い評価を受けられると。
__ 
挑発と言えるかもしれませんね。
大橋 
来てくれたらお客さんが1000人入ります、さらに、賞もありますと言って口説きました。その賞についても、誰がどう選んだかを明確にして発表しました。名古屋の人に対しては危機感を煽りたかったんです。実際、呼んできた劇団で賞が総ナメにされてしまったんですけどね。
演劇博覧会 カラフル3
全国の劇団が一堂に会する、まさに博覧会イベント。時期を置いて1stステージ、2ndステージと開催。公演時期:「1st.stage」2009/3/14~15。「2nd.stage」2009/5/2~4。会場:「1st.stage」ゆめたろうプラザ(武豊町民会館)。「2nd.Stage」長久手町文化の家。

タグ: ホーム/アウェイ 土地の力 地方における演劇の厳しさ


vol.280 大橋 敦史

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大橋

正月気分

__ 
今日はどうぞ、宜しくお願い致します。最近、大橋さんはどんな感じでしょうか。
大橋 
最近は・・・普通ですね。まだ正月気分です。1月3日には、いま勤めているシアターBRAVA!の舞台で手を合わせてきました。で、明日からは公演の準備が始まります。

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大橋

「これが演劇ですよ」

__ 
大橋さんが演劇を始めたのはどのようなキッカケがあったのでしょうか。
大橋 
当初は声優になりたかったんですよ。それで演劇部に入ったんです。少女マンガが大好きで、ママレード・ボーイとか、こどものおもちゃとか。りぼん系のアニメを好んで見ていたんです。そのうちに声優になりたいと思って。神谷明さんの著書の「きみも声優になれる!!」という本を読んだら、舞台をやれって書いてあったんです。声優というのは元々、舞台をやっている人たちに任せられていたらしく。中3の段階で演劇=ダサいというイメージがあったんですが、高校から演劇部に入りました。
__ 
というと。
大橋 
何故かと考えたら、それは小学校の頃に見た巡回演劇なんですね。子供に見せるには、あまりに教条主義的というか説教臭いと感じたんです。もちろん素晴らしい作品が多いし、選ぶのは指導をされる先生方であるという構造もあるので、誰が悪いという事ではないんですけれども。演劇に対するそうした思い込みはあったんですが、いい部活でした。
__ 
最初は役者だったんですか。
大橋 
はい。でも、全然上手く出来なかったんですよ。最初に貰ったのはセールスマンの役だったんですが、県大会進出の二週間前で降ろされたんです。大会ではピンスポを当ててました。何でダメだったんだろう、それはやっぱり、他人とのコミュニケーションが苦手だったんですね。人と対する時に緊張してしまう。そんなのが演技なんて出来る筈がないじゃないか。そういうコンプレックス的な部分が、演劇をやることで、演劇に逆照射されたんですね。しかし、その中で自分を見つめて相手と向き合って、その上で生まれるドラマが演劇の良さだと気づく事が出来ました。そういう芸術ですよね、演劇って。
__ 
素晴らしい。
大橋 
そういう事を、高1の頃には大体直感していたんです。高校卒業時、進路を考える時期になって色々迷ったんです。みんな、演劇をやればいいのにって思って。その頃、キャラメルボックスの加藤プロデューサーを知って。この人みたいに、世の中に演劇を広めたいなあと思ったんです。あと高3の時に平田オリザさんのワークショップを受けたのも大きいですね。3日間くらいで小作品を作るんですが、「これが演劇ですよ」って分かりやすく解説してもらった気がしました。

タグ: 声優になりたかった


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大橋

ハッピーエンドにはならない

__ 
ともにょ企画の鈴木さんにお話を伺います。今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近はどんな感じなのでしょうか。
鈴木 
最近は、来週に迫ったシアターカフェnyan!でのクリスマスの演劇イベントで上演する作品の稽古をしています。無料の客席限定イベントなんですが、この機会でしかやれない事をやっています。
__ 
どんな作品になりますでしょうか。
鈴木 
クリスマスっぽいメルヘンな作品ですが、ハッピーエンドにはならないと思います。
__ 
ともにょ企画。いつもはハッピーエンドにはしないとの事ですね。
鈴木 
不幸って、いつもくっついてくる訳じゃないですか。それを描こうとすると、不幸を書きたいのかと周りからは言われるんですけどね。
ともにょ企画
XXXX。(公式サイトより)
act for friends vol.2
公演時期:2012/12/23~24。会場:シアターカフェnyan!

タグ: ハッピーエンドについての考え方 イベントの立ち上げ


質問 石田 大さんから 鈴木 友隆さんへ

Q & A
__ 
前回インタビューさせて頂きました、地点の石田さんから質問を頂いてきております。「お芝居に出会ったのはいつからですか?」
鈴木 
高校の演劇部からなんです。けど、それ以前からTVでドラマでジャニーズ系のタレントが演技するのを見て、何か、悔しくなったんですよ。
__ 
悔しい?
鈴木 
イケメンがTVに出てしょうもない演技してるのが腹立たしかったんでしょうね。癖で、画面見ながら一緒に演じてたりしてたんですが、もしかして俺の方が上手いぐらいなんじゃないかと思えてきて。だから、距離をおいたお客さんのように、冷めた目で演技を見るという姿勢が作られたんじゃないかって思います。
__ 
高校からは。
鈴木 
高校演劇に入って、・・・やっぱ、あるんですよ。
__ 
何か、アニメの影響を受けたような。
鈴木 
そう、過剰なやり方とか。その中で台本を読むというのには抵抗があったんですが、変な読み方をするのが嫌でした。他校の公演を見ても同じような感じでしたね。僕の代からはナチュラルな演技で演じるコントとかやってました。

「オトコの一生」

__ 
そして大阪で旗揚げしたともにょ企画。いつもは、ハッピーエンドの作品を作っている訳ではないそうですね。
鈴木 
思うんですが、この世の大体の演劇作品って、人生における浮き沈みの一部分を切り出しているだけなんですね。偏見かもしれませんが。
__ 
なるほど。
鈴木 
僕は、良い事と悪い事の両方を描いた上で、メッセージを伝えるのが演劇のあるべき姿勢だと思っています。もちろん、最初からこういう全体的な見方をしていた訳じゃなくて、下がっている部分をいかに自分で肯定してあげるのかを考えて、描こうと思っていたんですよ。悲しさが盛り上がって終わったり、良いことなのか悪い事なのかわからない内に終わる、というような作品を作っていたんです。gate extraで上演した「オトコの一生」の終幕では、主人公の男性の死を描きました。それまで一生懸命働いて、良い事も悪い事もあって、好きではない女性と結婚して、自分と同じような生き方をする子供を持って、若年性痴呆症になって、早くに一生を終えるんですけど。「死」は、取りようによっては上がった絶頂であるとも言えるんじゃないかと思うんです。
__ 
「オトコの一生」。確かにあの主人公は幸せそうに死にましたね。ちょっと伺いたい事があるんですが・・・
act for friends vol.2
公演時期:2012/9/8~9。会場:KAIKA。

タグ: 一生懸命を描く


刑務所について

__ 
ドラマとは、確かに人生を切り出したものですね。それに反感を覚えたという事ですが。
鈴木 
劇場という場所が、人間が人間を慰めている空間に見えたんですよね。関西に来たとき、エンタメが主流だと知って。もちろん見たんです、これは10代後半の僕の生意気さが助長したんですけど・・・こんな感動、演劇じゃなくても得られるじゃないかと思ったんです。自分はどちらかというと、悪い事も肯定したいなって。
__ 
悪い事を肯定する。誰かの悪意によって傷付けられた時にも、肯定出来ますか?
鈴木 
例えば政治家に嘘を付かれた時に、騙されたとかメディアが一斉に言うんですよ。そんなこと、取り上げる人の方がバカだなと思うんです。良い面を普段取り上げないのに、悪い事をしたときだけ大騒ぎする。そういう状況が嫌ですね。
__ 
悪人を犯罪者として、世間が一斉に攻撃に回る。
鈴木 
僕は、悪人はこの世にはいないという見地です。もちろん、善悪は指標として必要だと思うんですけどね。どういう状況が、彼をこのような仕業に追い込んだのかを考えないといけない。演劇の関係者はそういう志向で考える人が多いと思うんですけど。
__ 
犯罪をした人間=悪人として片付ける事はとても簡単ですね。
鈴木 
犯罪者を刑務所に入れるというのは、臭いものには蓋という事ではなく、「この社会が生み出した犯罪者」という、社会の一員として迎えるべき。みんながそういう認識じゃないと、刑務所の意味がない。更正して出てくるのを待っているだけではだめなんですね。異端者をマスコミが罵倒して、社会の隅においやって、それが商売として成り立っているという状況は、僕は嫌です。

タグ: 社会、その大きなからくり


僕が生きやすい社会

__ 
鈴木さんがお芝居を続けている理由は何でしょうか。
鈴木 
ええと、いま思いついたのは、意地です(笑う)。今大人になって、昔とお芝居との付き合い方は変わってきてはいます。子供の頃は、サラリーマンを「毎日通勤電車に乗って会社に仕事しに行くだけの大人」だと思っていて、自分は好きなモノを作って生きていきたいという意識がありました。今、大人になったらサラリーマンがすごく尊敬出来る対象に思えてきています。
__ 
なるほど。
鈴木 
常日頃、自分にとっての演劇を省みるようにしています。社会生活でも、演劇を絡めて考える事も凄く多くて、僕自身の活動も、演劇と社会との関わりを考える事にシフトしてきています。これは糸井重里さんが仰っていたんですが、「俺が生きやすい社会になってほしいんだ。そうなったらこれまでお金儲けしていた連中には文句を言ってくるかもしれない。けれど、俺が生きやすい社会は意外とみんな生きやすいんじゃないか」。僕の演出する作品も、だんだんと「僕が生きやすい社会にしてくれ」という思想になってきていますね。
__ 
鈴木さんが生きやすい社会とは、どのような社会ですか。
鈴木 
僕にとってのそれは、「生きる」という事が地に足が付いている社会です。いまグローバル社会で、生活の全てにお金が間に入っていて・・・もう訳が分からなくなっていると思うんですよ。グローバル化って、「海のものが食べてみたい、山のものと交換しよう」という交換経済が発展した結果だと思うんですよ。その中では、食べたいものを食べる、好きな事をしたい、そして子孫を残すという単純な生が訳の分からない事になっている。
__ 
通貨という共通概念が、いつの間にか世界観になっているという事ですね。
鈴木 
今、日本にはコミュニティがあまりにも少なすぎると思うんです。働く、生産をする場所のコミュニティばっかりになっていて、自分の生活をするコミュニティが無くなっていっていると思うんですよね。
__ 
寄り合いがない?
鈴木 
そうなんですよ。昔は町内会が強かったので、人と人との結びつきがあった。それが、今は結びつきのない疑心暗鬼の人間関係が普通になってしまっている。お金が間に入らない物々交換が「生きる」基本だと思っているんですが、それが成り立たない。それが僕は生きにくいんです。身の回りの人と交流して、自分が生きる為のコミュニティを作るのは演劇と通じるところがあるんじゃないかと思っています。
__ 
ネットの書き込みを見るにつけて、そうしたコミュニティから人々が離れているという流れを感じますね。
鈴木 
僕の理想は確かに退行と言われてしまうかもしれません。でも、グレートリセットという怖い発想ではないんです。理解するだけでいいと思うんです。それを自律・自立する事だと思っています。理解して、考えるだけでいい。
__ 
ともにょ企画のサイトにもありましたね。
鈴木 
社会の中で自分がどういう役割を担っているのか、自分がどういう風に生きるのが幸せなのかを考える。本当に自分に必要なのは何?って。人間は、幸せになる為だけに生きていると思うんですが、「こうしないと不幸せになる」という考えばかりが多すぎると思うんです。自律して考える人々が増えたら、社会のシステムも含めて変わっていく。僕が言っているのは理想ですが、とにかく僕の仕事は、「見た人がもう一度考え直す」作品を作る事です。

リセット

__ 
人に影響を与える最大のものは思想だと思うんですが、それを消化出来る人って案外少ないと思うんですよね。自分の憂さを晴らす生き方が増えている中で、思想に触れて、わざわざ立ち止まって考えなおす人は少数になっていくのかもしれない。
鈴木 
それもまたコミュニティなんですよね。今、嫌な人を遠ざけて生活する事がカンタンな社会だと思うんです。嫌な人を受け容れて消化するには、陰口と同時に評価して、理解をするようなやり取りがあった筈なのに。
__ 
今は、紋切り型で切り捨ててしまう。それが普通になってしまったのかもしれな。
鈴木 
楽なんですよね、きっと。というか、そうせざるを得ない状況になってしまっている。あまりにも考えるべき事が多すぎて。単純に都会に人が多すぎるんです。僕はこう考えているんですが、都会から地方に人を流してそこでコミュニティを作ればいいんですよ。当然、文化が無ければ人はいつかないので、文化を発展させて。思うに、都会に文化が集中し過ぎて飽和してしまっているです。インターネットがあるんだったら、文化を地方から発信する役割を負うべきだと思うんです。それが一番、有効なリセットの仕方だと思っています。

タグ: 地方における演劇の厳しさ


貧しい演劇

__ 
つまり鈴木さんは、個人の生き方を捉え直そうとしているんですね。
鈴木 
僕の考えの一番最初には社会があるんです。その社会を生きやすいものに変える。これはピーター・ブルックの本を読んで知ったんですが、グロトフスキという劇作家が曰く「観客は必要ない。演出家と役者のみでいい」。彼の作品にはお客さんは必ずしも必要ではなくて、入れても30人ぐらい。彼ら自身を掘り下げる為の演劇なんですね。それを「貧しい演劇」とし呼んで実践してたそうなんですが、僕もそれを支持し始めたら劇団員が離れていくかもしれないです(笑う)。でも、演劇ってコミュニケーションの一形態に過ぎないんですよ。だったら、僕はお客さんと貧しい演劇を作りたい。それが出来るように、演劇を社会に普及させていきたいですね。

タグ: 知識を付けよう 社会、その大きなからくり


今自分がやりたい事

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
鈴木 
僕が好きな演劇って、その人の世界がそのまま現れている世界なんです。僕はまだ自分の世界がまだ掴めていなくて。その為に劇団員を増やしたんです。
__ 
ともにょ企画のサイトによると、多いですよね。
鈴木 
今、10人ぐらいいます。というのも、客演さんを迎える時のように気を使わずに僕の描きたい世界を描けるので。それが納得出来る段階になって、つまりいい商品になったら売りに行きます。来年2月に劇王があって、審査員の人にボロクソに言われると思うんですが、それを越えて3月に中崎町のイロリムラで一週間くらいのロングランをやります。劇団のメンバーだけの公演です。一旦は、劇団の商品を完成させるという考えで行きます。その後はあまり想定出来てないんですけど、良い物を作ったら皆ワクワクしてアレしようコレしようって言い出すと思うんで、心配はしていないです。今は、無理矢理自分のアイデンティティを演劇に見出して活動を強いる事はないかなと。それよりは、今自分がやりたい事を話し合っています。動画とかラジオとか音楽をやる奴が出てきたり。劇団内で芸術家同士のセッションが始まるようであればそれが理想です。あと、僕は糸井重里さんの事務所に就職しようと思っています。
__ 
いいんじゃないでしょうか。つまり、関西を離れる・・・?
鈴木 
あまり、関西にはこだわりはないですね。もちろんこれからもやっていきたいですけど、地方に興味があって。今でも、東京の人たちが地方の演劇祭に行ったり多くなってきて。これからも、地域のカンパニーが、東京とか大阪とかの「都市」以外の別の地域に行くという事がどんどん加速していくだろうし、そうなるべきなんじゃないかと思います。だから、「ともにょ企画は大阪の劇団で、大阪でずっとやっていきます」という事は言わずに、各メンバーが色々な場所で活動して、それぞれが受けた刺激を持ち寄ってセッションする。それが理想ですね。

タグ: どんな手段でもいいから続ける 今後の攻め方


31アイスクリームのチケット

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
鈴木 
あ、ありがとうございます。
__ 
つまらないものですが・・・
鈴木 
(開ける)あはははは、サーティーワン。高いですよね。
__ 
皆さんでどうぞ。
鈴木 
そうですね、皆が揃う時に使います。


iaku vol.2「エダニク」4都市ツアー

__ 
今日はどうぞ、宜しくお願い致します。最近、横山さんはどうでしょうか?
横山 
いまはちょっと、ぼんやりとしています。本当はいけないんですけど。
__ 
というと。
横山 
今、「エダニク」の4都市ツアー公演中で、12月の福岡公演が終わったところなんです。1月26・27日にまた三重で上演するんですけど、同時並行でサキトサンズのツアーもあって。公演のはざまの時間がものすごく長く感じてしまって。本当は6月の新作の準備と、一本小説を書かないといけないんですけど。それをだらだらと進めてしまっていて。次の本番週になったら、急にぞわっとすると思います。稽古が始まって、いきなり自分の時間が無くなってしまうという事に焦ってしまいそうで。
__ 
分かります。休みの日の昼下がりは不安ですよね。時間は無限ではないという事が13時ぐらいに分かってきてしまう。
横山 
スケジュールを見ると決して暇じゃないんですよ。ワークショップをやってたり戯曲講座をやってたり、色々と打ち合わせもあったりして、それで一日が終わっていくという・・・。
__ 
ヨガの「サンカルパ」というワークなんですけど、世界に向かって、自分が起こす行動を決意して宣言すると精神的にとてもリラックスするそうです。私も最近やっていますが、よく眠れて、やりたい事がハッキリしますよ。
横山 
なるほど。僕の高校時代の友人にコーチング等のカウンセラーがいるんですけど、一年に一度くらい会って相談しているんですよ。今の自分の仕事の展望とか悩みを。この間言われた事があって、「気に病んでいる事をこの紙に書き出しなさい」って。で、やってみると、そこに自分が向かっていくんですよね。
__ 
あれはとても効果が高く簡単で、そして中々手が出ない方法ですよね。
横山 
例えばちょっとした行き違いがあった人がいて・・・という事を書いたら「すぐ電話して」と言われて。その場で電話して、飲みに行く約束をしたんです。そしたら解決したんですよね。最も簡単な解決方法=すぐやる事なんですよね。
iaku[いあく]
大阪を中心に活動する劇作家(脚本家)・演出家、横山拓也が主宰する演劇ユニット。(公式サイトより)
iaku vol.2「エダニク」4都市ツアー
公演時期:2012/12/8~9(福岡)、2013/1/26~27(三重)、2013/2/22~26(東京)、2013/3/7~10(京都)。会場:ぽんプラザホール(福岡)、津あけぼの座(三重)、アトリエ・センティオ(東京)、アトリエ劇研(京都)。
宮川サキ+Sun!!二人芝居 サキトサンズ
sunday・宮川サキとミジンコターボのSun!!による二人芝居ユニット。「梨の礫の梨」(作・演出は横山拓也)を2012~各地で上演中。

タグ: ユニークな作品あります ヨガの話題 津あけぼの座


線路の上の安心

__ 
「エダニク」という作品。上演も含め非常に評価されていますね。私はまだ戯曲しか読んでいないのですが、大変面白かったです。今年はツアーをされるんですよね。福岡、三重、東京、京都の4都市。舞台は屠畜工場での休憩所。コメディを通して、働く男達の横顔を描くという作品ですが、横山さんが屠畜工場をシチュエーションに選んだのはどのような理由があったのでしょうか。
横山 
屠場については、場所として選んだんです。そこで働く男三人のそれぞれの社会的立場から、何か熱量のあるものを描きたいというのがそもそもの最初です。屠畜そのものに突き動かされた訳ではなくて、もちろん調べていくと非常に深い問題に出会ったんですが。
__ 
働く男を描く、場所を求めていたら屠場に当たったと。
横山 
だからある意味、最初は不純な動機ではあったんです。もちろん、歴史的な背景であるとか、被差別部落の関係も知っていたので、かなり覚悟をもって取材して研究しないといけないとは分かっていましたが。別の場所を選んでもこうした作品を描いていたと思いますが、この場所でなければこれだけの熱量のある作品は書けなかったと思います。
__ 
「目頭を押さえた」でも、男の仕事を描かれていましたね。横山さんは、仕事する人間を描きたいのですか?
横山 
やっぱり、大人を描く時に、仕事というのはその人の存在を支えてくれているものなんですね。だから無職という状態を恐れるんじゃないか。何かに所属出来ている事の安心って、あると思うんですよ。
__ 
ありますね。
横山 
人の厚みを描こうと思ったら仕事を描く必要があるんですね。無職ならば、その事も含めて。そこをどう設定するかは、人物を描く時に考えるところではありますね。
__ 
そこに所属しているというのは確かに安心感があるんですよね。公務員ならばなおさらかもしれない。
横山 
その時間に、そこにいていいと認められているんですね。他者に認識されていなければ人は立っていられないと思うんです。社会的にも認められている立場なので。会社員でもアルバイトでも同じで、未来、スケジュールを立てられて、他人が自分を必要とされている時間ですから。僕も会社で働いていた頃に比べれば、一人の自由な時間はあるんですけど、急に襲ってくる不安というのはあるんですよね。
__ 
難しいですよね、会社で働く生き方も、自分で働かく生き方も。
横山 
普段、多くの人は働くという事に対してそんな事は考えていないと思うんです。仕事や会社、人間関係への不満。でも、それが人の厚みを作っていると思います。ある登場人物が事件に出会って、どういう反応を示して、ぶつかり合うのか。
ABCホールプロデュース公演 第3弾 目頭を押さえた
公演時期:2012/7/20~23。会場:ABCホール。

タグ: 背景が浮かびあがる 今年のわたし 社会人俳優についての考察


クリエイティブ

__ 
仕事の話になったので・・・。横山さんは、戯曲を書かれる時にはどこを選びますか?
横山 
自宅にも仕事場を構えていますが、書く時は近所のスタバです。結局、外の方が進むんですよね。何なんでしょうか、この違いは。
__ 
家だとネットがあるから、でしょうね。でも、仕事をしようと外に出る時点で書く気合が入っているんでしょうね、きっと。
横山 
一歩、既に踏み出せている訳ですね。家で仕事出来る人は凄いですよね。みんな、切り替えはどうしているんだろう。試されてますね、僕は。
__ 
横山さんのような、クリエイティブの人は、どれだけ深い仕事が出来るかが重要なので、環境を選ぶのは大事だと思います。
横山 
ありがとうございます。何だか、僕の聞きたい言葉を選んで言ってくれている(笑う)。

分母/幻の階段

__ 
iakuのウェブサイトでブログを拝見しまして、気になる文章を見つけまして。
「板の上で(または板じゃないところで)、身体が躍動したり疲労したり、肉体そのものが美しかったりダラしなかったり、空間と人物の配置だけで宇宙になったり何にもない場所になったり、無限の風景や空間を生み出せる演劇の表現って凄い。こんな風に言葉にすること自体が野暮とも言える。

自分がやってるストレートプレイは、せっかくの【無限】なものに【制限】をつけてしまっているんじゃないかって思うときがあるけど、【無限】は【無限という制限】の中でやってるとも言えるし、【制限の中に無限】を見つけることもできるんじゃないかとも思う。

ストレートプレイにもまだ可能性があるって思える内は、僕は人間を描きたいし、ドラマを見つけたい。そして、戯曲や台詞や意識と格闘して「人間味」のある演劇を作りたい。

わずかな時間しか生きられない人間の底の浅さ(あるいは深さ)、緩い根拠に固執するひ弱な意地、他人のことを分かったようにしてみたり、自分を賢そうに見せる振る舞い、自己欺瞞、自己顕示などなど、すべてが愛おしいのです。これもまた「博愛」を装っているのか? ああ「人間味」って美味だなぁ、珍味だなぁ。」
iaku diary July 15, 2012「演劇について。」より
横山 
ええ。
__ 
これまでストレートプレイを書かれてこられた横山さんが、こういう風にお芝居の制限のなさや、一瞬の表情に宿る無限の奥行きについて、強い直感を受けられているという事実が、すごくジャンルレスな出来事のように思えて、とても痛快だったんですよ。
横山 
その当時、sundayとひょっとこ乱舞を見て、それに動かされて書いた記事だと思います。僕の書く作品に比較的近い、会話を用いた劇なのに、会話という制限に収まらない演劇をしているのが面白かったんですね。それ以外にもそうした作品を僕は許容出来るんですが、でも僕が創作するには向かない作品の形だと思っていて。
__ 
その上で、共感というか、衝撃があったんですね。
横山 
そうです。僕が書けないような作品がもっともっと沢山あって欲しいんです。ちゃんとそれが世の中にある事。僕が書くストレートプレイがあって、ショーのような作品もあって、コンテンポラリーがあって、前衛もあって・・・ものすごい量の分母が、演劇にはあって欲しいんです。それらの出来るだけ多くを許容出来る視点を常に持ち、作品作りに当たりたいという思いがあります。
__ 
そう、色んなジャンルがある事がそのまま豊かさなんですよね。
横山 
もちろん、お客さんに「全てのジャンルを楽しめ」なんて無理強いは出来ないんです。でも、お客さんに求める事があるとすれば、それは自分の苦手な分野が何かを知っていた方がいいという事。難しいからと言っても、それを遠ざけたり偏見を持つのではなくて。もちろん、僕個人にも苦手な分野はあるんです。自分の知識が薄いせいでアンテナが拾いきれなかった作品については言葉が持てず、無力感に打ちひしがれるんですけど・・・そういう時は、自分がもっとその作品を読み込むとか、戯曲としてそこに何かを加えたりとか、そういう可能性を自分に期待しまいます。読みきれなかった自分を許容した上で、難解な演劇の広がりを期待したいんです。
__ 
難しい作品。我々はまるでそういうものが、階段の上のもののようであるかのように考えてしまいますね。「ハイカルチャー」という言葉があるように、普段の生活のレベルよりも上のものとして。(もしかしたら演劇自体が階段の上にあるのかもしれませんが。)下=行きやすいエンタメ作品という事になるのでしょうか。
横山 
ええ。
__ 
でも、階段の上の人々が下に対して大きな態度を取ったり、侮ったりする訳ではないし、そうあるべきではない。その逆も同様で。
横山 
でも、どうしても配置されてしまう訳で。僕もどこかには配置されているんです。マップでいいと思うんですよね。上か下かではなくて。あと、もし要望があるとすれば、難しい演劇を難しい言葉で語るのは、あまり広がりがある事だとは思えないんです。難しい言葉を簡単な言葉で語ってこそ、裾野が広がるんじゃないかなと思うんです。何様のつもりだと言われるかもしれませんが。

タグ: アートへの偏見1「訳の分かんないやつでしょ」 難しい演劇作品はいかが


スタートラインを生み出す

__ 
個人的な予測ですが、これから5年を掛けて演劇をやる側の人口がかなり増えるのではと考えています。もちろん、今も表現を志す若手は沢山生まれています。出来れば、そうした人たちに何か一言頂けますでしょうか。
横山 
これは若手だけではなく僕らへの戒めなんですけど、やっぱり真似したいと思える作品に出会わないといけない。そして、真似される作品を作らないといけないんですよね。
__ 
真似したい作品?
横山 
面白いものを見て、「これ僕もやりたい!」と思った瞬間に、多くの人達がスタートを切ってきたんですよ。それでいいと思う。そういう作品に出会ってほしいし、僕らもそういう作品を作らないといけないんです。それには、分母が多くないと。
__ 
例えば。
横山 
僕がもし若手だとしたら、ウォーリー木下さんが作・演出を務めるsundayさんを真似したいと思うんじゃないかな。牡丹灯篭では舞台セットに竹を舞台上に吊るしていましたね。最初はびっくりするんだけど、その興奮は10分ぐらいで慣れてくる。「もし俺だったら、もっと凄い使い方をして遊んでやるぜ」という人が出てきたら面白いと思います。そういうインスパイアが次々と派生していって、そこからオリジナリティが生まれていく。僕の会話劇を見ても、「もっとエグいところを突いてやろう」とか、言葉のチョイスとかもっと磨きたい、と思ってくれる若手がいてほしいですね。
__ 
スタートの瞬間をもっと沢山作る。潮流が生まれて、影響しあいながら大きくなっていく。それはまさに、同時代での表現活動の肝ですね。お互い影響しあっていけるような場所が小劇場だと思っているので、大切な事だと思います。
横山 
交流があると面白いんですよね。僕も作家同士の会合に参加したりして、自分の幅を広げる事の必要性を強く思っています。
sunday
大阪を拠点に活動する劇団。第二期・劇団☆世界一団。作・演出はウォーリー木下氏。
メイシアター × sunday「牡丹灯籠」
公演時期:2012/3/8~11。会場:吹田市文化会館 メイシアター 小ホール。

タグ: ウォーリー木下


質問 大橋 敦史さんから 横山 拓也さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂きました、現在シアターBRAVA!で働いている大橋敦史さんから質問を頂いてきております。
横山 
面識ないんですよね。一度お会いしたいと思うんですが。
__ 
「締め切りを過ぎてしまった作家に本を書かせる、効果的な方法は何かありませんか?」
横山 
ありますよ。全ての劇作家に通用するかは分からないんですが、毎日決まった時間に原稿を送るように約束させる事ですね。進んでいようがいまいが、絶対にその時間にプロデューサーに送るという事ですね。作家は1ページも進んでいないのに送るという事が非常に悔しいんですね。
__ 
それはプレッシャーですね。
横山 
作家として連続二日何も進んでいない台本を送るなんてことは出来ませんからね。これは追い詰められます。まあ、作家がそれで「プレッシャーを掛けてくれて有難かった」と思えるかどうかは関係性次第ですけど。

同国の同時代にいる意味

__ 
iakuプロデュースの試みの一つに、大阪の演劇の発信と、他地域との交流を通した活性化があるとの事ですが、その狙いとはどのような。
横山 
今は、関西とか関東とかのくくりがある程度取っ払われつつあると思うんです。東京のカンパニーが自主企画で大阪公演するというケースも増えてきていたり、三重が全国のカンパニー招聘に力を入れていたり、福岡の演劇シーンが興味深かったり。ああ、これはもう、東京の小劇場とか関西の小劇場とかをもっと全国的なムーブメントにしていく時期なんじゃないかと。
__ 
時期。
横山 
東京からきたカンパニーに聞いてみたんですよ、何故大阪公演をしたのかって。一意見ですが、東京では頭打ちでもうお客さんが増えない、単純にもっと多くの人に見て貰いたいという事でした。正直言うと、大阪にそんなに大きなマーケットがある訳ではないですが、でも来てもらいたいです。それが、さきほど言った「分母」を生む事にもつながるし。関西にきて成功する劇団ばかりではないですが、少なくとも、僕が来てほしいと思った劇団には、何らかのアシストをしていきたいですね。これから関西にも、たくさんの演劇を輸入出来るように、地域との連携を深めていきたいです。その一助が出来ればと思っています。
__ 
と交換する形で、横山さんの書かれた作品も全国に行きますね。
横山 
そうですね。全国で自分の作品が毎月やっているようであればとても嬉しいです。関西にもまだまだ良い俳優がいて、厚い層があるという事を知ってもらいたいですね。
__ 
エダニクもサキトサンズも、全国ツアー中ですしね。私はどちらの作品も好きです。それが毎月、日本のどこかで上演されているというのは、考えてみれば嬉しいですね。
__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
横山 
iakuプロデュースは2011年から準備して、2012年は種まきの期間でした。2013年を迎えましたが、2014年までには、自分の作品が毎月日本のどこかでかかっていて。さらには、全国でどこでも面白い演劇が見られる状況に向けて、何か自分が関わっているようになっていれば。時間を区切ってしまうのは良くないんですけど、だらだらとは動けないし。出会った人と繋がっていき、地道にでも続けて行きたいです。単純に、各地の演劇人とつながるのは楽しいし。そこは攻めなのかは分からないですけど。
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演劇から地方の垣根が取れて全国化するという流れ。当然の事ながら、各地に同時代の演劇人がいる事が実感できますね。もちろん、いないとは思ってませんでしたけど、いること自体に勇気づけられるというか。次のステージに行こうとしている段階を感じています。
横山 
世間全体が、飽きられる、飽きてしまうサイクルが早い世の中ですからね。それで自分達が諦めてしまう前に、飽きてしまう前に、時間を区切って挑戦していきたいです。

タグ: どんな手段でもいいから続ける 境界を越える・会いに行く 生き方と世の中の為に動く 垣根の無い世界へ 今後の攻め方 地方における演劇の厳しさ 深めていきたい


描く

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今後、描いて行きたい作品はありますか?
横山 
30代後半の、主に独身女性が抱えているものを垣間見たいんです。どうしようもない不安を。
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出産リスクなどの問題でしょうか?
横山 
そうした面ももちろんですが、恋愛していない30代後半の女性は、時に大きな不安に苛まれると思うんですよ。一瞬でも楽になれるものにハマってしまうし、不倫だってあるし。茶化しでもなんでもなく、そういう部分に興味があるんですよ。それは人間自体への興味なんですけど。
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ええ。
横山 
でもそれを描く事で何になるのかはまだ分からないんです。日常感じているような事をわざわざ舞台で見せないでくれと言われるかもしれない。いわゆるエンターテイメントに仕上げて、どこに何を投げかけられるかを感じないといけないんですね。「みんな一緒だよ」と言ってあげればいいのか?
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何故、そこに興味が向かうのでしょうか。
横山 
何故でしょうね。そこに人間性が詰まっていると思うからでしょうかね。結局、人間のどうしようもない孤独とか、弱さに興味が向くんですね。

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