質問 福田恵さんから 鳥井 由美子さんへ

Q & A
__ 
前回インタビューさせていただきました、レトルト内閣・安定志向の福田恵さんから質問を頂いてきております。「演劇をしていて一番損した事・得した事はなんですか?」
鳥井 
何でしょうね。演劇って、何となくちゃんとしたフォーマットがあると思うんですよ。「こうでなければいけない」とか、「こうであるべきだ」とか。そう言う人の声が強く届いてくる。私にも形式を探ってしまうところがあるので。もしかしたら、他のジャンルから入ったらそこを気にしなくて良かったかもしれない。一方で、形式がある事でどうしたらいいのか分かるというのもあるんですけど。
__ 
では、一番得した事は。
鳥井 
やっぱり、お客さんを迎えて見てもらえるという、おもてなしの精神がきっちりと身に付いたところですね。そこから出発して、だんだんと親しみやすい近づき方を考える事も出来るし。私の中では、演劇の業界ってしきたりがきっちりと決められているイメージがあるんです。
__ 
自分の方法を探りやすい?
鳥井 
そうですね。ぐだぐだとしたラフなものから出発していたら、大切な部分に最後まで気づかなかっただろうなと。いい意味でも悪い意味でも、きっちりとしていると思うんです。その緊張感は、嫌いじゃないですね。

タグ: おもてなしの精神


勇気をもって、自分のやり方

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
鳥井 
自分の名前をもっと知ってもらえるように、同時に、自分が興味あるものをたくさんの人に知ってもらえるようにやっていきたいです。これからも多くの人に会って、話して。それから、勇気をもって、自分のやり方を作っていきたいです。
__ 
自分のやり方を作る。
鳥井 
人から教えてもらったやり方に終始していたら、本当にやるべき事に気づけないんです、きっと。そうじゃなくて、必要な事と不必要な事を判断して、仕事のスタイルを作っていきたいんです。自分の部屋を作るように。

タグ: 今後の攻め方


赤いイヤリング

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
鳥井 
ありがとうございます。
__ 
大したものではありませんが、どうぞ。
鳥井 
ありがとうございます(開ける)。あ、かわいい。
__ 
付けられますか?
鳥井 
はい。赤、好きなんですよ。

タグ: 赤色 プレゼント(装飾系)


ミニハーモニカ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。どうぞ。
大橋 
これは。
__ 
箱を開けて頂ければ。
大橋 
ハーモニカ。次のイベントで披露します。
__ 
ホイッスルなどに使って頂ければ。

タグ: プレゼント(音楽・楽曲系)


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大橋

横断的な、あるいはアメーバ状になった感触

__ 
大橋さんがツイッターで書かれた事の中にですね、以下の一文があって。「ジャンルを超えたアートイベントをやろうとしたら、その着地点がまさに『ジャンルを超えたアート』というジャンルに着地してしまう」という一文があったんですよ。これ、凄く分かるんです。
大橋 
そうなんですよ。「あ、その枠ね」って。そういうジャンル。同じ人とやってると飽きてくるじゃないですか。だから超えようとするんですけど、いつの間にか舞踏的な表現してるみたいな。
__ 
自分の領分を越えようとするからじゃないですかね?私がカラフルの閉幕後に、ある予感を感じたんですね。かつてここに、いくつものオリジナルの劇団が一堂に会していて、一日を分けあっていたという事実が迫ってきて。自分達の世界観を失わずに、同時代でお互いがパフォーマンスを発揮しながら接触したり離れたりを繰り返すというのに立ち会うというのがとても必要だと思うんです。カラフルは「ジャンルを超えたアート」ではないけれども、「垣根を越えよう」という思想を実現したんじゃないかと思うんです。
大橋 
横断的な、あるいはアメーバ状になった感触がね。でも僕が今考えているのはボーダーを超えたアートなんですよ。そんな事が出来るのか?本当に。

タグ: ボーダレス・横断 イベントの立ち上げ 垣根の無い世界へ


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大橋

キャスティングの勉強会

__ 
今後、開いてみたいイベントは。
大橋 
メディア・アートの展示、プロジェクションマッピングやデジタルサイネージをちょっとやってみたいです。それから、イベントと言えるか分からないですけど、キャスティングの勉強会をしてみたいです。タレント名鑑や出演作のDVDを資料に、「今の彼はどうなんだ」とか、「撮影時期と旬がずれてるよね」とか、そういう話を含めた話。商業演劇のキャスティングが出来るようになりたいんですよ。それを映像関係の人と何回かやった上で、役者を紹介するショーケースを開いてみたいですね。
__ 
なるほど。
大橋 
「40代男性特集」とか「ぽっちゃり女優特集」とかを重ねて、映画のキャスティングの人にも届くような会を作りたいですね。そうすれば、演劇の人も映画のオファーを受けやすくなるんじゃないか。そういう事をしているうちに、一緒にものを作っていくようになれば。これは来年度にはやりたいですね。

タグ: キャスティングについて


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大橋

質問 北島 淳さんから 大橋 敦史さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂きました、ナントカ世代の北島さんから質問を頂いて来ております。「誰にも教えない定食屋やカフェとかはいくつありますか?」
大橋 
ありますね。京都に1件、名古屋に2件あります。でも、名古屋の方は1件潰れてしまいました。僕はさびれている店が好きなんですが、誰にも教えないから廃ってしまったのかな。

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大橋

ゼロから勉強

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
大橋 
攻める。まあ、でも、修行の身ですからね。
__ 
ああ、そう仰ってますよね。
大橋 
まだまだ、ゼロから勉強させて頂いている身分なので。僕が攻めるなんて、いやいやいやいやですよ。二十代でデタラメをし過ぎたんで。攻めるというか、まずは商業の制作が出来るようになります。
__ 
頑張って下さい。
大橋 
商業演劇と小劇場の間をつなぐ存在になりたいです。その為のキャスティング勉強会という話になっていくんですよね。まずはコミュニティを作って、実績を作って持っていく。昔に比べれば、小劇場と商業の垣根は低くなっているので。

タグ: キャスティングについて 今後の攻め方


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大橋

出会いの連鎖

__ 
思い返すと、カラフル3というイベント。正気の沙汰じゃないですね。
大橋 
一時間の作品を一日八本、隣接する二つの劇場で3日間。舞監が3人いるというね。
__ 
お話を伺っていると、ご出身の愛知の演劇界への思いが動機の中心にあるように思いますが。
大橋 
やっぱり、地元が好きですね。何回かあったんですけど「大橋くん、俺本気になったよ。東京行くわ」って、演劇仲間が言うんですよ。本気になってする事ってつまり、仕事を辞めて東京に行く事なんですね。ここじゃなくて。住んでるところで結果を出せない奴が、アウェーに行って何かが出来るとは思えないんです。残念ながら、よほどの天才筋か才能集団でない限り東京に行ってもしょうがないんじゃないか。一方で創作環境は東京の方が豊かなのは間違いなくて、それを引き止めるのは躊躇われるんですけど。はっきり言うと、腹が立っていて。
__ 
ええ。
大橋 
ここでやろうや、と思ったんです。ここを日本の中心にすればいいんです。まあ、カラフル3は必死の努力にも関わらず結構な赤字を出してしまいましたけどね・・・。スタッフさんたちも本当に苦しい中で尽力してくれて、カンパニーも「こんな協力の仕方見たことのない」と言ってくれたのに。でも振り返ってみると、世の中に演劇を広めるという、自分の一番最初の動機と重なる部分があって。閉塞感に対して打ち勝てたところもあるのかな。
__ 
カラフルが大橋さんに残したものは。
大橋 
借金・・・
__ 
借金以外では。
大橋 
やっぱり出会いですね。名古屋を出るキッカケにはなりました。2年間京都にいって、福岡・金沢で仕事して、大阪に移って。BRAVA!に入ったのも、カラフルのお陰という面もあります。出会いの連鎖ですね。

タグ: 生き方と世の中の為に動く ターニング・ポイント


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大橋

全国区をここに作る試み・カラフル3

__ 
イベントプロデューサーとして一番最初の仕事は何でしたか。
大橋 
高校の演劇大会の実行委員会でしたね。合コンじゃないですけど、他校との合同カラオケ大会はいつも盛況でした。
__ 
カラフルという演劇イベントが私と大橋さんの最初のキッカケだったと思います。名古屋の長久手でのカラフル3でしたね。どのような経緯があったのでしょうか。
大橋 
僕が関わり始めたのは第二回からです。第一回の時は、裏で学生演劇合同プロデュースのスタッフをしていました。その翌年、企画者の一人として呼ばれて。3回目のカラフル3は僕の仕切りです。
__ 
なるほど。カラフル3は、東京大阪を主に全国から劇団が集められていましたね。
大橋 
僕個人の思いとしては、名古屋の演劇はこのままじゃ死ぬなと。
__ 
死?
大橋 
名古屋では若手の劇団が中々育っていなかったんですね。その頃はまたお客さんも減っていて。小劇場の折込も数年前に比べて4割くらい減っていたんです。どこかで食い止めないと、と思ったんです。地理的に愛知は東京からも関西からも寄りやすいハブ的な土地なんですが、それなら、全国区をここに作ればいいんじゃないかと。
__ 
というと。
大橋 
東京イコール中心という考え方って、どうしてもあるじゃないですか。東京イコール全国区というイメージにも繋がるんですけど。東京一極集中に対応して「地方」を「地域」と呼ぶ人もいますが、それでもやっぱり閉塞していくんじゃないかと思うんです。地域じゃない、全国区を、日本の中心である名古屋にこそ実現出来るんじゃないか。
__ 
なるほど。
大橋 
だからショーケースという形式が相応しかったんですね。アウェイで来る人の方が本気になるのが理想でした。会場は長久手でしたが、そこで高い評価を受ければ、ホームでも高い評価を受けられると。
__ 
挑発と言えるかもしれませんね。
大橋 
来てくれたらお客さんが1000人入ります、さらに、賞もありますと言って口説きました。その賞についても、誰がどう選んだかを明確にして発表しました。名古屋の人に対しては危機感を煽りたかったんです。実際、呼んできた劇団で賞が総ナメにされてしまったんですけどね。
演劇博覧会 カラフル3
全国の劇団が一堂に会する、まさに博覧会イベント。時期を置いて1stステージ、2ndステージと開催。公演時期:「1st.stage」2009/3/14~15。「2nd.stage」2009/5/2~4。会場:「1st.stage」ゆめたろうプラザ(武豊町民会館)。「2nd.Stage」長久手町文化の家。

タグ: ホーム/アウェイ 土地の力 地方における演劇の厳しさ


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大橋

正月気分

__ 
今日はどうぞ、宜しくお願い致します。最近、大橋さんはどんな感じでしょうか。
大橋 
最近は・・・普通ですね。まだ正月気分です。1月3日には、いま勤めているシアターBRAVA!の舞台で手を合わせてきました。で、明日からは公演の準備が始まります。

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大橋

「これが演劇ですよ」

__ 
大橋さんが演劇を始めたのはどのようなキッカケがあったのでしょうか。
大橋 
当初は声優になりたかったんですよ。それで演劇部に入ったんです。少女マンガが大好きで、ママレード・ボーイとか、こどものおもちゃとか。りぼん系のアニメを好んで見ていたんです。そのうちに声優になりたいと思って。神谷明さんの著書の「きみも声優になれる!!」という本を読んだら、舞台をやれって書いてあったんです。声優というのは元々、舞台をやっている人たちに任せられていたらしく。中3の段階で演劇=ダサいというイメージがあったんですが、高校から演劇部に入りました。
__ 
というと。
大橋 
何故かと考えたら、それは小学校の頃に見た巡回演劇なんですね。子供に見せるには、あまりに教条主義的というか説教臭いと感じたんです。もちろん素晴らしい作品が多いし、選ぶのは指導をされる先生方であるという構造もあるので、誰が悪いという事ではないんですけれども。演劇に対するそうした思い込みはあったんですが、いい部活でした。
__ 
最初は役者だったんですか。
大橋 
はい。でも、全然上手く出来なかったんですよ。最初に貰ったのはセールスマンの役だったんですが、県大会進出の二週間前で降ろされたんです。大会ではピンスポを当ててました。何でダメだったんだろう、それはやっぱり、他人とのコミュニケーションが苦手だったんですね。人と対する時に緊張してしまう。そんなのが演技なんて出来る筈がないじゃないか。そういうコンプレックス的な部分が、演劇をやることで、演劇に逆照射されたんですね。しかし、その中で自分を見つめて相手と向き合って、その上で生まれるドラマが演劇の良さだと気づく事が出来ました。そういう芸術ですよね、演劇って。
__ 
素晴らしい。
大橋 
そういう事を、高1の頃には大体直感していたんです。高校卒業時、進路を考える時期になって色々迷ったんです。みんな、演劇をやればいいのにって思って。その頃、キャラメルボックスの加藤プロデューサーを知って。この人みたいに、世の中に演劇を広めたいなあと思ったんです。あと高3の時に平田オリザさんのワークショップを受けたのも大きいですね。3日間くらいで小作品を作るんですが、「これが演劇ですよ」って分かりやすく解説してもらった気がしました。

タグ: 声優になりたかった


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ハッピーエンドにはならない

__ 
ともにょ企画の鈴木さんにお話を伺います。今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近はどんな感じなのでしょうか。
鈴木 
最近は、来週に迫ったシアターカフェnyan!でのクリスマスの演劇イベントで上演する作品の稽古をしています。無料の客席限定イベントなんですが、この機会でしかやれない事をやっています。
__ 
どんな作品になりますでしょうか。
鈴木 
クリスマスっぽいメルヘンな作品ですが、ハッピーエンドにはならないと思います。
__ 
ともにょ企画。いつもはハッピーエンドにはしないとの事ですね。
鈴木 
不幸って、いつもくっついてくる訳じゃないですか。それを描こうとすると、不幸を書きたいのかと周りからは言われるんですけどね。
ともにょ企画
XXXX。(公式サイトより)
act for friends vol.2
公演時期:2012/12/23~24。会場:シアターカフェnyan!

タグ: ハッピーエンドについての考え方 イベントの立ち上げ


質問 石田 大さんから 鈴木 友隆さんへ

Q & A
__ 
前回インタビューさせて頂きました、地点の石田さんから質問を頂いてきております。「お芝居に出会ったのはいつからですか?」
鈴木 
高校の演劇部からなんです。けど、それ以前からTVでドラマでジャニーズ系のタレントが演技するのを見て、何か、悔しくなったんですよ。
__ 
悔しい?
鈴木 
イケメンがTVに出てしょうもない演技してるのが腹立たしかったんでしょうね。癖で、画面見ながら一緒に演じてたりしてたんですが、もしかして俺の方が上手いぐらいなんじゃないかと思えてきて。だから、距離をおいたお客さんのように、冷めた目で演技を見るという姿勢が作られたんじゃないかって思います。
__ 
高校からは。
鈴木 
高校演劇に入って、・・・やっぱ、あるんですよ。
__ 
何か、アニメの影響を受けたような。
鈴木 
そう、過剰なやり方とか。その中で台本を読むというのには抵抗があったんですが、変な読み方をするのが嫌でした。他校の公演を見ても同じような感じでしたね。僕の代からはナチュラルな演技で演じるコントとかやってました。

「オトコの一生」

__ 
そして大阪で旗揚げしたともにょ企画。いつもは、ハッピーエンドの作品を作っている訳ではないそうですね。
鈴木 
思うんですが、この世の大体の演劇作品って、人生における浮き沈みの一部分を切り出しているだけなんですね。偏見かもしれませんが。
__ 
なるほど。
鈴木 
僕は、良い事と悪い事の両方を描いた上で、メッセージを伝えるのが演劇のあるべき姿勢だと思っています。もちろん、最初からこういう全体的な見方をしていた訳じゃなくて、下がっている部分をいかに自分で肯定してあげるのかを考えて、描こうと思っていたんですよ。悲しさが盛り上がって終わったり、良いことなのか悪い事なのかわからない内に終わる、というような作品を作っていたんです。gate extraで上演した「オトコの一生」の終幕では、主人公の男性の死を描きました。それまで一生懸命働いて、良い事も悪い事もあって、好きではない女性と結婚して、自分と同じような生き方をする子供を持って、若年性痴呆症になって、早くに一生を終えるんですけど。「死」は、取りようによっては上がった絶頂であるとも言えるんじゃないかと思うんです。
__ 
「オトコの一生」。確かにあの主人公は幸せそうに死にましたね。ちょっと伺いたい事があるんですが・・・
act for friends vol.2
公演時期:2012/9/8~9。会場:KAIKA。

タグ: 一生懸命を描く


刑務所について

__ 
ドラマとは、確かに人生を切り出したものですね。それに反感を覚えたという事ですが。
鈴木 
劇場という場所が、人間が人間を慰めている空間に見えたんですよね。関西に来たとき、エンタメが主流だと知って。もちろん見たんです、これは10代後半の僕の生意気さが助長したんですけど・・・こんな感動、演劇じゃなくても得られるじゃないかと思ったんです。自分はどちらかというと、悪い事も肯定したいなって。
__ 
悪い事を肯定する。誰かの悪意によって傷付けられた時にも、肯定出来ますか?
鈴木 
例えば政治家に嘘を付かれた時に、騙されたとかメディアが一斉に言うんですよ。そんなこと、取り上げる人の方がバカだなと思うんです。良い面を普段取り上げないのに、悪い事をしたときだけ大騒ぎする。そういう状況が嫌ですね。
__ 
悪人を犯罪者として、世間が一斉に攻撃に回る。
鈴木 
僕は、悪人はこの世にはいないという見地です。もちろん、善悪は指標として必要だと思うんですけどね。どういう状況が、彼をこのような仕業に追い込んだのかを考えないといけない。演劇の関係者はそういう志向で考える人が多いと思うんですけど。
__ 
犯罪をした人間=悪人として片付ける事はとても簡単ですね。
鈴木 
犯罪者を刑務所に入れるというのは、臭いものには蓋という事ではなく、「この社会が生み出した犯罪者」という、社会の一員として迎えるべき。みんながそういう認識じゃないと、刑務所の意味がない。更正して出てくるのを待っているだけではだめなんですね。異端者をマスコミが罵倒して、社会の隅においやって、それが商売として成り立っているという状況は、僕は嫌です。

タグ: 社会、その大きなからくり


僕が生きやすい社会

__ 
鈴木さんがお芝居を続けている理由は何でしょうか。
鈴木 
ええと、いま思いついたのは、意地です(笑う)。今大人になって、昔とお芝居との付き合い方は変わってきてはいます。子供の頃は、サラリーマンを「毎日通勤電車に乗って会社に仕事しに行くだけの大人」だと思っていて、自分は好きなモノを作って生きていきたいという意識がありました。今、大人になったらサラリーマンがすごく尊敬出来る対象に思えてきています。
__ 
なるほど。
鈴木 
常日頃、自分にとっての演劇を省みるようにしています。社会生活でも、演劇を絡めて考える事も凄く多くて、僕自身の活動も、演劇と社会との関わりを考える事にシフトしてきています。これは糸井重里さんが仰っていたんですが、「俺が生きやすい社会になってほしいんだ。そうなったらこれまでお金儲けしていた連中には文句を言ってくるかもしれない。けれど、俺が生きやすい社会は意外とみんな生きやすいんじゃないか」。僕の演出する作品も、だんだんと「僕が生きやすい社会にしてくれ」という思想になってきていますね。
__ 
鈴木さんが生きやすい社会とは、どのような社会ですか。
鈴木 
僕にとってのそれは、「生きる」という事が地に足が付いている社会です。いまグローバル社会で、生活の全てにお金が間に入っていて・・・もう訳が分からなくなっていると思うんですよ。グローバル化って、「海のものが食べてみたい、山のものと交換しよう」という交換経済が発展した結果だと思うんですよ。その中では、食べたいものを食べる、好きな事をしたい、そして子孫を残すという単純な生が訳の分からない事になっている。
__ 
通貨という共通概念が、いつの間にか世界観になっているという事ですね。
鈴木 
今、日本にはコミュニティがあまりにも少なすぎると思うんです。働く、生産をする場所のコミュニティばっかりになっていて、自分の生活をするコミュニティが無くなっていっていると思うんですよね。
__ 
寄り合いがない?
鈴木 
そうなんですよ。昔は町内会が強かったので、人と人との結びつきがあった。それが、今は結びつきのない疑心暗鬼の人間関係が普通になってしまっている。お金が間に入らない物々交換が「生きる」基本だと思っているんですが、それが成り立たない。それが僕は生きにくいんです。身の回りの人と交流して、自分が生きる為のコミュニティを作るのは演劇と通じるところがあるんじゃないかと思っています。
__ 
ネットの書き込みを見るにつけて、そうしたコミュニティから人々が離れているという流れを感じますね。
鈴木 
僕の理想は確かに退行と言われてしまうかもしれません。でも、グレートリセットという怖い発想ではないんです。理解するだけでいいと思うんです。それを自律・自立する事だと思っています。理解して、考えるだけでいい。
__ 
ともにょ企画のサイトにもありましたね。
鈴木 
社会の中で自分がどういう役割を担っているのか、自分がどういう風に生きるのが幸せなのかを考える。本当に自分に必要なのは何?って。人間は、幸せになる為だけに生きていると思うんですが、「こうしないと不幸せになる」という考えばかりが多すぎると思うんです。自律して考える人々が増えたら、社会のシステムも含めて変わっていく。僕が言っているのは理想ですが、とにかく僕の仕事は、「見た人がもう一度考え直す」作品を作る事です。

リセット

__ 
人に影響を与える最大のものは思想だと思うんですが、それを消化出来る人って案外少ないと思うんですよね。自分の憂さを晴らす生き方が増えている中で、思想に触れて、わざわざ立ち止まって考えなおす人は少数になっていくのかもしれない。
鈴木 
それもまたコミュニティなんですよね。今、嫌な人を遠ざけて生活する事がカンタンな社会だと思うんです。嫌な人を受け容れて消化するには、陰口と同時に評価して、理解をするようなやり取りがあった筈なのに。
__ 
今は、紋切り型で切り捨ててしまう。それが普通になってしまったのかもしれな。
鈴木 
楽なんですよね、きっと。というか、そうせざるを得ない状況になってしまっている。あまりにも考えるべき事が多すぎて。単純に都会に人が多すぎるんです。僕はこう考えているんですが、都会から地方に人を流してそこでコミュニティを作ればいいんですよ。当然、文化が無ければ人はいつかないので、文化を発展させて。思うに、都会に文化が集中し過ぎて飽和してしまっているです。インターネットがあるんだったら、文化を地方から発信する役割を負うべきだと思うんです。それが一番、有効なリセットの仕方だと思っています。

タグ: 地方における演劇の厳しさ


貧しい演劇

__ 
つまり鈴木さんは、個人の生き方を捉え直そうとしているんですね。
鈴木 
僕の考えの一番最初には社会があるんです。その社会を生きやすいものに変える。これはピーター・ブルックの本を読んで知ったんですが、グロトフスキという劇作家が曰く「観客は必要ない。演出家と役者のみでいい」。彼の作品にはお客さんは必ずしも必要ではなくて、入れても30人ぐらい。彼ら自身を掘り下げる為の演劇なんですね。それを「貧しい演劇」とし呼んで実践してたそうなんですが、僕もそれを支持し始めたら劇団員が離れていくかもしれないです(笑う)。でも、演劇ってコミュニケーションの一形態に過ぎないんですよ。だったら、僕はお客さんと貧しい演劇を作りたい。それが出来るように、演劇を社会に普及させていきたいですね。

タグ: 知識を付けよう 社会、その大きなからくり


今自分がやりたい事

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
鈴木 
僕が好きな演劇って、その人の世界がそのまま現れている世界なんです。僕はまだ自分の世界がまだ掴めていなくて。その為に劇団員を増やしたんです。
__ 
ともにょ企画のサイトによると、多いですよね。
鈴木 
今、10人ぐらいいます。というのも、客演さんを迎える時のように気を使わずに僕の描きたい世界を描けるので。それが納得出来る段階になって、つまりいい商品になったら売りに行きます。来年2月に劇王があって、審査員の人にボロクソに言われると思うんですが、それを越えて3月に中崎町のイロリムラで一週間くらいのロングランをやります。劇団のメンバーだけの公演です。一旦は、劇団の商品を完成させるという考えで行きます。その後はあまり想定出来てないんですけど、良い物を作ったら皆ワクワクしてアレしようコレしようって言い出すと思うんで、心配はしていないです。今は、無理矢理自分のアイデンティティを演劇に見出して活動を強いる事はないかなと。それよりは、今自分がやりたい事を話し合っています。動画とかラジオとか音楽をやる奴が出てきたり。劇団内で芸術家同士のセッションが始まるようであればそれが理想です。あと、僕は糸井重里さんの事務所に就職しようと思っています。
__ 
いいんじゃないでしょうか。つまり、関西を離れる・・・?
鈴木 
あまり、関西にはこだわりはないですね。もちろんこれからもやっていきたいですけど、地方に興味があって。今でも、東京の人たちが地方の演劇祭に行ったり多くなってきて。これからも、地域のカンパニーが、東京とか大阪とかの「都市」以外の別の地域に行くという事がどんどん加速していくだろうし、そうなるべきなんじゃないかと思います。だから、「ともにょ企画は大阪の劇団で、大阪でずっとやっていきます」という事は言わずに、各メンバーが色々な場所で活動して、それぞれが受けた刺激を持ち寄ってセッションする。それが理想ですね。

タグ: どんな手段でもいいから続ける 今後の攻め方