日没より

__ 
もしかしたら、剥ぎとった末の、何も言えなくなる場だからこそ美しいのかな。「シ・バハマ」は沈黙と静寂の風景が非常に良くて。何だろう、饒舌な沈黙だと思ったんですよ。
北島 
それはうちの言い方だとキレイな絵という事なんですけど、・・・これはさっきの「鉛の夜」のラストの話にもつながるんですけど。
__ 
ええ。
北島 
人が舞台に出てきたら、まず十中八九は喋りますよね。それ自体はやむを得ないものと考えています。で、たくさん喋って、喋ったことの真偽についてあらゆる可能性を検討して、これを繰り返しているうちに大体の選択肢はなくなっていきます。これを「可能性を潰す」と稽古場では言っていますが、可能性がなくなればもう喋ることがなくなるので沈黙が始まる。一方、舞台上には検討のための膨大な情報と身体が残されたままな訳です。ベケット的というか、ベケットを評論しているドゥルーズ的に言うと消尽に近いかも知れませんが、沈黙に伴う情報量の多さが、雄弁な印象になるのかもしれませんね。
__ 
なるほど。・・・男を否定する女達。否定が終わったら、何かの残り滓みたいな生活シーンが描かれるのみでしたね。スズキスズオが否定されつくされて、それを観客が見守っている絵。何故、あの場が焼き付いているんだろう。
北島 
スズキスズオの立ち位置は、客席のすぐ前、照明がギリギリ当たらないあたりになることが多いです。お客さんに背を向ける形になりますが、客席からの目線は、男のそれと近しいものになる。観客はいやでも否定される男の体験を経たうえで、必然として沈黙のシーンを迎えるからじゃないかと・・・その前に飽きるお客さんもいますけどね。ああいう作品なんで。
__ 
そういう事だったんですね。
北島 
嫌いな人は大嫌いだと思います。舞台の上で殺人事件とかが起きないと許せない人は、気をつけてほしいですね。
ナントカ世代06「シ・バハマ」<
公演時期:2008年12月12日(金)~14日(日)。会場:アトリエ劇研。

タグ: 情報量の多い作品づくり SeizeTheDay


「シ・バハマ」

__ 
ナントカ世代の演技につける演出は、全て秒単位で決まっているそうですが。
北島 
細かいとはよく言われますが、全部秒単位で決めているということはありません。秒数が出てくるのは沈黙とか間って書いてあるところ。「3秒間沈黙する」とか、秒数管理してもらっています。
__ 
マジですか。
北島 
別にストップウォッチで測っている訳じゃなくて、俳優に数えてもらっているだけなので厳密でもありません。ただ、うちは10秒20秒を超える沈黙が珍しくなくって、俳優って多分、お客さんよりテンポが早いんですよ。
__ 
だから、数えてもらうと。間をキープするために。
北島 
この間の「シ・バハマ」の時に筒井さんにお願いしたのは、「明転したら8秒停まって、小さくそよそよそよと言いながらゆれて、息が終わったら5秒数えて、それからもう一度そよそよしてもらって、息が終わって2秒後に大きくそよそよして」とか。
__ 
そんな細かい事をしていたんですね。
北島 
ポイントごとに決めているだけで、全編に渡って細かく指示している訳ではないですね。
__ 
でも、決めている。
北島 
決まり事が多いという文句は、初出演の人からは多く出ますね。
__ 
遊べなくなるという事なのかな。
北島 
そんな事もなくて、文句言いながらでも勝手に色々やってましたから。筒井さんなんか特に。決まり事を守ってもらったら、大体見せたい絵に行き着くようにしているので、それ以外は勝手に組み立ててもらってたらいいんですよ。秒数とかより、このセリフはだれそれのこの言葉から反応して、みたいな決まりごとが多くって、それを覚えるのが大変なんだと思います。
__ 
なるほど。ある絵を作るために必要な段取りなんですね。
北島 
完璧主義者でもありません。稽古数も少ないし、稽古場に人が揃ってなくても気にしないしね。

質問 鈴木 知隆さんから 北島 淳さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、ともにょ企画の鈴木知隆さんから質問です。「演劇って、今の社会に必要ですか?」
北島 
うーん・・・社会について聞かれていることをパーソナルな答えに縮小して申し訳ありませんが、必要だと僕は思います、ですね。だって、僕は演劇を見に行くし、僕達は演劇をやっているし、それは社会の中で行われていることですから。
__ 
なるほど。
北島 
ユーザーや受け手がいる以上、必要ということは簡単だと思います。もちろん、事業仕分けみたいなやり方で言えば、不要ということも簡単でしょう。ただ、不要だから捨てるとなると、それはジリ貧だろうと思います。答えになってませんね。

終わるための時間

__ 
北島さんがナントカ世代の作品で、気に入っているのはどういうところですか?
北島 
気に入っているというか、好きな時間は作品の終盤が多いかな。戯曲的にも演出的にも打つべき手をすべて打ってしまって、あとは役者にお任せしきった状態とか。全部情報を出して。後は終わるために流れるままの時間。
__ 
担当している仕事が終わった瞬間という事ですね。
北島 
千秋楽とか、自分の仕事が全部終わってからは特に気持ちいいですね。私だけ仕事が終わって、皆まだ舞台上に残って何かやってやがるのを見るのがいいですね。はい、性格悪いですね。
__ 
終わるための時間。そうそう、最後の方になるといつ終わっても良いぐらいいい時間ってありますよね。ナントカ世代の特長だと思います。

見せたい絵がある

__ 
原作モノをやり始めたのはどういう理由があるのでしょうか?
北島 
『粗忽長屋』と『紙風船』の同時上演をやった時ですね。手応えが良かったので、続けて長編を芝浜で作ってみたら、勝手が良かったので続いています。
__ 
使い勝手が良かったとは?
北島 
さっきも言ったように見せたい絵があるんです。その為に手順を踏んでいくお芝居なので、筋自体は何でもいいと言えば何でもいい。原作があるというのを言い訳にしつつ作っていくとすごく楽ちんなんですね。
__ 
原作の骨子を使っている?
北島 
筋をそのまま使っているということはないですね。原作を何回か読んで、受け取った印象から組み立てていく感じかな。
__ 
なるほど。ところで、これは面白いなと思ったんですが「芝浜」を「シ・バハマ」というタイトルにしたのはめちゃくちゃいいセンスですよね。バハマの海岸と芝浜の白砂が一気に重なるんですよね。
北島 
あれは言っちゃえばおふざけですね。区切りを変なところに入れるだけで印象がころっと変わっちゃうでしょう。

タグ: おふざけ


変わりながら・続けていく

__ 
今後、ナントカ世代でどんな世界を描いていきたいですか?
北島 
昔は、誰も見たことがない世界を描きたいとか思ってたんですけどね。いまはそうでもないかな。あんまり、これというのがない形になりつつあるのかな。積み重ねもあるし。でももうちょっと、色々挑戦しようと思います。セリフの盗み方なんかももうちょっと発展できるんじゃないかと画策しています。
__ 
ナントカ世代、ずっと高い品質を見せてきてくれて。コンスタントに作品を作っているというのが凄いですよね。結構長く。
北島 
1年に2回くらい、やれる範囲で無茶をせずにやってるから。落語まつりは体力的に無茶でしたけど。
__ 
今後もやりたい事を追求して続けていく?
北島 
そうですね。社会人がほとんどですが、まあ時代も政権も変わっていくので、その分の空気の変化くらいはしながら。
__ 
時代の変化を覚悟しつつ、今後、どんな感じで攻めていかれますか?
北島 
6月に劇研でやるのと、5月にもしかしたらどこかでやるかもしれません。新しいメンバーが入ってくれないかなと思ってます。
__ 
アトリエ劇研以外の劇場で公演したりとか、そういう展開はありますか?別の地方に遠征したり。
北島 
機会があれば、くらいなもので。うちは完全にアマチュアですけれど、京都に多数あるカンパニーのうちの一つであればいいかなと思っています。一時期、すごくカンパニーの数が少ない時期とかありましたけど。
__ 
そうですね。
北島 
週末、どこかの劇場では必ず演劇がやっていて、そういう文化の端くれでも担えればと思っています。そのぐらいのスタンスが、続けていく分には楽かな。もちろん、勝負をしなきゃいけないカンパニーというのがあるのも音響卓から見ていますけれど、そういう感じではなく。

タグ: どんな手段でもいいから続ける 落語 今後の攻め方 演劇は勝ち負け?


キリンの置物

__ 
今日はですね。お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。今回はふざけた品物です。ガラクタは贈らないというのがルールなんですが、破りました。どうぞ。キリンの置物です。
北島 
丸山君が気に入れば小道具行きかしら。
__ 
あっ。
北島 
あれ、これ耳折れてる。

タグ: おふざけ プレゼント(大失敗系)


粛々と演劇

__ 
今日は地点の俳優である、石田大さんにお話を伺います。どうぞ、宜しくお願い致します。いきなりですが、石田さんは最近いかがでしょうか。
石田 
最近は粛々と演劇をやっていますね。5月から本番もかなり続いています。稽古をして上演して、そういう期間の間にも次の次の公演の稽古を前倒しでやって、みたいな。
__ 
確かに、地点の活動はこのところハイペースですね。以前上演された「かもめ」などがcafe montageで見れたり、ファンには嬉しいです。
石田 
ありがとうございます。一本作品を作ったらそれは劇団の財産で、分かりやすく言えばレパートリーなんです。公演が終わったら終わりではなくて。レパートリーを増やしていくのが、劇団の活動でもあるんです。もちろん、中々再演が出来なかったりとかはあるんですけどね。
地点
多様なテクストを用いて、言葉や身体、物の質感、光・音などさまざまな要素が重層的に関係する演劇独自の表現を生み出すために活動している。劇作家が演出を兼ねることが多い日本の現代演劇において、演出家が演出業に専念するスタイルが独特。(公式サイトより)
地点『かもめ』
公演時期:2011/9/28~10/16。会場:京都芸術センター 和室「明倫」、アートコンプレックス1928。他、再演多数。

タグ: 再演の持つ可能性について


地点『コリオレイナス』Coriolanus

__ 
さて、2013年1月25日から29日まで京都府民ホールアルティで上演される、地点の公演「コリオレイナス」。今年グローブ座で初演された作品の凱旋公演なんですね。大変楽しみです。
石田 
はい。今回、地点としては初めてのシェイクスピア作品です。
__ 
少し意外な気がしますね。グローブ座での上演映像を拝見しましたが、ちょっと気付いた事がありました。以下の三重構造があるんじゃないかなと。
   1.「地点の俳優が戯曲を演じている層」
   2.「戯曲の登場人物の物語の層」
   3.「どこかからやってきた旅芸人の一座がお客さんの前で演じている」
これ、KYOTO EXPERIMENT2012で上演された『はだかの王様』を拝見した時にも思ったんですが。
石田 
確かにあると思います。特に僕らはメンバーが7人(俳優5人、あとは演出と制作)しかいないので、自然と旅芸人的な雰囲気が出るのかなあ。『はだかの王様』は子供の前で上演したので、なおさらそういう空気になったかもしれません。
__ 
やっぱり。『コリオレイナス』では石田さん演じる芸人がまずいて、彼が甥っ子や姪っ子達を旅芸人一座として連れて回っている見立てがあるのかなと。でも、叔父さんが前で芸をやっている間中、子どもたちはずっと仏頂面でよそ見してて、しかもいたずらを仕掛けたり。それが、コリオレイナスという英雄に振り回されている市民達の姿と重なって、観客の役割も二重三重に重なっていったように思いました。
石田 
いまの地点の新作では、確かにそうした演出が多いのかな。最近では、5人全員がコロスとして、一つのテキストを全員でやったりしていますね。
コリオレイナス
公演時期:2013/1/25~29。会場:京都府立府民ホールアルティ。

タグ: 子供が見て喜んで、且つ同時に批評家が唸ってしまう ユニークな作品あります シェイクスピア


Globe to Globe

__ 
地点版「コリオレイナス」。どのような魅力があるのでしょうか。
石田 
今年の5月にロンドンのグローブ座で、GLOBE TO GLOBEという企画に参加して上演しました。それはどういう企画かというと、37戯曲を37言語で上演するというものだったんですが。
__ 
日本語で上演されたのですね。字幕とかはなかったんでしょうか。
石田 
字幕はあったんですが、場面説明だけでした。でもセリフが日本語でも分かるみたいでした。
__ 
なるほど、戯曲を読んでいる人が大半かもしれませんね。というか、知らない言語で自分の国から生まれた戯曲が上演されているなんて、物凄く面白い体験かもしれないですね。でもそれが楽しめるかどうかと言うと・・・どうでしょうか。
石田 
シェイクスピアの戯曲は韻律があって、それだけでも音楽的なんです。それを日本語に訳すとなると、翻訳者は日本の韻律を当てはめることになる。和歌であるとか、日本にしかない形式のものに変換するんですね。結果、日本語独特の言い回しによる音楽性が生まれるんです。
__ 
日本語は平坦だから、英語圏では危ないと思うのですが。
石田 
ところが、シェイクスピア劇の特徴である朗唱術に感情の高低が加わると、言語が分からなくても伝わるんです。地点の演出ではコリオレイナスだけが深編笠を被っていて顔を隠しているんですよ。表情が読みとれない、しかも言葉は通じない。でも、その状態でもセリフは伝わるし、観客は最後まで見てくれていたんです。そこは驚きましたね。

型と渦

__ 
ちょっと納得した事なのですが。確かに、私がイギリス人だったとして、日本からのカンパニーが英語で話し始めたら違和感を感じるかも・・・。やっぱり、自分たちの言葉で上演してほしいですね。
石田 
今回はあえて、福田恆存訳版を使っています。日本人でもついていけないくらいのスピードで難解なセリフをまくしたてて、あるところで声をひっくり返したりする地点の演出。意図的にそうしてるんですけど、笑うんですよね、海外のお客さんも。
__ 
分かってないはずなのに?
石田 
こういう現象が起きるというのは、実は思っていた通りなんです。朗唱術として抑揚などを考え、見せ場としての長セリフを構築して、やっとそこに感情が乗るんですよ。そういう作り方をしないと、感情だけじゃ上手くいかないんですね。俳優が渦中に入っていくとき、そこには型がないとだめ。型だけでもうまくいかない。うまくいったときは、俳優が発する音の中から何か生まれてくるものがあるんです。

埋まっている

石田 
逆に、同じ言葉が通じる劇場の方が、難しくなってしまうこともある。特に地点の作品だと、「いま歌いながらセリフを言ったけど、どういう意味があるの?」って。
__ 
それは、よく思います。
石田 
実は作ってる側もそこに引っかかるんです。が、本番にあがる前に俳優それぞれが埋めていけばいい事なんですね。その俳優の作業の内実は、観客や、もっというと演出が知らなくてもいいことだと思うんです。自分がその埋まっているものを知っていればいいんですよ。それを形式一辺倒にやってしまうと上手くいかない。もちろん長セリフだって、やらされてる感満載になってしまう。理由が埋まっている事の必要性を、言語が通じないグローブ座で認識しなおしました。
__ 
埋めるという作業が、俳優の仕事なんですね。
石田 
反面僕なんかは、いい加減なのかもしれないけど、芝居を見に行ってもあまりセリフを一言一句聞いてないんですよね。そんなにみんな、セリフばかりを気にして見てるのかなあ。もっと、何か大きいレベルで見ているんじゃないかな。もちろんやってる側はセリフを全部覚えている訳ですが。
__ 
お客さんの身体のモードが色々あって、例えばお笑いの時はかなり頭を使って見てると思います。細かい間とか、論理とかを追いかける訳ですから。石田さんの仰っている見方は、きっとパフォーマンスに近い、スケールが大きい方の鑑賞体験なのかもしれませんね。
石田 
海外で演劇を見る時、もちろん分からない言語で喋っている俳優を見る事になるんですけど、やっぱり面白い演技は面白いんですよね。そのうえ、上手さも技術も分かるんですよ。ものすごく高い技術の研鑽があるんです。海外では演技を体系付けた学問がある、それを肌で感じます。
__ 
言葉が通じないからこそ、営々と築きあげてきた表現の学問の体系を感じたと。
石田 
そこで僕なんかが意識するのは、日本の演劇史の初期に新劇の人たちが作り上げたものの凄さなんですね。今から考えたら「わざとらしい」演技なのかもしれない。テキスト自体が話し言葉じゃないから。スタニスラフスキーシステムを元にリアリズムを追求していたのが、今の時代の僕らにはそのリアリズムが分からない。でも、ある意味では、文語体で書かれたセリフをどう音声言語化するかという技術だったと思うんです。それを、個人の性質に合わせて身につけていくんです。シェイクスピアの作品を上演するにあたって、そのことが必要な事だったんだということを実感しました。

タグ: 新劇と「出会う」


野蛮な劇場

__ 
地点「コリオレイナス」。改めて、見所を教えて下さい。
石田 
このコリオレイナスという戯曲は日本じゃ全然人気ないんですけど、面白く仕上がっていると思います。若い人はシェイクスピアに触れた方がいい。演劇に興味がある人は特に。
__ 
というと。
石田 
演劇史に歴然とあるもので、ずっとついて回るものだからです。俳優の仕事って、他者が残した文字言語を自分の身体を通して音声言語化する事だと思う。でも、シェイクスピアが書いたセリフは簡単には言えないんですよ。だから、喋れるように戦わなきゃいけないんです。
__ 
形式化してはいけないという事ですか?
石田 
いや、ちょっと違います。たとえば古典の戯曲を自分の日常生活に置き換えれば喋れるじゃないかという意見もある。でも、それが書かれた当時の言語で喋れなければ、自分の仕事が出来た事には決してならないと思うんです。僕は圧倒的に、他者の言語で書かれた戯曲に惹かれました。これはどうやったら喋れるのかと。それは俳優である自分にとってとても大きいテーマです。
__ 
シェイクスピア戯曲と戦っている石田さんがいるという事ですね。
石田 
今回、アルティ ではグローブ座と同じく3階席まで作って上演します。グローブ座が面白いのは、明らかに1階のヤード席が舞台と同じレベルで扱われていた事なんです。1階の観客の目線は舞台の高さと同じぐらいになるんですが、2階から見ると、ヤード席の無数の頭と舞台が同じ高さに見えるんです。まるで、舞台の延長のように。
__ 
それはとても面白いですね。
石田 
で、これまたセリフの話なんですけど・・・学生の頃シェイクスピアを読んでいてこんな長い独白をどうやって喋ればいいのか分からなかったんです。2、3行で済むようなセリフを、例えをいくつも使って2、3ページ使って説明してるし。じきに根本的な事に気がついたんです。これは観客に向かって喋ればいいんですよ。何で先生はそれを教えてくれないんだろうと思いましたね。プロセミアム形式の劇場が成立したときから「第四の壁」が出来た事にされていて、何故かその壁の向こうからは見られていない事が前提になってたからなんですけど、グローブ座にはそんなもの無いわけですよ。言ってしまえば野蛮な劇場です。
石田 
2階の観客はヤード席と舞台とのやりとりを演劇の一部として鑑賞し、ヤード席の観客もそれを分かっているから、俳優とのやりとりに楽しみを見いだしたりする。それはやってても楽しい部分ですね。しかも、Globe to Globeではシェイクスピア劇をオリジナルに近い環境で上演するというテーマの企画でした。シェイクスピアの戯曲にはそうした側面があると僕は思いますし、他でもないグローブ座で確認出来たのは貴重な体験でした。今回はヤード席も設定するので、見に来た人にその一端を感じてもらえればなと思います。

タグ: 第四の壁


演劇のやり方、はじめ方

__ 
石田さんがお芝居を始められたのはどのようなきっかけがあるのでしょうか。
石田 
元々映画が好きで。中学生の頃になると夜中にTVを付けて映画を見てたんですよ。本当は女性のおっぱいが見たかったからです。まあ色気付いてきた年頃なので。深夜の映画を見てたのもおっぱいが映るからでした。
__ 
当時は19時から普通にありましたね。23時からはギルガメッシュナイト、11PM。単発の企画モノもありましたね。
石田 
夜な夜なこっそり起きて見てました。もう少し大きくなってから分かったんですが、そのころ見てたのがATG(日本アート・シアター・ギルド)配給の映画だったんです。最初はおっぱい見たさで見てたんですが、いや最初から最後までおっぱい見たさでしたけど。一つだけ、おっぱいじゃない印象のシーンがあるんです。
__ 
というと。
石田 
東陽一さんの『サード』という映画で、部屋をバーンと開けたら峰岸徹がベッドの上にいて、背中の入れ墨にクローズアップするというシーン。その映像を鮮烈に覚えています。なんじゃこりゃ、って。そういう、強烈な印象の映像がいくつもあって。それからしばらく経って、ATGの映画を借りてみていたらいつか見た事のある映像にいくつも突き当たったんです。これもこれも、昔深夜に見たことある!って。人の臭いとか存在感が、僕の中に残っていたんです。
__ 
俳優業は、すでに始まっていたんですね。
石田 
高校生の頃に、市の財団がやってる演劇教室に参加してたんですよ。週末に稽古して、年度末に公演するという。そこでは男が僕一人だけでした。それが最初の演劇体験かな。稽古では、延々と『ロミオとジュリエット』の稽古やってましたね。何が面白いのか分からなかったし、恥ずかしかったなあ。
__ 
そこから桐朋に?
石田 
そういう学校があると聞いて、でも何が面白いのか、どうやればいいのか分からずに続けてたな。
__ 
ご自身で俳優術を発見してから、変わりましたか?
石田 
というよりは、演劇のやり方ですね。セリフのしゃべり方というわけではなく。こうやったら演劇好きになって、続けていきたくなるよ、というのは誰も教えてくれないよね。そういうものって教えられないんじゃないかな。それから、学校出て10年くらい新劇の劇団に入って、三浦に会って地点を旗揚げして京都に来て。その時々で色々考えはあったけれど、全部タイミングですね。

タグ: 夜の共犯者


質問 鉾木 章浩さんから 石田 大さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、鉾木さんから質問です。「大阪の演劇について、どう思いますか?」
石田 
僕、不勉強で、こっちに来てからあまりみて回ってなくて。エンターテインメント性の強い劇団が多いという事は聞いています。
__ 
そうですね。もっとこう、芸術を使って真理とかの追求を行うよりは、人間同士の繋がりを実現していく感じなのかなと。人間系のアプローチが多い印象はあります。
石田 
人情話?
__ 
そうですね。
石田 
でも、落語とかだと人情噺は、東京の方が多いらしいですね。

舞台上で「何かあるぞ」という予感

__ 
これからの目標は。
石田 
地点で活動していくのは前提として、傑作を作りたいですね。
__ 
傑作とは何を指しますか?
石田 
みんながこれから演劇を作る上で意識されるものです。「地点はあれを作った」と、事あるごとに思い返されるような、ベケットの『ゴドーを待ちながら』のような作品です。
__ 
私にとっての傑作とは、その時代のその劇団にしか作れない作品と、時代の気分と観客の認識が一致し、それ自体が力を持った時空間の事を指します。演劇は時間と空間を使える唯一のメディアで、その中で行われるアジテーションによって、観客の認識が一致すれば、誰もがみんな、それが傑作だと分かると思います。
石田 
その場で何かが生まれる瞬間ね。今傑作とされているものは、本物だから残っているんでしょうね。
__ 
これまでいやというほど演劇は上演されていて、しかし全てが本物の傑作として残っている訳ではない。しかし、世界は傑作を求めている。
石田 
圧倒的なものには憧れるよね。長年やっていると、舞台上で「何かあるぞ」という予感はある。色んな要素が、その時代や環境によってあるんでしょうね。
__ 
「何かある」とは? 予感ですか?
石田 
うん、本番でも時々あるんですよ。舞台の上で抜き差しならない空気になることが。何ものにも代え難いもの。20何年やってますが、鳥肌が立つなんてものじゃない。アレはねえ・・・。幾度か体験したんですけど、やっぱりそういう凄いものを作らないと意味がないですね。

タグ: 傑作の定義


チェック柄の鍋敷き

__ 
今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントを持って参りました。どうぞ。
石田 
ありがとうございます。クリスマスプレゼントですね。嬉しいです、なかなか貰えませんからね。
__ 
大したものではないですけどね。
石田 
(開ける)鍋敷きですか。いいですね。お洒落ですね。色も、僕の好きな緑です。


わたわたする日々

__ 
今日はどうぞ、宜しくお願い致します。築地さんは最近どんな感じでしょうか。
築地 
最近はちょっとわたわたしてます。努力クラブの公演が近づいてきたので。それと同時進行して、市川タロが3月に横浜で上演することになったので、その辺りのことをしています。
__ 
市川タロさんの「デ」。横浜に行くんですね。
築地 
はい。STスポットです。平日なんですけど。是非来てくださいという感じです。__お忙しそうですね。
築地 
昨日は大阪で、受付。でした。
__ 
そう、築地さんは当日制作に入られる事があるんですよね。あれ、いつ知り合いになったんでしたっけ。多分、「とまる。」の広告でメールしたのが最初でしたっけ。
築地 
あの時はありがとうございました。
__ 
いえいえ。こちらこそ、広告を出させてもらい、ありがとうございました。
とまる。
京都の小劇場の情報を専門的に扱うフリーペーパー。季刊(4月・7月・10月・1月)。劇場紹介記事、演劇公演のスケジュール表なども。
努力クラブ
2011年3月に佛教大学劇団紫で団長をしていた合田団地と立命館大学劇団西一風で座長をしていた佐々木峻一を中心に結成。努力クラブ5「旅行者感覚の欠落」を機会に京都産業大学劇団ACTで主幹をしていた無農薬亭農薬と喜撃名詞が入団。現在団員は4名である。公演のタイトルをよく誉められる。できるだけ言葉を大事にしたいなあと思っている。人からはよく不条理だといわれる。僕ら自身はナンセンスコメディだという自覚がある。人が持っているネガティブな部分を陽の目に晒してそれを面白がりたい。魂を震わしたい。それからあえてチープ感を忘れないようにしているよう。良いチープ感を狙っている。まあ、簡単に言えば、うわあって感じの団体です。うわあっていうところが面白いと思うのです。(公式サイトより)
努力クラブ5 旅行者感覚の欠落
公演時期:2012/12/7~10。会場:元・立誠小学校 音楽室。
市川タロ
劇作家。演出家。

高田ひとし、tabula=rasa、田辺さん

__ 
築地さんがお芝居を始めたのはいつごろからなのでしょうか。
築地 
大学に入学後、初めて劇団西一風を見てからです。高校の頃は多趣味で、好きな事をいろいろやってたんです。大学に入ったらそういったサークルを見まわってたんですけど、全体的にチャラチャラしているように思って。演劇部も全て見たんですが、西一風が一番好みで。高田ひとしの問題作でした。
__ 
どんな内容でしたか。
築地 
性的なシーンがあったり、紙皿いっぱいの生クリームを女優にぶつけたりとか。
__ 
荒れてましたね。
築地 
荒ぶってましたね。
__ 
大学卒業後、tabula=rasaですね。
築地 
はい。でも、tabula=rasaは終わっちゃったんですよ。高田が東京にに行ったので。もう一度、高田・前田・築地の3人でやる事はあったとしても、tabula=rasaの活動としては“おしまい”という形になったんです。
__ 
築地さんが制作を続けているのは、どうした理由があるのでしょうか。
築地 
元々私は西一風からの流れで照明と制作をやっていて、tabula=rasaが“おしまい”になった時点で色々と考え、制作に絞りました。
__ 
制作には、例えばどのような楽しみがありますか。
築地 
うーん、やっぱり目標を達成した時ですよね。それと役者さんのサポート。世話焼きをするのが好きなんですよね。世話焼き欲が満たされるというか。炊き出しをする時に、お腹の調子が悪い俳優さんがいたらメニューを変えたりとか。
__ 
素晴らしい。私も炊き出しをしたことはありますが、自分の好きなものを作ってばかりでした。築地さんは世話焼き2.0ですね。
築地 
いえいえ。でも、本格的に制作に絞ったのは今年からなので。これまでは自分の劇団制作と兼任して、という形だったんですが、これからはプロデュースなどについても学んでいかないとなと。
__ 
なるほど。
築地 
田辺さんが下鴨車窓の「王様」の時に手伝いで呼んで下さったりして、意識は高まったと思います。いつまでも当日制作ばっかりではだめなので頑張らなくちゃ。
tabula=rasa
京都を拠点に活動する演劇のカンパニー。2009年に高田ひとしを主宰に設立。活動は、いくつかの連続的なシリーズを並行的に上演するスタイルを取る。(公式サイトより)
下鴨車窓
京都を拠点に活動する劇作家・演出家の田辺剛が主宰するユニット。(活動紹介より)
下鴨車窓#7「王様」
公演時期:2010/12/16~2010/12/23(京都)、2011/1/29~2011/1/30(広島)。会場:アトリエ劇研(アステールプラザ多目的スタジオ)。

さつまいものポタージュ

__ 
田辺さんと言えば、先程「Tea for Two」見てきたんですけどね。Aチームを見てきました。
築地 
Aチーム!イッパイアンテナの阿部さん、良かったですよね!あの自然体な感じ。
__ 
そうですね。で、劇団ソノノチチーム限定の築地さんのスープ。めちゃくちゃ美味しかったです。あのふわふわな、クリーミーな感じが。
築地 
ホントですか。ありがとうございます。あれ、カンタンなんです。野菜と牛乳とコンソメがあったら出来るんですよ。あとちょっと玉ねぎを使ってます。
__ 
作り方を伺っても良いでしょうか。
築地 
野菜を蒸して、適量の水と一緒にミキサーにかけてペーストにして、コンソメと一緒にZipLockに入れて凍らせて、それを溶かして牛乳と混ぜたら出来るんですよ。私が劇場にいなくても仕上げが出来るような工夫をしました。野菜の甘みが出るようにしました。
__ 
あれは料理になっていましたね。Facebookで築地さんの料理の写真がアップされてたりして、楽しみです。何故、築地さんはそんなに料理が上手なんでしょうか。
築地 
いやいや趣味です。自炊の延長です。
__ 
あ、そうなんですね。
築地 
貧乏なんで(笑う)安くて美味しいものが出来るように、手間を惜しまずにやってますね。
__ 
料理に対する勘を感じるんですが、それはどこから。
築地 
実家で、母に教わったんですよ。母が若いころ保育士をやっていて、女の子は料理が出来てなんぼ、と。小学校一年の時にキレイな卵焼きが作れたんですよ。
劇団ソノノチよりみち2(劇団ソノノチ+トランポリンショップ)「Tea for Two」
公演時期:2012/11/6~25。会場:一坪シアタースワン。
イッパイアンテナ
同志社大学の学生劇団「同志社小劇場」のOBを中心として、2007年11月に旗揚げされた演劇団体。主な演目はコメディとコント。劇場を気持ちよく走り抜けるライブ空間にすべく日夜活動している。(公式サイトより)
劇団ソノノチ
中谷と北海が大学在学中に4年間所属していた劇団テフノロGを卒業後、2008年に社会人劇団として集団を再結成。メンバーはそれぞれにジャンルの異なった自身の作家活動や制作活動をおこなっているため、その得意分野を生かした舞台表現に今後注目が集まる。人と時間の繋がりを大切にしながら継続的に作品発表の場を持ち続けることを目標にしており、舞台表現とアート・デザインの複合性とその「これから」を探る(劇団名もこの「これから(その後)を探る」にちなんでつけられた)。(公式サイトより)

タグ: クッキングの話題 自然体