やっていく、という感じ

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか。
野木 
攻める・・・。考えた事もないです。とにかく、来月の公演の準備をしているので。攻める。全世界が敵だという気分になる事もあるんですけど、攻めるという発想はないですね。
__ 
戦略的な意味合いではない。というか、一回一回の公演を戦っている。
野木 
考えた事もなくて。やっていく、という感じです。

タグ: 今後の攻め方


ツリーのガラス細工

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
野木 
えっ。いいんですか。
__ 
もちろんです。どうぞ。
野木 
何かしら。(開ける)すごい。季節先取り。いいですね。ありがとうございます。かわいいー。

タグ: プレゼント(インテリア系)


ぐうたららばい『観光裸(かんこーら)』

__ 
今日はどうぞ、宜しくお願い致します。糸井さんは、最近はどんな感じでしょうか。
糸井 
こちらこそ、よろしくお願いします。私は普段、FUKAIPRODUCE羽衣という東京を中心に活動している劇団の作家・演出・音楽他をやっていまして。この度、京都で作品を上演するにあたって「ぐうたららばい」という個人ユニットを立ち上げまして。
__ 
KYOTO EXPERIMENTのフリンジ企画、「PLAYdom」での参加ですね。タイトルは「観光裸」という。
糸井 
はい。この半年、打ち合わせ等で何回も京都に来ています。作品の製作は終わっていて、実はいま上演期間なんですよ。
__ 
京都、いかがですか。
糸井 
居心地がいいというか、便利な街なのに、ちょっと通りを入ると静かな路地があって風情を感じたりと。素敵ですね。町のみなさんが、迎え入れる事に慣れてるんでしょうね。
FUKAIPRODUCE羽衣
2004年女優の深井順子により設立。作・演出・音楽の糸井幸之介が生み出す唯一無二の「妙―ジカル」を上演するための団体。妖艶かつ混沌とした詩的作品世界、韻を踏んだ歌詩と耳に残るメロディで高い評価を得るオリジナル楽曲、圧倒的熱量を持って放射される演者のパフォーマンスが特徴。(公式サイトより)
FUKAIPRODUCE羽衣
女優の深井順子が主宰するFUKAIPRODUCE羽衣(以下、羽衣)の座付作家・演出家・糸井幸之介。彼がこのたび、個人ユニット「ぐうたららばい」を旗揚げし、初の京都公演に挑みます。(以下略)(公式ブログより)
ぐうたららばい『観光裸(かんこーら)』
公演時期:2012/10/18~21。会場:元・立誠小学校 音楽室。

タグ: カオス・混沌 ユニークな作品あります メロディ


高校演劇部時代

__ 
糸井さんがお芝居を始めたのはどのような経緯があるのでしょうか。
糸井 
凄く前なんですが、高校の演劇部から始めました。中学は帰宅部で、明るい学生生活が送れなかった反省があって。何となく演劇部に見学に行ったら、先輩達が装置を作ってまして。その内の一人の先輩が金髪で長髪で(校則に反していたんですが、役作りという事で免除だったそうです)。ロック好きの元・中学生としては、そんな人がジョン・レノンとか掛けながら大工仕事をしているのに惹かれたんですね。これは面白いんじゃないかと思って。それが間違いの始まりだったんですね(笑う)。
__ 
なるほど。ほぼ偶然だったんですね。
糸井 
それまで人前で演技するとか、演劇に興味があるわけでは全然無かったんです。
__ 
高校演劇部時代。どのような部活動でしたか。
糸井 
老舗の厳しい演劇部だという事が入部後に後々判明しまして。新劇や不条理演劇の既成台本を、超厳しい顧問に竹刀で小突かれながら稽古する日々でした。
__ 
体育会系だったんですね。
糸井 
とにかく先生が恐ろしかったですね。でも、やっている内にその、演劇の魅力に気づくようになりました。
__ 
初舞台は緊張しましたか。
糸井 
いや顧問がとにかく恐ろしくって、顧問に止められない本番というものが凄く楽だったという記憶があります(笑う)。
__ 
その後大学でも演劇を学んだとの事ですが。
糸井 
高校の演劇部で深井さんと同期だったんです。大学に入っても同期でした。実は深井さん唐組が大好きになっちゃって。僕は怖くてとても入れなくって・・・。学生劇団も作ったんですが、卒業と共に離れていって・・・僕も一旦辞めて、改めてという事で深井さんが主宰で羽衣をやり始めたという流れです。それから、大体6、7年ですね。

タグ: 役作り=身体から入る 反省Lv.1 新劇と「出会う」


素敵と逆の方向性

__ 
FUKAIPRODUCE羽衣の作品について。私は実は「15 minutes made」で拝見しているんです。「浴槽船」という作品でした。それは15分間、お風呂の素晴らしさを歌と踊りで表現するという作品でしたね。ショックでした。これは私がこれまで見てきた舞台作品と一線を画しているなと思ったんです。
糸井 
はい。
__ 
こんな事を言うのはきっと、インタビュアーとしては失格だと思うんですが・・・それを拝見した時、私の中に強烈な拒否反応が起こったんですよ。文脈や構造を読み下すのが通じないというか、そういうのじゃないんですよね、きっと。
糸井 
はい。
__ 
だから、受け入れられなかったんです。今考えると、作品とは構成されているものだという前提で私は生きていたのが、(私にとっては)そうではないものを目にして、驚いたんです、きっと。しかし反面、憧れを抱いた筈なんです。
糸井 
凄く分かります。僕の性格や性質もあると思うんです。前置きとか説明とかはナシで一気に音楽と歌で歌いあげていくからですね。
__ 
きっと、羽衣の価値は男の子的な「面白さ」ではないんだと思うんです。展開そのものが持つ面白さではないんです、きっと。俳優が出てきた瞬間から、彼らが変質するわけではけしてない。むしろその存在のまま高まっていく。そこにあるのは観客を啓発する展開や物語ではない。
糸井 
言ってみれば単純になってしまうんですが、その人の存在感というか。羽衣の場合は役作りとかそういうのは一切ないんですね。「何か素敵じゃないのは、あなたが素敵じゃないからだ」という事になるんです。色んなパターンはあるんですけど、俳優さんの個性が発揮されない作品もあるんです。そうした作品は個人的には好きな作品だったんですが、集客も芳しくなく。
__ 
なるほど。
糸井 
作品の作り方には毎回悩んでいます。僕の世界を全面に押し出す作品もあれば、単純に俳優さん達が楽しそうに舞台で演じている作品もあり。それが客足にも響くので・・・。「耳のトンネル」は配役があり、評判も良くて、それでこりっちの賞も頂いたり。手応えはもちろん感じたんですが、それよりも、創作のやり方についてもっと考えないとな、と思ったんです。

タグ: お風呂 役作り=役者に刻む 実験と作品の価値


空気の中で探して

__ 
この度結成した糸井さんのユニット「ぐうたららばい」。羽衣とは違ったコンセプトがあるのでしょうか。
糸井 
方向性を変えてみようとしています。ちょっとアダルティなんですよね。会話のシーンが多くて、声を張り上げて歌うのでもないし。でも、終演後には、いつもと同じようになったなあという感触があります。
__ 
同じ感触を掴んだ?
糸井 
表面を変える試みをした事により、逆に、いつもと同じ何かが浮かび上がってきたんですけど・・・うーん、どう言えばいいんだろう?言葉で中々説明出来ないですね。
__ 
糸井さんのイメージ、ムードになったという事でしょうか。
糸井 
それも探しながら、なんです。僕が追求したい価値というのも、終演後の空気にあるような気がします。

タグ: コンセプチュアルな作品


質問 ウォーリー木下さんから 糸井 幸之介さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、ウォーリー木下さんから質問を頂いて来ております。「今まで人から聞いた、一番ムカつくエピソードは何ですか?」
糸井 
なんだろう。うーん、あまり人から聞いた話を覚えていないという・・・(笑う)。誰かが痴漢に遭った話ですかね。特に、大切に思っている異性が痴漢の被害に遭ったとかはむかつきますね。

おじさまとキレイな女性

__ 
これまでお話を伺っていて、羽衣では俳優の初期衝動を特に大事にしているのかなと感じましたが・・・
糸井 
もちろん気持ちは大事なんです。でも、「段取りとかじゃないんだ、やるぜ!」って感じではまるでなく、意外と稽古は真面目にやっているんですよ。勢いのあるシーンでも、綿密に詰めてるんですね。それがあんまりお客さんには伝わっていないというか、分からないみたいで。勢いだけみたいに思われてしまっているかもしれませんが稽古は大切です。
__ 
もちろんです、「愛死に」の映像も、浴槽船も、物凄い稽古の量を感じました。もしかしたら、初期衝動云々というのは、糸井さんの戯曲の書き方について言うべきだったのかも。
糸井 
そう、そうだと思います。
__ 
糸井さんが素晴らしいと感じた、お風呂の素晴らしさとか愛とか恋とか死についての純粋な感動が次から次へと溢れだすという。
糸井 
そうですね。今回のぐうたららばいの作品も結局はそうなんです。とはいえ、もちろん歳を取ってしまうので成熟して衰えたりしていくんですよね。むしろそれを先回りしている面があるかもしれません。でも、中学生の頃のような衝動は今まで続いているんです。
__ 
今の私には、そういう「溢れ出す」作品が凄く豊かなような気がします。その時間とか空気に浸り続けられるというのは、きっと、絵画の鑑賞体験に近いと思うんです。好きな画家の個展だと、本当に1時間は見ていられるような。
糸井 
その体験に対してちょっと躊躇を感じるお客さんもいて。そこまでずっといるというのが辛いというのがあるのかもしれません。これは正確に統計を取った訳ではないので、僕の印象に過ぎないんですけど、羽衣の作品を好きと仰ってくれる人の傾向を考えると、けっこうおじさまとキレイな女性、みたいなパターンが多いのかな。
__ 
おおー。
糸井 
分からないですよ(笑う)でも、愛とか恋とかに浸れる方には面白いかもしれません。多少論理的に考えるのを面倒くさいと思ってきたおじさまには「まあいいんじゃないか」と思って下さるのかも。

タグ: 段取リスト


探す

__ 
糸井さんは、今後、どんな感じで攻めていかれますか?
糸井 
自分の性質がまずあって、そうして作った作品を、論理的な事がどうしても気になるお客さんには受け入れられないというジレンマがあるんです。そうした時に(ああ、僕の作品は多くの人には受け入れられない、合わないんだ)ってなるんじゃなくて・・・
__ 
ええ。
糸井 
出来るだけ、自分の方向性とお客さんの楽しみが重なった部分。それが普遍的な価値を持つものであったらいいんじゃないかと思うんです。それを目指して作らないといけないんじゃないかと。羽衣は出演者も多く集まってくれるし、華やかなパフォーマンスも出来る。それは僕のタチと逆方向なのですが、それらが高い次元で違和感なく結びつくようなものがあると思うんです。それが出来るかは分かりませんが。
__ 
簡単じゃないんでしょうね、きっと。これは理想論かもしれませんが、マーケティングしたら無くなってしまうものがあるんですよね。それを探ろうと例えば統計を取って、結果が裏付けられた瞬間に消えるものがある。それは、創作者に眠っている未知の部分が消える瞬間かもしれませんね。
糸井 
マーケティングで、「こうする方が喜ぶ」というのはすぐ想像出来るんです。でもそれを鵜呑みにしたり、色んな絡みを自分が飲み込んで、振り回されてしまうかもしれない。でも、自分がやりたい事も、お客さんが本当に見たい事も、素直に入っていく何かがあるんじゃないか。
__ 
お客さんも、パターン化されている訳じゃないですしね。

タグ: 今後の攻め方


子供用カスタネット

__ 
今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントを持って参りました。つまらないものですが・・・。
糸井 
ありがとうございます。開けてもいいでしょうか。
__ 
もちろんです。
糸井 
(開ける)おお、かわいい。素晴らしい。可愛いですね。ありがとうございます。
__ 
お子さんようのものらしいです。
糸井 
3歳になる子供がいるので、嬉しいです。


分岐した

__ 
今日はどうぞ、宜しくお願い致します。10月!そろそろ秋ですね。
木下 
そうですね、なんか、秋っぽさというもの無いですよね。昔はもっと秋が充実していた気がするけど、最近は短いような。これは良くない傾向やわ。
__ 
そうかもしれませんね。今は、ウォーリーさんはどんな感じでしょうか。
木下 
最近は次回公演「グルリルの稽古と執筆が始まっていまして、それが頭の八割を占めています。後は、神戸の三宮のフラワーロードでパフォーマンスイベントがありました。ハプニング系のパフォーマンスが10箇所以上で同時に起こるイベントで。
__ 
見に行きたかったです。ご多忙のようですが、例えばどのような時にしんどさを感じますか?
木下 
一番しんどいのは本を書く時ですね。イベント演出の時はたくさんの人と顔を合わせて打ち合わせするんですが、実はそれはあまりしんどくないですね。でもそれは、30代の頃に変わったんです。
__ 
というと。
木下 
それまでは一人で家で本を書くのが楽しくてしゃあなかったんですけど、今は、他人と打ち合わせする方が楽しいですね。でも基本は、しんどいという事自体あまり思わないです。失礼な言い方かもしれないけど、周りがどんどん動いてくれるような仕組みを作る仕事なので。だから、ウォーリーの現場はしんどいとよく言われるんです。たぶん、自分がいかに動かないで済むようにするか、という。うん、僕は・・・仕組みを作るのが好きなのかもしれない。
sunday
大阪を拠点に活動する劇団。第二期・劇団☆世界一団。作・演出はウォーリー木下氏。
THE ORIGINAL TEMPO
2002 年に演出家ウォーリー木下を中心として設立されたThe original tempo(TOT)は、海外での作品発表を目標とし、台詞を一切使わないパフォーマンスグループとして活動しています。TOT では、国内で評判のよい作品を海外で発表するのではなく、はじめから海外で発表することを目的として、ポータビリティや言葉の問題などを意識し、作品に反映させていくことを活動の主題としています。(公式サイトより)
グルリル
公演時期:2012/11/9~11(大阪)、2013/1/11~12(東京)。会場:ABCホール(大阪)、パルテノン多摩 小ホール(東京)。

タグ: 分岐点 ユニークな作品あります イベントの立ち上げ


「見て見て!」と耳打ち

__ 
仕組みを作るのが好きとは。
木下 
僕は小さい頃から、自分が前に出て何かをするタイプではなくて。誰かに「こういう事したらみんなびっくりするで」って耳打ちしたりとか、誰かにやってもらうのが凄く好きなんですよ。自分がやると上手くいかない。格好悪いし、バレバレだし・・・。サプライズ誕生日とか、あるじゃないですか。
__ 
ありますね。
木下 
演劇の現場だと、演出家が怒りだして事前の打ち合わせ通り誰かと喧嘩し始めて、いきなり電気が消されてロウソクの点いたケーキが出てくるとか、僕がやるとバレるんですよね。実行犯じゃなくて、やり方を考えるのが楽しいというのが子供時代からあります。
__ 
それがウォーリーさんの初期衝動だった?
木下 
僕の初期衝動。そうですね、そうだと思います。自分で上手くこなせるのなら自分でそうしていたと思うんですけど、不器用だし顔にも出るし。世の中それが上手い人がいるんですよ。そういう人をちっちゃい頃から嗅ぎ分ける力もあって、人を集めてきた部分はありますね。
__ 
なるほど。
木下 
喋っていると、色々思い出しますね。子供の頃、テレビで面白いのがやってると台所で料理している母に「おかあさん、これおもしろいよー」って言うんですよ。でも手が放せないから「うるさい」って言われるんです。それが、すっごい腹立つんですよ。なんでこんな面白いのを見に来ないんだ、と。
__ 
それは凄く分かります。
木下 
でも、その時の体験が今思うと大事だったんだなと思いますね。20代の頃の彼女もそんなだった。世の中の人は、僕が面白いと思うものをそれほど興味ないんだなって事が分かりました(笑う)。だから、自分が何かを作るときも、基本的にはそれほど興味を持たれないと思った方がいいと。やっぱり、「見て見て!」だけじゃ駄目なんです。

タグ: サプライズ・ドッキリ ウォーリー木下


濾過と雫

__ 
そう、「見て見て!」だけでは確かに足りないんですよね。では、どのような姿勢がアピールする際に必要なのでしょうか。
木下 
例えば演劇のチラシ。僕がお世話になった西田シャトナーさんにも、チラシに「面白い」という言葉を使ってはいけない。それを決めるのは観客なんだから、って教わった事があって。宣伝方法はとにかくたくさん考えないと見に来てくれないんですね。もしかしたら、「面白くない」と書いた方が見に来てくれるかもしれないぐらいです。
__ 
分かります。観客の体験を決めつけてしまうというか。「なんたら冒険活劇」とか「歌と音楽とダンスのコラボレーション」なんて書いてあった時点で見に行く気がなくなりますね。
木下 
(笑う)チラシの段階でどれだけパフォーマンス出来ているかという話だと思うんですね。チラシを作る時に考えて、たくさんのアイデアをボツにして、そうしてやっと出来たアイデアこそが「面白そう!」と思わせるんですよ。逆に言うと、そのトライアンドエラーの堆積は、その密度が高ければ高いほど、見えるんですよ。チラシがつまんないと、まあ本番でもそんなに面白くはないだろうなという気がする。
__ 
チラシでパフォーマンス出来ているぐらいのチラシ。そうですね、具体的にどういうプロセスを経てきたかは全く分かりませんが、どれだけの研鑽があったかはおおよそ伝わりますね。
木下 
分かりますよね。
__ 
見た瞬間に分かると思います、というか、見た瞬間にしか分からないかもしれない。
木下 
それで言うと、オリンピックの4年に一回というシステムって良く出来てると思うんですよね。
__ 
そうかもしれませんね。4年間の濾過装置を濾して出てきた、その結晶というか雫が、「位置について」の時に。
木下 
一瞬、見えるんですよね。
__ 
その姿が一番美しくて、きっと演劇も同じで、舞台に出てきた瞬間の俳優の姿が「位置について」してるか・捧げてるか、最初の姿で誰の目にも分かるんですよ。そうでないと、良くない。
木下 
捧げてない。今の話を聞いて思ったのは、文脈の話に切り替わりますけど・・・演劇って、いつの間にか文脈を尊重し始めていると思っていて。これは僕の解釈だから、現実とは違うんだけど。
西田シャトナー氏。
劇作家、演出家。

タグ: コラボレート 人脈・コネクションの大切さ


知らなくても面白い

木下 
80年代から90年代にかけての小劇場ブームは、もちろんそれまでの文脈があって生まれているんだけど。その中は、割とむちゃくちゃだったと思うんですよ。ロックの全盛期ぐらいには。
__ 
ええ。
木下 
でも今は演劇を見に行くとき、ある程度文脈を分かっていないと楽しめないという傾向があると思うんです。それは善し悪しだと思うんですけどね。さっきのオリンピックの話だと、あのマラソン選手は以前故障していたとかフィギュアスケートの選手同士のライバル関係とか。それを知らなくてももちろん楽しめるんだけど、知っているともっと楽しめるというのが文脈の価値で、それが演劇の世界で尊重されていると思うんですよね。
__ 
そうですね。
木下 
だけど僕は、「こんな路上なんかで、こういう演劇をやっていて、良く分からないけど面白いな」と思えるものが、必要なんじゃないかなと勝手に思っています。
__ 
姿、という事ですね。
木下 
文脈を作り変えていくような特殊な人たちというのがいて、でも僕はそこにいなくて。今の時代で言うと平田オリザさんやチェルフィッチュで、そこから延びてきた文脈込みで面白いなあって言って見る芝居があるわけですが、そこに至る文脈に無頓着で把握していない人にも、一滴の雫として面白く見せられるか。そこは役者だと思うんですね。その場にいる人たちなので、文脈に関わらず、見せられる。そういう事なのかなとは思います。
平田オリザ氏
劇作家。演出家。

あの時代(1)

__ 
ウォーリーさんがお芝居を始めたのは、どのようなきっかけが。
木下 
大学一回生の頃に新入生歓迎公演を見たのが最初です。チラシを配ってた女の子のセンパイが可愛かったからで、「入学早々これかよ大学ってすげえな」って。興味が無かったのに観たらそれこそ凄く面白くて。その時既に、本を書きたいなと思っていたんですね。
__ 
それほど、衝撃的だったんですね。
木下 
始まって暗転して、蓄光テープのかけらがキラキラ一面に光っているのを見たとき、いきなり宇宙やとびっくりして。照明が点いたら役者がいて、「いつの間に~!!」て。なんなん、このトリックはって、こんなんやる事になるんやと。その時期、バンドやるか映画やるかで迷ってたんですが、映画部の作品見たら面白くなくって「3年ここにいたら最終的にこの映画作るんや」と思ったらいやになって。バンドは友達がいなかったので諦めて。
__ 
みんなそう言いますよね。私もそうです。何で、大学入ってから最初に観た芝居ってあんなに面白いんでしょうね。そして、「今見たらきっと面白くないんだろうなあ」と言ってみる。でも、個人的にはもう一度見てもきっと。
木下 
うん。面白いんじゃないかなって思うよ。平林さんも同じ回見てたよね?
平林 
あんなにテンションが高いものを見る機会が、それまでに無かったからじゃないかな。
木下 
そうそう。これぐらいの距離感でわーっと台詞を言われて、もう怒られてるんじゃないかと。
平林 
あれはショックでしたね。
__ 
高校を出て間もない時期の体験。二度とは味わえないんでしょうね、きっと。
木下 
また、音楽がね。かっこいいんですよ。演劇部に入ってから、こんな凄い・・・イギリスってあるんやと。高校出るまで福井だったからね。それがストーンローゼスとか渡されて、そりゃカッコいいスゲエ!ってなるよね。
平林 之英さん
sunday。この日はパンフレット編集のためにご同席して頂きました。

タグ: 学校の新入生歓迎


あの時代(2)

__ 
学生劇団を経て、世界一団の旗揚げ。その経緯について伺っても良いでしょうか。
木下 
学生時代に二本、自分で作演出をやったんですね。一本目が「DORAEMON」っていうテント芝居で、冬のポートピアアイランドで上演しました。二本目の「冒険王」は灘区民ホールの柿落とし公演で、学生劇団なのにそういう話が来て。それが結果的には3時間の芝居になって、本番の1週間前に台本が2/3しか出来てなくて、しかも小道具もセットも滅茶苦茶多くてみんな徹夜して作業と稽古して。やっと台本を書き上げて明日から仕込みという時に僕が熱出ちゃって稽古に行けなかったんですよ。下宿先で39度の熱で一人でうんうん唸って、その時正直死ぬ感じがあったんですね。でも、「何かしないと死ねないな」と思ったんですね。その時演劇をやっていたので、演劇をやろうと決めたんです。熱にうなされながら。
__ 
はい。
木下 
翌日ホールに行って、最初に会った人に「劇団作んねん」と宣言しました。ちなみに芝居は・・・。灘区民ホールは公共施設なので退館時間が厳しいんですね。21時とか21時半とか。19時開演で3時間の芝居、途中で幕が閉まったんです。その時僕は演劇をやる決心がついていたので、ホールの人や勝手に幕を降ろした舞台監督さんとかにブチ切れしてました(笑う)。他の学生劇団からも人を呼んでいたので、なんなら出番の無かった人もいて、すごく、みんなショボンとしていました。後で知ったんですが怒ってるのは僕ひとりだった。あの時は凄かったな。元ピスタチオの宇田さんとかいましたね。平林さんはいたんだっけ?
平林 
僕は舞台監督でしたね。
__ 
えっ。
木下 
平林さんが幕を降ろしたの?じゃあ。
平林 
ま、何となく、周りがそういう雰囲気になって・・・。
木下 
(爆笑)そう、役者の方が、もうやめようという空気になっていたらしいんですよ。
平林 
本番の日まで、最後まで通してなかったんです。
木下 
やばいな、強制終了する演劇て。セットも危険だったし、宇田さんは10メートルの高さのキャットウォークでずっと待機して、縄ばしごで宙づりになるんですよ。外務省の役人だみたいな、つかこうへい芝居みたいな演技をして。でも降りれないから、一回上に登って、袖から出てくる。
__ 
野生的な時代でしたね。
木下 
けが人も続出したよね。あるシーンで、セットのパネルが奥に倒れたら、そこは海だ!「冒険に行くぞー!」っていう演出を付けていたんですが、手前に倒れちゃって。一番背の高かった女優の子の頭で止まって、ブチ切れされたな。
__ 
(笑う)そんな過去があったんですね。
木下 
いや、ひどいですね、世界一団の初期の頃なんて。生意気だったし、評判も悪かったし。その後に旗揚げ公演をしました。作演は声を掛けた友達でした。僕が声を掛けたのに、旗揚公演が終わってから聞いたんです。「どうする?僕はまだやりたいねんけど」「いや俺は世界中で橋を作りたいねん」(ん、何を言ってるのか?)その子は土木関係の学部で、「橋を作る会社に入る、俺はこの劇団をお前にやる」とか言って。僕が作ったんだけどなと思ったんですが。第二回からは、僕が作演出です。

タグ: 徹夜 半野外劇


あの時代(3)

木下 
今考えてもむちゃくちゃな時代でしたね。僕、中之島で遭難した事があったんですよ。台風の日にテント芝居を見に行ったら浸水が酷くて、役者の血と雨水が膝の高さまで来てたから観客全員「く」の字になって足を持ち上げてたら公演中止になって、その公演の舞台監督さんが「こっちだ!」ってラストシーンで使う予定だったであろうスクリーンを開けたら、そこは海だったんですよ。
__ 
ええっ。
木下 
中之島無くなってるんだよ。焦って、舞台美術のベニヤをバンってはがして「これに乗ってください!」って言われて、お客さんを5人ずつ乗せて・・・これ新聞沙汰やん、そうしたむちゃくちゃな演劇を見てきているから、そういうものなのかなという思いこみはあるのかな。
__ 
今はもう、そんな演劇をやってもすぐ事件になっちゃうんでしょうね。
木下 
怒られるぐらいの事をした方が、演劇の価値は上がるんじゃないかとかは思いますね。でも、今はネットがあるからなあ。ちょっと何かがあったらみんな書いちゃって、叩くやろうなあ。
__ 
正義感がありますからね。
木下 
何なんだろうね、ああいうのはね。もっと笑った方がいいと思いますね。

タグ: 「く」「くっ」 会場を使いこなす


ターニングポイント

__ 
私はウォーリーさんの作品はいくつか拝見していると思うんですが、その中でも格別に印象に残っているのが、京阪電車とArtTheaterdbとの企画、「サーカストレインです。
木下 
あれもめちゃくちゃでしたね。
__ 
ちなみに私は先頭車両に座っていました。そこで、白塗りの少年が妹と別れを告げるというシーンがあって、そのシーンでホームにたまたまいたおばあちゃんとの対比がやたら絵になっていたり。
木下 
そういう感想は嬉しいです。あれも京阪電車とはやり合いましたね。当然、全裸とか無茶はNGで、でも男肉duSoleilは上半身裸だし。外の人が事件だと思うような事はしてほしくないという規制はありましたね。上の人をどう説得するか、それを考えるのは好きです。それはOSPFをやって鍛えられたところがあります。あれも、何十団体も出ている中にはアウトなのもあるんですよ。一番最初の神戸でやったフェスティバルはゴキコンが出てたんです。当然、行政からお金の出ている仕事なので、例えば子供に見せられるかどうか、過激な作品を見てこれがアートなのかという話になってくる訳ですよ。でも、行政の線引きも曖昧なんですね。そこで僕は、その線引きを「くっ」て広げてあげて面白さを伝えるのが僕の仕事だと思っています。この人たちは普段こういう表現をしているけど、この下品さはひっくり返すとアートになっていて、具体的にこういう状況だと価値を持つんですよって。アーティストにも乳首に絆創膏を貼ってもらったりして、間に入って調整するんです。それは環境づくりにおいて大事だと思うんですよね。普段アートを見ない企業とか行政の人って、分かんないんですよ。それを丁寧に批評を含めて説明するというのは、自分の創作を守るためにも大事だと思いますね。扇町の時の、むちゃくちゃをしたいという気持ちが今も残っているのかもしれないですね。あの頃は熱さしかなくて言葉を持っていなかった。
__ 
それはきっと、大変なお仕事ですね。「くっ」と曲げた部分に面白いものが存在しうるよ、という事が分かってもらえたら嬉しいですよね。
木下 
そうなんですよ。多分、僕の作品作りはOSPFやオリジナルテンポを始めてから変わったんですよ。というのは、普段の生活の中にも面白い事はたくさんあるんですよ。街を歩いてたり、電車に乗っている時にでも。それを演劇とかパフォーマンスにする事で、世の中の視点が増えるんじゃないかと。そうした作品を自分の劇団だけでやるのではもったいない。例えばフェスティバルでも出来るし、パブリックスペースでも出来るし。だから、そう思っている自分がプロデューサーをしないといけないんだと思うようになりましたね。
__ 
世の中の視点を増やすとは。
木下 
普通に生きていたら当たり前の事をスルーするんですよね。それは、あんまり生きている事にはならないんじゃないか。歳取ってどんどんそうなっていく自分がいて、やばいぞと思ったんですね。きっと。とはいえ、満員電車に詰められて通勤する会社員達も、あの中で何とか楽しみを発見しようとしているんですね、これも歳取ったから分かったんですけど。そういうお手伝いをしたい。それが爆発的に出来たのが「サーカストレイン」だったんだと思います。
__ 
一回限りの公演でしたし、すごく貴重でしたよね。最後に車掌さんが「次は100年後にお会いしましょう」ってアナウンスして。凄く面白かったです。
木下 
あの作品は自分にとってもターニングポイントでした。あれ以降、パブリックスペースでのパフォーマンスが多くなったと思います。路上って未知ですよね。韓国でやったパフォーマンスは路上で寝起きするというものだったんですが、見てる人が携帯で写真を撮ったり、一緒に寝そべってくれたり。能動的な観客っているんですよ。そうか、僕はお客さんを能動的にしたいんだと思う。
__ 
お客さんを能動的にしたい。能動的な観客が、パブリックスペースには存在しうる。
木下 
しうりますね。Instagramでみんないい写真を撮る、いわゆるアーティストなんじゃないかと思う訳で。それが、演劇作品でも同じアプローチを取れるんじゃないか。そう思いますね。もちろん、お金を取って見せる芝居とは線引きも必要かもしれないですね。
アートエリアB1 鉄道芸術祭 vol.0「サーカストレイン」
公演時期:2010/11/14。運転区間:京阪電車「中之島駅」(14:07 発)→「三条」駅(15:35 着)[往路のみ]。走る電車の中でダンスパフォーマンスが楽しめるプログラム「ダンストレイン」。今回は大阪から京都を駆け抜けます。総合アートディレクターとしてウォーリー木下氏を迎え、ダンスだけでなく、音楽や演劇などジャンルにとらわれない表現を取り入れた、ストーリー性のある内容でお届けします。(公式サイトより)
男肉duSoleil
2005年、近畿大学にて碓井節子(うすいせつこ)に師事し、ダンスを学んでいた学生が集まり結成。J-POP、ヒップホップ、レゲエ、漫画、アニメ、ゲームなど、さまざまなポップカルチャーの知識を確信犯的に悪用するという方法論のもと、唯一無二のダンスパフォーマンスを繰り広げている。
OSPF(OSAKA SHORT PLAY FESTIVAL)
演劇祭。2005年~07年に松下IMPホール(大阪・京橋)で4回(05年は春夏2回)開催。

タグ: 「く」「くっ」 路上パフォーマンス ターニング・ポイント


質問 伊集院 聖羅さんから ウォーリー 木下さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた方から質問を頂いてきております。笑の内閣という劇団が「非実在少女のるてちゃん」という芝居を大阪で公演したんですが、その主役の「のるてちゃん」役であり、千秋楽を最後に演劇を辞めて就職活動に専念する伊集院聖羅さんからです。
木下 
その人からの質問?なんかすげえ面白いな。辞めていく人からの質問。
__ 
「何で演劇を続けているんですか?」
木下 
あはははははは。そうですね、儲かるからですよ。それも楽して儲かるからです。バレるかな、この嘘は。

質問 北川 麗さんから ウォーリー 木下さんへ

__ 
中野成樹+フランケンズの女優であり、この間ロロの「LOVE02」で京都に来ていた北川麗さんから。海外での公演が多いという事で頂いた質問です。「海外にネットワークを広げた理由は何故でしょうか。」
木下 
単純な答えになっちゃいますけど、やっぱり色んな観客に見てほしいからですね。もう一つは、僕は旅行が好きなんですけど、趣味と仕事をカップリング出来たらなと思って。だから、旅行ライターでもいいんですよね。
__ 
たくさんのお客さんに会えていますか?
木下 
もう七カ国くらい行ってます。どこも観客は変わらないという事が、実感として分かったのは大きいです。面白い事は面白いし、つまらない事はつまらない。大阪でも同じ。それは安心感がありましたね。
__ 
なるほど。
木下 
それから、僕らの文脈と海外のお客さんの文脈は違うという事が分かったのは大きいです。海外に行く時僕らは日本人であること再度意識するけど、ナショナリティとグローバリズムは相反するものじゃなくて、いっしょくたにして作品を作る必要があって観客もそれを求めてるんです。
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観客も出会いたい。
木下 
会場に来てくれるという事は、それを求めているんですね。グローバリズムを持っている事にほっとしてくれて、でも日本人であることの良さも分かってくれるし。辛口な事を言うなら、海外に行った途端それまで触った事もない刀でちゃんばらする事は、僕は違うと思っています。それは、見せ物として消化されているだけで、僕ら自身を捧げている訳じゃないんです。なるべく、そうじゃないものをやらないといけない。

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