スイカのスリッパ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
中村 
ありがとうございます(開ける)スリッパ?
__ 
スイカにもかかわらずモコモコのスリッパという、矛盾に満ちた感じが気になって。
中村 
もうちょっと涼しくなってきたら使います。ありがとうございます。
__ 
夏の気分を忘れないで使っていただきたいです。

ママママ③『AUGUST』

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、井上向日葵さんはどんな感じでしょうか。
井上 
よろしくお願いします。最近は7月のママママの稽古と、12月の卒業制作公演の稽古で忙しいです。
__ 
ママママは7月の公演、「AUGUST」ですね。稽古は今、どんな感じでしょうか。
井上 
今は結構、エチュードを中心に進んでいっています。すごく頭を使う毎日です。もちろん使いすぎても良くないので、そこが難しいですね。合田さんと渡邊さんとは今回はじめましてなのですが、色んなお話をして打ち解けることができたので、安心して稽古に臨めています。お二人に世代の話をされるとついていけなくなったりするんですけど、そのギャップが今回の面白いところの一つだと思います。
__ 
この座組は本当に面白いですね。渡邊さんも久しぶりに役者ですからね。異色中の異色キャストだと思います。コント公演ということで、今回の作品のメインはやっぱり笑いなんでしょうか。
井上 
それも難しいところで、コントってそもそも何だろう、と。
__ 
というと。
井上 
この間のエチュードをしていて、全員がすごく爆笑したシーンがあったんですね。その瞬間にはたしかにコント感があったんですけど、木之瀬さんが考えているのは、それとはちょっと違うのかなあとか。
__ 
木之瀬さんの演出されるコント作品。確かに、笑いそのものが着地点ではないんですよね。もちろん最終的にはコントなんだけど、そのコントで無ければ見えなかった意識や感覚が明らかにある。演劇演出は、情景を通して外界に現象させるものだ、ということがとても良く分かる例なんじゃないでしょうか。
井上 
そうですね。これからどんな作品に仕上がっていくのか、楽しみです。
ママママ③『AUGUST』
忘れてたこと、思い出せるかな。

#ママママ的夏フェス
#上演は7月

[作]志村耕太朗
[演出]木之瀬雅貴
[出演]井上向日葵、合田団地(努力クラブ)、渡邉裕史

[日時]
2018年 7月
27日(金)19:30
28日(土)14:00/18:00
29日(日)14:00
30日(月)14:00
※受付開始・開場開演の30分前。
※車椅子でのご来場は、事前にご連絡ください。
※上演時間は約80分を予定しています。

[会場]
KAIKA
京都市下京区岩戸山町440番地江村ビル2F
http://www.fringe-tp.net/kaika_access.html

[料金]
一般 2800円
25歳以下 1800円
高校生 500円
中学生以下 無料
(日時指定/全席自由)
※未就学児の入場はご遠慮ください。
※25歳以下、高校生以下のお客様は当日受付にて、学生証または年齢のわかる書類をご提示ください。
【チケット取り扱い】
カルテットオンライン
https://www.quartet-online.net/ticket/august2018
予約受付中!

《Get it! AUGUST》
6月上旬より京都市内中心に配布予定の本公演チラシ(B3ポスターサイズ)をGETすると…
なんと通常価格より300円OFF!!
配布情報はママママSNS/Webにて随時お知らせ致します!
1.本公演のチラシをGet itしよう!
2.公演当日、受付でLet’s提示!
3.各種料金からもれなく300円OFF!!
(例:一般2800円→2500円)

[スタッフ]
舞台監督:北方こだち
照明:吉津果美
音響:辻村実央
フライヤーデザイン:坂本俊太
イラストレーション:江田陽子
制作:金井美希
制作助手:大塚侑子
協力:努力クラブ、ソノノチ
共催:NPO法人 フリンジシアタープロジェクト
主催:ママママ

suppoted by KAIKA


[お問い合わせ]
mmmm.conte@gmail.com

触れてしまう

__ 
最近演出について、ちょっと考えることがあって。例えば会話劇を舞台の上で上演した時に、観客の意識の中で起きている「その会話劇」の世界を浮き上がらせる具体的な手段を演出だ、と定義する事が出来るのかな、と思っていて。で、その手段は一切合切、自由なんですよね。それは素晴らしい事であり、ちょっと恐ろしい事でもある。お客さんの脳裏に描き出されるものをどうとでも出来るわけだから。ママママの前回公演「二の次」は、そういうところを意識していたんじゃないかなと思っています。意欲的な公演だったと思います。
井上 
今回、稽古中に木之瀬さんのお話を聞いていて、木之瀬さんは、今回の作品でつくり出したいものとか、そのものとお客さんの関係性まで、明確に考えているんだなあと感じています。夏ならではのこととか、夏と聞いて思い出すようなことは人によって違うと思うんですけど、自分がしまい込んでいる記憶みたいなものに自然と触れてしまうみたいな、そういう作品になるような気がしています。

存在と方向

__ 
ママママの今の悩みどころを教えてください。
井上 
「二の次」の時もそうだったと思うんですけど、今回も今のところ、断片的なシーンがいくつかありまして。そのシーンによって役が変わっていくので、瞬時にどう演じ分けるか。断片のその前後は想像するしかないので、それが難しいですね
__ 
高度に作られている作品の場合は、どんなに場面がハイペースで切り替わっていてもついていけると思うんですよ。細部に悩みながら作っているということは、その努力が積み上げとなるから、やっぱりいいものになると思うんですけどね。
井上 
そうですね。やっぱりそこは、最後まで手を抜かずにやりたいなと思います。共演者のお二人とは歳が一回り離れているので、積み重ねてきたものの違いを日々見せつけられています。演劇としても人生としても。そこの差についていくのが必死というか。合田さんは存在感がすごいし、どんな場面でも一瞬で空気を作り出すんです。渡邊さんには知識の多さとか頭の回転の速さに驚かされます。そんな中でどうやって自分らしさを出していくかということに悩んでいます。
__ 
既に存在感は出してると思いますけどね。楽しみです。

勢いについて(1)

__ 
木之瀬さんのやっていたマサチューセッツという団体が、非常に面白くて。コント公演だったんですけど、観客席が全員ずっと笑っていました。
井上 
実は、12月の卒制なんですが、コントをする予定なんですよ。こちらはもう、逆に笑いしか考えていないという。とにかくお客さんを笑わせて、元気になってもらいたいんです。
__ 
おお、そうなんですね。
井上 
はい。でも稽古をしていて、笑いを一から生み出すことがいかに大変かを痛感しています。だからお客さんをずっと笑わせていたというのは、正直とてもかっこいいなと思います。
__ 
見てて鳥肌が立ちましたね。短いコントだけをずっとやってるんですけど。勢いがすごかったんですね。勢いという、演出できない部分があって。
井上 
勢い。そうですよね。
__ 
勢いとは何か。元気の良さ、だろうか。
井上 
勢いって、一人だけじゃ出せないものだと思います。座組み一同の信頼関係があって初めて生まれると言うか。
__ 
その信頼が、どこに向いてるかというのも大事なのかもしれませんね。その企画がどれだけ価値があるのかとか。

質問 中野 守から 井上 向日葵さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、中野劇団の中野守さんから質問を頂いてきております。「ご家族に演劇活動を認めてもらうためのコツはありますか?」
井上 
うちの家族は結構応援してくれていて、だから答えになるかわかりませんが。私自身、演劇を始めたのが大学からなんです。それまではずっと吹奏楽をやっていたんですけど、いろいろあって高校3年生の時に突然、役者になりたいと両親に伝えました。普通に進学するつもりでいたので、なぜ突然役者なのかって両親も驚いたと思うんですけど。今では公演をほとんど観に来てくれていますし、この間出演した東京の公演も京都から観にきてくれました。コツというか、やっぱり、自分なりに本気で演劇をやったというのが一番なのかな。大学から演技を始めるのは正直遅いと思っていたから、とにかくやれることは全部やろうと決めていました。ダンス公演にも挑戦したり、ことあるごとに演劇を観に行ったり。だんだん学外の公演などにも出演する機会が増えて来て、自然と、役者への本気度が家族にも伝わっているのかなと思います。

東京に!

__ 
江古田のガールズ「極楽」。東京公演でしたね。フットワーク軽いですね。どういう経緯だったんですか?
井上 
友達きっかけで江古田のガールズを知って、そしたらオーディションを開催するという情報が入って。今年中に一度は東京で舞台に立ちたいと思っていたこともあって、12月の公演を観に行ってみたんです。衝撃を受けました。とにかく面白かったんですよ。絶対にオーディションを受けようと。これまでほとんど京都の演劇しか知らなかったから、私にとっては東京での第一歩だったんですが、それがこの作品で良かったなと思います。
__ 
素晴らしい。
井上 
そこに集まった人が良くてですね。良い人すぎて甘えてしまった部分もたくさんあるんですけど、また、どの方とも共演したいなと思える経験でした。
__ 
まだ拝見してないんですよ。
井上 
江古田のガールズは娯楽を目指していて、あんまり難しい内容とかではなく、頭を空っぽにして楽しめるんです。稽古とかをしてても、本当に馬鹿だなぁと思うような事を全力でやるんですよ。でもそれがかっこいいし、なにより観ていて元気になります。

一行の重さ

__ 
京都造形大学に入られたのは?
井上 
役者をやろうと思った時に専門学校に行きたいと親に相談したんですが、家の近くにこういう大学もあるぞと。
__ 
なぜ、演技をしたいと思ったんですか?
井上 
元々小学生の頃から、たまに学校の体育館で観る演劇が大好きで。それから中学高校と吹奏楽で舞台に立って、表現することで人を楽しませる事の魅力に気づいてしまって。実際に自分が演技をしたいと思ったのは、高校生の頃に観た映画やドラマがきっかけだったと思います。私は、面白い作品を見たら元気が出るんですよ。明日も頑張ろうと思える。一瞬でも辛いことを忘れたりできるじゃないですか。私もそうやって人に元気を与えられたら幸せだなと感じたんです。
__ 
ピッタリの職業だと思いますよ。奥の深い職業だと思いますので、これからも頑張っていってほしいです。
井上 
ありがとうございます。まだまだ、自分の力不足を感じてばかりです。これからも自分を高め続けないとな、と思っています。
__ 
どんな経験をしても、やっぱりどこかに登ってると思いますよ。怠けていたら何もならならないけど。
井上 
役者は、自分から動かないと何も成長できないというのは思いますね。何でもそうですけど。生活を怠けると、もろに演技の質が落ちちゃう時があって、ああダメだとよく自分に喝を入れ直しています。
__ 
セリフを一行を与えられたとして、そのセリフを喋る理由が「与えられたから」というのはもちろん意味のある活動ではなくて。でも、違うセリフを喋るのもだめ。じゃあどうやって台詞をしゃべるのかと言うと、色々なやり方があるけど、悩んだり迷ったりした結果のセリフの調子が、軽かろうと重かろうと、なぜかお客さんには伝わるんですよね。
井上 
そうですね。
__ 
その答えは明確に持ってるわけじゃないけど。
井上 
伝わるという事実はありますね。セリフ一行の重みと言いますか。文学座の鵜山仁先生のクラスで「この一行の台詞でお客さんから100円を貰えるように」と言われたのが印象的でした。一行単位で台本を読んだことがなかったので。どうしても物語を追うのに必死だったり、場面ごとの大まかな感情を読むのに必死だったりとか。その一行を、さらにはそのひと単語をどういう音で言うか、それだけで、そこまでに積み重ねたいろんなことがぐわっと変わるんだと知りました。気持ちだけでも、形や動きだけでもダメで、それらがバランスよくあることが必要でした。どうでもいいセリフというのはないんだなぁと。「どうでも良さそうに喋る」という演技は成立しても、どうでもいいセリフというものは実際にはない。忘れがちになりますけど。
__ 
そうやって作ったセリフには、絶対的な価値が宿るということですね。
井上 
すごく悩んだんです。その芝居は私の役が登場するところから始まったんですけど、何回やってもうまくいかなかったんですよ、最初は。せかせかと用事をしながら、家政婦役の相手を引っ張って振り回すという演技が、私には引き出しがなくて出来なかったんです。役柄を何も掴めずに、そのシーンが全く面白くない時期が続いて落ち込んでいました。でもある時にハマるようになったんです。台詞の気持ちの割合だとか、動きのタイミングとかを微調整していった結果、徐々にはまるポイントに近づいていったんだと思います。最終的には、最初の時期よりもずっとエネルギーのあるシーンになったと思います。観に来てくれた両親や友達に、最初、私だと気づかなかったと言ってもらえたのがすごく嬉しかったなあ。それが自分にとってはほぼ初めての演劇公演だったんですけど、いきなり、岸田國士というすごく考え甲斐のある作品に出会えて良かったと思っています。

勢いについて(2)

__ 
nidone.worksでの井上向日葵さんが素晴らしかったですね。「おにぎりパン!」の終演後に挨拶させて頂いたんでしたっけ。いや、nidone.worksこそが勢いがあると言えるでしょうね。
井上 
「チッハーとペンペン」を観た時から、実は凄く出たかったんです。あの可愛くてポップで、わくわくする世界観。その世界に入り込めて、子供も大人もみんな笑顔になれる作品なんて皆が理想とするけど、それをほんとに形にしてしまったというのが衝撃的で。皆に夢を与えるチッハーとペンペンがすごく羨ましく感じました。
__ 
松田ちはるさんと諏訪七海さんですね。
井上 
「おにぎりパン!」にはチッハー役を演じた松田ちはるも出演していたので、一番不安だった、劇中の観客とのコミュニケーションの極意を伝授してもらいながら稽古したのを覚えています。終演後にはとにかくお客さんからの反響を凄く感じました。嬉しかったです。
nidone.works
成長過程にいるこどもが おとなになることを、少しでもポジティブに捉えることができる作品づくりを目指しています。 メンバーは作/演出の渡辺たくみ、制作の加藤なつみを中心に、作品ごとにゆるやかなともだちを集めて活動中。舞台作品では、こども自らが表現することを後押しできるように、こどもたちが演者とコミュニーケションをとることでストーリーが進むよう構成しています。(公式サイトより)
「おにぎりパン!」
公演時期:2017/10/13~15。会場:京都造形芸術大学 人間館1階 カフェ横 展示スペース(春秋座側)。

これから

__ 
今後どんな感じで。
井上 
今まさにそれを悩んでるんですけど。今後も役者は続けていきたいです。舞台って、本当に人のつながりでしかないなあと思っています。京都の知り合いと東京の知り合いが知人同士だったという事があって、人と人とのつながりを身近に感じました。そういう繋がりを感じながら舞台を続けていきたいと思います。
__ 
色んな人のやり方を参考にされながら、悩みながらいけばきっとうまくいくと思います。

眼鏡のストラップ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。どうぞ。
井上 
ありがとうございます。(開ける)うわー。
__ 
稽古の時など、便利に使っていただければ。
井上 
使います。ありがとうございます。

中野劇団 第19回公演「代役」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、中野さんはどんな感じでしょうか。
中野 
最近と言うか、これまでずっと変わらずにやってる感じですね。仕事のことはあるんですが。
__ 
そして、次回公演の稽古の日々ですか。
中野 
もうそろそろ形にはなってきたので、自分的にはちょっとほっとしたところではあります。でもどっちにしてもギリギリなのはギリギリなので、残りの稽古の時間をうまく使って行ってきたいと思います。公演を打つたびに稽古時間が短くなっていく傾向があるので、自分の首を絞めながらも頑張っています。
中野劇団
中野劇団とは・・・

2003年に京都で旗揚げした劇団。
長篇の公演と短篇(コント)オムニバス公演と2つの形式がある。

緻密に張り巡らされた笑いの伏線を、波状的な笑いに昇華させ回収していくシチュエーションコメディを得意とする。

第17回公演『10分間2016 ~タイムリープが止まらない~』がCoRich舞台芸術アワード!2016で6位獲得!(公式サイトより)
中野劇団 第19回公演「代役」
「母が人工知能だと知らずに18年間生きてきました……」

作・演出:中野 守

日時:2018年7月14日(土)19:00
15日(日)14:00/19:00
16日(月祝)13:00/17:00
場所:インディペンデントシアター2nd

料金:前売2,800円、当日3,000円
学割前売1,500円、学割当日1,800円(要身分証提示)

チケット予約開始:2018年6月1日(金)21時

出演:
川原悠
延命聡子(以上、中野劇団)
青木道弘(ArtistUnitイカスケ)
河口仁(シアターシンクタンク万化)
是常祐美(シバイシマイ)
ほっぺふき子(i_design)
土肥希理子
北川啓太
高嶋Q太(後付け)
音声出演:真野絵里(中野劇団)

舞台監督:ニシノトシヒロ(BS-?)
音響:下田要(劇団熊タオル)
照明:真田貴吉
演出補:諸岡航平
宣伝美術:廣瀬愛子
制作:諸岡航平、三条上ル

協力:玉井秀和(劇団FAX)/ArtistUnitイカスケ/シアターシンクタンク万化
シバイシマイ/i_design/後付け/BS-?/劇団熊タオル/イズム/ライトアイ

笑いを取るために

__ 
「代役」が、14日から始まりますね。どんな作品になりそうでしょうか。
中野 
まず、今回はシチュエーションコメディという事で。これまでの作品ではあまり、本格的なシチュエーションコメディという形では作ってこなかったんです。ちょっと独特なものでやっていたのが、今回は一番王道のシチュエーションコメディなのかなと思います。
__ 
シチュエーションコメディというのは、一つのシチュエーションに限定したコメディということですよね。
中野 
僕の解釈で言うと、状況で笑いを取るという。今回はそこを純化させた笑いになると思います。なんだかんだでこれまで、違う引き出しを使ってきたので。
__ 
状況というのはもちろん、チラシに書いてある「母が人工知能だと知らずにこれまで18年間生きてきました」ですね。
中野 
どういう風に展開していくかというのが一つのミソになっていると思います。
__ 
稽古の様子をうかがうに、一つのことを追求する作り方を貫いているんだなと思っていまして。
中野 
台本を書いて、それをそのまま演技をしても、どうしても自分の中では消化できないところが出てくるんですよね。自然な会話を求めていく上で、一つシーンが出来たら、次はどういうふうに展開していくかをその場で考えると。終盤の頃は先が見えない状態が続いていて、重い空気の中で稽古していました。申し訳ないと思いながら。
__ 
今はいかがですか。
中野 
いや、それは抜け出しました。でも自分の中ではまだまだなんですけどね。

積み上げる

__ 
いますごく面白いことに気づいたんですよ。演劇の稽古を一つのプロジェクトとして見た時、例えば観客に対してある認識を与えるにはいくつかの内的な構造を順序立てて与えないといけない。それを例えば3週間の稽古で作ったとして、次の4週目では、それを前提とした構造を立てる事が出来る。そう考えると、演劇の成果物って本当に姿形がなく、実に内的なもので、だけど積み上げられるものなんですよね。
中野 
なるほど。でも次の稽古までに誰かが穴を見つけてくるということもあるので。自分では進んだと思って、嬉々として稽古場に臨んでも、根本を覆すようなダメ出しをされることもあり、稽古が1時間進まなかったこともあるんですね。一歩進んで二歩下がるみたいなことが本当にあるんですよ。
__ 
ジェンガみたいですね。
中野 
でも今回は、自分の運か引きがいいのか分からないですけど、場数を踏んでいる役者さんがいらっしゃって、大崩れをしないで済む提案をしてくださる方もいて。本当に助けていただいて。大助かりでした。もちろん欠陥を見つけてくださる方も大変ありがたいんですよ。本番に入ってそれが見つかるのが一番ダメなので。そして稽古場で火消しの方法を見つけて下さる方はもう本当にありがたいです。よくこのキャスティングであってくれたな、と。今回も助けられてばかりです。
__ 
そういう綿密な稽古の結果がとても楽しみです。

守りに入らない

__ 
今の悩みどころ教えていただけないでしょうか。
中野 
脚本を書く時間の確保がとても難しいです。独身時代は2時間ぐらい書く時間は持てたんですが、家庭があるとそういうわけにはいかなくて。質の高い執筆をしないといけなかったりするのですが、ちょっと協力をしてもらっています。でもやっぱり十分な時間を確保できていないので、そのしわ寄せが稽古場に行ってしまって。
__ 
「代役」、目標はありますか。
中野 
公演をするときはいつも、はっきりした形ではないんですが、小さくてもいいので何かの挑戦をしています。自分の引き出しだけで勝負をしないようには毎回心がけています。今回は、新しい笑いの生み出し方を一つでも作れないかと。中野劇団の芝居を期待してくださっている方に応えるのはもちろんですが、新しいことがしたい。本当に、笑いを取る以外のことをしてこれていないんですよね。受け身になってしまうと後退が始まってしまうので、ちょっと前のめりになってようやく横ばいかな、と。
__ 
同じことを毎回できるというのももちろん大切だと思うんですけど、新しいやり方に挑戦するというのはそれだけで価値がありますからね。
中野 
それをしないと現状維持もできなくなってしまう。
__ 
刺激がないから。
中野 
守りに入ると退化ととられてしまうかもしれない。危機感を持つようにしています。
__ 
新パターンですね。
中野 
なかなか出てこないんですけどね。今までに出てきたものをどう組み合わせるか、どう上手く取り上げられるか、というところがポイントだと思うんですけど。誰かがやるかもしれない、というところで気持ちが萎えないように。
__ 
お金を払ったお客さんにとって、価値があるものが手に入るのは当たり前なんですよ。でも、新しい見方を示してくれるものだ、と思ってくれたらいいんですけどね。
中野 
野球でいうと、ギリギリストライクというのが、自分にとっては金脈があるところなのかなと思ってます。変な揶揄になっちゃうかもしれないですけど、その作り手にしかわからないものを作るのは、やっぱりちょっとコメディとは違うと思うので。個々の人が前提として持つ価値観から、でも、既成のものでは納得できない人にも勝負をしかけていく。「ありそうで無い」、「ちょっと無い」。
__ 
それがとても上手に組みあがってるものだったら良いですよね。
中野 
それは本番の、お客さんの反応を見ないと分からないことなので。その答え合わせまでは自分が面白ければいいというところでしか確認のしようがないので。

質問 今村 駿介から 中野 守さんへ

__ 
前回インタビューさせたいただいた、第三劇場の今村駿介さんから質問です。「舞台に立っている時の一番の喜びはなんですか?」これは役者向けの質問なんですが、当時は次が誰か決まっていなかったので・・・
中野 
そうですね、やっぱり、自分のことを見てもらっているという事で、その空間を支配しているというところでしょうね。自分が、学生時代にちょろっと舞台に立っていた時の経験からなんですが、全てのお客さんが自分に集中して、どんな動きをするか、何を言うのか、とかを見てくれるというのが興奮すると思いますね。理屈じゃなく、本能的な。自分が話をするときに、目の前の人間が自分を見てくれている、認めてくれている、目をキラキラさせて見てくれているというのは自分の存在の再確認にもなりますし。
__ 
なるほど。
中野 
忘れられていない、存在している。大勢の演劇をやっている人の大前提だと思います。
__ 
見られている事の本能的な喜びを得ながら、それでも台本通り、稽古通りに上演するというのはものすごい業だと思うんですよね。
中野 
本番に、お客さんに来てもらいたいがための稽古だと思うので。面白くなかったら人は離れていきますので。

世代を越えるコメディ

__ 
しかし稽古を重ねても、お客さんがふと目を離して重要な演技を見逃したら、悔しいですよね。お客さんの目線までコントロール出来る訳じゃないから。
中野 
他の演出家さんがどう考えているかは分かりませんが、僕の場合、ちょっとは客席のコントロールを試みてはいます。「笑い待ち」というのが分かりやすいと思います。笑いを取ったすぐ後に次の台詞を言っても聞こえなくないので、少し間を取るとか。または、少し会話を聞かせたい時はお客さんに笑いを起こさせないようにする、という事もあります。ちょっとおこがましいんですけどね。
__ 
ああ、やっぱりそういう事はあるんですね。何となく思い当たります。逆に、お客さんの方も、ちょっと見逃したりしたとしても、展開に付いていこうとはしてくれますよね。その場で想像で補ったりはする。
中野 
そうですよね。見逃した演技の許容範囲にもよるし、物理的に見れない死角があるとかの場合もあると、お客さんの満足度も下がっていくとは思うので。
__ 
ええ。
中野 
逆に言うと、どれだけこちらのレベルを上げても、お客さんは100%を受け取る事は出来ないんですよ。本番で生きてくる演技は8割ぐらいだと思います。僕は。2割は台詞を噛んだり、その時の間が上手く行かなかったりとか。そこを見越して詰めていくしかないんですよね。
__ 
緻密な作品であればあるほど、見逃しても想像で補うのは難しくないと思いますけどね。
中野 
でもまあ、お客さんによって捉え方は全然違いますからね。もっと大きな括りで、若い人とお年のいった方で相当違う。後者に合わせると若い人が物足りない。僕らの場合は、両方向けの笑いを盛り込みます。大元の内容は、どの世代にも通じて、でも解釈はそれぞれ違う。全ての演目がそうだ、という訳じゃないですけど。いや、親に「分からなかった」と言われるのはショックですからね。
__ 
今回は、人類にとっては昔からのテーマなので、通じるとは思いますけどね。

10年

__ 
中野劇団の10年ぐらいを振り返って、自分達が変わった事とか、そういう点は何かありますか。
中野 
やっぱり、劇団員の多くが結婚して子供が出来て、というのが一番大きいです。元々、社会人をやりながら演劇をやろうというメンバーが集まっているので、やっぱり中々公演に参加出来ないメンバーもいるんですよ。僕は、メンバーが芝居をやりたい時にその時の公演に参加してもらえたらいいなと思っています。前回の「楽屋ちゃん」では、10年間出ていなかった、加藤祐一という旗揚げメンバーもいて。その間も劇団にはずっと名前があったんですけどね、でも彼が出演出来たというのはこれは中々面白い事なんじゃないかと思っています。仕事とか家庭を優先してほしいですね。芝居をやって不幸になるというのは元も子もないので。どちらも充実してもらって、芝居がしたいなと思ったら、すぐに合流してもらえる、というのが理想です。まあ、毎回のメンバーに負担が行くという事もありますけど。
__ 
いいやり方が見つかったらいいですね。

自分のキャパシティを越えた作品が出来ている

__ 
中野さんが、ずっと緻密な作品を作り続けられる理由は。
中野 
僕が中野劇団を作って間もない頃、三谷幸喜さんの作品を映像で見た時に変わったんですね。それまではナンセンスコメディを軸にしていたんですが、シチュエーションコメディを突き詰めていく面白さというのがあってですね。充実させていくと笑いの質と量が格段に違っていくんです。それはやっぱり追求しがいがあるし、その武器を研いでいきたいと思います。最初から、そういう緻密さに無意識に自分を置いているのかもしれません。作品のジャンルは毎回違います。サスペンスだったり、SFだったり。
__ 
なるほど。
中野 
何でしょうね、稽古の中盤を過ぎた辺りで、自分以外の参加者が作品の答えを出して共有していて、半自動的に組み上がっていく事もあったんですよ。すると自分のキャパを越えた作品が出来ている。例えば、「10分間2010」はそうでした。だから、その次の公演はそれを越えないといけない。次はそのプロセスが起こるように、土俵を何とか作って、それが起こるようにしていく、というのが最近の流れです。
__ 
そういう共有は、歓迎すべき事ですか?
中野 
一概には言えないんですが、イニシアチブを取れなくなる事は確かです。言ったら、影の監督制が始まってしまう事もあるので、虚勢を張って引っ張って行くことしか出来ないですね。脚本を書き上げるまでは。
__ 
そこが、中野劇団のもう一つの味だとも思いますね。脚本の横に、役者の味が。
中野 
役者さんがうちの舞台で新しい面を見せてくれると、凄く嬉しいですよね。

一作でも多く

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
中野 
そうですね、今後・・・明日どうなるか分からない状況なので。一作でも多く作りたいというのが、自分の欲求なんです。本当にそれに尽きます。コメディって35歳がピークだとよく言われていますが、それを10年ぐらい経ったんですが、まだ老化に逆らって、一作でも。