ズレていく演技の味

__ 
今回はとても色々な要素が絡まっている作品だなと思います。演劇的にというだけじゃなくて、テクノロジーを使っている上に、観客が参加する場を組み込ませているから、テンポがズレたりしたのが邪魔だと思ったり、ちょうど良かったりもする。どういうことかと言うと、大学関係者という政治的な身体と、演劇人という身体、そして役柄演技の身体が入り乱れて、オカルト的奇妙さが漂うまでに複雑なんですよね。稽古場ではそういうズレが意識して演出されているのでしょうか。
森谷 
まだテンポがあっていないだけだと思いますね。それは今後詰めていくんじゃないかと思います。
__ 
魅力的な生感・グダグダ感を意図的に残すべきなのか。それとも消していくのか。個人的にはいい味だと思いますので、このまま上演してほしいですけどね。
田中 
グダグダ感というのは、例えばキッカケが合わないということなんでしょうか。
__ 
それもそうなんですけど、バックグラウンドが全く違う人間たちの体の動かし方を政治的身体のありようとすると、それぞれのコミュニケーションのスレ違いが滅法面白いんですよ。その味がこの作品のテーマなんじゃないかなと思っていて。
田中 
その辺りは言ってましたね、植村さんとか。そこが上手く伝わったらいいんですけど、伝わらなかったらもったいないなと。
__ 
何て衛星らしい作品なんだと思いました。そういう賭けに出るのがね。

今回挑戦したい事と、演劇を始めたキッカケ

__ 
今回の作品で挑戦したいことはありますか?
森谷 
僕自身は、衛星の公演に出させていただくこと自体が初めてですし。所属していたACT以外の場所で舞台に出るのも3回目なので。挑戦というよりも、まずは自分を覚えてもらいたいと思います。
田中 
私は、今回の公演に出ること自体がひとつの挑戦ですね。
__ 
なるほど。次の質問。お二人が演劇を始めたきっかけを教えてください。
田中 
演劇を始めたのは中学校の頃からです。元々声の仕事がやりたいと思っていたんですが、隣りに住んでいた子が俳優事務所に入っていて、「演劇の勉強をしてみたら」と勧められて入ったのがキッカケです。
__ 
劇団ひまわりですね。
田中 
はい。今年の3月まで入っていました。
__ 
森谷さんは。
森谷 
僕は大学生から始めました。新歓でクラブに入り損ねて。学部の友達に「人が少ないから見学に来てくれないか」とACTに誘われまして。先輩が優しかったのと、元々僕は、演劇とはちょっと違いますかコントとか映画が好きだったので。そしてそのまま続けているという感じです。京都学生演劇祭のドラフト指名で蓮行さんに指名を受けました。僕はそこにいなかったんですけど後日連絡を受けました。

非日常演劇に参加するということ

__ 
ガリヴァー。個人的にはこれぐらい変わっていなければ衛星の作品だとは言えないと思ってるんですけど、演劇の良さを生かしたというわけではないなと思っている。かなりお客さんの解釈能力に依っているような気がする。ついていけないお客さんは退屈かもしれない。残りの10日間でその辺りを調整していくとは思いますが。ただ私はこのまま上演してほしいと思っています。この味を残して欲しい。まあ、面白さの価値基準が今までにないような、そんな作品だと思いますね。後半の10分で全てを間に合わせるみたいな。
森谷 
僕は演劇って、結構、何をやってもいいのかなと思っているのです。ACTで作るのはスタンダードな演劇なんですけど、初めての客演で参加した舞台が、本当に何をやってもいいという感じだったので。「スーパーマツモト2」という。自分が死ななければ何をやってもいいのかなと。そういう意味では今回は全然、演劇してるなと思ってます。
田中 
私もひまわりにいた時は、先生によって降ってくる台本が様々なのでびっくりすることはなかったです。ワクワク感は強いです。

質問 福井 裕孝さんから 森谷Aと田中沙穂さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、福井裕孝さんから質問をいただいてきております。「なぜ俳優を続けているのですか?」
田中 
私は演劇を続けようと思った時に東京に行くことは考えていなかったんですよ。ひまわりに入っていて、俳優の道の厳しさは身にしみて感じていたので。東京にとりあえず行くというよりは、今までやってきた場所で経験を積んで行きたいなと思っていたからです。個人的に大きい目標があって、それは衛星だったら叶えられるのかなと思っていて。
__ 
その目標とは何ですか?
田中 
大学生の時に東アジアについて勉強していまして、自分の勉強を活かして、日韓中で演劇を通した文化交流を促進していきたいと思っています。衛星だったらそれが実現できるじゃないかなと思っています。言語も喋れないわけではないので、自分の能力を活かしていきたいと思ってます。
森谷 
僕の場合は、ACTで色々やらせてもらった経験を通して、自分の起こした行動に対してお客さんがリアクションを返してくれたりするのがすごく気持ちが良くて。ACTでよくやっていたいたエチュードとか。好きだからですね。演じることが。
__ 
是非衛星にこだわらず、色々な所で舞台に立ってほしいと思います。

身体

__ 
今回はとりわけふわふわした芝居ですが、身体をどう持って行きたいですか?テンションを保ったりだとかそういう意味で。
田中 
今回のお芝居では二つ役をいただいているんですが、役毎に違ったテンションで動かしていきたいなと思ってます。
森谷 
僕は、今回の作品では仲間がいるときといないときでかなり違うので。一人だけの時はぼーっとしてるんですけど。後半はちょっと気が張りますよね。気は張ってますけど大事なところが抜けてるから、ああいう運命になってしまうんですけどね。

緊張してます

__ 
田中さんから森谷さんに何かありますか。
田中 
森谷さんとは同じ時期に入団した割にあんまりまだ仲良くなれてないんですよ。お互い忙しいのもあるし、私自身が人見知りというところもあるので。そうですね、これから上手く打ち解けられたらいいなと思ってます。宜しくお願いします。
森谷 
こちらこそ。本当に、未だに緊張するんですよ、KAIKAに来るときは。小脇にも長く居れないんですよ、あの静かな場所に入っていくのが。お疲れ様でしたと言って帰って行く時にも緊張しているので。
__ 
私もいまだに緊張しますけどね。衛星は、自分の領分で責任を持った仕事をやるのは当然で、その仕事に対して色々な立場で検討出来る人が評価されるんじゃないかなと思う。効率的に、だったり、後先や周囲の事を考えたり、予想したりだとか。つまり仕事の深さと同じく主体性が評価される気がする。

これからよろしく

__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
森谷 
とにかく自分のことを知ってもらうことですね。ACT自体が、あまり開かれていない山の上でやっていた劇団なので、まずは京都の方に自分の存在を知ってもらうことがやりたいことです。
田中 
私はもちろんお芝居が大好きなんですけど、さっきも言った通り文化交流の促進にも積極的に活動していきたいので。割とオールマイティにお芝居に関わっていきたいです。

林檎柄の手ぬぐいとビーフジャーキー

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
田中 
ありがとうございます。
森谷 
あ、これは!ビーフジャーキー。いいですね。ありがとうございます。
田中 
わー、手ぬぐい。可愛い。ありがとうございます。

インテリア

第1回 京都でコントやってます会 出展作品「モデルルーム」 撮影:築地静香
__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。演出家の福井裕孝さんにお話を伺います。最近はどんな感じでしょうか。
福井 
4月のコント公演が終わって、今は5月の公演の準備を進めています。
__ 
そう、「京都でコントやってます会」に出した「モデルルーム」が終わり、5月の公演は「インテリア」ですね。どんな作品になりそうですか?
福井 
当初は、これまでのクリエーションを踏襲するような感じでと思っていたんですけど、4月のコント公演で(総括じゃないですけど)それは多分やり切ってしまって。5月はどうしようと。同じことやっても仕方ないので。
__ 
ゴールが揺らいだ、ということですか。
福井 
そうですかね。今回は出演者の向坂さんとかなり近い距離でつくっていて。段々向坂さんが演出助手みたいになってきて、それがいいのかどうかわからないですけど、舵が行ったり来たりしているような気がします。
__ 
それは大局的に言うと、目的に向かって歩いているのか、迷っているのか。
福井 
いつもそうですが、作品の条件とか状況みたいな、大枠は最初に設定してしまっていて。今回で言えば一つの部屋、生活空間の中で一人暮らしの人が生活している様子をルーティンと言うか、反復して見せるというフレームがあって、それは変わりません。「人」と「物」と「空間」がどういう風に持続したり変化したりするのか、見え方の部分を試行錯誤しています。だからゴールの周縁で右往左往しているんですかね。
インテリア
INTERIOR

2018.5.17-20
trace|京都市

 インテリアは、人の生活する室内「空間」と、その空間を構成している家具や家電、装飾品といった「モノ」の両方を意味しています。寝室という空間を寝室たらしめているのは、ベッドというモノとそこで「寝る」意志と行動を示す人の存在のはたらきです。そこに位置する人やモノによって空間や状況は措定されていく一方で、措定された空間や状況に人の意志やモノの機能は従属しているようにも見えます。この相依的な関係を示すことから、演劇が生成される空間について考えたいと思います。この作品は、ある一人の「人」の私的な生活風景を再演出して構成し、上演とします。日常の地平から本来の「人」と「モノ」と「空間」の関わりを顕在化させ、これまで演劇が一方的に私語を禁じてきた「モノ」や、劇場によって隠蔽されてきた「空間」と新たに出会えることを期待しています。
[構成・演出] 福井裕孝 

[出演] 向坂達矢 金子実怜奈

[舞台監督] 長峯巧弥 [音響] 宇野愛生 [制作] 溝端友香 [会場運営] 高嶋Q太 [製作] 福井裕孝 [協力] 後付け 京都ロマンポップ解散中 劇団西一風

日時

2018年

5月17日[木] 18:00
5月18日[金] 14:00★/19:00
5月19日[土] 14:00 /18:00
5月20日[日] 14:00★

※受付開始・開場は開演の30分前です。
※上演時間は約70分を予定しています。
※演出の都合上、途中入場をお断りする場合がございますので、お時間に余裕を持ってお越しくださいませ。
★アフタートーク|終演後、ゲストの方をお招きして、トークを行います。
5月18日[金]14:00 筒井 潤氏(dracomリーダー/演出家/劇作家/俳優)
5月20日[日]14:00 山﨑健太氏(演劇研究/批評)

料金
一般|¥1,800 [+1order] 
学生・U-23|¥1,500 [+1order]
チケット取扱
webフォーム(カルテットオンライン)
https://www.quartet-online.net/ticket/interiorfukui

会場
[トレース]
trace
〒600-8834 京都府京都市下京区和気町4
http://trace-kyoto.com
第1回 京都でコントやってます会 出展作品「モデルルーム」
公演時期:2018/4/16~16。会場:人間座スタジオ。

同じ価値を持つ

努力クラブ コント持ち寄り公演『小騒動』出展作品『Penguindam』
__ 
福井さんの作品は「Penguindam」と「モデルルーム」しか拝見していないんですが、特に「モデルルーム」は観客の集合意識というものがテーマだったんじゃないかなと思っていて。観客は観客席において「学ぶ」という内的な作業をやっているんですよ、ずっと。それは観客それぞれで全然違うプロセスを辿ってると思うんですけど、それが同時多発的に起こると途端に一つの処理としてまとまるような気がしている。学校における教室、という共有体験の影響かもしれない。
福井 
観客の知覚の経験のことで言えば、「見る」ということについてはつくる上で慎重に考えているつもりです。「モデルルーム」もそうですが、「見られる作品」をつくるというよりも「作品が見えている状況」をつくる、みたいなことを考えています。大森荘蔵という哲学者が、本来視覚は主客二分できない経験だって言っていて、演劇だと見る/見られるみたいなことがありますけど、本来それは見ている観客自身をも含めた全風景が見えているというような状況なんじゃないかと。そういう意味では場所というのも重要な要素になってくると思っています。4月のコント公演は会場が人間座だったんですけど、まずそこで何が上演できるのかっていうところからはじめました。移動可能というかどこでも上演できるような作品ってあると思うんですけど、この場所で上演される意味とか必要性が別にないんだったら、それってそもそも上演される意味ないんじゃないんかって最近思うようになって。極論なんですけど。俳優が客席に何か働きかけたりライブ感を共有したりすることよりも、ここがどういう場所で、上演によって作品とどう呼応し合っているのか、っていうようなことの方が演劇が本来取り組むべきことなんじゃないかと思っています。
努力クラブ コント持ち寄り公演『小騒動』出展作品『Penguindam』
公演時期:2017/6。会場:アトリエ劇研。

時間軸の要求

__ 
人と物が同じレベルでそこにある、という視覚体験を届けたい?
福井 
それが目的というか、本来はそうですよねって。壁黒く塗って抽象化して、空間が際限なく広がっているイメージを与えても、壁そのものは俳優と同じく物量的にそこに在ってしまっている。当たり前なんですけど、単純にそういったことを認めるところから上演をはじめたいんだと思います。そこは何もない空間じゃなくて、何かがある場所なんだっていう認識や視野をお客さんにも求めたい。別にそこからでも演劇は実現できると思います。インスタレーションやパフォーマンスの類に傾倒せずに。
__ 
ちょっと思ったんですが、インスタレーションや彫刻作品とかだと、鑑賞の主体は観客であるため、その人に時間の主導権が握られていると思っていて。しかし演劇やパフォーマンス作品だと舞台上にそれが握られている。さらに演劇は、お話それ自身が持っている時間軸がその横にある。そのあたり、見え方の変化についての検討に援用出来ますか?
福井 
最近、演劇以外の美術や建築の分野に関心があって、最初はそういった文脈の考え方を演劇の中でどう再提示できるかみたいに考えてたところがあったんですけど、ちょっと引いて考えてみたら単にパッケージを変えただけで、それはインスタレーションでええやん、みたいなことが多分にあるんじゃないかって感じて。ジャンルに強くこだわっているわけではないんですが、演劇には演劇の特異性があるというか、観客と舞台、こことそこでの時間や空間の流れ方の相違であったり、上演っていう表示形式や構造自体に何か可能性があるんじゃないかと今は思っています。だからいずれそういう演劇の形式とか通念みたいなところに戻ってくるのかなと思っています。全然わからないですけど。
__ 
環境としての演劇にね。
福井 
僕はつくるとき基本的に現実の時間の流れにそのまま乗っかっているので、正直演劇の時間軸みたいなことはまだあんまり考えられてないんですけど。
__ 
ちょっと時間について私がこだわりすぎましたね。
福井 
いえいえ。
__ 
ただ、「Penguindam」では舞台と観客が同じ時間の上にあって、そこで観客が認識を発達させていくというのが面白かったです。
福井 
「Penguindam」はある意味音楽劇だったんでそうですね。時間のことはスピーカーに丸投げして、ふざけようと思っていました。

私とワンルームマンション

第1回 京都でコントやってます会 出展作品「モデルルーム」 撮影:築地静香
__ 
チラシの文章から推測したんですが、福井さんは空間における物の動きから、観客の認識がどのように反応するかというのを検証しようとしてるんでしょうか。
福井 
「モデルルーム」はそういうことに近かったのかもしれません。5月の「インテリア」はきっと動き方の質感が違うというか、人と物がただ同じ空間に位置しているということ以上に、生活者と生活品、所有者と財産みたいな関係があるので、「モデルルーム」では人と物がそれぞれ異なる、他者的な存在として出会うことからはじまるのに対して、「インテリア」は人も物も一つの生活のコミュニティに属しているところからはじまる。そういうすでに形成された人と物との関係が、生活の時間の中でどう変化していくように見えるのか、っていうことなんですかね。
__ 
前者のテーマは配置状況で、後者はその変遷ですね。
福井 
やりたいと思っていることは基本的に同じなんだと思います。このあいだ稽古場で向坂さんと「物も戯曲やな」って話していて。人に意味や情報を提供して行動とか振舞を要請する、人に演じさせるという働きを持っているという意味では戯曲と同じやん、と。それはアフォーダンスの理論に近いと思うんですけど、物の位置や配列、あるいは環境から相対的に関係が見えてきたりとか、そこに持続している何か状況が、一室の中で部分的に、あるいは全体的に転換していくというような事ができたらいいなと思っています。

経験と切離された視覚

__ 
人間の認識は、個体差はあるけど、認知以外の認識があるような気がします。福井さんの作品は、もしかしたらそういう、物質的ではないコミュニケーションを目指しているような気がする。だから、私はいまけっして、「面白くするためには、例えば関係性の変容をどう構成するべきなのでしょうか」みたいな質問を福井さんに対してすべきではないと思っています。道を出現させてしまうと、それはつまり認知の発生だから。
福井 
60分前後の作品としてどう推移していくのかみたいな流れは全然考えてなかったですね。やっぱり時間からどうつくっていったらいいのかわからないっていうのもあるんですけど。生活していくにつれて床が汚くなったり、物が散乱したり、ゴミが増えたり、そういう単純な時間の推移みたいなのが一つありますよね。それをうまく取り入れられないかと今は思っているんですけど、ただそれを愚直にやっちゃうと生活のお話みたいになっちゃうので。距離感をうまく測らないといけないし、あまり誤解されないようにしたいなと思っています。
__ 
それは茨の道なのか、それとも結構いけるのか。
福井 
どうなんですかね。「モデルルーム」は、そういう意味ではうまくバランス取れてたんじゃないかと思ってます。
__ 
そうそう、「モデルルーム」で舞台上に設置されていたウォーターサーバーが絶妙な配置だったと思うんですよ。外部から来た何か、「ここは家ではなく、ただし完全な商業施設でもない」、モデルルームがこの世の全ての界から等しい距離にある場所、と宣言しているかのようだった。
福井 
確かに「モデルルーム」は模造されたプライベートな部屋でもあるし、部屋を模造したパブリックな施設でもある。ありそうでない・なさそうであるというような中間的な性格があったからやりやすかったのかもしれません。

人と物との関係性

第1回 京都でコントやってます会 出展作品「モデルルーム」 撮影:築地静香
__ 
ちょっと補足的に。<人>と<物>を相対化してみせるということは、それぞれが同じ発言力を持ち、それぞれ埋没させないということですか?
福井 
そうですね。舞台で喋っている人の傍らに消火器とか、たとえそこにいる人と直接的な関係の見えない物であったとしても、それがそこに在るという事実が、同じ空間上にいる人の存在を補強しているように思えるんです。それは人の立場からでも同じことが言えると思うんですけど、そういった相依的な関係のネットワークみたいなものがあって、そこに人も物も内在しているという意味で、存在のレベルは等価なんじゃないかってことをあらわしたいのかもしれません。もっといい加減に言えば、そこに人がおれるんやったら消火器がおってもいいでしょみたいなことだと思います。いかにして異なる人や物が共在できるのかってことに今は関心があるので。
__ 
では、人と物との関係性が構築されていくのを見る、とはどのような鑑賞体験なのか。
福井 
演劇表現で使われる物ってなかなか美術の域を出られないというか。物の質感が具体的であるか抽象的であるかとかはともかく、あくまで作品世界の側に属していることが多いですよね。あるがままの状態というか、純粋に机があってその横に人がいるっていうような状況の自然的な有り様はあまり注目されない。そこにあるがままの完成された世界の様相を見ることができるんじゃないかと思ってるんですけど、作り手はそれをないがしろにしてまで、作品で何を力強く語ることができるのだろうって最近よく考えています。演劇で「そこに物がありますよね」みたいなことされてる方はあまりいないと思うんですけど。
__ 
言われてみれば、なんででしょうね?
福井 
美術というか特殊な物体としてあらわれてくる。純粋にここにコップがあるなっていうような物との出会い方があってもいいと思います。
__ 
一つには、経済的ではないのかもしれないですね。脚本という設計書があったとして、工数をかければ良いものが出てくるという信仰があるから。無関係性そのものを演出しようとしても、それを良いものにするための指標が、実にとりとめのないものだからだろう。計画の中には組み込めない。それは特殊技術なので、誰もやれないのかもしれない。同じ苦労するなら、分かりやすく美を追及したい。そう考えているかもしれません。
福井 
あとは、上演の手続きの中で、どうしても特殊化されてしまうのかもしれないですね。でもやっぱり俳優と同じで、登場人物を演じてるけど、その人自身でもあるやんみたいな両義性が物にもあると思っていて。美術の文脈で言えば、既製品の俗っぽさとかその後ろに控えている場所性とかドラマ性みたいなものを残したまま提示するようなやり口があったりしますね。
__ 
いろんな実現の仕方があると思います。ナラティブから切り離すために、時間的な経緯を持たせる。
福井 
ただ、レディメイドを美なるものとして転化させたり、そこに新しい意味とか価値だけを求めていくとそれはそれで特殊化されて結局オブジェになってしまうので。バランスみたいなのが難しいなと思っています。でも一方で、唯一演劇がその物をその物として扱うというか、その物として知覚させることができるメディアなんじゃないかとも思っています。まだはっきりとはわかってないですけど。このあいだの「モデルルーム」も、質感をダサくすることで諸問題を回避したつもりになっているので。
__ 
「モデルルーム」は強烈な役者の味があったので成立していたと思いますよ。
福井 
ありがとうございます。よかったです。

質問 川瀬亜衣さんから 福井 裕孝さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた川瀬亜衣さんから質問をいただいてきております。「子供ってどう思いますか?」
福井 
大人より、子供相手の方が人見知りします。

これから

__ 
今後どんな感じで攻めて行かれますか?
福井 
5月の公演は、会場に入ってからでないと決められないことが多々あるので、会場に入ってから残り50%とか作っていくことになるのかなと思っています。かなり変わってくるかもしれないので、臨機応変にやっていこうと思っています。「インテリア」は今回の製作期間だけでは多分つくり切れないので、今後も長い目で見て上演を重ねて更新していければいいなと思います。

山グルメ

__ 
今日はですねお話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
福井 
ありがとうございます。(開ける)アウトドアの。
__ 
そうっぽいですね。アウトドアに興味はありますか?
福井 
全然関係ないですけど、最近焚火がやりたいです。

最近のこと

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近は、川瀬さんはいかがお過ごしでしょうか。
川瀬 
よろしくお願いします。どんな感じでしょう。一昨年ぐらいは出演する公演をすごく多く頂いていたんですけど、それが少しずつ落ち着いてきて。今年の初めには予定が決まっていないという、そんな感じで緩やかに、先々のことを考えたりしながら過ごしています。
__ 
そうなんですね。
川瀬 
作年の後半は、色々公演を見に行ったりとか、声をかけてもらって人に教わりに入ったり、リサーチする稽古場があったらお手伝いに行ったり。あと、ダンスをもう一度とらえなおす目的もあって、対して演劇ともっと近づこうと地点のカルチベートプログラムに参加してました。秋頃からは、ANTIBODIES Collective にも関わらせてもらっています。

ソノノチ「いられずの豆」

__ 
次に出演されるのは劇団ソノノチの「いられずの豆」ですね。稽古は今、どんな感じでしょうか。
川瀬 
徐々に徐々にという感じです。3月に入ってから週に何回か稽古があるという。今回は中谷さんが新しく脚本を、これまでとは違う雰囲気のものを書きたいとおっしゃっていて。草稿を役者が読み、どう感じられたかをフィードバックされていたり、あと、カフェの設定について資料を読んで理解を深めたり。今はそういう感じです。(インタビュー時点、3月初旬)
__ 
舞台となるカフェの歴史を作るということですね。
川瀬 
さぁ、そういうこともあるんでしょうか。今回の話題となるのはコミュニティカフェということになってるんですけど、そういう場所で人が出会っていって何が起きるのか、そのカフェにいる人間の歴史とかも見えるんでしょうか。コミュニティカフェという営利目的ではない場所がなぜ運営されているのか、なぜそこに人が集まるのか。その辺のことがこれからもっと分かってくるのかな?
__ 
私の田舎にも公民館という場所もあって、そこがそういう、コミュニティスペースになっていましたね。
川瀬 
そういうのの延長にあるのかなと私も思っています。今回は一応、町なかという設定ですが、コミュニティから外れている人とかもあるじゃないですか。コミュニティがどこにあるのかがわからない人たちもいる。私自身が住んでいる町内でも、子供があんまりいなくても地蔵盆をやったりするんですよね。お菓子を配ったりして、最終的には、足洗いをするというのが重要みたいですね。そういうことがあると、同じところに住んでいる人たちの事が分かったりして。
ソノノチ「いられずの豆」
脚本・演出:中谷和代

店主のいない、一軒のカフェ。古くから通う人、新しく来た人など、そこに集う人々が、独自のルールを築いていく。それぞれにそれぞれの人生があり、よろこびを求めて、もがきながらも、でもこの場所にしかない何かを求めて、小さな町の人々は、このスペースを訪れる。
「―――わたしたちはこの場所で、どれだけ、どのくらいのあいだ、一緒にいられるのだろう。わたしたちには、一体なにができるのだろう。」
(※「いられずの豆」台本イメージより)

【公演日時】
4月15日(日)12:00~/ 14:00~
4月24日(火)18:00~/ 20:00~
4月25日(水)18:00~/ 20:00~
4月29日(日)12:00~/ 14:00~
4月30日(月・祝)12:00~/ 14:00~
(各回10名限定。物販コーナーもございます)
(開場は開演の20分前)

【会場】
Social Kitchen 1F Café(京都市上京区相国寺門前町699)

【出演】
藤原美保(ソノノチ) 川瀬亜衣 佐藤和駿(ドキドキぼーいず) 西村貴治

【チケット料金】
前売チケット:2,500円(事前決済のお客様)
予約・当日チケット:3,000円(当日精算のお客様)
応援チケット:5,000円(前売りのみ・グッズ付き)
※すべて1ドリンク付き。

<あらすじ>
舞台は、とある閑静な住宅街、さくら町。
この町の美術大学に通うチハルは、商店街の福引で偶然珈琲チケットが当たり、「カフェえんがわ」を初めて訪れる。
上の階に住むフリーライターのホシノはじめ、常連客たちと出会い会話をする内に、この場所が単なるカフェではなく、訪れる人々によって自主的に運営されている場所だということが明らかになっていく。
そしてやがては、この場所に集う常連客がさまざまに抱えた思いや、カフェえんがわ誕生当時のエピソードにたどり着いて・・・。
コミュニティカフェという地域に開かれた場所と、「近づかないけど離れない」人々の関係をめぐる物語。

【クレジット】
脚本・演出:中谷和代/演出助手:外谷美沙子(以上、ソノノチ)
イラスト・題字製作 森岡りえ子/舞台監督:北方こだち/楽曲製作:いちろー(廃墟文藝部)
制作:渡邉裕史/制作補佐:義村夏樹/物販協力:森岡ふみ子、のちノのち
喫茶:Kitchen hanare
協力:加茂谷慎治(株式会社エイチツーオー)

主催・企画・製作:ソノノチ
共催:NPO法人フリンジシアタープロジェクト
後援:NPO法人京都舞台芸術協会
京都芸術センター制作支援事業/made in KAIKA

【お問い合せ・チケット購入】
ソノノチ
050-5318-7717(制作)/info@sononochi.com

ひととなりの事

__ 
川瀬さんは今回、どんな役どころでしょうか。
川瀬 
今分かっている範囲では、実家が珈琲の焙煎をやっているOL、です。
__ 
見どころは。
川瀬 
実は、俳優さんの中に俳優として出るのは初めてのことで。あごうさとしさん演出の「走りながら眠れ」では、ダンサーが役者をやる、というのが大元のコンセプトなので。どちらも会話劇だけど、まるで経緯が違うので。今回は脚本を作りながらなので、ちょっとドキドキしています。できるだけ準備はしっかりしていこうと思うけれども。あまり伝えようとしすぎないでいようと思っています。プレゼンしすぎないと言うか、どうとでも見てもらえる、風通しの良い立ち方でいれたらいいなと思っています。
__ 
それは何故ですか。
川瀬 
自分が演劇とかを見に行った時に、喋ってる姿でも黙って立つ姿でも、それを見ている時には、何か思うことがあるからこそ入っていけるなと思うので。そういう隙間を作って、できるだけ、お客さんの思いを引き出せるようなことが自分にもできるといいなと。