一行の重さ

__ 
京都造形大学に入られたのは?
井上 
役者をやろうと思った時に専門学校に行きたいと親に相談したんですが、家の近くにこういう大学もあるぞと。
__ 
なぜ、演技をしたいと思ったんですか?
井上 
元々小学生の頃から、たまに学校の体育館で観る演劇が大好きで。それから中学高校と吹奏楽で舞台に立って、表現することで人を楽しませる事の魅力に気づいてしまって。実際に自分が演技をしたいと思ったのは、高校生の頃に観た映画やドラマがきっかけだったと思います。私は、面白い作品を見たら元気が出るんですよ。明日も頑張ろうと思える。一瞬でも辛いことを忘れたりできるじゃないですか。私もそうやって人に元気を与えられたら幸せだなと感じたんです。
__ 
ピッタリの職業だと思いますよ。奥の深い職業だと思いますので、これからも頑張っていってほしいです。
井上 
ありがとうございます。まだまだ、自分の力不足を感じてばかりです。これからも自分を高め続けないとな、と思っています。
__ 
どんな経験をしても、やっぱりどこかに登ってると思いますよ。怠けていたら何もならならないけど。
井上 
役者は、自分から動かないと何も成長できないというのは思いますね。何でもそうですけど。生活を怠けると、もろに演技の質が落ちちゃう時があって、ああダメだとよく自分に喝を入れ直しています。
__ 
セリフを一行を与えられたとして、そのセリフを喋る理由が「与えられたから」というのはもちろん意味のある活動ではなくて。でも、違うセリフを喋るのもだめ。じゃあどうやって台詞をしゃべるのかと言うと、色々なやり方があるけど、悩んだり迷ったりした結果のセリフの調子が、軽かろうと重かろうと、なぜかお客さんには伝わるんですよね。
井上 
そうですね。
__ 
その答えは明確に持ってるわけじゃないけど。
井上 
伝わるという事実はありますね。セリフ一行の重みと言いますか。文学座の鵜山仁先生のクラスで「この一行の台詞でお客さんから100円を貰えるように」と言われたのが印象的でした。一行単位で台本を読んだことがなかったので。どうしても物語を追うのに必死だったり、場面ごとの大まかな感情を読むのに必死だったりとか。その一行を、さらにはそのひと単語をどういう音で言うか、それだけで、そこまでに積み重ねたいろんなことがぐわっと変わるんだと知りました。気持ちだけでも、形や動きだけでもダメで、それらがバランスよくあることが必要でした。どうでもいいセリフというのはないんだなぁと。「どうでも良さそうに喋る」という演技は成立しても、どうでもいいセリフというものは実際にはない。忘れがちになりますけど。
__ 
そうやって作ったセリフには、絶対的な価値が宿るということですね。
井上 
すごく悩んだんです。その芝居は私の役が登場するところから始まったんですけど、何回やってもうまくいかなかったんですよ、最初は。せかせかと用事をしながら、家政婦役の相手を引っ張って振り回すという演技が、私には引き出しがなくて出来なかったんです。役柄を何も掴めずに、そのシーンが全く面白くない時期が続いて落ち込んでいました。でもある時にハマるようになったんです。台詞の気持ちの割合だとか、動きのタイミングとかを微調整していった結果、徐々にはまるポイントに近づいていったんだと思います。最終的には、最初の時期よりもずっとエネルギーのあるシーンになったと思います。観に来てくれた両親や友達に、最初、私だと気づかなかったと言ってもらえたのがすごく嬉しかったなあ。それが自分にとってはほぼ初めての演劇公演だったんですけど、いきなり、岸田國士というすごく考え甲斐のある作品に出会えて良かったと思っています。

勢いについて(2)

__ 
nidone.worksでの井上向日葵さんが素晴らしかったですね。「おにぎりパン!」の終演後に挨拶させて頂いたんでしたっけ。いや、nidone.worksこそが勢いがあると言えるでしょうね。
井上 
「チッハーとペンペン」を観た時から、実は凄く出たかったんです。あの可愛くてポップで、わくわくする世界観。その世界に入り込めて、子供も大人もみんな笑顔になれる作品なんて皆が理想とするけど、それをほんとに形にしてしまったというのが衝撃的で。皆に夢を与えるチッハーとペンペンがすごく羨ましく感じました。
__ 
松田ちはるさんと諏訪七海さんですね。
井上 
「おにぎりパン!」にはチッハー役を演じた松田ちはるも出演していたので、一番不安だった、劇中の観客とのコミュニケーションの極意を伝授してもらいながら稽古したのを覚えています。終演後にはとにかくお客さんからの反響を凄く感じました。嬉しかったです。
nidone.works
成長過程にいるこどもが おとなになることを、少しでもポジティブに捉えることができる作品づくりを目指しています。 メンバーは作/演出の渡辺たくみ、制作の加藤なつみを中心に、作品ごとにゆるやかなともだちを集めて活動中。舞台作品では、こども自らが表現することを後押しできるように、こどもたちが演者とコミュニーケションをとることでストーリーが進むよう構成しています。(公式サイトより)
「おにぎりパン!」
公演時期:2017/10/13~15。会場:京都造形芸術大学 人間館1階 カフェ横 展示スペース(春秋座側)。

これから

__ 
今後どんな感じで。
井上 
今まさにそれを悩んでるんですけど。今後も役者は続けていきたいです。舞台って、本当に人のつながりでしかないなあと思っています。京都の知り合いと東京の知り合いが知人同士だったという事があって、人と人とのつながりを身近に感じました。そういう繋がりを感じながら舞台を続けていきたいと思います。
__ 
色んな人のやり方を参考にされながら、悩みながらいけばきっとうまくいくと思います。

眼鏡のストラップ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。どうぞ。
井上 
ありがとうございます。(開ける)うわー。
__ 
稽古の時など、便利に使っていただければ。
井上 
使います。ありがとうございます。

中野劇団 第19回公演「代役」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、中野さんはどんな感じでしょうか。
中野 
最近と言うか、これまでずっと変わらずにやってる感じですね。仕事のことはあるんですが。
__ 
そして、次回公演の稽古の日々ですか。
中野 
もうそろそろ形にはなってきたので、自分的にはちょっとほっとしたところではあります。でもどっちにしてもギリギリなのはギリギリなので、残りの稽古の時間をうまく使って行ってきたいと思います。公演を打つたびに稽古時間が短くなっていく傾向があるので、自分の首を絞めながらも頑張っています。
中野劇団
中野劇団とは・・・

2003年に京都で旗揚げした劇団。
長篇の公演と短篇(コント)オムニバス公演と2つの形式がある。

緻密に張り巡らされた笑いの伏線を、波状的な笑いに昇華させ回収していくシチュエーションコメディを得意とする。

第17回公演『10分間2016 ~タイムリープが止まらない~』がCoRich舞台芸術アワード!2016で6位獲得!(公式サイトより)
中野劇団 第19回公演「代役」
「母が人工知能だと知らずに18年間生きてきました……」

作・演出:中野 守

日時:2018年7月14日(土)19:00
15日(日)14:00/19:00
16日(月祝)13:00/17:00
場所:インディペンデントシアター2nd

料金:前売2,800円、当日3,000円
学割前売1,500円、学割当日1,800円(要身分証提示)

チケット予約開始:2018年6月1日(金)21時

出演:
川原悠
延命聡子(以上、中野劇団)
青木道弘(ArtistUnitイカスケ)
河口仁(シアターシンクタンク万化)
是常祐美(シバイシマイ)
ほっぺふき子(i_design)
土肥希理子
北川啓太
高嶋Q太(後付け)
音声出演:真野絵里(中野劇団)

舞台監督:ニシノトシヒロ(BS-?)
音響:下田要(劇団熊タオル)
照明:真田貴吉
演出補:諸岡航平
宣伝美術:廣瀬愛子
制作:諸岡航平、三条上ル

協力:玉井秀和(劇団FAX)/ArtistUnitイカスケ/シアターシンクタンク万化
シバイシマイ/i_design/後付け/BS-?/劇団熊タオル/イズム/ライトアイ

笑いを取るために

__ 
「代役」が、14日から始まりますね。どんな作品になりそうでしょうか。
中野 
まず、今回はシチュエーションコメディという事で。これまでの作品ではあまり、本格的なシチュエーションコメディという形では作ってこなかったんです。ちょっと独特なものでやっていたのが、今回は一番王道のシチュエーションコメディなのかなと思います。
__ 
シチュエーションコメディというのは、一つのシチュエーションに限定したコメディということですよね。
中野 
僕の解釈で言うと、状況で笑いを取るという。今回はそこを純化させた笑いになると思います。なんだかんだでこれまで、違う引き出しを使ってきたので。
__ 
状況というのはもちろん、チラシに書いてある「母が人工知能だと知らずにこれまで18年間生きてきました」ですね。
中野 
どういう風に展開していくかというのが一つのミソになっていると思います。
__ 
稽古の様子をうかがうに、一つのことを追求する作り方を貫いているんだなと思っていまして。
中野 
台本を書いて、それをそのまま演技をしても、どうしても自分の中では消化できないところが出てくるんですよね。自然な会話を求めていく上で、一つシーンが出来たら、次はどういうふうに展開していくかをその場で考えると。終盤の頃は先が見えない状態が続いていて、重い空気の中で稽古していました。申し訳ないと思いながら。
__ 
今はいかがですか。
中野 
いや、それは抜け出しました。でも自分の中ではまだまだなんですけどね。

積み上げる

__ 
いますごく面白いことに気づいたんですよ。演劇の稽古を一つのプロジェクトとして見た時、例えば観客に対してある認識を与えるにはいくつかの内的な構造を順序立てて与えないといけない。それを例えば3週間の稽古で作ったとして、次の4週目では、それを前提とした構造を立てる事が出来る。そう考えると、演劇の成果物って本当に姿形がなく、実に内的なもので、だけど積み上げられるものなんですよね。
中野 
なるほど。でも次の稽古までに誰かが穴を見つけてくるということもあるので。自分では進んだと思って、嬉々として稽古場に臨んでも、根本を覆すようなダメ出しをされることもあり、稽古が1時間進まなかったこともあるんですね。一歩進んで二歩下がるみたいなことが本当にあるんですよ。
__ 
ジェンガみたいですね。
中野 
でも今回は、自分の運か引きがいいのか分からないですけど、場数を踏んでいる役者さんがいらっしゃって、大崩れをしないで済む提案をしてくださる方もいて。本当に助けていただいて。大助かりでした。もちろん欠陥を見つけてくださる方も大変ありがたいんですよ。本番に入ってそれが見つかるのが一番ダメなので。そして稽古場で火消しの方法を見つけて下さる方はもう本当にありがたいです。よくこのキャスティングであってくれたな、と。今回も助けられてばかりです。
__ 
そういう綿密な稽古の結果がとても楽しみです。

守りに入らない

__ 
今の悩みどころ教えていただけないでしょうか。
中野 
脚本を書く時間の確保がとても難しいです。独身時代は2時間ぐらい書く時間は持てたんですが、家庭があるとそういうわけにはいかなくて。質の高い執筆をしないといけなかったりするのですが、ちょっと協力をしてもらっています。でもやっぱり十分な時間を確保できていないので、そのしわ寄せが稽古場に行ってしまって。
__ 
「代役」、目標はありますか。
中野 
公演をするときはいつも、はっきりした形ではないんですが、小さくてもいいので何かの挑戦をしています。自分の引き出しだけで勝負をしないようには毎回心がけています。今回は、新しい笑いの生み出し方を一つでも作れないかと。中野劇団の芝居を期待してくださっている方に応えるのはもちろんですが、新しいことがしたい。本当に、笑いを取る以外のことをしてこれていないんですよね。受け身になってしまうと後退が始まってしまうので、ちょっと前のめりになってようやく横ばいかな、と。
__ 
同じことを毎回できるというのももちろん大切だと思うんですけど、新しいやり方に挑戦するというのはそれだけで価値がありますからね。
中野 
それをしないと現状維持もできなくなってしまう。
__ 
刺激がないから。
中野 
守りに入ると退化ととられてしまうかもしれない。危機感を持つようにしています。
__ 
新パターンですね。
中野 
なかなか出てこないんですけどね。今までに出てきたものをどう組み合わせるか、どう上手く取り上げられるか、というところがポイントだと思うんですけど。誰かがやるかもしれない、というところで気持ちが萎えないように。
__ 
お金を払ったお客さんにとって、価値があるものが手に入るのは当たり前なんですよ。でも、新しい見方を示してくれるものだ、と思ってくれたらいいんですけどね。
中野 
野球でいうと、ギリギリストライクというのが、自分にとっては金脈があるところなのかなと思ってます。変な揶揄になっちゃうかもしれないですけど、その作り手にしかわからないものを作るのは、やっぱりちょっとコメディとは違うと思うので。個々の人が前提として持つ価値観から、でも、既成のものでは納得できない人にも勝負をしかけていく。「ありそうで無い」、「ちょっと無い」。
__ 
それがとても上手に組みあがってるものだったら良いですよね。
中野 
それは本番の、お客さんの反応を見ないと分からないことなので。その答え合わせまでは自分が面白ければいいというところでしか確認のしようがないので。

質問 今村 駿介から 中野 守さんへ

__ 
前回インタビューさせたいただいた、第三劇場の今村駿介さんから質問です。「舞台に立っている時の一番の喜びはなんですか?」これは役者向けの質問なんですが、当時は次が誰か決まっていなかったので・・・
中野 
そうですね、やっぱり、自分のことを見てもらっているという事で、その空間を支配しているというところでしょうね。自分が、学生時代にちょろっと舞台に立っていた時の経験からなんですが、全てのお客さんが自分に集中して、どんな動きをするか、何を言うのか、とかを見てくれるというのが興奮すると思いますね。理屈じゃなく、本能的な。自分が話をするときに、目の前の人間が自分を見てくれている、認めてくれている、目をキラキラさせて見てくれているというのは自分の存在の再確認にもなりますし。
__ 
なるほど。
中野 
忘れられていない、存在している。大勢の演劇をやっている人の大前提だと思います。
__ 
見られている事の本能的な喜びを得ながら、それでも台本通り、稽古通りに上演するというのはものすごい業だと思うんですよね。
中野 
本番に、お客さんに来てもらいたいがための稽古だと思うので。面白くなかったら人は離れていきますので。

世代を越えるコメディ

__ 
しかし稽古を重ねても、お客さんがふと目を離して重要な演技を見逃したら、悔しいですよね。お客さんの目線までコントロール出来る訳じゃないから。
中野 
他の演出家さんがどう考えているかは分かりませんが、僕の場合、ちょっとは客席のコントロールを試みてはいます。「笑い待ち」というのが分かりやすいと思います。笑いを取ったすぐ後に次の台詞を言っても聞こえなくないので、少し間を取るとか。または、少し会話を聞かせたい時はお客さんに笑いを起こさせないようにする、という事もあります。ちょっとおこがましいんですけどね。
__ 
ああ、やっぱりそういう事はあるんですね。何となく思い当たります。逆に、お客さんの方も、ちょっと見逃したりしたとしても、展開に付いていこうとはしてくれますよね。その場で想像で補ったりはする。
中野 
そうですよね。見逃した演技の許容範囲にもよるし、物理的に見れない死角があるとかの場合もあると、お客さんの満足度も下がっていくとは思うので。
__ 
ええ。
中野 
逆に言うと、どれだけこちらのレベルを上げても、お客さんは100%を受け取る事は出来ないんですよ。本番で生きてくる演技は8割ぐらいだと思います。僕は。2割は台詞を噛んだり、その時の間が上手く行かなかったりとか。そこを見越して詰めていくしかないんですよね。
__ 
緻密な作品であればあるほど、見逃しても想像で補うのは難しくないと思いますけどね。
中野 
でもまあ、お客さんによって捉え方は全然違いますからね。もっと大きな括りで、若い人とお年のいった方で相当違う。後者に合わせると若い人が物足りない。僕らの場合は、両方向けの笑いを盛り込みます。大元の内容は、どの世代にも通じて、でも解釈はそれぞれ違う。全ての演目がそうだ、という訳じゃないですけど。いや、親に「分からなかった」と言われるのはショックですからね。
__ 
今回は、人類にとっては昔からのテーマなので、通じるとは思いますけどね。

10年

__ 
中野劇団の10年ぐらいを振り返って、自分達が変わった事とか、そういう点は何かありますか。
中野 
やっぱり、劇団員の多くが結婚して子供が出来て、というのが一番大きいです。元々、社会人をやりながら演劇をやろうというメンバーが集まっているので、やっぱり中々公演に参加出来ないメンバーもいるんですよ。僕は、メンバーが芝居をやりたい時にその時の公演に参加してもらえたらいいなと思っています。前回の「楽屋ちゃん」では、10年間出ていなかった、加藤祐一という旗揚げメンバーもいて。その間も劇団にはずっと名前があったんですけどね、でも彼が出演出来たというのはこれは中々面白い事なんじゃないかと思っています。仕事とか家庭を優先してほしいですね。芝居をやって不幸になるというのは元も子もないので。どちらも充実してもらって、芝居がしたいなと思ったら、すぐに合流してもらえる、というのが理想です。まあ、毎回のメンバーに負担が行くという事もありますけど。
__ 
いいやり方が見つかったらいいですね。

自分のキャパシティを越えた作品が出来ている

__ 
中野さんが、ずっと緻密な作品を作り続けられる理由は。
中野 
僕が中野劇団を作って間もない頃、三谷幸喜さんの作品を映像で見た時に変わったんですね。それまではナンセンスコメディを軸にしていたんですが、シチュエーションコメディを突き詰めていく面白さというのがあってですね。充実させていくと笑いの質と量が格段に違っていくんです。それはやっぱり追求しがいがあるし、その武器を研いでいきたいと思います。最初から、そういう緻密さに無意識に自分を置いているのかもしれません。作品のジャンルは毎回違います。サスペンスだったり、SFだったり。
__ 
なるほど。
中野 
何でしょうね、稽古の中盤を過ぎた辺りで、自分以外の参加者が作品の答えを出して共有していて、半自動的に組み上がっていく事もあったんですよ。すると自分のキャパを越えた作品が出来ている。例えば、「10分間2010」はそうでした。だから、その次の公演はそれを越えないといけない。次はそのプロセスが起こるように、土俵を何とか作って、それが起こるようにしていく、というのが最近の流れです。
__ 
そういう共有は、歓迎すべき事ですか?
中野 
一概には言えないんですが、イニシアチブを取れなくなる事は確かです。言ったら、影の監督制が始まってしまう事もあるので、虚勢を張って引っ張って行くことしか出来ないですね。脚本を書き上げるまでは。
__ 
そこが、中野劇団のもう一つの味だとも思いますね。脚本の横に、役者の味が。
中野 
役者さんがうちの舞台で新しい面を見せてくれると、凄く嬉しいですよね。

一作でも多く

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
中野 
そうですね、今後・・・明日どうなるか分からない状況なので。一作でも多く作りたいというのが、自分の欲求なんです。本当にそれに尽きます。コメディって35歳がピークだとよく言われていますが、それを10年ぐらい経ったんですが、まだ老化に逆らって、一作でも。

ソックス

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
中野 
ありがとうございます。(開ける)おっ、ソックス。ビジネスに使える感じの。

第三劇場7月公演「プカプカ河の川底石」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。第三劇場の座長、今村さんにお話を伺います。最近今村さんはいかがでしょうか。
今村 
よろしくお願いします。最近は7月公演の「プカプカ河の川底石」の稽古をしています。普通とは少し違う話にしたいんですけど、ちょっと難航しています。いい意味で前進はしているんですが大変です。
__ 
二つの民族が争う話なんですね。
今村 
争うと言うか、争いがメインではないですけど、僕は争いの向こう側の、価値観を乗り越えることが大事なんじゃないかと思っていて。対立という形にはなっていますが、分かり合えることがあると思ってます。争う事も大事だし、分かりあるんじゃないかという理想を描いてたらいいんじゃないかなと思ってるんですが、なかなか難しいです。脚本も演出も今回が初めてなので。それなりに色々、躓いたりはしています。
__ 
躓きですか。
今村 
表現方法とか感情の動きとか、結構そういうところがわかりにくいみたいで。それと、脚本に僕らしさが出てるみたいで、「さすがお前の書いた台本や」と言われました。
__ 
役者はどうですか。
今村 
今回は半分が新人なんですが、フレッシュな彼らの活躍を見て欲しいと思います。フレッシュなので、他のメンバーにとっても刺激があります。いい役者がいっぱい揃ってるので、幅広い感じで、楽しい作品になってくれればなと思います。僕の代の役者たちは、比較的、舞台上に立っている姿だけで語っている役者が多いんですが、一つ下の代は癖がないさっぱりした印象で。でも演技を詰められるメンバーなので、それぞれ公演や客演で主役を張ったりしたメンバーが集まっているので楽しみにしてほしいです。1回生の初々しさもあるんですが、片鱗を見せる子がいます。それぞれみんな、得意なことが違っていて。今回のメンツはみんな個性が違っているので、それを生かしたことができればいいなと思っています。
__ 
今回のメンバーの強みは何ですか?
今村 
みんな職人的なところがあるんですよね。こうしてほしいああしてほしいというのを頻繁に言ってくれて。「細かいことよりも脱稿すべき」とか、スケジュールのことを考えてくれたりとか。そういう、全体の事を考えてくれていて僕はありがたいです。真面目な人が本当に多いです。僕はあまり真面目じゃないんですけど、段取りをしっかり押さえられる人が多くて、僕はそういうところがおろそかなんですけど、丁寧にやってくれるので、僕も必死にやろうと思っています。心強いです。スタッフ的な部分で不安は感じていません。
__ 
素晴らしい。
今村 
演出補佐の太田君がすごくて、彼のセンスをお借りしようと思って。ポジション的に彼のアドバイスを求めたりすることが多いです。美談でもなんでもなくて、助かっています。
第三劇場
第三劇場は1954年に設立された同志社大学を拠点に活動する学生劇団です。オリジナルの脚本の上演を主とし、同志社大学新町キャンパス別館小ホールにて年に5回の公演を行っています。(公式サイトより)
第三劇場7月公演「プカプカ河の川底石」
【延期後の公演情報】
第三劇場7月公演
『プカプカ河の川底石』
脚本・演出:今村駿介
演出補佐:太田伸甫

【日時】
7/14(土)13:00/18:00
7/15(日)14:00
(開場は開演の30分前です)

【料金】
前売100円
当日300円
学生無料(要学生証)

【会場】
同志社大学新町キャンパス別館小ホール

【予約方法】
シバイエンジン
・メール→sangeki303@yahoo.co.jp
・Twitter(@sangeki303)へのDMまたはリプライ

【お問い合わせ】メール→sangeki303@yahoo.co.jp

作品全体を良いものにするための目線

__ 
今回の脚本を書こうと思った理由は何ですか?
今村 
変な話が、僕は3回生で、7月の本公演と引退公演だけなので、そこで区切りをつけるつもりでいて。一度自分が主導で公演の演出をやりたいなと思っていました。それと、役者の演技について自分の意見を言えるようになってきて。自分を試したいなと思っています。
__ 
なるほど。
今村 
でも自分の意見は伝わっているんだろうか、わからない瞬間もあって。でもそれは作品作りには重要なことで。あと、僕は第三劇場の座長なんですが、これまで演出をしていた先輩たちから、作品全体を良いものにするための目線を勉強することがあって。僕が一回生の時の3回生にいろいろ教えてもらって。何だか、作品づくりって大変だけど楽しいなと。役者としての目線じゃない視点が面白いなと思います。
__ 
演出として大切なのは何だと思いますか?
今村 
難しいですけど、役者の演技を助けるということを重視していたら、意外とまとまらないなあということがわかりました。昨日の通しで、結局何が何なのかということが整理できていないということが分かって。僕は演出が役者に演技を押し付けるのはどうなんだと思っていたんですが、実際はそういうことではなくて、各々が自分の好きな演技をやっていたら形にするのが難しいことが分かったんです。舵を切るではないですけど、演出としているよやっぱり、ちゃんとしていかないと方向性が定まらないなというのが分かりました。今更ですが。
__ 
役者が自分で演技を作るのは結構ですが、現実的にはそれを全て採用するわけにはいかない、という事ですね。作品としてまとめるためには、全体が見渡せる場所に登って、一つの大きな流れを作らないといけない。交通整理というレベルではなくて、全ての出力の制御を細かく押さえながらも、それらが有機的な何か大きなものを形象するように手を尽くさないといけないと。
今村 
難しいですよね。それを日に日に感じています。
__ 
モチベーションを削ることはしたくないけど、方向性を大事にしないと、計画としてはうまくいかなくなってしまいますからね。

やばい奴

__ 
役者としての今村さんはいつから演劇を始めたんですか?
今村 
大学の一回生からです。どのサークルに入ろうか色々選択肢はあったんですけど、第三劇場の新歓公演は内容がすっと入ってきて。舞台裏見学をさせて下さいと言って、そこから入りました。先輩からは「最初はやばい奴が来たと思った」「こいつが入るとは思わなかった」と。
__ 
それが今や座長ですからね。
今村 
感慨深いと言われました。
__ 
そもそもなぜ演劇を?
今村 
僕は演劇は全然触れていなかったんです。そもそも家が舞台を見に行くような感じじゃなかったんですが。でも高校生の頃に芸術鑑賞で舞台を見に行って。その時に「演劇というものがこの世にあるんだ」と認識して。めっちゃ生き生きしてるなと思って。舞台に立つというのはとても勇気のいることだなあと。そこから結構思い切った決断だったんですけど。それと、日常会話で結構挙動不審だったりしていたのをなおしたいなと思っていて。これでも結構かなりスムーズに話せるようになりました。
__ 
気になるレベルではありませんよ。
今村 
まだまだ力が入ってるところもあるんですけどね。でも元々は、舞台に立つというのはすごいなというのが最初です。
__ 
最初にイマガシュン(芸名)を見たときは衝撃でした。一瞬で心を掴まれました。爆笑をさらって行きましたよね。
今村 
あれはセリフが受けたんじゃないかなと思ってます。動きや衣装が偏ってるからお笑いが取れてるのかなと思ってました。自分ではコントロールできていないです。意図的にやっていないこともいっぱいあって。
__ 
別にそれでいいのかもしれませんね。
今村 
友達には「お前をいじる奴がいて初めて映えるんだよ、お前単体でいたら単純にやばいぞ」と。
__ 
いえ、それは逆の意味で申し上げると、一人きりのイマガシュンにはさらなる可能性を感じますよ。ツッコミというのはそんなに必要ではないのかもしれない。イマガシュンは間の悪さが素晴らしいんですよ。自分で意識されることはありますか?
今村 
自分ではなかなかわからないんですよ。日常では僕は間が遅い方なので、レスポンスが遅いというのが定説なんですよ。急に早くなるとみんなびっくりするぐらい。自分でそういう間を埋めようとするから、そういうことになるのかもしれない。
__ 
説明しにくいところがあるんですけど、見た瞬間に、イマガシュンが様々なカテゴリーから外れているのが分かるような。そこに純粋なものを感じる。見た目で分かる特異点であり、解釈が追いつかないような気がする。間の悪さについては本当に天性のものがあると思う。ツッコミも観てみたいです。

演技についてと歴史についての話

__ 
これからやりたい演技とかはありますか?
今村 
おじさん役や曲者が多いので、そこから脱皮したいと思っています。幅が広くて、引き出しが多い方が、色々と呼んでもらえるのかなと思って。器用な人、すごいなあと思います。その人の持ち味を生かして演技してる人がすごいなと思います。
__ 
個人の興味の対象はどういうところにあると思いますか?
今村 
僕は結構歴史とかが好きで。実際いた人が起こした行動を自由に解釈したりであるとか、そういうことお客さんにやってもらいたいなと思っていて。縦軸に時間があって、そこに人が本筋を作っていって。生活感を省いた話を今回書きましたけど。
__ 
教科書に載ってるような歴史の流れが定説としてあって、でも色々な情報を一つの仮説に基づいて並べてみると、新しい解釈が生まれると言うか。そういう知的冒険が面白いですよね。
今村 
そんな大したことはないんですけど、何かと何かが戦って勝ったのはこういう理由だったとか、こういう見方を掘り起こすというのが面白いなと思っています。史学科に入った方が良かったんじゃないかと友達に言われました。ファンタジーの下地を作ってみようとしたんですけど難しいですね。
__ 
いや、お客さんは面白いと思いますけどね。
今村 
それと、人物にも興味があります。こういう人が昔いて、こういう功績があるけど実はこうだったとか。

質問 千の千尋を神隠しさんから 今村 駿介さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた方から質問を頂いてきております。千の千尋を神隠しさんからです。「脚本をどうやって覚えていますか?」
今村 
僕は最初はとりあえず口に出して言葉を覚えて、共演者と話していくというのが多いです。感情をどう扱うかを気をつけて考えて言ってます。キャラクターがどうこうという事はあんまり考えていなくて。間とかは、気を付けていないと自分のものになっちゃうので、自分が納得いく形で相手に返せるように。受信と発信がしっくり行った時というのはすごいですね。自分で一番良い演技ができたと思います。自分がああやろうこうやろうと思ってもうまくいかないこともありますけど。
__ 
自分がこうやりたい、とか、そういう意欲もコントロール出来たら、違う世界が広がりそうですね。テンションとか、そういう部分。

これから

__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
今村 
演劇にもらったものがとても多いので、先輩にも後輩にも魅力的な人がたくさんいて、人に恵まれたなと思う瞬間が多いです。根気よく稽古に付き合ってくれた先輩もいて、座長になってくださった人もいて。演劇的なものに関わっていく事に興味を持っています。3回生なので身の振り方を色々考えています。