心が動く舞台

__ 
さて、北川さんが主宰されている劇団、カムヰヤッセンのお話に移りたいのですが。その前に、以前インタビューさせて頂いた方から、メッセージを頂いてきております。
北川 
誰だー。
__ 
奥田ワレタさんからです。
北川 
だはは。ワレちゃんありがとうございます。
__ 
そのままお伝えします。「おお 悪い芝居頑張って」だそうです。
北川 
ふはは。奥田さん面白いですねー。京都に来た時に、奥田さんの偉大さを知りました。すごい売れっ子だったんだなと。
__ 
さて、そんな奥田さんが出演していたカムヰヤッセンの「やわらかいヒビ」。SFを下敷きにした作品だと伺っております。こりっちの感想(見てきた!)を見ると大変好評だったようですね。いきなりなのですが、お芝居をご覧になった方に、どんな気分になってほしいですか?
北川 
もし不遜な言い方になったら忍びないのですが、心が動いてほしいです。出来ればポジティブな方向に。どうであれ、心が動く作品を作りたいと思います。
__ 
例えばあまり心が動かない作品とは?
北川 
単純に巧いね、上手だねって言われる作品にはしたくないなと。巷にたくさん転がっている、もちろん上手なのは一般的に価値があるんですが。でも、その先にある、心が動く舞台にしたいなと思います。
__ 
心が動く。北川さんは、どのような時に心が動きますか?
北川 
僕の心は動きやすいんですよ(笑う)。今日は市バスに乗ってきたんですけど、同じバスにおばあちゃんと孫と親が乗っていて。千本中立売で孫が降りる時に、おばあちゃんと離れるのをいやがってたんですね。ちょっと急いでたんですけど、見てると、何か一瞬、「あ」って思ったんですね。僕の心が動くのは、たぶん、それが本物である時だと思うんです。劇の演出をするときに言うのは、それが本物であること。やり方の差異はどうだっていいんです。本物の動き方や、言葉や、表情。例えば劇評がバラつくのは、僕のフォーカス合わせが出来ていなかった場合です。

端正に仕込んだカレー

__ 
舞台はよく、ウソで成り立っていると言われますね。では北川さんがフィクションから本物にするのに気を配っている事は。
北川 
そうですね・・・。分かりやすい事ですね。入って来やすい。嘘と分かってきている以上、入っていこうという姿勢もあると思うので。なるべく広い間口を持とうと思っています。芝居の好みというのはあるとは思いますが、カレーとラーメンは皆好きだと思うんですよ。
__ 
おお、B級グルメですね。
北川 
どちらも安いという取り方もあると思いますが、きちっと端正に仕込んだカレーを出したいです。
__ 
なるほど。では、カレーを楽しんで食べてもらうためには。
北川 
お客様にひっかけるチャンスみたいなものをいっぱい用意したいと思います。入り口をたくさん用意する事だと思うんですよ。アイデアをただ提供するだけじゃなくて、理解してほしいからとっかかりという言葉を使ったんですけど。その責任を引き受けられるまで準備をする義務があると思います。

タグ: ラーメンの話


税金を払う

__ 
今後は、どういう形でお芝居をされますか?
北川 
表現者の端くれとして、表現にくいついていきたいですね。税金もちゃんと払って。
__ 
なるほど。
北川 
社会と関わりを持つ事に対して、ここ一年よく考えるようになっています。考えずに済ませる事も出来るこの小劇場という世界で、それこそJRの車掌さんが一人倒れたら社会全体が困るけど、小劇場の俳優が一人倒れても誰も困らない。
__ 
ええ。
北川 
そういう事を常々考える、そういう普通の事を考えたいですね。アーティストだからといって、考えずに済むということはないので。その上で、表現の世界をよじ登っていきたいですね。さし当たって、今回の「キョム!」でそういう事を扱っていたのもあり、意識が強まりました。

質問 森田 みさをさんから 北川 大輔さんへ

Q & A
__ 
前回インタビューさせて頂いた、PASSIONE森田みさをさんから質問を頂いて来ております。「自分の事をロマンチストだと思いますか?」
北川 
自分ではリアリストだと思っているのですが、他人からはロマンチストだといわれてますね。
__ 
ロマンチストなんですね。
北川 
そうみたいですね。
__ 
どういう時にそう呼ばれていると。
北川 
作品ですね、たぶん。どんなのにしろ、たくさんの愛と若干の揶揄を込めてそう呼ばれていると思います。
劇団PASSIONE
1997年結成。京都を拠点に活動する劇団。寓話的世界を描きながらも、不思議な現実感の後味を残す作品が特徴。激しさと寂しさの同居する、万華鏡のような世界観。

タグ: ロマンについて


京都の創作環境

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
北川 
2012年くらいに、関西でも上演しようと思っています。
__ 
おお。是非、お願いします。
北川 
まず今回やらせてもらって、京都の創造環境の素晴らしさですね。芸センしかり、青少年活動センターしかり。それから、京都の上品さですね。いちげんさんお断りとか言われるんですけど、入ってしまえばあったかいですね。そういう幸せな出会いを頂いたなと思いました。
__ 
上品さですか。なるほど。
北川 
創作環境という点においては、京都をすごくうらやましいと思いました。アートコンプレックス1928もいい劇場ですよね。
アートコンプレックス1928
三条御幸町の多目的ホール。ダンス、演劇公演、ショーやワークショップ、展覧会等を開催する。

タグ: アートコンプレックス1928 今後の攻め方


topknotのハット

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。どうぞ。
北川 
わー。まあ、おしゃれな。かぶれるようにします。

タグ: プレゼント(装飾系)


ピンク地底人謀略の第7回公演「その指で」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。
森田 
よろしくお願いします。
__ 
森田さんご出演のピンク地底人「その指で」が先日終わったところですね。大変面白かったです。
森田 
手法が結構挑戦的だっただけに、ストーリーはお客さんにとってはなじみやすい、恋愛を主題にしたものでしたね。これまでの公演アンケートの指摘に対する、作・演出のピンク地底人3号からの返答だったみたいです。
劇団PASSIONE
1997年結成。京都を拠点に活動する劇団。寓話的世界を描きながらも、不思議な現実感の後味を残す作品が特徴。激しさと寂しさの同居する、万華鏡のような世界観。
ピンク地底人
京都の地下は墨染に生まれた貧乏な三兄弟。日々の孤独と戦うため、ときおり地上にあらわれては演劇活動をしている。夢は関西一円を征服することと、自分たちを捨てた母への復讐。最近は仲間も増え、京都を中心に大阪にも出没中。(公式サイトより)
アートコンプレックス1928
三条御幸町の多目的ホール。ダンス、演劇公演、ショーやワークショップ、展覧会等を開催する。

二つの出来事が重なって

__ 
ところで森田さんは、どういう経緯でお芝居を始められたんですか?
森田 
ある日、職場に来ている営業の人が「今度芝居をするんですよ」って。それまで私は芝居なんて関わった事もなくて、京都演劇界なんてものがあるという事も知らなかったんですよ。
__ 
それは、そうでしょうね。
森田 
でも、働きながらそういう事に関わるっていいなあって思ったんです。私もその頃、声優の養成所に行っていて。
__ 
ええ。
森田 
それと同時期に、同じ養成所に通っていた人から女優を探しているって話があったんです。それがPASSIONEでした。その二つの出来事が重なって興味がかき立てられたんです。どちらか一方がなければ始めてなかったと思います。
__ 
初舞台は。
森田 
いきなり、舞台のことを何も知らない状態でPASSIONEの公演に出る事になったんですよ。しかもアートコンプレックス1928で、かつ主役級の役で。いい思いをさせてもらいました。あれが最初だったからこそ続けたのかもしれませんね。
アートコンプレックス1928
三条御幸町の多目的ホール。ダンス、演劇公演、ショーやワークショップ、展覧会等を開催する。

タグ: アートコンプレックス1928 声優になりたかった


PASSIONE「0100」

森田 
PASSIONEの前回公演「0100」では「蜘蛛」という役を振ってもらえて。単管に上ってアクロバティックな演技をするという。
__ 
あ、そうでしたね。伸びやかで、見事な演技でした。そうそう、ああいう訓練というか、体操みたいな事をされていたんですか?
森田 
全然。体育が万年2でした。
__ 
ああ・・・失礼しました。
森田 
もうずっと自己練習して、実際に単管に上ったのは小屋に入ってからという。あれほど小屋入りを待ちかねた芝居もなかったです(笑う)。結局あれが最後だったので、PASSIONEでしかできないことをやりきった感がありますね。
__ 
そうですね、その「0100」が・・・。
森田 
そう、最後の公演になってしまいました。
__ 
nono&lili.の砂糖さんが、「PASSIONEが解散しまって大変悔しい。腹が立った」と言っていました。
森田 
あー。なかなか、長くやっていくのも厳しいですからね。私自身途中参加組で、あまり知ったようなことは言えませんけど。PASSIONE自体は長く活動してましたが、あんまり誰も知らないって・・・。
__ 
そう、私もそこが悔しいんですよね。
森田 
続けるって難しいですね。知り合いじゃないお客さんをどれだけ呼べるか、定着していけるかという事なんでしょうね。
劇団PASSIONE vol.35 夜想? 「0100」
公演時期:2009年8月29~30日。会場:人間座スタジオ。
nono&lili.
京都を拠点に活動する劇団。泥臭くて人間味溢れるファンタジーを好んで描く。(公式サイトより)

演劇自体辞めていたかも

__ 
今まで出演された舞台で、印象に残った舞台は。
森田 
ロクソドンタブラックのフェスにPASSIONEで参加した事ですね。小屋に入ってからも高揚した感じ。集客でも助けられて、満席で本番を迎えられる事の充実感と、それで役者もどんどん輝いていって。三位という結果がついてきたんです。まぁ、結果に作・演出の蟻蛸蛆は満足してませんでしたけど、全体の高揚感が印象に残りましたね。
__ 
なるほど。
森田 
それからもう一つ、大阪のあるプロデュース公演に出演した時に、自分に求められている事が全然違ったので苦労した経験があります。
__ 
というと。
森田 
PASSIONEだと台本が宛書きで、その人が自然に出来る上に輝けるみたいな役を与えてくれるんですよ。それに慣れきっていたんですよね。で、与えられた台本には当時の私には考えられないような役どころが載っていて。それでも頑張ったんですけど「違う」って言われて。
__ 
ええ。
森田 
周囲に迷惑を掛けてしまって、稽古のペースについていけず、蟻蛸蛆に泣きついたり。眠れない日が続きました。結局、役は変更になりました。その時に強く感じたのは、私は演出に「違う」と言われても何がなのか分からないし、稽古が始まったらパニックになるし、結局役者が向いていないんだなってことですね。辞めようかなと思っていたんです。もし「0100」と「Ex.人間」が決まっていなかったら、あの時に演劇じたい辞めていたと思いますね。
__ 
なるほど。
森田 
大阪は京都みたいにゆっくり稽古しないよ、って言われたんですよ。稽古してもお金もらえないからねって。京都だと最初は台本が出来あがっていない事が多いと思うんですけど、大阪だと台本も音楽も全部出来ていて。はい、覚えてきてねって渡されるんですよ。
__ 
そうですね。
森田 
それをケロっとした顔で年間何本もこなせる人が何人もいる。演出が「これやって」って言われたらすぐに対応出来る人が揃っている劇団もある。
__ 
大阪のペース、京都のペース、ほかにも東京や名古屋や福岡や、都市によって色々ペースが違うかもしれませんね。
ロクソドンタブラック
大阪市阿倍野区の劇場。
ピンク地底人饒舌の第五回公演「EX.人間」
公演時期:2009/10/17~18。会場:ロクソドンタブラック。

タグ: もう、辞めたい


演技する事自体がもの凄く楽しい

__ 
今後は、どんな感じで攻めていかれますか?
森田 
何が何でも芝居を続けていなくちゃ、というスタンスではないですね。自分の時間を横にうっちゃってしまうのは、そろそろ、どうなのかな?と。
__ 
自分の時間。
森田 
2か月なり3か月なり、自分の時間を何か一つのために費やすって実は相当すごいことですよね。その反面、稽古がない日々に耐えられるんだろうかとも思っていたんです。でも意外に充実してた(笑う)。
__ 
あはは。
森田 
稽古がなくても過ごせるもんだなと。今後も、とりあえず出演予定はないです。耐えられるかどうかは分かりません。・・・PASSIONEが解散した事もあって、芝居は辞めると周りに言っていたんです。でも、最後の出演作と決めていた「その指で」、上演の最中に、演技する事自体がもの凄く楽しいなと思えたんですよ。
__ 
すばらしい。
森田 
PASSIONEでも楽しかったんですけど、だんだん、自分のシーンはちゃんとこなせているかとかの不安が強くなっていったんですよね。この間のピンク地底人では、純粋に芝居をすることが楽しかったんです。
__ 
その、楽しいって思えるというのがキーワードなのかなと。そこに、8年を掛けて至ったという。
森田 
舞台に立っていながら、お客さんと作品を作り上げる実感なんでしょうね。一切幕裏にハケない演出だったからかもしれない。役者でありながら、お客さんと同じように作品を見てもいた。もちろん、それまでも本番を迎えるのは楽しかったんです。でも、そこに至るまでの努力というのが、自分の役について悩む事に終始するようになっていて、そこに甘んじていたというか。悩んで深刻になればOKみたいな。だから不安だったのかも。「その指で」はそういうこととはちょっと違う作品でした。
__ 
それはあるいは、森田さんは今、役者として成長し続けているのかもしれませんね。
森田 
みんな、こういう風に悩んだりするんでしょうか。

タグ: インクの一滴 今後の攻め方


質問 大庭 裕介さんから 森田 みさをさんへ

Q & A
__ 
さて、前回インタビューさせて頂きました、地点の大庭さんからご質問を頂いてきております。「1.朝食は食べますか?食べるのでしたら、そのメニューはいつ決めますか?」
森田 
私はいつも決まってるんですよ。
__ 
えっ。
森田 
毎日同じものを食べてるんです。毎朝納豆ご飯で。いつも納豆を買ってあるので、毎日食べられる。もし書い忘れたらチーズトースト。火を使うのが面倒くさいので。
__ 
すごい。
森田 
え、何がですか。
__ 
いや、大庭さんもいつも食べるものが決まってるんだそうです。食パンにチーズとキュウリをのせてレモンを掛けたものとコーヒーだそうです。
森田 
(笑う)普通じゃないですか。
__ 
へー。何だかすごく偶然な感じがしますね。

タグ: 朝食についての話題


moccocuのネックレス

__ 
今日はお話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
森田 
あ、噂の。
__ 
つまらないものですが。どうぞ、開けてみてください。
森田 
いえいえ。(開ける)あは、ネックレスですね。かわいー。私、よく、緑が似合うって言われるんですよね。
__ 
なんか、名字とお名前の一文字目からして。
森田 
あ、私もプレゼントがあるんですよ。
__ 
えっ。
森田 
今日はクリスマスですよ?
__ 
あ、本当だ。
森田 
大したものではないですよ。
__ 
開けてみてもいいですか?
森田 
どうぞ。
__ 
あ、クッキーですか?もしかして、手作り?
森田 
はい。
__ 
ありがとうございます。大事に食べます。へー。本当に嬉しいです。すごい。大学に合格した時くらい嬉しいです。
森田 
それ、稽古場にも持っていったことがあるんです。湿気てしまわないうちに。
__ 
はい。早めに食べます。

タグ: 手作りのあたたかみ プレゼント(リング・ネックレス・ブレスレット系)


亀と冬眠

__ 
どうぞ、よろしくお願いします。今日は曇っていますね。
大庭 
そうですね。晴れれば良かったんですけどね。
__ 
最近は不安定な天候ですね。暖かくなったり寒くなったり。今年は暖冬だそうですが。
大庭 
そうだといいですね。冬が大嫌いで・・・。昔に比べて体重が落ちたので、寒いのが大嫌いなんですよ。冬眠したい。
__ 
動物は冬眠できますからね。
大庭 
何で人間は冬眠できないんだろう。
__ 
何ででしょうね? 出来てもおかしくはないのに。しかし動物の冬眠って、鼓動のペースを落とすだけで、よくも生きていられるもんですよね。
大庭 
寝る前にいっぱい食べるんでしょうね。これだけ食べれば、俺、春まで大丈夫だという状態にまでして。幸せだよね。
__ 
・・・うちの近所に沢があって、春になると冬眠していた亀が起きてくるんですよ。そのまま道路に出てきて、車に轢かれて、見ちゃいけない状態になるんですよね。
大庭 
うわ。僕も疎水のあたりで道路を上がってきた亀を見たことがあります。とりあえず疎水に落としておきました。これで大丈夫かなと思いつつ。
地点
多様なテクストを用いて、言葉や身体、物の質感、光・音などさまざまな要素が重層的に関係する演劇独自の表現を生み出すために活動している。劇作家が演出を兼ねることが多い日本の現代演劇において、演出家が演出業に専念するスタイルが独特。(公式サイトより)

地点『ーところでアルトーさん、』

__ 
さて、地点の前回公演。「ーところでアルトーさん、」非常に面白かったです。
大庭 
本当ですか。何がですか(笑う)
__ 
放送局の人たちが、アルトーさんの結構意味の分からない言葉を頑張って放送している姿が印象に残りましたね。いや、もしかしたらそんな設定ではなかったのかもしれませんが。
大庭 
具体的な設定はないですね。あの微妙なロングコートが制服にも白衣にも見えて、放送局にも研究室にも見えると思うんですが、でも僕らの中であれはどこでどういう人たちという設定はないんです。もちろんそういう話はしますけれども。
__ 
人間関係とかは全く見えてきませんでしたね。
大庭 
全部、モノローグだったんですよね。今回はとにかく、観客に対するアルトーの言葉の押し売り、という感じでしたね。アルトーさんの言葉はリアリズムでは出来ないですし。
__ 
舞台に出てきたテキスト。あの時代のヨーロッパの雰囲気に対する感情や、戦争に対して逃げたり立ち向かったり。それを肉声で語っていた言葉は攻撃的だし、恨みや自尊心も籠もっていて。かなりぐったりする時間でしたね。
地点『ーところでアルトーさん、』
多様なテクストを用いて、言葉や身体、物の質感、光・音などさまざまな要素が重層的に関係する演劇独自の表現を生み出すために活動している。劇作家が演出を兼ねることが多い日本の現代演劇において、演出家が演出業に専念するスタイルが独特。(公式サイトより)

タグ: SeizeTheDay 衣裳・ユニフォーム系


一つの空間で

__ 
地点の舞台作品。難解な演出から、お客さんを選ぶと言ってしまって過言ではないと思うのですが、地点では観客をどのように存在だと考えているのでしょうか?
大庭 
演出の三浦は「無視しちゃいけない」存在だとよく言っていますね。一般的には、客席と舞台の間には第4の壁が存在していると良く言われますね。ですが、それだと三浦は寂しくなっちゃうんだそうで。「何言ってんだ」と思うんですが(笑う)。
__ 
無視して置いていく訳じゃないんですね。
大庭 
そうですね。本当は、お客さん一人一人の顔がみえるくらいが理想です。そういえば、今回の芝居の冒頭の文が「私はラジオ放送をやめて演劇を始める。見に来るものも舞台に立つものも一つの空間で」という。
__ 
一つの世界に行くんですね。劇中思っていたのは、このアルトーという人は相当寂しかったんだろうなと。変態扱いされて、もてはやされもしたけどそれも一過性のもので。でも演劇をもう一度始めようとして。そういう、人間らしい欲求が浮きだして見えるようでした。
大庭 
孤独で、寂しかったんでしょうね。
__ 
現代のここから、天国にいるアルトーさんに放送という形で追悼を送っているのかなと、そういう気がしていました。追悼劇といえるかもしれませんね。
三浦 基
地点、代表・演出。

タグ: 外の世界と繋がる 難しい演劇作品はいかが 死んだオプションへの追悼


質問 砂糖 浩美さんから 大庭 裕介さんへ

Q & A
__ 
前回インタビューをさせていただきました、京都の劇団・nono&lili.の砂糖さんから質問をいただいてきております。この砂糖さんは文房具好きだそうですが、1.文房具で好きなアイテムはなんですか?
大庭 
文房具のアイテムだからってことじゃないかもしれませんが、ペンギンの形をしているクリップがあるんです。有名なブランドのものらしく、それを友達から貰って。それが好きですね。鳥が好きなんで。
__ 
ありがとうございます。2.自分の体で好きな部分はどこですか? ちなみに、砂糖さんは手の甲の部分が好きだそうです。暖かくなると血管が浮き出すのが面白いと。
大庭 
手か、言われちゃったな・・・歯が好きですね。歯並びがいいらしいんですよ。糸ようじも入らないくらい詰まっていて。虫歯もないし。

nono&lili.
京都を拠点に活動する劇団。泥臭くて人間味溢れるファンタジーを好んで描く。(公式サイトより)

別の人になんか

__ 
大庭さんがお芝居を始めた理由と続けている理由を伺いたいのですが。
大庭 
始めた理由・・・。僕は中学高校と、アメリカに住んでいたんですよ。大学から日本に戻ってきたんです。
__ 
帰国子女ですね。
大庭 
当時、英語を話している自分がどうしても好きになれなかったんです。常に誰だかわからないけど、英語をしゃべる人を演じていた訳です。だけどうまく演じられていないのはわかっていました。そのもどかしさがずっとあり気持ち悪かった。周りからは「人と違う経験が出来ていいね」と言われるんですが、いやいや、僕はみんなと同じ経験が出来てないんです。妹が定期購読していた少女マンガを読んで日本の生活が羨ましいなとずっと憧れていたんですよね。日本に帰ってきて、アイデンティティとかについていろいろ考えちゃって。おかしいんですが、みんなと一緒が良かったんです。それで周りと違う自分が嫌いになっていたんです。
__ 
なるほど。
大庭 
ある日、帰国子女の先輩が大学の演劇サークルに誘ってくれたんですよね。ここに入ったら、嫌いな自分ではない別の人間になれるって、バカみたいに思い込んだんですね。最近はそんなのは幻想で、別の人になんかなれる訳はないって思いますが。
__ 
そうした経緯があったんですね。

タグ: 自分は何で演劇を


インクの一滴

__ 
東京から京都に移ったのはどういう。
大庭 
僕も三浦も青年団にいて、独立するときに誘われたんですよね。京都を拠点にして劇団を旗揚げするから、来ないかって。その時に、年齢的なこともあって、芝居をこれから続けていても良いものか、出来るのかと色々考えていたんですよ。
__ 
ええ。
大庭 
三浦の芝居は好きだったし、このあたりで思い切って、賭をしようと思ったんですね。青年団にいてもちょっとした安定はあるんですけど。ここで、いっちょやってみるかと。京都行ってダメだったら辞めっか、みたいなね。オリザさんにすみませんって言って出てきました。「まあ3年で戻ってくるだろ」とか「ダメだったら戻ってきてもいいよ」とか言われましたけど(笑う)
__ 
よくそんな、決断をされましたね。
大庭 
東京から京都に来た大きな理由は、さっきの賭の話と同時に、ただただ自分の存在や演劇の公演が消費される状況が怖かった。・・・東京で芝居を見に行くと、もうタウンページのようにぶ厚いチラシの束が渡される訳ですよね。そしてそのほとんどは1回きりの公演。
__ 
ありますね。
大庭 
あれを見るとね、なんかもう、簡単に消費されるんだなあと。僕が参加している公演のチラシなんてこの束の中の一枚にすぎず、プリントされた名前なんてインクの一滴程度なんですよね。マクドナルドのハンバーガーみたいに無碍に消費される存在、それはやっぱり嫌だなと思って。単純に自己顕示欲が強いってだけなのかも知れないですけど。みんなと一緒がいいって始めたのに矛盾してますね。(笑)とにかく再演される様な芝居をつくっていきたかったんです。
__ 
東京のチラシ束はすごいですよね。
大庭 
京都にくるとチラシ束が薄くてほっとしたというか(笑う)。もちろんこれはある意味、演劇界の辛い状況でもあるんですけどね。
__ 
そうそう、私も東京にはここ数年、休暇をとって芝居を見に行ってるんですよ。最初は、その回転率の早さというのがもしかしたら俳優の演技にある種の薄さをもたらしているかと思えば、単に思いこみでした。
大庭 
なるほど。
__ 
それでも、やっぱり京都における俳優の身体のミステリアスな雰囲気って特殊で。京都にいてないと染み着かない感じなのかなと。地域びいきな感覚なのかもしれませんが。これって、どういう事かなあって。
大庭 
僕らはどうですか?その、東京の俳優っぽいですか?
__ 
全然感じないですね。なんか、京都の人たちなんだってバイアスが掛かっちゃってるかもしれませんね。矛盾しているような気がしますけども。京都の水と時間で生活していると、そういう雰囲気になっちゃうかもしれませんね。
大庭 
京都はやっぱり、変ですよね。閉塞していると言えば言える。でも、抜けてるという感じは与えてくれる。囲まれているけど、息苦しさは感じない。鴨川もあるし。
__ 
鴨川?
大庭 
鴨川があるから逃してくれるというか。あの川がないと、苦しいような気がします。
__ 
街の中にある、自然との境界であり自然そのものというか。ふっと橋をわたると、ドキドキする気がしますね。川の中に足を浸してみたり。結構気持ちがいいですよね。
大庭 
亀がいるじゃないですか、飛び石の。いつか近づこうと思っているんですけど、行かないんだよなあ(笑う)。今度こそ行こう。
__ 
その亀を踏みに行かなくてもいい雰囲気があるかもしれませんね。

タグ: 僕を消費してくれ インクの一滴


役を、演じる

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
大庭 
地点の予定としては2月にロシアにいきます。「ワーニャ伯父さん」と「桜の園」の2本です。本場の、しかもアウェー。ボコボコにされるかもしれないので怖いんですが(笑う)。3月に芥川作品の舞台化ですね。
__ 
頑張ってください。楽しみにしております。
大庭 
今後も地点の公演には出るんだろうなと。でも何があるかわからないですね。来年には京都にいないかもしれないし。
__ 
げっ。
大庭 
あたらしい賭けに出ているかもしれないし。飽きっぽいと思われるかもしれないですけど。一般論ですが、明日のことはわからない。
__ 
いえいえ、いつまでも過去の選択にとらわれている必要はないんじゃないでしょうか。
大庭 
あとはまあ、映画が好きで、年200本ぐらい見ています。機会があれば、映画に出たいなと思っています。地点の舞台があれなので、俳優よりパフォーマーと言ったほうがしっくりされる傾向もあり(笑う)。変な事になってますよね僕ら。それももちろん好きなんですけど、やっぱり役を演じるというのを映画や舞台でもやっていきたいなと思っています。それから、ここ数年ダンス公演にはまっています。2、3年前にデラシネラのきたまりさんにも声をかけてもらいました。演劇の演出家からは全く話が来なくて、ダンスの振付家からは声がかかるんです。2011年にもKIKIKIKIKIKIの再演がある予定です。身体性にすごく興味があるのでこれからもダンス公演は積極的にやりたいと思っています。
カンパニーデラシネラ
マイム、演劇、ダンスといった様々なジャンルを取り込み、フィジカルシアター的手法で注目を集める演出家。
藤田桃子
1995年、パフォーマンスシアター水と油結成。国内外で公演活動を行う。以後2006年3月水と油活動休止までの全ての作品に出演。2003年に自身のマイムユニット「蜥蜴」を結成し、小作品を発表している。(公式サイトより)
KIKIKIKIKIKI
03年京都造形芸術大学 映像・舞台芸術学科在学中のきたまりを中心に活動開始。以後ダンサー個々の特異な身体のフォルムから湧き上がる独自の振付の世界観を追求し実験的に作品の上演を重ねる。06年大学卒業を期にカンパニーとして本格始動。(公式サイトより)

タグ: きたまり 今後の攻め方