山岡さんと役の関係・2

__ 
いつか、どんな演技ができるようになりたいですか?
山岡 
私は大竹しのぶさんがすごく好きなんです。舞台を何度か観に行ったことがあって。それぞれ全然違う役だったんですけど、でも大竹さんご自身が生きてきた何十年か分を全部背負ってそこにいる感じがして。それはすごく素敵だなぁと思ってます。良いことも悪いことも全部背負った上で、でもそれはさておきその役に没入している感じがあって。私もこれからどんどん年齢を重ねて嬉しいことも悲しいこともたくさんあると思うんですけど、それは何一つ取りこぼさずに・全部ひっくるめて抱きしめて、物語に振り回されたいと言うか。
__ 
「物語に振り回されたい」。
山岡 
毎回、台本を最初に読んだ感覚と千秋楽を終えた後の感覚が全然違うんですよ。自分が思ってもみなかった所に連れて行ってもらえるので。そこに行くために、どんどん身軽になりたいなと思っています。自分自身のつまらないこだわりはもったいないなと思っています。もちろんこだわらないといけないことも沢山あるんですけど。
__ 
身軽になりたい・・・私個人はつまらないこだわりを大切にしてしまうタイプなので難しい気がしています。
山岡 
私も頑固なんですよ!だから多々、自分でも良くないと思う一瞬があって。内容にもよるんですけど、何となくで手放すと絶対に後でもっとこじらせるから、そこから離れるべき理由を探って納得しようとします。20代前半の時ほどそういうことは多かったです。「なぜこの人はこういう考え方なんだろう」「なぜ私の考え方ではダメなのか」とかをどんどん知ろうとしていく方が良さそうに思えています。
__ 
山岡さんは役の思考や想念が放射状に広がっていくと想定するのではなく、どこに収斂するかをまず捉えたいように思えます。役の人生のテーマを預かり、その根本を追い求めていく。
山岡 
そうですね、確かにそうかもしれません。あくまで、「あなたはどうしたい?」ということを考えるところがあります。私がハンドルを握るのではなくて。二人乗りの足漕ぎボートで言えば、私が漕ぐ係で役の人がハンドルを持っている。一生懸命漕げば漕ぐほど、色々な別の景色を見せてくれる。

辛い時期もある

__ 
逆に、稽古で辛いことはありますか?
山岡 
稽古が楽しいし好きですとは言いましたが、うまくいかない時や苦手なことに出会ったりとか、どこに向かったらいいんだろうかと悩む瞬間もあります。稽古帰りの電車とかはすごく凹みます。自分の力不足を思い知らされる時もあるし。でもお家に帰って夕飯食べたりあったかいお茶のんだりすると、凹んでるのももったいないなと思って、どうしたらいいかを考えるようにしています。

劇団ZTON vol.14「ソラノ国ウミノ国」

__ 
ZTONの「ソラノ国ウミノ国」。とても楽しみです。
山岡 
ありがとうございます。メキメキと稽古が進んでいます。
__ 
もうあと1ヶ月ですね。どんな作品になりそうでしょうか。
山岡 
今回出演者が多いんですよ。
__ 
オールスターですね。
山岡 
色々な所で活躍されている方がひとつの舞台に集まるんですよ。そろそろ稽古が10日目なので、初めましてという空気感から一歩踏み込んでいるところです。
__ 
とても楽しみです。為房さんは脚本が書けるんですね。
山岡 
31人が出てくる脚本を。出来ないことを知りたいぐらいですね。
__ 
稽古のノリを教えてください。
山岡 
作っていく過程を楽しもうという雰囲気はすごくありますね。大人数なので全員が揃うということはなかなか難しくて。誰かがいない時は代役が入るんですが、先輩方がすごく楽しそうに演じられていたりとか、それに触発された今回初舞台の人の演技にふといい瞬間が生まれたりして。現場としてすごくいい雰囲気だなと思います。
__ 
意気込みを教えてください。
山岡 
今回初めて武器を持って戦う役なんです。今までも強い女性というのは割といただく機会が多かったんですけど、物理的に強い女性は初めてです。自分の思考回路や感情の起伏にどう影響してくるのか、楽しみです。
劇団ZTON vol.14「ソラノ国ウミノ国」
あらすじ
数百年の昔、ソラノ国はウミノ国の軍勢と戦い勝利を得た。
ウミノ国の軍勢は 異形の物。
目にすれば視界がつぶれ、声を聴けば音を失う。
ウミと交わるな。交われば其は災厄となり、ソラを堕とす。
《ソラノ書 第二節》

親から子へ、連綿と語り継がれる『ウミノ国』の伝説。
『ソラノ国』と『ウミノ国』は、高くそびえたったカイリの壁によって分けられ、その交わりは長きにわたり禁じられていた。
…禁じられていたはずだった。

ソラノ国の貧民街に住む少年、ハル。
ある日、彼は一通の手紙を手に入れる。
差出人の名は、アキ。
届くはずのない2人の願いが交差し、閉ざされた壁が開くとき、ソラとウミの真実が明かされる。

【日程】
2019年11月1日(金)~4日(月・祝)
11月1日(金)19時開演【ハルの書】
11月2日(土)14時開演【ハルの書】
11月2日(土)19時開演【アキの書】
11月3日(日)14時開演【アキの書】
11月3日(日)19時開演【ハルの書】
11月4日(月・祝)12時開演【ハルの書】
11月4日(月・祝)16時30分開演【アキの書】
※開場は30分前を予定しております。
※両作品の内容はほぼ同一のものとなっており、話の筋や結末が変わるものではございません。「ハルの書」「アキの書」は、一部のシーンでの視点が変化し、その違いをお楽しみいただけます。


【会場】
in→dependent theatre 2nd
(〒556-0005 大阪府大阪市浪速区日本橋四丁目7-22 インディペンデントシアター2nd)


【チケット料金】(税込)
S席(各回限定10席・指定席・一般のみ)
前売料金一般:¥4,500
当日料金一般:¥4,800

A席(自由席)
前売料金一般:¥3,500学生:¥3,200
当日料金一般:¥3,800学生:¥3,500

※S席は最前列中央寄りの10席です。
※学生は大学生以下が対象となります、当日受付にて学生証の提示をお願いいたします。
※未就学児のご入場はお断りいたします。
※チケットはお一人様1枚必要です。
※開演時間までにご来場いただけない場合、当日のお客様を優先させていただく場合がございます、ご了承ください。開演5分前までにご来場いただくことを推奨いたします。


【キャスト】
■劇団ZTON
久保内啓朗
高瀬川すてら
為房大輔
図書菅

■GUEST
京本諷
堀内玲(リアルム)
maechang(BLACK★TIGHTS/Sword Works)
木暮淳(劇団土竜)
るりこ(TP-SATELLITE)
三浦求(ポータブル・シアター)
堀江祐未(サテライト大阪/魅殺陣屋)
中 聡一朗(激富/GEKITONG)
山岡美穂
岡本光央((株)キャラ/華舞衆 彩り華)
BANRI(Sword Works)
小出太一(劇団暇だけどステキ)
野倉良太(東京ガール)
田中之尚(カンセイの法則)
平宅亮(本若/Sword Works)
新免誠也
岡田由紀
亮介(株式会社イリア・モデルエージェンシー)

■アンサンブル
上野剛吉(リアルム)
上原由子
大塚洋太
神田厚也(リアルム)
菊崎悠那(Sword Works)
澤?真矢
土岐省吾(K-HEAT)
難波優華(Sword Works)
三浦環加奈(テアトルアカデミー)

【スタッフ】
脚本・演出:為房大輔
舞台監督:今井康平(CQ)
照明: 牟田耕一郎(ママコア)
音響:Motoki Shinomy(SAWCRNT/common days)
サンプラオペレーター:福島健太(本若)
衣装: 鈴木貴子
ヘアメイク:KOMAKI(kasane)
小道具:劇団ZTON
殺陣・振付:為房大輔
ビジュアル撮影:脇田友(スピカ)
宣伝美術:中森あやか(劇団ZTON)
当日制作:秋津ねを(ねをぱぁく)
制作・広報:劇団ZTON
企画・製作:劇団ZTON

岩合光昭写真集『こねこ』

__ 
本日はお時間を頂き、誠にありがとうございました。山岡さんが、俳優として・同時に人間として真摯にご自身の役と向き合っておられる事がよく分かりました。そうでなければ体得出来ない感覚について、お話の中で少し示唆されていましたね。今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼント送ってまいりました。
山岡 
ありがとうございます(開ける)あ、猫。可愛い。ありがとうございます。あぁ可愛い。私、猫を尊敬してるんですよ。自分の体に収まる範囲の幸せを携えてるんですよね。欲張りすぎず、例えば日当たり良いなあとか美味しいもの食べられたなぁとかそういう幸福。
__ 
分かる気がします。
山岡 
見るからに不幸そうな猫ってあまりいないじゃないですか。野良猫でも気持ち良さそうにお昼寝してたりとか。そういうことを忘れない生き方がいいなと思っています。

外の世界へ

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い致します。彗星マジックの勝山さんにお話しを伺います。最近、勝山さんはどんな感じでしょうか。
勝山 
よろしくお願いします。この間までメルボルンに行ってたんです。価値観変わるかなと思ってたんですけど意外と何も変わらなかったのがびっくりしました。国によって空気が違うとか異文化を感じるとか言われるじゃないですか。自分にどんな影響があるのか興味があったんですけど、去年台北に行った時に思ったのは「あ、裏なんばや」、と。どこまでも続く裏なんばだったんです。自分が知ってる場所が広がっている空間だったんですよ。
__ 
勝山さんは、人種や民族による違いよりも人間の共通点を見いだすことができるから、じゃないでしょうか。
勝山 
ええこと言うてくれますね。
__ 
メルボルンにはどのような。
勝山 
2017年に作ったプシュケという作品を、メルボルンフリンジフェスティバルで上演しに行きました。和田雄太郎の一人芝居です。相内さんがINDEPENDENTの一人芝居を世界に打ち出す気満々で、まずはノンバーバル作品であるプシュケで切り込んで行こうとしておりまして。
__ 
広がっていっていただきたいですね。
勝山 
大苦戦でしたけどね。お客さんがなかなか来ないというのがまずはあって。宣伝のしようがないんですよ。新しい場所に出て行くのも必要なんですけど、一つの場所にこだわるのも同じぐらい重要なんだなと思いました。台北に行った時の経験値はほぼメルボルンでは通用しなかったんです。もう一度行きたいですね。続けていければいいなと思っています。
彗星マジック
そんな国が隣にありそうな、昔こんな時代があったような、
未来こんなことになりそうな、そんな空想のリアルが
念頭にある無国籍ファンタジーを基盤に物語をつむいでいます。
見上げると、目が痛くなるような青空に浮かぶ大きく厚い雲の中にはきっとラピュタがあるんだ、
ずっと使ってきた時計や万年筆には魂が宿っているに違いない・・・
そういった思いを大切にする作品をこれからも発表していけたらなあ、と思っています。
が、
実は大体、何でも有りです。
「面白い作品を作る」
だけです。
座長・勝山修平
(公式サイトより)

彗星マジック23景「詩と再生」

__ 
彗星マジック23景「詩と再生」ですね。大変楽しみです。いま稽古はどんな感じでしょうか。
勝山 
顔合わせというものをショートカットしまして、もう稽古に入っている状態です。でもまだお芝居の稽古は3割で、7割は喋ってます。客演さんのうちオーディションで選ばせていただいた方が半分という、ほとんどの人が初めてご一緒するという状況で。
__ 
今回はどんな作品になりそうでしょうか。
勝山 
人に興味を持つのって、どこから始まるんだろう・・・ということがわからなくなるという時期に今僕自身が入っていて。そういう、興味の方向性ってよく分からないなぁということから始まる芝居が書きたいなと思ったんです。うまいことコミュニケーションができないところから始まるお芝居。それが、詩という表現を行うことによって、自分自身を知って、書いた人への興味と共感が生まれていく芝居が作れたらいいなと思っています。
__ 
詩って面白いですよね。
勝山 
全然興味がなかったんですよ。好きな詩は何ですか、と聞かれたら宮沢賢治の詩(「サキノハカといふ黒い花といっしょに」という詩です)ぐらいで。あとは谷川俊太郎をパラ見するぐらいで。どうですか。
__ 
ボードレールとかは好きでしたね。詩や俳句の作品にはあまり詳しくないですが、短文の作品から見て取れる、作家の意識とかそういうものに興味があると思います。
勝山 
僕もね、詩には何一つ心を動かされないですよ。ただ、詩を書いた人には興味があって。その辺りの背景を知った後に詩を読むと、なるほどな、面白いな、と。ポストグラフの時にも思ってたんですが、僕は完成品ではなくそこに至るまでの人間とか人生がおもろいんやろうなと思っています。そこが描けたらいいんですが、まあ難しい。
__ 
ポストグラフの2015年の上演の絵画を見るシーン。絵画が「黒い木枠の中に、画家が演じる俳優がいる」という形で表現されていましたね。それをちょっと思い出しました。
勝山 
多分、ああいうことをやりたいんでしょうね。「アルバート、はなして」というアインシュタイン博士の人生を取り上げた作品を作ったんですが、相対性理論そのものには僕はあまり興味がなくて、そこにたどり着いたあの人はどんな人なのかということが面白い。
__ 
彼らの成した仕事が誰か一人の人間を救う、みたいな事がありますよね。「チムニースイープ・ラララ」でもそうだった。
勝山 
脚本を書いてて、昔から、セリフが好きだとおっしゃってくださる方は多いんです。ただ、僕自身はセリフには何の愛着もなくて。所詮台詞なんですよね。所詮、役者が自分の役を作って生きていくためのとっかかりにすぎないんですよ。とっかかりでしかないものにお客さんが敏感に反応してくれることがすごく嬉しい反面、もっと役者さんを見て欲しい、なぜあの時にあの表情なのか、とか。でもやっぱりセリフの方に着目されるんですね、それはやっぱり役者さんが自分のセリフをものにしてるからだと思うんですけど。
__ 
個人的には、立花裕介さんの演技が、セリフを上手に持っていきながらも、勢いとか人間性をテキストに沿った形で暴れさせているのが素晴らしいなと思う。
勝山 
ああ、そうですね。花さん、彼の事をそう呼んでるんですけど、僕のセリフを言うために生まれてきたと思ってるんです。彼は客演さんだし、劇団員だったとしても絶対にうまくいかないと思ってるんですけど(昔はすぐに喧嘩していたので)でもうちの芝居にすごく合ってる。台本書いてる人としては、どんな人にもそうあってほしいです。今回出てくださる福田さんとかもめちゃくちゃうまいんですよ。化け物かというぐらい。みんなそういう風に自然に自分の言葉を喋れるような演出が出来たらめっちゃ気持ちいいだろうなと思います。そのための稽古で会話が7割です。
彗星マジック23景「詩と再生」
脚本・演出:勝山修平

出演:池山ユラリ(彗星マジック)・上田あやみ・小谷地希(凡タム)・田米カツヒロ(舞夢プロ)・鳩川七海(YTJプロ/幻灯劇場)・早川夢(?2劇場)・福田恵(劇団レトルト内閣)・南愛美・米山真理(彗星マジック)

10月25日(金)19:30
10月26日(土)14:00/19:30
10月27日(日)11:00/15:00

料金: 前売ご予約  3,000円 当日 3,300円 学生 1,500円(前売・当日ともに)
※受付にて学生証をご提示いただきます

作・演出・宣伝美術:勝山修平(彗星マジック)
プロデューサー&テクニカルワーク:相内唯史(at will)
衣装:西出奈々(彗星マジック)
当日運営:渡辺大(Limited_Spaice)
企画・製作:彗星マジック

会場:
インディペンデントシアター 1st

どこまで進むか問題

__ 
彗星マジックの作品には、何と言うか、お話の設定(この言い方はあんまり良くないと思うんですがあえて使います)と物語の流れに微妙なねじれが存在するように思います。「ポストグラフ」の時、お嬢がいつのまにか物語に介入してくるじゃないですか。お話の流れと設定がちょっとずつ、攘夷の流れとともに矛盾をはらみながらも変わっていくのがすごく面白かった。
勝山 
それは、こっちが伝えたいことを全部拾ってくれてとても嬉しいです。あの話はエンディングからスタートしていて。お嬢が読んでいる手紙の中のお話なんです。お嬢がその手紙にどんどんのめり込んでいくにつれて、お嬢がその世界に入っていくんです。
__ 
つまり、お嬢の頭の中でもあるということですか。
勝山 
そう、お嬢が「こういう事なんやろうな」と思っている、ということでもあるんです。
__ 
それは・・・台本が欲しくなってきましたね。
勝山 
全てを俯瞰で見れるのはお客さんだけ、というお話だったんですよ。
__ 
そうした大胆な構成を仕掛ける事と、お客さんを面白がらせることについて、どのような折り合いを付けていらっしゃるんでしょうか。
勝山 
気をつけていることはあって、「高尚なことはやらない」ということはすごく意識しています。これが、詩が苦手だとか芸術作品が凄く良いとは思えないという原因だと思うんですけど、芸術は理屈がないと楽しめないですよ。誰かがコンテンポラリーダンスを見て面白いと思っても僕にはその理屈が分からないから楽しめないんです。わからないけれども、「多分良い」と思って出してもそれは味のぼやけた薄いコーヒーみたいになるんじゃないか。いわゆるエンターテインメントの演出であったりとか、照明や音響を変えていくであるとか、とにかくお客さんには退屈して欲しくないんですよ。話はよく分からなかったけど見た目は良かったとか、そこに流れている音楽とかで彼ら彼女らの心情が分かった、みたいな何かしらの救済措置を入れて作っています。でも結局僕も自分自身が好きなものは変に小難しく考えてしまうので、結果分かりにくくしがちなものになってしまうんですが…。難しいです。
__ 
本当に難しいですよね。
勝山 
ともすれば奥に奥に行こうとしてしまうから。
__ 
中間をとるみたいなことってよく言われますけど難しいですよね。
勝山 
わかりやすいものもわかりにくいものも全てが一つの作品に入っている、みたいなことができれば最高なんですけど。
__ 
全体の仕組みを作って、階層が深くなり過ぎないようにしても、大きいレベルの事情でどうしても尺が揃わないとか、細かい単位に刻んで解説を入れたら今度はテンポが悪くなったり。
勝山 
エヴァンゲリオン、あるじゃないですか。僕はゼルエルが出てくるまでがめちゃくちゃ好きで。そこまで巨大ロボットものとして面白いし、深い謎がある感じとか、何も考えずに見ても深く考えても楽しめる。でも、その後から深く考えないと楽しめない作品になっちゃった。
__ 
確かに!
勝山 
僕はその時にどれだけプロの人でも、ある一定のところまで進もうと思ったら、どこか他人には難しい場所に向かってしまうんだということがすごく腑に落ちて。どこで終わるべきなのかも考えるようになりました。
__ 
どこで、未踏の地への進入を止めるべきかどうか。
勝山 
ある程度のところまで進んでしまえたとして、なお、それが全員に受け止めやすく、ついてきてね、と言う吸引力をもつにはどうすればいいんだろうか。今でも考えるんですけど、エヴァはどうすれば僕にとって幸せな作品になったんだろうということです。あくまで僕にとってですけど。
__ 
TV版の最終回は確かによくわかんないことになりましたね。旧劇場版、私最近改めて見返したんですけど、意味が分からないくらい迫力があって面白かった。維新派のセットが出てきたり。でもネットの書き込みであるとか実写とかの仕掛けがなく、謎に没頭しきった旧劇は見てみたいですね。
勝山 
僕も旧劇場版は大好きなんですけど、心理描写がそのまま世界に影響しちゃって、どっちかどっちかわからないまま世界は進行していて。よくわからないけど何か深いところに着地したみたいなのがちょっと気持ち悪くて。
__ 
そうですね。
勝山 
まるで急に強い光を当てられて「面白かったでしょ」って言われた感じで、眩しくてびっくりしたのが面白いということにつながるのかなあ、って思ってしまったんです。

もう一回

__ 
勝山さんが演劇を始めたのには、どんな経緯がありますか?
勝山 
かいつまんで言うと、最初は漫画を書いていて。でも漫画というのは一人で描くものなのでとても孤独なんですよ。ある日、友達が演劇をしに北海道に渡ったんですよ。親に怒られるから札幌の大学に入学して演劇部に入って、さらにOBOGが作った劇団に客演で呼ばれたそうなんです。それはめっちゃ面白かったらしくて、修平見ろよ、と。無理やり見せられたんですが、めちゃくちゃ面白かったんです。僕はお芝居というものが面白いだなんて微塵も思っていなくて。そういう衝撃を受けてなおかつ、終演直後に拍手が来るんです。これは漫画では出来ない。描いて渡すまでに時差ができるので。しかも一人ではなく、みんなで作るんですよ。みんなで世界観を作って共有して一つのものを作って生で発表してその場で反応がもらえる。こんな幸福なコンテンツが世の中にあってもいいのかって思って。で、やろうと。そこで見た劇団が千年王國です。僕はお芝居というものはその瞬間特別であればいいと。終わったらもう夢みたいに忘れてもらってもいいと思ってるんです。見てる瞬間だけ楽しければいいじゃないですか。もう一度見ることはできない、だからこそ「もう一回」を求めてるんだと思います。
__ 
再生性はないですね。
勝山 
繰り返し求めてしまう、でも、にもかからわず、特に必要ないと思えちゃうのもいいんですよ。僕は音楽も漫画も大好きで、人生を楽しめるものなんてこの世に溢れてるじゃないですか。しかもわざわざ僕が作らなくても他の人たちが良い演劇をたくさん作ってる。僕がわざわざやる必要がないですよ。そう考えるとやらんでいいことを企画して、で、それをおもろいと思ってくれた人が全力で乗ってきてくれる人がいて、さらに楽しんでくれる人がいてみたいなコンテンツは他にあまりないなと思うんです。
__ 
確かに演劇はこの世に必要ないですね。
勝山 
演劇はよく言われてるように縮小してるかもしれないし、面白くないコンテンツとして受け止められつつあるのかもしれませんけど、僕は結構そういうのはどうでも良くて。
__ 
同感です。
勝山 
プロだから面白くなければならないとかアマチュアだから面白くなくてもいいとかそんなの全部関係なくて、いま全力でやれるものがあるからには全力で取り組めばいいじゃんと思ってます。

たどり着く

__ 
最近のテーマを教えてください。
勝山 
気を付けてることでいいですかね。「怒らない」こと。気が短いのがすぐ怒っちゃうんですよ。あと口が悪い。人をイラッとさせることをすぐ言うっちゃうんですよ。まず怒らないことから始めようと。
__ 
なるほど。
勝山 
ちょっと前までは、相手より自分の考えの方が優れているという考え方がすごくあったんです。でも、それはお芝居を作る上ではあんまり良くない考え方だということにやっと気付いたんです。要は、言い方悪いなと。
__ 
難しいところですよね。表現の仕事って、その裏側での管理や自律がめちゃくちゃ重要じゃないですか。良い緊張感を保つためには、はっきり言うこともやっぱり必要ですから。
勝山 
心も体もしんどいお芝居を作ることもあるじゃないですか。そういう時の表現が役者から発されない時、「しんどい思いをしたことがないからじゃないか」と思ってしまうんですね。だから稽古でしんどい思いをしてもらうために追い詰める形になって、結果的には良いものが出てくる。その道筋が当然やと僕は思ってたんですよ。けど、あるお芝居の時に最初から最後までゲラゲラと笑いながら稽古して、でも芝居ではちゃんと辛さ、苦しさが表現できたお芝居が作れたということがあったんですよ。「俺は何をやってたんや」と。同じぐらい良いものが作れるんだったら、楽しいルートを辿ればよかったのに、わざわざ苦しいルートを選んでいた俺は何やったんや。そう思った事もあったりして。
__ 
そこにたどり着くために、怒ってきたというプロセスは必要だったんじゃないでしょうか。
勝山 
そう言ってくださるとありがたいです。
__ 
マチズモが築いてきたも当然あると思う。価値観が変わっていく時代、それを否定しきってしまっていていいのだろうかと個人的には危ぶんでいます。
勝山 
今回の作品もその辺りを意識しているんですよ。苛酷な状況にいる時は自分を俯瞰することができないから、それがどういう状況なのかが分からない。その時代のリアリティとか考えていた事を伝えるというのはすごく難しい。現在の価値観も入ってくるから、プラスかマイナスかを解釈するところから始めないといけない。プラスもマイナスもなく全然違う価値基準なんだよということを認め合うのにすごく時間がかかってしまう。だから俯瞰することを止めて、台本の中に飛び込んで人生の中に生きないといけないじゃないですか。それを2か月の稽古の中で作るのはまあまあやっぱり大変だけど、それがお芝居を作ることの難しいことでもあれば面白いことでもありますね。
__ 
この10年で価値観というものは右に行ったり左に行ったりしてますからね。
勝山 
特にSNSが生まれて、今まで言論活動は一部の人しかできなかったのが、今や誰でも言論をリードすることができるようになった。今の言論環境で、昔の人の保守性をなじってしまう事もある。「何故、昔はそんな時代遅れの考え方をしていたのか?」と言われても、思いつかなかったから、なんですよね。役者って大変だと思います。自分たちの経験や価値観に無かったことを作っていこうとするのは大変ですから。

質問 益山 貴司さんから 勝山 修平さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた劇団子供鉅人の益山貴司さんから質問を頂いて生きております。「朝起きて一番に考えることは何ですか?」
勝山 
俺めっちゃ夢見るんですよ。だから、さっきまで見てた夢なんだっけ、です。
__ 
なるほど!松山さんも夢のことを考えるんだそうです。ちなみに私は、完璧に構成されたエンターテイメント作品の夢を見たことがあります。全て完全に忘れましたが。
勝山 
残念ですね。僕は夢で見たお芝居をそのまま台本に書いたことがあります。めっちゃ面白かったんですよ。それが「あかねさす」です。元々ラジオドラマから始めたんですけど、夢の中で観劇してて。夢にしてはもったいないと思って、その日のうちに全部書いて。

質問 新藤 江里子さんから 勝山 修平さんへ

__ 
子供鉅人の制作の新藤さんからも、質問を頂いて来ております。「最近見た中で一番面白かった夢は何ですか?」
勝山 
面白かったというか不思議と言うか、同じ夢ばっかり見るんですけど・・・どこかの堤防を友達と一緒に歩いていて。たまにそういうところで畑とか田んぼとかをやっている家があるじゃないですか。そういう場所の納屋に入ったら農機具がいっぱい置いてあって、「この納屋の持ち主はこれでいっぱい人を殺してるんじゃないか、俺達がここに入ってることがバレたら殺されるんじゃないか」という夢を繰り返し見るんです。
__ 
その夢、何かを示唆しているかもしれませんね。

デザイナーとしての勝山さん

__ 
勝山さんはデザイナーでもあるんですよね。月曜劇団の「ゆるやかな結び」のチラシがここにありますが、大変可愛いですね。
勝山 
これは本当にオーダー通りにやらせてもらいました。スクラッチアートとか、色んなものが緩やかに結ばれてるもの、と聞いて。でも色々な素材を集めてきても、そこに共通点がないから結ばれてるわけじゃない。だからひとりで色んな素材を描いている方の絵を使わせていただきました。なので僕が担当したのはレイアウトとタイトルロゴだけです。どの団体の時でも思うんですけど、結局、僕は僕が作れるものしか作れないので。なるべくその劇団さんのカラーと、オーダーに合うものを作ろうと思います。変に何か自分を出してしまうと悪い意味で目立ってしまう。逆に、どれだけ自分の色を出さないようにしてもどうしても出てしまう。だから自分を殺そうとも思ってなくて。後はまあ、見やすいものを作ろうと思ってます。
__ 
今回の「詩と再生」のチラシも何か示唆しているような感じがしますね。色々な文字が人の前に選択肢としてあるけれども、果たして私はそれほど本当に自由に選んでいるのだろうか、みたいな。
勝山 
言葉も自分の感情も人の言葉も、実際にはよくわからないじゃないですか。どれだけ確信を持っていたとしてもなかなか共有できない。今回に関してはお客さんには漠然と楽しんでもらえたらいいなと思ってます。ニュアンス的には「はじめてのラブレター」です。気持ちを伝えたいけど、何か比喩を入れてしまったりとかで価値を底上げしようと思うけどすごく怖い。これを書いたら余計いらないことになってしまわないか。そういう風に慎重になりながら言葉を紡いでいるお芝居になればいいなと思っています。

ロディア スクリプト ボールペン 0.7mm

__ 
今日はお話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。ただ、実はちょっと勝山さんの好みを把握しきれずに買ったものですので、もしお好みが合わなければ他の方に譲渡していただいて大丈夫です。
勝山 
ありがとうございます(開ける)これは僕が文房具が好きだということを知っていたんでしょうか・・・しかも僕が一番大好きな赤色じゃないですか。
__ 
実はチラシの色と合わせたかったんですが、微妙に違って。
勝山 
凄いですね~。僕、赤色大好きです。
__ 
なんとなくそんな気がしていました。
勝山 
しかもボールペンですか。
__ 
シャープペンだと稽古の時に使いづらいので。カチカチ音がしたり、稽古場に芯が落ちたりするので。
勝山 
ちょっと怖いなと思いました・・・僕、ボールペンばっかり集めてるんですよ。
__ 
これは持ってましたか?
勝山 
持ってません。しかも7ミリじゃないですか。
__ 
ただ、そのペンのシャフトの表面がザラついてるタイプなんですよ。そこが一番重要なのでちょっと不安でした。
勝山 
ボールペンと時計は何個あってもいいですね。その日の気分で替えているので。

劇団子供鉅人 本公演ニューカウントvol.10「不発する惑星」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。劇団子供鉅人の益山貴司さんと制作の新藤さんにお話を伺います。
二人 よろしくお願いします。
__ 
最近、益山さんはどんな感じでしょうか。
益山 
「不発する惑星」の稽古が始まっています。ワークショップでこうやったら面白んじゃないかというアイデアを手探りしています。バレーボールをしたり、ゲームしたり。割と自由闊達にやってる感じですね。
__ 
稽古場の雰囲気が本番でも伝わったらいいですね。
益山 
劇団の良いところって、仲間って感じが舞台に出るところなんじゃないかと思ってて。プロデュース芝居とかでも、生き生きした雰囲気が出るのは座組の人たちがお互いを信頼しているのが根底にあるから。それが伝わるとすごく安心して見れますよね。
__ 
子供鉅人が大阪でも公演をやってくれるというのが、私にとってはすごく嬉しいです。10月3日の大阪公演初日からスタート、10月15日~21日東京・原宿VACANTまでの短期決戦ですね。
益山 
僕らもやっぱり、大阪でやるとほっとする瞬間ありますね。昔からのお客さんが来てくれたり。客席が暖かいので、そういうところに甘えながら(笑う)良いスタートダッシュを切れるように。
劇団子供鉅人
05年益山貴司・寛司兄弟を中心に大阪で結成。「子供のようで鉅人、鉅人のようで子供」の略。関西タテノリ系のテンションと 骨太な物語の合わせ技イッポン劇団。団内公用語関西弁。人間存在のばかばかしさやもどかしさをシュールでファンタジックな設定で練り上げ、黒い笑いをまぶして焼き上げる。生バンドとの音楽劇から4畳半の会話劇までジャンルを幅広く横断。3度に及ぶ欧州ツアーやF/T13参加。CoRich舞台芸術まつり!2012準優勝。関西でほんとに面白い芝居を選ぶ「関西ベストアクト」二期連続一位など勢力拡大中。(公式サイトより)
劇団子供鉅人 本公演ニューカウントvol.10「不発する惑星」

オリンピック開催予定地の工事現場で働くエロ漫画家タイチ。
「輝かしい日本の未来」のために働きながら自分の未来が見えない彼は、世田谷の裏ミニコミ紙「バックドラフト」に実録不倫漫画「不発する愛情」を連載していた。
そんな彼は隣人の主婦、タマキに思いを寄せているが、彼女は自宅で開く料理教室があまりにまずいため、近隣の主婦たちにいじめを受けていた。
ある日、工事現場で不発弾が発見される。
工期を急ぐ現場は、バイトのタイチに埋め直しを迫るのだった。

過去の因果が我が身にタタリ、未来のラッキーがたまにアタル!
2019年の東京を舞台にした、ブラック・スイート・コメディ!(でも泣けるよ!)

不発する人々の、不発するぶざまなロマンス劇!

出演:益山寛司、影山徹、億なつき、ミネユキ、山西竜矢、益山U☆G、うらじぬの、地道元春、益山貴司

脚本・演出:益山貴司

【大阪公演】会場:HEP HALL
2019年10月3日(木) 19:30
10月4日(金) 19:30
10月5日(土) 13:00/18:00
10月6日(日) 13:00/18:00
10月7日(月) 14:00

【東京公演】会場:原宿 VACANT
全10ステージ
10月15日(火) 19:30
10月16日(水) 19:30
10月17日(木) 14:00/19:30
10月18日(金) 19:30
10月19日(土) 13:00/18:00
10月20日(日) 13:00/18:00
10月21日(月) 14:00 ★oono yuuki アフターライブあり


TVドラマ監督初体験

益山 
それと、昨日ちょうど情報が解禁されたんですが、劇団スフィアという声優さんたちの劇団のTVドラマの監督をさせていただくことになりました。東京の小劇場から5組出るんですが、その内ひと組の脚本と監督です。元々映画少年なところがあるので楽しかったです。演劇とは違って、シーンをカットで割っていくというのがなかなか追いつかないですね。関わっているスタッフさんが多いので、全部の様子を見ながら進めていくというのが新鮮でした。
__ 
瞬間のイマジネーションが問われる感じですね。
益山 
そうですね、やっぱり後で編集があるから、一応は撮っておいて後でカットするなり使うなり、が出来るということもあって。僕も本番に入ってからも、どんどん訂正するタイプなので、そこは似てるなと思いました。
__ 
ライブ感がありそうですね。とても楽しみです。
新藤 
MXなので、配信になるかもしれません。関西の皆さんにも是非見ていただきたいですね。
__ 
どんな話になるかちょっと期待ですね。
益山 
タイトルはもう出てるんですけど「コミック・オブ・ザ・デッド」というゾンビものですね。ゾンビものって、自分の芝居を通して実は初めてやったんですよ。楽しいですね。何か目的がはっきりしてるから。登場人物がどんどん死んでいくし。
__ 
斧女は意識持ってるしね。
益山 
あ、よく覚えてらっしゃる。
__ 
(子供鉅人制作の倉本さん、以前のインタビューでゾンビがとにかく好きって言ってたなあ)

対決

__ 
「不発する惑星」、現在の手応えはいかがでしょうか。
益山 
今回はシンプルにしたいなということを最近考えていまして。セットもいらないな、プロレスみたいにリングが一つあるだけ、みたいな。
__ 
大道具を使うのではなく、なるべくシンプルにするという事でしょうか。
益山 
私、凝る時は凝ってしまうんですよ。ダンボールで全ての背景を作っちゃったりとか、役者を100人出したりとか。でも今回は、役者が際立つ舞台にしたいなと思っています。
__ 
今回は役者の方を目立たせたいと。
益山 
そうですね、私は結構空気を作りたいという欲望があって。やりたい演出をするために脚本を書くというところがあったんです。今回はいつになく、演出をするということと脚本を書くということを切り離したいと思っています。脚本は脚本で、言葉でどんな勝負が出来るのかという挑戦をした上で、演出家の益山貴司にバトンタッチ出来たらいいなと思っています。このシーンを演出するためにこういう脚本を書きましたということじゃなくしたい。最近の三文オペラとかマクベスとか、既にある脚本をどうやって自由に解釈して演出するのか、それがすごく楽しかったんですよ。今回はセルフでやってみたい。遅筆なので掛け持ちで演出することになるんですけどね(笑)。

不発するロマンス

__ 
不発というテーマについて色々考えてきました。不発とは失敗とはまた違う概念なのかなと思っていて。「自分の欲求があって、それを満たすための行動が定まっているのに、行動に移すことが出来なかった」というのが一般的な不発。そして「行動したけどその途中で失敗した」や、「行動を完了したが残念、振られてしまった」というのも不発の中に含まれてしまうように思えるんですよ。自分の目的が達成出来なかった事を自己憐憫の中で評するとき、「不発」ほどちょうどいい言葉はないんじゃないか。その内的体験は、内向きに人を成長させると思う。その意味では感受性豊かになると思う。
益山 
人にはみんな不発弾みたいなものを抱えてると思うんですよね。頑張って漫画を書いてたけど勇気が出なくて投稿できなかったとか、あの子のことが好きで好きで手紙を書いたけど一通も出せなかった、とか。妄想とかとは全然違う、自分の中で蓄積されながらも起爆スイッチを押せなかったのが不発弾なんじゃないかと思います。火薬がおそらくパンパンに詰まっているものの爆発させることが出来なかった弾。それが時々変な形で爆発する事もあったりして、その時にロマンだったり悲劇だったり喜劇だったりが生まれるんだろうなと思います。
__ 
変なタイミングで爆発する時。自分では完全に不発弾をコントロールしてるつもりでも、妙なタイミングで出てきてしまうものがあるんですよね。
益山 
ありますよね。人から言われてなる時もあるし。自分で間違ってスイッチを押しちゃう時もあるし。でもそれって人間だけじゃなくて国や集団でもある。私が子供の頃に住んでた町で不発弾が見つかって、全員避難しないといけない時があったんですよ。町全体がすっからかんになっちゃったんです。それが結構、自分の衝撃的な原風景になってるところがあります。戦争という大昔の不発弾が今の私たちの生活を変形させる瞬間というのは不思議な気持ちがするし、過去と現在が地続きになる瞬間が面白いなと。
__ 
いつもは絶対に顔を出さないけど、実は薄く存在は知っていて、何かの拍子にその頭を出してくる。
益山 
自分が今やっていることも、将来何かの不発弾になるのかもしれない。
__ 
そう考えると怖いですよね。大人になったからこそ、不発弾への警戒が強くなってくるような気がする。
益山 
私は若い頃、自分は何でもなれるタイプの人だと思っちゃってたんですね、だから弾のボタンを押せないんじゃなくて押さないだけ、俺はまだ本気だしてないだけだと思っちゃってたんです。でもある程度歳取ってくると、やっぱりこれは無理だな、なれないなと気がつく瞬間。それが一番無様というか、悲しいというか。
__ 
自分の限界を知る瞬間ですね。
益山 
それを美しい思い出とするのか、苦い瞬間とするのかは本人の気持ち次第なのかなと思います。

爆発よもやま話

__ 
不発弾が登場人物に埋まっているという触れ込みの作品。最初からスリリングですね。
益山 
トラウマ大合戦ですね。
新藤 
トラウマのカードゲームやな。
__ 
ご自身としては、見せ方についてはどんな立ち上げ方が有効だと。
益山 
本当にプロレスみたいな感じがいいかなと思っていて。役者達があそこに続々と登場して格闘していくというような感じで入れたら面白いだろうなと思いました。会話の格闘技みたいな演劇ができたら面白い。
__ 
格闘技は実際やりましたね。
益山 
みんなボロボロになりましたね。
__ 
今回は会話?対話?による戦い。
益山 
でも面白い演劇ってだいたい格闘技みたいですよね。攻守が入れ替わりながら、お互い攻めの姿勢で。
__ 
そう考えると不発というテーマは面白いなあ。見た後に色々考え込みそう。新藤さんはどんな不発弾を抱えているんですか?
新藤 
私ですか?私は益山さんと似ていて、やりたいことがいっぱいあった人間でした。服飾系の大学に行ってたんですが学生時代はバンドをやっていて、そのバンドは辞めちゃったけど明日は吉田寮のライブに出るし。バンドを辞めて2、3年はドラムを触るのも嫌だったんですけど最近はまたちょっと楽しくなってきたりして。というので、子供鉅人のメンバーとバンドやったりとか。あと演劇やってるとファッションも音楽もどうしても絡んでくるから、色々掘り起こされますね。爆発はしなかったけど・・・
益山 
不発してるね(笑)
新藤 
無限にあり過ぎて。
__ 
他ならぬ、自分こそがその不発弾の存在を知っている。
新藤 
普段は忘れているようで、何かのきっかけで明確に思い出すからね。
益山 
極端に言えば、爆発させて成功させることだってできたわけですもんね。自爆は完全に死亡だけど、今スイッチを押したら意外と思いを遂げられた、みたいな。めっちゃ不謹慎な例えですけど、戦争で使われた爆弾の事故は、爆弾としては成功ですから。それは歪んだ成功だけど。
新藤 
爆弾を作った時に求めていたものとは違うカタチだけど。
__ 
爆弾の武器としての重要な機能は、「爆発すること」よりも「爆発しないこと」だという論理転換があって。つまり、着弾や起爆まで絶対に爆発しないこと。
益山 
なるほど。
新藤 
タイミングを必ず守ると言う。
__ 
花火とかね。
新藤 
あ、そうですよね。暴発したら終わりみたいな。
__ 
そして不発弾が危険なのは、その機能が生きているかどうか誰にも保証出来ないからでしょうね。
新藤 
外からの刺激で起爆するかもしれない。昔好きだった人の香水を外で嗅いだだけでうわってなってしまう事もあるから。
__ 
ああ、分かる。
益山 
あるね。外圧によって。
新藤 
掘り起こされてしまう。

質問 山中 麻里絵さんから 益山 貴司さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、山中麻里絵さんからの質問を頂いてきております。「夏にしておきたいことは何ですか?」
益山 
夏にしておきたい事・・・。なんか難しいですね。多分、そういうのって無意識に行ってるんですよ。花火とか海に行くとかってことじゃなくて。意外と深い質問だなぁ。
新藤 
考え込んでる!
益山 
いやあなたは?
新藤 
本当は海に行きたい。海の近くで育ってるんで。でも行くタイミングがない。釣りをしに行こうと思ってたんですけどバタバタしてて・・・
益山 
あ、分かった。全季節に言えることなんですけど、秋を待つことですね。
新藤 
オシャレな事いうわ。
益山 
最近は暑さも盛りを過ぎて、クーラーもなんだから窓の際に布団を敷いて寝てるんですよ。ちょっと前までは夜中でも蝉が鳴いていたのに、ある時を境に急に蝉の声が聞こえなくなったんです。代わりに虫の声が聞こえてきて「あ、秋になった!」と。子供の時は季節が変わったということに気づかなかったんです。でも歳取ってくると季節の変わり目が明確にわかるようになって。花火とかをしようと、夏を楽しむということもするんですけど、季節が切り替わるのを楽しむというのも大切なんですね。
__ 
その時、体に何か変化が起こってるんですよね。
益山 
体と、心の中でも。一気に秋や春になった瞬間。
新藤 
私たちが暦で動いていないというのもあるからなおさらですよね。学期も年度末もないから。
益山 
ナチュラルに教えられてるところがあります。「暦の上では」とかじゃなく。肌寒くなったり、空気が澄んだな、と思うと冬。

音楽:oono yuuki

__ 
oono yuukiさんの音楽がまた楽しみです。
益山 
出会いはうちのキキ花香が知り合いだったんです。「ハミンンンンンング」と「SF家族」に続き3作品目、すごく気も合うし彼自身の世界かも確立されていて。いわゆる劇伴音楽のように芝居に合わせるというよりも自分の音世界を提案するみたいな。一緒にやっていてすごく面白いです。
__ 
今回の「不発する惑星」の不穏な感じとすごく合いそうな気がします。
益山 
上がってきた音を聞いて脚本や演出を変更することもあるので。そこは良い関係だなと思います。空気を作ってくれるのはありがたいですね。