Lleno(リエノ)のノート

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
山元 
ありがとうございます。そんなのがあるんですか。(開ける)あ、ノート!ちょうど欲しいと思っていたところです。いまネタ帳がいっぱいになってしまってて、買いに行こうと思っていたところでした。
__ 
ちょっとそれ、重いですけどね。
山元 
いえ、大きさがちょうどいいです。願った時に願ったものが・・・凝った模様ですね。あ、無地・・・私、ずっとネタ帳は無地なんです。

矢印のない入口

__ 
鑑賞者によって見る作品の体験が違うというのはとても面白いですね。以前、他のアーティストさんたちとコラボレーションで製作された作品はまさにそうですね。
山元 
あれは、顕著なそれですね。
__ 
最初の部屋はギャラリーで、一見すると普通の絵画のグループ展のように数点の絵が飾ってあるだけ。そしてその壁の隅に少しだけ伱間が空いていて。伱間の向こうにはスタッフ用のバックヤードがあるようだ、と。実はそれが広大な作品群への入口になっているんですよね。非常に印象的なのは、そこには誘導する矢印とかがないということなんですよ。
山元 
そこが先ほど言った加速ポイントなんですよ。自分の頭で考えて、もしかしたらこの道の向こうに何かがあるんじゃないか。もしかして、ここは入っていいんじゃないか、この裏にはもしかしたら何かあるんじゃないか。でも誰も何も正解を提示していなくて、もしかしたらただの自分の妄想で。でも入って見たら自分の読みが当たっていた。
__ 
自分で発見したというのが加速ポイントにおける重要なことですね。
山元 
そうですね。ある程度視線が誘導されたり、罠が張り巡らされていたとしても、そこで係員の方が順路を示して、「こちらです」と言ってたりしたら、その向こうに対する興味が違うんです。
__ 
大抵は矢印が書かれてあるから。私だったら、何も書かれていなかったら帰るかもしれない。
山元 
そこがさじ加減の難しいところですね。ギミックは、お客さんの動きを読みながら会期中も変えていったりしていました。「頭上にお気を付け下さい」とか「服が汚れる恐れがあります」とか、閉所・暗所恐怖症のご注意は書いてあるんですけど、「奥へお進みください」とは書いていないんですよ。ヒントだけをちりばめて、お客さんが動いてくれるかくれないかというギリギリのライン。
__ 
注意書きをヘンに取って、「ギャラリーの絵に頭をぶつけちゃう」という有り得ないシチュエーション、がテーマだと捉えられたら終わりですよね。
山元 
こちらが全く想像出来ない行動をする方が、10人ぐらいは必ずいらっしゃいますので、こちらが微調整をする時間は必ず取っています。例えば、置いてある本の行動に従うと仕掛けが発動する、という作品も、最初の方は誰も本を手に取ってくれなかったり、本での一番重要な部分をやってくれなかったりとか。そうするとこちらもだんだんヒントが多くなって、目立つ様に下線を引いたり赤字にしたり。ガイドを変えていったりはするんですけど、それでもやっぱり、様々な行動を取られます。でもそれも全て含めて成り立っています。
__ 
脱出ゲームというのが最近はとても流行っていますが、その先取りという感じがしますよね。
山元 
大流行りになりましたね。昔行きました。全然答えに辿り着けなかったりして。
__ 
私もそういうのは行ったことがあるんですけど、答えが分かっても周りと共有しなかったりとか。
山元 
自分が行って、すんなりと体験に導かれるようにはしたいんですけどね。でもあんまり愛想よくすると萎えちゃうんですよね。
__ 
そこはまさに、塩梅ですよね。そして、そのヤマを予想するのと、純粋な芸術のうちの一つ、なんじゃないかなと思います。加速ポイントを、誰でも通れるようになったらいいんですけど、いや誰でも通れるというのはまたありえないですけどね。
山元 
誰でも通れるというのはエンターテイメントの世界ですよね。ゲームの世界が好きなので、私も影響を受けてるんですけど。面白いのは、お忍びで評論家さんがいらっしゃったことがあって、でも、小説の中にある指示というギミックに気付いてか気付かなかったか、こちらが想定した行動を起こさずにそのまま帰られたんですよ。仕掛けという仕掛けが何も発動しなかったのですが、後日書いて下さったレビューを拝見するとすごく高評価をしてくださっていて。「何も起こらないのだが、一瞬僕の脳内には完全なファンタジーが広がっていた」と。そういう楽しみ方が許されるのか美術ですよね。遊園地に行って何も仕掛けが発動しなかったら大ブーイングですけど。
"double wander"
ニジュウニデアルクモノ
二重に出歩くもの



愛知県立芸術大学 サテライトギャラリー
〒460-0003 名古屋市中区錦3-21-18 中央広小路ビル3階

いまはもう小さい部屋

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山元さんが作品製作を始めたのはいつぐらいからでしょうか。
山元 
作品として発表しだしたのは大学の一年、十八歳ぐらいからです。でも何かを作るのは記憶がないぐらいからやっていたみたいです。親の証言によると、友達の家の部屋をお化け屋敷に改造しちゃって。学校とか幼稚園では普通にやってるんですけど、裏で隠れて宝探し大会とか。あと、親宛ての脅迫状を書いて、自分で自分を縛って発見されるまで籠ってたりとか。色々あの手この手をやっていたみたいです。
__ 
面白い!
山元 
大学で洋画専攻に入って、その中に授業の一環でインスタレーションに出会って。私にとっては、絵を描くよりも、こっちだと。私に当てはまりそうなジャンルで、名前の付いてるのはこれだなと思いました。
__ 
インスタレーション。
山元 
でも、演劇でもそうですけど、これからどんどんジャンルレスになってくんじゃないかなと思ってます。科学技術分野もそうですけど。
__ 
トータルな技術者が生まれてくるんでしょうね。こないだ私が取材したダンサーで、自分のジャンルを知らないとおっしゃっていて。
山元 
そういうのがいいですよね。パフォーマンスをやられてる方が演劇に出演されたり。
__ 
お部屋を改造してお化け屋敷にするというのは面白いですよね。
山元 
楽しいですよね。ダンボールハウスとかも一通りやりますよね。ひな祭りの一番上に登ったり。子供向けのワークショップをやるとしたら、私は多分そういうのをやると思います。
__ 
専用のダンボールハウスを本気で作ろう。
山元 
今でも参加したいワークショップですね。

センサーに囲まれて

山元 
それを考えるのが一番ワクワクしますよね。ひとつには、お客さんの行動がキッカケでシチュエーションがズンズン変わって行ったり、自分だけではなく周りの解釈も変わっていく、そういうモーメントがすごく面白いんじゃないかなと思ってます。
__ 
そうですね。
山元 
「Kaleidoscopic point」ではセンサーを多用していたんですけど、これまでの作品でも、お客さんその一人のために色々な仕掛けを動かしていたんです。どうやっているのかが分からないような仕掛けって、まるで魔法になるんですよね。誰かが作って、誰かが動かしている、と到底思えないような、そういう仕掛けを作れたらいいなと思っています。
__ 
それはお客さんは分からない方がいいですかね。
山元 
そうですね。以前の作品で、一本道の通路に入ると来た道を閉じ込められるというシチュエーションがあって。目の前の壁に脱出方法のヒントが書いてあって、鏡の中の自分と向き合って一分間目を閉じると出口が現れる、と。皆さん、センサーがあるのかなと思われたみたいで薄目を開けたり途中で目を開けたりしていて。それだと絶対発動させないと決めてました。アンケートで「あのセンサーはどうやってるのかさっぱりわからないけど凄い技術だ」って。
__ 
センサーじゃなく、目検プラス人力入力だったんですね。そして、技術云々を気にさせているようでは、という事でしようか。
山元 
人間対システムではなく、人間対人間なので。深呼吸してという指示も出しましたけど、それはもう、センサーどうこうの話ではなくて、今置かれている状況に集中できるぐらいの仕掛けをバンバン繰り出せたらいいなと思ってます。でも、センサーをオートマティックにしたらわざわざ私が開催期間中ずっと会場に通わずに済む、と長年アドバイスを頂いてて。だからセンサーを使ったりもして、それはそれで大事だと思いつつ、人間の仕業じゃないんじゃないか、と思わせるぐらいのゴリゴリのアナログもやりたいですね。「本当は中で人が動かしてるんですよ」と言ったら「そっちの方が面白い」と仰ってくださった方もいて。
__ 
そして、非常に大変なんですよね。待機時間が。
山元 
朝に匂いの出ない食品を買い込んで、ほぼずっと狭い裏方でお客様来場の時を待ち続けていると。でもしばらくすると寝てしまうんで私が。私が寝ると何も動かないので・・・入り口に鈴とかを付けて、それが鳴ると起きて仕事を開始する。1ヶ月そういう生活を続けていたことがあります。だから、外で似たような鈴の音色を聞くとぱっと反応する、パブロフの犬みたいなことになっていた事もありました。
Yuriko Yamamoto "in the black door"
2005
立誠小学校/京都
ミクストメディア
舞台制作:西川翔太
音響:三橋啄


部屋の中央に、自立した黒い扉が立っています。大勢の人がレストランで食事をしているような音が、その扉の向こうから聞こえて来ています。しかし、扉の裏に回ってみても、そこには何もありません。黒い扉にはドアスコープが付いています。よく見ると、そのスコープ穴にむかって矢印がいくつも描かれています。スコープを覗こうと体を近付けると、扉の向こうから聞こえる音が小さくなって消えてしまいます…


光が立ち止まる

__ 
「Kaleidoscopic point」での、照明とセンサーの設置・設定のコンセプトを、改めて伺えればと思うのですが。
山元 
一つ一つ、光をまんべんなく散らすのではなくミリ単位でつっています。一つ決まったら次のポイントを設置して。人が進んだら、そちらの方に光が付いて、すると人は大体、光がある方に進むんですよ。でも闇の方に進んだ時に、次はどう言う光景が現れるか、とか。見た目以上に時間がかかっています。LED電球の寒々しい色であるとか、付いてから明るくなるまで時間が掛かる種類の照明もあって。それは天候にも左右されるので、会場入りしてから絵を描くように設置作業をしています。
__ 
お客さん自身にも、自分が鑑賞しながら絵を描いてるような感覚はあったと思います。
山元 
もしまた別の、例えば大きい空間でやる場合はもっともっと色々な光景が描けると思うので。新しい体験が生まれる作品だと思うので。大きいところでもやってみたいですね。
__ 
真っ暗な中、自分が進むと光が付いて、その瞬間ホッとする感覚がありましたね。そして光線が自分の目から伸びて、布に描いてある風景を見る時、すごく日常から切り離された感覚があったんですよ。本当の嘘事の世界に来たような感覚がありました。
山元 
夜に自転車で帰ることがあるんですけど、暗い木の根元にビニール袋が引っ掛かっていて、それに近づいて行っても全く認識出来ない事あるんですよ。これはこれだ、と捕捉しきれていない時の認識って面白い。リンゴを「リンゴ」という名詞と結びつけられていない状況だと、それが何なのか全然わからないんですよ。すべてふわふわとして曖昧で認識できない。
__ 
私もあまり目は良くないんですけど、22歳ぐらいまで眼鏡はかけなかったんですね。でも自分のものを作って掛けたら、世界はクリアだったと認識できたんですよ。
山元 
私はあまり目は良くなくて。でも問題なく過ごしていて。たまにコンタクトとか眼鏡をするとディテールが激しく見えて、びっくりしますよね。私は、ぼんやり見えてるぐらいがちょうどいいみたいです。

『Kaleidoscopic point ー変幻自在の点ー』

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。山元さんは最近、いかがお過ごしでしょうか。
山元 
よろしくお願いします。相変わらずマイペースにやっております。最近は寒いですよね。冬眠するんじゃないかというぐらい。先日来ていただいた個展は、毎年12月や1月にやらせて頂いているんです。
__ 
山元ゆり子個展「Kaleidoscopic point」。素晴らしかったです。ご自身としてはどのような経験になりましたか。
山元 
いやあ、やってよかったな、という感じです。今までドローイングを用いたインスタレーションはあまりやったことが無かったんですけど、去年ぐらいから立て続けに発表していまして。で、基本的な体験は変わらないのですが、今回で一旦区切りをつけ、今は別に気になっている方向に作品のフォーカスを移せていけたらと思っています。面白いのでまだまだ続けていきたいとは思うんですが。いかがでしたか?
__ 
とても面白かったです。非常に体感的なインスタレーションでした。暗い部屋の中で、数十点のスクリーンが掛けられていて、それらの白布に水彩で自然物の輪郭や表情が描かれている。たとえば夕焼けの光景そのものが切り取られているコーナーでは、7枚程度の雲のスクリーンの向こうに白熱灯があり、雲のパターンが微妙に重なって、いつの間にか自分が夕焼けのクオリアを作る側に回っているかのような体験でした。と、そこから森と草むらを越えて滝が流れているようなドローイングになっていて。真っ暗な中手探りで進むと、身体の位置によっては灯りが点いたり消えたりする。そういう、何がしかのコントロールが介在している環境は自然にはない筈なんだけども、「どのような条理がそこにあるのか分からない」という根源的な恐怖は、人間と自然の間にある無理解の崖を直感させてくれる。山中の滝をイメージさせるコーナーがあったんですけれども、そこではとても、まるで霧の中にいるかのような涼しさを感じたんですが、あれは身体の方が勝手にそう思ったかな。そこには例えとしての崖と、例えではない自然との谷を感じました。これは個人的な印象ですが、その恐怖がどちらかというとネガティブな傾向の印象ではなく、崇高さの方にカテゴライズされた気がする。この予感は、人間がそもそも、自然の中に包まれる存在であると暗示しているのかもしれない。
山元 
ええ。
__ 
とにかく、中に入っている人の動き方によって鑑賞するものが違うというのが面白いですね。
山元 
人によって色んな感想があるんですけど、こちらとしては、モノを見せるんじゃなくてひとつの体験を持って帰ってもらうという狙いで作っています。特定のシチュエーションや物語をうっすらと用意していて、それが「演劇的」だとか「お化け屋敷みたい」という感想を多く頂くんです。さらに言うと、これまでの作品では時間軸がはっきりとあったんです。お客さんが展示室に入って、見始める、作品の指示や暗示を受けて行動する、そして出ていく。そういう風に時間軸があるのがとても「演劇チック」だと言われていて。「Kaleidoscopic point」というのは、変幻自在な場所というだけの意味の他に、時間も変幻自在、という意味なんですよ。自分なりに始まりと終わりを決めることが出来る、そういう感想もいただきました。
__ 
空間の中を観客が歩き回る、自分のその行動と鑑賞体験が一つのものになっている。
山元 
まさにそうなんですけど、入ったときは真っ暗で、自分が動くと光が灯る。自分のアクションで、自分を取り巻いているものが変わっていくという。
__ 
自分の行動によって見えるものが違うということは、それはもう変身ですね。
山元 
そうですね。短時間の限られた時間のシンプルな体験で、新鮮に受け止めたお客さんも多かったそうです。
__ 
最近つかこうへいの「飛竜伝 神林美智子の生涯」をもう一度読んだんですけど、前半は彼女の主観だけがあって、途中でなんやかんやあって、後半の方にそれまでの全ての人物が彼女にフィードバックをささげるというクライマックスなんですよね。具体的に言うと、彼女はものすごく男運が悪くて、それまで付き合った全ての男性に騙されて利用されて、でも最後の最後は、その男たちがカッコ良く散るんですよ。
山元 
へー!いいですね。最後は加速が付いて。それは何か、四畳半神話大系のような。全てのネガティブだったエピソードがよじれてよじれて昇華されていくスピード感がすごく好きで。
__ 
あー、私半分ぐらいしか見れてないんですよ。
山元 
おすすめです。私は物語にひかれる性質があるんですかね。意味が最後に、自分の気付きで変わる瞬間、思考が加速して走り出す瞬間が凄く面白く感じるんです。鳥肌ポイントって呼んでいます。気がついた瞬間って、鳥肌が立ちませんか。
__ 
立ちますよね。
山元 
あのぞわぞわ感を意図的に作り出せたらすごく面白いと思うんですけどね。演劇の世界ではもちろんよくそういうのが出てくるんですけど、美術の世界ではそういう演出された加速ポイントはあまり見られないのかな。
__ 
加速ポイントはどうやったら作れるんでしょうね。
Yuriko Yamamoto "Kaleidoscopic Point" ―変幻自在の点―
12月05日(火)~12月23日(土)
GALLERY G-77
2017年製作

今作は、ドローイングを用いたインスタレーション作品です。光と動きから創られるシチュエーションの中で、身体の感覚的知覚を通して、観る者が自らの意識の所在に触れることをテーマとした体験を試みています。
近年の作品はどれも真っ暗で何も見ることの出来ない空間から始まります。進む、動く、止まるといったシンプルで象徴的な体の動きに反応して、目の前に光が現れ、やがて消えていきます。断片的に覚えている記憶や連なり流れているように感じる時間、今確かにある体さえも、意識の中にあるような感覚。その所在が曖昧になるような何もないように見える闇の中に、全てがバラバラに同時にあって、鑑賞者の今一瞬の意識が、 光としてそれらを映し出します。


Legend Tokyo Chapter8 WEST RISE

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。最近、中西さんはどんな感じでしょうか。
中西 
最近はLegend Tokyoに向けて、ダンスの練習を再開しています。もう、挑戦するだけです。
__ 
今年3月17日のクレオ大阪中央で行われる予選会ですよね。一般公開はされてるんでしょうか。
中西 
してます。是非お越しください。
__ 
絶対に行きます。楽しみです!
中西 
ありがとうございます。
__ 
どんな作品になりそうでしょうか。
中西 
LegendTokyoは構成を評価するコンテストなんですが、私が構成・振り付けを考えて、それをみんなに教えている段階なんですけど。みんな同い年ということもあって、振り付けの協力も全員でしてくれたりして。
__ 
素晴らしい。どんな作品になりそうでしょうか。
中西 
今回は私がやりたいことをきちんとやる、というのを一番にしていて。自分の、たった20年しか生きていないけど、その自分の人生を踊ります。今自分が思っていること、自分自身を踊る作品にしたいです。
Legend Tokyo Chapter8 WEST RISE
Legend Tokyo Chapter8 WEST RISE

開催日程:2018年3月17日(土)
会場:クレオ大阪中央
主催:ジャスト・ビー
企画:『Legend Tokyo』実行委員会
例年、エントリー数も多く、激戦区となる大会、
『Legend Tokyo Chapter.8』西日本大会 -WEST RISE-。

ハイレベルな群舞スキルを誇る西日本の強豪から
斬新な感性の若手振付家まで……
自らの創作能力を試すべく、
熱き”勝負作品”が激突する!


開場:16:00
開演:16:30
終演予定:19:30
開場:クレオ大阪中央・ホール
入場料:前売り4000円/当日 4500円
中西さんは「nakanishi yukako」として出場予定。

中西由伽子との出会い

__ 
先日、神戸三宮でのRinanaさんのライブにて、ダンサーとして出演されていましたね。とにかく、ヤバかったです。中西さんのパフォーマンスが。「踊りがキレている」とはこういうことなのかな、と再認識しました。
中西 
人前で踊るのが久しぶりだったので、素直に楽しかったです。家で、自分だけ一対一で向き合って踊ることは多いんですけど、人前で踊るのってこんな感じだったのかなと久しぶりに思いました。
__ 
ユニークな振り付けもあったりで、とても面白かったです。ここまですごいダンサーだったのか、と。実は中西さんと初めて出会ったのは大阪での細野江美さんプロデュース公演「V.O.I.C.E」でした。ダンサーの中に一際やべーやつがいる、とは思ってたんですが、まさかここまでとは。
中西 
いえいえ。まだまだです。まだ何も結果を出していないので。
__ 
いや、正直、中西さんの踊りは物凄く目を引くんですよ。一体どんなダンサー人生だったんだろう。中西さんが踊り始めたのはいつからですか。
中西 
小学校4年生からです。いとこがやりたいと言い出して、一緒についてきてほしいと言われて。姉と私といとこの三人で習いに行きました。
__ 
最初はどの教室でしたか?
中西 
HIPHOPでした。初めはダンス自体にあまり興味がなかったと思うんですけど、行ってみたらハマっていて。
__ 
ダンスのどういうところに興味を惹かれたと思いますか?
中西 
何か、元々私はコミュニケーションをとるということが苦手で。だから、自分を出せるものが何もなくて。でも動きだったら喋らなくていいし、私の中で好き勝手できるものだったんです。唯一、これが自分の表現して生きるものなのかなと。踊っていると楽しいんです。
__ 
どんなときに踊ってる実感がありますか?
中西 
何も考えずに、今の音と動きと空間とに、自然に入って行けてると言うかなんか、そこで自分の流れを見つけて、乗れた時の感覚です。
__ 
ある種のメカニズムが働いてるのかもしれませんね。
中西 
いやでも、全然踊れていない自分が言えるような事では。
__ 
中西さんは、どんな人や物から影響受けてると思いますか?
中西 
え、何だろう。一生懸命な人。なんだか自分を作っていない人。自分のままいられる人を見ると羨ましいなあと思います。
__ 
「一生懸命な人」か。憧れますよね。
中西 
芯がある人は凄いなあと思います。そうなりたいなと思います。
__ 
それはみんなそう思ってますよ。芯があって、嘘をつかず、自分を大切にすることができて、誤った時はちゃんと謝り、自分を正す事ができ、でも芯は変えない人。
中西 
はい。私も最近、自分が素直に思ったことは、嘘をつかずに思うことにしています。

質問 ...1[アマリイチ]の斉藤綾子さんから 中西 由伽子さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた方から質問をいただいてきております。アマリイチのお二人から。まずは斉藤綾子さんから。「ダンスを続けてどうなりたいですか」?
中西 
一番困りそうな・・・無いです。自分にはそれしかできないから、どうなりたい、というのは無くて。踊らなくなったら、もっと周りとコミュニケーションが取れない人になってしまうと思います。自分を保つためにやってるだけで、でも、20歳にもなってただ踊っているだけなのはあんまりかなあと思って、いろいろ出ようかなと。
__ 
何の目標も持っていなくても頑張れるのが「芯のある人」なのかもしれませんね。
中西 
今のところ、何かになりたいというのは無い・・・やっぱり。ごめんなさい、こんな。でも目標はあります。LegendTokyoの本選に行きたいです。

質問 ...1[アマリイチ]の益田さちさんから 中西 由伽子さんへ

__ 
次は益田さちさんからの質問です。「ダンスの次に幸せな瞬間はありますか」。
中西 
食べている時です。
__ 
お好きな食べ物は?
中西 
ひじきとチロルチョコです。
__ 
チロルチョコか。
中西 
一日に何個も食べます。
__ 
20円のやつと30円のやつがありますね。
中西 
そうそう。私、20円のミルクのやつを食べます。
__ 
チロルチョコの粋なところは、ひとつひとつがピッチリと包まれているところかもしれませんね。そこにある種の贅沢さがあるのかもしれない

「動きのキレ」を考える

__ 
動きのキレとは何か、ということについて考えてきました。最近読んだ本に、いったい何故人間は踊りを発生させたのかについて論考している文章があって。というのは、人間の原初的な狩猟・採集生活において、禽獣というものは無くなっては困るものだった、と。だから、集落では山の幸の繁栄を祈り、獣の真似をして踊った。模倣です。その時代、観客がダンサーに何を期待していたかというと、禽獣そのものであれかしという願いだったのでしょう。そのように願う事はそれ自体が力であり、そのように期待する視線の集中が集落をさらに強く結束させたのでしょうね。同時に、ダンサーは一体何を意識してるかと言うと観客の目線であり、彼らの希む動きと、自身の感覚をより合わせようとしている。というところから振り付けの意義が始まった、ということにしてみましょう。「ここでこう動いてもらいたい」というのはもうずっと、人間の意識に根ざしたものであり、中西さんがさっきおっしゃった「その時その空間の流れに乗れている時に『踊れている』と感じる」というのは、観客の方にもそれが伝わっているんじゃないか。だってそれは純粋だから。「目の前のダンサーにこう踊ってもらいたい」という欲求の枠にフレーム・インする、原初的な素質が、中西さんにはあるんじゃないかなと思っています。
中西 
ほおう。
__ 
動きの速さであるとか、音ハメであるとか、中西さんが持つ「速さ」はそこに関係があるのではないか。というのは、観客とダンサーの間に行われている通信をフローチャートで見てみると、いくつかわかることがあるんじゃないかなと思っていて。ダンサーの踊り始めで観客が視線を送信すると、そこには既にフレーム・インした中西さんの腕がある。観客の思惑を模倣するような動き方を、つまりキレですね。それが音や空間と重なり合ったときにいろいろなことが起こってるんじゃないかなと思うんです。全然説明になっていない気がするけど。でもその忙しい通信の中で、集中力を使い過ぎて疲れるかと言うと決してそうではなく、むしろ気持ちがいいんですよね。さて、「キレ」についてダンサーにどういう質問をすればいいのか、考えてきました。「中西さんは、ダンスの振り付けを覚える時にどうやっていますか」?
中西 
どう覚えていますか・・・(笑う)え、どう覚えていますか・・・見たまんま。見て。どう覚えてるんだろう。え?
__ 
一応、想定してきた答えとしては「ダンスのプロセスを頭で解釈して、流れで覚える」ということもあるんじゃないかなと思っていて。あとは、反復練習とか。
中西 
反復練習はするんですけど。あれ、どうやって覚えてたかな。普通です。普通に覚えてます。え、普通に覚えてるほうだと思います。すみませんでした。何も面白くない答えですみません。
__ 
いえ、ベストな回答だと思います。
中西 
とんでもないです。体に振りを入れ込む。です。

踊ることは・・・

__ 
今後、どんな踊りが踊れるようになりたいですか?
中西 
今は、手の動きに興味があって。それを取り入れていけたらいいなと。あとやっぱり、あまり全然踊れていなくて。ちゃんと踊りたいです。もっと練習した方がいいなと思います。
__ 
今後どんな感じでせめて行かれますか?
中西 
Legend Tokyoの本選に行きたいです。これで行けなかったらどうしよう。でも、これは作品の構成を見る大会で、私はそもそも構成を作るのが好きなんです。
__ 
是非、踊ってる姿が観たいです。
中西 
はい。踊ります。自分自身を踊ります。

ストラップ付コインケース

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
中西 
え。
__ 
あ、これは毎回やっています。
中西 
ありがとうございます。(開ける)あ!
__ 
コインケース兼カードケースです。
中西 
めっちゃ可愛いい。
__ 
ストラップ付きです。お名刺も入れられると思います。
中西 
可愛い。ありがとうございます。

マニラ/あけましておめでとう

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。ダンサー二人のユニット、…1[アマリイチ]のお二人、斉藤綾子さんと益田さちさんにお話を伺います。
益田 
よろしくお願い致します。
斉藤 
よろしくお願い致します。
__ 
最近、お二人はどんな感じでしょうか。
益田 
先日『RE/PLAY Dance Edit』のマニラ公演が終わりました。そのフィリピン帰りのテンションのままで稽古しています。というか、京都の『RE/PLAY』公演からテンションが上がっています。
斉藤 
というか、昨年のきたまり/KIKIKIKIKIKI『悲劇的』の頃からテンションが続いてるんじゃないかな。
益田 
そうですね、割とそこでわっと燃えて、、燃え続けている感じでした。
__ 
じゃあ昨年の夏のテンションが、今も続いているということですね。
益田 
はい。マニラから帰ってきてやっと元旦を感じました。
斉藤 
飛行機降りるときに「あけましておめでとうございます」って言い合いました。
__ 
今年もよろしくお願いします。
...1[アマリイチ]
ダンスユニット。
斉藤綾子/Ayako Saitoh
益田さち/Sachi Masuda

RE/PLAY Dance Edit

__ 
『RE/PLAY Dance Edit』大変お疲れ様でした。大変面白かったです。こんな事を最初に言うのは何ですが、観ててすごく疲れて、そして、そのぶんの感動がある作品だったと思います。
益田 
どの辺りが一番疲れましたか?
__ 
前半と後半の、最後のループかな。その一つ前のループはものすごく楽しかったんだけど、最後の最後のループの直前の瞬間に、ダンサーの目が一斉に死んだような気がして。ああ、これが最後のループなんだ、と直感したんです。
斉藤 
最後のループ、「GLITTER」かな?え、あそこが一番楽しい。
益田 
あそこが一番生き生きしてる。本当になんか、あと一回踊らせてもらってありがとうみたいな。
斉藤 
ご褒美みたいなね。
__ 
全然認識違ってましたね。なんだか私は地獄や天国をあの作品に見たような気がしています。ダンサーのしんどさはものすごかったでしょう。一度踊ると、すぐに倒れるじゃないですか。あれは絶対心臓に悪いような気がします。
斉藤 
でも、立ち上がれるから倒れられるんです。
__ 
目は死んでいないと。
益田 
立ち上がったら、また踊れるようになるから。たまに、もう少し寝ていたいと思うこともあったけど。
斉藤 
私は京都公演で踊らせて頂いてたんですけど、自分でびっくりしたのが、最後の曲の「GLITTER」の時に、寝ているのが我慢できなくなってきたんですよ。早く立って踊りたくて、立ってから自分の踊り出すタイミングまで溜めてました。もう何か、早く立ちたいと、どんどん先走ってしまうような。
益田 
そう。同じ振付なのに、何回も踊っていくことで感覚?が変わっていきましたね。
斉藤 
振付に閉じ込められているものがだんだんと溢れていく、という多田さんの言葉がしっくり来ていました。「オブラディオブラダ」十回繰返す時にも、閉じ込められてるところから「開けた」という感覚が生まれるのを楽しみました。
__ 
感覚が変わっていく。
斉藤 
何て言ったらいいんだろう、私の場合はですけど、振付は細かくすればするほどいいと思っているので結構細かく決めるんです。でもそれを考えずにできるようになってからはどんどんと、ダンサーじゃなくなっていくみたいな。言い方が悪いかもしれないけど、ただただ、やりたい事をやっているような。ダンサーとして決めた事はやるんですけど、なんかだんだんどうでもよくなっていく感覚があるんです。自分が、踊り続けることを幸せと思える人間で良かったなと思います。そう思いながら「GLITTER」の三回目を踊っていました。
KAC Performing Arts Program 2017/ Contemporary Dance 国際共同製作 『RE/PLAY Dance Edit』
【京都公演】
日程:2017年11月25日(土)19:00開演/26日(日)15:00開演 会場:京都芸術センター 講堂
演出:多田淳之介
振付・出演:きたまり、今村達紀、Sheriden Newman、Narim Nam、Chanborey Soy、Aokid、斉藤綾子、吉田燦
【マニラ公演】
日程:2018年1月13日(土)14日(日)19:00開演
振付・出演: Eisa Jocson、Irish Paul Mendoza、Carissa Adea、John Paul Ortenero(フィリピン)/Narim Nam、Sophal Sor(カンボジア)/きたまり、益田さち(日本)

おかしなる/悪いとは思ってない

__ 
最初はただただ長い儀式が続いていて、四十分ぐらい続いて、頭の中で批評したりしていたのが退屈になり、それを通り越して気がおかしくなっていったような。
斉藤 
マニラ公演、二日とも本当に面白かったんですよ。お客さんの反応が、初日と二日目で全然違っていました。初日、「オブラディオブラダ」の四回目にお客さんの集中力が切れて、みんな「フワァー!」ってなったんですよ。乗って観てくれました。歌ったり揺れたりとかして。二日目は逆にものすごく集中して観てくれて、ダンサーのみんなは職人のようでした。もう、ほぉーって。本当に面白かったんです。
__ 
観客もダンサーも、集中力が高まっていたと。
斉藤 
そして最後には「GLITTER」だから。溜めていたものがどんどん広がっていく感じ。客席の上から観たりもしたので余計に感じました。
益田 
一日目は、お客さんの強い反応を受けて、ダンサーの方がすごく変わってしまって。まだ五回目なのに、お客さんに対する意識が出始めていって。
斉藤 
外への目が開かれて、お客さんの反応を受けて、どんどん変わっていく感じ。作品のルールとしてどうなんだろう、とは思いましたが。
益田 
不安にはなりました。二日目はもっとちゃんとこの作品を踊れた感じがして。全然違う経験でした。
__ 
貴重な体験でしたね。
斉藤 
何のために踊るんだろうと思いましたね。
__ 
作品のためなのか、その場で盛り上がるんなら思うように踊りをやってもいいのか。
斉藤 
それでも「この人はダンスのために踊っているんだなあ」と思う瞬間もあり。
益田 
振り返ると、私の場合は一日目はお客さんのために踊っていたんですね。その回は開演してからもお客さんが入場したりしてきていて、観客席全員に対して観てくれっていう意識が生まれてしまって。その中でもちゃんと踊りきるということには集中していたなーと思っています。悪いとは思っていないんですが、ただそうだったなあと。
斉藤 
観ている側に回ると、もう一回「GLITTER」いけ、って思ったりしました。
益田 
そうだよね。実際に一日目はもう一回「GLITTER」が来る、って思っちゃったんですよ。あと一発行かないと、みたいな心残りはあったかもしれません。
斉藤 
二日目の最後は「あ、これが最後」と分かったんです。これ以上は何もない。「この作品ってちゃんと終われるんだ」と思いました。
__ 
そういうのが見ている人に伝わるのは面白いですね。

余った日に

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…1[アマリイチ]はいつ結成したんですか?
斉藤 
2015年のWSの場で通訳をしていた益田さんと共通の知合いがいることがわかって。じゃあ飲みに行こうということになって。
益田 
謎に昼から飲みにいったりね。
斉藤 
何度か飲んだり舞台観に行ったりするうちに「ところで、もちろん一緒に踊るよね」ということになって。暗黙の了解を、ようやく言えたみたいな。
益田 
それからずっと何をしようかと相談していたんです。
斉藤 
それがたまたま閏年だったんです。
__ 
あ、だから「アマリイチ」。閏年ね。
斉藤 
せっかくだから公演は2月29日にしようということになって、最初は公演の作品名だったんです。余った日だからアマリイチと。
益田 
気に入ったよね。
斉藤 
一気に気に入った。
__ 
アマリイチではどのようなダンスをしたいと思っていますか?
斉藤 
そこは最近よく話してるよね。
益田 
私が最近意識してるのは「境界」というもので、それを意識してみるとどうなるんだろう、というテーマです。何でもありになってしまっているダンスをするときに、自分たちが「これがダンスだ」と言えないのはダメだよね、という意識はあって。
斉藤 
私たちが思うダンスはこれです、と言えるものを作ろうと二人で話しています。

考え過ぎの彼女

__ 
お互いを「良いなあ」と思うのはどんな時ですか。
益田 
私が綾子ちゃんのダンスに惚れたのは、初めて彼女のダンスを舞台で観た時でした。自分のダンスに対して本当に自信があるんですよ。こんなに、自信を持って踊っている人はいないと思うんです。驕りという意味ではなく、疑いがないんです。それを観た時に、ズキューンってなって。
斉藤 
たぶん初めて観てくれたのが『シンデレラ』なんじゃないかな。作品の力もあると思うんですけど。
益田 
あと、綾子ちゃんはすっごい地味なことをする。「目立ってやれ」みたいな気持ちじゃなくって。
斉藤 
本当ね、ほんと申し訳ないんですけど自分が楽しければいいと思ってるし・・・
__ 
いいと思います。
益田 
いいと思う。
__ 
地味な事とは?
斉藤 
私はこれがやりたいんだと思ったら、ちょっとね、暴走しがちなんです。どうかと思いつつも、改める気もあまりなくて。
斉藤 
益田さんはね、すごく悩むんですよ。
益田 
そういうことを言いますか。
斉藤 
まったくもって、気になったことを流そうとしないんですよ。そういうタイプには見えないのに。テキパキと何でもこなせそうで、まあ実際にそうなんですけど、でも悩んでるんです。その、さちの丁寧さと追求にびっくりした事があるんです。一昨年彼女が、きたまりさんの『夜の歌』のすぐ後に高野裕子さんの『Sheep creeps the roop』に出演していて、全く違う作品をこんなにも違う顔で踊るのかと思って。こんな大変な作品を同時に抱えて、ひとつひとつ丁寧にやってたんだなあと思って。彼女は自分がまだまだだと思っているから、どこまでも丁寧にしようとするんですよ。限りなく。
__ 
それが悩みぎるということなんでしょうか。
斉藤 
たまに、いま考えていることをぶつけてくるんですよ。二人で稽古してる時とかに。
益田 
(笑う)ごめんね。
斉藤 
この人はずっといろんなことを考えて暮らしているんだなと思ってます。

踊りがいの話

__ 
お二人が最近、ダンスについて考えてることを教えてください。
益田 
ずっと考えてるけど事なんですが、私はいつも同じところに帰ってきちゃうんです。結局ダンスって何なんだ、と。舞台に乗ってる間は本当にそんなことどうでもよくなってただただ幸せに踊ってる事もあるんですけど。
__ 
ダンスとは何か。
益田 
自分が、これがダンスだと体感できる瞬間を求めています。同じ踊りをしていても「いま私、踊ってるのかな」と疑う事があって。踊っていると感じられる時とそうでない時と、どう違うのかなと。前に遠藤くんと斉藤さんの3人で踊った作品の稽古では、「ダンスって何や」と言う事を二人にぶつけて、返してくれたのが、すごく嬉しかったです。ダンスって今や何でもありじゃないですか。ただ立ってるだけでもダンスだと呼べることもあったりして。ただその時は、そこにリズムがある限りダンスと呼べるんじゃなかろうかと考えていました。その中で遠藤君は「振付でない方が踊っている感じがする」と言っていて、綾子ちゃんは「振付を踊る時の方が自由に踊れている気がする」と。感覚はそれぞれに違うということに気がつきました。体感って何だろうと考えています。定義付けはどこかにあるのかなあと。
斉藤 
結局ダンスとは何かということに戻っていく。
益田 
謎が深まったりして。でも、結局ダンスがしたいんだろうなと思うんです。よくわかんないこと言ってますけど。
__ 
いえ、非常に明確だと思います。そういう体感がある時は、自分自身に重なる瞬間があるんじゃないですかね。

私と振付/振付とは何か

斉藤 
私、決まった振付踊るの大好きなんです。踊るときは出来る限り自分に引き寄せようと思ってます。如何にそれを好きになろうかということばかりを考えています。この振付の中に、私のこれまでをどこまで詰め込めるかと。日常の細かいこともそうだし、あの時綺麗だった夕焼けの色とか。そうやって、振付が自分のものになっていく感覚がとても楽しい、けどとても苦しい作業です。
益田 
何だろう、綾子ちゃんは振付にちゃんと近づいていける人だと思う。
斉藤 
さっちゃんの場合はすごくたくさんの顔があるから。こんなことも出来るのか、と。
益田 
変に器用なところはあるかもしれない。でも、どれが本当の自分かわからなくなる時があります。ダンサーは色々な人の影響を受けているわけじゃないですか。私はどれだけのものを人から盗んできたんだろう。私は今どこまで人の真似をしているんだろう。そんなことを思う時もあります。今は、次回の『FOuR DANCERS』のために振付をしてるんですけど、結局誰かからの借り物になっている気がする時があります。そう思うと踊りたくなくなったり、そういう波があります。
斉藤 
本歌取りみたいなモノでしかないと思うんですけど、私の場合は諦めてしまったんですかね。ずっと自分のポケットに入っていたから、それはもう自分の、みたいな。
__ 
自分の中に入っているものを大切にするということなんじゃないですかね。
益田 
そういう、信じる力は羨ましいです。私はすぐに疑ってしまうから。
斉藤 
私の方こそ羨ましいと思う事は多いです。『RE/PLAY』の時も「そんなポーズ思いつくかよ」とかね。