1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45
46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60
61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75
76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90
91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105
106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120
121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135
136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150
151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165
166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180
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樹木さんと役つくり
- __
- 益山さんの台本、かなり宛書きですよね。樹木さんは、宛がわれた役をどういう風に作っていくのでしょうか。
- 樹木
- ハトコの時は頭の中で(ハトコだからこういう風に喋って・・・)って感じでした。でも、サトコやカスはいっぱいいっぱいでした。何か言われても流してしまったり。
- __
- なるほど。
- 樹木
- 台本を何回も読んで状況を分析していくのに、いざとなると全然作れなくて。毎日色んな本を読んでイメージトレーニングしないと身につかないんだなと改めて思いました。
- __
- 今回はシーンも断片的で、ストーリーとして把握しやすいものではなかったから尚更でしょうね。
- 樹木
- さらに会話劇で、相手の言葉を聞いて喋るっていう。当たり前ですけど、難しかったです。全然それが出来てなくて、すごく悩みました。カスという人物を出来るだけハッキリ思い描いてやろうとしたんですけど、まだ色々ムリで。結局、自分が出来る限りカスに近づいていくようにしました。
質問 長尾 かおるさんから樹木 花香 さんへ
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- __
- 前回インタビューさせて頂きました長尾さんから、ご質問を頂いてきております。「つまんない芝居を見た時はどうしますか?」
- 樹木
- つまんない芝居を見た時は、寝ます。というか、途中でいつも寝ちゃうんですよ。劇団四季とヨーロッパ企画※は寝ませんでした。四季は衣装が可愛かったし、ヨーロッパは面白かったので。
- ※ヨーロッパ企画
- 京都の劇団。現代的なセンスの会話劇を得意とする。
パキッと
- __
- 次は、どんな事をやりたいですか?
- 樹木
- 日々の色々な積み重ねを形にしたいです。それを本番でパキッとしたものになったらうれしいですね。舞台上で演技している時にパキッっていう感覚になったらうれしいです。
- __
- というのは。
- 樹木
- 今回の「IN THE BLACK」の三日目なんですけど。たとえば演劇で、「これくらいの間を取ったら笑いが起こるな」っていう感覚ってありますよね。そういう会話の予知というか、そういう間をちょっとずつ分かっていければうれしいです。
クリスマスカード三種
- __
- 今日はですね。お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
- 樹木
- うわ。嬉しい。
- __
- どうぞ。
- 樹木
- 何だろう。(開ける)あ、かわいい。カード? むっちゃ好きです、こういうの。飛び出すやつですか?
- __
- そうですね。開いたまま立つようになっています。
- 樹木
- かわいー。素敵。いっとき、自分でこういう飛び出すのを作ろうとした事があって。
精華小劇場※
- __
- 今日はついに、お芝居の客席でよくお見かけする長尾さんにお話を伺えるということで。
- 長尾
- はい(笑う)。
- __
- どうぞ、宜しくお願い致します。さて、本日は精華小劇場でのオリジナルテンポの公演をご一緒に観れましたね。長尾さんはいかがでしたか?
- 長尾
- 面白かったです。これまで見たオリジナルテンポの作品では、一番。今までのとは確実に何かが違うなと思いました。
- __
- 私も非常に楽しかったです。何て言うか、盛り上がりを越えてお祭りのムードまで漂ってましたね。
- 長尾
- それもそうだし、作り込み度が半端ではなかったですね。偶然が必然的に起こるように作ってあったと思います。例えば、お客さんを舞台に上げて色んな事をして貰うパフォーマンスで、そのお客さんの反応を先読みして作ってあったりとか。
- __
- そうですね。あんなに面白くて安定感のある客いじり、初めて見ました。
- 長尾
- 偶然に起こる面白いことを必然的に起こすための作り込みが半端じゃなくて。海外でもウケが良かったというのもうなずけます。
- __
- まさに、精華演劇祭にピッタリの演目でしたね。精華小劇場5周年記念事業、「越境する表現者」。舞台と客席がゆるやかに繋がっていくようでした。それは、すんなり作品の世界観に入って行けるような雰囲気作りが入念にされていたからだと思うんですよね。開場してから開演までの時間から既にパフォーマンスが始まっていて、世界観にすぐに溶け込めました。
- 長尾
- お客さんへのアナウンスも良かった。今回のパフォーマンスは普段の芝居とは違うっていうのをオシャレにしかも明確に伝えてくれていました。携帯電話の電源は切らなくてもOKですって。写真撮っててもいいし、飲食もOK、しかも「隣の人と喋っててもOKです。仲良くなって帰って下さい」って。素敵だなと。
ベトナムからの笑い声 第26回公演「キャプテンジョー」※
- __
- 長尾さんは、月に何本くらい劇場に行かれるんですか?
- 長尾
- 週に、4本くらい観ますね。
- __
- 凄い。金曜日の夜から行かれる感じですか。
- 長尾
- たまに行かないですね。
- __
- あ、たまに行かないんですね。
- 長尾
- うーん。土日は大体観てますね。
- __
- 今年、印象に残ったお芝居と言うと。
- 長尾
- ベトナムからの笑い声ですね。「キャプテン・ザ・ジョー」。あれはだいぶやられました。
- __
- 私も凄く面白く拝見しました。
- 長尾
- 長編にした意味があったと思う。前半の下らないコントがあったからこそ、後半のシュールな展開が生きてた。構成的に良かったと思います。あの終わり方も印象的で。
- __
- 潔かったですよね。ベトナム、お好きなんですね。
- 長尾
- 好きですね。あと、ユリイカ百貨店※も良かったです。悔しくて泣くのでも辛くて泣くのでもなくて、胸がいっぱいになって泣くのはユリイカだけですね。
- __
- というのは。
- 長尾
- この前のも泣いてしまって。ライオンが猛獣使いの女の子に語りかける、「僕はきみのためなら火の輪もくぐるし芸もする。君の憧れている人にはなれないけど、今きみの傍にいるのは僕なんだよ」。けして結ばれないけども、ライオンは今、幸せなんですよ。それが伝わってきて、胸がいっぱいになりました。
- __
- 私も前回のユリイカ百貨店は凄く良く出来ていたと思います。カフェ公演、しかも朗読劇ということで気軽に見れるものなのかなと思いきや、雰囲気を作るための非常に地道で注意深い作り込みが見られて。ああ、空気を作るってこういう事なのか、と思いましたね。そこからちょっとずつ、はみ出していくファンタジーというか。
- 長尾
- 次も楽しみです。
- ※ベトナムからの笑い声
- 丸井重樹氏を代表とする劇団。手段としての笑いではなく、目的としての笑いを追及する。
- ※ベトナムからの笑い声 第26回公演「キャプテンジョー」
- 会場:京都スペースイサン。公演時期:2009年7月3~5日。
- ※ユリイカ百貨店
- 2001年に脚本・演出を担当するたみおを中心とするプロデュース集団として結成。その後劇団としての活動に形を変え、2005年4月、再度プロデュース集団となる。幼い頃の「空想」と大人になってからの「遊び心」を大切に、ノスタルジックな空気の中に、ほんの少しの「不思議」を加えたユリイカ百貨店ならではの舞台作品を作り続けている。(公式サイトより)
- ※ユリイカ百貨店 8th「喫茶店であいましょう」
- 会場:cafe&gallery etw。公演時期:2009年9月1~3日。
伊藤えん魔プロデュース「悪いヒトたち。」※
- 長尾
- あとは、ファントマも良かったですね。「悪いヒトたち。」
- __
- あ、そうなんですか。伊藤えん魔さんの作品、イベントで拝見した事しかなくて。
- 長尾
- 美津乃あわさんがいた時は西遊記とか海賊とかある種のファンタジーの世界をやっていたんですけど。
- __
- ええ、それが最近では現代に舞台を移したとか。
- 長尾
- そうですね。以前は、強い感情を表現しようと思ったら現代の日本ではどうしてもウソっぽくなってしまう。だから、現実ではない世界で怪物と戦うみたいなシチュエーションで表現していたと。
- __
- 強い感情?
- 長尾
- 例えば舞台で「会社に遅れそうなので急いでいる」シーンがあっても、自分が実際に会社に遅れそうで急いでいる時の「死にそうに切羽詰った感」の半分も味わうことができない。でも「銃撃戦のさ中、残弾があと一発になってしまった」シーンを観た時に感じられる「死にそうに切羽詰まった感」でやっと自分が体験した感情に追いついてくる・・・とでもいいましょうか。
- __
- そういう表現をずっとしてきた伊藤さんが、現代ものですか。
- 長尾
- でも、やってみたら「現代もそれはそれで過酷だなと思った」とトークで仰ってました。観ているこちらとしても面白かったんです。プロ化して、一時代を作った人が、それでもなお新しい方向性を探っている。そういう謙虚さというか誠実さって、力ですよね。
- __
- ああ、今まで見てなかったんですが。見てみたいです。
- ※伊藤えん魔
- 俳優。演出家。ハードボイルドとギャグを融合したエンターテインメントを追求する劇団ファントマ主宰。
- ※伊藤えん魔プロデュース「悪いヒトたち。」
- 会場:ABCホール。公演時期:2009年12月3~7日
帰り道にもう一度、泣いてしまう舞台
- __
- 長尾さんが芝居を面白いと思うポイントってどこなんでしょうか。
- 長尾
- やっぱり、芝居の価値って、あくまで見ている最中の体験にあると思っていて。昔、PM/飛ぶ教室の作品を見た時に帰り道でもう一度泣いてしまった事があるんですよ。
- __
- というのは。
- 長尾
- 親友の女の子3人が国籍の問題や事件に巻き込まれて一人が行方不明になるお話だったんです。3人は最後には再会できるんですが、そこで泣きながら「また昔みたいに3人でアホな話しよう」って言うんです。それ以外何も言えない。その頃、私の2人の友達それぞれが家庭や仕事で大変な時で、私だけが色々うまくいってて・・・、オーバラップして泣いてしまったんですね。
- __
- なるほど。
- 長尾
- それは私の個人的な体験だから、という話ではなく、それを思い起こさせた演出・蟷螂襲さんの力なんですよね。
- __
- 分かります。それが、観劇の面白さイコール芝居を体験するということなんですね。
- 長尾
- そういう作品は、自分が気付かなかった引出しを開けてくれるんです。
- __
- やっぱり演劇というか演技って、もの凄く細かい表現が出来るメディアだと思うんですよ。人間を使っているから。
- 長尾
- うん。舞台の上の登場人物の気持ちが分かるのは、それが同じ人間だからかな。やっぱり、人は人が好きなんですよ。
- __
- 人間は人間から興味を離せないと。だから演劇が生まれて、今まで消えずにあるのかもしれませんね。
ジョジョネタでウケる観客と、隣の分からない人
- __
- そういう意味で言うと、今回のオリジナルテンポの成功要因って、実は役者が細かい部分まできっちり演技出来ていたからかもしれないなと思うんですよ。その時に何を考えているかが、手に取るように分かるから。
- 長尾
- それは、もしかしたらその人の人となりが分かっているからかも知れません。たとえば全員で段ボールを片付けるシーン。坂口修一さんだけが仕事を押し付けられるネタで、彼のキャラクターを知っている人ならもっとおかしく思えると思うんですよ。いじられキャラだから。
- 坂口
- 誰も協力していない><
- 観客
- いいぞもっとやれ(笑)
- 長尾
- みたいな。
- __
- あるある。
- 長尾
- そういう内輪ウケに近いノリって、実はテレビドラマではあんまり見られない。小劇場だから許されるんでしょうね。たまにそういうネタがあると思えば、作ってるのが舞台出身の人だったりする。
- __
- ただし、内輪受けというのはあまり良いイメージはないんですよね。分かる人だけ分かるというのは、他の人たちを拒んでいるようでもある。
- 長尾
- でもこの時代、全方向の人にウケるものを生み出すのは難しいんですね。60~80年代は、まだ同じ世代の人たちは同じものを見て笑うことが出来たんですけど、今は価値観が細分化されているんです。
- __
- 自分はもの凄く面白いけれども、隣の人は笑ってないと。
- 長尾
- ここまでウケればOKというのは無くなって、どこを狙って投げても客層ルーレットでは「赤の8にしか当たりがない」んですよ。
- __
- ターゲットの割合から、5割~8割が消えてしまったということでしょうか。
- 長尾
- だから、むしろ、赤の8であるところの客が500%ウケるものを持ってきたら、隣の黄色の人も笑うんじゃないか。そういうふうなやり方じゃないと、もう面白いものは作れないような気がします。オシャレな人もいれば、気を使わない人もいる。お笑いファンがいれば、嫌いな人もいる。みんなもう、そういう風に向かっているんじゃないかと感覚的に思います。
- __
- なるほど。
- 長尾
- 例えば舞台でジョジョのセリフを言ったとして、分かる人にはもの凄く面白い訳ですよ。で、分からない人にとってみれば不快かと言うと実はそれほどでもない。モノによるけど、ネタとしてのレベルが高ければ気になる一瞬になるんです。分からなくても面白ければいいんですよ。
- __
- パロディは分からなくても面白い。そうですね。
- 長尾
- 例えば歴史というジャンルを、中・高でコースの関係で詳しく学んでこなかった女子が戦国時代を描いた舞台を観に行ったとして。歴史の素養がなくても、例えば恋人を殺されたお姫様の気持ちは分かる訳ですよ。感情が引っ張りだされてくるわけだから。演劇は、だから今後マニアックな方向に向かっていくかもしれない。でも当然、人間を描けていないと全然届かないから、基本的な部分は変わらないと思います。
- __
- 結果、マニアックさを中核に含む高感覚を持ち、ただし誰にでも届くベーシックな演技がきちんと出来ている作品がウケていくと。
「俺は今芝居出来ていたらそれでええねん」?
- __
- さて、長尾さんは今後、どのように攻めていかれますか?
- 長尾
- 攻めないですよ(笑う)、でも、ずっと言っているのは「辞めないように、儲かるように」努力してほしいと。演劇という、経済的にあまり能率の良くなさそうなメディアにもっと商業的な思考を持ちこんで考えてほしい。役者とか作家って、そういう思考には疎いと思うんですよね。「俺は今芝居出来ていたらそれでええねん」じゃなくて、どうしたら続けていけるのかを考えてほしいんです。ベトナムからの笑い声の人たちとか、それぞれ仕事を持っていて結婚もしていて、だけど本番のこの瞬間だけは思いっきりアホな事をやる、そして面白いものを作る、それでいいじゃないか。
- __
- カッコイイですよね。
- 長尾
- または伊藤えん魔さん・わかぎゑふさんのように、初めての人もマニアックな人も楽しめる・みんながお金を払ってもいいと思えるエンターテイメントをつくりつつ、自分のこだわりもしっかりと盛り込んでいくとか。
- __
- プロ化すると。
- 長尾
- 助成金を引っ張るためにこじつけのように頭を使うよりも、何か続けるための自立した方法はないのか、考えていってほしいですね。そういう事は言っていくと思います。
質問 池田 智哉さんから長尾 かおる さんへ
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- __
- 前回インタビューさせて頂きました、東京の劇団ギリギリエリンギ※の池田さんから質問を頂いてきております。「東京の演劇に対して、どんなイメージを持っていますか?」
- 長尾
- 新しければ価値だと思っているんでしょう?と思ってます。
- __
- なるほど。
- 長尾
- 関西圏で芝居を見て来て長いんですが、新しかろうが古かろうが、良ければいいんだと。面白ければいいんだとされているんですよね。吉本新喜劇のカンカンヘッドとか、分かっているけど面白い。
- __
- 愛されているし、実際面白いですしね。
- 長尾
- ベタなんですけど、秀逸なんですよね。その証拠に、面白くないものは消えて行っている訳ですから。でも東京の芝居っていうのは逆で、「新しければいいんでしょう?」っていう感覚が強くて、面白さそのものよりも「あれは前にどこかがやった」とか「これはまだ誰もやってない」とかで判断されているところが凄くあると思うんですよね。
- __
- なるほど。
- 長尾
- 私はそういう風潮に凄く疑問を感じるんですよね。前に誰かがやっていても面白ければ別にいいじゃないかと。新しさが持つ良さも当然あると思うんですが、それが稚拙だったり駄目だったりすればマイナスになってしまう。
- __
- 劇団としてはどうなんでしょうね。
- 長尾
- 新しさを求める観客が多いから、その要望に答えるというのもあるでしょうね。その逆かもしれませんけど。
- ※劇団ギリギリエリンギ
- 主宰・池田智哉による一人劇団。2004年結成。
バスダック
- __
- 今日はですね、長尾さんにお話を伺えたお礼としてプレゼントがございます。
- 長尾
- そんな。貰っていいんですか。
- __
- もちろんです。
- 長尾
- (開ける)あ、ヒヨコですね。いいですね。ありがとうございます。
最近どうですか?
TorinGi「捨てる。」※
- __
- 今日は、宜しくお願い致します。
- 池田
- 宜しくお願い致します。
- __
- 私が拝見したのは、「エビス駅前バー」※でのTorinGiのバー公演「捨てる。」でした。とても面白かったです。お疲れ様でした。
- 池田
- ありがとうございます。まさか、いつも読んでいるサイトの人に来て頂けたとは。
- __
- いえいえ。東京にもご存じの方がいると伺って私もびっくりしました。
- 池田
- あの、逆に聞いちゃいますけど、ウチを観に来られたのはどういう理由だったんですか?
- __
- 東京でのバー公演というのに興味があったんですね。あとは、七味まゆ味さんにオススメ公演を聞いたら宣伝メールが転送されてきたので。バー公演って、東京では多いんですか?
- 池田
- あ、多いんじゃないですか? 荻窪の、名曲喫茶ヴィオロンっていうお店とかは演劇公演多いですよ。そこのマスターが、気に入った人にしか貸さないみたいな。実は僕も、自分ではこれまであまり劇場で芝居した事がないんです。ギャラリーとか、喫茶店とか。
- __
- あ、そうなんですか。
- 池田
- 話に聞いただけですが、カラオケボックスでやった公演もあったらしいですよ。
- __
- それは面白そうですね。
- ※劇団ギリギリエリンギ
- 主宰・池田智哉による一人劇団。2004年結成。
- ※TorinGi「捨てる。」
- 公演時期:2009年9月19日~22日。会場:エビス駅前バー。脚本・米内山陽子。演出・池田智哉。
- ※エビス駅前バー
- 恵比寿駅徒歩3分。通常は音楽ライブなどを行っている。2009年より「feblabo×エビス駅前バープロデュース」という形で演劇公演を行う。
人×場所の組合せ
- __
- さて、TorinGiの「捨てる。」色々な意味で程よい会話劇というか、非常に見やすい芝居でした。池田さんは、演出をされていたんですよね。
- 池田
- はい。そもそも演出をやろうと思ったのが、いまは活動休止してるんですけどギリギリエリンギという劇団を主宰してて、そこで最初は役者をやっていたんですが、一つ今までと違った事をしてみようと思ってたんです。一つ、やりたい事をやらせてくれと。
- __
- ええ。
- 池田
- その時は6人の脚本家に同じ場所設定で6本の脚本を書いてもらって、7人の役者に演じて貰うという、トライアスロンみたいな企画をしていたんです。※僕が演出で。それを結局、2007年と8年に4回やりました。
- __
- そこから演出を始めたと。
- 池田
- はい。自分が出会ってきた人や場所を組み合わせる作品作りが凄く面白かったんです。今回の企画も、相性の合う脚本家さんに、いままで知り合った面白い・魅力的な役者さんをお呼びしました。でも、実は稽古期間が10日間しかなくて(笑う)。
- __
- なるほど。
- 池田
- 初日に読み合わせをして3日目に通しをするという突貫工事で。役者さんには楽しんでもらったみたいで良かったですが。
- ※トライアスロンみたいな企画
- 劇団ギリギリエリンギAnotherWorksシリーズとして、2007年・2008年で延べ26本の短編を上演。
やっていて一番楽しい、キャスティング
- __
- 先ほど、「程よい会話劇」と申し上げましたが、行き過ぎない現代口語会話劇、という印象を受けまして。エンターテイメント性を適当に配したというか、バーの雰囲気と凄く調和が取れていたように思います。いとこ達、兄弟、生き別れの親子が、同じバーで入れ替わりに会話するという内容でしたね。舞台が本物のバーというのがまず特色として面白いなと。
- 池田
- 普通の舞台ではない分、会話のやりとりに集中出来る環境だったと思います。小道具も舞台も全部本物なんで。だから、役者はお芝居の周りの「嘘」が少ない分、自分の気持ちの動きだけでお客さんの心を動かす事が出来たと思います。気持ちの持って行き方とか、お互いの距離の詰め方とか。
- __
- なるほど。伺いたいのですが、演出をする際に何か気を配られた事はありますか?
- 池田
- 台本の言葉と役者の言語感覚の相性ですね。体に乗っかった時にムリがない形になるよう注意していて、どうしてもそれを言っているように見えない役者がイヤなんです。そこは気を使っていました。
- __
- つまり、言えてないセリフ。
- 池田
- 言わされちゃってるセリフを見ると、そうじゃないだろう、と思っちゃうんですよね。脚本と自分のイメージにそぐわない役者は呼ばないんです。逆に言うと、そうして選んだ役者さんは稽古場ですんなりと自分のものにしてくれるように思います。プロデュースをやっていて面白いなと思う瞬間ですね。
- __
- 配役の妙ですね。
- 池田
- 誰かが書いた脚本と、自分が選んだ役者が、化学反応を起こしてくれると嬉しいです。今回に関してはトリコ劇場※の米内山さんとプロットの段階から詰められたんで、かなり良いイメージでできました。キャスティングは、やっていて一番楽しい作業ですね。
- ※トリコ劇場
- 2003年結成。主宰・米内山陽子氏。
深夜番組のような・・・
- __
- 今回の「捨てる。」。3組の家族・親戚の人間模様をあまり飾らない会話で描いたお話だったと思います。おかしさをベースに、少し切ない色もあったりで。池田さんは、お客さんにどう思って貰いたかったのですか?
- 池田
- 実は、今回の本の2本目の芝居で「弟を実家に帰らせて家業を手伝わせ、自分は東京に住みたい姉」がケンカしてたんですけど。僕、あれと全く同じ会話をしているんですよ(笑う)。実家で。今やってる仕事は実家じゃ出来ないのか、と。
- __
- なるほど。
- 池田
- そういうシーンを見て貰って、「ああ、知ってるなこの会話」って思って貰いたかったんですよね。実体験と重ねて共感してもらえればと。面白かったのは、若い方よりも比較的年配のお客さんからの反応が良かったんですね。
- __
- 年配の方は、「帰ってこい」というセリフを言った事があり、かつて言われた事もあると。
- 池田
- そういう体験が重なったんでしょうか。僕はお店のバーテンダーの役で。カウンターの中から、舞台と客席をニヤニヤしながら見比べてました(笑う)。
- __
- さらに言うと全体的に、こじんまりとしたというか、ひっそりと面白い企画でしたね。
- 池田
- そうですね。沢山のお客さんに見て貰いたいというのと同時に、深夜番組のようにやりたいとも思っているんです。箱庭みたいな形で芝居が出来るのが幸せだと思っていて。今回のバーみたいな、ミニマムな中での近い距離感でされる会話が面白いと思っているんです。
- __
- 深夜番組。
- 池田
- TV局の若手のディレクターが、予算の無い中で作る、深夜番組。余計な演出とかがなくて、見せたいものだけ見せる、あの雰囲気が好きで。僕、基本一人なんで(笑う)、あんまり予算はないかもしれないけど、自分が自信とリアリティを持って面白いと言えるものを作ろうと思います。
こりっち舞台芸術!
- __
- 東京の小劇場の現況について教えて頂けないでしょうか。
- 池田
- 僕でいいですか(笑う)。劇場の数が多いですし、ジャンル分けもけっこうちゃんとあって、お客さんの選択の幅はかなり広いと思います。ネットで調べれば色々出てきますし。
- __
- 劇場が多い。
- 池田
- 選択の幅が広いのはいいんですが、それで逆に密度が下がるというのもありますね。もちろん、濃い部分もあって、例えばこりっち舞台芸術!の上位にいる劇団はどれもちゃんと実力や人気があると思いますね。
- __
- そこでフィルタリングがされていると。
- 池田
- まあ、そういうのがある気はします。
- __
- なるほど。このシルバーウィークで私は8本程度芝居を見たんですが、確かにどれもこりっち上位でした。と言う事は、そうでない舞台も見ておくべきだったのかな。
- 池田
- いや、それでいいんじゃないですか? 一つのパラメーターになっていると思いますよ。こりっちで評価されて勢いを得る団体もいますし。お客さんのネット上のクチコミで、初日の倍のお客さんが来る事もありますし。健全な形だと思いますけどね。
- __
- 初動が遅いのに、後半は全然違うと。
- 池田
- ある程度の評価を見てから動いているお客さんが増えている気がします。こりっちの場合は数値化されているので、明確なんですよね。
これからの小劇場についてまじめに考える会
- __
- 今回、やって良かった事はなんでしょうか。
- 池田
- 演出家としては、短い稽古期間でもポジティブに動いてくれる役者に巡り合えた事ですね。やってて面白かったですし。短い時間を上手くコントロールする事が出来ました。
- __
- これがまずかったというのは。
- 池田
- シルバーウィークに負けたという部分ですかね(笑う)。動員面でしんどかったというのはあります。これは小劇場全体の問題だと思うんですが、お客さんが観劇に使うお金を別の事に使い始めてるんですよ。月に4本見ていた人が2本しか見なくなってる気がするんですよ。
- __
- まあ、真っ先に切り捨てられる部分ですからね。
- 池田
- 全体的にお客さんが離れつつあると思います。
- __
- そういった問題に対して、具体的にどうしたらいいのでしょうか。
- 池田
- 単純に、クオリティを高める事以外ないと思います。面白いものを作る。それが公演の形態や、作品の内容や、色々あると思うんですけど。チケットを買う動機をもっともっと刺激していかなくてはならないと思うんですけど。
- __
- 動機付けですか。
- 池田
- これを見たいと思ってもらうにはどこまで持っていかなくてはならないか、と。こうすればお客さんが入る、みたいな方法はないので。
- __
- 全体がもっと戦略的にならなくては、小劇場に来やすい環境は作れない、んでしょうね。
- 池田
- 実は今年の6月の頭に、「これからの小劇場についてまじめに考える会」というイベントを企画したんですよ。僕が企画・構成して、当日の司会進行もさせてもらったんです。延べ3日間やったんですが、演出家や制作者、劇場主や役者さんも来て。プロジェクタで映像を出して、これから自分達がどうしていかなくてはならないかという事を話し合ったんです。
- __
- どうなったんですか?
- 池田
- まとまった答えは出なかったです。一日ごとにばらばらな意見で一致して・・・いや、一致しなかったんですけど(笑う)。結局、僕らにお金がない状態でどのようにお客さんを舞台に集めるにはどうすればいいのか、そもそも興味のない人に舞台に来て貰う必要があるのか、もっと考えよう!という(笑う)。
- __
- 面白そうですね。どのくらい集まったんですか?
- 池田
- 3日間で延べ40人くらいです。演出家が集まった時は、自分がどのような世界を作りたいのか、から始まって「演劇に観客は果たして必要なのか」という話に戻って、半分ケンカになっちゃってました。凄いなと。面白かったです。
質問 三浦 直之さんから 池田 智哉さんへ
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- __
- 前回インタビューさせて頂きました、劇団ロロ※の三浦さんから質問を頂いてきています。
- 池田
- あ、ロロ。
- __
- ご存じですか。
- 池田
- 一度、15minutes made※という、ショーケースで見た事があります。舞台上でペンキを掛けあってました。素舞台から役者がどんどんドロドロになっていくという・・・。面白かったです。
- __
- ああ、ちょっと面白さが分からないですね・・・。
- 池田
- いや、言葉ではなかなか説明出来ないです。あれは劇場で見ないと。
- __
- なるほど。「どんなお芝居が好きですか?」
- 池田
- そこにいる人間が見える芝居が好きですね。キャラクターだったり、人間関係だったり、感情だったり。
- __
- 今回の「捨てる。」も。
- 池田
- そうですね。好きな事をやらせてもらったので。楽しかったです。
- ※劇団ロロ
- 2009年結成。主宰・三浦直之氏。脚本・演出をつとめる三浦直之が第一回作品『家族のこと、その他のたくさんのこと』で王子小劇場「筆に覚えあり戯曲募集」“史上初”の受賞を果たし、結成。物語への愛情と敬意を込めつつ、演劇で遊びまくる。(公式サイトより)
- ※15minutes made
- Mrs.fictions主催。毎回6~7団体が15分の作品を持って参加する。
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