きちんと

__ 
お芝居を始められたキッカケを教えて頂きたいのですが。
荒木 
高校からやってました。
__ 
そこでも役者をされていたのでしょうか。
荒木 
はい、でもそこは規模が小さくて、大会とかも出た事はなく、ほそぼそとやってたんです。で、高校3年の時に推薦で大学が決まって、大学入試も無くなったし暇だったから、お芝居でも見ようとアートコンプレックス1928に行ったらお芝居のオーディションのチラシがあったんですよ。ゼロプロデュースという集団の「シンデレラストーリー」という。そこが同志社小劇場のOBの人らがたくさんいてはったので、入らないかという流れで同小に入りました。
__ 
なぜ芝居をしているのか、お聞きしたいのですが。
荒木 
なぜ芝居をしているのか・・・。他に特に趣味もないし、何やろう。私、普段声も凄く小さいし、喋るのも苦手なんです。でも、舞台稽古をきちんと積めば、本番で人前に出られるんです。それが楽しいと思ったんですね。

ベトナムからの笑い声

__ 
荒木さんは、確かベトナムからの笑い声に、前回の「レストラン・ザ・ペガサス」から新入団員として入られたんですよね。入団されたきっかけを教えて頂きたいのですが。
荒木 
ベトナムを初めて見たのが割と最近なんですけど、イサンでやっていた公演で。その中の1作品に、「ドーピング」というのがあったんです。その作品が、同じ台本を一切セリフを変えずに1度目は真面目に、2度目は笑えるようにやる、というものだったんですね。その1度目というのがみんなめっちゃ上手で。面白い上に普通に芝居をやっても上手というのに憧れたんです。
__ 
なるほど。
レストラン・ザ・ペガサス
公演時期:2008/8/15~17。会場:スペース・イサン。

豆企画「消失」

__ 
今日は宜しくお願いします。
荒木 
宜しくお願いします。
__ 
最近はいかがですか。
荒木 
最近は、9月頭の豆企画の「消失」の稽古です。延命聡子さん演出で。
__ 
進み具合としてはいかがでしょうか。
荒木 
私も含め、なかなか人が揃わなくて。
__ 
芝居全体、どんなノリなんですか?
荒木 
近未来的な、戦争をテーマにした感じのお話だと思います。
__ 
何か、出演にあたっての意気込みですとかを伺えれば。
荒木 
はい。今回の企画をされた鍵山さんは、立命の中高の先生をされているんですね。そこでの教え子さんを集めてのお芝居なんです。私、今まで自分が最年少ばっかりだったから、稽古場での年上の立ち場として頑張らないとな、と。稽古場での時間の使い方とか、そういう事でみんなが得るものがあればいいなと思っています。あと、延命さん演出に憧れていたので、何とか期待に応えられるように頑張りたいと思っています。
ベトナムからの笑い声
丸井重樹氏を代表とする劇団。手段としての笑いではなく、目的としての笑いを追及する。
豆企画「消失」
公演時期:2008/9/5~7。会場:西部講堂。

タグ: 鍵山千尋さん


一介の大学生が

__ 
私が初めて荒木さんを拝見したのは、壁ノ花団の2007年の「悪霊」というお芝居でした。あれはとても面白かったです。
荒木 
ありがとうございます。演出の水沼さんが、凄く楽しい方で・・・。
__ 
あれは一体、どういった経緯で出演が決まったのでしょうか。
荒木 
その公演の前に、前田司郎さんの尾形さんや垣脇さんも関わっていて、水沼さんに本番をみてもらえたのがきっかけですね。元々同志社小劇場でずっと役者をやっていたんですが、一介の大学生がそんな舞台に出させてもらう事ってあるんやと。
__ 
ご自身ではどんな作品でしたか。
荒木 
凄いメンバーだったじゃないですか。水沼さんが演出で、内田淳子さんとか金替さんとか。稽古場にいるだけで変な汗をかいてました。岡嶋さんが、「そんな緊張せんでもいいで」って声を掛けて下さったのが嬉しかったです。最終的にはみなさんと打ち解けて、良かったです。
__ 
そういえば、公演準備期間中の「悪霊日記」も面白かったです。
荒木 
皆さん面白かったですね。
__ 
懐かしいですね。
前田司郎氏
劇作家、演出家、俳優、小説家。五反田団主宰。
MONO
京都を拠点に活動する劇団。軽妙な会話劇から古典劇まで手掛ける。

minijupe ネックレス

araki_present
__ 
今日は荒木さんにお話を伺えたお礼に、プレゼントがあります。
荒木 
プレゼント。まあ。
__ 
どうぞ。
荒木 
なんとまあ。では失礼して。厳重な包みですね。(開ける)何ですかこれは。
__ 
ネックレスですね。
荒木 
凄いですね。買う時に恥ずかしくなかったですか? 凄いですね。こういうものを付ける習慣がないもので。付けて帰ります。ありがとうございます。嬉しいです。
__ 
今日はありがとうございました。


精華演劇祭Vol.9参加作品「キラー・ナンセンス

__ 
今日は、よろしくお願いします。
津野 
よろしくお願いします。
__ 
最近は、いかがでしょうか。
津野 
最近は仕事ばっかりです。
__ 
ちなみに、どのようなお仕事をされているのでしょう。
津野 
テレビのディレクターです。夏なので、特番がどうしても多くなりますね。ちょこちょこ柳川のミーティングもしながら。
__ 
激務ですね。
津野 
まあ、慣れました(笑う)。
__ 
柳川の直近の公演と言えば、精華演劇祭Vol.9参加作品「キラー・ナンセンス」でしたね。とても良かったです。
津野 
ああ、ありがとうございます。不安になりますね、あれだけお客さんが来ないと。
__ 
あ、そうだったんですか。少なくとも、私にはとても面白かったです。
津野 
ああ、ありがとうございます。
柳川
1998年、立命館大学の学生劇団を母体に結成。洗練されたシチュエーションコメディを目指すも、良くも悪くも洗練されず「なんだかよくわからない、面白いのかどうかすら、ちょっと判断しかねる笑い」を目指す、どちらかと言えば、ひとりでこっそり観に行きたい劇団。(公式サイトより)
精華演劇祭Vol.9参加作品「キラー・ナンセンス
公演時期:2008/3/15~16。会場:精華小劇場。

可能な限り寄り道

__ 
キラー・ナンセンス」は、ご自身ではどんな作品でしたか?
津野 
柳川を始めて10年になるんですけど、やっと「これが一番合うのかな」ということを見つけられたかなと思います。作っている時はいつも、それが面白いと思っているんですけど。
__ 
それはどのような事なのでしょうか。
津野 
やっぱり、演劇ってTVとは違うことをしないといけないじゃないですか。出来ないこと、してはいけないことをやるべきだと考えているんです。そういう面では、少なくとも京都・大阪を見まわした時にあまり似た道を目指している人はいないし、そんな状況の中では良く出来たなと思います。
__ 
ナンセンスでシュールな路線ですね。
津野 
ええ。言ってしまえば、簡単に笑わせようと思ったら簡単に笑わせられると思うんですけど、それじゃあ。
__ 
そうではなくって、希少価値のある笑いを目指すということですね。「キラー・ナンセンス」は、間違いなく不条理なお芝居でしたが。
津野 
どうなんですかね。どんなお芝居でした?
__ 
個人的な感想に過ぎないんですが、舞台で不条理な出来事が起こっていて、まずそれに対する説明はしないよ、という姿勢がとても明確だったと思ったんですよ。それを受け入れる瞬間がとても刺激的でした。
津野 
精華演劇祭のチラシの推薦文を、「ベトナムからの笑い声丸井さんに書いてもらったんですけど、すごく的を得たことを書いてもらって。「見る側は頭を出来る限り空っぽにして、かつ集中して見なければならない」。上手い事言うなあ、この人、と思いましたね。流石、その通りだと。
__ 
そういう事ですね。とても面白い体験でした。お茶の容器が変なぬいぐるみだったり、うんちが「お殿様」と呼ばれて、パンツの中から逃げ出したり。出来事自体がナンセンスで、もう観るしかないという状況でした。そこで是非伺いたいのですが、そういったアイデアは、一体どこから来るのでしょうか?
津野 
結構、書く時に後先を考えないんですよ。台本を書く時にも、スタートとゴールは決めるんですけど、僕は可能な限り寄り道をしたいんですね。上手い人は伏線を張って書くんでしょうけど。
__ 
寄り道とは。
津野 
書いている時に余計な事をいっぱい考えるんですよ。人間なんで。例えば「少年がお茶を持って入ってきた」というト書きを書いている時に、おふざけが過ぎてうっかり「お茶は白いもじゃもじゃだった」と書いてしまう時があるんです。それを消さないんですよ、面白いじゃないですか。じゃあ、それを受け入れてお話を続けたらどうなるか、と。どんどんどんどん僕が迷子になっていくんです。
丸井重樹氏を代表とする劇団。手段としての笑いではなく、目的としての笑いを追及する。

こんなんでもいいんだ

__ 
そういうスタイルは、いつ頃から始まったんでしょうか。
津野 
柳川を始めた当初は、それこそ三谷幸喜さんみたいな作品に憧れていたんですけどね。上手く複線が張り巡らされていて、最後には全てが活かされるみたいな。それに飽きて、モンティパイソンとかを見るようになったんです。見ている内に、「こんなんでもいいんだ」って思えるようになって。
__ 
なるほど。一番最初のシュールな演出というのはどんな。
津野 
昔、アトリエ劇研でやった「サンシャインボーイズ」という公演で、当初「12人の優しい日本人」をやろうと企画したんです。で、稽古を始めてみてから、どう考えてもキャストが4人しかいないことに気付いたんですよ(笑う)。4人で12人は無理だよね、と。必然的に一人が複数の役を演じる事になったんですね。でも書いていると無理が出てきて、自分で自分に話しかけることになったり、誰も舞台上にいなくなったりして。
__ 
え!
津野 
話を進めようがなくなっちゃったんですけど、もういいじゃんと。そこからはチャップリンのお話を始めたらいいじゃない、とか思って。結果的には『12人~』とは全く別物のお話になりましたけど。でも、4、5年前から「面白いじゃんこれで」と思えるようになったんです。飽きたら、そこから紙芝居でも始めればいいじゃん。だってそうなっちゃったんだから。そうなると、舞台でお話を見せているというよりかは、僕たちがお芝居を作るまでの2ヶ月間の苦労を見せているという状態になりましたね。
__ 
なるほど。
津野 
飽きたら、別のお話を始めればいいじゃない。開き直りなんですけどね。最近はさじ加減が分かってきました。映像を使ったりして。
__ 
台本を書いている途中で飽きるっていうのがいいですね。
津野 
本番二週間前くらいに思いついたことじゃないと、僕が乗り切れないんですよ。おかげで役者は大変なんですけど(笑う)。

タグ: 三谷幸喜 さじ加減


ギリギリの線

津野 
面白さの感覚のスピードってすんごい早いと思うんですよ。
__ 
それは、新しい芸人が現れては飽きられるまでのスピードという事ですか?
津野 
というよりは、何を面白いと感じるかっていう、時代の流れの速度ですかね。たとえばいとしこいしを見ていると、僕らのお父さん世代は凄く笑うんですよ。エンタツアチャコとか、大助花子とか。でも、僕らが見ると上手いなあとは思うけど、腹を抱えては笑えない訳で。たぶん、10年後には、若い子はダウンタウンでも笑えなくなっていると思うんですよ。
__ 
そうかも知れませんね。
津野 
今僕が、例えばシチュエーションコメディを面白いと思って作品を作っても、どこかで怖さが残るんですよ。いつまでもこれを続けていても、多分この人たちは、すぐ笑わなくなる筈だと。であれば、お客さん達が予想するよりも前に進んでいなくてはならない。と思っているのは僕たちだけなのかも知れないけど、そこに甘んじて前と同じレベルにいるのは耐えられないし、飽きるんですよ。もちろん、常に変わらないものを提供し続ける人達も素晴らしいと思うんですが、他でもない僕らが安定したものをやってどうするんだと。いつも新しい、未知のものを提案していきたいと思うんです。ぶっちゃけてしまうと、お客さんが笑わなくてもいいかなと思っているんですよ。もちろん、笑いが取れるギリギリの線を探るんですけどね。でも、僕はその線を越えてもいいかなと。それはTVでは出来ない事ですし。
__ 
キラー・ナンセンス」は、私は十分付いていけましたが、ご自身はいかがですか。
津野 
あれは結構、考えました。大阪ってこともあったし、本番前に、大分長かったシーンや一線を越えた部分を切っています。
__ 
お客さんに見せるものとしては洗練されていたということですね。
津野 
はい。でも、僕としてはこれで良かったのかな?と思うんですよね。

タグ: 瑞々しい感覚


サミュエル・ベケット

__ 
次回は10月だそうですが。
津野 
はい。次回は古典をやろうと思っています。
__ 
古典ですか。
津野 
ベケットという、不条理劇の先駆けと言われている人なんですが。
__ 
サミュエル・ベケットですね。
津野 
はい。参考にと思って台本を買ったんですよ。で、読んだんですけどいまひとつ面白くなかったんですね。ベケットがやったことって当時はすごく斬新な事だったんですよ。それまで演劇は何かドラマチックなものの筈なのに、何も起こらないという事を題材にしたという。でも、今そんな演劇多いじゃないですか。
__ 
ああ、そうですね。
津野 
静かな演劇と言われるものがあったりとか。今の時代で、このベケットをどう演出するべきなのか、ですよね。昔、劇研で柳川の公演をした時に「ベケットに通じるものがある」と言われた事があったんですが、読んでも「このおじさんつまんないな」と思ってしまう。でも、未だに名前が残っているという事は、何かあるんだろうなと思うんです。20世紀を代表する偉大な劇作家な訳ですから。ちょっと勝負をしてみようと思うんです。まあ、10月になってもベケットかどうかは分からないんですけど。
__ 
古典ってちょっと意外ですね。
津野 
古典はちょっとやりたいなと思っていたんです。台本書かなくていいから(笑う)。
__ 
確かにそうですね(笑う)。しかし、当時は斬新だったんですよね、ベケット。
津野 
ベケットの凄いところは、演劇に必要だとされていた部分をどんどん排除していって、役者の肉体もいらないって、口だけの芝居をしちゃった人なんですよ。役者がずっと壷から顔出してるだけだったり、女の人が土に埋まったままずっと芝居したり。そこまで行き着けるのは凄いと思うんですよ。50年代にそういう事をしたというのは。
__ 
なるほど。
津野 
でも、今見るとそれほど刺激的とは言えないですね。
__ 
今はもう蹂躙されてしまっているからでしょうね。
津野 
まあでも、僕らもそろそろ真面目にやってもいいかなと。やり方はきっとデタラメですが、僕らは10年間そのデタラメな事をやってきたつもりなので。

タグ: 静かな演劇と「出会う」


質問 高杉征司さん から 津野允さん へ

Q & A
__ 
今日はですね、ワンパの高杉さんから津野さんへのご質問を預かってきております。
津野 
あ、高杉さん。
__ 
ええと、「グラビアアイドルのどこを見ますか? また、どこに面白さを感じますか?」という。
津野 
面白さ?
__ 
高杉さんがおっしゃるには、グラビアは時代を映す鏡であると。だから、グラビアのどこを見るかによって時代感覚が分かるだろうと。あとは、グラビアアイドルの肉体のどこを見るのかなどについても。
津野 
実は僕はずっとPLAYBOYを買い続けていて、グラビア好きだった時期があるんですよ。
__ 
あ、それでしたらピッタリですね。
津野 
高杉さんの言うてはることとは違うかも知れないんですけど、お尻を見るんですよ。歳をとったなと思いますね。
__ 
どういう事でしょうか。
津野 
大体、高校生までの男は顔を見るんですよ。で、二十歳そこそこになると胸を見るようになる。さらに行くと腰のくびれ、おっさんとなると足が綺麗だと思うようになるんですね。そういう質問じゃないですかね(笑う)。
__ 
いえ、趣旨に合っているかと思いますよ。

世間の声から逃げつつ

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか。
津野 
正直、自分の作品がどうなっていくのか分からないんですよ。「これが面白い」と言う世間の声から逃げつつやっているので。
__ 
「これはどこかで同じものを見た」という感覚から逃げると。
津野 
ええ。飽きられないように、予想は裏切り続けたいなと思います。

タグ: 今後の攻め方


指人形

tuno_present
__ 
今日はですね、津野さんにお話を伺えたお礼にプレゼントがあります。どうぞ。
津野 
ありがとうございます。(開ける)何ですか、これは。
__ 
指人形ですね。
津野 
あ、可愛い。え・・・これはどうすればいいんでしょうか。
__ 
裏にマグネットが付いておりますので、どこかに付けられてはいかがでしょうか。
津野 
ありがとうございます。冷蔵庫に飾ります。


シェイプアップ

__ 
今日は宜しくお願いします。
高杉 
宜しくお願いします。
__ 
最近はどんな感じですか。WANDERING PARTYの代表としてもお伺いしたいのですが。
高杉 
最近ですか。劇団の作品の方向性とか、組織そのものの体質もガラッと変わってきていまして。色々大変ですが、劇団をちゃんと形にするために、もっともっと努力したいですね。いまやっている事に満足している訳ではないので。絞っていきたいですね。
__ 
絞っていくとは。
高杉 
今までのやり方というのは、どうしても甘さがあったんですが、それではちゃんと作りたいものが作れないんですね。遊びを有益なものにしたいと思っています。遊びがないというのは、またちょっと違うじゃないですか。そういう部分をシェイプアップしていきたいと思うんですけれど。
__ 
ワンパのこれからの発展を目の当たりに出来るというのは嬉しいですね。
高杉 
いえいえ。でも、緊張感がありますね。うん。会議ひとつとってみても。本当に、過渡期なんだろうなと思います。作品も集団ももっと納得のいくものに仕上げたいんです。すると方向転換が必要になりますね。その時の、えも言われぬプレッシャーが。
__ 
あごうさんにインタビューした時に伺ったんですが、やっぱり劇団をやっていくことは大変だと仰っておりました。劇団員を何とかしていかなくちゃならないという。
高杉 
本当に大変ですよね。ぶっちゃけ、1ヵ月生活出来るだけの給料を毎月支払えない以上、作品性、向上心、人間性みたいなものでしっかりと結びついていなければならないわけですから。
WANDERING PARTY
2001年8月、結成。京都、大阪を中心に活動。「芸術と娯楽」は同義であることを追求すべく、現代美術、身体表現を換骨奪胎し、笑いと涙を誘う演劇づくりにいそしむ。(公式サイトより)

タグ: 最高の研鑽は成功を担保する訳ではない 劇団の方向転換


ジレンマ

__ 
作品の事について伺っていければと思うんですが、直近の公演では「レオナール・F S改」がありました。非常に面白かったです。高杉さんはレオナール役でしたが、演じられていていかがでしたか?
高杉 
そうですね。設定として、大正から昭和にかけて活躍した画家と、現代の劇作家との邂逅を描くという話だったんですが。
__ 
時代設定があやふやとなっていたというか。
高杉 
普通、お芝居って時代がいつだっていうのが決められていて、それに基づいて役作りしたりすると思うんですけど。こないだのは立ち位置をここと決められないというか。代わりに現代が戦時中であるという比喩を使って、本当の太平洋戦争中の時代をダブらせていたんですね。場所にしても、病室から稽古場に変わったり。でも、立ち位置のあやふやさというのは、本当は普通のストレートプレイをする時も持っていなくちゃいけない感覚なんだろうなと思うんですよ。今はこういう時代で、こういう場所で、こういう人、とガチ決めにして疑いなくやるというのは、凄く単純な記号化で。結局、人間のやる事というのは記号化しなければ表現にならないんですが、記号に裏切られるくらいの方が面白いんですよ。」
__ 
裏切る記号ですか。
高杉 
舞台上で役者が、自分の演技を疑わずに「ここはこういう記号を発します」、「あなたのそのセリフをこういう記号として受け取って、こういう記号を込めて返します」という単純な記号の連続って、何か奥行きが無いというか、面白くないというか。もっともっと、作品も疑って自分自身や自分の思考も疑って行くという作業が必要となると思うんですね。疑った上で、結局僕は僕でしかない、というジレンマを抱えながら舞台に立つことが仕事なんじゃないかと思います。
__ 
ジレンマですか。
高杉 
俺って一体何なんだろう、演じるって一体何なんだろうという問いかけ、そういったものが、結局僕を舞台に立たせるんだろうなと思うんです。
WANDERING PARTY15th.『レオナール・F S改』
公演時期:2008/6/17~22。会場:精華小劇場。

タグ: 役をつかむ


読み抜く・言い抜く

__ 
ジレンマについてもう少し伺います。役者が指定されたある演技に対して持つべきジレンマという事ですが、高杉さんは稽古場などでそれをどのように扱うのでしょうか。
高杉 
元々、うちのあごうがやっている稽古は、何でしょうね。それっぽい抑揚を付けて読むという事を嫌う訳ですね。楽しいシーンのセリフを「楽しそうに読めばいいんでしょう?」という「っぽい」演技というのに対して、先がないと思うんですね。芸術として見た時に、そこから先へのアプローチが何も感じられないんだよね。そこで完結しちゃって、「うん、楽しいシーンという事でやってるんだよね、それっぽく見えるからOK」で。
__ 
最初にゴールを設定して、そこにたどり着いた、という、演技一つを取った時に製作への欲が見られないということでしょうか。
高杉 
うん。そういった場合の役者が出来るアプローチとしては、その「ぽさ」をどれだけ実感として伴えるか、という作業だけだと思うんですけど。
__ 
あと、その納得をどれだけ客席に届けるか、ですね。
高杉 
そうそう。でも役者は、自分の中から出てきた訳ではない、どこまで行っても他人の書いたセリフを言わなければならないというジレンマを抱えなければならないと思うんです
__ 
その上でお聞きしたいのですが、本番1ヵ月前のレオナールFS改の公開稽古を拝見したんです。そこでの高杉さん演じるレオナールの演技は初演とはあまり変わっていない、ちゃんと抑揚の付いたものでした。でも、本番では全く逆の。
高杉 
棒読みでしたね。私一人だけ。
__ 
あれは一体、どういう経緯でああなったのでしょうか。
高杉 
棒読みと言いましたけれども、あれはロボット的な機械音とは違うセリフの出し方だったんですね。ニュアンスを抜いてフラットに読み抜くというか。でもやってみるとこれが出来ないんですね。
__ 
はい。
高杉 
今までやってきた「オルターナティブグリフ」なども、淡々とセリフを言いぬいていく芝居でした。でも、情報量は圧倒的に多かったなと僕も演出も判断していまして。「ぽさ」を抜いてニュートラルな演技で作っても行けるだろうと。今回の「レオナール」でも、最も立ち位置が不安定なレオナールでしたが、演出の判断でああなりました。でも、他の役者も出来るだけシンプルにやってるんですよ。
__ 
そうだったんですか。
高杉 
今までの演技のクセや、感情を思考して出さない、与えられたセリフをつるつると出すという。セリフに意味はあるわけですから。狙ったナチュラリズムとは違うシンプルな芝居を作りました。その中でも僕は極端な形でしたが。でも演出がそれで決めたという事は、後は僕は「何故自分はこんな喋り方をしているのか」という模索な訳ですよ。他の人たちが普通の喋り方をしている中、棒読みで視線も合わない、ずっと瞳孔が開いたように一点を見て喋り抜いていくと。その事自体へのジレンマがあれば良かったんですね。でも、「俺はこう決められたからこうやってるんだよ」という、淡々とした感じじゃなくって、ぼくなりに悩みながら考えながらそこに立っているという、そこが重要だったのかなと終わった今は考えていますね。やってる最中はそれどころじゃなかったんですが。
__ 
なるほど。そういう事だったんですね。
高杉 
そうなんですよ。その中でもやっぱり、たまに自分の中でピンとくる、鳥肌が立つ瞬間がある訳ですよ。その時に「あ、この為か」と思うんですが、それが一体何の為なのか分からない。自分で説明出来ない、今の自分の文化レベルを遥かに超えたところで何かが噛み合った瞬間というか。もう一瞬ですよ。それが何度かあったんですが・・・。
__ 
個人的な感想ですが、高杉さんの演技は、どこがどうとは言えないんですけど苦しそうというか。切実な感じが出ていたと思います。
高杉 
そういう風に感じて貰えたというのは良かったなと思いますね。実際のレオナールという人物も、かなり苦しんでいただろうと思うんですが、それを苦しみとして表現しようとするとまた直接的なものになるだろうし。
WANDERING PARTY13th.オルターナティブグリフ
公演時期:2007/6/15~18。会場:ART COMPLEX1928。
WANDERING PARTY14th「total eclipse」
公演時期:2007/6/15~18日。会場:ART COMPLEX1928。

タグ: 情報量の多い作品づくり


方向性

__ 
一つ、非常に印象的なシーンがあったんですが、高杉さんの演じるレオナールの長台詞中、その全く同じレオナールが喋る映像が高杉さんに覆いかぶさるというのが。
高杉 
ありましたね。
__ 
で、映像も高杉さんも喋っている、しかも棒読みで。あれは非常に面白かったです。
高杉 
あれは、あごうが本番直前に決めたんですよ。ちょっとその辺は、彼に聞いてみないと分からないんですが、面白いと直観的に思って決めたんでしょうね。
__ 
あれは新しかったなと思います。そういった新しい試みもさることながら、最近のワンパは本当に、次への挑戦をし続けていますよね。そこで伺いたいのですが、ワンパの芝居って少し前とは随分趣向が変わりましたよね。前は時代物が多かったのが、今は芸術的な。たとえば「オルターナティブグリフ」は、非常に芸術的でかつエンターテインメントとしても完成度が高く出来ていて。方向性が一気に変わったなと感じました。戸惑いなどはありましたか?
高杉 
ありましたよ。もちろん。ありましたよ、もう大混乱。今までやってきた事を全部否定された訳ですよ。
__ 
そうですね。
高杉 
でも、僕も別に今までやって来たことに疑いを持たずにやってきた訳でもなく、変わりたいという気持ちは持っていたので、それまでの事を捨てるという事には強い反発は無かったですね。この先に何かがある筈だと、これを捨ててしまわないと次に進めないという事を多分劇団員みんなが感じていたと思います。ただ、だからといって次の表現方法がすぐに見つかるという訳ではないですからね。捨てるのも簡単じゃないですし。
__ 
ジレンマだった訳ですね。
高杉 
役者として空っぽの、不安定な状態だった訳ですよ。何もない。
__ 
ええ。
高杉 
でも、今までやってきたことに固執していては、自分の経験を演技に活かす事は出来ない。先の、何か新しい表現方法を獲得した時に初めてフィードバック出来るんです。捨てる時に「今までやってきた事は何だったんだ」と思いがちですが、違うんですよね。そればかりを大切にしていたら、結局は些細な事のすり合わせでしかなくなって、経験を金魚のフンみたいに無駄に引きずってしまうんですよ。何やっててもそうだと思うんですけど、新しい事に挑戦してこそ。
__ 
今までの経験が立ちあがってくるという訳ですね。
高杉 
はい。今新しい何かを獲得した訳じゃないですけど、役者として新しいステップに入れたなと思います。あれは演出家あごうさとしの偉大なる挑戦だったなと思いますよ。

転化

__ 
ところで作品の変遷的には、「二十一世紀旗手」で、Apple社製品(powerBook)が出てきたところが転換点かなと思うのですが。
高杉 
そうですね。あそこが明らかに転換点でしたね。あの時から、二つの時代を織り交ぜながら、劇中でつっこむ訳でもなく、当たり前のこととして受け入れているという。
__ 
ワンパの冒険ですね。そこからレオナールFの初演、オルターナティブグリフと。
高杉 
オルターナティブグリフというのは、棒読み(便宜上棒読みと言っているが棒読みではない)をフルシャウトしていったんですけどね。それからは、棒読みを今喋っているくらいの音量にしています。その時に、失われたエネルギーは何に転化されるのかと。叫んでいる時の圧を普通に喋っている時にも出すべきで。そこは未だに模索中なんですが、僕としては今まで言ってきたジレンマとか違和感が転化していくんじゃないかなと。
__ 
それらが、今後の高杉さんのキーワードになると。
高杉 
自分でも楽しみですね。でも、結果こんなのが生まれたという次の瞬間に、それをぶち壊して次のステージに行かなければならない。破壊・再構築の繰り返しになるんですが、そのエンドレスな作業を楽しんでいきたいと思いますね。
WANDERING PARTY11th.21世紀旗手
公演時期:2006/1/27~29(京都)、2006/2/17~19。会場:アトリエ劇研(京都)、タイニイアリス(東京)。

質問 弓井茉那さん から 高杉征司さん へ

Q & A
__ 
今日はですね、高杉さんへの質問を預かってきております。弓井茉那さんという、前回インタビューさせて頂いた方なんですけれども。
高杉 
あ、毎回やっている訳ですね。
__ 
ここ最近ですね。
高杉 
へえ。ちなみにいつもどこに出演されている方なんですか?
__ 
フリーですね。次はぶんげいマスターピース工房の「三人姉妹」に出演されるそうです。そんな弓井さんから。「高杉さんは、普段どうやってその体格を維持されているのですか?」
高杉 
(笑う)いや、僕は小学校の頃からずっとスポーツをやってきた訳ですよ。運動神経とか割と良くって。一番体格が変わったのが高校の柔道でした。インターハイの常連校で、バリバリの軍隊式でしたね。朝イチで筋トレ、授業が終わってからも畳にゲロを吐くような練習でした。そこでもともと筋肉質だった体がパンプアップしたと。その時に代謝のいい体が出来たんでしょうね。大学でも柔道をやっていたんですが、卒業から10年、維持する為に特別な何かをしている訳ではないですね。走ったりするぐらいでしょうか。
__ 
走られるんですね。そこが。
高杉 
ついサボりがちになりますが。やる時はバーっと。芝居が詰まってくるとなかなか出来ないですけどね。

分かち難い身体性

__ 
これから、どんな感じで攻めていかれますか。
高杉 
別ジャンルの方から、「ダンサーは身体、役者は言葉」というふうに言われることがあったんですね。それが悔しくて。
__ 
なるほど。
高杉 
役者というのは体一つでパフォーマンスする訳で、そこには圧倒的な身体性があるんですよ。今の我々の芝居が、いかに身体を感じてもらえていないかということだと思います。言葉は舞台上に立つ身体によって初めて現れるものであって、演劇が言葉に重点を置いている事は認めるんですが、ライブである以上、分かち難い身体性こそを大事にしたいなと思うんです。ダンサーみたいに動きまわるということではなくって、ただ何もせずにそこに立っているだけで身体性を感じられる訳で。
__ 
違うんですね。
高杉 
体という物質を舞台上に存在させるというだけで、そこにある喜びを紡ぎだしていきたいと思うんですよ。そのように身体性が変わるとセリフの扱い方もガラっと変わると思うんですね。
__ 
体の重要性を再認識するということですね。
高杉 
セリフの言い方に執着していた時とは全く違う乗り方をすると思うんです。どう変わるかは分かりませんが。
__ 
全く別のやり方になると。
高杉 
とっかかりとしてはそういうところですね。どのような結果が出るのか、自分でも楽しみです。

タグ: 今後の攻め方