農夫

__ 
前回、アトリエ劇研で上演された「農夫」。非常に楽しく拝見致しました。
田辺 
ありがとうございます。子供からお年寄りまでという間口の広さは無いので、つまりお客さんに選ばれて見られるような芝居だったと思います。ですので、そう言って貰えると素直に嬉しいです。
__ 
そうですね、どちらかと言うとお客さんを選ぶ作品でしたでしょうか。
田辺 
こちらがお客さんを選ぶというか、選んで見に来て頂きたいですね。昔、「農夫」よりももっと抽象性の度合いが高いお芝居をやっていた時に、出演者が友達をいっぱい呼んでくれたのは嬉しいんですけど、何て言ったらいいんでしょう、アメ村的オシャレな金髪の方に来て頂いて、心の中で物凄く謝ったことがありました(ちょっと笑う)。僕が選ぶというのはおこがましいと思うんですけど・・・。
__ 
でも、重要なところですよね。
田辺 
それこそ、子供からお年寄りまで見て頂くのに越したことはないんですけど、かと言ってお客さんに合わせて書く程には器用でもなく。せめて、チラシをデザインしたり広報をする時に、どういった作品なのかが伝わるようにしています。最近ではあらすじを載せたりしていますね。
__ 
確かに、今回あらすじが載っていましたね。さて、作品の上演が終わって数週間経ちましたが、ご自身の手ごたえはいかがでしたか?
田辺 
韓国での研修から帰ってきて最初の新作だったんですね。今終わってみて、すこし肩の力が入りすぎていたように思います。あれもやろう、これもやらなきゃ、と気負った部分があって、実際ご覧になったお客さんから見たら感じなかったかもしれませんが、反省はあります。でも、もちろんやりたいと思ったことは出来たんですね。二歩進んで一歩下がるという所です。
アトリエ劇研
京都・下鴨にある客席数80程度の小劇場。1984年に設立し96年に「アトリエ劇研」に改称、2003年11月にはその運営主体がNPO法人となった。(公式サイトより)

タグ: 反省Lv.2


言葉

__ 
なるほど。これは是非伺いたかったことなんですが、「農夫」のラストシーンが、村に迷い込んだ革命者の姉が、布に文字をいつまでも書いているというものだったんですけれども、非常に印象の強いラストでした。言葉を永遠に書き続けているという。
田辺 
あの布というのは象徴的に使っているんですね。元々僕は大学で哲学をやっていて。人間の言葉にまつわる勉強をやっていたんですね。人間を考える時に、どうしても言葉を考える事になるんです。「農夫」では、村にやってきた革命家達の語る固い言葉、ちょっと頭の悪い文盲の弟、そのお兄さんは芝居の後半で商売に目覚めて市場経済の話を持ってくるわけですが、舞台上でいろんな言葉が行きかうんです。これは実際、僕らの身の回りでもそうですよね。例えば、喫茶店で隣に物理学者が二人座っていて、専門的な話題を始めたとします。僕らには同じ日本語としても分からないですけどそんな言葉もいきかっている。
__ 
専門用語だらけでしょうね。
田辺 
政治の言葉、生活の言葉、経済の言葉、といろんな種類の言葉があふれているわけです。氾濫しているともいえる。それらが交錯する模様を描こうと思いました。
__ 
言葉の氾濫ですか。
田辺 
そうしたなかに「芸術の言葉」もあって、僕は「詩」を考えることが多いんですけど、詩の存在感って日常生活のなかではすごく薄いなって思うんです。そこで詩の特殊な存在感を、姉に布の上に書かせる事で、再度問いたいと思ったんですね。あの詩の言葉というのは劇中、「なにこれ」って言われて誰にも通用しなかったじゃないですか。でも、ああいった言葉の価値が見失なわれたら、それはとても貧しい世の中になるんじゃないかなと思います。
__ 
わかりました。ところで、あの巨大な面積の布の前面に文字が連なっていく様は何か、とても壮大なイメージでした。人の脳の暗喩というか。そこから文盲だった農夫の弟が少しずつ言葉を学んでいくというのが非常に印象的な演出でしたね。
田辺 
あの布は舞台美術の川上明子さんによるものなんですよ。穴から引っ張り出して舞台に登場するんですが、裏側を引き剥がしてきたというイメージもあります。我々の立っている地面の裏には、言葉がびっしりと埋まっている、という。わたしたちの生が先人たちの語った言葉や記された言葉のうえで成り立っているというか、支えられてるというか、裏打ちされているというような。そうしたことを再発見するというのも、作品に盛り込んだイメージなんですね。
__ 
へえー。
田辺 
モノだけでなく言葉もどんどん消費されていく世の中じゃないですか。新しい価値を発見することはとても楽しいし、刺激はあるんですが、今までにあったものを再発見することの大切さっていうのがあるんじゃないかって。新発見と再発見のバランスが取れればもっと豊かになるんじゃないか。と思います。

タグ: 自分は何で演劇を


範囲

__ 
私実はですね。結構昔に田辺さんの作品を拝見した事がありまして。t3heaterだったと思うんですけど、登場人物の男の方が、死んでいるか生きているか不明の女に向かって「難しいな、難しいよ」と言って終わるものでした。
田辺 
おお! それは「うみのうた」ですね。リアリズムだった時の。
__ 
あ、やはり田辺さんの作品だったんですね。それと、最近の2作を拝見している訳ですが、いわゆる静かな演劇ですよね。そこでひとつ伺いたいのですが、下鴨車窓では、俳優に演技を付ける時にどのような点に留意しますか?
田辺 
とりあえず、役作り禁止ですね。どんなに僕らに身近な風景の作品でもそうだと思うんですけど、舞台俳優の「この役の事はすべて分かっている」という態度に違和感を感じるんですよ。分からんでしょうそんなこと、って。例えば、自分の親とか生まれてからずっと付き合っていてもいまだに知らないこといっぱいあるし。でも演劇となるとたかだか台本を読んだくらいで分かりました、といえることの傲慢さってなんだろうと思うんです。
__ 
なるほど。
田辺 
だから、役作りは禁止です。もちろん、何もナシで演技が出来る訳ではないので、最低限これは言えるね、ということを積み上げていってもらいます。例えば、このセリフを言うのでも、これ以上いっちゃうとセリフとして言えない、逆にそれ以下だとシーンが成立しない、という演技の可能性の範囲を探し当てる作業をするんですね。
__ 
演技をポイントで決めるのではなく、演技が作品として成立する範囲を探っていくという事でしょうか。
田辺 
そうですね。実はこれは本番でも決定しないんですね。その都度、揺らぎがあるようにしたいと思っています。そういうやり方を俳優の方でも受け容れてくれたら嬉しいですね。
__ 
作り方についてもう少し伺いたいのですが、役作り禁止で、かつ演技を範囲で考えていくという事は、作品を作る上で舞台上の人物の感情については管理しないという事ですか?
田辺 
段取りはあるんですよ。セリフの言い方を指定することもあります。でも、けして感情とリンクさせないようにしますね。怒りを込めてとか、悲しみを堪えて、みたいな指定はしません。確かに、台本を沢山読み込んで、役の内面を追って「ここはこの人は怒っているからこういう言い方をするよね」ということを話し合いはします。でも、具体的に感情を付ける演出はしないんです。問題は、それをやってみせるかどうか。それは僕らの中にちゃんとあるけれど、出しはしない。役の解釈と役の表現とを分けて考えて、結論めいたものを舞台上で出さないようにすることが重要なんですよ。

タグ: 静かな演劇と「出会う」


寓話

__ 
今後、田辺さんは演出として、どんな感じで攻めて行かれますか?
田辺 
中々、天邪鬼な所があって、演劇そのものを素直に信じられていないんですよ。演劇を疑いながら「演劇にできること」を探っていきたいと思います。劇作家・演出家としての今後は、これまでの作品は京都から出すまいとして。
__ 
そういえば、京都での上演が多いですね。
田辺 
大阪・東京など別の土地で上演するという機会はあまり無かったんですよ。でも、これからはもっと別の地域の人達に見てもらいたいと思います。それで、秋の新作は年明けに東京・名古屋で上演する事が決まっていたり、来年2月は広島に演出として呼んでいただいたり。今後も、そうやって発表の場が外に広がっていけばいいなと思います。
__ 
作品をお書きになるうえで、目指したい世界みたいなものはありますか?
田辺 
「旅行者」「農夫」を発表した時に頂いた評価と、それから自分でも分かっていたことなんですけど、僕の作品は寓話的と言われるんですね。
__ 
寓話性とは、一体どのような事を指すのでしょう。
田辺 
例えば神聖な物事を視覚的に表現しようとした場合、白色を持ってくる事がありますね。そういう時の白というのは、神聖なもののアレゴリー(寓意)と言うんですね。イソップ寓話の教訓話でも、キツネというのはずるがしこいものの寓意です。ただ教訓を書き連ねるだけでは読者に受け入れられない。が、キツネのような寓意性を背負った役を配した物語を通すと理解しやすくなる。それが寓話です。そういう、何かの置換を、寓意を使って物語を紡いでいくということですね。
__ 
分かりました。ありがとうございます。
「旅行者」
公演時期:2008/3/20~23。会場:精華小劇場。

犬の写真集

tanabe_present
__ 
今日はですね、田辺さんにお話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
田辺 
あ、例の。
__ 
どうぞ。
田辺 
重いじゃないですか。あ、開けてもいいですか?
__ 
ええ。
田辺 
(開ける)あ、写真集ですか。へー。犬の写真ですか。どうして僕が。何かイメージが。
__ 
というのもありますが、写真集であるという事が重要だったんですね。


豆企画「消失」

__ 
今日は、宜しくお願い致します。
延命 
お願いします。
__ 
最近、いかがですか。
延命 
芝居の予定で一番近いのは、9月頭の芝居の演出ですね。
__ 
ああ、「豆企画」ですね。
延命 
はい、「消失」という作品です。
__ 
ケラリーノ・サンドロヴィッチさん作の。
__ 
俳優の他に演出もされる延命さんですが、延命演出ならではの特徴というのはどのような点にありますか。何かを大事にしているですとか。
延命 
普通やと思いますね。
__ 
普通と仰いましたが、例えば役者に演技を付ける時の大きな方針ですとか。
延命 
相手のセリフを聞かないように、という演出は他の人より多いと思いますが。
__ 
はい。んん? 相手のセリフを聞かない?
延命 
セリフを受けて喋る、会話を行う人が二人いる状態よりも、喋っているのに伝わらないであるとか、聞くつもりはあるのに上手く受け取れないであるとか、そういう空気が好きなんですね。
__ 
ああ、何となく分かる気はします。コミュニケーションが出来ていそうで出来ていないという状態ですよね。
延命 
何か、内容を受けて発言するというよりも、相手が何か言うから言葉を重ねるであるとか。以前演出した時に、片方は一生懸命喋っているし,もう片方は一生懸命喋っている側の言う事を聞こうとしているのに、全く伝わっていないという。そういうのが凄く好きなんですよ。普通だと、相手のセリフを聞いて咀嚼して返す、というのをやってくれるんですが、「あ、そうじゃなくていいよ」と言います。
__ 
なるほど。出来ていない会話のとぼけた感じというのでしょうか。
延命 
会話は成立してないけど、話を聞いていない人の中ではとても筋が通っているという。キャッチボールをしたいのに、出来ていないという。次の「消失」もそういう感じになると思います。
少・F・年
松本健吾(少年A)と延命聡子(少・F・年)を中心とした演劇サークル。(公式サイトより)
豆企画「消失」
公演時期:2008/9/5~7。会場:西部講堂。

タグ: 会話のキャッチボール


同じにやっても意味がない

__ 
その上で9月の「消失」の見所を教えて頂きたいんですが。
延命 
見所、という訳じゃないんですが・・・。ケラさんの会話は凄く好きなんですが、人間を上から目線で見ているのが苦手で。そこは払拭したいと。
__ 
上から目線というのは、ぱっと思いつくのは、人間の愚かな部分がぶつかり合う様みたいな?
延命 
そうですね。同じにやっても意味がないので、自分好みにしていこうと。作品の最後、築いてきたように見えてた人間関係がバラバラになってしまうんですけど、それでも人間がコミュニケーションをとろうとすることに希望はあるんだ、という終わり方になればなと。あと、劇場のサイズ的に、大劇場での作品を西部講堂でやったらどうなるか、というのもありますね。もっと面白くさえなれるのではないかと。頑張ります。
__ 
頑張って下さい。

気持ち

__ 
俳優として、延命さんは以前と比べて変わった事とかってありますか?
延命 
気持ちって大事なんだな、という事が最近ようやく分かった、というか体に落ちてきたというか。割と最近まで、段取りだけでいけるもんだと思っていて。
__ 
気持ちって言うと、観客は舞台上で演技をしている俳優の体から役の気持ちを感じ取る事が出来る訳ですけれども、その気持ちを舞台で展開させる事が重要だ、という事ですね?
延命 
そうです。俳優は気持ちを持つ必要はないだろうと思っていたんですけれど。
__ 
何故必要かというと?
延命 
お客さんとして、それが見たいなと思うようになってきたんです。それから、面白いなと思っている演出家さんのワークショップに行ったりすると、例えばいわゆるエンタメ系の演出家さんでも、古典系の演出家さんでも、最終的に見せたいのはいわゆる感情なんだなと。地点の「三人姉妹」を見て、三浦さんは絶対そうじゃないだろうと思っていたんですけど、言うたら機械的な演技をしている人から、人間的なものを見たい、というような印象を受けました。
__ 
今後は、そういった、気持ちを表現出来るようになりたい?
延命 
そうですね。なりきる事とはまた違って、毎回ある状態に自分を持っていく事が演技なんだなと。俳優として、何か獲得したり考えたりするという勉強はその為に必要なんだなと思いました。

段取りじゃなく

__ 
これまで俳優をやっていて、それまでのご自分を大きく変えた作品などはありますか?
延命 
何だろう、THE RABBIT GANG TROUPのphantom pain,phantom gainという作品でした。あれが唯一、段取りじゃなく出来た芝居だったんです。
__ 
多分拝見していないですね。感情で動いたお芝居だったと。
延命 
いえ、感情というのじゃなくて、生理とかテンションとかいうほうが近い気がするんですけど。私のシーンは実質二人芝居で、共演の方が感情で演技する事や、相手役から感情を引き出す事を大事にされていたんですね。ただ言われた事に反応すればそれで成立する、という感じだったんです。段取りとか決まっているけど、頭でそれを追わなくても毎回同じ状態になれる、芝居は段取りじゃないんだ、という事に気付いたんですね。それまでは、例えばセリフを被せるタイミングというか、国語をやっていたんですね。
__ 
それ以降、自分の演技とか稽古に反映されたと。
延命 
いや、これをやればいいというのは分かったけど、どうすればできるのかは分からなくなったんですね。むしろ、細かく考えるのをやめちゃって、雑になりましたね。
__ 
マジですか。
THE RABBIT GANG TROUP
京都を拠点に活動している劇団。

ヨーロッパ仁鶴

__ 
さて、「ヨーロッパ仁鶴」ですけども。
延命 
(笑う)
__ 
ヨーロッパ企画メンバーからは色々な感情を持たれているであろう「仁鶴」ですけれど。
延命 
謝っておいてください・・・。単純な思いつきでやったら、初演の時に「バカにしている」と受け止められたんですね、お客さんに。
__ 
怒られましたか。
延命 
喜ばれました。でもバカにしてやってる訳じゃないんですよ。ヨーロッパ企画さんの成立させている会話の形式って、凄く新しい表現だと思うんですよ。平田オリザさんが始めた静かな演劇と同じくらいの。静かな演劇だって、同じ事を始めた劇団が沢山出てきたから一つのジャンルとして確立したんですね。誰もやらなかったら、平田さん独自のものに過ぎなかったと。ヨーロッパ企画のお芝居も、静かな演劇と同様にフォロアー劇団が増えたら、一つのジャンルになるんじゃないかなと。
__ 
ええ。
延命 
ヨーロッパ企画独自のやり方を、汎用性をもった方法として広めていければと。
__ 
あ、ヨロパを広めようとしている?
延命 
(笑う)というよりは、ヨーロッパ企画のやり方ですね。あれは本当に、静かな演劇の次の世代の現代口語演劇だと思うんです。
__ 
確かに、ヨーロッパのお芝居というのは新しいだけでなく、かつ難しい方法を用いている訳ではない。説明は難しいんですけど、新しい発見である事は間違いないですね。何だろう。で、フォロアーという立場の「仁鶴」ですが、今年はどうなんでしょうか。
延命 
人が集まれば・・・。いつもタイトルだけ思いついて台本を書くんですけど、もう思いついていて、「あんなに優しかった○ー○○ー」。
__ 
(笑う)めちゃ面白そうですね。

パティスリー「ghost」のキャラメリゼナッツ

ennmei2_present

__ 
今日は延命さんにお話を伺えたお礼に、プレゼントがあります。どうぞ。
延命 
ありがとうございます。
__ 
袋がボコボコですけど。
延命 
(開ける)
__ 
まあ、お菓子ですね。ヘーゼルナッツなどをカラメルで固めたものらしいです。
延命 
ありがとうございます。


遊劇体「山吹」

__ 
今日は、宜しくお願い致します。
大熊 
宜しくお願い致します。
__ 
最近はいかがですか?
大熊 
公演が終わってほっとした所で。でも、もう夏に関わる企画ものに向けての準備が始まっています。
__ 
直近の公演は、遊劇体の「山吹」ですね。非常に面白く拝見させて頂きました。
大熊 
ありがとうございます。
__ 
出演されて、いかがでしたか?
大熊 
今までと全く違う作り方で、動かずにセリフのみに徹する、義太夫の太夫さんみたいな、そういう立ち位置を見つけるのに結構苦労はありましたね。でも、こういうアプローチの仕方もあるんやなあと。
__ 
特定の役という訳ではなく、言ってみれば語り手でしたね。コロスというのとはまたちょっと違うのかもしれませんが。
大熊 
そうですね。登場人物の女自身であるべきなのか、語り手というスタンスを崩さないでいるべきなのかを最後まで悩んでいましたが。私なりにやったらこうなりました! みたいな(笑う)。
遊劇体
1983年12月、京都大学演劇部を母体として団体結成。1984年7月キタモトマサヤの作・演出で野外劇を上演、旗揚げ。1990年までは京大西部講堂でのみ公演活動。91年より現主宰キタモトマサヤが実質上の主宰となり、野外劇場での公演のほか小劇場にも進出し公演活動を行う。(公式サイトより)
遊劇体♯46 泉鏡花「山吹」
公演時期:2008/6/26~30。会場:精華小劇場。

ずっと

__ 
大熊さんって、いつ頃からお芝居を始められたんですか?
大熊 
小劇場を始めたのは、丁度10年前からですね。それまで、中学・高校と演劇部だったんですけれど、だんだん部活動では済まなくなってきて。親に「京都のとある劇団が大好きだから、そこを輩出した大学に行く」と言って、なんとかその大学に無事入れたんですね。で、その学生劇団に入ろうとしたんですけど、機会を失ってしまったんですね。お芝居がしたいのにどこに入ったらいいんだろうとさまよっていた時に火曜講座のチラシを見かけて、そこにキタモトの講座があったんです。それが遊劇体との出会いのキッカケになりました。
__ 
部活動では済まなくなってきて、という仰りようが熱いですね。
大熊 
元々お芝居は好きだったんです。宝塚とか、ミュージカルをよく見ていました。中学でも、気がついたら演劇部に入部届けを出していて。一緒にバスケ部に入る約束をしていた友達に「ごめん、私何か知らないけど演劇部に出してしもうた」と(笑う)。春休みや夏休みを潰して稽古に通い続けても、全く嫌気がささなかったんですね。
__ 
それは素晴らしい。
大熊 
むしろ、こんな楽しい事がずっと続けられるものならと。
__ 
なるほど。では、遊劇体に入られたキッカケは。
大熊 
さっきお話しした、キタモトの火曜講座で配られた出演者募集のチラシを見て参加したのが、市役所前の広場で一日限りの野外劇をするというもので。市役所前でずっと稽古していたんですね。とにかく走ったりとか、ただ走るだけじゃなくて全身を使って色んな走り方をして、みたいな。そんな事を延々と続けている内に、ランナーズハイじゃないですけど「あ、楽しい」と。言葉だけじゃなくて、体を使って表現する事にやりがいを見つけたんです。それが決め手だったと思います。
__ 
分かりました。ところで、私が初めて遊劇体を拝見したのは、去年の天守物語だったんです。落ち着いた表現でありながら、俳優の体から迫力が伝わってきたのは、そういった全身で表現するというベースがあったからなんでしょうね。
大熊 
最近の公演は室内で公演する事が多くなったので、よりムダな動きを省いて作るのが基本にはなりましたね。でも、「体から作っていく」「体を頼りに考えていく」という傾向はあまり変わらずに残っています。
火曜講座
当時、京都で活躍する演出家のワークショップを青少年活動センターで行う催しがあった。

タグ: ミュージカルの話題 自分は何で演劇を


「闇光る」

__ 
今まで、大熊さんが参加されたお芝居で、大きな転機となった公演はありますか?
大熊 
大きなものから小さなものまでありますが・・・。一番大きなものは、一昨年再演した「闇光る」というオリジナル作品がありまして。
__ 
どんな作品だったのでしょうか。
大熊 
舞台は1970年代の大阪府南部の山間の町でした。離婚して何年ぶりかに帰ってきた女が、過去の思い出の名残が残る洞窟の中で、昔好きだった男や自分に片思いをしていた男などと再会するんですね。一幕ものの会話劇で、隠された過去などが見え隠れするという芝居でした。
__ 
ありがとうございます。大熊さんは、どのような役柄だったのでしょうか。
大熊 
私は、24歳バツイチ子持ちで地元に帰ってきた女の役でした。離婚した女に対する理解が浅いというか、今ほど女の地位が高くなくて、離婚なんかして帰ってきて恥ずかしい、みたいな村意識がある時代で。
__ 
なるほど。では、大熊さんにとって、その作品はどんな転機だったのでしょうか。
大熊 
まず、それまでのスタイルとは全く違うお芝居の作り方だったんです。小空間の中で、登場人物4人のリアルな感情で紡いでいくという。緊迫感の中で、お互いの吐息やニュアンスが芝居の流れにそのまま直結する作品だったんですね。
__ 
細かい芝居だったんですね。
大熊 
そういう演技に初めて挑戦したんですね。自分には物凄くハードルが高くって思い悩みました。そういう意味で転機になりましたね。自分の芝居が、リアルに自分にフィードバックしてくるんです。そういうのを初めて体感したのがこのお芝居でした。のちのち、この戯曲が仙台で賞を頂いたというのもあって、劇団としても新たな始まりになりましたね。

タグ: 俳優のブレイクスルー 恥ずかしいコト フィードバック


本当に心が

__ 
大熊さんが芝居をやっていて、一番手ごたえを感じる時というのはありますか?
大熊 
同じ作品の本番(または稽古)でも、他の回とは違う特別な瞬間が稀にあるんですよ。「こういう出方をされたらこう行ってしまうなあ」って、自分でも思いもしなかった方向に気持ちが動く時があるんです。稽古をずっとやってきて、自分でもある程度感情の流れの地図を作っていくんですけど、その瞬間は今まで無かったような心の揺さぶりがきて、「え、あたし今からどうなるんだろう、これで最後までお芝居が出来るんだろうか」と思うんですね。
__ 
心の揺さぶり。それは凄いですね。
大熊 
その時向かい合っているお芝居と相手役とお客さんとの間で、新しいものが出来るんですね。それが凄く衝撃的で楽しいです。
__ 
新しいものが見える。
大熊 
私にとって新しい事が見えるという事で、見ている人にとっては微妙な事だと思うんですけど、それで芝居の印象が多少変わったりするのかも知れません。新しい人間関係が構築されるみたいな。
__ 
その一瞬が成立するんですね。
大熊 
その場にしか起こらない瞬間というか。極端に言うと、すごい笑えたり、涙が出てきたり。今までそこで笑いや涙が出てきた事ないのに、何でここで? という。その私を、共演者も含めた周りが受け容れてくれた時に、今まで見えて来なかった芝居の別の側面というか本質にぐっと近づけたと思うんですね。それは芝居をやっている私自身の手ごたえで、お客さんがどう見えているかは分からないんですけど、幸せな瞬間です。予定調和ではないんですね。お芝居だけど、芝居じゃない一瞬というか。本当に心が動いているんですね、その時。
__ 
私個人の想像に過ぎないですが、それは客席からでも分かるのではと思います。もちろん、その揺さぶりを得る為にいつもとはちょっと違う事をしてみる、という事ではないですよね。
大熊 
そういう事ではないですね。稽古の積み重ねも重要で、むしろそれがあるからこそその瞬間にも行けるんだと思います。

メイクと印象

__ 
かなり失礼な話題になるかもしれないのですが、私は大熊さんのメイク技術が本当に凄いなと思っておりまして。
大熊 
(笑う)
__ 
はい。田辺剛さんの下鴨車窓の公演「旅行者」での印象と、遊劇体での印象がまるっきり違っていて、全然別人じゃないかと。毎回驚いております。
大熊 
ありがとうございます(笑う)。そうですね。メイクは大事ですね。時間があったら2時間くらい掛けます。
__ 
あ、そんなに。
大熊 
不安なんですよね、ちょっといじり始めてしまうと、本番直前までやってしまうんですよ。周りにもうやめてと止められるくらい。
__ 
なるほど。
大熊 
だから最近は、なるべく早めにメイクを始めないようにしています。
__ 
そうですか。コンパクトに済ませると。

タグ: 必殺メイク術


逃げたくない

__ 
この間のユニット美人は、いかがでしたか。
大熊 
何か、久々に新鮮な空気を吸ったような気がして。伸び伸びとやらせていただきました。
__ 
そこで伺いたいのですが、大熊さんは沢山の客演経験をお持ちですが、今後どんなお芝居をやっていきたいとか、そういうものはありますか?
大熊 
うーん。人の気持ちとか、体とか。その営みを通して見えてくるものからは離れたくないなと思っています。
__ 
はい。
大熊 
コミュニケーションそのものから逃げたくないんですね。自分と自分との、または他人を介してのコミュニケーションで、素直な心と体の流れであるとか、そこに自分と相手が立っている事をちゃんと考えたいっていうか。あー、漠然としている。
__ 
いえ、結構明確だと思います。
大熊 
本当に? 何か、そこからは離れたくないなあと。
__ 
考える姿勢を持ち続ける、という事でしょうか。
大熊 
そうですね・・・。きっと、一生離れられないと思うんですね、人と接っするという事とは。その自分自身の経験を、表現として舞台に持っていけたらなと思います。良い部分も、嫌な部分も、きっちり考える事から逃げたくない。自分も受け止められるし、表現も出来るようになりたいなと思います。辛い事に直面しても、それが表現に繋がったりすると、前向きになれますね。
__ 
わかりました。それでは今後、どんな感じで攻めていかれますか。
大熊 
まあ、地道に、切実に、鍛錬を怠らず、真摯にがんばります。
__ 
割と地道系ですね。
大熊 
もう地道しかないので(笑う)。精進します。
__ 
頑張って下さい。
大熊 
ありがとうございます。
ユニット美人
劇団衛星所属俳優の黒木陽子と紙本明子で2003年11月に結成。あまりに人気がない自分達が嫌になり「絶対モテモテになってやる!」とやけくそになって制作に福原加奈氏を迎え正式に結成。「女性が考える女性の強さ・美しさ・笑い」をテーマに日々精進中。(公式サイトより)

タグ: 伸び伸びと演技 感性ではなく考えて表現出来る人 今後の攻め方


ムゴナの朝摘みばら水

ookuma_present

__ 
今日は、お話を伺えたお礼に、プレゼントがございます。
大熊 
ありがとうございます。
__ 
どうぞ。
大熊 
(開ける)これは・・・?
__ 
それはですね、バラの化粧水ですね。60本分のエキスが入っているそうです。
大熊 
へえ~。60本も。これで、メイクを頑張ります(笑う)。


象、鯨。

__ 
今日は、宜しくお願いします。
西山 
宜しくお願いします。
__ 
さっそく、お話を伺って行きたいのですが。
西山 
何もお話出来る言葉を持ってないんですが、大丈夫でしょうか。
__ 
まあ、ゆっくりゆっくりで良いかと思います。大丈夫ですよ。まず、西山さんは学生劇団から始められたのでしょうか?
西山 
いえ、入ってないです。
__ 
あ、そうなんですか。どういったキッカケがあったんでしょうか。
西山 
前に来て頂いたユニット公演の・・・・。
__ 
象、鯨。」ですね。
西山 
あれを大学生の頃に立ち上げて。いま演劇を続けているのは、あれがあったからなんですね。一番最初に舞台に立ったのは保育園のお遊戯の時で、何となく。
__ 
面白いなと思われた訳ですね。
象、鯨。
主に京都で活動する劇団。2008年現在、活動休止中(公式サイトより)

タグ: お遊戯会 自分は何で演劇を


vol.89 西山 真来

フリー・その他。

2006年以前
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西山

雑音

__ 
その「象、鯨。」。とても面白かったです。
西山 
あ、ありがとうございます。
__ 
あれは、ドラゴンアッシュの曲を使われていましたね。偶然、聞いていたら同じ曲だと分かって。
西山 
ドラゴンアッシュって、流行っているのにアイドル的な感じではなくて、ある時代の雑音を集めたらああいう感じになるだろうと思って使ったんですよ。雑音って、いい意味でね。
__ 
雑音ていうのは、聞き手が主体的に関わっていない音の事だと思うんですが。
西山 
そうですね。街の音みたいな。
__ 
あの曲に合わせてひょこひょこ踊るダンスはとても良かったです。
西山 
よく覚えてはりますね。あのユニットは、学生劇団をやっていなかった事もあって、お客さんが少なくて少なくて少なくて。あの時は10人強はいてはったと思うんですが。そこで、全然知らない人が来て頂いているというのでびっくりしました。
__ 
あの公演に観に行った大きな理由としては、チラシが大きかったんですね。チラシのチープ感というか、謎めいた感覚というか。あとは、ギャラリーでの公演というのが興味がありました。公演場所の使い方としては、鴨川通り沿いの半地下のギャラリーで、通りに向かって開けられた入り口が舞台でしたが、非常に効果がありました。あのシチュエーションはどのような演出効果を狙ったのでしょうか。
西山 
あの場所に出会って、ここやったらこういう風にするだろうと順々に考えていったというのがあるんですね。もしかしたら後でこじつけたのかもしれないですけど、ノイズとか、2億年の時間を行き来したりの時間軸とか、そんなにちゃんと構成したものじゃないんですね。シャッターも、開けたかったから開けたという。

vol.89 西山 真来

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