キャスティング

__
役の内面と俳優の内面。重要ですよね。
大木
そうですね。
__
最近よく考えている事があるんですけど、人間って何タイプかに分けられてしまうじゃないですか。何故かは置いておくとして。まあ、配役の問題なんですけどね。劇団に俳優が集まって、演出家がそれぞれに適当に役を振っていくわけですけれども、いい芝居の条件っていうのはこの段階でかなり決まってしまうと思っていまして。
大木
はい。
__
劇場という社会はある面では人間性対人間性の場所だと思うんですが、配役がここを決める段階だと思うんですね。
大木
そうですね。キャスティングというのは非常に重要だと思っていて。それでお芝居がかなり左右されるというのは間違いないと思うんですけど。
__
上手い人もいれば、役にはまる人もいるし、上手くないけれども熱い人もいますし。上手くもないし、熱くもないのに、何だか凄く、見ていて怖くなるような役者もいますね。
大木
小劇場っていう所の俳優ってのは、言うたら未熟だと思うんですよ。正直な話。得意なものは得意だけど不得意なものは不得意であったり。全体的にレベルが低かったりするんで。まえは乱暴者の役だったけれども、今度は臆病者の役だったりするとうまく対応出来なかったりするんですね。前の時はとても上手く出来たのに。見た目というのもあるんだと思うんだけど。
__
圧倒的な、人間のタイプもありますからね。
大木
うん。そうだけど、俳優なんだから、どっちをやるにしても魅力的にやらなくちゃならないと思いますね。「俺は乱暴者タイプなんだ」と安易に決め付けてしまう甘えがあるんじゃないかと、思いますね。そういう事から、キャスティングのミスが出てきてしまうんだと思います。
__
ニットはいかがですか。個性的な方が沢山いらっしゃいますが。
大木
ニットはね。結構、決まった感じの個性があるので、それに合わせて脚本から合わせていってるという所がありますね。正直。
__
ああ。
大木
逆に言うと、小劇場のいい所は、俳優の方で自分を変える、という事は出来ないけれども、脚本の方であてがえてくれる、というのがありますから。
__
大きなところですね。
大木
新劇だと、自分の性格とは関係の無いところで台本があって、それに向かってやっていくんですけど。小劇場というのは自分のいい所を出す事が出来て、それが良ければ、結果的に成功する、という。
__
そうですね。そういう、ジャンルの違いがあるというのは面白い所ですね。

タグ: キャスティングについて


ザ・ありがとう

__
企画モノはいかがですか。「ザ・ありがとう」ですとか。
大木
そうですね、ファックさんとそういう話になってないので、次がいつになるのか決まってないんですけれども。やっぱり、俳優としてのスキルを上げていきたいと思いますね。多くの人が小劇場に求めているのは笑いだと思います。ぶっちゃけた話。
__
そうですね。
大木
あんまり得意だと思っていないんですね。でも、そういうのを鍛えるのは、そういう公演に多く出るしかないのかなと。ある種の度胸とか、ネタを作る時のコツを掴んだりとか。そう考えていた時に、ファックさんが「是非一緒にやりましょう」って連絡をくれたので。すぐに。
__
ファックさんから伺ったんですが、稽古期間中、最初は仲の悪い設定にした所、実際に稽古場の空気が悪くなったと、で、仲の良い設定にしたら稽古が上手くいったとか。
大木
ええ、最初は僕とファックさんのスケジュールが上手く合わなかったので、かなりタイトな時間で作りましたね。それは最後の練習日の出来事で、駄目出しの仕合になりかけて、仲良く褒めあおうとしたら、それで。
__
ああ。
大木
不思議ですね。
__
カフェのアルバイトという設定だったとか。
大木
公演の間にバイトして、という感じでしたね。
__
本番はいかがでしたか。
大木
ファックさんが(笑う)、水差しをぶちまけてしまいまして。一旦芝居が中断してしまったんですけど、あたふたしてしまいまして。続けようと思ったんですが、やっぱり拭こうと。中断したんですが、その間に休憩としてトイレに行けた人もいたみたいで。後々、身内の人に「あれはトイレ行けたから中断してよかったよ」といわれて。
__
芝居的には。
大木
あれは、まあたわいもないと言えばたわいもなかったんですけど。僕ら二人が楽しめてやれたので。それが、上手く伝わったかな、と思いますね。
__
なるほど。
大木
そういうのがやっぱり重要なんじゃないかな、と思いますね。食べ物を目の前にしてやる事ですからね。
__
そうですね。
大木
ファックさんとは本当に、長くやりたいですね。ファックさんという俳優をかなり好きなんだと思いますね。
__
FJも、大木さんを俳優としてすげえ好きだと言ってましたね。
大木
そうですか、それは嬉しいですね(笑う)。
__
ええ・・・。
大木
ニットキャップに出て欲しいんですけどね、中々・・・。ファックさん忙しいですからね。
「ザ・ありがとう」
大木氏と劇団衛星の俳優・ファックジャパンのユニット。公演時期:2006年5月15日。会場:cafe weekenders。
ファックジャパン
劇団衛星所属。俳優。第11回関西現代演劇俳優賞受賞。

キーホルダー

__
今日はですね、お話のお礼にプレゼントがあります。
大木
あ、ありがとうございます。
__
(渡す)どうぞ。
大木
ありがとうございます。開けてもいいですか。
__
どうぞ。
大木
あ、Shin-biって書いてある。
__
cocon烏丸の。
大木
ああ、はい。僕らここで芝居してますね。
__
あの時は、飼い犬キャロルでしたっけ。
大木
いや、それ以前に、何回か。(開ける)あ、可愛い。
__
キーホルダーですね。
大木
いいなあ。こう、腰に付けたら。ありがとうございます。
__
どうぞ、普段使いにして頂ければ。・・・今日は色々なお話をありがとうございました。
大木
こちらこそ。
飼い犬キャロル
前出「お彼岸の魚」の仮題の一つ。他に複数の候補があった。


スタッフワーク

__
最近どうですか。
小島
今週・先週は忙しさのピークでしたね。
__
多忙ですね。
小島
ようやく仕事が来るようになったので。月3本ペースで。
__
舞台監督の仕事っていうのは、まあ例えば先を読んで仕事するみたいな事だと思うんですが、スタッフワークについて、何かお考えになっている事はありますか。
小島
そうですね。去年とかは、主に他の現場で学んだ事を自分の現場で真似というか生かして仕事していたんですが、ここ最近は、自分の中でそれらを順序立てて整理して作業出来るようになってきましたね。こういう話が来たら、こういうリアクションをする、みたいな態勢がちょっとづつ整ってきました。まだまだですけど、仕事に出来てきているというのがありますね。
__
現場を回せるっていうのが当たり前になってきたと。
小島
そうですね、昔は要望を言われて初めて「あ、じゃあやろっか」となっていたんですが、最近はもう、こういう事したいんじゃないかなという読みが出来るようになってきたと思います。
__
はい。
小島
ですが、まだ作品を見れるようにはなっていないので。現場で作る作品に対する自分なりの解釈を持つ、それが出来る状態になっていければと。もちろん、そうなっても口出しするわけじゃないですけどね。舞台監督の仕事ではないので。
__
色んな、現場を渡り歩いていると思うのですが、これはという自分なりの特色などは。
小島
そうですね、今、それを探してる所なんですが。依頼を下さっている方が僕のどういう辺りを買ってくださっているのが考えますね。期待されている分、ちゃんと出来るようになりたいですね。
__
はい。
小島
逆に、僕が舞台監督を受けた時には、これはちゃんとしてくれるなあ、という特色を持ちたいなあと考えています。・・・どういう方向ですかね(笑う)?
__
(笑う)。
小島
模索しているというか。色んな舞台監督さんを見て、色々考えるんですよ。この人はこの部分が強いとか。言い方おかしいですけど、この人に頼んだらこれは絶対大丈夫だ、とか。まだ、自分のこれが売りです、というのがないので。まあ、そういう所を作るのが今後の目標ですね。
__
なるほど。
小島
逆に、最近だんだん、単発で受けて、それ以降の次回公演とかもお願いされる事も増えてきているので。一度受けた劇団さんのやり方はお互いに覚えていますので、やり易いですね。
__
ええ。
小島
その上で、公演をさらに良いものにするための何かを提供出来ないかと考えますし。そうなれば、劇団の演出さんと僕とで、互いに良い物を持ち合う、という形になりますね。
劇団衛星
京都の劇団。代表・演出は蓮行氏。既存のホールのみならず、寺社仏閣・教会・廃工場等「劇場ではない場所」で公演を数多く実施している。
京都大学西部講堂
京都市左京区。京都大学の施設でありながら、演劇・ライブなど様々なイベントが開催される。

汲み取る力

__
最近何か、印象に残った現場ですとか、そういうのを伺っていきたいんですが。
小島
この頃は大阪の現場が増えてきたんですね。元々は京都の学生劇団さんからの依頼が多かったんですが、大阪の劇団さんが呼ばれる事も多くなりました。
__
はい。
小島
で、ちょっと独特な事をされる劇団さんに依頼を受けまして。まあ、凄く過激なんですよ。開演して明転したら全裸の男がいたりとか。それで客席に飛び込んだり。
__
過激ですね。
小島
劇場からストップが掛かるんじゃないかとか、そういう恐れもあったり。ですが演出家さんはそれを凄くやりたいんですよ。自分が訴えたい事をお客さんに提供するためには、こういう演出手法を取らなければいけないんだ、という主張を持った方だったので。それを踏まえて。もちろん、それが嫌だというお客さんもいるので。途中で帰ったり。
__
なるほど。
小島
または、ホールさんからちょっとこれは、と言われる場合もあるだろうと。でも演出家さんの意向を形にするのが僕の仕事なので。一旦それを汲み取って、こういう形なら出来ますよ、と提案したり。途中退席されるお客さんの為の退路を作ったりと。色々勉強になりましたね。
__
凄いですね。
小島
まあ、最終的には、そんなに帰られるお客様も出ず。アンケートには色々書かれていたのですが、まあそれは作品面の事ですから・・・。

職業

__
しかし、舞台監督。かなり独特な職業ですよね。
小島
そうですね。
__
やはり、京都だけで営業するには限界があるんでしょうか。大阪からも受注しなくてはならないと。
小島
そうですね。やっぱり、京都だと公演の本数が限られてまして。しかも京都に舞台監督さんはもっといるので、限られた現場をその人数で取り合うという事になりますね。結構、余ってます。そうすると、外部に仕事を求める事になります。大阪でも同様に余ってるのですが。
__
ありがとうございます。所で。私が考えるに、舞台監督って作品自体を作るのではなく、もちろん公演をマネジメントするのでもなく、単純に舞台を製作するという立場にいらっしゃる訳ですけれども。
小島
そうですね、大きく言うと作る側ではないですね。実際に現場を進行させ、上演成立の為のバランスを取っていく立場だと思います。とは言っても劇団さんはそれぞれ、作品の製作過程において舞台監督・演出の比重の偏り方が違うんですね。
__
つまり、演出家さんによっては、作品の演出に非常に重点を置いている人もいれば、その公演の社会的な役割を考えている人もいる。はたまた、スタッフワークを含めた舞台作品としての出来栄えを強く意識する方もいる、という事だと思うんですが。そうした中で、どのような現場がやり易いですか?
小島
まあ、何がやり易いかというと、舞台監督への要望が明確な現場はやり易いです。「ここをこうしたい」、「こうしたいんだけどどうすればいいの」とか。
__
なるほど。
小島
もちろん、そういう現場ばかりではないんですけれども。一番困るのは、それが誰の仕事か明確にならないという現場ですね。混沌としてきて。だれが最終的に責任を持つのか、とか。例えば舞台装置の設置場所を最終的に決めるのは、美術さんなのか演出家さんなのか舞台監督なのか。明確にならないと、非常にやりにくいと。あとは、現場に呼ばれるという立場では作品内容については立ち入れないんですね。意向を尊重する仕事なので。「これをどこに置きましょう」という質問に対して、結局演出家さんに振りなおすしかないという。それに終始してしまう現場だと、大変んだなと。
__
そうですね。
小島
逆に、演出家さんがしっかり意見を持っている現場ですと、その意見は汲み上げやすいですね。僕の役割がしっかり決まっていなくても、例えば美術さんに振る事が出来安かったり。
__
なるほど。
小島
その劇団さんなり演出家さんなりのやりたい事があって作品がある訳ですから。それらが明確に出てくると、非常にお手伝いし易いですね。それを、如何に劇団さんが望む形で具体化して無理なくお客さんに提供するか、というのが、仕事だと思っていますので。

タグ: カオス・混沌


スタンス

__
やっぱりこう、これも先入観だとは思うんですが、演出家をやってみたいと思っている人は潜在的にかなりいると思うんですよ。受信者が手軽に発信者に成り代われる時代ですし。
小島
はい。
__
そういう人の希望というか、それをうまく形にするという役割は、今後どんどん必要とされていくのではないかと思います。プロデューサーなり、舞台監督なり。
小島
それに関してですが。特に、僕より若い方で、舞台監督をお願いされる事がありまして。それは凄くありがたい事で、引き受けるんですが。なんかちょっと、舞監の仕事が凄く大変だとか、何だろう、大事だとか偉いとか、そういう意識が先走りしていて。
__
ええ。
小島
「舞監さんこれどうしよう」とか、「こういう事がやりたいんですけどどうすればいいんですか」というのを振ってくれないんですね。何か違うんですよ。「こういう事したいんですけど、いいんですかね?」というスタンスで。
__
はい。
小島
「こういう事したいんだけどどうすんねん」というスタンスで来て欲しいんですよね。僕としても、関わる作品ですからそこに意見を持つんですよね。演出家からの、そういった相談を受けて色々提案が出来る。そういう環境が出来ればいいなと思ってます。

MOLSKINのカードケース・ブック

__
今日はですね、素敵なお話を伺わせていただけたお礼に、プレゼントがありまして。
小島
うわ。マジすか。ありがとうございます!
__
どうぞ。
小島
人から何かを貰うのは久しぶりです(開ける)。おお。
__
何か、チケットを入れる手帳のようなものみたいです。
小島
ありがとうございます。色々入れます。名刺とかチケットとか。大事に使います。
__
ええ。
小島
わーい。


ベース

__
最近はいかがですか。
肥田
まあ、元気です。
__
次の公演まで、もう一ヶ月ぐらいでしたっけ。
肥田
一ヶ月と一週間くらいかな。台本を今書いていて、もうちょっとなんですけどね。明日休みなんで、一気に書いちゃおうかなと。
__
どんなお話なのか、聞いても構いませんか?
肥田
はい。ええとですね、「どんぶらこ」というタイトルなんですけど。山奥の村がダムに沈んでしまうことになって。でまあ村人が皆出てっちゃうんですけど。そこに魔法使いの女の子が住んでいて。その人はいろいろ、村の平和を守んなくちゃいけないとかで、なかなか出て行けない。で、ずるずると村に居残り続ける魔女と、村から出ていく村人をあつかった話にしようと思っていて。
__
ありがとうございます。
肥田
何か、こないだの『炬燵電車』は抽象的とかよく分からないとか言われまして、なので、もう少し具体的に、分かり易いものにしてみようかと思って。
__
あー。
肥田
『炬燵電車』は、今舞台で演じられている場面が電車の中の場面なのか、家の中の場面なのかがあいまいで、分かりにくい話だったんですけど、『どんぶらこ』は場所を限定して、時間も前にしか進まないようにして。
__
そうでしたか。ありがとうございます。実は、過去の公演でですね。申し上げにくいんですが、私、「炬燵電車」で寝てしまいまして。
肥田
ええ。
__
何か、すごく緩やかですよね。当日、私が疲れていたのもあると思うんですが。
肥田
うん、でも特にあれは皆寝てましたね。
__
ああ・・・。
肥田
ちょっとね、あれは。
__
安心して見れたので、こう、例えば出来がやばかったら逆にハラハラして寝れませんもの。
肥田
ああ・・・それは、ありがとうございます。
__
つまんない芝居は眠れませんよね。
肥田
でも面白い芝居も眠りませんよね。
__
今回も、これまでのベースからそんなに離れたものではないのでしょうか。
肥田
そうですね、割と緩やかな、まったりとした感じかな。でも、作る側としては寝て欲しいと思って作っているわけではないので。見て欲しいですね。そのためには、見やすいように作らなきゃなと。反省して。
劇団hako
2003年度ビギナーズユニットメンバーにて結成。肥田氏による、穏やかな世界観をふわりとした表現で描きだす。
劇団hako第四回公演「どんぶらこ」
公演時期:2007年3月17~18日。会場:人間座。
劇団hako第三回公演「炬燵電車」
公演時期:2006年4月28~30日。会場:京都市東山青少年活動センター創造活動室。

タグ: タイトルの秘密 世界観の作り込み


ようかん

__
私、初めてみたhako公演が「ようかん」だったんですけど。あれが第一回でしたっけ。
肥田
はい。ワークショップ公演の次に、初めて自分達でやった公演ですね。
__
えらく面白かったです。
肥田
寝なかったですか。
__
寝なかったです。
肥田
ありがとうございます(笑う)。
__
癒しという言葉を使うと、何か違うような気がしますが、和みましたね。
肥田
そうですね、和むのが作りたいなと思ってましたね。
__
ああ・・・。
肥田
あんまりドロドロしたのは、僕も観客として見たくないし、作る側としてもやりたくないし。
__
お芝居自体がナチュラルですよね。
肥田
「ようかん」を作った時は、松田正隆さんのちょっと前までの会話劇を真似して作ったんです。
__
それはどういう・・・?
肥田
僕は前、東京に住んでて。そこで松田さんのお芝居を見て。それまでお芝居って走ったり叫んだりするという先入観があったんですが、ちゃぶ台で何か食べたり会話したり、それが凄く面白くて。で、初めてhakoで芝居をしたときに、ああ、あれがやりたいと。
__
ああ・・・。
肥田
そういう、演出にしたんですよ。
__
今は、松田さんは全然変わっちゃったんですけど。
肥田
だから、僕はまだ、昔の松田さんから受けた影響みたいなのから抜けきっていない感じなんですね。
__
なるほど。
劇団hako旗揚げ公演「ようかん」
公演時期:2004年5月。会場:京都市東山青少年活動センター創造活動室。

方法

__
演出の方法として、何か注意されている事はありますか。
肥田
方法・・・。稽古場で僕がしょっちゅう言っているのが、「素敵にならないように」ってことなんですけど。
__
ああ(笑う)。
肥田
ホントは素敵なものを見せたいんですけど。観客の心を動かすような作品をもちろん見せたいんです。が、例えば悲しいシーンで悲しい演技をすると、それが逆にあざとくなっちゃって。
__
はい。
肥田
僕がお客さんに感じ取ってもらいたいものがあっても、それをあざとく表現してしまうと、お客さんは引いてしまって、それが通じなくなってしまうんじゃないかっていうのがあって。
__
はい。
肥田
だから、それを避けるために僕が言うのが。
__
「素敵にならないように」。
肥田
そうです。
__
とてもよく分かります。嫌らしくならないように、という事ですよね。
肥田
例えば、ちょっと良い感じのセリフを言うシーンで、こう、パンツを直しながら言ってみてくださいとか。脇の下掻きながら言って見て下さい、とか。
__
ああ・・・。
肥田
なるべく笑わせて、その中でちょっと、心を動かしたいなと思っていて。誰かが言っていたんですけど、「真理は微笑の中で語られる」っていう言葉があって。
__
はい。
肥田
真面目くさってセリフをしゃべられても、鼻に付くっていう場面があると思っていて。だからなるべく、笑える作品にしたいなと思っていて。でも、笑えるだけの作品でもつまらないなと思っていて。
__
それは、元からある芝居の定型、つまり走ったり叫んだり、ある感情を現すセリフをその感情で読んだりとか、それを崩すのではなくて、元からそれを念頭に置かないように、自然な形でテーマを口にさせるというイメージでしょうか。
肥田
うーん。そうですね。
__
崩すのではなく。
肥田
うん、崩すと言うよりは、別の角度から見せるという感じかな。だから発声練習とかもしないし。
__
それは素晴らしい。そりゃいいですね。
肥田
何か、ルーティンワークみたいな稽古をしちゃうと、どんどん何か、自分で考えないでやってしまうようになるみたいな。
__
台本と他人の演技に依存してしまうと。
肥田
こういう時はこういう風に演技すればいいんだ、みたいな型にあてはめてやられると、つまんないと思うし。
__
それは誤解の無いように言うと、アドリブで演技しろとか、そういう事とは違いますよね。
肥田
あ、それは違いますね。
__
但し、芝居の稽古をするときは毎回違う事をやれと、そういう・・・。
肥田
ああ、毎回違う演技をしてくれると、演出もどんどんアイデアが出てきていいと思うんですけど。そうはなってないですね。今のところ。
__
ああ。
肥田
大体僕が、指示を出して俳優がやってみて、で思いもよらない事をして来てくれるという事は現在はあまりないですね。どうしたらいいのかなと思うんですけど。
__
サッカー選手の持つ、アイデアみたいのがまだ稽古場にはないと。
肥田
そうですね。

タグ: 「異なる角度から」 役者の儀式・ルーティン


ハンカチ

__
今日はありがとうございました。お話を伺わせて頂いたお礼に、プレゼントがあります。
肥田
ああ。
__
(渡す)どうぞ。
肥田
ありがとうございます。BEAMS・・・(開ける)。お、ハンカチですか。
__
ええ。
肥田
へえー。あ、ハンカチは便利ですね。こりゃいいや。
__
はい。オシャレな方だと思っておりましたので。
肥田
ハンカチは持たないんですよ普段は。もう、ジーンズで手を拭いたりして。
__
ああ。
肥田
これからはこれを持ち歩きます。
__
ありがとうございます。



根本
まちょっと、最近時間があって。長い意味でどうしていこうかなあみたいなのを考えていたというか。
__
うん。
根本
去年の公演「猿とおどる」を中止にしてしまって。
__
うん。
根本
体と心が付いていかなくなって頓挫してしまったから、もう一度自分の生活を見直していかないと思って。
__
うん。
根本
色々な事を自分の中でもちょっと整理しないとと思っていたから。今日はそういう話になるのかな。
__
そうですね、「猿とおどる」については聞きたいと思っていました。その、具体的に問題もあったと思うんですが、作品の作り手として不十分な点を自覚したって事なのかなと。
根本
そうだね。まずはもう本当に、技術的な部分。あとは時間の少ない中でやってしまったからそれを乗り切る体力の部分が無くなってしまったというのと。でも振り返ってみると、技術的には相当、高度なというか高望みをしようとしていた部分があって。単純に今後回復して「猿とおどる」リベンジをしようとしてもちょっとすぐには出来ないんじゃないかなと今は思っているんだよ。あの時にやりたいと思ってたのは、去年の「茶色い絵本」をやった時から、何となくベビー・ピー的なものというか、自分の作りたい芝居の大きな形みたいな物が見えてきた気がして。
__
うん。
根本
大体、いくつかのストーリーの軸があって、それらの絡み合いを見せていくというような。「猿とおどる」ではそれを、3人という最小限の人数でやりたいなと。MEW'S CAFEというお店でやる予定で、なるべくお店の形を崩さずに、あまり仕込まずにやる予定でした。
__
そういうのでかなり難しいと思うのは、やはり照明とか、セットとかを作ったりすると入りづらさが生まれてしまうと思うんだけど、そういうのを外してやりたかったと。
根本
そうそう。
__
さりげない。
根本
うん。・・・さりげないってのは絶対ないんだけどね(笑う)。色んな形でやらないといけないなと思っている。普通の劇場の形式でもやっていきたいなと思うんだけど。でもそうじゃなくて、例えば知恩寺とかの手づくり市とか。あそこは京大の能学部の人達が勝手に踊ってたりしてて、それを観てる人もいればその横で古本を探してたり品物をみてたりしてる人もいて、ああいうざっくばらんな状況が凄く好きで、喫茶店は、劇場と手作り市の丁度中間ぐらいかなと思ってて。
__
中間。
根本
音楽をやっている人がストリートライブをやってたりするけど、そういう形式への足がかりになったらと思っていた、というのが一つ。
__
うん。
根本
あとは、話の構造。基本的に手法・人物造形的にも軸が2本から3本あり、それが一つに集約していく、というような。
__
こないだの「みんなボブ」は。
根本
あれは一人20役ぐらい(笑う)。
__
うん。あれも軸が大体同じような世界の中で、5本位の話が並列的に語られていくわけだけれども。
根本
あれは役者5人で、二人がハケて、次に別の二人が出てきたら別のシーンになるけど、「猿と踊る」の3人という人数はそうもいかない。でも、落語とか漫才とかって、最初の枕で観客と対話して、だんだん劇世界に入っていくじゃん。それってやっぱり多重構造といえば多重構造で、そういう様式だからかも知れないけど、分かり易いし、違和感なく見れる。照明を焚いたり、走ったりするマイムなどの大仰な事をしなくても、あれだけ一人で分かり易く出来るのに。
__
うん。
根本
大人数でそうしたらより分かり易くなるのに、何故そうできないかというと、基本を踏まえずにいきなりハイレベルな所に行こうとしているからじゃないかと。そういう、古典芸能と、今まで自分が芝居でやってきた、ストーリーの重層性みたいなのを寄せていこうかと思っていた。
__
思っていた。
根本
しかし。結構、難しかったんかな。「茶色い絵本」時みたいにあまり話をまとめずにいければと思ったんだけど、その力も演劇人としての体力も足りなくて、ちょっとふがいないなと思ったんだけど、ここで無理をしても空回りするだけだなと思って。今回は公演を中止にするという判断をしました。
__
うん。
根本
自分の作りたい芝居の形も見えてきているし、これからも芝居を続けていきたいと思っているから、焦らんと気持ちを切り替えて、別のところからアプローチしていこうかなと思ってます。
ベビー・ピー
根本コースケ氏などによる演劇ユニット。ナンセンスコメディ、熱いジョジョ劇、お祭り芝居など、想像力を強く掻き立てられる作品群。
ベビー・ピー「猿とおどる」
公演中止となった。予定されていた公演時期:2006年12月28~29日。予定会場:Mew's Cafe。
ベビー・ピーのコント#1「茶色い絵本」
公演時期:2005年12月。会場:京都大学文学部学生控室。
ベビー・ピー#6「みんなボブ」
公演時期:2006年8月18日・20日。京都会場:shin-bi、大阪会場:BlackChamber(文化祭 =Culture Carnival= 参加作品)。

タグ: 手作りのあたたかみ 分かりやすい面白さと芸術的な面白さの中間 いつかリベンジしたい


__
何か、最近面白いなと思っているような事とかない?
根本
面白いなと思っている事か。
__
うん。
根本
何だろうね。夜勤明けで知恩寺の手作り市に行って。それから古本屋に行ってぶらぶらしてたんだけど。
__
うん。
根本
次の日も夜勤で、また同じように古本屋に買い逃した本を見に行こうと思って行ったら、がらんと何も無い知恩寺の風景があって。
__
うん。
根本
知恩寺の市の風景を見て、ああ自分の芝居もこういうのがいいなと思ってたんだけど。ごちゃごちゃで、それぞれがそれぞれで頑張ってるんだけど、でも次の日にキレイサッパリ無くなってて。これもいいなと思っていて。そうありたいなと。
__
分かるわ。

タグ: 手作りのあたたかみ


場所

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今後も一応は、ベビー・ピーの代表として。
根本
うん、今年はね。やりたくなると思うんだけど、まず最初に人集めて会場押さえてチラシ作って、って自分を逃げられない場所に置いてから創作をやってたんだけど。それで体を壊したというのもあるし。ホントに今年は公演をやらないくらいの勢いで休もうと思ってます。
__
うん。
根本
何だかんだ言ってストーリーを作るのは、最終的には自分だから。書くという作業に向き合っていかないといけないなあと思っているから。そこを消化する年にしたいなと。
__
独力で作品を作り上げる。
根本
やがての公演の為に書いておくという意味でもあるんだけどね。ベビー・ピーはやっていきたいと思ってるし。・・・演劇人としては、ベビー・ピーっていう場は大事だと思っていて。京都演劇界とは違う場所で好きにやってるというのもあるし。
__
うん。
根本
もっと、本当はこういう層の演劇ってあった方がいいと。色んな人を混ぜ込む場所としてベビー・ピーを機能させていきたいと思ってます。みんなちょっと、正解を求めてやりすぎだと思うんだよ。

磁場

__
正解か。そういう、正解というのは、製作者がそれぞれ、自分で形を決めるものだと思うんだけど。
根本
何かね、ちゃんとしようという気持ちとか、フリンジとか舞台芸術とかを他の芸術にもひけを取らないちゃんとしたものにせなあかんとか、そういう流れがあって、そういう活動はいいと思うんだけど。
__
うん。
根本
でも演劇なんて、はっちゃけたいからやるんであって。あんまり、いきなりちゃんとしようとしすぎてもいけないんじゃないかなと言う気持ちがあって。成功も失敗も包み込んだ場所としてベビー・ピーがあって、そこに磁場が発生するのが目指す所。正しい道筋から振り落とされてきたものがある場所としてあって、かつ物凄い作品も作れればと思っていて。
__
うん。
根本
だから、まあ今は焦らんといこうと思っていて。
__
冷却期間、熟成期間か。重要だと思います。
根本
そういってくれるとありがたいです。

手法

根本
まあ、ちゃんと勉強をしないといけないなと思っています。何か、自分のオリジナルっていうのは、自分の中にあるものがオリジナルというよりは、それを扱う手さばきというか、手つきみたいなのがオリジナルなんじゃないかと思っていて。
__
うん。
根本
その為には、この世界が良いと言ってきたものを取り入れていかなければなと。古典とか。
__
最近読んでるみたいだね。
根本
自分のオリジナルがそういうものを扱う手さばきにあるんだとしたら、入れれば入れるだけ、良い方向に回っていくだろうなと言う。
__
うんうん。
根本
そういうものに流されてしまわずに受け止める土壌みたいなものはこれまでの活動で出来てきていると思っているので、ここらで大事に入れて行きたいなと。
__
そういう手法が、自分の強みだと言っていたと。
根本
単純に、手法っていうのも違うかもしれないけれど。手法自体も借り物でもいいと思う。素材も。
__
手さばき。
根本
手法を持ってくる手法。
__
それぞれの世界について、根本君は一定期間考える。一つずつでも複数まとめてでもいいから、考察したり自分の意識に取り入れていくと。その、取り入れるプロセスにご自身の力があると。
根本
そう。どんなにニュートラルに理解したつもりでも、自分の口から喋ればそれは僕自身が言ってる事になってると思うんだよ。
__
ああ。
根本
前はそういう、借り物の言葉に警戒してた事もあるんだけど、でもあいだに自分のキャラクターがちゃんと媒介されるならそれはそれで大丈夫かなあと。
__
うん。
根本
ダンスとかしてても自分だけずれているような状態を、大事にしたいなと。うん。

タグ: 外の世界と繋がる 作家の手つき


根本
あと、カフカの「城」という小説があって。
__
うん。
根本
ある測量技師が、ある城の領地の測量をしにやってくるんだけど、土地の人に「お前なんか知らん」と言われて、「城に行って手続きをしてこい」と言われて城に向かうんだけど、いつまで経っても城に辿りつかなくて、町の人達と不毛なやりとりをし続けるという話で。
__
うん。
根本
それだけの話なんだけど。
__
不毛だな。
根本
でも、自分にとっての物語というのは根本的にその城みたいなもんなんじゃないかと思っていて。それ自体を直接出してくることは出来ない。でもその、目的地にたどり着けずに土地の人と延々やりとりをしているだけで圧倒的に城が浮かび上がってくる。物語も、それをそのまま表現する事は出来なくって、そこに入ろうとしているんだけど入れない人を透かして物語りは浮き出てくるんではないかと思っていて。「月を食べる」の時は、月がそれの役割だった。一時期、月自体を書こうとしていたんだけども失敗していて、でもその、お釈迦様(月)の手の上で滅茶苦茶に動き回る人を書く事で手のひらなり月なりが浮かび上がってくるという事に気付いて。
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浮かび上がる。
根本
だから、余計なものやノイズを歓迎する方向で作っていった方が、真ん中のものを浮かび上げる事が出来るんじゃないかと。
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うん。
根本
そういう発想と、自分の手さばきっていうのかな、そういうのを生かしていきたいなと。
ベビー・ピー#5「月を食べる」
公演時期:2006年2日~4日。会場:京都大学西部講堂。

タグ: フランツ・カフカ


広告雑誌

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(渡す)全然関係ないんだけどね、これ。この無関係性というのはどうかなと思って。
根本
ありがとう(開ける)。おお。
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ほとんど根本くんには不要なものかもしれない。
根本
いや、こういう知識の入れ方もしないといけないなと思っていて。
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へえ。
根本
凄いな。高橋君はこういうので勉強するの。
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全然。ちょっと渋めの雑誌だからいいかなと。
根本
いや、本当に、何でも入れて行かないとと思っていて。こういうの自分では買わないからなあ。立ち読みしても見出ししか読まなかったり。いい機会にします。


配置換え

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今日は、宜しくお願い致します。実は私、金田さんの現在についてあまり存じておらず・・・。ネットで検索しても審査員のお仕事ですとか、デス電所のお仕事ですとかの断片だけで。
金田
あんまり出ないでしょ。
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そこで、非常に申し訳ないのですが、金田さんのお仕事をちょっとだけお教え頂けないでしょうか。
金田
基本、私の仕事は裏方なんですね。あんまり表に出る事がないんですね。どこから話せばいいんですか?私がここに至った経緯とか。
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はい、宜しくお願い致します。
金田
きっかけは、某プレイガイドに入社した所から。そこでアルバイトしておりまして。配置替えがありまして。劇団さんですとかの比較的小口のお客様のチケット販売申込の窓口みたいな担当だったんですね。でそこから、なんだろう。もうちょっとこう、大きな劇場さんですとか、定期的にチケットを申し込まれる方々の担当になって。それが比較的演劇が多かったんです。いわゆる営業ですね。
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はい。
金田
会社としては、なるべくこちらに沢山チケットを置いて欲しいと。うちに、これだけ沢山良い席のチケットを置いて欲しいと。そういう係りをしてたんですね。その内、たまたま同じ会社で情報誌の演劇ジャンルの編集をやってた人が退社される事になったので、畑違いではあったけれどもやってみないかと言われて、そこで編集担当になりました。
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そうだったんですね。最初はアルバイトから、どんどん編集の方へ。
金田
編集は未経験だったんですが。あとは、私は仕事として演劇が仕事として面白かったので。自分は演劇は全くしてこなかったんですけど、ホントにたまたまで。あとは、前任の方が私を推薦して下さったのもありまして。
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金田さんは、それまで小劇場はあまりご覧になっていなかったんでしょうか。
金田
会社に入るまでは、全然見たことがなくって。私は短大を出たんですけど、学生時代には浄瑠璃ですとか近世文学の勉強していて。そういうものは観ていました。あと大学の先生が蜷川幸雄さんのお友達だったので、その流れで蜷川さんのお芝居は見てました。が、なかなか小劇場へ踏み出すことはできなくて。
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ええ。
金田
チケットを手に入れた時にも、熱を出して行けなかったり。私達が学生だった頃には、新感線さんですとかそとばこまちさんですとかが物凄く華やかに活動されていた時代だったんですね。公演をテレビとかで放送してたりとか。そういうのは観てましたが、実際に足を運ぶのは中々・・・。劇場に行くのは、子供の頃から祖母に連れられて行っていたんですが。
デス電所
1998年の近畿大学在学中に、作・演出の竹内佑を中心として結成。(公式HPより)ブラックな笑い、社会風刺を和田俊輔氏の音楽とともに表現する。

vol.34 金田 明子

フリー・その他。

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金田