心と身体

ネコ 
人は心も体も一緒だとよく口にするし、特に日本ではそういう風にいいますよね。でも日本でも教育の過程で、デカルトさんあたりからの人間機械論に基づいた一部の西洋の考えがそれこそ身体に強く入ってきているから、実はどこかで心と肉体を感覚的に切り離して捉えているかも。面白い混じり方をした国だと思います。僕のいう身体性っていうのは、もっと生々しく肉体と精神を同一にしているというか。魂は触れ合った場所にこそ宿るって言葉ありますよね。曖昧な意訳ですが。体に関心があるかと言うより、人そのものに関心があるんですよ。
__ 
これまで取材してきたダンサーの方々は、ほぼ全員、心の事について言及してますね。
ネコ 
いやあ、僕がダンサーと呼べるかどうかはわからないですけど。心か・・・
__ 
ダンス踊っているときの心構えはありますか?
ネコ 
分からないです。周りによく言われるのが「お前はいつも、訳の分からないことをやってきている」って。本番は基本、いつも楽しいです。演じる事も踊る事も。心構えというか、そんな感じ。
__ 
緊張するとかは。
ネコ 
あ、もちろん緊張はしている・・・いや、していないかも。どういう感じだろう。呼吸をすること。空間そのものを感じること、なのかなあ。
__ 
その場に身を置くことを感じる?
ネコ 
あ、確かにそれはあるかもしれません。それは口癖のようになってて。その場にちゃんといる事を大事に。
__ 
それは逆に言うと、逃げないという事でしょうか。
ネコ 
いえ、時には逃げてもいいんだと思います。逃げるってのにも色々とあるはずだから。どう言ったらいいのかな。ただそこにちゃんと居ること、その瞬間のためにやっている。でも言葉とか身体って自分一人で作り上げたものじゃないから。色んな人の言葉や身体の影響が、たまたま、いまの僕をこうして喋らせているようなもので。自分一人の力でここにいる、という事はないと思う。
__ 
文脈や影響の交差点にいるという事実が人をして喋らせているのかも。
ネコ 
そうですね。自分がその触媒になっているような。もちろん自分は自分やからさ、自己を捨て去る事は出来ないけれども。例えば、元々僕は総合格闘技の選手もしていたので、お互いのエゴとエゴを思い切りぶつけ合う意味での、文字通りのコンタクトという行為があることも知っているつもりだけど。まるで触媒として反応することができたとしたら、それも良いなあ、と思う。だから、自分で作品を創作するのは、今はあまり好きではないんです。テクストを作るよりはそこにテクスチャー(肌理)としてありたい、というか。作品に質感やレイヤーをもたせることに興味があって。その純度を上げるだけで手一杯。だから僕は人の作ってくれた作品に出たいんですよね。

自分の味

__ 
自分の味を発見したら一瞬で分かりますよね。
ネコ 
さっき言ってましたね。確かに、これだと思うのかな。でも僕は単純だから、別のものを食べたら、あ、これだった!になるのかも。まだまだ分からないですね。演じる事とかも一緒ですね。結構本を読んだり、実際に試したりもするんですけど、毎回、これかなと思ってます。悩みながら。
__ 
創作者って複雑ですよね。ゼロから作る人なんてあまりいない。外からの影響が形作る交差点の上で作っている。それでも、自分の味に出会えたら、それがそれだと分かるし、奇跡なんですよね。
ネコ 
まだ出会えてないのかもしれませんね。カレーに関しても(笑い)。
__ 
そして、何故、これが自分の味だと分かるんでしょうね。
ネコ 
そうですよね。それこそ理屈を離れた、身体で分かる事なのかもしれませんね。

質問 芦谷 康介さんから ネコザ ポンティさんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、芦谷康介さんから質問をいただいてきております。「死んだ後どうなると思われますか?」
ネコ 
それは・・・めっちゃ長くなるから。一応、そういう事を生徒と一緒に考える先生だったので。様々な要素があるからサッとは言えないですよね。肉体自体というものは滅びるけれども、魂とか精神というものはどうなるのか。例えば、輪廻というものはあるのか。それとも生物というものは複雑化された化学反応の塊で、それが終了するのが死、なのか。死んだ後はどうなるんだろう。
__ 
うーん。
ネコ 
ただ、「死んだ後はどうなるのか」、それを考えるのはヒトだけだといわれています。他の動物は死後のことは考えないとされている。なぜかと言うと、彼らは言語によって未来を語らないから。「明日」や「一年後」、「二年後」という概念がないと、未来に対する不安と期待は生まれないんです。動物にも言語はあるし、種によってはなんなら嘘もつけるんだけど「一週間後にここで会おうぜ」という約束はしない、今を生きているから。全然答えにはなっていないけど、そういう疑問を持つこと自体が人間らしいなと思います。
__ 
死んだ後どうあって欲しいか、を考えるのもまた人間らしいですよね。
ネコ 
そうですね。動物だって死ぬ前に怖がったりする行動をしますが、こんな事を言ったら動物が好きな人に怒られるかもしれませんが、単純に危険に脅かされるという生存本能の反応である可能性が高いです。「死んだ後に自分はどうなってしまうだろう」とか「私が死んでも、不在のままこの世界が続いて行く」という思考はないんじゃないかな。人間ほどの死への恐怖は他の動物にはないのかも。自分が死んでもこの世界が続くということに人間はとらわれるから。ごめんね、こんな答えになって。
__ 
いえ、ありがとうございます。

ヤクシャとカメラ

__ 
憧れた表現とかそういうものはありますか?
ネコ 
うーん。例えば、初めてプロセスチーズを食べて美味しい美味しいって言ってたら、隣にいたグルメな人が「プロセスチーズなんかチーズじゃないよ、ブルーチーズとかヤギのチーズこそが本物のチーズなんだよ」と。で、食べてみたらちょっと癖が強くて、今の自分じゃまだ味がわかんないです、ってあるじゃないですか。優しさで、本物のチーズの世界を教えてあげたい気持ちもわかる。ただ、本格的なチーズもプロセスチーズも両方食べたらいいじゃないですか。ハンバーグだって美味しい。いや本当の上質な素材は手を加える必要がない、と言うのも分かるけれども、ミンチにしたハンバーグが食べたい日もある。表現もそれと同じで、僕はどっちかにはまだ偏れないなあ、と。個人的にはけっこうマニアックなところがあるので、演技でも踊りでも追求した世界観がけっこう好きだし、自分でもたまに関わっているつもりだけど。ストレートプレイも素直に好きです。なので、選べないです。さっき言ったけれども、僕はプレイヤーでありたいと思っていて。その時その時の作品そのものに純粋に集中できたら良いと思います。
__ 
演技は結局、役者が個人で作るものなので、分かりやすい表現であろうがマニアックな表現であろうが、自分自身で作るという姿勢を崩さない限り、その人は良い役者やと思いますけどね。
ネコ 
そうなれたらいいですけどね。
__ 
それがそこにいるという事じゃないかなと思います。前々回取材した、門石藤矢さんがそういう事をおっしゃっていて。「いつかどんな演技ができるようになりたいですか」という質問に対して、「分からないです」とお答えになって。演技を因数分解して作り上げることはできるけれども、それに注力してるわけではない、と。もちろん台本はあるけれども、その場その場での反応を大切にして立つのが役者であると。
ネコ 
共感しますね。
__ 
だからこそその人の味が成立するし、そうであって欲しいなと思います。
ネコ 
そうかもしれませんね。だけど僕は、どこかで「自分だけではない」ということも忘れてはいけないなと思ってます。最近映画に出る機会が何度かありましたが、その時に強く感じたのは、カメラの前に立つんですけど、カメラの後ろ側にいる人たちの影響がめちゃめちゃ大きいなという感覚があって。その人たちの結果がここにある。
__ 
カメラの後ろとは、撮っている人たち、という事ですか?
ネコ 
そうですね。その人たちの何か、が結構大きい要素だなと、良くも悪くもですけど。通常はカメラの前では演じる人は孤独であることが多い気がします。やっぱりカメラは暴力に近いな、と。それを言うなら、舞台も、見ている人たちの影響がとても大きくて無視なんてとてもできない。無理にそれをコントロールしようとした瞬間、もはやそれは違うものになってる気がして。それに演じている時は相手もいるし、物理的な相手がいなくても、生々しい空間というか場の存在感がそこにある。もうちょっと開かないといけないのかな、簡単なようで、それはすごく難しいけれども。
__ 
お客さんも最初は閉じているんですけど、後半に向かって自分を開いて行く、みたいなことがあるんじゃないかなと思います。まあ私がそうなんですけれども。個人の人間として。カメラはそういうことはしないので、役者が孤独を感じると言うのは分かります。
ネコ 
どうなんでしょうね。僕は表現活動の世界では友達は少ないし、しかも一般的な流れから演劇を始めたわけではないので、今も、演じるということがどういうことか分からない。だから、色んな人と実験とかできたら、と思っています。意外とね、僕は孤独な作業をしてる時間が多いです。この間東京にいるダンスの師匠に言われたんです。「ネコさんは孤島にいて、そこで独自に進化したトカゲみたいなものだから孤独やろうね」と、それはポジティブな意味でいってくれたと思いますが、いやいや僕、色んな人に影響もされたいから。面白がって揺るがしてくれる人がいたらいいな、と思っています。京都とか大阪の表現活動の人と仲良くしたいですよ。作品にも呼んでくれたら嬉しいのにな(笑い)

世界を見るものたち

__ 
最近の、踊る上でのテーマ教えてください。
ネコ 
見てくれた人がそのまま好きに感じてくれていいので、自分の作品についての解説は普段しませんが。前回のFoURDANCERSの作品にタイトルをつけるなら「往く、過ぎる」でした。それはユクスキュルという生物学者の名前の言葉遊びの意味もあって、彼の環世界(ウムヴェルト)という発想を潜ませて作ったつもりです。作っている過程を見ていた殿井さんからは「他人の夢の中を歩くような作業をしてますね」と言われて、よく当てるなこの人って思いました。それと、この間送っていただいたこのサイトに出た遠藤くんのインタビューで、自分じゃない人の感覚。面白いなと思ってます。環世界も、動物とヒトの感覚はまったく違っていて、ヒトでは可視化できない色を見ることができる昆虫にとってはこの世界はまったく違った見え方をしていて、色が分からない猫にとってはこの世界は白黒で。でもどちらが豊かな世界なのか、と言うのは全く関係ない。世界に客観はなく、それぞれの主観なのだと。ざっくりいうとそんな感じ。
__ 
地球ってそういう独自の感覚に支えられた生活をそれぞれ持つ種族のガラパゴスたと思うんですけど、宇宙からしたらどうなんですかね。
ネコ 
ああ、そうやねえ。宇宙にも生物はいるやろうから。
__ 
いるんですかね?
ネコ 
NASAも認めていると聞くけど。後はいつ見つけるか、だと。知的生命体がいるかどうかは分からないけど、かつて生命がいた星はあるだろうし、今もいるんじゃないかなと。
__ 
コミュニケーション取れますかね。
ネコ 
取れるのかな。全然僕らの常識とは違う生命なのかもしれないし。
__ 
仮に、もし全然面白くなかったらどうします?
ネコ 
(笑う)どういう事?
__ 
宇宙生命体が発見されるんですけど、それは一見普通のネズミで、そして実際マジで普通のネズミで。
ネコ 
確かにそれはそれでビックリするけど。
__ 
なんなら、地球ですでに発見されているポピュラーな種で。
ネコ 
それはちょっとガックリやな。
__ 
そいつらだけしかその星にいなくて、生活サイクルとか、別に独特な点はない。もちろん言語とかも全然発達してなくて。何なら、地球上でその星と同じ環境を作ったら、完全に同じ状況になる。その星にとって最大の事件は人間に発見された事ぐらい。
ネコ 
逆に面白くなっちゃう。何で特に進化もしなかったのか。
__ 
NASAは実はその星を見つけているけど、そんなのみんながっかりするから隠してるんですよ。
ネコ 
なるほど期待させたいからね。ちょっとショボーンやね。
__ 
まあ真相を言うと、宇宙ステーションが昔事故を起こして、そこでの実験動物とコケとかが繁殖しただけ、なんですけどね。生命なんてそうそう、自然に生れるわけがないですよ。
ネコ 
命を作る条件と言うのはやっぱり地球と同じじゃないとあかんのかな。そして、命ってわからんところでさ。死んだらどうなるかという話と逆で、よく授業でも生徒にディスカッションしてもらったんですけど、「生命は、どこからが生命なのか」これは皆さんにも聞きたいんだけど、例えばウイルスは生命と非生命の間にある、とも言われるけど。
__ 
難しいところですよね。
ネコ 
精神分析もやっている精神科医の友達がいるんですけど、彼とは昔から一番、忌憚のないやり取りをしていて。今二人が興味があるのはAIについての問題。例えば、いまのAIが、めちゃめちゃ進化して発展して進歩したらそれは生命と呼べるのか呼べないのか。AIが生命になる条件、または、絶対にならないとするならそれはどうしてなのか。
__ 
どうなんでしょうね。スワンプマンですね。
ネコ 
ある意味、ぽいね。色んな意見聞いてみたいなあ。気軽にこう思うっていうくらいの考えでいいので。
__ 
個人的にはAIがめちゃくちゃ進化しても人間の知性に追いつく、という期待はしていません。でも仮定の上で、人間とほぼ同等の知性と悟性を持つようになったとしても、それはやっぱり人間が作ったものなんですよ。人間は神となっても良いのだろうか、みたいな事かもしれません。
ネコ 
なるほど。うん。AIにとっては人間が創造主なんだけど。
__ 
人間は彼らAIに対してテストしないといけないのかもしれませんね。今のスピードなら、50年以内にはAIに対してインタビューすることがあるかもしれませんね。
ネコ 
僕が今思っているのは、今の段階では、AIとヒトは明確に違うところが一つある。で、それがないと生命としては難しいと思うんだけど。それは、アホらしいぐらいシンプルなこと。
__ 
マジすか。
ネコ 
逆にいえば、これがあったらAIは生命に一歩近づくのかもしれない。と、まあここは、あえて黙ってみます。皆さんはどう思っているんだろう。教えて欲しいです。

ただ、聴きたい

__ 
何がご自身を舞台に向かわせているのですか?
ネコ 
自分でもまだ明確にはわからないです。
__ 
今日のインタビューはそろそろ終わりますが、何かお話になっておきたかったことはありますか?
ネコ 
僕は色々な影響を受けて今がある感じがするので、もっとたくさんの人と対話がしたいですね。人の話を聞くのが好きなんです。真面目な話だけじゃなくてバカな話も。むしろそっちが好きかな。これからも色々な人に揺り動かされながら生きていきたいなと思ってます。なので、見た目は「何考えてるかわからない」ってよくいわれますけど、怖い人間ではないので。気軽に声かけてもらって仲良くなって欲しいです。
__ 
ありがとうございます。今後どんな感じで行かれますか?
ネコ 
よいとなが10月にイベントに参加するのでそれを頑張るのと、出演した映画がいくつか公開になるので、もしよかったら見て欲しいなと思います。今後も変わらず演じたり踊ったりを、面白いなーと思ったりわからないなと思ったりしながら続けていくんじゃないかなと思います。
__ 
ネコさんのダンスはもっと観たいです。
ネコ 
今は自分で作るより、なるべく人の振り付けで踊りたいんですよね僕。
少し怪しい祭り実行委員会『少し怪しい祭り』
演劇×人形劇×マイム──異なる表現形式による3つの作品
尾上一樹、アメリカ帰国後初となる自主企画公演。人形劇(JIJO)/演劇(よいとな)/マイム(尾上一樹)と、3団体の作品をブッキング形式で上演。
【日時】(全5ステージ)
2017年
10月7日(土) 19:00-
10月8日(日)   14:00- / 18:00-
10月9日(月・祝)11:00-★ / 15:00-★


※開場は各回ともに開演の30分前。
★9日11:00-、15:00-の回は、開演前にオープニング・アクトがあります。
〔O.A.出演〕D.D.コーヒー

【会場】
あとりえミノムシ
〒602-0807京都府京都市上京区不動前町1-2
Tel & Fax : 075-200-8261
〔Webサイト〕http://at.mino3064.com/
【アクセス】
・京都市営地下鉄烏丸線 「鞍馬口」下車、1番出口より徒歩10 分
・京阪本線「出町柳」駅下車、4番出口より北西へ徒歩約15分
【チケット料金】 (前売、当日とも)
一般 ¥2,000
18歳以下 ¥1,000
※未就学児の入場はお断りさせて頂きます。
※人形劇場を会場としていますが、お子さま・親子さま向けとして創作した作品ではありませんので、その旨ご了承ください。
【ご予約・お問い合わせ】
sukoaya@gmail.com(少し怪しい祭り実行委員会)
【ご予約方法】
上記メールアドレス宛に・お名前・希望日時・人数(18歳以下の方はその旨も)をお知らせください。
折り返し、ご確認のメールをお送りします。このメールをもちまして、ご予約完了とさせていただきます。(自動返信ではありませんので、ご返信に少々日数・時間がかかることがあります。)
※お手数ですが、gmailアドレスからのメールを受信できるよう設定をお願いします。
※座席数に限りがございますので、お早めのご予約をおすすめします。
【CAST】

JIJO

殿井歩
申芳夫
田辺泰信

尾上一樹
仲谷萌
(ニットキャップシアター)
籔本浩一郎
(音楽:アコーディオン) 

【STAFF】

照明:木内ひとみ
【参加団体プロフィール】
尾上一樹…いいむろなおき氏主催「マイムラボ・セカンド」1期生。その後渡米し、Corporeal Mimeを学ぶ。
JIJO…人形劇・キグルミパフォーマンス。糸あやつり人形劇団みのむし・人形劇団ココンの作品にもスタッフ&出演中。
よいとな…殿井歩・申芳夫(ネコ・ザ・ポンティ)の両名が立ち上げた演劇ユニット。短編~長編作品まで幅広く展開。
★twitter@sukoaya でも、3組の最新情報を発信していきます。よろしくおねがいします。
ことなるジャンルの3組による新作を含む短編作品たちを、どうぞおみのがしなく!

チェックのハンカチ

__ 
今日はお話を伺いたお礼にプレゼントがあります。大したものではありませんが、よろしければお開けください。
ネコ 
ありがとうございます。ドキドキしますね。(開ける)おっ、ハンカチ。ナイスタイミングですね。僕は雑いので、ハンカチを持ってなかったんですけど、イースタンプロミスという映画を見てからハンカチを持とうと思ってたんです。誰かにツバを吐きかけられた時に使えるように(笑い)。使わせていただきます。
__ 
どんなシーンでも使えるものを選んだつもりです。もしよければ。

遊ぶこと

__ 
今日はどうぞよろしくお願い致します。最近、芦谷さんはどんな感じですか。
芦谷 
よろしくお願いします。最近は結構忙しかったんですけど一段落しました。もうしばらくゆっくりしようかなと思っている感じです。
__ 
そうなんですね。一番忙しかった時期は?
芦谷 
8月に公演の稽古がありまして、それと並行してワークショップのアシスタントをしていて。
__ 
8月の公演と言うのは、高野裕子さんとのデュオの事ですね。
芦谷 
はい。それと、劇研なつまつりの「かむじゆうのぼうけん」という子供から大人まで楽しめる公演で、子供達がすごく楽しんでくれていたので良かったです。
__ 
「かむじゆうのぼうけん」。一番印象的な体験は何でしたか?
芦谷 
今年が劇研での最後の開催ということもあって、毎回40人ぐらいの子供たちと一緒に工作をしたりだとか動いたりだとか。そのパワーもすごいんですが、子供のクリエイティブな面がすごく面白いです。大人の想像を超えるものを作ってくれるので、刺激的ですね。
__ 
子供と遊ぶのってすごく訓練がいるような気がしますね。頭の中のシミュレーションで遊んでいるときは上手くいくんですけど、実際に遊ぶ時は引きずられるようになる。どっちが主導権を握るとかではないんでしょうけど。
芦谷 
子供の人数が多いので、やっぱりある程度、子供がリラックスできる空間を作ってあげるべきなのかなと思います。自分の家族の子供と遊ぶ時は自由にしたら良いと思うんですけど。
__ 
安心して遊べる様な空気作りというか。
芦谷 
やっぱりそれは劇研なつまつりの、10年の間の良い積み重ねがあるんだと思います。
__ 
盛り上がるんでしょうね。とても。
サファリ・P
サファリ・Pは、2015年8月、利賀演劇人コンクールに参加したメンバーである俳優・高杉征司、ダンサー・松本成弘、演出・山口茜を中心として結成されたカンパニー。利賀では優秀演出家賞一席を受賞した。固定のメンバーで継続した創作活動を行うことにより、クオリティの高い作品作りを目的とする。(公式サイトより)

高野裕子さんとのデュオ作品について

撮影:高橋拓人
__ 
さて、UMLAUTでの高野裕子さんとのダンスがとても良かったです。
芦谷 
ありがとうございます。
__ 
高野さんと芦谷さんの、人間としての誠実さがあっての作品だったんじゃないかなと思います。まず、言葉を使っての評論が追いつくようで追いつけない感じがあるんですよね。表現されている作品である以上、言葉によって解説は出来るはず。でも、洞察出来ない領域が確実に存在している。そんな感触です。作品の流れとしては、二人が最初、正座して向き合ってお互いの膝に同時に触ろうとする。普通だったらキッカケを取るのかもしれないが、何だかそれ以上の交錯があったような気がしました。目線とかテレパシーとか、そういう物理的な方法じゃなくて、何かもっと、何だろう、お互いの存在があるべき状態になったら「事の起こり」を合わせられる事が出来るのかもしれない。そういう、洞察も言葉も及ばない世界。
芦谷 
うーん。
__ 
言葉を超えた、相手とのコミュニケーション。その摩擦の境目や、擦れ合う時それぞれの主体の裏側に広がっているものが見えた気がする。最後の方では照明を消して、ブラインドから漏れる外の明かりだけだったじゃないですか。そこは本当に、幽霊みたいな感じがして・・・
芦谷 
初めて高野さんと作品を作らせて頂くにあたり、お互いにコミュニケーションを取っていたんですが、それが作品に現れていたような気がします。向かい合って握手をするところから始める、毎日のその気持ちとか、相手に触れ、さらに相手の心の中に触れる、と言う経験が大きいと思います。稽古場でどういうふうに時間を過ごしたかというのはやっぱり本番に出るな、と思いました。それは観劇をするときにも思います。だからというわけじゃないですけど、思ったことを素直に共有したり、とかは意識しました。
__ 
自分の手を素直に差し出し、相手の存在に触れるところから始まったのですね。
芦谷 
そうですね。また、相手に触るだけではなく、自分自身に触るというところもありまして。
__ 
自分自身を確認する?
芦谷 
自分を触り、自分の人称を口に出したり。色々なアイデアが出たんですが、最終的にはそうした演出が二人の間に残っていきました。
__ 
自分を確認する。
芦谷 
あとは、言葉をどういう風に使ったら面白いのか、と言うのは残っていきましたね。
__ 
暗闇の中でさまよっているシーンもありましたね。いや、さ迷っているようでも、しっかり歩いているようにも見えました。
芦谷 
明かりを消してからのシーンでは、その前までの「お互いの体を触れ合うシーン」をなぞろう、という話になっていました。個人的な過去の事や家族のことを呼び起こされるというか。毎回違う作品になりました。きっと何かが伝わる、と言うのは信じています。
__ 
何と言うか、個人的にはまだ解決できていない作品なんですよね。もう一度拝見したいです。闇の中に揺らいでいる身体は、思考とか精神のレベルを超えた層でただ揺れていて、その小さいけれど大きな動きの中心がそのまま空間の中心と重なって揺れていて、みたいな。
芦谷康介と高野裕子アトリエ公演vol.1
date:2017年8月6日~8日(全3回公演)
place:UMLAUT
photo:高橋拓人

もう一度振り返ると

撮影:高橋拓人
芦谷 
改めて、自分にとって表現とはどういうものか、そして自分はそれに対してどの様に思っているのかということを見つめる公演だったな、と思います。それは本当に、高野さんとお話をしたり、色々なアイデアを試すという時間をもしっかり持てたので。心と体の関係に、改めて興味を持てたし、もっと追及ができそうだとも思いました。
__ 
具体的には、どのような稽古をされたんですか?
芦谷 
テキストを持ってきて読んだりだとか、アイデアを出し合って検証するというのを繰り返して。あと、初対面だったのでお互いのことを話し合って。話し合うと言うとちょっと堅いんですが、自分が何に対してどう思っているであるとか。そういうことです。
__ 
距離が近くなったということですね。
芦谷 
そうですね。
__ 
距離が近くなった上で、距離の遠さを感じる、みたいなことはありましたか?
芦谷 
ああ、そうですね。同じ舞台芸術を共用している、ということはあるんですがバックグラウンドの違いは感じていました。今までの経験でやったりだとか、環境とかも全然違うし。でもそれは、お互いの事を知ったからこそ感じた事ではあります。そういうのを含めて、良い出会いだったと思いますね。
撮影:高橋拓人

理想の・・・

__ 
ご自身が考える、理想の稽古とは何ですか?
芦谷 
何だろう、何か、思ったことを言いやすい稽古かな。やっぱり一人で作っているわけではないので、色々な人のアイデアが、良かったとしても良くなかったとしても多ければ多いほど選択肢が増えますし。
__ 
高野さんとの稽古場はそういう感じだったんですね?
芦谷 
僕はどちらかと言うと普段は自分から喋るよりもに話を聞いてから考えることの方が多いので。一対一だったということもあるかもしれませんし、言いやすい環境にしてくれてたのかもしれませんし、僕の方で意識していたというのもあります。そういうやり方が必ずしも、良い作品に結びつくかどうかははっきりと言えないですが。
__ 
自分でアイデアを出さずに、演出家が「交通整理」することで良い作品になる場合もありますしね。

言葉と動きのあいだで

__ 
芦谷さんの最近のテーマは何ですか?
芦谷 
一つは、人と自分を比べずに、自分がいいなと感じていることを大事にすることをここ数年は意識しています。
__ 
最近は何に対して良いと感じられましたか?
芦谷 
高野さんとの公演で面白かったのが、彼女が踊っているところに自分が擬音を当てる、ということをしていて。そこで発生した音をまた体に変換したりだとか。その動きをまた違う言葉に変換したりだとか。それがまた何かに発展できそうな気がしていて。あれは何か発話するということと、体というものがもっと複雑な、面白い関係を築くような気がしていて。それを例えば逆に辿って言ったらイコールになるのかみたいな。言葉と身体の関係ですね。
__ 
人間がその時々で発言したりとか動いたりだとか、それらの純粋な行動を突き詰める実験。それらのアクションが輝いた瞬間、意味が意識が移り変わる瞬間。面白そうですね。俳句みたいな感じ。
芦谷 
俳句。そうですね。

質問 門石 藤矢さんから 芦谷 康介さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、劇団ZTONの門石藤矢さんから質問を頂いてきております。「リラックスタイムには何をなさいますか?」何をすると癒されますか?と言うことですね。
芦谷 
本を読むか、ヨガ。でもリラックスタイムでいつなんだろう。でも、本かなあ。

自分自身であること

__ 
ご自身を変えた最大の経験は何ですか?
芦谷 
なんか僕は、男性も女性も好きになるんですけど、そういう事に気付いた時かな。それが自分の表現活動に結びついている気がして。やっぱり、そういう自分への理解というのが大きな経験だったと思います。
__ 
それ以前と以降で、演技の質が変わったりとかはありますか?
芦谷 
大学に入るまでは、演劇は見たりしていたんですが、自分でやる、という事はなくて。どちらかと言うと自分のそういうことはあまり表には出さなかったんですが、大学の舞台芸術学科に入って、自分の自分らしさというものを出しても良いと言うことが分かって。大学に入ったと言う事はやっぱり大きな転機です。
__ 
なるほどなあ。私も自分自身の事を冷静に周囲に言ったり自分でも引け目に思わなくなる事で、ちょっとずつ取材のあり方が変わってきたように気がします。自分自身である事に諦めが付いた、みたいな。
芦谷 
諦めた、か。
__ 
今まであんまり自分は自分自身のことを表現してこなかったので。それはつまり、他の人に自分のことをあまり認識させないやり方だったのかもしれない。実家が宗教団体の施設管理をやっていたり、まあ相手によっては引きかねない事色々。
芦谷 
全然引かないですよ。
__ 
ありがとうございます。

演劇とダンスの観客

__ 
芦谷さんは俳優もダンスもされておいでですが、演劇とダンスの観客の違いを感じたことはありますか?
芦谷 
うーん。ないですね。
__ 
では逆に、演じているときのご自身の体は、どんなところが違いますか?
芦谷 
なんというか、その日その劇場の舞台の上にいるということは演劇でもダンスでも同じだと思います。もし違うことがあるとするなら・・・役かなあ。
__ 
役柄?
芦谷 
ダンスの方が、自分の体が感じている感覚というのが前に出てくるんだと思うんですけど、演劇の方は役というファクターがある、ということなのかな。
__ 
いつか、どんな演技ができるようになりたいですか?
芦谷 
うーん。なにかそういう、目指すみたいなものはないですけど、その時の感じ・・・かな。あえて言うなら、たくさんの人と表現を通じて分かち合えるような。そういう思いはあります。

これからも

__ 
今後、どんな感じで行かれますか?
芦谷 
いま、サファリ・Pという劇団に所属していて、そこでのクリエイションがすごく面白いので、これからも続けていきたいと思います。バランスよく、表現活動と自分の時間を持ちたいと思います。
__ 
ありがとうございます。

砂時計(15分計)

__ 
今日はお話を伺ったお礼にプレゼントを持って参りました。大したものではありませんが・・・よろしければどうぞ。
芦谷 
ありがとうございます。綺麗に包装してありますね。(開ける)砂時計ですか。嬉しいです。なんか、ツボを知ってますね。
__ 
15分計です。
芦谷 
メッセージ性を感じますね。
__ 
砂時計というのは、砂が流れ終わった瞬間は通知してくれないじゃないですか。ふと目をやった瞬間、時間が過ぎていたのに気付く。時間を管理する道具としては破綻しているんですよね。そして、とても人間に近いと思うんです。時間の進行に常に置いて行かれてしまう、という意味で。

暑い夜に

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。劇団ZTONの門石藤矢さんにお話を伺います。最近、門石さんはどんな感じでしょうか。
門石 
よろしくお願いします。最近!最近暑いですね。暑いなぁ・・・なんて。あ、全然関係ないんですけど、ZTONの事務所にハムスターがいるんですけど、そいつのお世話をしています。最近ちょっと元気がなくて、暑いのかなと思ってエアコンを強くしてみたり、餌を増やしたりしてみたら元気になりました。
__ 
危ないところでしたね。
劇団ZTON
2006年11月立命館大学在学中の河瀬仁誌を中心に結成。和を主軸としたエンターテイメント性の高い作品を展開し、殺陣・ダンスなどのエネルギッシュな身体表現、歴史と現代を折衷させる斬新な発想と構成により独自の世界観を劇場に作りあげ、新たなスタイルの「活劇」を提供している。(以下略)(公式サイトより)

劇団ZTON 京都→東京遠征公演02 「覇道ナクシテ、泰平ヲミル【護王司馬懿編】」

__ 
覇道泰平、東京公演ですね。今年の一月に上演した、完結編である護王司馬懿編を、東京で上演するという事で。まず、いまの感触としてはいかがでしょうか。
門石 
今日が稽古初日だったんですが、ああ、だいぶ変わってるなあと思いました。現在の段階では配役はまだ言えないんですけど。
__ 
初演から変わってると。
門石 
ああ、これ以上は僕の口からは言えないです。そうなんでございます。
__ 
よろしければ、意気込みを教えてください。
門石 
今回の東京公演の会場は花まる王子小劇場さんなんですね。いつもよりは劇場のサイズが違って、お客さんとの距離がめちゃくちゃ近いんです。(京都でも、人間座さんというさらに狭い劇場で毎年新人公演はさせていただいているんですが)劇場への慣れの問題と、あと、去年の東京公演で感じたんですが、なんとなくお客さんの反応は関西と比べてどこか違うなあ、と。勝手な想像に過ぎないのかもしれませんけど・・・・
__ 
ああ、それはありますね。
門石 
どうくるのかな、みたいに観られているような。こっちの人は、おもろいもん見たろ、みたいな空気感覚があるんですが、東京の人は、お芝居を観慣れてる方が多いのかな。普段嗜んでいるもの、なのかな。お笑いを見に来た人と、テレビを見ている感覚なのかな、って。いやすみません、若造が何言ってんだって感じで。
__ 
東京のお客さんはその分、作品を丁寧に扱ってくれる印象はありますね。前半のテンションは低くて、ギャグでもあんまり笑わなくて、でも中~後半はすごく集中して作品にのめりこんでいる感じです。・・・もうすぐ、公演ですね。
門石 
はい、意外ともうすぐです。
劇団ZTON 京都→東京遠征公演02 「覇道ナクシテ、泰平ヲミル【護王司馬懿編】」
「覇道泰平」シリーズ完結編、
早くも東京にて再演決定!!

【日程】
 2017年9月14日(木)~18日(月祝)
 9月14日(木)19時開演☆
 9月15日(金)15時開演☆
 9月15日(金)19時開演
 9月16日(土)15時開演◆
 9月16日(土)19時開演
 9月17日(日)15時開演
 9月17日(日)19時開演
 9月18日(月)12時開演
 9月18日(月)16時開演
   ※開場は30分前です。
  ※上演時間は2時間を予定しております。
 
 ☆:アフタートーク開催あり。
   9月14日(木)19時開演の部
   <GUEST>三枝奈都紀(SOS Entertainments)
   
   9月15日(金)15時開演の部
   <GUEST>中山貴裕(ゲキバカ)
 
 ◆: 託児サービスあり。(要予約)
   イベント託児・マザーズ[0120-788-222]
   (0才・1才2,000円 2才以上1,000円)
 本公演以前のシリーズ、
 【偽蝕劉曹編】・【真王孫権編】の上映会も併せて開催!!
 9月16日(土)11時開演【偽蝕劉曹編】上映会
 9月17日(日)11時開演【真王孫権編】上映会
 ※開場は15分前です。
【会場】
 花まる学習会王子小劇場
 (〒114-0002 東京都北区王子1-14-4 地下1F)
【チケット料金】(税込・全席自由)
 前売料金 一般 3,500円/U-23 3,000円
 当日料金 一般 4,000円/U-23 3,500円
 学生(高校生以下) 500円(各ステージ 3 枚まで)
 上映会 一律 1,000円
※未就学児のご入場はお断りいたします。
※チケットはお一人様1枚必要です。
※U-23 は 23 歳以下の方が対象(公演期間時)です。
 当日受付にて年齢確認できる身分証のご提示をお願いします。
※開演時間までにご来場いただけない場合、
 お席がご用意できない場合がございます。
 あらかじめご了承ください。開演までにご来場いただくことを推奨いたします。

【キャスト】
 <劇団ZTON>
 為房大輔 高瀬川すてら レストランまさひろ
 出田英人 図書菅 門石藤矢 前田郁恵 久保内啓朗
 
 <GUEST>
 三枝奈都紀(SOS Entertainments)
 
 大町浩之(拳士プロジェクト)
 加東岳史(劇団GAIA_crew)
 榊菜津美(アマヤドリ)
 杉浦勇一
 浜崎 聡
 山本常文(思誠館道場)
 吉久直志(カプセル兵団)

 中山貴裕(ゲキバカ)

<アンサンブル>
 飯尾佳名子
 道川内蒼
 横山豪( ?マック・ミック)
 吉澤悠吾(?オフィス斬/TEAM俳)
【スタッフ】
  脚本・演出:河瀬仁誌
  舞台監督:新井和幸
  照明:吉田一弥(GEKKEN Staffroom)
  音響:Motoki Shinomy(SAWCRNT & commondays)
  殺陣オペレーター:福島健太(本若)
  衣装:鈴木貴子
  ヘアメイク:滝沢侑子
  小道具:劇団ZTON
  殺陣・振付:為房大輔
  宣伝美術:中森あやか
  当日運営:間宮知子(風ノ環~かぜのわ~)
  企画・製作:劇団ZTON
【チケット・公演に関するお問い合わせ】
 合同会社 office ZTON
 MAIL:info@office-zton.com

役者として

__ 
前回公演「天狼ノ星」の話を伺いたいと思います。私は初演を拝見して、DVDも何回も再生して、やっぱりお話が深いんですよね。門石さんは初演でもアンサンブルとして出演されていましたが、今回の再演では二つの章を貫く主役でしたね。いかがでしたか?
門石 
僕は役者として非常に自信が欠けている人間なので、僕でいいんだろうかという思いがずっとありましたね。土肥さんが初演では主役で、それを僕が受け継ぐんだ、と思うと熱い思いがこみ上げてきて。色々なものをいただきましたし、皆さんから支えていただいて。すごく勉強になりました。もっと頑張ろうと思いました。
__ 
最初はどんな気持ちで望まれましたか?
門石 
そうですね。稽古の段階で、自分の全力でやってみようと思っていたところ、河瀬さんに「お前は初演の土肥君を負っている」と言われたことがあって。それをきっかけに、自分のハクトをやってみようと思うようになりました。自分だったらどうだろうか、ということに焦点を当てて考えるようになったんです。
__ 
というと?
門石 
登場人物は僕とは経験が違うし、想像して考えて、その人の意識や行動を考えるんですけど、「より自分に寄せてみる」という作業は僕はあんまりしてこなかったんですよ。もう、ただ「狼の中で白いという個性を持つ僕」として自分に重ねて演じていました。
__ 
つまり最初は、役柄を自分に引き寄せていたんですね。そこから、「自分だったらどうだろうか」と考えるようにした。
門石 
そうですね。やっぱり、そこを乗り越えないとニサを超えることができない、ということは河瀬さんにも言われていたので。
__ 
ちょっと分かる気がします。そう、門石さんのハクトは、何だか明るかった。狼の中でも白いから目立っていたけれども、明るい人物の印象になれていましたよ。ハンディキャップだと自認しながらも、そういう振舞い方が出来るようになれる?
門石 
「あいつはああだから」と後ろ指を差される、という心情は僕にも通じていて、きっとそこをセタという親友が連れ出してくれたんだろうなあ、セタがいたからこそ明るく振る舞えていたんじゃないかな、そうした色々なものを経てのハクトで、さらに戦いを経て、時空を超えた。
__ 
色々なものを超えたからこそ強くなれたということですね。
門石 
そうですね、僕は、「強さ」ではないんじゃないかなと思うんです。
__ 
強さではない?
門石 
いえ、受け取り方次第なので!でもやっぱり、大事なことを決める時って、「これまで僕はいろいろやって強くなったし、よしやってみよう」となる方が少ないと思うし、強さと言うより、最終的に自分がやりたいと思った答えで、それは強さとかの大それたことじゃないんじゃないかなと思います。言葉にするのは難しいんですけど。
__ 
幅というか、選択肢というか、そういう事?
門石 
全部を歩いてきて、結局、ハクトはハクトだ、という事だと思ったんです。
__ 
なるほど。そうですね。最終的に彼は「大狼の王」から「天の章のハクト」に戻ったんですもんね。初演ではハクトは、レタルと一緒に大地を導いていく存在を選びましたが、2017年版では自分のいた時空に戻り、セタと和解する。
門石 
自分がやってもらったことをやらないといけない、と思ったんです、その時は。もう一方で、僕はどう考えても土肥さんにはなれないなと思いました。そうですね、自分個人と向き合うお話だったと思います。
__ 
様々な意思があり、それぞれに結末がある。観客の解釈も様々。幅のある作品ということですよね。謎めいた終わり方も含んで。
門石 
はい。どうなったんだろう、という見せ方で終わりました。
__ 
私個人はこの戯曲に対しては全く違う読み解き方をしていますけどね。
門石 
はい。それでいいんだと思います。
劇団ZTON 10th Anniversary 2nd「天狼ノ星」/dt>
公演時期:2017/7/29~31。会場:ABCホール。