完成について

__ 
ハクト役の、ここを見て欲しかったポイント、とかはありますか?
門石 
いや、観てほしいポイントとかはないんです。僕はあくまで作品の登場人物なので、どこ見るとかはそれこそ見てくださっている方が決めれば良いと思っています。「ここを見て欲しい」と言うのはおこがましい気がしていて。本当に苦手なのが、ダブルコールを頂いて皆さんの前でコメントをさせていただくときや、お見送りの時にご挨拶をさせて頂く時。それまでは作品の登場人物だったのが、ただの門石藤矢になってしまうので。いたたまれないと言うか・・・「すみません、こんなんで」となってしまうので。上手く喋れなくなってしまったんです。
__ 
謙虚ですね。
門石 
とんでもないです。台本があってはじめて言葉を発することが許されて、照明があって舞台があってそこにいることを許されている気がするので。それ以外はどうなんだろう、と思ってしまって。
__ 
逆に、難しかったのは?
門石 
毎公演いっぱいあるんですけど、今回は特にたくさん大変なことがありました。ぱっと思いつくのは為房さんとの立ち回りですね。やっぱりハクトとオルカは因縁があって、作中何度も戦うんですけど、為房さんの殺陣は凄く速くて!なんか、まだまだ自分は勉強が足りないなあ、と、精進しないといけないと思いました。
__ 
ええ?門石さんの殺陣はめちゃくちゃ早い方だと思いますけどね。
門石 
いえ。それと、ラストシーンの、すてらさん演じるレタルとの会話。河瀬さんが「この天狼、着地点がどこかはあんまり決めてないんだよね」とぽろっと・・・そこから大変な日々が始まったんですけど、すごく難しかったですね。レタルもレタルで、そのラストシーン前に本当に長いセリフをずっと喋って、積み上げてきたものがあるので。ハクトも色んな人から受け継いできたものがあるので。お芝居は常に難しいですけど。
__ 
最終的に突破できたから良かったじゃないですか?
門石 
突破できたんですかね。僕は、そうではないと自分に言い聞かせています。
__ 
それは何故?
門石 
なんと言うのかな・・・クラスで勉強できる子がいたとしても、「勉強できるんだね」という感想以上のものが出てこなくて。自分自身も、例えば完成させたレゴとかでも、1時間ぐらい後には全部壊してしまうんです。あの、完成が好みではないんです。完成されたものはすごく綺麗なんですけど、例えばドラマの最終話とかもすごく気になるんですけど、観たら終わってしまうから。だから観なくていいや、と。
__ 
ほお・・・
門石 
そんな時もあります。本当に好きなものは最後まで見ますけどね。
__ 
完成を避ける?
門石 
いや、目指すんですけど、形のある完成が、流動的ではなく停滞している完成は好きではないです。
__ 
停滞している完成は好きではない。
門石 
いや、何を言ってるんだという感じですけど。

質問 葛川 友理さんから 門石 藤矢さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、葛川友理さんから質問を頂いてきております。「最近一番楽しかったことを教えてください」。
門石 
楽しかったことかあ、何があるかな。うーん、悩みますね。花火大会で、たまたますごく良い場所で見ることができたんですよ。音が体を突き抜けると言うか、光がパッとなって、すぐに消えるのも、みじめったらしく残りながら消えていくのもいいし。人生で初めて花火を楽しみました。人が集まって見る花火の面白さに気付いて。もしかしたら自分は花火になりたいのかもしれないと思うぐらい、印象が変わりました。すごく楽しかったですね。

ZTONのカメレオン役者たち

__ 
話は変わりますが、ZTONの役者たちは異常に役所が安定しませんね。ポジションが全く違うというか。「ティル・ナ・ノーグ」の時門石さんはほぼ笑いを取りに行ってたじゃないですか。
門石 
それは河瀬さんの方針ですね。やっぱり、同じような役をいつも担当して、お客さんが「あ、あの人はいつもそのポジションだよね」と。喜ぶ人もいるだろうとは思うんですけど、違う役所を振ることで新しい一面をお客さんに楽しんでもらえたら、それはめちゃくちゃ嬉しいことなんですよ。僕も、新しい方向に進んでいきたいと思っています。覇道泰平でも、僕は最多幅の役をやっていると思います。
__ 
凄いですよね。裏切られる主役もやれば、人の情を持たない龍もやったし。でもそういう流れの中で、何となくのポジションが決まっている人もいますよね。久保内さんの中二病性とか。
門石 
あそこまでやったら武器になるんですよね。
__ 
すてらさんも客演ではコメディエンヌだしね。ZTONの役者は魅力的ですよね。個人的には出田英人さんの狂った演技はとても好きです。
門石 
エオヒドですね!大人気ですよね。
__ 
個人的には門石さんの悪役は凄く良い感じなんじゃないと思います。
門石 
どうなんですかね。でもいろんな役がやってみたいですね。楽しみです。
劇団ZTON vol.12「ティル・ナ・ノーグ ~太陽の系譜~」
公演時期:2017/7/29~31。会場:ABCホール。

ZTONとの出会い

__ 
演劇を始めたのはいつからですか?
門石 
18歳の頃に、河瀬さんとひょんな事で出会って。「お前、出るか?」とZTONの新人公演にぶちこまれて。そこから、演劇ってこういう世界なんだなあ、と。英人さんや菅さん、森さんがいました。アンサンブルで何度か声をかけていただいて。「月に叢雲、花に風」にも。その後天狼ノ星のアンサンブルに出て、その後に入団しました。
__ 
門石さんの今のテーマを教えてください。
門石 
今は勉強あるのみ、でしょうか。お芝居に対してですけど、自分とはまるでかけ離れたような人(経験だったり、性格だったり)のお芝居を間近で見たいですね。一挙手一投足を見たいです。為房さんが殺陣師として作品の立ち回りをつくるんですが、全然関係ない僕が真似をしてみたり。
__ 
真似か・・・いきなりぶっ込みますけど、これは単に何となく聞いてるだけなんですけど、いろんな見方から演技を分解する事って出来ると思います?こうやって至近距離での会話劇をしている時に、瞬きのタイミングであるとかため息の角度やら温度であるとか、生体としての全ての震えをまるでダンス作品のように構成してるじゃないですか、我々って。テキストとして会話劇を成り立たせるために。
門石 
はい・・・
__ 
という考え方もあれば、その人間の経験こそが全てで、つまり二人が背負ってきた全てのものが合流するこの会話劇はそれら全ての決着を付けるために存在しているから、予め運命が全ての演技を決めている、故に無理して表情をコントロールするよりも、役柄のサブテキストを汲み取り続けるべきである、みたいな考え方もある。
門石 
ああ・・・もちろん、そういう事を考えながらやっている時もあります。覇道泰平で龍を演じた時なんかは細かい表情に気をつけながら作っていたんですが、そうしてしまうと、どうしても、自分が考えたプランを自然に見せるためには、限りなく自然に魅せる技術が必要じゃないですか。私結局それは「限りなく自然に魅せられた演技」に過ぎないと僕は思っていて。僕は最近、何も考えずにやっています。もちろんその人に起こった出来事は前提として状況を把握していますが、舞台上に立って共演者と相対する時は何も考えないようにしています。
__ 
ああ、なるほど。
門石 
それだけ、口をついてセリフが出るように、練習はするんですけど。
__ 
ライヴでの感情のやり取りを大事にしているということですね。
門石 
そうですね。ミザンスでやってもいいんですけど。何と言うか、なんというか・・・パラパラマンガのページ数をどれだけ増やせるかという話になってくるんじゃないかと思います。でもそれは、人がいなくてもできる作業なんじゃないかなと思って。そっちの方がいい場合はそうしますけれども。

電車の窓の外の風景のような

__ 
いつか、どんな演技ができるようになりたいですか?
門石 
・・・。ごめんなさい。どんな演技か、と言うのは難しいですが、その作品ごとに自分ができる演技を駆使して、洗練されているのに自然で、だけどお芝居をしていないわけではなく、見世物だけれども、普段の電車に乗っている時に窓の外に流れているような風景と同じぐらい近くて自然な演技。お客さんに、門石藤矢という存在として、少しでも認めてもらえたら。でもまだまだです。頑張ります。すみません、すみません。
__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
門石 
分かりません。はい(笑う)。

スナフキンの描かれている青いカップ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
門石 
ええっ。すいません、ええっ。ありがとうございます。ありがとうございます。
__ 
もしよろしければ開けていただければ。
門石 
よいしょっ。うわ可愛い。
__ 
ムーミンのスナフキンのカップですね。
門石 
何でスナフキンなんですか?
__ 
男性はもれなく全員、スナフキンが大好きですからね。
門石 
かっこいいですよね。
__ 
折よくムーミンフェアがやっていたので。
門石 
震えるほど嬉しいです。日本酒入れて飲みます。

ヲサガリの卒業制作

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、葛川さんはどんな感じでしょうか。
葛川 
よろしくお願いします。最近は、ヲサガリの京都学生演劇祭作品に出演することになったので、その稽古を日々やっています。
__ 
葛川さん、久しぶりの役者ですよね。どんな手がかりがありますか?
葛川 
自分の事に限って言えば、人と会話をする役って楽しいな、と。作品の中で人と会話をするというのがあまりなかったので。出てきては一人だけ喋る役とか、ずっと黙っている役が多かったんですよね。それから、出演するのって舞台監督をやるのとは違うなあ、と改めて思いました。
__ 
セリフ、覚えられましたか?
葛川 
まだ、覚えているところと覚えていないところがあります。でもセリフを覚えるのは昔よりも早くなったと思います。責任感が変わったというところがあります。舞台監督になって外から見ていると、セリフを覚えていないと面白くはならない、と感じるようになりました。当たり前のことですけど。
__ 
まあ、失敗しますからね。
葛川 
というか、覚えていないと稽古ができないと言うことが分かったんですよね。
企画集団FRONTIER
企画集団FRONTIERとは
滋賀県湖北地区を中心に活動する、主に演劇やコント、その他ライブを企画したりして、メンバーのやりたいことをやりたいときにやる集団です。2006年3月、長浜北高校演劇部を母体とするメンバーで旗揚げ。それから演劇したり、コントしたりしながら、のらりくらりと。2016年で10年目を迎える。ありがとう!やったね!
近年では、姉川やえの「箱庭」や、葛川の他団体への兼任所属など、活動の幅を広げる。(公式サイトより)
十中連合
京都を中心に活動する【十中連合】です。 絵本のようなSF(少し不思議)空間で観た人の心に少し何かが残るお話を作っています。(公式Twitterより)
気持ちのいいチョップ
京都を中心に活動する小川晶弘と横山清正により公演を行う企画。定期的な活動の拠点を持たない二人が役者修行のため、年3・4回公演を行うことを目的とする。様々な脚本家・演出家を招き、バイプレイヤーとしての評価は高い二人が主役を張る。それに加え、いわゆるアテ書きの多い二人が古典や既成脚本を上演したり、自らの一人芝居を作・演出するなど様々な挑戦でスキルアップを目指す演目「1000本チョップ」など、自身のイメージにとらわれない上演を目指す。(公式サイトより)
京都学生演劇祭2017 Bブロック ヲサガリの卒業制作
公演時期:2017/8/22,24,26。会場:京都大学 吉田寮食堂(京都市左京区吉田寮近衛町69)。

夢と卒業

葛川 
今回の出演者のうち、最年少が24歳なんです。私も29歳で。
__ 
学生演劇祭、たぶん最高齢ですね。
葛川 
その人たちが何かから卒業することとか、それでも夢を持つこと、自分の足元を見つめ直すこと、などをテーマに創作しています。先に進むのか、進まないのか。企画会議の時に、うちらがやって意味のあることをしようという話になっていて。この学生演劇祭に乗っからせて、その上で大人じゃないとできないこと。それをちょっと意識してやっています。
__ 
今回やりたいことは何ですか?
葛川 
できるだけ実年齢の役をやること。大学生の役をやっても違和感があるので。みんな経歴がバラバラなので、そういうのが滲むような事が出来ればいいなと思っています。
__ 
夢の話になるんでしょうか。
葛川 
結果的に夢の話になるかどうかはわかりませんが、大きくはそういうことになると思います。
__ 
何を伝えたいですか?
葛川 
いくつになっても新しいことはできる、ような気がする。っていう。月並みですけど。30歳になっても新しい事は出来ると言うことは、50歳とか60歳になってもきっと始められるし、できるんですよ。若い子には、就職活動がうまくいかなくてもまあいいか、だったり、就職活動を始めてよう、だったり。

会社を旗揚げする

__ 
葛川さんが演劇を始めたのはいつからですか?
葛川 
厳密に言うと小学校の4年生から、英語の先生と演劇クラブを立ち上げようとなって。
__ 
意欲的ですね。
葛川 
クラスで英語劇としてやろう、と。当時の親友が漫画を描くのが好きで、脚本を書いてもらいました。昼休みに上演したり。私はずっと声楽とピアノをやっていたので。高校では演劇部に入って、その後は映像の専門学校に入りました。
__ 
今は、どんなお仕事をされていますか?
葛川 
3年前に「いろはにクリエイト」という株式会社を立ち上げました。これまでずっとKAIKAにお世話になっていたんです。ワークショップデザイナーの講座を受けたり、制作をしたりだとか。舞台監督でそれなりに色々なお仕事をいただくようになった時に、○○さん(お世話になった方)から「独立したらどうか」と言われて、いやあ無理っすよ、と思っていたんですが。
__ 
ああ・・・あの人、言いそうだなあ。
葛川 
「こうやってやると出来るよ」と教えていただいて。主に、演劇の人が食べていくチャンネルを増やす、みたいなことをやっています。主なタスクはワークショップやイベントの設営です。演劇はマルチタスクなので、現場では重宝されるんですよ。それと、会社を立ち上げてから気づいたんですが、法人の名義があると思ったより色々なことができるなと言う事に気づきました。様々な分野と産学連携という形の研究もできるようになるし。たとえば演劇のワークショップには学術的な裏付けが少ないという事が当面の課題で、それはいろんな方が進めているんですけど、私にもできることがあるんじゃないかな、と。
__ 
なるほど。

大事なこと

__ 
そのお仕事で大事なことは何ですか?
葛川 
大事なこと。利益を出すこと。あんまり出ていないんですけど。でも市場規模が広がらないと、絶対に私たちの生活は良くならない。私の頑張り次第で、私の周りの人にお渡しできるお金が変わってくるんですね。市場規模が、少しずつでも大きくならないとどうもならない。
__ 
そうですね。
葛川 
ウチ、なんでもやるんですよ。スタッフだけではなくて。そのうえで、利益を上げるためにはどうすれば良いのかを考えています。
__ 
利益を出すことが大事だと、いつ気づきましたか
葛川 
去年か、一昨年ぐらいです。自分で決算の書類を読んで、銀行にお金を借りたりしゃべったりするじゃないですか。最初は、私は一体何をやってるんだろうと思ってて。テクニカルスタッフでもない公演のために銀行で面談する、なんて。でも、いやいやこれは今私にしかできないことだ、数百万円のお金を借りてくるというのは今私にしかできない。書類にしたって、「今後見込まれる利益」を書かないと、お金を貸してくれないんですよね。「慈善事業ですよね」とか、「事業としては新規性があって面白いけれど、事業としては利益が見込めない」とか色々な所で言われて・・・ああこれは、ちゃんと利益を出さないといけない、と実感したって感じですね。
__ 
凄いな。銀行で利益の必要性を学ぶタイプの演劇人か。
葛川 
きっと、いっぱいいると思いますよ。

「それ」らしく言うこと、そして

__ 
大事なのは利益を出すこと。それに気づいてから何が変わりましたか?
葛川 
あんまり良い言い方じゃないんですけど、嘘がつけるようになりました。
__ 
ああ、良い言い方じゃないですね。
葛川 
実際は嘘じゃないんですけどね。「それらしく言う」ことについてすごく抵抗があったんですけど。これは、庭劇団ペニノの製作で仙台の企画に携わった時、あんまりで演劇に触れてこなかった人にたまたまエキストラで出ていただいたんですね。その方に「演劇ってやっぱり良いよね」「みんなで一つの作品を作るって良いよね」と言われた時、私はあんまり、うんと言えなくて。
__ 
ああ。
葛川 
「いいでしょ演劇」って、大人の先輩みたいに言えなかったんです。良さを訴えれるみたいな。嘘じゃないけど、「良く言う」ことが得意ではなくて。でもそれはやらないといけないということに気付いて。その原因とも向き合ったり。書類を書く時とかに、ここまでは書くべきだ、でもそこまでは書かなくてよい、とか。なんとなく自分で納得のできるラインがわかってきました。上手な言い方を考えて、わかりやすく、できるだけシンプルにしてキャッチーにして、出資してくださるかもしれない方に届けるというのが私の役割なのかな、と。
__ 
もちろんそういう悩みはあると思います。出資側にとってピタリと来るものとはなにか、なんて中々分からないですからね。でも、そのポイントは必ずあって、自分たちの中にある「それ」を探りあてて戦略を考えて表現する、という努力は絶対に叶うと思いますよ。
葛川 
そこに対して受け止められるようにはなったと思います。演出過多な文章でも、この枠組で・その目的で書かないといけないのならそうする。でも、これを読む人の目に演劇という言葉が入るというのが「してやったり」という所があります。コンサルタントとか、中小企業診断士とか、社長さんとか銀行員とか。採用できないけれども、何かを思って貰えれば。サブリミナルじゃないですけど、言葉が入っていけばいいなと思っています。学術的な裏付けがあればもっと良いですね。

暇になること

__ 
葛川さんの最近のテーマを教えてください。
葛川 
決めないこと。暇になること。
__ 
え。
葛川 
自分を暇にする事です。何か、積み重ねとか先の見通しとか、あった方が良いんですけど、なくてもいいやと思えてきて。来たもの・機会飛び付けるように準備をする。暇にすると言うのも、この半年で完全にテーマになりました。会社的にもそれは重要で、私が忙しいと何も出来なくなるんですね。「この話がしたいんですけど、いつ時間が取れますか?」「このシンポジウムに来られますか?」みたいな話が急に来たとして、フットワークを軽くできるには暇とお金が必要で(お金はまだないんですけど)とにかくスケジュールを空けるということを意識しています。
__ 
それはとても重要ですよね。暇にする、か。
葛川 
仕事と現場をパツパツに入れてしまうと、動けなくなる。あと、自分の職業を決めないということも意識し始めました。「何したいの?」と言われ続けても良いじゃないか、と。舞台監督としてのスケジュールがパンパンに詰まっていてもいいんですけど、それは私には無理そうだな、と。時間に対しての決裁権を持っているということに自覚的でないと、休みの日に寝て過ごす、みたいな事になる。死ぬまでに読める本は限られているし、やりたくないことをやっている時間はないんですよね。

質問 遠藤 僚之介さんから 葛川 友理/稲荷さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、遠藤僚之介さんから質問を頂いて来ております。「自分にとっての避難場所、はどこですか?」
葛川 
避難場所…。難しいですね。お風呂でしょうか。お湯につかってだらだら本を読むと余計なこと忘れられるので。

いままで

__ 
自分を変えた舞台。何かありますか?
葛川 
たぶんいくつかあって。TeamNACSの「LOOSER」。当時私は普通に大学に行こうと思ってたんですよ。演劇は高校で終わりにしようと思っていたんですけど、それを観て、映像の専門学校に入学しました。専門学校時代にG2プロデュースの「ツグノフの森」という作品を見て。ああ、これが私のやりたかった作品だ、これだったんだと思って。私は演出家になる可能性はあるけれども、作家になることはないんだなと思ったんです。それと、劇団ZTONのリバイバルラッシュの3作品にアンサンブルで出演することになって。それで京都に来ました。それから十中連合に出たり、そこから舞台監督をやるようになって。
__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
葛川 
きちんと学生すること。大学で単位を取るのって難しいですよね。ちゃんと勉強しないと。大学以外だと、今までにもまして私が何者であるかを決めないこと。舞台監督もやるし、演出もやるし、役者もやるし。基本的には舞台監督が稼ぎ頭ではあるんですけど、全部やれるのが私の強みなんだということがわかってきて。久しぶりに役者をやってみて、結構今までは手を抜いていた部分を自覚したんです。「舞台監督だし」みたいな。そういう言い訳を減らして、もう少し、丁寧に、けれど色々な所に手を出して。多方面に広がっていくようであればいいと思っています。

バスルームとWCのドアプレート

__ 
今日はですね、頂いたお礼にプレゼントを持って参りました。
葛川 
ありがとうございます。開けても良いでしょうか。
__ 
どうぞ。
葛川 
(開ける)え、何ですか。え、なぜこれを・・・。貼りますね。可愛い。

夏の夜

__ 
今日はどうぞよろしくお願いします。最近、遠藤さんはどんな感じでしょうか。
遠藤 
最近は色々と環境が変わって、若干気持ち的にバタバタしています。
__ 
ところで最近、とても暑いですね。どう過ごしていますか?
遠藤 
最近やっと扇風機を出しました。ハイベッドに寝ていて、高いところで寝ているから暑いんですよ。部屋の熱気が全部僕のところに来るので、暑くて。
__ 
そうするしかないですよね。寝苦しいですか?
遠藤 
寝苦しかったです。
__ 
扇風機に当たりすぎて死なないように気をつけてくださいね。
遠藤 
え、何ですかそれは。
__ 
そういう迷信が韓国ではあるらしいんですよ。
遠藤 
へぇ。

花のような

__ 
遠藤さんが先日、FOuR Dancers vol.69で上演した作品がとても良かったんですよ。今日は是非、あの作品についてお話が出来たら、と思っています。まずあの作品をどう呼んで良いのか分からないんですが・・・
遠藤 
ありがとうございます。タイトルはまだつけられていなくて。今回はどちらかというと「実験」みたいな作品なんです。
__ 
私が拝見したのは、体を黒く塗った男が客席の後ろから出てきて、ゆっくりとした動きで体をもたげながら舞台へと降りていくという光景でした。踊りなのか、そもそも人間なのかどうかわからないし、もちろん感情があるかどうかも分からない。でもその存在がなんだかちょっと簡単には手の触れられないもののような気がしていました。聖なる何某か、なのか?淡々と舞台の方に近づき、その舞台の方には煌々とした明かりが放射されていて、その手前で黒い者が体を揺らしたりしていたんです。これも本当にゆっくりと。回転したり、そして花が咲くような変容を見せたんです。その存在の中だけで濾過されていくものを感じさせていました。例えるなら花のような存在。普通は人間界には姿を現さないようなものがいま眼前に現れ出ている。
遠藤 
ありがとうございます。そう見て下さったんですね。
FOuR Dancers vol.69
公演時期:2017年6月1日。会場:UrBANGUILD。

色々な「問う」

__ 
まず伺いたいんですが、あの作品はどの様な成立があったのでしょうか。
遠藤 
まずアイデアとして、光の演出が先にあったんですよ。あの照明をまずは使った上でどうやって自分の肉体を使ったダンスに昇華するか。ですので、さっきおっしゃっていただいたようなダンスは後から出来たものなんですけど、とはいえ、もともと僕の体にあったものが出てきているんだと思います。本質と言うか、普段やっていることの積み重ねというか。
__ 
それはまさに、実験から静かに炙り出されたご自身の本質。そういう精神があったからなのか、なんだか批評したい気分にかられたんですよ。
遠藤 
以前FoURDANCERSに出演したのは益田さちさんが振り付けた作品で、それは益田さんの思いが現れたものだったのだと思うんです。それを表現するためにはどうすれば良いか、というクリエイションでした。今回は実験というスタンスでしたが、思いがけず自分自身の事が出てきた作品になったかもしれません。思い返せば自分自身というものが何で構成されているのか、このところのテーマだったので。裸になるのも、自分を他者の目の前にさらけ出すことによって他の人達には自分がどう見えるのかを問いたかったんです。

会話はスパゲッティのようにもつれる

__ 
全編、止まる所はあんまり無いのに、何故か静けさのようなものを感じていたということは、つまり私は、遠藤さんの中に「動かなさ」を見出しているのかもしれない。
遠藤 
「動かなさ」。
__ 
ネガティブな意味ではないですが、「遅さ」という属性なのかもしれません。
遠藤 
周りとの時間の差がある、ということなのかもしれません。作品を見ているお客さんの時間と、僕の中の時間の食い違いがあったからこそ、そういうことになったのかもしれません。正直、「みんな焦りすぎやろ」、みたいなことは思っています。「なんでそんなに焦んの」って。
__ 
アインシュタインの相対性理論みたいですね。その一方で、量子論における量子もつれの様な現象もありますよね。
遠藤 
ペアの量子の片っぽに変化があったら、量子間の距離に関わらず、もう片方にも同時に変化があるという。
__ 
この間そういう動画を見たんですよ。この世はすべて仮想現実であるとか。きっとタネはあると思うんですけどね。
遠藤 
あくまでまだ、僕たちの常識が至っていないと言うだけで、現象の全てを言葉で説明できないとあかんのかなー、と思いますけどね。そのままそういうものとして受け入れることはできないのかなー、と。いつも簡単な数式で全てを捨象すべきだと思っているようなんですが、そこに違和感があって。それはゴールじゃないんじゃないかなと。人間の頭では理解の及ばない宇宙がある、という発想はないのかなと。
__ 
科学者としては解き明かさないといけない使命感はあると思います。自然に対し、理屈を説明したがるんですね。「超自然的な存在」という割り切り方が我慢できないのかもしれない。ただ、芸術をやっている人間からすれば、そういう割り切り方や定義をしてでも向こう側に行きたいんですよ。少なくとも私はそうです。解き明かせないけれども、文系の究極の一つはそこだ。
遠藤 
芸術は科学のように厳密なルールなどは一旦忘れて、あるアイデアをたったいま思いついたみたいな形でポンと投げかけると、案外本質に近いところに当たったりして。そういうところが面白い。
__ 
そこに至るまでの道筋は楽じゃないですけどね。ちょっと話を寄せますけど、その「ポンと出たのがウケた」って面白い現象ですよね。作り手と受け手のバイオリズムが一致した瞬間なんですよ。だが何と、一気に何百人の観客と噛み合う瞬間がある。頑張れば究明出来るかもしれませんが、やっぱり、超自然的な存在がいるような気がしてきますよね。
遠藤 
バタフライ理論というのか、どこか知らない場所で起こった事件が今の僕らに影響を与えているのかもしれない。あまり詳しくないんですが、そういう理解で合ってますか?
__ 
多分大丈夫です。事象A⇒事象Bという流れがあって、要するに重要なのは間の「⇒」がただただ正当である、という事だけです。大皿のショートパスタのように山積しているからカオティックに見えるだけだと思いますよ。
遠藤 
普段の生活の中で、結構「縁」の様なものを感じながら生きているんですよね。ちょっと宗教っぽくなっちゃいますけど、大きな波の上で生かされているのかもしれない、そういう風に考えることがあるんです。だから、どんな波が来てもこの身体に受け容れて乗れるように普段から準備はしているつもりなんです。なるべくシンプルにして、自分を空っぽにして。こないだの作品で言ったら、あるひとつのアイデアの上に自分がどう乗れるか、そこから果たして何が見えてくるかを検証してみたかったんだと思います。

分断と最終的な合一、そして、侵略者

遠藤 
作り方としては逆算だったんですよ。当初頭の中にあったのは、トルソーに見立てた自分の体が機材のライトに照らされている、というのを最後に見せたくて。そうすると、光の部分と影の部分で自分の体を分割することができるなあ、と思って。そこから色を塗って見ようと思って。すると、光が当たっていない時でも光に照らされている体を引き継げるわけですよ。時間軸的に行ったら逆で、白い身体で黒い顔なので。でも最後に、ライトが到着して、そういうことか、と思って貰えれば。
__ 
分断性と、最終的な合一。
遠藤 
照明や自分の身体や音など、作品を構成する要素をバラバラに見せていく。何らかの意味は僕の身体が持っている。
__ 
トルソー。無生物が分断され、明かりによって同一性を得る。
遠藤 
ちょっと話は戻るんですけど、「植物に見えた」という感想は、自分のある部分が立ち現れたという事かもしれなくて。植物って、自己主張や自我の無さを宿命的に持っていると思っていて。花瓶にさせばインテリアになるし。首を切ったところであまり可哀想だと思わないのは、そこに自我を感じさせないから。
__ 
まあ人間はそう思わないですね。人によりますが。
遠藤 
植物の立ち姿というものは、自分の理想と言うか、目標としているものに少し近いのかなと思っていて。見る人がエネルギーを勝手に感じ取る存在。空っぽなんですけどエネルギーに満ちている。そういう状態が素敵だなと思っていて。動物は多分、自分の中にエネルギーを持って発信していっているイメージで(すごく主観的ですけど)、植物は環境のエネルギーで生きているイメージです。自分の体もそういう風に持っていきたい、と思っています。あくまで動物である僕がそれを目指すというのは難しいことなのかもしれませんが。
__ 
攻撃性のある植物もありますけどね。毒キノコとか。しかも、一見は危険そうに見えない種もあるし。しかし有毒無毒関係なく、植物がずっと受け身の存在であるかというとそれだけではなくて、彼らは地歩侵略を旨としている。私の部屋のベランダも、なんか柵の外から植物がじわじわ侵入しようとしてきてて。
遠藤 
ああ・・・
__ 
あいつらは言っても聞かないじゃないですか。
遠藤 
動物とかだったらシッシッてすれば逃げますからね。
__ 
静かで、居座るように存在していて、なにより意思が通じない。
遠藤 
脅威ですよね。しばらく経ったらいなくなる、みたいなこともない。生きてる時間軸が違うのかなと思いますよね。
__ 
環境と合一して攻めてくる、意思のないもの。