屋上の撮影と三文オペラの話

__ 
チラシの写真が興味深いですね。これは目を隠してるんですか?隠れちゃった、ではなくて?
益山 
隠してます。狙い通りです。本当はこれ別のプランを立ててたんですよ。宇宙の絵を書いた背景画の前で撮影するというプランだったんですけどしっくりいかなくて。で、たまたま屋上にこういう、物干し竿みたいなバーがあって。「その前で目線を隠してポーズ取ってみて」って言ったらすごく良くて。これ、一発目なんですよ。
新藤 
試し撮りですそれ。
__ 
えっ、そうなんですか!
新藤 
この後バランスを調整して並び順を変えてみたり、ボスを入れて撮影してみても、微妙にバランスが悪かったりとか固くなったりとかして。試し撮りの一発目をそのまま使ってます。
益山 
でもこの写真すごく評判が良くて。何か不穏なパーティー感がある。
__ 
そうですね。見事に目が隠れてるから。
益山 
全く加工してないです。
__ 
奇跡ですね。
益山 
奇跡の一枚ですね。
__ 
めっちゃ胡散臭い奴が何人かいますね。
新藤 
これはもう全員、素でやってるポーズですから。
__ 
子供鉅人メンバーのポテンシャルは素晴らしいですね。アンサンブルの時も全力でやる子供鉅人。
益山 
うちは何か、存在感で勝負してるところがあって。うまい役者は他にたくさんいるんですけど私が芝居を観ていてやっぱり重視しているのはその人にしかできない表現だったり、その人の唯一無二な感じが溢れ出てるのが好きなんで。そういうタイプのメンバーが多いです。
__ 
この人をずっと見てみたい、逆にもう見たくないという瞬間もある。三文オペラの億さんはまさにそんな感じでしたね。
益山 
三文オペラ楽しかったですね。
新藤 
やってるほうも楽しかったです。
__ 
本当に泊まってたんですか、吉田寮に。
益山 
ずっといました。ひと月近く住んでました。
新藤 
その前も結構何回か往復してましたけどね。
益山 
あそこに住まなきゃ分かんないことがたくさんあって。ちょけて「いい空間じゃないですかー」でやっちゃダメな場所だと思うんです。そこにどっぷり浸かってやらないと負ける、表面だけこちょこちょやっても駄目だと思って。最初はちょっとセットを建てようと思ってたんですけど、途中でも演出方法を変えて、吉田寮にいっぱいあるソファとかを借りたら芝居が開けました。吉田寮そのままでいいじゃん、と。

__ 
改めて「不発する惑星」どんな作品にしたいですか。
益山 
演劇格闘技みたいな。見てるほうも思わず手に汗握る、人格対人格。全然違うことやってたらすみません。
__ 
人格と人格が対決する時に発生する嵐が見たいですね。
益山 
最近の本公演はちょっとしっとりした作品が多かったと思うんですけど、ちょっと今回はガツンと殴りに行く作品ですので、劇場に殴られに来て下さい。

凧とでんでん太鼓

__ 
今日はですね、お話を伺いたお礼にプレゼントを持って参りました。
益山 
気になっておりました。
新藤 
あ、その大きいのそういうことだったんですか。何かお祝いの帰りだったのかと・・・
__ 
どうぞ。
益山 
ありがとうございます(開ける)凧?あ、ホントに凧だ・・・
__ 
今年も残すところあと4カ月。来年の干支の「子」ですね。今回のチラシは屋上で撮った写真でしたから、まあそこで揚げて頂ければ。
益山 
凄いな。
__ 
あと、新藤さんにも持ってきてます。どうぞ。
新藤 
えっ(開ける)あ、ドラマーだからですか。
__ 
でんでん太鼓です。
新藤 
明日、吉田寮のライブに出るのでピッタリです。
益山 
これ、飛ばせるのかな。凧揚げ凄い好きなんですよ。ウチのおじいちゃんがですね、凄く凧を作るのが得意で。正月に飛ばさせていただきます。


これから

__ 
今後、どんな意気込みでいかれますか。
山中 
今を楽しむということを一番に生きていきたいですね。今後も変わらず。

拡大鏡

__ 
今日はお話を伺いたお礼にプレゼントを持って参りました。
山中 
ありがとうございます。(開ける)おお。今喋った内容にちょうど合いそうな。拡大鏡ね!持ってなかったので逆に丁度いいです。
__ 
5倍になるそうです。
山中 
すごい。めっちゃでかい。
__ 
最前列のお客さんには細かいところまで見えるので、もしかしたら有効なんじゃないかと。
山中 
顔にラインを引いたりすることもあるので、そういう時に使おうと思います。

質問 図書菅さんから 山中 麻里絵さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた劇団ZTONの図書菅さんから質問をいただいてきております。「右手と左手ならどっちが好きですか」。
山中 
(吹く)それはどういう質問なんですか?
__ 
図書菅さんは右の方が好きらしいです。左を選んで怪我をしがちだから右の方が好きみたいな。
山中 
私は多分左ですね。右は便利で使う手だからすごく大事なんですけど、だからこそシンプルでいたい。だから装飾は左手に付けています。仕事柄もあるので。結果的にきれいになるのが左手です。
__ 
右手は頼りにしていて、左手はそのまま美人になってくれみたいな。
山中 
そうです。

メイクとそれぞれの反応

__ 
最近山中さんがtwitterでやっている #露出になれようキャンペーン 、いいと思います。
山中 
ありがとうございます。ちょっとSNSをする時間がなくて、疎かになってしまいがちなんですが。
__ 
山中さんの写真、好きですよ。個人的にはナチュラルメイク系が好きです。
山中 
ありがとうございます。意外と好評です。今バチバチのメイクはそこまで主流ではないですし。ただTPOと言うか、ユニバに行ったりする時は気合の入ったメイクをするので。服装に合ったメイクというのも必要なんですね。
__ 
シチュエーションにあったメイクのほうがいいんですね。
山中 
メイクが上手くいった投稿は、女の子の方から「やり方を教えてください」という反応が来ますね。シンプルなメイクだと、男性から好印象な反応をいただけることが多いです。
__ 
そもそもなぜ始めることにしたんでしょうか。
山中 
大阪で演劇をやるようになって、京都の演劇とやっぱりちょっと色々違うことが分かったんですね。京都の演劇は作品を重要視するんですが、大阪では誰が出るとかビジュアルがすごく重要視されていて。で、伊藤えん魔さんの作品に出た時に「お前はもっと人に見られる事をしなさい、前に出ないといけないのが役者なのに全然控えめだ」と言われて。そもそもは私、人前に出たり撮影されたりというのが苦手だったんですよ。
__ 
そうなんですか!
山中 
メイクとかも全然興味がなくて。でも舞台に立っている以上はそこにいる責任があるな、と。見られるのに耐え得る「商品」である必要があると思って、メイクや立ち振舞いの勉強を始めました。自撮りの技術をアップして、Instagramを始めて。最近では認めてくれる人も増えたなという実感も出てきました。そうやって演劇に興味を持ってくれたり私個人に興味を持ってくれたりという人が増えてくれて、嬉しいです。今の時代、そういう風にSNSに自分の写真をアップするというのがそんなに変わったことじゃないですしね。

フィリング論

__ 
どんな俳優像がご自身の理想ですか?
山中 
一つの事に特化していないバイプレイヤーですね。言ってみればカメレオン俳優みたいな。
__ 
どんな環境でも入る事が出来て、そこで成果を出すことができる人。成果を出すということはつまり、求められるものが何かということを把握して柔軟に実行できる人。
山中 
極端に言ったら顔が覚えられないぐらい作品に溶け込んでしまえる人、あの役とこの役が同じ人なんて信じられない、ぐらいの。でもその作品での役割はしっかりこなして、印象も残る。そんなかっこいい役者になりたいですね。
__ 
ケーキで言うフィリングの部分かもしれませんね。そう考えると「THE20回転の恋」は、みんなが個であり、そしてフィリングでもあった。
山中 
フィリングがしっかりしていないとたちどころに崩れてしまうケーキだったなと思います。すごく大事だったんじゃないかな。練習がすごく大事だったなと。
__ 
表情をそろえないといけないですもんね。
山中 
同じ方向を向いていないといけないし、技術的な面でも障害がたくさんあって、全く同じには絶対できないから、じゃあどうしたら同じに見えるかみたいなことをすごく意識して練習していました。

京造での思い出

__ 
京都造形芸術大学に入学されたのはどのような理由があったのでしょうか。
山中 
映画が好きで映画学科に入りました。家族が映画好きで。高校で進路をいろいろ考えた時に、あれもこれもやりたい!ってなったんですけど、もし役者になったら全部できるんじゃないかと思って。
__ 
色々な人生をなぞることができるから。
山中 
オープンキャンパスで一番面白そうだと思ったので、京都造形芸術大学の映画学科に入りました。
__ 
印象に残った授業はありますか。
山中 
いっぱいあります。そこで色々な事を学びましたし、これが今の私の力になっていると感じることがとても多いので。実技も楽しかったんですけど、座学も楽しかったです。映像だけじゃなくて舞台の方の授業も取っていて、3年の時は舞台の授業ばっかり取っていて、卒業制作はどんな舞台を作るんですかと聞かれて「私映画学科やねん」って言ったらみんなにびっくりされるぐらい入り浸っていました。
__ 
溶け込みましたね。
山中 
最初は伊藤キムさんの授業に興味があって、そこから舞台の座学も取っていたりしたらいついちゃって。映画学科の方での思い出と言えば1年生の時に北白川派の「カミハテ商店」に参加したことです。少ししか登場しないんですけど、子供を連れて自殺する若い母親の役でした。
__ 
どんなお話だったんですか。
山中 
自殺の名所でパンと牛乳だけを売っている商店があって。その店主を高橋惠子さんが演じられてて、そこに訪れる客は自殺に向かう人だけで、でも止めないんですね。ある日子供が一人で来て。母親が子供を置いて自殺しようとしてたので、さすがに警察を呼んだんですね。でも後日、母親が子供と一緒にビルから飛び降りたと聞いてしまう。止めてしまったから子供も死なせてしまったという葛藤がある。私は、そのきっかけになる役でした。
__ 
いい役だったんですね。
山中 
役に入り過ぎて、出演前日私の様子がおかしかったみたいで。本当に自殺するんじゃないかと思われてたらしく、先輩たちは声をかけられなかったそうで。その後元気になって戻ってきたらホンマに良かったって言われて。ほとんど映像作品一本目だったので、ちゃんとやらないとと思いつめ過ぎました。当時は迷惑をかけたなと、反省してます。

こころのクラスタ

山中 
内容面はいかがでしたか。
__ 
心の中で別の自分と話すというのは実は割とやってるほうだと思うんですけど、男子にして四人というのは多いのかなと。
山中 
多いんですか!? やっぱり男性の方がそういうの少ないんですかね。
__ 
女性は多いんですか?
山中 
女性が皆そうかはちょっとわからないですけど、私は出来ますし、してますね。色々な場面での自分、仕事している時の自分や友達といる時の自分、家族といるときの自分とか、それらの自分に切り替えるというのが自然と行われてる気がします。「THE20回転の恋」では、現実パートをやる栞と、頭の中のパートをやる栞ははっきりと分かれていて。例えば8番の栞は照と一回も喋ったことがない、とか。
__ 
そうなんですね。
山中 
2ヶ月稽古をしてきた私たちからすると、内なる栞との切り替えは女子の中では既に行われてるんじゃないかと。私がいた17~20番の四人はそんなに台詞は多くなかったんですけど、内なる栞が出てきた時には必ずそばにいて何かしているんです。もしかしたら、私たちは「幼い栞」なのではないかと。「お家の中でゴロゴロしよう」と言っている栞と一緒にゴロゴロしたり、風邪を引いて一緒にカタカタする。言ってみれば甘えなんですよね、成長してこなかった部分がこの四人なんじゃない?と。「メガネの方が似合ってましたよ」と言われた時に私たち幼い栞が出てきて壁になったのは、他の栞たちは打たれ弱いから。幼いが故に強さがある。それがどこまで意図通りかわからないですけど、私たちはそう考えていました。
__ 
確かに、心の流れと言う可視化しにくいものを役者で表現するのは有効で面白い試みだったと思います。一人の中にある様々な自分を複数の役者で表現するという、とても斬新な作品でしたね。

ラビットハートプロジェクト「THE20回転の恋」

__ 
ラビットハートプロジェクトの「THE20回転の恋」が終わりましたね。大変面白かったです。
山中 
ご来場ありがとうございます。すごく客席から見たい作品でした。舞台上でやっていると俯瞰では全く見えないんですよ、大人数で作ってるから。演出助手の真壁さんやスペシャルアドバイザーの大江さんにビデオをたくさん撮ってもらって、それをみんなで見てここが合ってないとか揃ってないとか話して作っていきました。そうやって作ったものが劇場でどう見えるか、気になってましたね。
__ 
一人だけ乱れるとそこだけ目立ってしまうとかありますもんね。
山中 
あっている人達よりも、ずれている人の方が気になるから、ここから修正していこうという形で練習していました。
__ 
集団が有利でもあり足かせでもあった。劇団子供鉅人のアンサンブルの演出でも、一切手加減をせずに本気でやれという指示があるそうですよ。
山中 
難しいんですけど、20人もいたら一緒に揃うことはないんですよね。それぞれ癖とかが少しずつ違うので。今回の作品に関して言えば、整頓されているものをあえてずらすというのはリスクがあったんです。まずは揃えて成立することを第一にして、でもそこに個性も何となく見えてくる、そういう按配が面白い作品だったんじゃないかなと思います。
__ 
一人一人全員衣装はほぼ同じでしたね。眼鏡もそうだったし。でも髪型はマチマチでした。
山中 
スカート丈も一緒にしていました。なのに、人によって見え方が違うのが面白いと、衣装の植田さんがおっしゃってました。
__ 
同じ人を演じているのに、それぞれの個性が確実にあったんですね。一人二役ならぬ、二十人一役。さすがにそれは見たことがないですね。しかもタイミングや突発的な事情によってちょっとずつ演技の出来って違う。「THE20回転の恋」は、出演者が非常に多かったのにも関わらず、破綻が目立たなかった。ということは逆に言うと、任意の数シーンを例に挙げて、それが何を基準に舞台上の出演者揃えていたのかを考えていくと、作品の実在がどこにあるのかを示すヒントになるんじゃないかと思うんですね。
ラビットハートプロジェクト「THE20 回転の恋」
脚本・演出:片岡百萬両
出演:浅田ゆりえ、Anne、おがわひろと、稲田紗恵、飯伏裕理、かいよっくん、川野楓、神山花帆、澤奈津樹、世良和恵、玉井優樹、難波遥、野村梨絵、平川光江、藤田七海、南愛美、三波よしこ、村井友美、山中麻里絵、山野真奈美、山本ドリル、結木愛、吉岡莉来、和田遥奈
公演時期:2019/7/26~28
会場:in→dependent theatre 2nd

頭も体も使う稽古

__ 
まず、稽古はどんな感じでしたか。
山中 
本当にもう何度も同じシーンを繰り返して繰り返して・・・でした。例えば台風のシーンは、ほとんど全ての稽古で練習していました。本番期間でも、「一回台風やらしてください!」って、スタッフさんに頼んで稽古をしました。指示されてとかではなく私達の方から。めっちゃ大変で、形になるまでが時間がかかりました。片岡さんが面白いものを突き詰めるタイプの方で、面白いアイデアを次々と出してくださるんですが、ようやく自分の体に染み付いてきたものの上に新しい事が来て混乱しましたね。てんやわんやでした。
__ 
大変でしたね。
山中 
頭も体も使うみたいな稽古場でした。
__ 
沢山人がいると、舞台上の地方によってタイミングが違っていたりするんでしょうね。
山中 
そういうこともありました。大変でしたね。
__ 
これまでの経験が生きたりはしましたか。
山中 
伊藤えん魔さんの作品では音キッカケが多かったので、それが少し。あと私が所属していた頃の劇団しようよでは群唱で一つのシーンを作るのも少しやっていたので、雰囲気はちょっと分かっていたかなという感じです。
__ 
20人もいれば自分の演技だけに集中できるというわけではないですよね。かなり他の人たちの演技も覚えていかないと。
山中 
そうですね。一人でできる部分はほぼゼロでした。私だけではなくてどの人も。だから自主練できないという。

暑い日

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。山中麻里絵さんにお話をうかがいます。最近、山中さんはどんな感じでしょうか。
山中 
先週、ラビットハートプロジェクトが無事終わりまして、9月にステージタイガーさんの公演『ファイアフライ』があり、11月にはRTCプロジェクトさんの本番があるので、その稽古をしています。
__ 
楽しみです。お忙しいんですね。
山中 
そうですね、ありがたいことに。
__ 
頑張ってください。今日は暑いですね。夏と冬、どっちが好きですか?
山中 
難しいですけど冬ですかね。寒さの方が耐えられると思ってます。服を着ればいいので。夏はエアコンで喉を壊したり熱中症も怖いですから。
ステージタイガー #010『ファイアフライ』

作・演出 虎本剛

【日時】
2019年9月
13日(金) 19:00~
14日(土) 14:00~
※ 全2ステージ
※ 開場は開演の45分前、受付開始は60分前 

【会場】
高槻現代劇場 中ホール

山中麻里絵さん専用予約フォーム


RTC project 第2回公演「ブレイクワールド」
日時:
2019年
10/31(木)19時~(邂)
11/1(金)19時~(侵)
2(土)13時~ (侵)/18時~(邂)
3(日)12時~ (邂)/16時~(侵)
邂逅編…(邂)侵攻編…(侵)

会場:
一心寺シアター倶楽

料金:
一般 \3,500
当日 \3,800
両編通し \6,000
学割 \3,000
小学生 \2,000
劇団HP:
rtc-p.com

ご予約: http://ticket.corich.jp/apply/101690/030/

なくてはならないもの

__ 
この公演になくてはならないものは何でしたか。
図書 
参加してくださった皆様。当たり前といえば当たり前なんですけど、ZTONのやりたいお芝居をやろうと思った時に、やっぱり絶対的に出ていただきたい人が出演して下さったのがすごくありがたかったです。そしてもう一つ、ずっと待っていてくださったお客様。
__ 
はい。
図書 
うちの共同代表たちとも話して。一体私たちに何が出せるだろう、といったら、やっぱり作品だったんですよ。それが一番の伝え方だった。何より僕らがやりたいという思いがあって。でもそれはお客さんが見てくれないと意味がない。そういう意味で、待ってて下さったお客様がいたから僕らも芝居が作れたし、次につなげることもできたんです。
__ 
図書菅さんが久保内さんと演じた「勇」。いじめっ子だった幼少期から主人公を励まし、己も成長するという、人間的な成長を描いていましたね。
図書 
久保内さんとだいぶ話をしていました。もう一方が出ているシーンをガン見する勢いで見ていました。
__ 
どんな話をしていましたか?
図書 
台本には書かれていない部分についてですね。もちろんある程度答えは出ているんですが、それぞれが考えていることだったりをすりあわせて、コンセンサスをとると言う。例えば勇が大人になるまでに何をしていたのか、とか。鬼と子供たちの事を覗いている時にどんな気分だったのかを考えたり。
__ 
そういう事の積み重ねがあって、いじめっ子の内の一人から成長していった。
図書 
大人になったらその過去のことがそれはそれで苦しい。今回の登場人物はみんな人間らしかったと思います。その中でも刺さるものがあったら嬉しいな。
__ 
マジで村八分にされていた子。あの子だけ身なりが良かったのがなんかの設定なんだろうなと思いましたね。
図書 
異物感。そこはご想像にお任せするというところではあるんですけど。

殺陣オペとはなにか

__ 
殺陣オペについて。図書菅氏の殺陣オペのブランド力について。
図書 
ブランド力・・・果たしてあるんでしょうか。
__ 
役者をやっている菅さんが、わざわざ音響ブースに行ってオペするんですよね?
図書 
あ、今回は久保内さんもやってたんですよ。
__ 
そうなんですね。二人で交代して音響ブースに登ってたんですか。
図書 
はい、「出来ればブースで叩きたい」と無理を言いまして。そもそも殺陣オペを始めたきっかけが、新人公演の時に「じゃあ殺陣オペをやってみて」と云われまして。いざやってみたら、意外といけんじゃんと。そこから新人公演とかは毎回僕がやらせてもらっていました。
__ 
音がぴったりですよね。
図書 
ありがたいことに、それはよく言って頂けます。殺陣作りの時にニュアンスや呼吸やクセを見て、音を選んで。一緒に刀を振っている気持ちで叩いています。
__ 
呼吸やクセを把握する。流れを抑える。そういう事を全て自分の体に落とし込んだ上で、リアルタイムに音を入れる事が出来る。
図書 
(殺陣で)たまに、これが斬っているのか切られているのかわからない、そういう瞬間があると思うんですけど、それを助けるために音が必要なのかなと思います。オペをする人がそこを認識していないといけない。なるべく稽古場にいて、音のニュアンス確認を殺陣師と演者に取るようにしています。稽古の段階でなるべく音を入れて、指摘を受けて修正していって。もっと言うと、殺陣付けの段階で意識していると「何故戦っているんだろう」とか、物語の流れが認識できてわかりやすいです。
__ 
「何故戦っているんだろう」。
図書 
殺陣って、道具として優秀だなと思っていて。力関係を表す道具。(お芝居は)いっぱい人が出てきて各登場人物と設定を覚えながら観るのって、すごくエネルギーのいることだと思うんです。そんな中で殺陣というのは道具として役立つのかなと思います。立ち回りで強さのランク付けができるんですよ。
__ 
それを細かく分かりやすくお客さんに伝えやすいように表現する時に、彼らの肉体のリアルさを音入れの面からも伝えるのが殺陣オペなのかなと。その時、戦っている二人が肉体と精神を総動員して戦っている様を把握しないと音が出せない。もしかしたら、そういう「理解」「把握」が伝わった時、それはもうアートだし表現ですよね。殺陣が道具として成立し、そこからアートに通じる。
図書 
技術的な話をするんだったら、アウトラインを覚えた上で実際に叩いてみて、刀を振るタイミングがいつもと違ったとしても対応しないといけない。でもそんなの当たり前なんですよね。みんなが同じだったら、極端な話ロボットにやらせても構わない。その場のノリ?というか、一緒になって殺陣を作るんですよ。そういうことをしないとあまり意味がないんですよ。
__ 
機械的な音を出すんだったら何らかのテクノロジーを小道具に仕込めば済む話ですからね。
図書 
これは人に言われたことなんですけど、「音響ブースで叩いている意味は何か。」そういう意味を見出すためにやっていこう、と。
__ 
挑戦してますよね。本番の時ももちろん、一緒に殺陣を作る。意味を見出していく。
図書 
殺陣オペは次が最後かもしれないし、ふわっと振られるかもしれない。それも楽しいですけどね。

劇団ZTON 御伽草子「一寸先の影法師」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い致します。劇団ZTONの図書菅さんにお話を伺います。最近、図書菅さんはどんな感じでしょうか。
図書 
よろしくお願いいたします。ZTONの前回公演「一寸先の影法師」が終わって、一息つきたいところなんですが、ぼちぼち本公演の準備が始まっています。稽古自体は9月からなんですけど。
__ 
ありがとうございます。まずは「一寸先の影法師」、大変面白かったです。演劇的な冒険に溢れた作品だったと思います。
図書 
ありがとうございます。稽古している時は冒険という意識はなかったんですけど、最終的にはそういう形になったのかなと思います。楽しんでやれたなぁと。
__ 
稽古場は楽しかったですか。
図書 
楽しかったです。(ZTONでは)普段とは違い、人間的な役をさせてもらいました。人間らしい人間ですね。今までの役が嫌いだっていうわけじゃないんですけど、そういう意味では初めてのアプローチをさせてもらいました。
__ 
今まで図書菅さんは人外役が多かったですからね。今回の役どころでは、最初はいじめっ子の一人として出てきながら、段々と人間としての厚みを帯びていくみたいな。ポジションが移っていくんですよね。
図書 
今回一番強く意識したのは、小さい頃の嫌な思い出、後ろ暗い感情。これを原動力としてやっていました。いじめっ子って、感情に任せてやってはいけないことをやってしまう。「これはいじめだ」という意識はない、けれども無視したり意味も分からず言ってはいけない言葉を囃し立てたり。今考えると胸が痛くなる、そういう感情です。最終的には久保内さんにパスをする、そういう流れができればいいなと。周りの方の力がなければできないことだったと思います。
__ 
素晴らしい。そのいじめっ子の精神的な成長がフォーカスされると思いきや、実はそこに・・・というトリック。
図書 
そういう仕掛けの部分でも、もう一度見たいとおっしゃってくださるお客さんも結構いて。嬉しいです。
__ 
為房さん、こんなことを考えていたんですね。
劇団ZTON
京都の劇団。
劇団ZTON 御伽草子「一寸先の影法師」
公演時期:2019/7/12~14。会場:人間座スタジオ。

これから

__ 
「一寸先の影法師」ですごく感心したシーンがあったんですよ。現在と過去の法師が交錯するシーン。門石藤矢さんと高瀬川すてらさんを前に、後ろにアパ太郎さんがシンクロして、そこにノイズとサイドライトが空間をゆがめていくという。
図書 
すごく色々マッチングした、繊細なシーンでしたね。フラッシュバックして、音も揺さぶってきて。僕はあれを上から見ていました。僕は藤矢くんの演技が昔から好きで、今回特に思ったのが「いい意味で生きてるのがつらそうだ」と。呼吸するだけで居づらいというのがすごく伝わってきて胸が締め付けられていました。僕はそういう風にはできないので。僕も何かしらそういう風に演技で訴えられたらいいなと思っています。
__ 
図書菅さんにしかできない演技の領域もありますけどね。
図書 
いやいや。
__ 
まあZTONはカメレオン集団ですから、いろんなことが期待できますよね。そう、藤矢さん演じる子供の頃の法師が、後ろから子供を突き飛ばすシーン。
図書 
子供の衝動的な行動という風に捉えるとすごくしっくりくるんじゃないかと思います。大人だから冷静な判断はできるけれども。それこそ、僕が演じた子供時代の「勇」だって、「もうどうなっても知らないからな」と言いつつとんでもない行動をしてしまう。
__ 
色々な矛盾が人間の中には潜んでいるという作品だったと思います。帰ってきた人が違うから当然ですが、ZTONの新しい歴史が始まったと言えるのではないでしょうか。
図書 
作品を好きになっていっていただければ、嬉しいですねやっぱり。ひとつひとつ丁寧に見ていただいて、心の中に残していただければ嬉しいです。

質問 斉藤ひかりさんから 図書菅さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた方から質問をいただいてきております。斉藤ひかりさんからです。「似合わないとわかっていても着てみたい服はありますか」?
図書 
蛍光色のオレンジ色の服を着てみたいです。悪目立ちしてしまうような気がする。
__ 
似合うと思いますよ。

ここから先へ

__ 
印象って直感に属するものだと思うんですけど、真面目さをそのまま素直に受け止める事は出来ると思うんですよ。公演を見て直感的に分かることもある。「一寸先の影法師」をみて、ZTONは大丈夫だと思いました。
図書 
僕個人の思いです。今まで僕たちを引っ張ってくれた人がいなくなって困りましたね。今でもはっきりした答えが全部に対して出ているわけではありません。とりあえず一つ一つ重ねて行って、胸を張れる作品を皆さんにお見せできるように頑張るだけです。
__ 
ええ。
図書 
これからどんなZTONを作るか。何をもって自劇団とするか。すごく難しい問題で。劇団員の誰か一人がいなくなったらZTONとは言えなくなってしまう、と考える人もいると思うんですよね。殺陣がなくなってもZTONじゃない、と言う人もいると思う。それぞれ、持ってくださっているイメージが違う。
__ 
一方で、ZTONの魅力は殺陣だけじゃない。人間の描写を綿密に重ねて行って、全員が立ち回りをしないという選択が出来るなら、その作品は私は見てみたいです。
図書 
僕も見たいです。ここから先、何を以て自分達とするか。それはこれからずっと考えていかないといけないと思います。
__ 
ええ。前の自分に戻ろうとしないでください。
図書 
そうそう、前に進んでいかないと。

劇団ZTON vol.14「ソラノ国ウミノ国」

__ 
次は「ソラノ国ウミノ国」ですね。
図書 
ハルの書とアキの書の二本立てです(夏と冬はどこへ行ったんだろう)。今出ているビジュアルには海が出てくるんですよね。舞台上が水浸しになるかもしれません。
__ 
船の上で戦うのかな。意気込みを教えてください。
図書 
再始動しての本公演ですが、だからといって気負うことはないと思っています。これからまた一つ一つ積み上げていきたいです。これから先の最新作の一つ一つが皆様にとって大切な作品になればいいなと思っています。皆さんが喜んでくださったらそれで万々歳です。
劇団ZTON vol.14「ソラノ国ウミノ国」
あらすじ
数百年の昔、ソラノ国はウミノ国の軍勢と戦い勝利を得た。
ウミノ国の軍勢は 異形の物。
目にすれば視界がつぶれ、声を聴けば音を失う。
ウミと交わるな。交われば其は災厄となり、ソラを堕とす。
《ソラノ書 第二節》

親から子へ、連綿と語り継がれる『ウミノ国』の伝説。
『ソラノ国』と『ウミノ国』は、高くそびえたったカイリの壁によって分けられ、その交わりは長きにわたり禁じられていた。
…禁じられていたはずだった。

ソラノ国の貧民街に住む少年、ハル。
ある日、彼は一通の手紙を手に入れる。
差出人の名は、アキ。
届くはずのない2人の願いが交差し、閉ざされた壁が開くとき、ソラとウミの真実が明かされる。

【日程】
2019年11月1日(金)~4日(月・祝)
11月1日(金)19時開演【ハルの書】
11月2日(土)14時開演【ハルの書】
11月2日(土)19時開演【アキの書】
11月3日(日)14時開演【アキの書】
11月3日(日)19時開演【ハルの書】
11月4日(月・祝)12時開演【ハルの書】
11月4日(月・祝)16時30分開演【アキの書】
※開場は30分前を予定しております。
※両作品の内容はほぼ同一のものとなっており、話の筋や結末が変わるものではございません。「ハルの書」「アキの書」は、一部のシーンでの視点が変化し、その違いをお楽しみいただけます。


【会場】
in→dependent theatre 2nd
(〒556-0005 大阪府大阪市浪速区日本橋四丁目7-22 インディペンデントシアター2nd)


【チケット料金】(税込)
S席(各回限定10席・指定席・一般のみ)
前売料金一般:¥4,500
当日料金一般:¥4,800

A席(自由席)
前売料金一般:¥3,500学生:¥3,200
当日料金一般:¥3,800学生:¥3,500

※S席は最前列中央寄りの10席です。
※学生は大学生以下が対象となります、当日受付にて学生証の提示をお願いいたします。
※未就学児のご入場はお断りいたします。
※チケットはお一人様1枚必要です。
※開演時間までにご来場いただけない場合、当日のお客様を優先させていただく場合がございます、ご了承ください。開演5分前までにご来場いただくことを推奨いたします。


【キャスト】
■劇団ZTON
久保内啓朗
高瀬川すてら
為房大輔
図書菅

■GUEST
京本諷
堀内玲(リアルム)
maechang(BLACK★TIGHTS/Sword Works)
木暮淳(劇団土竜)
るりこ(TP-SATELLITE)
三浦求(ポータブル・シアター)
堀江祐未(サテライト大阪/魅殺陣屋)
中 聡一朗(激富/GEKITONG)
山岡美穂
岡本光央((株)キャラ/華舞衆 彩り華)
BANRI(Sword Works)
小出太一(劇団暇だけどステキ)
野倉良太(東京ガール)
田中之尚(カンセイの法則)
平宅亮(本若/Sword Works)
新免誠也
岡田由紀
亮介(株式会社イリア・モデルエージェンシー)

■アンサンブル
上野剛吉(リアルム)
上原由子
大塚洋太
神田厚也(リアルム)
菊崎悠那(Sword Works)
澤?真矢
土岐省吾(K-HEAT)
難波優華(Sword Works)
三浦環加奈(テアトルアカデミー)

【スタッフ】
脚本・演出:為房大輔
舞台監督:今井康平(CQ)
照明: 牟田耕一郎(ママコア)
音響:Motoki Shinomy(SAWCRNT/common days)
サンプラオペレーター:福島健太(本若)
衣装: 鈴木貴子
ヘアメイク:KOMAKI(kasane)
小道具:劇団ZTON
殺陣・振付:為房大輔
ビジュアル撮影:脇田友(スピカ)
宣伝美術:中森あやか(劇団ZTON)
当日制作:秋津ねを(ねをぱぁく)
制作・広報:劇団ZTON
企画・製作:劇団ZTON