遊ぶこと

__ 
今日はどうぞよろしくお願い致します。最近、芦谷さんはどんな感じですか。
芦谷 
よろしくお願いします。最近は結構忙しかったんですけど一段落しました。もうしばらくゆっくりしようかなと思っている感じです。
__ 
そうなんですね。一番忙しかった時期は?
芦谷 
8月に公演の稽古がありまして、それと並行してワークショップのアシスタントをしていて。
__ 
8月の公演と言うのは、高野裕子さんとのデュオの事ですね。
芦谷 
はい。それと、劇研なつまつりの「かむじゆうのぼうけん」という子供から大人まで楽しめる公演で、子供達がすごく楽しんでくれていたので良かったです。
__ 
「かむじゆうのぼうけん」。一番印象的な体験は何でしたか?
芦谷 
今年が劇研での最後の開催ということもあって、毎回40人ぐらいの子供たちと一緒に工作をしたりだとか動いたりだとか。そのパワーもすごいんですが、子供のクリエイティブな面がすごく面白いです。大人の想像を超えるものを作ってくれるので、刺激的ですね。
__ 
子供と遊ぶのってすごく訓練がいるような気がしますね。頭の中のシミュレーションで遊んでいるときは上手くいくんですけど、実際に遊ぶ時は引きずられるようになる。どっちが主導権を握るとかではないんでしょうけど。
芦谷 
子供の人数が多いので、やっぱりある程度、子供がリラックスできる空間を作ってあげるべきなのかなと思います。自分の家族の子供と遊ぶ時は自由にしたら良いと思うんですけど。
__ 
安心して遊べる様な空気作りというか。
芦谷 
やっぱりそれは劇研なつまつりの、10年の間の良い積み重ねがあるんだと思います。
__ 
盛り上がるんでしょうね。とても。
サファリ・P
サファリ・Pは、2015年8月、利賀演劇人コンクールに参加したメンバーである俳優・高杉征司、ダンサー・松本成弘、演出・山口茜を中心として結成されたカンパニー。利賀では優秀演出家賞一席を受賞した。固定のメンバーで継続した創作活動を行うことにより、クオリティの高い作品作りを目的とする。(公式サイトより)

高野裕子さんとのデュオ作品について

撮影:高橋拓人
__ 
さて、UMLAUTでの高野裕子さんとのダンスがとても良かったです。
芦谷 
ありがとうございます。
__ 
高野さんと芦谷さんの、人間としての誠実さがあっての作品だったんじゃないかなと思います。まず、言葉を使っての評論が追いつくようで追いつけない感じがあるんですよね。表現されている作品である以上、言葉によって解説は出来るはず。でも、洞察出来ない領域が確実に存在している。そんな感触です。作品の流れとしては、二人が最初、正座して向き合ってお互いの膝に同時に触ろうとする。普通だったらキッカケを取るのかもしれないが、何だかそれ以上の交錯があったような気がしました。目線とかテレパシーとか、そういう物理的な方法じゃなくて、何かもっと、何だろう、お互いの存在があるべき状態になったら「事の起こり」を合わせられる事が出来るのかもしれない。そういう、洞察も言葉も及ばない世界。
芦谷 
うーん。
__ 
言葉を超えた、相手とのコミュニケーション。その摩擦の境目や、擦れ合う時それぞれの主体の裏側に広がっているものが見えた気がする。最後の方では照明を消して、ブラインドから漏れる外の明かりだけだったじゃないですか。そこは本当に、幽霊みたいな感じがして・・・
芦谷 
初めて高野さんと作品を作らせて頂くにあたり、お互いにコミュニケーションを取っていたんですが、それが作品に現れていたような気がします。向かい合って握手をするところから始める、毎日のその気持ちとか、相手に触れ、さらに相手の心の中に触れる、と言う経験が大きいと思います。稽古場でどういうふうに時間を過ごしたかというのはやっぱり本番に出るな、と思いました。それは観劇をするときにも思います。だからというわけじゃないですけど、思ったことを素直に共有したり、とかは意識しました。
__ 
自分の手を素直に差し出し、相手の存在に触れるところから始まったのですね。
芦谷 
そうですね。また、相手に触るだけではなく、自分自身に触るというところもありまして。
__ 
自分自身を確認する?
芦谷 
自分を触り、自分の人称を口に出したり。色々なアイデアが出たんですが、最終的にはそうした演出が二人の間に残っていきました。
__ 
自分を確認する。
芦谷 
あとは、言葉をどういう風に使ったら面白いのか、と言うのは残っていきましたね。
__ 
暗闇の中でさまよっているシーンもありましたね。いや、さ迷っているようでも、しっかり歩いているようにも見えました。
芦谷 
明かりを消してからのシーンでは、その前までの「お互いの体を触れ合うシーン」をなぞろう、という話になっていました。個人的な過去の事や家族のことを呼び起こされるというか。毎回違う作品になりました。きっと何かが伝わる、と言うのは信じています。
__ 
何と言うか、個人的にはまだ解決できていない作品なんですよね。もう一度拝見したいです。闇の中に揺らいでいる身体は、思考とか精神のレベルを超えた層でただ揺れていて、その小さいけれど大きな動きの中心がそのまま空間の中心と重なって揺れていて、みたいな。
芦谷康介と高野裕子アトリエ公演vol.1
date:2017年8月6日~8日(全3回公演)
place:UMLAUT
photo:高橋拓人

もう一度振り返ると

撮影:高橋拓人
芦谷 
改めて、自分にとって表現とはどういうものか、そして自分はそれに対してどの様に思っているのかということを見つめる公演だったな、と思います。それは本当に、高野さんとお話をしたり、色々なアイデアを試すという時間をもしっかり持てたので。心と体の関係に、改めて興味を持てたし、もっと追及ができそうだとも思いました。
__ 
具体的には、どのような稽古をされたんですか?
芦谷 
テキストを持ってきて読んだりだとか、アイデアを出し合って検証するというのを繰り返して。あと、初対面だったのでお互いのことを話し合って。話し合うと言うとちょっと堅いんですが、自分が何に対してどう思っているであるとか。そういうことです。
__ 
距離が近くなったということですね。
芦谷 
そうですね。
__ 
距離が近くなった上で、距離の遠さを感じる、みたいなことはありましたか?
芦谷 
ああ、そうですね。同じ舞台芸術を共用している、ということはあるんですがバックグラウンドの違いは感じていました。今までの経験でやったりだとか、環境とかも全然違うし。でもそれは、お互いの事を知ったからこそ感じた事ではあります。そういうのを含めて、良い出会いだったと思いますね。
撮影:高橋拓人

理想の・・・

__ 
ご自身が考える、理想の稽古とは何ですか?
芦谷 
何だろう、何か、思ったことを言いやすい稽古かな。やっぱり一人で作っているわけではないので、色々な人のアイデアが、良かったとしても良くなかったとしても多ければ多いほど選択肢が増えますし。
__ 
高野さんとの稽古場はそういう感じだったんですね?
芦谷 
僕はどちらかと言うと普段は自分から喋るよりもに話を聞いてから考えることの方が多いので。一対一だったということもあるかもしれませんし、言いやすい環境にしてくれてたのかもしれませんし、僕の方で意識していたというのもあります。そういうやり方が必ずしも、良い作品に結びつくかどうかははっきりと言えないですが。
__ 
自分でアイデアを出さずに、演出家が「交通整理」することで良い作品になる場合もありますしね。

言葉と動きのあいだで

__ 
芦谷さんの最近のテーマは何ですか?
芦谷 
一つは、人と自分を比べずに、自分がいいなと感じていることを大事にすることをここ数年は意識しています。
__ 
最近は何に対して良いと感じられましたか?
芦谷 
高野さんとの公演で面白かったのが、彼女が踊っているところに自分が擬音を当てる、ということをしていて。そこで発生した音をまた体に変換したりだとか。その動きをまた違う言葉に変換したりだとか。それがまた何かに発展できそうな気がしていて。あれは何か発話するということと、体というものがもっと複雑な、面白い関係を築くような気がしていて。それを例えば逆に辿って言ったらイコールになるのかみたいな。言葉と身体の関係ですね。
__ 
人間がその時々で発言したりとか動いたりだとか、それらの純粋な行動を突き詰める実験。それらのアクションが輝いた瞬間、意味が意識が移り変わる瞬間。面白そうですね。俳句みたいな感じ。
芦谷 
俳句。そうですね。

質問 門石 藤矢さんから 芦谷 康介さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、劇団ZTONの門石藤矢さんから質問を頂いてきております。「リラックスタイムには何をなさいますか?」何をすると癒されますか?と言うことですね。
芦谷 
本を読むか、ヨガ。でもリラックスタイムでいつなんだろう。でも、本かなあ。

自分自身であること

__ 
ご自身を変えた最大の経験は何ですか?
芦谷 
なんか僕は、男性も女性も好きになるんですけど、そういう事に気付いた時かな。それが自分の表現活動に結びついている気がして。やっぱり、そういう自分への理解というのが大きな経験だったと思います。
__ 
それ以前と以降で、演技の質が変わったりとかはありますか?
芦谷 
大学に入るまでは、演劇は見たりしていたんですが、自分でやる、という事はなくて。どちらかと言うと自分のそういうことはあまり表には出さなかったんですが、大学の舞台芸術学科に入って、自分の自分らしさというものを出しても良いと言うことが分かって。大学に入ったと言う事はやっぱり大きな転機です。
__ 
なるほどなあ。私も自分自身の事を冷静に周囲に言ったり自分でも引け目に思わなくなる事で、ちょっとずつ取材のあり方が変わってきたように気がします。自分自身である事に諦めが付いた、みたいな。
芦谷 
諦めた、か。
__ 
今まであんまり自分は自分自身のことを表現してこなかったので。それはつまり、他の人に自分のことをあまり認識させないやり方だったのかもしれない。実家が宗教団体の施設管理をやっていたり、まあ相手によっては引きかねない事色々。
芦谷 
全然引かないですよ。
__ 
ありがとうございます。

演劇とダンスの観客

__ 
芦谷さんは俳優もダンスもされておいでですが、演劇とダンスの観客の違いを感じたことはありますか?
芦谷 
うーん。ないですね。
__ 
では逆に、演じているときのご自身の体は、どんなところが違いますか?
芦谷 
なんというか、その日その劇場の舞台の上にいるということは演劇でもダンスでも同じだと思います。もし違うことがあるとするなら・・・役かなあ。
__ 
役柄?
芦谷 
ダンスの方が、自分の体が感じている感覚というのが前に出てくるんだと思うんですけど、演劇の方は役というファクターがある、ということなのかな。
__ 
いつか、どんな演技ができるようになりたいですか?
芦谷 
うーん。なにかそういう、目指すみたいなものはないですけど、その時の感じ・・・かな。あえて言うなら、たくさんの人と表現を通じて分かち合えるような。そういう思いはあります。

これからも

__ 
今後、どんな感じで行かれますか?
芦谷 
いま、サファリ・Pという劇団に所属していて、そこでのクリエイションがすごく面白いので、これからも続けていきたいと思います。バランスよく、表現活動と自分の時間を持ちたいと思います。
__ 
ありがとうございます。

砂時計(15分計)

__ 
今日はお話を伺ったお礼にプレゼントを持って参りました。大したものではありませんが・・・よろしければどうぞ。
芦谷 
ありがとうございます。綺麗に包装してありますね。(開ける)砂時計ですか。嬉しいです。なんか、ツボを知ってますね。
__ 
15分計です。
芦谷 
メッセージ性を感じますね。
__ 
砂時計というのは、砂が流れ終わった瞬間は通知してくれないじゃないですか。ふと目をやった瞬間、時間が過ぎていたのに気付く。時間を管理する道具としては破綻しているんですよね。そして、とても人間に近いと思うんです。時間の進行に常に置いて行かれてしまう、という意味で。

暑い夜に

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。劇団ZTONの門石藤矢さんにお話を伺います。最近、門石さんはどんな感じでしょうか。
門石 
よろしくお願いします。最近!最近暑いですね。暑いなぁ・・・なんて。あ、全然関係ないんですけど、ZTONの事務所にハムスターがいるんですけど、そいつのお世話をしています。最近ちょっと元気がなくて、暑いのかなと思ってエアコンを強くしてみたり、餌を増やしたりしてみたら元気になりました。
__ 
危ないところでしたね。
劇団ZTON
2006年11月立命館大学在学中の河瀬仁誌を中心に結成。和を主軸としたエンターテイメント性の高い作品を展開し、殺陣・ダンスなどのエネルギッシュな身体表現、歴史と現代を折衷させる斬新な発想と構成により独自の世界観を劇場に作りあげ、新たなスタイルの「活劇」を提供している。(以下略)(公式サイトより)

劇団ZTON 京都→東京遠征公演02 「覇道ナクシテ、泰平ヲミル【護王司馬懿編】」

__ 
覇道泰平、東京公演ですね。今年の一月に上演した、完結編である護王司馬懿編を、東京で上演するという事で。まず、いまの感触としてはいかがでしょうか。
門石 
今日が稽古初日だったんですが、ああ、だいぶ変わってるなあと思いました。現在の段階では配役はまだ言えないんですけど。
__ 
初演から変わってると。
門石 
ああ、これ以上は僕の口からは言えないです。そうなんでございます。
__ 
よろしければ、意気込みを教えてください。
門石 
今回の東京公演の会場は花まる王子小劇場さんなんですね。いつもよりは劇場のサイズが違って、お客さんとの距離がめちゃくちゃ近いんです。(京都でも、人間座さんというさらに狭い劇場で毎年新人公演はさせていただいているんですが)劇場への慣れの問題と、あと、去年の東京公演で感じたんですが、なんとなくお客さんの反応は関西と比べてどこか違うなあ、と。勝手な想像に過ぎないのかもしれませんけど・・・・
__ 
ああ、それはありますね。
門石 
どうくるのかな、みたいに観られているような。こっちの人は、おもろいもん見たろ、みたいな空気感覚があるんですが、東京の人は、お芝居を観慣れてる方が多いのかな。普段嗜んでいるもの、なのかな。お笑いを見に来た人と、テレビを見ている感覚なのかな、って。いやすみません、若造が何言ってんだって感じで。
__ 
東京のお客さんはその分、作品を丁寧に扱ってくれる印象はありますね。前半のテンションは低くて、ギャグでもあんまり笑わなくて、でも中~後半はすごく集中して作品にのめりこんでいる感じです。・・・もうすぐ、公演ですね。
門石 
はい、意外ともうすぐです。
劇団ZTON 京都→東京遠征公演02 「覇道ナクシテ、泰平ヲミル【護王司馬懿編】」
「覇道泰平」シリーズ完結編、
早くも東京にて再演決定!!

【日程】
 2017年9月14日(木)~18日(月祝)
 9月14日(木)19時開演☆
 9月15日(金)15時開演☆
 9月15日(金)19時開演
 9月16日(土)15時開演◆
 9月16日(土)19時開演
 9月17日(日)15時開演
 9月17日(日)19時開演
 9月18日(月)12時開演
 9月18日(月)16時開演
   ※開場は30分前です。
  ※上演時間は2時間を予定しております。
 
 ☆:アフタートーク開催あり。
   9月14日(木)19時開演の部
   <GUEST>三枝奈都紀(SOS Entertainments)
   
   9月15日(金)15時開演の部
   <GUEST>中山貴裕(ゲキバカ)
 
 ◆: 託児サービスあり。(要予約)
   イベント託児・マザーズ[0120-788-222]
   (0才・1才2,000円 2才以上1,000円)
 本公演以前のシリーズ、
 【偽蝕劉曹編】・【真王孫権編】の上映会も併せて開催!!
 9月16日(土)11時開演【偽蝕劉曹編】上映会
 9月17日(日)11時開演【真王孫権編】上映会
 ※開場は15分前です。
【会場】
 花まる学習会王子小劇場
 (〒114-0002 東京都北区王子1-14-4 地下1F)
【チケット料金】(税込・全席自由)
 前売料金 一般 3,500円/U-23 3,000円
 当日料金 一般 4,000円/U-23 3,500円
 学生(高校生以下) 500円(各ステージ 3 枚まで)
 上映会 一律 1,000円
※未就学児のご入場はお断りいたします。
※チケットはお一人様1枚必要です。
※U-23 は 23 歳以下の方が対象(公演期間時)です。
 当日受付にて年齢確認できる身分証のご提示をお願いします。
※開演時間までにご来場いただけない場合、
 お席がご用意できない場合がございます。
 あらかじめご了承ください。開演までにご来場いただくことを推奨いたします。

【キャスト】
 <劇団ZTON>
 為房大輔 高瀬川すてら レストランまさひろ
 出田英人 図書菅 門石藤矢 前田郁恵 久保内啓朗
 
 <GUEST>
 三枝奈都紀(SOS Entertainments)
 
 大町浩之(拳士プロジェクト)
 加東岳史(劇団GAIA_crew)
 榊菜津美(アマヤドリ)
 杉浦勇一
 浜崎 聡
 山本常文(思誠館道場)
 吉久直志(カプセル兵団)

 中山貴裕(ゲキバカ)

<アンサンブル>
 飯尾佳名子
 道川内蒼
 横山豪( ?マック・ミック)
 吉澤悠吾(?オフィス斬/TEAM俳)
【スタッフ】
  脚本・演出:河瀬仁誌
  舞台監督:新井和幸
  照明:吉田一弥(GEKKEN Staffroom)
  音響:Motoki Shinomy(SAWCRNT & commondays)
  殺陣オペレーター:福島健太(本若)
  衣装:鈴木貴子
  ヘアメイク:滝沢侑子
  小道具:劇団ZTON
  殺陣・振付:為房大輔
  宣伝美術:中森あやか
  当日運営:間宮知子(風ノ環~かぜのわ~)
  企画・製作:劇団ZTON
【チケット・公演に関するお問い合わせ】
 合同会社 office ZTON
 MAIL:info@office-zton.com

役者として

__ 
前回公演「天狼ノ星」の話を伺いたいと思います。私は初演を拝見して、DVDも何回も再生して、やっぱりお話が深いんですよね。門石さんは初演でもアンサンブルとして出演されていましたが、今回の再演では二つの章を貫く主役でしたね。いかがでしたか?
門石 
僕は役者として非常に自信が欠けている人間なので、僕でいいんだろうかという思いがずっとありましたね。土肥さんが初演では主役で、それを僕が受け継ぐんだ、と思うと熱い思いがこみ上げてきて。色々なものをいただきましたし、皆さんから支えていただいて。すごく勉強になりました。もっと頑張ろうと思いました。
__ 
最初はどんな気持ちで望まれましたか?
門石 
そうですね。稽古の段階で、自分の全力でやってみようと思っていたところ、河瀬さんに「お前は初演の土肥君を負っている」と言われたことがあって。それをきっかけに、自分のハクトをやってみようと思うようになりました。自分だったらどうだろうか、ということに焦点を当てて考えるようになったんです。
__ 
というと?
門石 
登場人物は僕とは経験が違うし、想像して考えて、その人の意識や行動を考えるんですけど、「より自分に寄せてみる」という作業は僕はあんまりしてこなかったんですよ。もう、ただ「狼の中で白いという個性を持つ僕」として自分に重ねて演じていました。
__ 
つまり最初は、役柄を自分に引き寄せていたんですね。そこから、「自分だったらどうだろうか」と考えるようにした。
門石 
そうですね。やっぱり、そこを乗り越えないとニサを超えることができない、ということは河瀬さんにも言われていたので。
__ 
ちょっと分かる気がします。そう、門石さんのハクトは、何だか明るかった。狼の中でも白いから目立っていたけれども、明るい人物の印象になれていましたよ。ハンディキャップだと自認しながらも、そういう振舞い方が出来るようになれる?
門石 
「あいつはああだから」と後ろ指を差される、という心情は僕にも通じていて、きっとそこをセタという親友が連れ出してくれたんだろうなあ、セタがいたからこそ明るく振る舞えていたんじゃないかな、そうした色々なものを経てのハクトで、さらに戦いを経て、時空を超えた。
__ 
色々なものを超えたからこそ強くなれたということですね。
門石 
そうですね、僕は、「強さ」ではないんじゃないかなと思うんです。
__ 
強さではない?
門石 
いえ、受け取り方次第なので!でもやっぱり、大事なことを決める時って、「これまで僕はいろいろやって強くなったし、よしやってみよう」となる方が少ないと思うし、強さと言うより、最終的に自分がやりたいと思った答えで、それは強さとかの大それたことじゃないんじゃないかなと思います。言葉にするのは難しいんですけど。
__ 
幅というか、選択肢というか、そういう事?
門石 
全部を歩いてきて、結局、ハクトはハクトだ、という事だと思ったんです。
__ 
なるほど。そうですね。最終的に彼は「大狼の王」から「天の章のハクト」に戻ったんですもんね。初演ではハクトは、レタルと一緒に大地を導いていく存在を選びましたが、2017年版では自分のいた時空に戻り、セタと和解する。
門石 
自分がやってもらったことをやらないといけない、と思ったんです、その時は。もう一方で、僕はどう考えても土肥さんにはなれないなと思いました。そうですね、自分個人と向き合うお話だったと思います。
__ 
様々な意思があり、それぞれに結末がある。観客の解釈も様々。幅のある作品ということですよね。謎めいた終わり方も含んで。
門石 
はい。どうなったんだろう、という見せ方で終わりました。
__ 
私個人はこの戯曲に対しては全く違う読み解き方をしていますけどね。
門石 
はい。それでいいんだと思います。
劇団ZTON 10th Anniversary 2nd「天狼ノ星」/dt>
公演時期:2017/7/29~31。会場:ABCホール。

完成について

__ 
ハクト役の、ここを見て欲しかったポイント、とかはありますか?
門石 
いや、観てほしいポイントとかはないんです。僕はあくまで作品の登場人物なので、どこ見るとかはそれこそ見てくださっている方が決めれば良いと思っています。「ここを見て欲しい」と言うのはおこがましい気がしていて。本当に苦手なのが、ダブルコールを頂いて皆さんの前でコメントをさせていただくときや、お見送りの時にご挨拶をさせて頂く時。それまでは作品の登場人物だったのが、ただの門石藤矢になってしまうので。いたたまれないと言うか・・・「すみません、こんなんで」となってしまうので。上手く喋れなくなってしまったんです。
__ 
謙虚ですね。
門石 
とんでもないです。台本があってはじめて言葉を発することが許されて、照明があって舞台があってそこにいることを許されている気がするので。それ以外はどうなんだろう、と思ってしまって。
__ 
逆に、難しかったのは?
門石 
毎公演いっぱいあるんですけど、今回は特にたくさん大変なことがありました。ぱっと思いつくのは為房さんとの立ち回りですね。やっぱりハクトとオルカは因縁があって、作中何度も戦うんですけど、為房さんの殺陣は凄く速くて!なんか、まだまだ自分は勉強が足りないなあ、と、精進しないといけないと思いました。
__ 
ええ?門石さんの殺陣はめちゃくちゃ早い方だと思いますけどね。
門石 
いえ。それと、ラストシーンの、すてらさん演じるレタルとの会話。河瀬さんが「この天狼、着地点がどこかはあんまり決めてないんだよね」とぽろっと・・・そこから大変な日々が始まったんですけど、すごく難しかったですね。レタルもレタルで、そのラストシーン前に本当に長いセリフをずっと喋って、積み上げてきたものがあるので。ハクトも色んな人から受け継いできたものがあるので。お芝居は常に難しいですけど。
__ 
最終的に突破できたから良かったじゃないですか?
門石 
突破できたんですかね。僕は、そうではないと自分に言い聞かせています。
__ 
それは何故?
門石 
なんと言うのかな・・・クラスで勉強できる子がいたとしても、「勉強できるんだね」という感想以上のものが出てこなくて。自分自身も、例えば完成させたレゴとかでも、1時間ぐらい後には全部壊してしまうんです。あの、完成が好みではないんです。完成されたものはすごく綺麗なんですけど、例えばドラマの最終話とかもすごく気になるんですけど、観たら終わってしまうから。だから観なくていいや、と。
__ 
ほお・・・
門石 
そんな時もあります。本当に好きなものは最後まで見ますけどね。
__ 
完成を避ける?
門石 
いや、目指すんですけど、形のある完成が、流動的ではなく停滞している完成は好きではないです。
__ 
停滞している完成は好きではない。
門石 
いや、何を言ってるんだという感じですけど。

質問 葛川 友理さんから 門石 藤矢さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、葛川友理さんから質問を頂いてきております。「最近一番楽しかったことを教えてください」。
門石 
楽しかったことかあ、何があるかな。うーん、悩みますね。花火大会で、たまたますごく良い場所で見ることができたんですよ。音が体を突き抜けると言うか、光がパッとなって、すぐに消えるのも、みじめったらしく残りながら消えていくのもいいし。人生で初めて花火を楽しみました。人が集まって見る花火の面白さに気付いて。もしかしたら自分は花火になりたいのかもしれないと思うぐらい、印象が変わりました。すごく楽しかったですね。

ZTONのカメレオン役者たち

__ 
話は変わりますが、ZTONの役者たちは異常に役所が安定しませんね。ポジションが全く違うというか。「ティル・ナ・ノーグ」の時門石さんはほぼ笑いを取りに行ってたじゃないですか。
門石 
それは河瀬さんの方針ですね。やっぱり、同じような役をいつも担当して、お客さんが「あ、あの人はいつもそのポジションだよね」と。喜ぶ人もいるだろうとは思うんですけど、違う役所を振ることで新しい一面をお客さんに楽しんでもらえたら、それはめちゃくちゃ嬉しいことなんですよ。僕も、新しい方向に進んでいきたいと思っています。覇道泰平でも、僕は最多幅の役をやっていると思います。
__ 
凄いですよね。裏切られる主役もやれば、人の情を持たない龍もやったし。でもそういう流れの中で、何となくのポジションが決まっている人もいますよね。久保内さんの中二病性とか。
門石 
あそこまでやったら武器になるんですよね。
__ 
すてらさんも客演ではコメディエンヌだしね。ZTONの役者は魅力的ですよね。個人的には出田英人さんの狂った演技はとても好きです。
門石 
エオヒドですね!大人気ですよね。
__ 
個人的には門石さんの悪役は凄く良い感じなんじゃないと思います。
門石 
どうなんですかね。でもいろんな役がやってみたいですね。楽しみです。
劇団ZTON vol.12「ティル・ナ・ノーグ ~太陽の系譜~」
公演時期:2017/7/29~31。会場:ABCホール。

ZTONとの出会い

__ 
演劇を始めたのはいつからですか?
門石 
18歳の頃に、河瀬さんとひょんな事で出会って。「お前、出るか?」とZTONの新人公演にぶちこまれて。そこから、演劇ってこういう世界なんだなあ、と。英人さんや菅さん、森さんがいました。アンサンブルで何度か声をかけていただいて。「月に叢雲、花に風」にも。その後天狼ノ星のアンサンブルに出て、その後に入団しました。
__ 
門石さんの今のテーマを教えてください。
門石 
今は勉強あるのみ、でしょうか。お芝居に対してですけど、自分とはまるでかけ離れたような人(経験だったり、性格だったり)のお芝居を間近で見たいですね。一挙手一投足を見たいです。為房さんが殺陣師として作品の立ち回りをつくるんですが、全然関係ない僕が真似をしてみたり。
__ 
真似か・・・いきなりぶっ込みますけど、これは単に何となく聞いてるだけなんですけど、いろんな見方から演技を分解する事って出来ると思います?こうやって至近距離での会話劇をしている時に、瞬きのタイミングであるとかため息の角度やら温度であるとか、生体としての全ての震えをまるでダンス作品のように構成してるじゃないですか、我々って。テキストとして会話劇を成り立たせるために。
門石 
はい・・・
__ 
という考え方もあれば、その人間の経験こそが全てで、つまり二人が背負ってきた全てのものが合流するこの会話劇はそれら全ての決着を付けるために存在しているから、予め運命が全ての演技を決めている、故に無理して表情をコントロールするよりも、役柄のサブテキストを汲み取り続けるべきである、みたいな考え方もある。
門石 
ああ・・・もちろん、そういう事を考えながらやっている時もあります。覇道泰平で龍を演じた時なんかは細かい表情に気をつけながら作っていたんですが、そうしてしまうと、どうしても、自分が考えたプランを自然に見せるためには、限りなく自然に魅せる技術が必要じゃないですか。私結局それは「限りなく自然に魅せられた演技」に過ぎないと僕は思っていて。僕は最近、何も考えずにやっています。もちろんその人に起こった出来事は前提として状況を把握していますが、舞台上に立って共演者と相対する時は何も考えないようにしています。
__ 
ああ、なるほど。
門石 
それだけ、口をついてセリフが出るように、練習はするんですけど。
__ 
ライヴでの感情のやり取りを大事にしているということですね。
門石 
そうですね。ミザンスでやってもいいんですけど。何と言うか、なんというか・・・パラパラマンガのページ数をどれだけ増やせるかという話になってくるんじゃないかと思います。でもそれは、人がいなくてもできる作業なんじゃないかなと思って。そっちの方がいい場合はそうしますけれども。

電車の窓の外の風景のような

__ 
いつか、どんな演技ができるようになりたいですか?
門石 
・・・。ごめんなさい。どんな演技か、と言うのは難しいですが、その作品ごとに自分ができる演技を駆使して、洗練されているのに自然で、だけどお芝居をしていないわけではなく、見世物だけれども、普段の電車に乗っている時に窓の外に流れているような風景と同じぐらい近くて自然な演技。お客さんに、門石藤矢という存在として、少しでも認めてもらえたら。でもまだまだです。頑張ります。すみません、すみません。
__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
門石 
分かりません。はい(笑う)。

スナフキンの描かれている青いカップ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
門石 
ええっ。すいません、ええっ。ありがとうございます。ありがとうございます。
__ 
もしよろしければ開けていただければ。
門石 
よいしょっ。うわ可愛い。
__ 
ムーミンのスナフキンのカップですね。
門石 
何でスナフキンなんですか?
__ 
男性はもれなく全員、スナフキンが大好きですからね。
門石 
かっこいいですよね。
__ 
折よくムーミンフェアがやっていたので。
門石 
震えるほど嬉しいです。日本酒入れて飲みます。

ヲサガリの卒業制作

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、葛川さんはどんな感じでしょうか。
葛川 
よろしくお願いします。最近は、ヲサガリの京都学生演劇祭作品に出演することになったので、その稽古を日々やっています。
__ 
葛川さん、久しぶりの役者ですよね。どんな手がかりがありますか?
葛川 
自分の事に限って言えば、人と会話をする役って楽しいな、と。作品の中で人と会話をするというのがあまりなかったので。出てきては一人だけ喋る役とか、ずっと黙っている役が多かったんですよね。それから、出演するのって舞台監督をやるのとは違うなあ、と改めて思いました。
__ 
セリフ、覚えられましたか?
葛川 
まだ、覚えているところと覚えていないところがあります。でもセリフを覚えるのは昔よりも早くなったと思います。責任感が変わったというところがあります。舞台監督になって外から見ていると、セリフを覚えていないと面白くはならない、と感じるようになりました。当たり前のことですけど。
__ 
まあ、失敗しますからね。
葛川 
というか、覚えていないと稽古ができないと言うことが分かったんですよね。
企画集団FRONTIER
企画集団FRONTIERとは
滋賀県湖北地区を中心に活動する、主に演劇やコント、その他ライブを企画したりして、メンバーのやりたいことをやりたいときにやる集団です。2006年3月、長浜北高校演劇部を母体とするメンバーで旗揚げ。それから演劇したり、コントしたりしながら、のらりくらりと。2016年で10年目を迎える。ありがとう!やったね!
近年では、姉川やえの「箱庭」や、葛川の他団体への兼任所属など、活動の幅を広げる。(公式サイトより)
十中連合
京都を中心に活動する【十中連合】です。 絵本のようなSF(少し不思議)空間で観た人の心に少し何かが残るお話を作っています。(公式Twitterより)
気持ちのいいチョップ
京都を中心に活動する小川晶弘と横山清正により公演を行う企画。定期的な活動の拠点を持たない二人が役者修行のため、年3・4回公演を行うことを目的とする。様々な脚本家・演出家を招き、バイプレイヤーとしての評価は高い二人が主役を張る。それに加え、いわゆるアテ書きの多い二人が古典や既成脚本を上演したり、自らの一人芝居を作・演出するなど様々な挑戦でスキルアップを目指す演目「1000本チョップ」など、自身のイメージにとらわれない上演を目指す。(公式サイトより)
京都学生演劇祭2017 Bブロック ヲサガリの卒業制作
公演時期:2017/8/22,24,26。会場:京都大学 吉田寮食堂(京都市左京区吉田寮近衛町69)。