ブルーエゴナク「ふくしゅうげき」

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最近はユバチに出演と、そしてブルーエゴナク「ふくしゅうげき」が面白かったです。
小川 
ありがとうございます。そう言っていただいてよかったです。
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「ふくしゅうげき」は、絵作りがとても美的でしたね。暗喩というか、暗喩じゃないのかもしれないですけど、海や砂浜がレストランに攻めてくる、みたいな絵がとても良かったです。そういう夢物語みたいなものが向こうからやってきて、そして、自分の心を全て明かしてしまうキャンプファイヤーが始まって・・・あれが本当の事だったのか、それとも演劇的なものだったのかわからないですけど。いかがでしたか。
小川 
役者としては、音がすごく気持ちよかったですね。穴迫さんはすごく音を気にして作っていらっしゃるので。でも、僕個人としては、とても難しかったんです。この作品は再演で、その時の映像を見せてもらったんですけど、どうしても初演の方を意識してしまうところがあって。初演は北九州芸術劇場で、大きなハコという事もあり、大き目に芝居をされていたところがあって。それに引っ張られて自分のテンションとかを上げて、お客さんへのサービスを無意識に大きくしようと。だから稽古期間で、「いつもの小川君でお願いします」と言われることが多かったんです。でも自分の普段がわからなかった。言われて気づいたんですけど、普段から僕はどこか演じていることが多い事が分かってしまって。オフィシャルな場でもそうでなくても、自分を偽ったり媚びたり。稽古場で演じていた自分が普段の僕なのかどうかも分からなくなっている部分がありました。
__ 
演じている、というのは誰でもそうだと思うんですけど、それで悩むということは、そういう傾向が強いということなのかもしれませんね。
小川 
稽古場で見せている「普段の自分」も本物ではないのかもしれない、と悩んでしまって、余計に分からなくなってしまったということもあって。そして僕よりもずっと上手い人がいらっしゃって。音に合わせるという部分でも、僕は全然器用ではないので、音だけに引っ張られてしまったという事が多くて。すごく苦労しました。
__ 
音にイメージを合わせるということなのかな。それとも音階?
小川 
音階というより、(他の方がおっしゃっていたんですけど)役者の生理であったりたとかは、音の方からちゃんとなる、ようになってるらしくて。別の演出方法だったとしても結局はそこにたどり着く音だったり間だったりするんですけど、穴迫さんは生理の部分は役者に任せてしまう。慣れた役者さんは簡単にそれができるらしいんですけど、僕はそこにたどり着くまでに時間がかかって。その音を出している意味や生理の状態が掴めなくてチグハグになって。違和感があって変な状態になる、みたいな。穴迫さんと作品を作るのは初めてですので、1か月の滞在制作期間中、関係性を作りながら模索していました。
__ 
その穴迫さんに、何か一言ございましたら・・・
小川 
ええ!でも、そうですね。稽古場がすごく楽しかったんですよ。それは皆さんの良さももちろんですが、穴迫さん稽古場の、メイキングというのかな、雰囲気づくりをやって下さっていたので。
__ 
全員、客商売が上手そうな感じでしたよね。
小川 
全然初めてお会いしたんですけど。また今度飲みに行ったりしたいです。北九州に遊びに行きたいです。
アトリエ劇研創造サポートカンパニー公演 LAST YEAR ふくしゅうげき-京都ver.-
公演時期:2017/4/20~23。会場:アトリエ劇研。
ユバチ
劇研アクターズラボ、スキルアップクラスから生まれた集団、関西で普段バラバラに活動する若手俳優が集まり、デバイジングという手法を用いて作品作りをします。ユバチ#2『点と線』、終わりました。(公式Twitterより)

「役者の生理」

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さきほどのお話に関連して、もうちょっとだけ。役者の生理、という言葉が気になっていて。セリフを喋る時、例えば役の人格を、その機序から解き明かして演技しようとする場合を外科的解釈としてみると、内科的な解釈とは、役の「精神と肉体」の複雑系から来る波を転写?するみたいな事なのかなと思って。
小川 
あー。
__ 
ちょっと最近、外から見過ぎていたかもしれない。役者の生理を上演に組み込まれる瞬間、それはつまり観客の生理を巻き込んだ瞬間に他ならないのであって(伝わり合うのが生理だから)。役者が主導権を完全に出た瞬間を演出出来たら、と思う。
小川 
僕自身はあまり役者の生理について考えたことはなかったんですが、前回のブルーエゴナクではその辺りを実感しましたね。

映像を使うということ

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小川さんが演劇を始めた理由を教えてください。
小川 
小学校、中学校と陸上部で、高校生の頃はバレーボール部。文化的なことは何もやってこなかったんですが、高校生ぐらいから、TVドラマや映画の影響を受けてお芝居みたいなものには少し興味があって。でも大学に入って、アクターズラボに出ていた大学の先輩が、卒業制作を兼ねて劇団を作って芝居をするというので、後輩から参加者を募集していたんですよ。同時期にアクターズラボも募集をしていて、どちらかをやってみようと思っていたんです。で、先輩の劇団に参加したのが最初です。
__ 
そこから月面クロワッサンにも入って。
小川 
ゲツクロに入ったりとか、それからまた別の方にも声をかけていただいて作品に出演したりだとか。そこからですね。
__ 
今一緒に作品を作りたい人や劇団はいますか?
小川 
劇団ではないんですけど、映像を作ったりする方と一緒に舞台の作品を作ってみたい、というのがあります。
__ 
映像を用いた演劇作品。この間、悪い芝居がそういうことをしていましたね。舞台上の演技をカメラで撮って後ろのスクリーンに大映しするんです。舞台がロケ地みたいな。
小川 
最近そんなことは色々な所でされているんですね。興味があります。
__ 
研究するだけでもやりがいのあることだと思います。

質問 栗山 陽輔さんから 小川 晶弘さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた方から質問をいただいてきております。自主映画監督の栗山陽輔さんです。意地悪な質問、だそうです。「自分が面白くないと思う作品に出演しなければならない時、どうやってモチベーションを維持しますか」?
小川 
(笑う)とんでもない質問じゃないですか。
__ 
栗山さんは「演出家のいいところを探して自分を納得させる」だそうです。
小川 
演出家の人が嫌いなだけなら作品のいいところを見出して好きになればいいと思うんですけど、それでのその良さを実現するために頑張ればいいと思うんですけど・・・
__ 
ただ、今回の場合は「作品が面白くない場合」ですから。
小川 
どうやって作品を面白くするか、ということを考えるかな。演出家は面白いと思ってやっているはずなので、それを信じて一緒にやるということになるんですかね。でも、そういう状況になったことがあまりないから。僕は小劇場みたいな小さい空間で、人がたくさんの目にさらされて無理をして立っているという状態がかなり面白いと思ってるので。いざとなれば、そういうことを大事にしてやるかもしれませんね。

気持ちのいいチョップ

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気持ちのいいチョップの今後について。
小川 
何でしょうね、気持ちのいいチョップについてはふわっと始めた感じなので、今後・・・。でも、僕も横山清正もすごく怠惰な性格なので、団体に所属していなかったりしたら何もやらないな、という予感が旗揚げの理由でした。横山清正がもっとビッグになるため・僕も何かしら勉強になれば、という思いで。のちのち仲が良かった葛川さんをマネージャとして加え、今に至ります。
__ 
メンバーの横山さんと葛川さんに一言。
小川 
横山さんには、交換日記というのがあるんですけど、横山さんがあまり書いてくれないので、書いてほしいです。葛川さんは、ちょっと怖いので少し優しくしてください、といいたいです。
__ 
気持ちのいいチョップのtwitterが、完全に葛川さんの日記と化していますね。いま笑の内閣の舞台監督日誌になってますからね。
小川 
そうなんですよ。あの時に陰鬱なTwitterをどうにかしてほしいです。彼女は色々な現場に入っているので、僕にとっては彼女の生存確認になっているんですけど。でもちょっとどうにかしたい。
__ 
彼女なりの気持ちのいいチョップ、なのかもしれませんね。
小川 
もっと小気味よく書いて欲しい。

優しい時間

__ 
演劇のどういう瞬間が好きですか?
小川 
そうですね、何だろうか。俳優として、だと、劇場というのはある種許された空間だと思っていて。許容されていると言うか、そこにすごく安心感を覚えるんです。演劇って今や色々な教育だとか、市民劇など様々な人が参加しているメディアですけど、やっぱりやる人のためのものでもあるんじゃないかなと思ってて。日常生活で、いきなり大声を出すような変なことできないし、もし行ってしまったら咎められるじゃないですか。でもそれを、劇場でなら行っても良い。優しさに溢れているなあ、と思っていて。優しくないともとれるかもしれませんが、僕は優しさだと思っています。
__ 
優しいと思う。認めてもらうという感覚はよくわかります。
小川 
間口が広いというか、どんな人でもその瞬間は許されている。
__ 
そう考えると、舞台の生の時間というのはすごい時間かもしれませんね。
小川 
そうなんですよ、そういう奇跡が毎日起こっているんですよ。作品の上では犯罪を犯しても警察がきてしょっぴかれるわけでもなく。
__ 
なぜそんな「優しい」状況が起こるのか。何かありますよね、絶対。
小川 
不思議ですよね、でもそれは古代から続いてきたことなんですよ。
__ 
当たり前すぎて気づかない現象ですね。舞台上で生きている人間を見る時の、観客の原理的なところでの許容?ダンスでは起こっていない気がする。ダンスは意外に、観客は批評している。演劇の場合は、役者の肉体に対して何をやっているんでしょうね、観客は。

表現者的

__ 
小川さんの最近のテーマを教えてください。
小川 
デザイナーだったり俳優だったりということをしてるんですけど、結局自分は表現者的な部分が多いんだな、と思って。これから先の事を考えるにあたって、今後も表現を続けていきたいなと思っているので、その礎作りを作る準備に入ってるのかなと思っています。僕は定期的にアウトプットとインプットの時期が回ってる感じがするんですけど(皆さんそうだと思うけど)、なので、そういう時期的な事を大切にしていきたいなと思っています。

最後のヲサガリ

__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
小川 
今年は、京都学生演劇祭にヲサガリとして出ます。学生として最後なので。そうなんです。僕も7年目の学生で、人から「まだ学生だったの?」って言われることがあるんですけど、学生証を持っている学生らしからぬ人を集めてやろうと思っています。僕が最年少の座組になると思います。
__ 
蹴散らしにきてますね。
小川 
でもそれで学生演劇祭が盛り上がるばいいかなと思ってます。今まで学生演劇演劇祭に参加してきてよかったなと思っているので、恩返しに卒業制作的なものをやりたいなと思って。集大成を。もし、是非よかったら。
__ 
「我こそは学生」とかじゃなくて実際の学生ですからね。
小川 
そこはルールを破っていません!(笑う)

又吉直樹「劇場」

__ 
今日はですね、お話を伺いにプレゼントを持って参りました。
小川 
ありがとうございます。「劇場」!
__ 
しんみりした感じが好きかなあと思って。

「あなたに会えたらよかった」

__ 
今日は自主映画監督の栗山陽輔さんにお話しを伺います。どうぞよろしくお願いします。最近、栗山さんはどんな感じでしょうか。
栗山 
最近はもうじき公開予定の映画「あなたに会えたらよかった」の編集作業をやっています。それと、上映会の準備です。今日は情報宣伝のために大阪に来ました。
__ 
栗山さんが監督されている映画「あなたに会えたらよかった」、ですね。
栗山 
公開は6月の16日から18日まで、ウラなんばのあるかアるかの地下、金毘羅で上映します。
栗山陽輔 監督作品『あなたに会えたらよかった』
私の、この結末は、決して変わることがありません――

監督・脚本
栗山陽輔

出演
丹下真寿美 川末敦(スクエア) 都呂路あすか 安達綾子(劇団壱劇屋) 白井宏幸(ステージタイガー) 花田綾衣子

友情出演
 坪坂和則 遠坂百合子(リリーエアライン) 西村朋恵(こまち日和) 東千紗都(匿名劇壇) 森口直美(パプリカン・ポップ) 山田まさゆき(突劇金魚) 吉次正太郎

撮影監督
武信貴行

撮影
太田智樹 柴田有麿

助監督
青木省二 林トシヒロ
南川萌

上映会場
FREE STYLE STUDIO 金毘羅(カフェ&ビア あるか→アるか地下一階)

上映日時
6月16日(金)
18:00/ 20:30
6月17日(土)
11:00/ 14:00/ 17:00/ 20:00
6月18日(日)
11:00/ 13:30/ 16:00/ 19:00

各回30分前より受付、開場。上映時間45分。
16日18時の回、18日19時の回に上映終了後、トークイベントあり。

料金
前売・当日1500円

メール予約
anataniaetarayokatta@gmail.com
上記メールアドレスに件名「あなたに会えたらよかった予約」、本文にお名前、ご来場日時、枚数をご記入してお送りください。5日以内に確認メールをお送りします。

前作「なかよくなれたらいいな」から・・・

__ 
前作「なかよくなれたらいいな」から、今回の「あなたに会えたらよかった」。どんな作品になりましたでしょうか。
栗山 
前作はホラーだったんですけど、今回は作品の方向性ががらりと変わって、言ってみれば素直な作品になったと思います。すごく変な言い方なんですけど、前回がスナイパーライフルのような作品だとしたら、今回は体当たりのような作品になると思います。僕自身、ぶつかりすぎて最近はだいぶボロボロになっていて。
__ 
ボロボロになりましたか。
栗山 
ぶつかっていく訳ですから。難産でしたが、自分では面白いものができたと思います。
__ 
今回の製作の経緯を教えてくださいますでしょうか。
栗山 
今回の作品の大本は、20歳の時に思いついた構想だったんです。その時には「自分にはできない」と思って放置してしまったんですけど、以降、作品を作ろうと考え始める時はいつも、そのアイデアがぶり返してくるんですよ、何年経っても。あれから数年経ち、「時間が経った今なら出来る」とまでは思わなかったんですけど、一から構築し始めて。29歳で脚本を書いて、撮影して、今30歳で編集してます。
__ 
その構想を思いついた時の感触は?
栗山 
いや、最初はありがちだとは思ったんです。それは、ひっくり返せる感触もあって、でも表現方法が全く分からなくて。
__ 
でも、完成までこぎつけたんですね。
栗山 
撮影自体はうまく行ったし、過酷なスケジュールになってしまってキャスト・スタッフの皆さんには負担をかけてしまったんですけど、出来上がったものについては、今の自分の作品になったと思います。
栗山陽輔 監督映像作品『なかよくなれたらいいな』
ねぇ、知ってる? 人はどんなに頑張っても、心の底からわかり合うことはできないんだって――

監督・脚本:栗山陽輔
出演:西村朋恵(こまち日和) 遠坂百合子(リリーエアライン) 東千紗都(匿名劇壇)
田中尚樹(劇団そとばこまち) 丹下真寿美
大宮将司 吉次正太郎
福山俊朗 花田綾衣子
撮影監督:武信貴行(SP水曜劇場)
撮影:太田智樹
助監督:青木省二 林トシヒロ
ヘアメイク協力:安達綾子(壱劇屋)
制作協力:森口直美(パプリカン・ポップ)
効果音作成協力:Alain Nouveau(Alain Nouveau音楽事務所)
フライヤーデザイン:立花裕介

「今」

__ 
「あなたに会えたらよかった」。ご自身の製作史の中で、どんな作品になりましたか?
栗山 
今後映画を作り続けたとしても、もう10年くらいはこういう作品は作らないと思います。前作はいくつかの映画祭で入選して上映していただいたんですが、その時に他の映画監督の方や映画祭のスタッフさんに聞いたところ、ホラ―映画を出してきたのは僕だけだったそうなんです。映画監督として売れていこうと思うんだったら、ホラーを作り続けた方が良いとは思うんです、間違いなく。ホラー映画の監督としてイメージが定着するし。でも、その前に今のうちにこれをやっておかないと、ホラー映画でどん詰まりになるだろうと。2、3作を作ってそれで終わりになってしまうような気がして。だから「今」しかやれない、体当たりの作品だと思っています。
__ 
どんな上映になればいいと思いますか?
栗山 
そうですね、深刻なのに笑ってしまえるようになればいいかなと思ってます。映画のキャラクター達がすごく真剣やっているのが、はたから見ていて凄くばかばかしい、というシーンがあるんです。あと、ラストシーンに工夫があるんですが、それが少し考えさせられる出来になったらいいな、と思っています。
__ 
見所といえば。
栗山 
撮影をしていて、役者の方々の演技力がやっぱり凄かったですね。主演はスクエアの川末敦さんなんですけど、真面目な事をやっていても人の良さが滲み出ていて、見ていて余計な力が抜けていくような。一言で言うとめちゃくちゃ芝居が上手いんです。細かい演技はお任せしました。あと丹下真寿美さんに出てもらっているんですが、フラフラになりながらも演じてもらったシーンがあります。まずは役者陣を見てもらいたいと思います。映画としては、あまりメッセージ性もギミックも無いんですけど、こう思ってもらえたらいいなと思う部分があって。入口という言い方はおかしいんですけど、「あなたに会えたらよかった」というタイトルとは全然方向が違う出口になっていて。観る前と観終わった後の感覚が全然違う瞬間があります。それを一番感じて欲しいかなと思います。
__ 
構成的な仕掛けがあるんですね。
栗山 
衝撃的なラストではないんですけど、「あれ?いつの間にかこういう感じになってる」、で、何か力が抜けて、ある種の感覚になってくれていれば、と。

自分を書いた、のかもしれない

__ 
登場人物に何か思い入れはありますか?
栗山 
脚本を書いている身でこんなことを言うのは何なんですけど、全て、僕です。どの時代かの僕です。これまでずっと考えてきた作品なので、どうしても。自分のことを乗せすぎたのかなとは分かっているんですけど。
__ 
全員、自分。
栗山 
そう言うとちょっとナルシストっぽいですけどね。人物像の根源はそこで、そこから派生した人物たちです。
__ 
一番のお気に入りは?
栗山 
やっぱり丹下さんにやってもらった役かな。ああいう行動に出て欲しい、という気持ちがあります。川末さんと丹下さんの役はどちらも主役です。あの二人が会話しているシーンはずっと見ていたかったですね。

ロケと、そこに来てくれたキャストたちと

栗山 
ロケで和歌山の加太に行って海での撮影をしたんですけど、午前中は晴れていたのに午後はものすごく大雨が降って。晴れと雨、どちらのスケジュールも用意して行ったんですけど、結果的には過酷でした。あと、京都の桂川沿いでも撮影したんですけど、その日はゲリラ豪雨のように雪が降った日だったんです。大変でした。
__ 
キャスティングについて。栗山さんの作品では、主に大阪の小劇場の舞台で活躍している役者が配役されることが多いようですが・・・
栗山 
特に今回、初めて映像に出る方がいて、「どうしていいかわからない」と相談されたんですけど、僕としてはあまり変わらないものと思っていて。表現方法は若干変わりますけど。安心して演技をしてもらえるようにアドバイスをしました。舞台の演技との違いという意味では、出す声の大きさが少し違うぐらいです。後は、信用できる役者さんにお願いしているので、技術という点ではあまり不安はありません。結論としては、映像の役者と舞台の役者で、それほど違うとは思っていません。
__ 
信頼を置いているということですね。その上で求めてることは何ですか?
栗山 
僕自身も役者だったから思うことでもあるんですけど、役者に必要な物って、「その人自身が持っている最強の武器」、つまり個性を思いっきりやってもらうために、「そうじゃないもの」を出して行って欲しいと思っています。何でもかんでもできるようになるという意味ではなくて、個性を活かすための個性とは違うもの。もちろん演出家によって違って、例えばその人の個性をずっと出しておいて、ふと違う事をして印象を付けるとやり方もあるんですが、僕は逆なんですよ。大事なシーンだけで、ここぞと個性を出して欲しい。そして、その場所で思いっきり出してほしい。役者は全ての瞬間に自分の役と自分の個性を重ねて、結局は自分の方にどんどん引き寄せてしまうことが多いんですが。

人が人を好きになる

__ 
ご自身の作品で大切にしたいことは何ですか?
栗山 
自分が見て面白いと思えるかどうか。映画をたくさん見る人間なので、自分がまだ見たことのない、自分が見たい映画を作るというのが根本にあるんですよ。気をつけているのは、「何かに似ている映画」にはしない、ということです。オマージュ的な遊びはたまにするんですけど。僕は年間で800本から900本を見ている時期もあって、見たことのない映画が少なくなってくるんですよ。「こういう風な映画を観たいな」と思って、そういうのに当てはまる映画が無い時、作りたいなと思います。
__ 
それは、例えばどんな映画ですか?
栗山 
これは僕が写真家としても思っていることなんですけど、「人が人を、ちょっとでも好きになれるような作品」という明確なテーマがって、それは映画作りでも共通してると思います。
__ 
それはどういう瞬間に現れてくるのでしょう?
栗山 
前作「なかよくなれたらいいな」では、ラストシーンで3人が会話をしているシーンがあるんですけど、周りからはあのシーンはいらないんじゃないか、と言われたこともありまして。でも、あのシーンがなければ僕の映画じゃないと思うんですよ。なんか愛情が芽生えるんですよ、あの瞬間に。たったワンシーンで違うんだから、映画って不思議なもので。今回の映画も、感情が芽生える瞬間はあると思っています。
__ 
観客に感情を芽生えさせるって、一つの大きなテーマですね。
栗山 
そういうことができる映画監督がいるんですよね。例えばヒッチコックは自分の映画の上映で観客の感情の流れを読んで、指揮者のように操ることができた、という逸話が残っていますね。
__ 
人を好きになる、そんな感情を抱かせる。本当に遠大なテーマですよね。
栗山 
人間賛歌、というのがいつも念頭にあります。やっぱり色々な作品で使われるテーマですよね。人間のダメさも見せてそれでも好きになるような作品もあるし、本当に人間が嫌いになる映画もあるし。やっぱり人間が出てこない映画というのは存在しないんですよね。動物映画でも、しゃべったりであるとか、擬人化したかのように演技をしているし。映画というのは人間的な行為なんですよ。中でも「人が人を好きになる」というのは僕の普遍的なテーマだと思います。実現するのは難しいですけど。

映画を撮る幸せ

__ 
栗山さんが映画を撮り始めたのはどんな経緯があるんですか?
栗山 
東京で役者をやっていたんですけど、やめてからしばらくぶらぶらしていたんですね。その時に、仕事の都合で休みが入って、大阪に一回遊びに行ったんです。その時、武信貴行さんと大宮将司さんに映画を作らないかと言われて。「どうかなあ・・・」と思ったんですけど、しばらくしてその気になって、お二人に電話をして、撮影することになりました。
__ 
なるほど。映画に興味を持ち始めたのはいつからですか?
栗山 
高校生の時、かな。一人で映画館に通い始めて。アルバイトのお金で学校の帰りに映画館によって映画を見ていました。その頃には役者にも興味が出始めていて。大学に入ってから役者を始めました。
__ 
今映画を撮っているのは、どんなモチベーションからですか?
栗山 
面白いからですね、すごく大変ですけど。個人で、しかもインディーズでやってるから。映画祭に呼ばれて行っても、周りの監督さんのレベルが高すぎて、自分の至らなさを痛感するんですけど。でも役者をやっていた頃より10倍は楽しいです。30倍は大変ですが、100倍くらいは幸せです。

質問 nidone.worksさんから 栗山 陽輔さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいたから質問をいただいております。nidone.worksの渡辺さんと加藤さんです。「怖い映画や役柄に向いてる役者とは?」
栗山 
雰囲気、空気感を持っている人ですね。まず欲しいのは、浮遊感。存在感のなさがある、みたいな。あとは、何もしていない時に注目を集められる人。座っているだけの姿にふと目が行くような人は向いているんじゃないかな、と思います。

二度と見たくないような映画

__ 
いつか、どんな映画を撮りたいですか?
栗山 
二度と見たくないような映画を撮りたいです。面白くないから見たくない、というわけではなくて。すごくいい映画だけど、もう一度見るのはどうだろう、というくらい、見ていて辛くなるような映画を作りたいです。例えば「偽りなき者」という映画があって、3、4年ぐらい前の傑作で、DVDを持ってるんですけど一回観たきり観ていない。「ダンサーインザダーク」みたいな方向性ですね。映像の作り方がどうとかではなく、映画そのものとしてインパクトがあるものが作りたいです。
__ 
それは、幻滅したくないから?
栗山 
いえ、どういう流れか知ってるわけですから、辛すぎて胸が苦しくなるのが分かるんですよ。胸をかきむしりたくなるような。
__ 
そういう映画って、私も2、3作品ありますが、体験に近いですよね。

写真でつたえる仕事

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
栗山 
ありがとうございます。こういう本、いいですよね。僕も人物写真を撮影していますが、参考にします。

nidone.works、その由来と今の目標について

__ 
nidone.worksの、渡辺さんと加藤さんにお話を伺います。よろしくお願いします。
渡辺・加藤 
よろしくお願いします!
__ 
nidone.worksさんは、演出の渡辺さんと制作の加藤さん、そしてゆるやかなともだちを集めてのチームなんですよね。
加藤 
そうですね。毎公演に参加してもらってるメンバーも多いけど、公演の度に、ゆるやかなともだちを集めて活動しています。
渡辺 
もともとは僕が一人で、自分の動画作品のポートフォリオとしてウェブサイトを作ったんです。そのサイト名が「nidone.works」という名前でした。
__ 
nidoneとは、二度寝の事ですか?
渡辺 
その二度寝であってます!二度寝してる時間って幸せなので、そういうポジティブな意味と、あと、二度寝したい欲に勝てる作品や公演づくりをしたいという思いを込めています。名前がゆえ、メンバーが稽古に遅れてきても「二度寝ワークスしちゃった」といえば、あはは、ってかんじで。
加藤 
たまになら許す。何度も繰り返すとアウトッてかんじですね。(笑う)
__ 
フリースタイルですね。そんなnidoneの皆さんは最近どんな感じですか?
加藤 
先日、立誠小学校での「チッハーとペンペン」の公演が終わったところです。このチッハーとペンペンを一番最初に上演したのは去年(2016年)の2月、造形大の学内でした。その時は本当に、「こんな舞台作品を作ってみました」という感じで、今後も続くとはあまり予想していなくて。でも今は結構、彼の中での悪巧みがなんとなく出てきて。それから段々と私たち主メンバーも集まり始めて、どうやら「これを仕事にしていきたい」という思いが就職活動を目の前にした私たちの中に芽生えてきたんです。それで今回もう一度、チッハーとペンペンを1年越しで上演しました。企業さんや各団体の代表さんに、お客様からの口コミをアピールして。1年経ってようやくこの春、走り出したという感じです。
nidone.works
成長過程にいるこどもが おとなになることを、少しでもポジティブに捉えることができる作品づくりを目指しています。 メンバーは作/演出の渡辺たくみ、制作の加藤なつみを中心に、作品ごとにゆるやかなともだちを集めて活動中。舞台作品では、こども自らが表現することを後押しできるように、 こどもたちが演者とコミュニーケションをとることでストーリーが進むよう構成しています。(公式サイトより)
こどもトキドキおとなに贈る、ハートフルおしゃべり劇『チッハー と ペンペン』(ver.3)
日程:2017年 4月28日(金)~30日(日)会場:元・立誠小学校 作.演出:渡辺卓史

出演:松田ちはる 諏訪七海 荻原萌子 山口慶人
美術:山本かれん
照明:福岡想 西本春佳
音響:安東優里
演出助手:横田樹菜
制作:加藤奈紬 石口さくら
宣伝美術:宮城巧