旅をする

___ 
影響されやすいとは。
久保内 
子供のころからなんですよ。ヒーローごっこをはじめ一人でお話を作ったりとか。小さい時は、お風呂場でウルトラマンと怪獣のソフビ人形を使ってお話を作ったり。アニメとか映画とか、自分でいいなと思ったものは真似て遊ぶというのが多かったです。
___ 
なるほど。今までご自身が作られてきた中での一番の傑作は?
久保内 
ええとですね・・・僕、よく中二病キャラと言われているんですけど(笑) リアルに14歳の頃から作り続けているお話がありまして。というのは、今まで読んだライトノベルとかに、まあ自分自身を登場させてオリジナルの話を作るんです。続き物で、全く別の本にも登場させて色んな世界を旅する話なんです。主人公である自分にもオリジナルの色んな設定が生まれてきて、それが広がっています。
___ 
素晴らしい!仮面ライダーディケイドみたいだ。
久保内 
そうなんです。自分だけの必殺技を考えたりしてます(笑)
___ 
世界が繋がっているんだ。いいなあ。ラノベか・・・・私はそんなにラノベは読まないんですが、西尾維新だけは滅茶苦茶好きで影響受けてます。伝説シリーズが一番好きです。無能力者が主人公なんですけど、科学兵器や宇宙人や魔法使いを相手に、冷静さだけで戦うという。
久保内 
あー分かります。力あるやつが無双するのはそれはそれで爽快さがありますけど、何の力もないヤツが頑張って戦うというのは熱くなりますよね。
___ 
古典的な週刊少年ジャンプ的発想ですね。

演劇を始める

___ 
久保内さんが演劇を始めた経緯を教えてください。
久保内 
小さい頃から演じる事は好きでした。母が小学校教諭だったので、よく朗読とかを聞いて育ったこととか、戦隊ごっこをするのが好きだったりしたからですかね。ただ、その時の事と今演劇をやっているきっかけは別だと思います。僕大学に入ったぐらいでアニメにハマったんですけど、その時観た作品が学園生活モノで、その中の登場人物たちが何て楽しそうなんだろうと思いまして。自分がそこにもし入ったら、と思って、その時に声優の存在を知って養成所に入って、というのが今の始まりですかね。
___ 
劇団ZTONに入ったのは?
久保内 
養成所が終わってこれからどうしようと思ってたんですが、そこに通っている間にだんだん、声優だけじゃなくていいかな、と思えてきて。演じる事自体が楽しくなってきて、お芝居は続けていきたいな、と。当時お世話になってた恩師の先生に相談したら「やりたいならやってみるといい」と勧めて頂いて。当時僕もある程度歳が行ってたんで、始めるんだったら今すぐだと思ったんです。それと、どうせやるんだったら自分の好きな事をやろう、と。さっき言ったんですがヒーローものとか、あと剣自体が好きなので殺陣をやってみたいな、と。恩師も「殺陣でも何でも、役者として何か一つ出来る事があると良いよ」と仰ってもらったので。それで、京都で殺陣をやっている劇団を探して見つけたのが殺陣道場をやっていたZTONでした。

バロルと僕

___ 
久保内さんの演技で非常に印象に残っている演技があって。去年ABCで上演した「ティル・ナ・ノーグ」で、主人公の叔父・バロル役をやってたじゃないですか。後半は敵側で、主人公のルー(演・前田郁恵)に「お姉さんの願いに、本当に何も思っていないの?」って詰られて、「ない」と答えるセリフ。あの演技は素晴らしかったです。
久保内 
ありがとうございます。
___ 
あれがなぜ素晴らしかったかを解説すると、血縁である姪の問いかけは彼にとって愚問ではあるが、とりあえず考え、しかし答えが出る前に口から拒否が飛び出してしまう、という呼吸です。彼の決意の固さと、それ以上の憎悪がよく表現されていました。
久保内 
あの時は、「少しでもルーの言葉を聞いてしまったらダメだ」という気持ちがありました。ここで自分の決意が揺らいでしまったら、今度こそ本当に自分が大切にしているものを全て失ってしまう。たとえ、自分の中からせり上がってくるものがあるとしても、それを押しつぶすというか覆い隠さなくてはいけない。という気持ちでした。
___ 
なるほどね。
久保内 
バロルは僕も凄く印象深かったですね。僕自身経験したことのない、激しくて深い感情に迫った役だったので。だいぶ、苦労したかな、落ち込んだり泣いたり。
___ 
その甲斐があったんじゃないでしょうか。
久保内 
そうですね、ありがたいことに評価も頂いて。同時に、あれが終わったあと、バロルが重荷になっていた時期もありました。嬉しい反面、あれを越えないといけない、どうやったらあそこにまで行けるんだろう、と。必死だったんです。それ以降、どうしても「自分にはもっと出来たんじゃないか」という思いが強くなっていて。それで悩んだりもしましたね。
___ 
話は変わりますが、「ティル・ナ・ノーグ」から、久保内さんのポジションがちょっと決まったりしてましたね。出田さんとかも、ティルナでのエオヒド役とか、何というか・・・
久保内 
そうですね、英人さんはちょっとぶっ飛んだ役が多くなった気がしますね。曹操とかも。
___ 
曹操もエオヒドも、序盤はまともな好青年なのに後半になると中二病になったりしますもんね。
久保内 
振れ幅が凄いですよね。
___ 
そこで、今回演じられる地の章のハクト役。主役ですからね。
久保内 
最初に聞いた時は「えっ僕ですか?」と思いました(笑) 河瀬さんが何を意図されて僕をそこに置いたのかは分からないんですが、頂いたからには全力で臨みたいと思っています。
劇団ZTONvol.12「「ティル・ナ・ノーグ ~太陽の系譜~」」
公演時期:2016/7/22~24。会場:ABCホール。

天狼ノ星の魅力~今回はちょっと違うかも~

___ 
天狼ノ星の魅力を教えてください。
久保内 
壮大で重厚な世界観ですかね。覇道泰平や他の作品も壮大で魅力的な物語だと思うんですけど、僕が今まで見てきた中でも一番スケールが大きいんじゃないかと思います。実は、再演するにあたって一部お話も書き換わっています。それと、殺陣も今回はちょっと違うかもしれないんです。
___ 
おお。
久保内 
あ、こういうのもやるようになったんだ、と思って貰えればな、と。
___ 
天狼ノ星の初演の時、土肥さんに取材したんですが、その時は「いや武器って当たったら死ぬよね」という考え方に基づいた作り方をしていたそうで。確かに天狼では3回くらい当たったら死んでましたね。フムペとか。セタは死ななかったけど(あれはユクが急所を外しながら斬っていたのとセタがしぶとかったという要因がありましたけど)、基本的には致命傷として扱っていました。
久保内 
あ、そうなんですね。
___ 
そう、一回斬られたら死ぬハズなんですよ。そこは実は緊張感のために必要なのかもしれない。ただ、自動回復制(斬られても時間が経つと全快する)の殺陣もありましたけどね。風ヤミの国とか。
久保内 
まあウチの殺陣は基本、一回斬られたぐらいじゃ死なないですからね(笑) 斬られていてその動きは出来ないだろうとか、確かに僕らの殺陣はリアルさは薄いかもしれませんね。
___ 
あ、いや、引け目に感じなくても。
久保内 
いえいえ、どちらかというと僕らの殺陣は、パフォーマンス重視なところがあるので。僕は殺陣にはいくつか種類があると思っていて、僕らのように演武として考えることもあれば本若さんのようにリアルさを追求する方もいるので。僕は個人的には、どちらかというとリアル志向の方が好きなんですが、殺陣道場から入って為房さんの下でやってきた身としては、為房さんの求めるキレイさにも憧れや素晴らしさを見出しているので、自分としては両方を目指せるようでありたいなと思っています。
___ 
両方を目指す。
久保内 
戦っている時は生死の間をさまようリアルな戦いをして、でも斬る瞬間や斬られる瞬間はキレイに魅せる、というのを目指していきたいと思っています。

質問 藤原 美加さんから 久保内 啓朗さんへ

___ 
前回インタビューさせていただいた、KIKIKIKIKIKIの藤原美加さんから質問を頂いてきております。「本番前にこれは必ずする、みたいな儀式はありますか?」
久保内 
いくつかありますね。一つは、自分自身に言い聞かせてる事があって、「楽しんでいこう」「思い切りやろう」「さあいくぞ」と(暗示じゃないですけど)。他には殺陣のシーンの前に必ず手に息を吹きかける癖がありますね。あと、必ずやってるのは、武器に呼びかけてます。
___ 
おお、そうなんですね。
久保内 
これまで僕が使ってきた歴代の武器には全部名前を付けたりしてまして(笑)。始める前に「よろしくな」と呼びかけたり、終わった後に「お疲れさん」「次もよろしくね」と言ってます。
___ 
素晴らしい。
久保内 
小さい頃からの癖で、アニミズムじゃないですけど、物にもいろいろ宿る事があるんじゃないかと思うんですよね。じゃあ信頼というか礼を尽くせば応えてくれるんじゃないかと。武器だけではなくて、劇場に対しても同じで、心の中で「よろしくお願いします」と呼びかけるようにしています。

なりたいという気持ち

___ 
いま、どんなことに興味がありますか?
久保内 
芝居を続けていくにあたり、一つの目標があって。お芝居の先生になりたいというのがあるんですよ。ちょっと話に出した、恩師の先生に凄くお世話になって。お芝居の基礎だけじゃなくて心構えであったりとか、役者としてのスタンスであったりとかを教えて頂いたんです。自分の人生に関わる大事な事を教えて頂いて、僕も恩師のようになりたいな、と。あと母親が教師だったというのもあって、お芝居やってなかったら教育関係の仕事を目指してたんじゃないかなと思うんです。
___ 
先生になる、と。
久保内 
お芝居を通して、その人の人生の糧になるような、道しるべを探すお手伝いが出来たらいいな、というのがあって。お芝居って自分自身と向き合って、同時に他人と関わる道を探す事でもあるんですよね。そういうお手伝い。芝居を使った教育やコミュニケーション手法を学びたいな、と思っています。

体の端々から

___ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
久保内 
ちょっと、今年に入ってから、お芝居を重ねられてきた大先輩の方々のお仕事を間近で見る機会を頂いて。やっぱり凄いな、と思うのが表情とか目の動きだとかだけで全てを語るんですよね。僕はまだ大きな動きとか表現、技術に頼りすぎるところがあるので。本当にその役にしっかり迫れていたら、体の端々から表現が出せる、色々な事が伝えられる。そういう芝居を目指したいです。
___ 
そこまで入り込んだ演技となると、凄く遠くからでも分かりますからね。お客さんが深く感情移入する訳ですから。
久保内 
その役の真に迫らないと出ないんですよね。そこまでいってから、例えば小屋のサイズに合わせて調整したり。
___ 
そうですね。そして、そぐわない演技(本当に全然テキストにもサブテキストにも関係ないという意味で)をしてしまうと、ボタンが合わなくなって、同調が切れてしまう。難しい事ですね。

劇団ZTON新人公演05「しぐれ」の思い出

___ 
直近の公演で言うと新人公演「しぐれ」でしたね。殺陣がまたとてもかっこよかったです。
久保内 
ありがとうございます。今までにないぐらいの量の殺陣をやらせていただきました(笑)
___ 
久保内さんの剣の使い方、手首の動きが素晴らしいですね。
久保内 
あれはもう、為房さんのを参考にしながら。
___ 
先日行った河瀬さんのインタビューで、ある映画に影響を受けて脚本を書き直したという事ですが、「ラ・ラ・ランド」の事でしたね。
久保内 
そうですね、僕も稽古期間中に観に行って「これかあ」と思いました。
___ 
残酷な終わり方でしたね。しぐれもしぐれで、イヨへの執着が強くなり過ぎてかなり行き過ぎた行動になってましたね。偶然の出会いから仲間として受け入れてもらい、家族の事にまでイヨと分かち合い、そして離れられて・・・まあストークしますよねきっと。で、最後には・・・
久保内 
実はしぐれとしては満足して逝ってました。イヨに対して「ごめんな」という気持ちがある一方、「自分を止めて欲しい」という思いもありましたから。
___ 
イヨもね、しぐれの義母を殺害しちゃう時に、泣きながら、でも迷わずに誅しましたよね。あの演技がとても良かったです。義母も、抵抗するという演技があまり無かった。終焉している関係性に疲れ果てた人々。
久保内 
イヨは実はあそこで殺したくなんかなかったんじゃないかと思うんです。ただ、このままの状態を続けていたらしぐれが壊れてしまうと思って、彼を守るため、自分への返り血を越えて殺したんじゃないかと感じられたんです。そのことで、しぐれはしぐれで彼女に負い目が出来てしまう。この人を大切にしたいと思っていたのに、自分のせいで重荷を背負わせてしまった。でもそのうえでイヨは自分を愛してくれると言ってくれたので、何としてもこの人を守ろうと決意したんですね。
___ 
キチガイストーカー誕生の瞬間ですね。
久保内 
そうですね(笑)。
劇団ZTON新人公演05「しぐれ」
公演時期:2017/6/3~4。会場:人間座スタジオ。

アクロバットを覚えたい

___ 
今後、こんな事がしたい、とかはありますか?
久保内 
趣味としてでやっていいんなら、アニメとかゲームみたいな、いい大人がリアル中二病みたいな趣味全開のものをやってみたい、というのと、叫び芝居という訳じゃないですけど、生の感情をむき出してぶつけ合う芝居を一度やってみたいです。
___ 
なるほど。いま、どんな事に興味がありますか?
久保内 
教育関係以外なら・・・アクロバットを覚えたいですね。バク転とか側宙とか。
___ 
側宙?
久保内 
腕を使わない側転ですね。ああいうのが出来ると殺陣の幅も広がるなー、と思って。我流でちょっと練習したりしてます。
___ 
そうなんですね。気を付けてくださいね本当に。それで死んだら意味が無いですねしかし。
久保内 
はい。気を付けて練習します。

もう少し、殺陣の話

___ 
ZTONの殺陣の良いところって、きっと、合理性なんじゃないか?と思っていて。パフォーマンスでありながら相手を制する手段として。
久保内 
これは恩師からの受け売りなんですけど、「殺陣は究極の会話劇だ」と。殺陣が出来る人はお芝居も上手いんですよね。殺陣をやるときは相手の目を見るようにしてるんですけど、レスさん(レストランまさひろ)も言ってたと思うんですけど、目を見る事でお互いが伝わってくるというか。殺陣って殺し合いなので、剣の振り一つ一つに気持ちが乗るんですね。逆に言うと気持ちが乗っていなければキレイに見えないし何も感じないものになると思っていて。僕はそこを目指すようにしています。一刀一刀の重さというか。極端な話、殺陣をやっているときの方が、お芝居をしている時よりも気持ちが入りやすい瞬間があって。
___ 
おおっ!
久保内 
完覇道の時に、夏侯淵を演じて、平宅さんの張飛と殺陣をしたんですが、やってたらなんかこう、楽しくなってきて。そういう演出が先にあった訳ではないんですが、お話の上でもそういう関係性になっていって。
___ 
お互い、好敵手ですからね。
久保内 
全力を受け止めてくれる相手がいることに楽しさが芽生えてきて。それが自然と会話や表情に出てきていたと思います。
___ 
ZTONの殺陣の美点は、きっとそこですね。見えないぐらいの速さとかキレイさや工夫の奥の、会話している、というところですねきっと。
久保内 
そう思って下さると嬉しいです。たまに河瀬さんが「やっぱり大事なのは気持ちを載せる事。本来は殺陣なんかしなくてもいけるんだから」と言ってたりします(笑)
___ 
爆弾発言ですね。
久保内 
なぜ殺陣をするのかといえば、気持ちが載るから、であって。載らないんだったらやめたほうがいい。為房さんがそれをより良く見せるようにしてくれる。僕はZTONの殺陣は会話劇だと思っています。

自然になりたい

___ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
久保内 
自然になりたいですね。お芝居をするときに最近心掛けているのが、「自然体でいるようにしよう」という事で。今まで役に対して、こうしようとかこうありたいとか、それはそれで大事なんですけど、周りが見えなくなってしまうこともあって。でも今年客演をさせていただいた真紅組さんや新人公演を経て、受け取るという事が少し分かった気がします。肩の力を抜いて周りを広く見ることが大事だな、と。そうしたら、自分の「やりたい事」に対して用意をしなくても、自然とその時になってやりたいな、と思うようになってきたんですね。それが自然なお芝居に繋がっていくし、これをもっと発展させていきたいなと思っています。・・・相手の事を考える、という事かな。
___ 
相手の事を考える。
久保内 
相手が何をしたいのか、何を発信したいのか。それを自分で受け取れれば、自然と、自分の方は何がしたいのかというのを相手にパス出来る。相手も自分の意志を受け取って自然と返してくれる。それが噛み合った瞬間は凄く、ハマったという感触になるんですよね。常に柔らかい心で臨みたいと思っています。
___ 
そうしたセッションが生み出されやすい環境を作るのが演出の仕事なのかもしれませんね。とても複雑ですが。

レッグサポーター

___ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
久保内 
ありがとうございます。開けても。
___ 
どうぞ。
久保内 
(開ける)丁度必要としていました(笑う)だんだん動きが激しくなってきたので。本当に助かります。

きたまり/KIKIKIKIKIKI新作ダンス公演「悲劇的」 2017年8月4日(金)~8日(火)@アトリエ劇研

__ 
今日はどうぞよろしくお願いします。最近藤原さんはどんな感じでしょうか。
藤原 
最近は、KIKIKIKIKIKIの次回公演「悲劇的」の稽古です。それから、しばらく前に京都に引っ越してきたんですけどようやく慣れてきたかな、という感じです。
__ 
京都にお越しになったんですね。慣れてきましたか。
藤原 
だいぶ。自転車のスピードにも慣れてきました。
__ 
そうですか。自転車、気をつけてくださいね。
藤原 
はい(笑う)。これまで神戸のアーティストシェアハウスに住んでいたんですけど、思い切って京都に出てきて。最初は大丈夫かなと思ってたんですけど、意外と早く慣れてきて、良い感じです。
__ 
これから地獄の様に暑くなりますけどね。京都は。
藤原 
ああー、そうなんですよね。実は前住んでいたシェアハウス、自分の部屋にしばらくエアコンがなかったので、エアコンのあるリビングで寝たりしていました。下の階が鉄工所だったので、サウナというか、鉄板焼きみたいでした。今の京都の部屋にはクーラーがついているので大丈夫です。
__ 
気をつけてくださいね。熱中症。
ダンスカンパニーKIKIKIKIKIKI
2003年に京都造形芸術大学在学中であった代表きたまりを中心に「KIKIKIKIKIKI」を設立。2006年、大学卒業を機に本格的に活動を開始。「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2008」ではカンパニー作品で“オーディエンス賞”を受賞。受賞作品でもある代表作「サカリバ」はこれまでに3カ国15都市で30回に及ぶ上演を重ねる。2010年?2012年伊丹アイホール【Take a chance project】や【KYOTO EXPERIMENT2011】新作共同制作等、作品数多数。2013年より2年間の活動休止を経て2015年活動再開。現在、グスタフ・マーラーの交響曲を扱い、音楽と身体の対峙/共鳴を目指すダンスプロジェクトを進行中。最終的にマーラーの全交響曲でダンス作品の創作を目指している。また、ダンスを通じて身体のもつ面白さを幅広い世代に提案する為に、これまでに音楽家とのセッションイベント「ききみみ」や「トークセッション・最近どない?」等、作品上演だけでなく、イベントも多数企画している。(公式サイトより)
きたまり/KIKIKIKIKIKI新作ダンス公演「悲劇的」
おどることは 宿命だから。

きたまり率いるダンスカンパニーKIKIKIKIKIKIが2016年よりアトリエ劇研で開始したマーラー交響曲を使用しダンス作品を上演していくプロジェクト。2016年1月に第1番「TITAN」、10月に第7番「夜の歌」に続き、今回シリーズ第3弾・交響曲第6番イ短調「悲劇的」全曲を使用し閉館直前のアトリエ劇研にて上演。どうぞご期待ください。

使用楽曲 マーラー交響曲第六番イ短調 悲劇的
振付演出 きたまり
  出演 花本ゆか 藤原美加 益田さち 斉藤綾子 きたまり
  日時 2017年8月4日(金)~8日(火) 5回公演
  会場 アトリエ劇研 

■公演日時

8月4日(金)19:00-
8月5日(土)15:00- ◎余韻の時間
8月6日(日)15:00-
8月7日(月)19:00-
8月8日(火)15:00-
*客席が特殊な形状なため、動きやすい格好でお越し下さい。
高所が苦手な方、大きな段差の乗り越えが困難な方は、ご予約の際にお知らせ下さい。
(受付は開演の30分前、開場は15分前より開始いたします。)
◎余韻の時間「Listen, and…」終演後、同じ作品をみた観客同士で、感想を話し合う場を設けます。対話を通して多面的に、より深く作品を味わおうという試みです。進行:川那辺香乃
■上演時間 約90分
■料金  前売り予約開始 2017年6月6日(火)
予約一般 2700円 
予約ユース(25歳以下) 2300円(当日受付で年齢を証明できるものをご提示ください)
当日料金 3000円(一般、ユース共に)
■ご予約はこちら
■試演公演
7月28日(金) 19:00- ◎余韻の時間  
会場 城崎国際アートセンター 入場無料
スタッフ 舞台監督 浜村修司、照明 吉田一弥、音響プラン BUNBUN、音響オペレーション 小早川保隆、
楽曲アドバイザー 田中宗利(関西グスタフ・マーラー交響楽団 芸術監督)、西村理(大阪音楽大学 准教授)
振付アシスタント 川瀬亜衣、制作 川那辺香乃、制作アシスタント 野渕杏子
助成 公益財団法人朝日新聞文化財団 芸術文化振興基金
協力 城崎国際アートセンター
共催 アトリエ劇研  主催 ダンスカンパニーKIKIKIKIKIKI
京都芸術センター制作支援事業

有終の美

__ 
「悲劇的」。マーラーの楽曲を題材にしたKIKIKIKIKIKIの作品、前回に引き続きの出演ですね。今回はどんな作品になりそうでしょうか。
藤原 
今回は「タイタン」「夜の歌」に比べて、音楽としてはまだ覚えやすい、結構ポピュラーな感じなんです。多少分かりやすくて、ダンサーとしても体に落としやすい部分があります。まだ言えないんですが、今回は「ある事」を徹底していて。これは本番まで内緒なんですけど、そのおかげでだいぶ体がボロボロです。ちょっと年齢を感じますね、20代前半の頃は大概、シップを貼っておけば多少無茶をしても踊れたんですけど。体のケアをきちんとしていかないと、と改めて思いました。筋肉痛なのか、怪我をしているのかよくわからない状態が続いていて。
__ 
そうなんですね。何だろう、ある事って。全編、片足で踊るとか?
藤原 
あ、ちょっと違うかな。でもハードです。お楽しみに。
__ 
楽しみにしておきます。しんどいですか。
藤原 
ある一定のラインを超えたら楽しくなってくるんですけど、そこに行くまでの稽古が大変です。振付作品って、身体が流れを覚えてくれると、その先の段階に行ける、と言うのがあるんですが、そこまで行かないとダメで。ただ、振付の持つ一定のリズムを逸脱したところに、本当に楽しいのがあるんですよ。そうならないとホンマにしんどい。あと、劇研が今年の8月に閉館という事で。「悲劇的」で、有終の美を飾れるように頑張ります。是非見に来ていただけたらと思います。

「ダンスが降ってくる」

__ 
いま、稽古はどんな段階ですか?
藤原 
振付を覚えて音ハメまでいって、その次の段階まで来ていますが、なかなかその先に行けないんですよ、毎回ぶち当たるんですけど。そこからがダンサーそれぞれの作業なんですよね。味付けの作業で今まさに悩んでいます。
__ 
「ある一定のラインを超えたら楽しくなる」とさきほどおっしゃいましたが、まさに今、振付の枠を超える作業中なんですね。
藤原 
そこを出られるというのが私の場合本当に難しくて。体の使い方であったり、細分化したり、が大事だとよく言われるんですけど。今回は城崎で十日間、KIKIKIKIKIKIでレジデンスに行かせて頂いてそこで製作をするんですけど、毎日踊りっぱなしで、いやがおうにもダンスに向き合わざるを得ないよなあ、と。とりあえず踊りきる体力をつけます。藤原美加の踊りをお見せできるようにしたいです。
__ 
ラストスパートですね。
藤原 
そうですね。明日から最後の楽章の稽古を始めます。
__ 
自分の「味付け」で悩んでいると。
藤原 
はい。逆に聞きたいんですが、私のダンスをよく見てくださっているじゃないですか。という印象ですか?
__ 
私が見た印象で良いのなら、丁寧なダンスが常にイメージを呼び込んでいて、そこに時々乱調の予感がある、という感じです。安定している空気の中に、まるで不穏さを期待しているかのようなフレーズがあって、でもそれはお風呂の湯面に消える小さな渦のように消えてしまう。その時のようなダンスかな。
藤原 
うーむ。
__ 
藤原さんの中に眠っている何か、ドラマかトラウマの様なものを感じます。その不穏さはけして不快ではなく、乱調として美しい。「bomb#3」でソロを踊った時にそう感じました。
藤原 
ありがとうございます!あれはなかなか大変でした。自分で振り付けをすると一つのパターンに固まってきてしまうので、それを崩すような提案をしていきたいなと思ってるんですけど。恐れては駄目ですよね。振付家ダンサーの黒沢美香さんは、私は本当に唯一の人だと思っていて。jazzzzzzzzzzzz-danceに出演させていただいた時に、今までにない感覚を味わったんですよ。美香さんは精神と身体のピーク、ここから先に行くとどうなるか分からないような崖の淵に連れて行ってくれて。でもそこから身を投げ出して飛び込むのは自分でないといけない。自分自身でそこにいけるようにならないといけないんですけど、そこが難しいな。でもそこから飛びこんだら、舞台上が全く変わるんですよ。めちゃくちゃ幸せなんですよ。本番中の緊張感がずっと続いてご飯が食べられなくなる事態になって。でもその瞬間に起こっている現象がダンスなんだろうなと。それをどんな時でも起こせるようになりたい。美香さん的には「ダンスが降ってくる」という表現なんですけど。
__ 
藤原さんが行きたいのはそこなんですね。
藤原 
そのためにはまず、器が整っていないと来るものも来ないので。でも、いつ来てもいい状態にしておかないといけない。それを振り付けで起こすにはどうすれば良いのか、というのを考えています。
__ 
難しいですよね。
藤原 
難しい。本当に。
__ 
私だったらどうするだろう。冷却期間を置く、とかかな。
藤原 
そうですね。熟成させようかな。開けたら発酵したものが出てくるみたいな。

私を取り囲む

__ 
藤原さんがダンスを始めたのは、どんな経緯があるんでしょうか。
藤原 
小学校2年生の時に、地元のダンス教室に通い始めたのが最初です。母が最初に始めていて、子供のクラスもあるということで、勧められて始めました。かなり自由なスタジオで、子供が作品を作ったりするんですよ。すごく楽しかったです。踊ることの楽しさを覚えました。
__ 
子供の頃は何に興味がありましたか?
藤原 
子供の頃から今までずっと興味があるのはアニメです。なんかすごく好きなんですよね。別の世界にいけるし元気貰えたりもするし。今は「あしたのジョー」を読んでいます。深いなあと思って。本当に漫画が好きですね。最近、家の近くに漫画喫茶が出来てつい行っちゃいます。それと、歌を歌うことも好きなんですよ。中学までコーラス部で歌っていたので。歌い上げる系と、マキシマムザホルモンとかアニメ曲とか、誰も知らない曲とかを歌ってストレス解消みたいな。
__ 
今のご自身にとって、踊ることについて考えているテーマを教えてください。
藤原 
私、大学生まで創作ダンス部だったんですよ。集団群舞なので、テクニックといえば体の美しい動かし方や、足をどこまで上げられるかとか、そういう中で生きてきたので、身体の中よりも外のフォルムをどう見せるかについてをずっと考えていたんです。もちろんフォルムの見せ方、テクニックは大切ですよ。でも、国内ダンス留学を卒業してぐらいから、体の中で起こっていることについてを考えるようになって。すごく、肉体とか骨のことであったりとか温度のことであったりとか、空間とかを削ぎ落とした状態で踊っていたんだなあ、と思うようになって。周囲のことを感じているということを受け止めた上で、どうそこにいるかという居方、身体の置き方について興味があります。でもその昔培ったフォルムというものも今必要とされているんですよね。それをKIKIKIKIKIKIで考えています。あまり感じていなかった部分を感じる感受性。感情と身体の関係性。私、ヴィパッサナー瞑想の合宿で10日間、あ、ヴィパッサナー瞑想ってわかりますか?ブッダが考案した瞑想法なんですけど、目を閉じてつま先から頭のてっぺんまでとにかく身体が感じていることをただ俯瞰するという。それが私にとってはすごく発見だったんです。感情が起こった時には、身体のどこかに、感覚が出てくる。これはすごくダンスじゃないか、と思ったんですよね。これか!と。そして規則正しい生活で、誰とも喋らないし。研ぎ澄まされていく感じだったんですね。かなりハードだから簡単にはお勧めは出来ないですけど。ダンスに生かせるはともかく、体と感情は繋がっていることが実感するできたので。ダンスに出るんですよねきっと。
__ 
感情なんて伝染して当たり前のものだから、身体を使った表現だったらそりゃ伝わりますよね。いわゆるセンス?だって伝わると思いますよ。
藤原 
さらされていますよね。本当に。
__ 
言葉とかが使えないので、ダイレクトに伝わりますよね。
藤原 
どれだけ体で語るかというところですよね。やっぱり隙があっちゃ駄目ですよね。よく言われることなんですけど、後ろ姿に隙があるダンサーはダメだ、と。野生動物の様なダンサーになりたい。難しいですけどね。
__ 
先ほどから「強い」という言葉が多用されていますが、「強い」がお好きなんですね。
藤原 
しなやかなんだけど、軸がある。そんな強さを持ちたいです。
__ 
そうなりたいですか?
藤原 
なりたいです。憧れていますね。頑固さとは違いますけどね。

内実

__ 
踊っている時に、何を考えていますか?
藤原 
私一度、自分が何を考えて踊っているのか検証しようと思って、意識して踊ってみたことがあるんですよ。そしたらむっちゃ考えてるんですよ踊っている時って。自分だけの即興のソロの作品の時とか、お客さんの熱量、雰囲気とかをみて次に何を繰り出すのか決めていた、ということもあって。でもどちらかと言うと、頭の中で考えているというよりは体が考えていると言うのが近いかもしれません。
__ 
例えば?
藤原 
何て言えばいいのかな・・・「もっと、もっとためて!あれっ早すぎた!」みたいな感じ。結構コントみたいな事が起こってますよ。うんうん、あとはいい流れの時に「このタイミングを逃しちゃだめだ」とか、流れが切れたからここはリセットするために歩こう、みたいな。後は意図的に、踊っている時に何を考えているのかを指示されている作品もありました。私が出た作品ではないんですが、前を向いているだけの振り付けで、実家の家の風景を思い浮かべて見つめて下さい、みたいな。その時の目が美しいから、ということだと思うんですけど。すごく面白いなと思いました。すごく確かで美しい体になるんですよ。
__ 
私も一度、役者をやっていたことがあって。同じように、自分が舞台でどんな考えを押しているかを検証してみたことがあります。
藤原 
ええっ。
__ 
したら、ずっと自分を操っているような感じの自分がいました。まあ、だからダメだったんだと思うんですよね。自分を見張るような意識からブレークスルーする必要だった。
藤原 
いや、でも、そういう目線は絶対必要じゃないですか。客観性を持たない人って、自分のやりたい放題にやるということじゃないですか。もちろんそれは必要だけど、それと、客観視している自分がいて、噛み合っていないと、作品を上演するには難しいんじゃないかなと思うんです。どっちが良いとかじゃないですけど、俯瞰しているタイプの人もいれば、演技に入り込む人もいる。
__ 
何も考えていなくても振付が出てこないといけない。
藤原 
そこは訓練ですよね。振付を意識していないと踊れなかったら、本番の舞台の上には立てないですからね。日常から徹底して習慣化しないといけない、って、常日頃から気をつけていないと、ずっと癖になってしまうので。

質問 海老飯 もぐもさんから 藤原 美加さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、第三劇場の海老飯もぐもさんから質問を頂いてきております。「動きの短所を長所に変える方法はないでしょうか」。というのは、彼女はモデル体型なんですが、まあ腕が長いから少し手を振っただけでとても目立ってしまう、と。
藤原 
めっちゃ素敵じゃないですか。えー。短所を長所に変える・・・でも私がコンプレックスだらけなので。何かなあ。自分で意図的にやってこなかったかもしれない。信頼できる人に「その動きはいいよ」とそこから言われて初めて気付くことがあるぐらいだから。でも、人と比べて違う部分をどうとらえるのかをずっと言われていて。大事だなと思います。って、人の事ならそう言えますけど。腕が長いってとても素敵だと思いますよ。

土の上で踊ること

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作品を作る時に根底にあるものは何ですか?
藤原 
私はぶっちゃけ振付家では全然ないと思っているんですけど、一つやってみたいことがあって。というか、それはこの間叶ったんですけど、土の上で踊る、というのが夢だったんですよ。
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ああいいな、それは。
藤原 
何か、一時期、自分の汚れ(けがれ)を払って土に帰るための準備をする、というのが夢だったんです。それがこのあいだ叶って凄く嬉しかった。あと、インドの旋回舞踊。私もよく知らないですけど、みんなで目を閉じて回り続けるんですがその姿が美しくて。一度、ちょっと回り続けてみようと思っていたんですが1分と持たなくて笑でも、何かをやり続けることによって一定の境界を超えられるような作品(なのかな、そう言っていいのか分からないけど)をやってみたいなと思っています。ソロで。人の体を振りつけるという所にはなかなかいっていません。
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何かの修行みたいな?
藤原 
社会性なテーマよりも、そっち方向に興味はあります。それをやるかどうかわからないけど。あと音楽との出会いかな。この曲で踊りたい、みたいな。あとはある一定のラインを超えるための振り付けを作るためにはどうすれば良いか。何かテーマから理論的に振付を組み立てるのは苦手ですね。
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旋回舞踊か・・・。
藤原 
美しいんですよね、すごく。ある動作を反復し続ける体って、惹きつける反面拒絶も与える事があるじゃないですか。その違いって一体何なんだろうなと思って。「もうやめて!」って思わせる踊り手、その身体の中で一体何が起こっているのか、に興味があります。ちょっと実験みたいになっちゃうかもしれないですけど。
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伊藤キムさんのWSに脱力ジャンプというものがあるそうですが。
藤原 
ああやったことあります!あれめっちゃしんどいんですよ。体力の限界がすぐきます。本当に脱力できていないと次の日筋肉痛ですね。

その場所で

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いつか、どんな風に踊れるようになりたいですか?
藤原 
究極系なんですけど、その人が立っているだけで風景が変わるようになりたいです。あと、これからは一個一個、楽しんでいければいいなと思っています。出会いから繋がっているものを実感しているので。自分にとっては新たな地京都でどういう基盤を築けるのか、模索して行こうと思っています。次はFoURDANCERSなんですが、今回で4回目の出演です。ソロってほんとうに怖いんですが、落ち着いて輪郭をはっきりさせた踊りをしたいですね。