暁!三國学園で起こったこと

__ 
三國学園について伺っておきたいことがいくつかあります。やっぱり、気にしている人も多いと思いますので・・・。例えば私なんかは、覇道泰平を全て見ているわけですから。その上での三國学園を見た場合のショックと言うか・・・
河瀬 
どうしてあんなことになってしまったのか、ということですよね。経緯から言うと、プロデュース公演の話が来た時に、オルタソフィアか三國学園のどちらかの再演を、僕が作・演出でやろう、というお話を頂きました。検討しました結果、先日まで覇道泰平をやっているスケジュールだったので、では三国志関連の三國学園にしよう、と。
__ 
そんなことがあったんですね。
河瀬 
たまたまあの流れになった、という事です。
__ 
とにかく私が三國学園で覚えていることを書き出してきました。「野球殺陣」「魏延まさひろ」「J-POPの多用」「キスで腰が抜ける殺陣」「ホモオチ」「運動能力が高い事を気持ち悪がられる」。
河瀬 
はい。順番に触れていく感じで・・・。
__ 
まず、野球殺陣。司馬伊集院が呉組の孫策太郎に返り討ちにされる、体育館裏の戦い。金属バットで滅多殴りにされる司馬伊集院が印象的でしたね。非常に危険度が高いような気がしていて。バットがすぐ目の前を通り過ぎていくじゃないですか。
河瀬 
バット自体はそんなに固くないですよ。当たってもそこまでとは思ってました・・・僕も実はハラハラしたんですけど、孫策太郎をやっていた渡辺さんは、立ち回りの距離感をミスるような人ではないので。なので多分、ハラハラしたのは効果音だったんじゃないかと思ってました。リアルな効果音が臨場感を増した、という印象上での。
__ 
5センチぐらいの距離をかすめていくような見え方がしました。印象的でした。
河瀬 
絡みは出田だったので、出田としてもそんなに怖くはなかったんじゃないかなと思いますね。
__ 
「魏延まさひろ」。高山わかなさんが演じた、蜀組の生徒です。
河瀬 
はい。
__ 
まず、蜀組の女の子二人は、男子生徒だったのかそれとも女子生徒だったのかよく分からなかったんですよ。衣装は男子生徒で、でも髪型は完全に女の子で。だがセリフ等では、女子であると名言はされていない。
河瀬 
初演の蜀組は全員男性だったんですけど、プロデュース公演となると集まったメンバーでやらないといけないので。男性でも女性でもどちらでもいいのかなと思っている所はありましたね。張飛に関しては女の子にしました。魏延は、本人は男の子役ですと言ってました。じゃあ初演の役者であったレストランまさひろから名前を借りようと。正直ただの悪ふざけですよ。
__ 
素晴らしい。そして「J-POPの多用」。音楽に飲まれているという感じではなく、非常に演出効果の高かった選曲だったと思います。年代的にも、20年前に中学生がミュージックステーションで聞いていたような曲が多かった。初演からそうでしたよね。
河瀬 
少し変えようかなとは思ったんですけど、時間もなくて。それと、思ったよりも演出が音にハマってて。
__ 
なってましたね!
河瀬 
タイミング的にも合っていたので、まあこれでいいのかなと。
__ 
私は初日に拝見しました。どんな感じなのかなと、ちょっと試すような気分で見始めたんですよ。したらめちゃくちゃ面白くて。最初の方から。客席の反応もすごく良くて。
河瀬 
ありがたいことです、覇道泰平のお客さんも多かったんじゃないかなと思うんですけどね。
__ 
いや、覇道泰平のお客さんが多かったということは、それはアウェイ条件なんじゃないかなと思うんですけどね。ああ・・・でも、覇道泰平の中で世界観を育んできた人にとっては、突然、真夜中の動物園の中に放り込まれたようなものだったじゃないかなと思うんですよね。
河瀬 
初日は呂布先輩がその恰好で出てきた時に、拍手が起こってましたから、受け入れた上で喜んで頂いたお客さんも多かったのかなと思います。結構みんな、役者も好き勝手やってもらったので。僕もせっかくだから色々セルフパロディをしてみようかと。
__ 
「キスで腰が抜ける殺陣」。司馬伊集院が今池さんにキスして腰が抜ける、という手があって。あれは、ZTONがこれまで越えてきたいくつものブレイクスルーと同じぐらい重要な関所だったんじゃないかと思うんですよ。
河瀬 
あれは・・・しゃべっていいのか分からないんですけど。覇道泰平の「護王司馬懿編」で、劉備と曹操が立ち回りするんですけど、あれをまんまやってました。下手側から趙雲がわーっと出てくるのが、覇道泰平だったら夏侯惇が出てきて劉備が逃げるんですね。で、許褚が出てきて。その後劉備に食われるんですよ。それに照らし合わせて、「食う」をどうするかと。では「キス」しよう、という話になりました。
__ 
そんな流れがあったんですね。
河瀬 
立ち回りの構造としては何も変わってない、でもある程度は似せてて。
__ 
私の心に残ったのは、そういう土台があったからなのかもしれませんね。あれこそが学園殺陣モノだと思いました。ZTONにとってのブレイクスルーのひとつだと思いますよ。
河瀬 
なかなか、他には多用できなさそうですね。
__ 
「ホモ落ち」これもブレイクスルーでしたよね。
河瀬 
初演からですけどね。
__ 
最後に蜀組の男子生徒2人が出てくるじゃないですか。あの瞬間、私の横のお客さんの女子は何かを勘づいたらしくてそわそわしていました。女子というのはそこに対するセンスがあるのかもしれないなと改めて思いました。
河瀬 
そうですね。
__ 
一番最後が、「運動能力で気持ち悪がられる」という・・・。アイドル転校生・諸葛亮子が蜀組の面々を劉備玄蔵から紹介してもらうシーン。落ちこぼれの蜀組は成績が悪くて部活も続けられず、毎日やることもないので学校内の掃除をさせられているんですが、運動能力だけは良い、と。その時の諸葛亮子の一言が「キモっ!」だったんですよ。これ凄く酷かったです。ええっ、取り柄なのに・・・。とにかく面白かった。
河瀬 
初演の蜀組が為房、中山さん、土肥くん、レストランまさひろ、森というチームでもう男臭くて気持ち悪かったので、それを引きずって。
__ 
そして集中力がない、と。でもそこに「気持ち悪い」というセリフをスパッと出してくる。
河瀬 
あの紹介シーンでは協調性がないということを出したくて。全員違う名前のシュートを打つんですよ。誰も同じこと言わないから何も聞こえないんですけど、綺麗に揃ってシュートが入るんです。
__ 
三國学園に関しては、やっているネタが多すぎて。私がキャッチできていないものがあるんでしょうね。
河瀬 
もともと四面で作った作品なのでネタは多用してると思います、それぞれの面のお客さん用に。今回は普通の舞台なので、だいぶ省いたと思うんですよ。だいぶ楽でしたね。
__ 
再演に関しては、撮影していないので映像化できないとのことですが、惜しかったですね。
河瀬 
プロデューサーさんからはもう一回やろうかとかの話を・・・。僕に三國学園二学期編の構想がある、と申し上げたら、そんな話になって。
__ 
ぜひやっていただきたいですね。私、あのキャラクターを全員好きになりましたから。
『暁!三國学園』
公演時期:2017/2/17~19。会場:大阪市立芸術創造館。

劇団ZTON新人公演05「しぐれ」

__ 
今日はどうぞよろしくお願いします。最近、河瀬さんはどんな感じでしょうか。
河瀬 
最近はですね、ちょうど公演がないシーズンになったので、知識を蓄える系のことをしていましたね。
__ 
素晴らしい。知識を蓄えると、どんなことが起こるんですか?
河瀬 
マイブームが変わりますね。面白いなと思ったら、これをやってみようと思ったり。ストックはしてるんですけど、その直後の公演にばばっと反映されて。
__ 
今のマイブームは?
河瀬 
これを言うとバレちゃうので・・・。マイブームが反映されてるのは新人公演です。
__ 
やはり言えませんか。
河瀬 
元々は昔書いた「しぐれ」なんですが、初演は10年前で、人間座で上演しました。それを10年後同じ劇場でやる。わかりやすくマイブームは変わりますね。
__ 
いったい何がかわせさんのマイブームなのか・・・。それは劇場で!
劇団ZTON
2006年11月立命館大学在学中の河瀬仁誌を中心に結成。和を主軸としたエンターテイメント性の高い作品を展開し、殺陣・ダンスなどのエネルギッシュな身体表現、歴史と現代を折衷させる斬新な発想と構成により独自の世界観を劇場に作りあげ、新たなスタイルの「活劇」を提供している。(以下略)(公式サイトより)
劇団ZTON新人公演05「しぐれ」
公演時期:2017/6/3~4。会場:人間座スタジオ。

まずは・・・!

__ 
これからZTONを見る方に一言お願いします。
河瀬 
まず見てほしい、ということですね。その上で「合わないな」と思ったら、もうそれはしょうがないかなあ、っていう。そういう割り切りはできるようになりました。
__ 
ただ、まずは観てもらいたいですね。
河瀬 
「公演が面白くなかったら全額返金します」みたいな企画がどこかにあったじゃないですか。昔は、なんでそんなことするんだろうと思っていたんですが、今はその気持ち、分かるなあと思います。興行的に成り立たないからZTONではできないんですけど。
__ 
でも、ZTONのような、手堅く構築する作品は、個人的には非常に好感を持っています。だからという訳じゃないですが、ぜひ見てもらいたいなあ。

河瀬仁誌の挑戦

__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
河瀬 
今年は7月に天狼ノ星、9月に東京での公演です。そこからはちょっと空いて、来年の春と秋に公演をやる予定になっています。まだ具体的な予定ではないですが、来年の春は、これまでの文脈と全然違うものに挑戦したいなと思ってます。
__ 
なるほど。どんな作品が見れるのでしょうか。
河瀬 
候補がいっぱいあって、ミュージカルもその一つだし、コアな人にもっと喜んでもらう、もそうだし。色々と考えています。逆に言うと、いま台本を書かなくてもいい時期ですので、改めて自分が何をやりたいのかを考える時間だと思っています。
__ 
ご自身のやりたいことを優先させてくださいね。
河瀬 
いえ、見に来てくださる方がいる以上は、その人たちに向けてやらないといけないと思っていますので。何でしょうね。河瀬はこんなこともできるんだね、と思ってもらえるものがいいじゃないかなと思ってます。目で作る演出家の芝居に挑戦するかもしれませんし。まあ、ただ思っているだけですけれども。でも、挑戦しているということが伝わる作品になると思います。
__ 
ZTONの外では、今後はどんな。
河瀬 
アニメとゲームをやりたいですね。というか、先日アニメの脚本を書かせていただきました。GAINAXさんで作られている作品「人力戦艦!?汐風澤風」の一話を書かせていただきました。これを機にゲームや映画の脚本のお仕事もやりたいな、と思っています。

紅はるか

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
河瀬 
ありがとうございます。(開ける)あ、これは・・・!ありがとうございます。
   
注釈:事情があり、今回お贈りしたプレゼントについては公開を控えさせていただきます。
河瀬 
ごめんなさい。でも、確実に言えるのは、とても嬉しい、という事です。
__ 
中身は・・・イモという事にしておきましょう。今後、プレゼントが公表出来ない場合は芋類ということにしましょう。
河瀬 
すみません。ありがとうございます。

ごめんねの国

__ 
これから、どんなことがあるといいですか?抽象的な質問ですが。
本間 
うーん。子供たちが笑える世界ができればいい。嘘ではなく本当にそう思います。この間、京都の鉄道博物館に行ったら親子連れのお客さんがたくさんいたんです。そこで親同士の喧嘩を見たんですね、お父さんがショーを見るために陣取っていた席を離れただけでお母さんが怒る、座れなくなっただけなんですけどね、立ち見も沢山いたし。そんで、その喧嘩を見たお子さんが「ごめんね」と言ってたんです。一面的な見方だし、昔にもそんなケースはあったと思うんですけど、辛すぎるなと思った。
__ 
想像したらちょっと辛いですね。
本間 
今の時代の家庭の築き方、教育の仕方、本当に難しい、誰も教えてくれないし。これからどうなって行けばいんだろう、と思います。一つには、豊かにならないといけないと思うんですよね。「ごめんね」と「ありがとう」を大事にする心を持つしかないと思うんですよ。
__ 
ああ、そういうこと?
本間 
優しいということではなくて。

神に

本間 
僕の書く台本には「ごめんね」が異様に多いらしいんですよ。
__ 
会話を終わらせる台詞ですね。
本間 
もっと傷ついたほうがいいと、よく客演してくれているある女優が言うんです。私とあなたは濃い関係なんだからもっと信用してくれていいよとこちらは思うのに、自分の方は無意識に、しかもすぐに「ごめんね」と繰り返してしまっているじゃないって、この間言われました。で、そんな大人の僕をみて、どこかの子供がその真似をして「ごめんね」と言う。ほんで、子供同士がまた真似して「ごめんね」ってね。それは笑えない世界だなと思う。僕たちの世代だけで終わらせたいですね、というか、もうちょっと減らしたい、代わりにありがとうと言えるようでありたい。なんだか変な感じですけど。
__ 
教育が異様に肥大化した世界であり、子供の成長と精神のマネジメントが実現した世界。子供がごめんなさいというのは、理想的だし、終わっている世界かもしれない。世界が最初からそうだったら戦争は起きなかったのかもしれないし、「悲しみという感情を持たない」という選択肢が自然に出現するのかもしれない。逆に失楽園ですね。
本間 
なんだか最近、すごく宗教のことを考えています。神がいないんですよ、きっと。偉いとかではなく、絶対になりたい。絶対になれば何かが救われる気がする、救える気がする。信頼できる絶対があれば、子供もそんなこと言わなくなるんだろうし。ただ、まぁ、日本は今、宗教に関しては特殊な状況ですけど。

質問 坂本 彩純さんから 本間 広大さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いたから質問を頂いてきております。演劇集団Qの坂本彩純さんからです。
本間 
あ、スーか。知り合いです。
__ 
「舞台上で、エロく見えるとはどういうことでしょうか」。
本間 
隠すこと、だと思います。この間ファックジャパンさんとエロチシズムについて話してて。「たぶんそれは隠すことだよ」と仰ってました。何かを自覚的に隠していて、でも自慢したいわけではない。その姿勢がエロい。隠れている、という見え方でしょうね、エロいって。

彼がいなくては

__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
本間 
いやあ、とにかく勉強ですね。演劇のことも人間のことも知らなくちゃいけないし。そして、京都の人みんなに「本間がいなくてはだめだ」と思われないといかんなと。
__ 
それはもうみんな思ってると思いますが。
本間 
いや、僕の中でその目標が相当高い設定みたいで。確かにいろんな仕事をもらったりしますけど、そういうレベルではなくて。多分、それじゃあ何も救われない。「本間は若いから頑張っているんだ」ではなく、「必要な事をしているだけだ」と思われたい。僕もそろそろ中堅なんです。
__ 
ああ・・・
本間 
もうちょっと先の話になりますけど、下の世代にアプローチをしてあげたいと思ってます。僕らが上の世代からはしてもらえなかったことは、下の世代を信じてあげることだったんじゃないかな、って。そんな話を大原さんとしました。今は、自分のために作品を作ることに全く興味がありません。もっといろんな人と話をして、いろんな人の価値観を広げて、自分の価値観を広げて、というのを、絶え間なく、しんどいと思わないようにやり続けないといけないです。死ぬまで演劇を続けようと、思ってしまったので。そのために今は走らないで歩こう、と思っています。

折り畳みイス

__ 
今日はですね、お話を窺えたお礼に、プレゼントを持って参りました。
本間 
ありがとうございます。大きいですね!(開ける)折りたたみ椅子!いいサイズですね。ありがたいです。
__ 
野外か、もしくは稽古場で使うという想定でした。
本間 
稽古場で使うと思います。ありがたいです。良い位置で見れます。最近は桟敷に座って見るのにハマってるんですよ。今日も稽古でふと「観客席にテーブルなんてないやんけ!」って気付いて、前の方にイスを持っていこうと思ったんですがちょっと抵抗があって。
__ 
なるほど、これなら稽古場で桟敷席が作れますね。

痛さを越えて・・・

__ 
少し前のことなんですが、「じゅんすいなカタチ」。大変面白かったです。俳優の演技の身体性が非常に興味深かったんですよ。薄暗く折り重なったサブテキストに左右された身体が、その感情を隠さずにしゃべっている。露悪的な身体が、作品自体に非常に貢献していたなあと思っています。それを見ている観客としても、リアルな体験だったと思うんですよ。
本間 
「じゅんすいなカタチ」が、演出家としてずっとやりたかったことだったと思うんですよ。そういう作品が書けたし、そういう演出ができた。何ですかね、たかだか1年でも色々な人と触れるようになって、色々考えも変わりました。
__ 
というと。
本間 
ちょうど一年前までは、暴力的な言葉を使っただけですごくリアルに感じたんですよ。この間も美容師の人がスタバの話をしていて。歩きながら甘いものを食べるなんて変じゃないですか、と言ってて。その人は、「コーヒーは私座って飲みたい。甘いものを飲む時は歩きながら飲む」と。「座っている時に抹茶濃っ」ってなりたくないじゃないですか。そのリアリティ何なんだろうと思って。その「抹茶濃っ」は、歩きながらだったらごまかせるということなのかなと。すみません、凄い分かりにくい話しちゃいましたね。きっとみんな、子供みたいな言動を見た瞬間にリアリティを感じるんですよね。退屈そうに指をいじっていたりとか、カップルが大きい声を出して喧嘩している瞬間とか。僕らは日常でも気づかないぐらいのレベルでも思っていて。仮にそれを、言える状況だったらどうなるのかな。その環境を与えてみて、役者はもうとにかくサブテキストしか意識しない状態。いやあもう、言葉はペラッペラなんですよ。だけどそれはとても重たいなあ、と。ナチュラルとリアリティは違うんです。簡単に言うと、ナチュラルなものに潜んでいる本物、つまり感情を設定してしまえばリアリティは作れると思ったんです。すると、観客に痛いと思わせることができる。でも、最近は痛いと思わせるだけじゃいかんと思っています。痛い、はタイミングである、とか、実際に殴らなくても痛いと思わせる。そうするために、直接的な暴力は用いずに言葉の暴力を使っていた。
__ 
実際痛かったですからね。
本間 
痛めつけてやろうと思って作ってましたからね。でももう、痛いのはいいや、この一年を経てそう思いました。思った以上に観客の反応が良かったですね。僕はこれまで、ずっと同世代に向けて作ってたんですが、あの作品を受けて上の年代の方が「(若い世代に)そんなことを思わせてしまってごめんね」って終演後のアンケートで書いてはった人がいて。違うんです、と。ひとつにしか見えないようには作りたくなかった、一つを提示することは可能ですが、そんな簡単なものではないし、求められてもいない。「じゃあこうですか」と二手三手配る作品であるべきなのかなと思います。今僕が「じゅんすいなカタチ」を観たら、「面白いけど・・・」と称賛はしきらない評価をすることになるんじゃないかなぁ。
__ 
お客さんに痛みを与えることで、その先に一体何があるのか、を考えたいということ?
本間 
なんだか、パッケージしないといけない、と思ってるんです。それはもしかしたら、以前の方が出来ていたのかもしれないと思ったり。演出家の勉強の集大成にはなったと思いますが、もっと順序を付けて観客に与えていこうと思うようになりましたね。

生き死に

__ 
逆に、ドキドキぼーいずが「生きてるものはいないのか」をやる理由は?
本間 
僕が面白いと思ったから、ですよね。去年、利賀演劇人コンクールで敗退したこととか、なんやかんや色々あって、すごく落ち込んでしまったんですよ、副代表の松岡もそれと同じぐらい落ち込んでて。ちょうどそのタイミングで、2017年度の劇研のラインナップの話が劇場さんから来ていて、「いやぁ、もうやらんでええんちゃう」みたいな・・・多分、演劇これから続けていくなら、僕ら勉強しないと、勝てないよと。舞台をつくるのが怖くなっちゃったんですね。でも劇研最後だし、とりあえず出るかとはなって、まぁだから、台本を書くのは絶対NG。
__ 
そこで「生きてるものはいないのか」。
本間 
たまたまそのタイミングで、僕が思い出したのか本を手に取ったのか。・・・「生きてるものはいないのか」と、僕たち自身が自分に問いたいんですよ。できれば自分で本を書きたかったんですけど、俺、本当に舞台をつくれるのか?と、問い直さないといけないと。ちょっと驕ってたんじゃないかな、と。もっともっと純粋に演劇を信じないといけない。
__ 
なるほど。
本間 
ドキドキぼーいずは、この公演を機にだいたい2年ぐらい本公演を打たないことになって。その間ぼくが本を書いたり、ショーケースに出したりとかはあると思うんですけど、2年の間、離れようと。演劇を離れる為ではなく、続けるために離れると言うか。劇研がなくなる、でも大丈夫、新しい劇場を作る、じゃあそこに次は行こう、みたいに簡単にしちゃいけないんだと思うんです。ウチらは公演を打ちすぎている。1年に一本ですらやりすぎなのかもしれない、と思うようになったんですよね。
__ 
なるほどね。
本間 
自分の演劇を面白くするため、本を書かないという選択をしました。書きたいものはありますが、時間がない、2年くれ、みたいな。今回に関しては、とにかく、僕が、本当にわがままを言いました。今までずっと、脚本も含めて劇団員と話し合って決めてきましたけど。
__ 
2年の休止。
本間 
僕がそうしないと納得できなかっただけです。
__ 
これからしばらくの間、ご自身を信じることにしたと。
本間 
社会に対して演劇は何ができるか、ということを、やり続ける形ではなくて、一回、上演という形式から離れることで考えてみようと。本公演ってすごくエネルギーを必要とするんですが、その体力を別なことに使ってみようと。
__ 
なるほど。
本間 
実は4月から大学院生になるんですよ。社会学部に入ることになったんです。感情表現を研究しようと思っています。演劇という表現を使う意義について、演劇を信じてるからこそ、簡単に演劇を使ってはいかん、と。僕らがつながるために演劇をやっちゃいかんと思う。抽象的なヒリヒリとした事しか言えないですけど。

笑わせたい、そして

__ 
どんな上演にしたいですか。
本間 
この間読み合わせを全員でやったんですが、その時点で既に面白かったんですよ。面白いのが前提で稽古を始めるのは初めてです。
__ 
素晴らしい。
本間 
それを面白くするって、一体どういうことなのかなと思って。コメディなんですけど人の死を扱ってるんです。それってどういうことなのかなと思って。初演は2007年で、人の死をフラットに見ていたんじゃないか。読み合わせの時、登場人物の一人目と二人目が死んだ時に、「うっ」となったんですよ。それは完全に震災の影響があったんじゃないかと思っていて。死をどう扱うのか、難しいなと思っています。笑える上演にしようと思ってはいるんです。お客さんには最後まで笑い続けてもらって、その後に、笑っていたらあかんかったな、とそう思って貰わないと、自分たちの生活にある生きることと死ぬことに気付けない。だからこそ、まず、笑えるように作りたいと思ってます。
__ 
台本が既に面白いですよね。
本間 
そうなんですよ。このところ、音を大事にしようと思っていて。この一、二年、演出家として、役者の動線と、体の動きの保証はずっとしてきて。自分の本でも勿論音のことは意識していて。Hauptbahnhofの現場もそうだし。利賀のコンクールを受けた時も。音を大事にしないと言葉は生きないんだなと。見る、ことが出来て、加えて、耳に届く芝居を作らないといけないんじゃないかと。
__ 
音というのは、声のトーンとかテンポとかの話ですか?
本間 
言葉ですね。BGMとかのことではなくて、もちろん空間における沈黙もそうですけど。もっと言葉は力を持つはずなんだ、と、いろんなニュースを見ても思うんですよね。演劇が言葉の芸術だということをはっきりさせて行かないといけない。シェイクスピアの時代って、まず音を芸術としていた時代だったじゃないですか。あれをもう1回しないといけない。これだけ言葉が溢れている時代、幼稚な言葉も難し過ぎる言葉も溢れている。その中で劇場は、俳優の言葉が直接耳に届く場所なんです。そうはなっていないという印象が今はあるんです。届いてはいるんですけど、届いたふりをしている音が俳優を支配してると言うか・・・もっと、耳に届く台詞を、発する方法はあるはずなんです。今は模索中です。見える先の、予測し得たものを超えて行きたい、と思っています。見えた上で、聞かせることが必要なんですよね。予測を超えることが、言葉じゃないときっとできない。いやあ、どうしたらいいんでしょうね。

死んでしまうんじゃないか

本間 
表現は必ずしも演劇じゃなくていいじゃないかと、もちろん演劇が一番いいと思いますよ、僕は。でもtwitterでつぶやくことと、フェイスブックに投稿することと、あなたが本を書いてあなたが舞台に立つこと、何が違うのか。当の僕らが説明できていないと思うんです。それはすごくわかってるんですけど、それを言葉にできないと続けられない。その結果がアトリエ劇研の閉鎖だと思うんです。言葉にする術をみんなで信じて、演劇を信じようとするのがアウトリーチたと思うんです。
__ 
ええ。
本間 
何を提唱しても、ちっちゃいロジックになってしまうと思うんですよ。福祉を扱った演劇を作っても、ヤフーニュースのトピックの一つぐらいにしかならないですよ。小劇場は特に、単位が小さいからそうなりがちだし、でも、それは演劇だからすごい、演劇だから信じられる、ということをもっと肥大化しないと、社会問題を取り扱える土台になっていないんですよ。
__ 
まるで一部門としてしか機能できてないですね
本間 
そうですよ。このままだと、本当の演劇の面白さが見出されていない、死んでしまうんじゃないかと思うんですよね。演劇を信じるために、前田さんの本を一度やりたいと思っています。

ドキドキぼーいず♯07「生きてるものはいないのか」

__ 
ドキドキぼーいず♯07「生きてるものはいないのか」ですね。とても楽しみです。まず、この本を選んだ理由と、経緯を教えてください。
本間 
ありがとうございます。学生時代に戯曲を読む習慣をつけようと思って。岸田國士戯曲賞の作品から読み始めたんですよ。それで、それまでは戯曲って読んでも大抵は面白くないと思ってたんです。どうやって演出をしていくのか考えることに面白さがあると思っていて。でもこの作品は読んだ時点で面白いと思っちゃって。いつかやりたいと思ってたけど、演出の違いがあるかどうかわからない、とも思っていて。でも劇研の最後のタイミングだし、今までにずっとやりたかったものを最後にはやりたかった。それと、あの戯曲って端的には全員が死ぬ話なんですけど。それがとにかく醍醐味で。まず僕は、死ぬところから始めないともうたぶん京都の演劇は立ち直らないじゃないかという危機感があって。
__ 
というと。
本間 
アトリエ劇研がなくなるし、アートコンプレックスも使えなくなってるし、イサンも閉鎖したし。また新しい劇場の話もあるけれども、劇場の問題というよりかは、僕達演劇人がどうやって、この京都という土地で小劇場やって行くのか、本当にもう一度、絶望しながらでも考えていかないといけないと。あればできちゃうと言う演劇は、僕はもう、終わらないといけないと思っていて。まあ絶対続けるんですけど、1回、節目として。
__ 
一度、節目を付けたいと。
本間 
自分が書いた本ではなく、人の書いた本を、面白いキャストで、劇研という場所で、ちゃんと挑んでちゃんと作りたい。
__ 
面白いものを、「残す」。と言うとこれから去るみたいですね。「生きてるものはいないのか」は死を扱ったコメディ。そして、次々に登場人物が死亡していきます。最後には全員死亡する。
本間 
そうですね。上演を見る人にとっては、京都の俳優が全員死んだ、みたいな構図が完成するんですよね。笑えるようにつくりたいんですけど、笑ってちゃいかんわ、と。今は話し合うための場がなさすぎると思うんですよね、アーティスト同士が。社会にどうアウトプットするかじゃなくて、まず演劇という土台をどう立ち上げるのか、どう信じて疑っていくのか、もう1回ゼロにして考えようという、機会が欲しいんですよね。
アトリエ劇研究創造サポートカンパニー シーズンプログラム2017 ドキドキぼーいず♯07 「生きてるものはいないのか」
劇場:アトリエ劇研
出演:浅野芙実、ヰトウホノカ、佐藤和駿、松岡咲子(以上ドキドキぼーいず)、FOペレイラ宏一朗(プロトテアトル)、大石達起(INSITU)、ガトータケヒロ、川上唯、黒木正浩(ヨーロッパ企画)、黒木陽子(劇団衛星/ユニット美人)、勝二繁(日本海/およそ三十世帯)、菅一馬、西川昂汰、西村貴治、葛井よう子、藤原美保(ソノノチ)、望月モチ子(十中連合)、諸江翔大朗(ARCHIVESPAY)
脚本:前田司郎(五反田団)
演出:本間広大
料金:1,800円 ~ 3,000円
【発売日】2017/04/14
・一般
前売 2,500円、当日 3,000円
・U-Honma(27歳以下)
前売 2,000円、当日 2,500円
・学生
前売 1,800円、当日 2,300円


タイムテーブル:
2017年
6月7日[水]19:00~☆
6月8日[木]19:00~◎
6月9日[金]15:00~◎/19:00~◎
6月10日[土]14::00~/18:00~◎
6月11日[日]11:00~/15:00~★
(全8ステージ)
☆アフターイベント「KANPAI」
★アフターイベント「IPPON」
◎アフターイベントあり

説明:「死んではいないんじゃない?」
「もっと真剣に考えてよ」
「知らないけど、みんな死ぬんでしょ」
「僕たち死んじゃうんだろ」
「、、、え、でも、最悪アメリカ人が助けに来てくれるから」

あやしい都市伝説がささやかれる大学病院で、ケータイ片手に次々と、若者たちが逝く―。
とぼけた「死に方」が追究されまくる脱力系不条理劇。第52回岸田國士戯曲賞受賞作品。

------------------

最近、死にたくないと、よく祈るようになった。神様に対してでは無く、人間に対して。
ずっと死にたいと思っていたのに、今は生きてみたい。だから祈ることにした。
なのに、手が合わせられない。合わせた瞬間に自分が満足してしまいそうだからだ。
独りよがりにならないために、演劇を、つまりは人間を信じて、祈るように創作しよう。
それは、劇場でしか完成しない「おもい」である。どんな観客と「おもい」を共有出来るのだろうか。
集まろう、生死の物語のもとに。

ーーーーーーーーーーーーー本間広大


スタッフ:照明:鄒樹菁
音響:島崎健史
映像:坂根隆介
(以上、ドキドキぼーいず)
舞台監督:稲荷(十中連合)
演出助手:高嶋Q太
宣伝美術:清水俊洋
制作:渡邉裕史

■お問合せ
ドキドキぼーいず
mail :dokidokiboys@gmail.com
twitter :@DokiDokiBoys

主催:ドキドキぼーいず
共催:アトリエ劇研
京都芸術センター制作支援事業

Hauptbahnhof Gleis8『ショー』

__ 
今日はどうぞよろしくお願いします。
本間 
よろしくお願いします。5年ぶりですね。
__ 
5年ぶり2回目ですね。
本間 
懐かしいです。とっても嬉しいです。
__ 
こちらこそ。本間さんは最近どんな感じでしょうか。
本間 
最近は、Hauptbahnhofの作品の演出をしていて、その稽古をしています。2月は大原さんの舞台の演出助手で、3月には、大阪でワークショップの講師の発表公演がインディペンデント1stであって。その翌日から稽古でした。バタバタしていました。もうほんとに演劇まっ最中ですね。あ、自分じゃない人の台本を演出するのが久々です。
__ 
脚本を書くわけじゃないですから、そのあたりの作業って根本的に違う?
本間 
違いますね。今回は、金田一さんが僕に演出をしてほしい、と。田中遊さんと僕の稽古の都合で稽古時間は1か月しかなかったんです。その間はしっかり稽古をしよう、という話だったんですけど、台本が上がるのが・・・つい本日、脚本が上がりました。
__ 
強行軍ですね。4月の13日から16日に、アトリエ劇研ですね。意気込みを教えてください。
本間 
でも面白いですよ。金田一さんが京都に来て、Scaleをやって和え物地獄変をやって、それでこの作品で一区切りなんですよ。アトリエ劇研もじきに閉鎖。そのタイミングで「バックステージもの」をやりたいとおっしゃって。実はこの作品、本当に金田一さんが書いたのかというぐらい生々しすぎるんです。これでいいのかなと思いながら、今日の稽古を見ていました。「もう書けない!」って電話してきたんですよ。金田一さん。
__ 
電話が!
本間 
「病む」って言ってくるんですよ。それくらい苦しかったみたいで。金田一さんはやっぱり野田秀樹さんの演出助手をしていたというのもあるのか、直接じゃなくて何かに例えるようなおとぎ話のようなセリフを書きたいと言ってたんですけど、今まさに自分のことを書いてるかのような直接性の台本が仕上がってきました。面白くないと思うんだ、って添えて台本送ってくるんですけど、僕はそれをとっても面白いと思っていて。どうなるやら。面白くなると思うんですけど、演劇人にとってはすごく苦しい作品になるだろうなという予感がしていますね。
__ 
苦しい。
本間 
苦しいと思います。
__ 
「苦労がわかってしまう」?
本間 
いやそういうことじゃなくて、本当に自分は芝居をしていていいのかな、みたいな。そうですね、どうなるのかな。僕はとにかく生々しいのが好きなんですけど、他の方はそれを見てどう思うのか・・・それはやってみないとわからない。
__ 
それは残酷な言い方をすると、アトリエ劇研の最後の4月にとてもふさわしいのかもしれませんね。
本間 
そうですね。いや、辛いですよ。
ドキドキぼーいず
人々はテレビやスマートフォンのニュース、SNSで無造作に流れていく情報にどれだけ『知った気』でいるだろうか。 我々ドキドキぼーいずは、今を生きる若者の身体・言葉・意識を解離させる演出技法により、作品を創作している。人と社会の関わりを報道する者、それを眺める『第4者』の存在を、演出家・本間広大は最も表現したい事であり、創作において重要視している。代表の本間と同世代である1990年代以降に生まれた若者たちに、「この国に今生きている」という意識が芽生えるきっかけになればと思う。それが「私たちが信じる演劇」であり、エンターテインメント(娯楽)を超える第一歩である。
2013年、代表である本間広大の学生卒業を機に再旗揚げ。京都を拠点に活動する若手演劇チーム。メンバーは8名で構成されており、俳優・演出家の他、音響・照明・映像のスタッフが専属的に在籍しており、俳優と演出家で構成される日本の劇団には珍しい形態をとっている。
2015年よりアトリエ劇研創造サポートカンパニーに選出される。受賞歴として、'14.02 第35回kyoto演劇フェスティバル 実行委員長特別賞受賞(奨励賞)  '15.10 第6回せんがわ劇場演劇コンクールグランプリ並びに演出賞(演出:本間広大)(公式サイトより)
Hauptbahnhof Gleis8『ショー』
期間:2017/04/13 (木) ~ 2017/04/16 (日)
劇場:
アトリエ劇研
出演:田中遊(正直者の会)、金田一央紀、南條未基、諏訪七海
脚本:金田一央紀
演出:本間広大(ドキドキぼーいず)
料金:2,300円 ~ 3,300円
【発売日】2017/03/01
一般前売2800円/一般当日3300円
学生前売2300円/学生当日2800円
(学生券は要証明書/税込/全席自由)

タイムテーブル:4月13日(木)19:00★村上慎太郎(夕暮れ社 弱男ユニット)
4月14日(金)14:00 / 19:00★長谷川寧(冨士山アネット)
4月15日(土)14:00 / 19:00★田辺剛(下鴨車窓)
4月16日(日)13:00 / 17:00
★のついている回には上記のゲストをお呼びしてアフタートークを行います

Hauptbahnhofの活動は京都ではこれが一区切り!演劇を作るとはどういうことか?ひとまずの宣言です。
【あらすじ】
私が稽古場の掃除をしていると、見知らぬ人たちが芝居の稽古をし始めた。
彼らはとある賞を取るために、日夜ここで稽古をしているという。
わがもの顔で稽古をする彼らに付き合うことにした。
私も、芝居がなんなのか、知りたかったから。

★アフタートークを行います。
13日19時 ゲスト村上慎太郎(夕暮れ社 弱男ユニット)
14日19時 ゲスト長谷川寧(冨士山アネット)
15日19時 ゲスト田辺剛(下鴨車窓)

作・演出:金田一央紀

舞台監督:釈迦谷智
照明:真田貴吉
音響:北島淳
スタイリング:村上街子

宣伝美術:サカイシヤスシ(LaNTA Design)
Web製作:太田家世

企画・製作:Hauptbahnhof

自ら選んでそこにいること

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。坂本さんは最近、どんな感じでしょうか。
坂本 
よろしくお願いします。1月に自主企画の透明人間の蒸気が終わって、その後がずっと試験期間で・・・それが終わったら次の公演のショウダウンの稽古と、卒業公演の稽古がありました。ずっとバタバタしてて落ち着かないです。
__ 
お忙しいんですね。確か学部は・・・
坂本 
国文学科です。
__ 
そうなんですね。何を専攻されてるんですか?
坂本 
近現代文学専攻のゼミに入りました。谷崎が好きなので、そのあたりを研究するんちゃうかなと思います。
__ 
谷崎の人間観には惹かれますよね。
坂本 
わかります。私も全部読んでるわけじゃないですけど、女性が強いというか、女性賛美とまでは言わないですけどそんな感じがして。それから、谷崎作品に描かれてる女性が好きです。可愛くて儚げじゃない。自分の欲望を持っているように感じるんです。そこが好き。
__ 
そうした女性像に憧れる部分がある?
坂本 
めっちゃあります。『痴人の愛』のナオミとか、サロメとか、アニメやったら峰不二子とか(笑)
__ 
サロメは、自分を人間として認めてもらいたいみたいなところがありますよね。
坂本 
父親政権からの脱却、という解釈があるらしいですね。
演劇集団Q
横溢れする肉体の力をもてあまし、平凡な毎日に汲々としているそんな君にはQの芝居演劇集団Qは同志社大学を中心に活動する学生劇団です。20世紀半ば設立(たぶん)から、新町別館小ホールを舞台に毎年約5、6回公演を行なっております。本多力(ヨーロッパ企画)、奥田ワレタ(クロムモリブデン)、ピンク地底人などを輩出しております。Qの芝居はエロティック・バイオレンス・アカデミックをモットーに、自由奔放な表現を楽しむことを真骨頂としております。未熟も未経験もなんのその。過去には「ネタづくりのため自作自演に走る、狂気の新聞社芝居」、「血のつながらない15人兄弟による、憎しみダンス芝居」、「世紀末、元おでん屋のニューヒーロー誕生芝居」、「10数人がカレーを食べるデモ隊芝居」、「ボケても誰もつっこまない給食室会話劇」、「首吊り芝居」「全席立ち見の金網芝居」、「舞台破壊芝居」、をつくりました。突っ走って、滑って転んで、もんどりうってノックダウン。でもまた立ち上がって突っ走る。そんな劇団です。何卒よろしくお願いいたします。(公式サイトより)

劇団ショウダウン「ドラゴンカルト」

__ 
坂本さんは劇団ショウダウンの「ドラゴンカルト」に出演されるんですよね。どんな作品になりそうですか?
坂本 
ショウダウンさんって、ファンタジーというイメージがあると思うんですけど、今回はサスペンスなんです。刑事とか先生とか、地に足の着いた人間が登場します。スリルを味わえるエンタメですね。
__ 
エンタメの大事なことって、物語がしっかりあると言うか。お客さんを置いて行かせないというところがまず前提という感じがしますよね。
坂本 
お客さんに対してある意味一線を引くっていうのが大事なんかなって。置いてけぼりにはせず、ちょっと先からお客さんを誘導し続ける力。そのための一線。東京公演よりも大阪公演の方がキャストの人数が増えるので、分散させずに引っ張っていく力の強い公演にしないと、って思っています。
__ 
ショウダウンは何をご覧になったんですか?
坂本 
船場サザンシアターで「錆色の瞳、黄金の海」を。高校の先輩が「最近面白い劇団を見つけてん、劇団ショウダウン」って。それ私も今度観に行くんですって言ったら「じゃあ何も言わへん、見てきて」って。
__ 
主演の林遊眠さんが凄かったですよね。
坂本 
本当に!私は林さんの一人芝居は観たことないんですけど、1人で2時間、お客さんを引っ張って行くことのできる役者ってこういうことなんやなと。
__ 
さて、ドラゴンカルト、意気込みを教えてください。
坂本 
私の役が、海外から助っ人に来た博士っていう色物枠なんです。「いたいたそんな奴!」って後で話題に上るようにしようと思います。スパイス的な存在。
__ 
あらゆる意味で美味しいポジションですね。
坂本 
美味しくしないと!
劇団ショウダウン「ドラゴンカルト」
公演時期:東京 2017/1/27~29@シアターグリーン BOX in BOX THEATER、大阪 2017/3/23~26@大阪市立芸術創造館。

演劇集団Q卒業公演「生れ地」

__ 
演劇集団Qの「生れ地」。大変面白かったです。ご自身としてはどんな経験でしたか?
坂本 
最初、卒業公演には参加しないって言ってたんですよ。ショウダウンの稽古で忙しいから。でも演出の綱澤さんが一回生の時に新人公演で演出された「エレメント」をベースに、太田省吾の作品を再構成すると聞いて、参加させてください!って。綱澤さんの演出にすごく興味があったんです。でも綱澤さんの演出にきちんと関わったことはなくて。綱澤さんの知識も吸収したい。戯曲をどのように読み解くのか、そもそも演劇にどう臨むのかを間近で見たい。綱澤さんの演出を受け取って役者として舞台に立ちたかったんです。役者で参加するにはギリギリのタイミングだったので、無理ならせめてスタッフとして関わらせて下さいという気持ちで参加させてもらいました。・・・とっても難しかったです。
__ 
ええ。
坂本 
別に演劇に合格とか及第点とかはないですけど、ある一定のラインはあると思っていて。今回の作品は、そこに到達してるのかしてないかの手ごたえが・・・。太田省吾の戯曲は3作品ぐらいしか読んだことがないんですが・・・日常生活を描いてるんですけど、行動に脈絡が無かったりするんですよね。私が演じた役だと、突然月に向かって吠えるとか、朝の食卓を用意してそのままどこかへ行ってしまうとか。でもその行動は日常の地続きなんですよね。それを自然に提示する、そこに脈絡を持たせるのが難しかったです。今でも考えてます。
__ 
その結果、どこまで出したのかわからないということですよね。お客さんについてきてもらうということを期待する作品の場合、作り手として担っている人の実感が薄くなるのはしょうがないですよね。
坂本 
今回の公演は、ライブというよりも美術展に近いなって思いました。自分が創ってきたものを持ってきて、後は見てください、というスタンス。でもほんまはエンタメでも何でも同じはずやから。手ごたえが持てなかったというのは、つまり甘えてたんやなって。もっと自分に厳しくしようと思いました。
__ 
綱澤さんの太田省吾に対する姿勢に魅力を感じたということですが。
坂本 
綱澤さんは演劇にも詳しいとても博識な方なんです。専門が哲学でその知識もたくさん持ってらして。戯曲を解釈する自分の武器を持ってはるんですね。それを用いて、戯曲に対して様々な角度から解釈を試みる。研究者っぽい。私はこれから学生として研究をしていく身ですので、役者としての興味は勿論、それ以上に学生としての興味が強くあったんです。
__ 
再構成をするというのが、色々な物の到来を期待してるようで、面白かったですね。
演劇集団Q それでも、やっぱり卒業公演 「生れ地」
公演時期:2017/3/3~5。会場:新町別館小ホール。

繰り返す日常の外へ

__ 
「生れ地」の冒頭と終演で、朝食のシーンが何度も繰り返されたじゃないですか。それらがまるで自然な、一つの流れの中で繰り返す、その時の役者の表情がとても自然だった、というのが面白かったです。「生れ地」という、日常にぽっかりと空いた空き地のことなのかな。そこで突然月に向かって吠えたりだとか・・・そういう、自分の境界を少しはみ出たところ・個人の人格の外にある物に対してはみ出す、その不思議な感じと言うか。人間の生殖も題材の一つでしたが、そこは本当に、人格の外にある、そして人間の範疇のもので、不思議ですよね。
坂本 
やけど、そこを通過して戻ってくる先は、結局日常なんですよね。でも戻ってきた時、何かが少し違ってる。大きくは違わないけれど、何かが。それを綱澤さんは何度も仰っていて。面白かったのが、稽古の最初の方で「鋼の錬金術師」を観よう、と。
__ 
はい。
坂本 
主人公の二人が修行の一環で無人島に置いていかれる。そこで「一は全、全は一」というのを自分たちで見出だすんですよ。「考えて考えて考えて、最初のところに戻って来る時には、違うものになってる。全てのものは一で、全だということ」って。そういう繋げ方、面白いなって。今回の公演はいろんな面において綱澤さんに興味が尽きない公演でした(笑)