「散文のベケット」

木村 
つい最近考えがまとまってきたことがあって。前回の初演以降からもずっと、ベケットについて調べたり考えたりしてたんです。すると、劇作家のベケットと小説・散文のベケットでだいぶ違いがあるという事に気付いて。散文のベケットは言葉のシャープさとか、言葉でどこまでやれるかということを追求しているんです。一方、演劇のベケットは役者の唇だけを登場させたり、『ゴドーを待ちながら』のように誰も来なかったりと、構造やビジュアルイメージをやっていて。けれど、『わたしじゃない』に関しては散文のベケットの匂いがするんですね。追求された言葉。
__ 
「散文」とは、論理立てられていないが、だからこそ広がりを持つ事が出来る文章形式だと理解していますが、合っていますか。
木村 
そうですね。物語がはっきりあるわけではない文章。そして、演劇のフィールドで言うと散文のベケットはあんまり意識されてこなかったんです。良ければ、その辺りを意識してご覧になっていただけたらと思います。
__ 
ありがとうございます!20日から東京・京都でセミロングランですね。とても楽しみです。

ガネーシャの飾り付き手鏡

__ 
今日はですね、お話を伺えて俺にプレゼントを持って参りました。
木村 
ありがとうございます。何だろう。
__ 
手鏡ですね。
木村 
へー、いいですね。可愛い。

最近の草壁カゲロヲ

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い致します。VOGAの草壁カゲロヲさんにお話を伺います。最近、草壁さんはどんな感じでしょうか。
草壁 
よろしくお願いします。VOGAで参加した中之島ABC春の文化祭が終わりまして、通常の稽古に戻りました。次回の公演の目処は立っていないですが、自分自身としては7月2日の3castsで近藤和見との作品を上演します。ぼちぼち稽古を始めます。あと、今年の12月にも予定が入りそうです。
__ 
ABC春の文化祭、いかがでしたでしょうか。
草壁 
緊張しましたね。2場面を繋げた作品だったんですけど、最初の場面は基礎稽古でやっている動作をギュギュっと凝縮して見ていただいたんです。
VOGAの稽古では、脳と身体の接続をテーマに体を動かすんです。
メニューをざっとあげますと、あ、え、い、う、え、お、あ、お…の発声に、片腕2拍子、片腕3拍子、右足左足8拍子の法則で動く「あいうえ音頭」。
数字を掛け声に手は互い違いにグーパー、足は腿と踵を上下する「かかと上げ」。
短音発声しながらの「足上げ腹筋」。あいうえ音頭の続編のような「あかさた音頭」。
掛け算の九九の表のような譜面を頭に描きながら1、2、3、4、5、7拍子の変化する数字を発声し、前後に足運びする「四の段」。はあ、言ってるだけで汗かきますねえ。
普段はこれらをテンポに合わせて、またテンポを上げて負荷をかけて繰り返します。
あ。それで今回の舞台では地明かり、無音の状態で、ひとりづつ袖から入って、シンプルな拍子の音で始まります。
ゆっくり歩行する動きから始めるんですね。ただ、本番ではそれがイメージ通りの状況にならなくて、最初のひと山を越えられなかったなというのがありましたね。
2場面目は、海へ行こうか、ってみんなで海をイメージして向かう音楽シーン「割れて砕けて裂けて散るかも」でした。これでやっと体が解れてくるんですけど。
出だしが構え過ぎてしまって。
__ 
ええ。
草壁 
ひと呼吸おいて始めればよかった。肩の力を抜いて舞台に立つことが改めて難しいと感じました。目線は前を見ているけど、心の中は違うものを見ている状態になっていました。
稽古場に居る役者、という素から始まる演出だったんですが、舞台の上で見せる素って深いものだな、と。武道に近いかもしれないんですが、精神的な構えですね。これからじっくりやりなおしてみたいと思います。
__ 
心の構え方。稽古と、本番当日までの流れと、本番中の流れが・・・
草壁 
かみ合わなかった。今までの経験上、自然のリズムの中で意識の切り替えを自然に行って本番を迎えるので、雨が降ろうが風が吹こうが心構えが出来ていたんです。
けど、劇場にポンと放り出された状態に別の怖さを感じました。劇場の間、魔力を感じましたね。ちょっと疑心暗鬼になったところもあって。今まで長年舞台をやってきてるのに晒されるような感覚を強く感じました。
やっぱり、ええ風が吹いてくるのを待ってても駄目なんですね。無風だったら自分から風を起こさないといけないと思ったんです。
最近は屋内で上演することも多いんですが、より引き締めないといけないんだなと。
VOGA
関西を中心に活動する舞台芸術集団。1997年、劇団維新派に在籍中、草壁カゲロヲ・近藤和見が結成。以来、動員1000人規模の本公演を重ねる。古典的物語や現代舞台に必須とされる身体表現も行いつつも、その、演出手法・劇場空間設定の異質さで、他の小劇場劇団や商業劇のいずれとも違う舞台表現が特徴。近年では東西、出身母体の垣根を越えた実力派役者が多数参加する。公演は観客にとって一種の『旅』と考え、「日常から地続きの非日常へ迎え入れる」ことをコンセプトとし、一般劇場の他、神社・教会・現代美術館・ライブハウス・造船所跡地など、屋内、野外を問わず上演。野外公演ではスタッフ・役者、総勢約70名超の一座が組まれ表現者交流のターミナルとしても機能している。2011 年8月より劇団名をLowo=Tar=Voga(ロヲ=タァル=ヴォガ)からVOGA(ヴォガ)に変更。2015年現在、結成19年目を迎えた。(公式サイトより)
7/2(tue) 3CASTS vol.13
VOGA 草壁カゲロヲと近藤和見
合田団地(努力クラブ)
leap (松岡咲子と江南泰佐)

3人/組の俳優が登場、それぞれパフォーマンスを披露します。
“Cast”には、配役することだけではなく、さまざまな意味があります。
たとえば、投げること、脱ぎ捨てること、影を落とすこと、票を入れること、まなざしを向けること、魔法をかけること……そして、さいころの一振り。
さて、どんな目が出るか。ぜひ目撃を。


7/2(tue) 3CASTS vol.13
◇ OPEN 18:30 / START 19:30
◇ adv.1800 yen + 1drink / door.2200 yen + 1drink
◇ actor or actress. 1400 yen + 1drink

VOGA 草壁カゲロヲと近藤和見
『現実感をともなう『死にかた』について。或いは現実感の無意味について。』
モチーフ:筒井康隆【死にかた】

心地よさと

__ 
同じVOGAのうめいまほさんに取材をさせていただいた時、アンサンブルには自分の動き(ダンスと呼んでいいのか分からないんですよね、VOGAの振り付けは)の意味の解釈を任されていると伺っていて。その上で、別にそれぞれの答えが必ず正解という訳ではなく、演出から「それは違う」と言われると。大変興味を覚えました。
草壁 
動きのズレを見つけて修正する。動線を段取りで追ってたらズレるのも分かる。意味やイメージの解釈の違いからも考えなおす。意味やイメージの思考と連動してやっと動きが決まったかなってなる。地道な道のりです。
最近、割と基礎メニューの時間に1拍子のリズム音をずっと鳴らし続けてるんですね。
1拍、1拍、聞いてるとだんだん無を思ってきます。無拍子と言えばいいのか。
その中に4拍子や7拍子と自在に区切って動きのパターンを組み合わせます。
複雑に組み立てて動く。一筋縄ではいかない歯痒さとモヤモヤが身体中を駆け巡る中に諸行無常の響きあり、でしょうか。稽古場いっぱいに淡々と流れるリズムがやけに強く鳴り響いて聞こえて…
__ 
ええ。
草壁 
4拍子なら偶数。偶数の固まりで4小節を作って1連を作ります。
次は2連、4連で1段落。偶数で区切ると理解しやすいし、頭の中で数字を数える事が出来るうちはまだいい。
けど、そこへ奇数の変拍子のパターンの波が次々と押し寄せる。頭の中の数字は溺れる。割り切れない計算みたいな数字と無拍子の波に体を乗せるしかない。上手く乗れば心地よいサーフィンの達人になれます。
__ 
「無拍子」。
草壁 
僕らの見ていた、段落の物語性に対する理解の仕方とは違う方向性があります。 これまでやってきた事を解体という訳じゃないですけど、もっと大きなものが見えてきた気がします。

__ 
大きなものですか。
草壁 
無拍子に気付く事で、より大きな海を泳ぐ?山を登る?野外だと実際に見えている山を目標に走っていたのが、ひょっとすると、無拍子を背景に、動いていく事の重要さが浮き上がってきたのかな。それは、ひょっとしたらどこでも出来るVOGAの表現なのかもしれない。

カオス

__ 
ちょっと無理矢理当てはめると、VOGAは自然という秩序だった理系の世界から、劇場という混沌とした文系の社会に移ったのかもしれないなと思って。人間の身体に元々備わっていた自然由来の4拍子から、無拍子という世に放たれたと言えるかもしれない、そんな流れがあるかもしれませんね。前回の本公演「直観と情熱」が90分に収まったのは、案外、そういう社会性のカオスなるものの影響があるんじゃないかと。そして、大変面白かったです。自然の中の長大なVOGAとはまた違う、混沌を内包しながらもそこに視線を導き入れる、そうした作品でした。
草壁 
実は、稽古では「直観と情熱」の表現には近藤和見の作品の良さが反映されてるかどうか未知で、不安が残っていたんです。
野外での上演では、お客さんと情景を共有するのが基礎にあったんです。
でも劇場では「お客さんたちは何を考えているんだろう」、「僕は何を考えたいんだろう」と。
その状態が、僕は最近でも続いています。そこは乗り越えたいし、もしかしたらこの闇を共有出来る作品が作れたりするのかなと思います。
VOGA「直観と情熱」










公演時期:2018/11/3~7。会場:大阪市立芸術創造館。


姿を現す

撮影:井上嘉和
__ 
未知について。お客さんの顔って、よく見えないですからね。
草壁 
僕らは舞台ではお客さんを笑かしたりコミュニケーションを取ったりはしないので。そこまでは踏み込まないんです。春の文化祭は、他の劇団の方々と僕らは本当に全然違う事をしているんだなと再認識しました。でも僕らは、見る人を選ばない手段を取っているつもりではあります。
__ 
舞台に立っている人が、自分を理解して完全にコントロール出来ているか、そして、そうすべきかというのって色々な考え方がありますよね。
草壁 
舞台に乗せるものは、何か事件やドラマを持つことで分かりやく見やすくはなると思うんですけど、たとえば不意に何か、ドラマの上にあるとは思えないものが姿を現すと面白いんじゃないかと最近は思っていて。
__ 
ああ、もう全然関係ないものが出てきて、理解を越えてしまう。
草壁 
でもそういうのも、僕らが構成を考えているから、作り事なんですよね。舞台上で、物語を越えたものを体感できたら面白いと思うんですよね。
__ 
予定されていない事は劇場では起こらない。だからこそ、誰もコントロール出来ないものが見たい?
草壁 
はい。なんか得体が知れないですが…

質問 村上 亮太朗さんから 草壁 カゲロヲさんへ

__ 
前回インタビューさせていただきました、幻灯劇場の村上亮太朗さんから質問をいただいて来ております。「練習ってなんでしょうか。」稽古ではなく。
草壁 
反復する事でしょうね。自分がやっていることを、小学校の宿題の漢字練習のように、そこに息を吹き込むように自分に身体になじませるプロセスですよね。
__ 
稽古はまた違う。
草壁 
練習は一人でコツコツ出来て、稽古は全体で本番を意識してやる事。
__ 
反復はその前後の段階ですね。

VOGAでしか出来ない事

__ 
VOGAでしか出来ない事はなんですか?
草壁 
風が吹き通る場所。そんな印象が残せたらいいなと思うし、Lowo=Tar=Vogaから続けてきて、やっぱり多少なりとも達成感があるからここまで続けてこれたんですね。どこか突き抜けている場面があって。そこで、「やったった」というのがあります。そういうのが今後もあるようにしたいですね。
__ 
VOGAのお客さんは、大抵満足そうに劇場を出て行くんですよね。確かに。やっぱりそこには近藤和見の作品だから、というのもあると思います。VOGA作品は異世界そのもので、それを構築するぐらい強靱ななものがあるんですよね。
草壁 
近藤和見はなんだかいつも鞭を忍ばせてるみたいな男です。多分傷だらけやけど厳しさとやさしさと直観と情熱で磨かれた強靭な鞭やと思います。
あ、そういえば「直観と情熱」の舞台のことが、しんみりと腑に落ちることが最近ありました。
ラジオの子ども科学電話相談を聴いてたのですが、「なぜ星ができるのか?」という質問でした。その答えが、「宇宙のある場所に水素がたくさん集まって、おしくらまんじゅうして真ん中からどんどん熱くなって水素がヘリウムに変化して核融合して輝きだして星は生まれます。そして人間が歳とるようにだんだんと重くなる。重くなったら爆発します。爆発したらバラバラなって宇宙にたくさんの元素を飛び散らす。元素は世界をつくる元。それはわたしたちの体の中の血液にある鉄分や骨にあるカルシウム。あなたは星のかけらからできています。そう考えたら、遠くの星がすごく近くに思えてきて、空に星があるから今わたしたちは生きてるんだなぁ、すごいなぁ…」というものでした。
それを聴いてたら「直観と情熱」の始まりと終わりの場面が浮かんできたんです。宇宙の爆発から生まれて今ここにいる。僕らは星のかけらの子どもなんやってジーンとなりました。
撮影:井上嘉和
__ 
VOGAの次回公演、楽しみです。
草壁 
野外だと台風が来ない時期にやりたいですね。今の、5月の半ばから6月辺り。
__ 
そうそう、大雨や台風で上演中止になることもあるんですよね。霧雨の中で立つ草壁さんを見た事がありますがかっこよかったです。その場所に居る、それだけで見せられる人は凄い、という話題が先日あったんです。草壁さんはまさにそれだと思っています。
草壁 
ありがとうございます。舞台では、空気を纏うようにありたい。何物でもない何かになりたい。ちょっと…いや、だいぶとキザですけどそんな風に心がけてます。まだまだですが、そうあれるように努めます。
__ 
草壁さんは、どんな気持ちで役を捉えて、舞台に立っていますか?
草壁 
役として演じるって意識があまりできないので、メモ用紙に思いつく言葉や記号を殴り書きしてスケッチしていって肉声を探すような作業をしてます。台本も小さい文字の殴り書きだらけ。
不特定多数の人に向けてバーンって向かうというよりも、自分と同じ道の途中にいるというか同じ目線の高さで歩いてくれる誰かを、何かこう自分の肩にちょこっと載せながら稽古に臨む。そういうのが自分らしいかなと思います。
__ 
そう考えると、何だか現実の参加者も、舞台の上の役柄も、スタッフも全員、自分のやりたい理想を実行するために集まっている気がするんですよね。そして、心の中でのベクトルは結構バラバラだったりもする。
草壁 
VOGAを長い事続けると、若い子との年齢差が広がってきて。もっと、劇団内の繋がりを大事にしたいと思います。インプットに時間かかるし若い子に教わることの方がこれからもっと増えると思いますが、拗ねたりせずに純粋に。互いにいいとこ見つけ合って面白がって、緩やかに強くなっていきたいと思います。

黒革のスマホケース

__ 
お話を伺えまして、誠にありがとうございました。今日はお礼にプレゼントを持って参りました。
草壁 
ありがとうございます。
__ 
スマホのケースですね。入らなかったら別の物を入れて頂ければ。
草壁 
鍵とか目薬とかメモ帳とか、何か入れますわ。ベルトに付けます。

味園ユニバースで踊る

__ 
今日はどうぞよろしくお願いします。幻灯劇場の村上亮太朗さんにお話を伺います。最近、村上さんはどんな感じでしょうか。
村上 
最近は歯が痛くて治療に行ってます。ダンス関係で言うと、味園ユニバースで行われるショーケースに出す作品の振り付けをしています。僕も含めて19人で踊ります。
__ 
それは観に行きたかった・・・。村上さんは俳優であり、ダンサーなんですよね。幻灯劇場の「盲年」の演技で非常に繊細な神経を感じました。役どころがまた繊細でした。主人公の「春くん」、彼は生まれつきの全盲であり、自己の在り方を探してさ迷っていたのですが、彼にこれ以上の生きる意味があるのかどうかが分からなくなっていってしまう、そんな道をなぞる作品でしたね。非常に好演でした。登場人物は他にもいますが、春君一人だけがいい人だったような気がします。
村上 
そうですね、確かに。
__ 
むしろ、他の3人の役の心の在り方に恐ろしいものを感じました。昔自分が犯した罪に対して、完全に受け入れた上で無視している感じ。何もなかったと彼らは思っていて、こちらの方がある種のいたたまれなさを覚える、というような状態だったんですよ。
村上 
はい。
__ 
春君の生まれは、まあ世間一般的にはかなり特殊で、本人には責任はないのにそういう呵責を世界は彼に浴びせているようだった。そういうプレッシャーの中で生きているギリギリの身体を、技術的にも高度に表現していたようで。大変見応えがありました。
村上 
ありがとうございます。あの作品を解釈しようとすればするほど難しくて。何人のお客さんにそれが伝わったのか・理解してくれたのか分からないし。春くんは良い人ですね。彼は地獄から生まれてきたから、一つ一つの言葉が普段言わないようなものなので。稽古していても頭がこんがらがった体験でした。
__ 
そうですね、彼は地獄の中にいながらにして必死に生きようとしていましたね。私が彼の立場だったらもっと自分を憐れむかもしれない。けれど彼には自己憐憫はあまりなかったと思う。根本的には真っ当に生きようとしていたと思う。だからあの作品はラストシーンで序盤にループするし、輪廻の中で生きようとしている姿に、観ている者としては彼を肯定したいと思う。
幻灯劇場
映像作家や俳優、ダンサー、写真家などジャンルを超えた作家が集まり、「祈り」と「遊び」をテーマに創作をする演劇集団。2017年文化庁文化交流事業として大韓民国演劇祭へ招致され『56db』を上演。韓国紙にて「息が止まる、沈黙のサーカス」と評され高い評価を得るなど、国内外で挑戦的な作品を発表し続けている。2018年、日本の演劇シーンで活躍する人材を育てることを目的に、京都に新設されたプログラム『Under30』に採択され、2021年までの3年間、京都府立文化芸術会館などと協働しながら作品を発表していく。(公式サイトより)
第七回公演「盲年」
Under30支援制度プログラム採択 Kyoto演劇フェスティバル意欲的激励賞受賞作品
Story

舞台は大阪・八尾。ある誘拐事件に、
それぞれ関わりを持ってしまった四人の男女。
互いの距離が近づくにつれ「記録」と「記憶」がすれ違い、
不可解な事件のすべてが、盲目の少年に繋がっていく。
第四回せんだい短編戯曲賞を史上最年少受賞した藤井颯太郎の新作戯曲を、
Under30支援プログラムの第一弾として、京都府立文化芸術会館で上演。
世阿弥の息子・観世元雅の傑作能「弱法師」を下敷きに、現代の「盲目」を描ききる。

出演
村上亮太朗 / 春
松本真依 / 立花
橘カレン / 梅
藤井颯太郎 / 透

スタッフ
作・演出 / 藤井颯太郎 演出助手 / 今井聖菜 
機材 / 長井佑樹(ぷっちヨ@Kyoto.lighting) 音響 / 小野桃子
衣裳 / 杉山沙織 宣伝美術・写真 / 松本真依 
広報 / 橘カレン 石原口大樹
制作 / 谷風作 プロデューサー / 小野桃子

日程
2019年 1月 12日(土)~2月 3日 (日)
会場
人間座スタジオ・京都府立文化芸術会館

花言葉

村上 
「盲年」の第一稿目は全く違う導入のバージョンで。花言葉をひとつひとつ並べて語りながら、舞台上を回って三年が経過する。そこで倒れて、抱き起こすのが父親、という。
__ 
それは、めちゃくちゃ面白いですね。
村上 
その花言葉の台詞は全部覚えたんですけど、斬新な入り方でしたね。
__ 
彼は目が見えないから花言葉なんか覚えても全く意味がない。色の概念もないから、花言葉の真の意味合いを理解することはない。にも関わらず、彼にとっては重要な意味を持っている。
村上 
そこまで考えて、その上で差し替えたんだと思います。
撮影:白井康平
__ 
そのバージョンも見たかったです。実際に上演された「盲年」、後半の春君のダンスシーンは素晴らしかったですね。役として踊ってたという感じでした。自分に降りかかったすべての物音を処理しきれなくなって踊り出してしまう。その流れに強い説得力があって。
村上 
そうなんですよ、僕は役者というよりダンサーなので、言葉を発することに抵抗があって。セリフの量はそんなに多くないんですけど、独白もあって。そういうのが溜まりに溜まってダンスという表現になっていたなと思います。また逆に、ダンスで表現しきれないところは言葉で表現して。だからあのダンスをジャンル化することはできない。振り付けを何かしようと考えていたのでもなく。
__ 
それを解説しようとするのは多分野暮だと思うんですけど・・・彼の出自と障害と常識は、彼自身をここまで追い込み、逆に言えば生きながらえさせてきたわけでもある。彼の常識を外れるような事が浴びせられて、翻弄されて意思が持てなくなってしまう。混乱とかそういうレベルじゃなくて。そこに、アメリカの畜産オークション競売人のパフォーマンスの映像が重なっていて効果的でした。
村上 
あの時の心境としては、表現というのとは少し違って。まず、後ろで流していた競売人のは僕たちから見たらラップのような音楽のように聞こえるが、畜牛からしたら残酷なものでもある。バックグラウンドを照らし合わせると頭の中で考えないといけないことも沢山あるんですよね。音が流れてるから踊るではなくて、その瞬間瞬間で身体が反応して、思いついて、さらに思いついて動いて、という連鎖が続いていったという感じです。
__ 
言葉に打たれて体が反応して連鎖して・・・例えば、その中に快感はありましたか?
村上 
蜷川幸雄の演出した「近代能楽集弱法師」に近い感覚があって。戦時中の記憶がよみがえり、性的な欲求にまで高まる。内から外に出るというより、外から中に入ってきて、入りきらない。パンパンになっていくイメージ。そこからもう逃げられない。だからあのシーンだけ、ほとんど記憶がないぐらいの。だから何度か舞台から落ちていました。
__ 
まあ、目が見えていないですからね。

作業論

__ 
前回のインタビューで橘カレンさんが、演劇は作業じゃないかみたいなことをおっしゃっていて。確かに、そんな面もあるかもしれないなと。作業そのものをパッケージにまとめるのが演劇の稽古の一つのあり方なんだろうなっていうのはあります。村上さんの「盲年」はまさに、目が見えないからこそ組み立てられる様々な流れから演技が構成できるということがあったのかもしれない。で、尚且つ、目が見えていないからこそ生まれる混乱や迷いも、面白さに直結するのかもなあと思っています。役者は本当に自分の状態や演劇の構成を正確に捉えておくべきなのか。
村上 
それはすごく僕も実感しています。作業的なんですけど、やっぱりちゃんと話すことが大事だと思っていて。そういうところが何らかのこだわりに繋がっていく。積み重ねるというよりかは、その人が何を考えて何を持っているのかを分かち合うことができる。演出の人の指示は聞くけど、それが全てではないと思っていて、その人を越えて行かないといけないから。作業構成プラス、周りをサプライズさせたい。こんなこともやってしまうんだと思わせる稽古ができれば楽しいなと思います。みんなで笑顔で楽しく稽古やってましたというよりは、ちゃんとコミュニケーションが取れた稽古場だったと思いました。全員ですごく考えてましたね。
__ 
周りの人と理解しあう。
村上 
僕はダンサーでも役者としてでもなく僕として考えている事や思っていることを素直に表現できればと思います。
__ 
どこかの段階になると、作業の考え方でだけはいかないんだろうなと思う。役者が自分の状態を把握しようとしても出来る訳がない、という話を前回のインタビューでして、そうかもしれない!と思って。だから春君のダンスシーンも、作業と言う言葉だけではくくれないものだった。
村上 
僕はもう、理解しようと思ってやってるわけではありませんでした。台詞のやり取りについても、稽古でやった事が出来ているかよりも、会話がその場でできているかということに重きを置いて行っていました。稽古が本番であり、本番も稽古でした。

残る

村上 
終わってからも、何かが残っている感じがします。盲年は、脱皮したという感じがありましたね。自分の中でも印象に残る公演だったと思います。
__ 
もう一度やってほしいですね。
村上 
何年後かに。次のダンスシーンは全然違うものになってるかもしれない。全く動かないかも。

質問 大山劇団さんから 村上 亮太朗さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた大山劇団の四人から質問をいただいてきております。まずは大山さんから。「音と動き、どちらから先に作りますか?」
村上 
ストリートダンスと呼ばれるものは音楽から生まれたジャンルなので。作品を作るときは音楽をちゃんと聞いてそこからです。でも僕が自分の作品を作る時は動きからです。文字を書くこともあります。イメージトレーニングをするのが好きなので。
__ 
女優の加納和可子さんからです。「落ち込んだ時はどうしますか?」
村上 
さらに落ち込みます。立ち直ろうとしないです。バーッと言われたときに、自分でさらに落ち込むように別の面から自分を責めて落ち込んで寝ます。
__ 
眠れるんでしょうか。
村上 
眠れないんですけど、言われた後は自分がひとつ引き上がるので。一つ指摘されたら十倍は考えます。一生ダメ出しされるという覚悟はあるので。落ち込むこと自体については気にしない。
__ 
次はプロデューサーの清さんから。「ぜひ、三栄町LIVEに絡んでください」。
村上 
ぜひ。よろしくお願いします。
__ 
次は、片瀬直さんからです。「東京についてどう思いますか?」
村上 
まだ見ていないのでよく分からないです。語れるレベルではないので。

10年

__ 
村上さんがダンスを始めたのは何時からでしょうか。
村上 
3歳からです。姉が始めたのが先でした。10年ぐらい面白くないなと思いながら続けていました。
__ 
面白くなかったんですか!
村上 
僕の周りでダンスをやってる男の子が僕しかいなかったので。他にもテニスとかバスケとか色々スポーツはやってたんですけど、もうすぐ部活も終わるし、高校生なったら部活やらないだろなって思っていて。で今、ダンスをやっている自分は、本気でダンスをやったことがあるのか、一度本気でやってみようと。そこから変わりました。自分の中でちゃんとやってみよう、真剣に向き合ってやってみたら、ひとつの動きに関してももっとうまく踊れるということに気付いて。それが中学校1年か2年生でした。
__ 
誰かに影響を受けるとかではなく自分からそう思ったんですか。
村上 
その時に自分は何も頑張っていないなあと思って。このままでは何もできなくなる、それが自分にとってはダンスだったんです。けれど、ダンスのことは何も知らない。ならまずは調べようと思って、ネットでダンスの関連動画をとにかく見ていました。その時に父親からロックダンスとポップダンスのチームが踊る10分ぐらいの動画を教えてもらって。それが衝撃でした。ダンスにはジャンルが分かれてるけれども全て繋がってるんだということに気づいて。クラシックバレエもヒップホップでも、どの踊りをしても繋がってるんだと。そこに気づいてから、一つのジャンルを極めても、自分のオリジナルのジャンルを作っても、どれも繋がってるんだという安心感がそこに生まれたんです。正解じゃなくても間違いはない。組み合わせるのもいいなぁと思うようになりました。
__ 
幻灯劇場のメンバー紹介ページの、村上さんのページに載ってるアイアンダンスコンテストの動画を拝見しましたがとても良かったです。
村上 
あの作品は自分のやりたいことが出来ました。ただ二人の男女がいて踊る。恋愛に持っていくとかではなく。最初の入りだけで4時間ぐらい試行錯誤しました。

__ 
最近は何を考えていますか?
村上 
今は、どうやったら自分が生きていると言えるかな、という事に答えが出て。それは物作りですね。ダンスや演劇じゃなくても、小物や料理を作ったり。作るのが好きなんですね。最近は衣装作りを始めました。
__ 
衣装ですか!
村上 
「盲年」の衣装がすごく可愛くて。僕も裁縫は得意なので家のミシンを使ってノータックテパードを作りました。こういう感じです。
__ 
おお、これ凄いですね。
村上 
布地を買って作りました。服を買いに行っても欲しいものが大体高くて。。なら作ってしまおうと。デザインやサイズも自分専用に出来るので、絶対的な安心感があります。服作りをして良いなと思った事、一番は愛着ですね。服ってやっぱり消耗品なので、もし破れたりとしても自分で縫って直せるんですよね。愛着があるから絶対に捨てれないですし、綺麗にたたむようになりました。

これから

__ 
これからはどんなことをやっていきたいですか。
村上 
これまで面白い作品に出会うことができているので、自分はすごく運がいいなと思うんです。色々な所に行って学んで自分から、作ってる人の頭の中を覗き込むようなことができれば嬉しいなと思います。本当に心から楽しいなと思います。ダンスじゃなくても服や物作りで楽しいということが分かったので。60歳ぐらいになったらカッコいいおじいちゃんになりたいです。
__ 
何かを作るのが楽しいというのはいいですよね。
村上 
岡本太郎とか好きでかっこいいなぁと思います。周りからの評価を気にせずに突っ走ってきたらいいなと思います。頂いた感想の中で、「好き」や「嫌い」の方が嬉しいです。「上手」とか「下手」とかではなく。

ニホンオオカミのぬいぐるみ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
村上 
ありがとうございます。可愛い。
__ 
ニホンオオカミのぬいぐるみですね。
村上 
ぬいぐるみのプレゼントは初めて貰いました。

大山劇団第二回公演「臼い巨塔」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い致します。大山劇団の皆様は最近、どんな感じでしょうか。
大山 
日に日に仲が悪くなっていってます。
清  
そうですね、公演前になると殺伐としてきますね。全体的にですが特に各部署の中で。
__ 
どんなことが原因で仲が悪くなるんですか?
加納 
台本の締め切りとかです。大山さんと私は演出部で台本作業もやるんですが、今まであんまり目を離して任せたことがないです。脚本は私には書けないし、内容は信用してるんですが、納期に関しては信用していなくて。もう少し、危機感を持って頂きたい。
大山 
危機感はありますよ。加納の返信こそ、全部「刺す」とか「殺す」とかそういう、病院連れてった方がいいかなみたいな内容なんです。そんなことばっかり言ってくるから。
加納 
いや全然抑えてるんですよ。
__ 
つまり、いまは台本執筆中なんですね。
大山 
本番初日が山の頂上だとすると、今は大体五合目ぐらいに来てますね。
__ 
いや、五合目まで来たら後はもう登ったも同然だと思いますよ。
大山 
僕もそう思います。
加納 
いや五合目からがきついから。
大山 
六合目を越えてくると不思議と植物が見られなくなってくるもので。空気も薄くなってきたし。毎日が世界の終わりの日みたいなので、もうずっとパチンコ行きたいって考えてます。
__ 
制作の片瀬さんはどんな感じでしょうか。
片瀬 
今回は作品以外の部分を、キャストの皆さんが一緒になって考えてくれて。前回公演から引き続きの皆さんとは、そういう関係作りができたのかなと思います。そういう雰囲気で作品を作ってきているので、お客さんにもその空気が伝わって、物販でブロマイドを買おうかみたいなことに繋がったらいいかなと思います。
__ 
つまり「臼い巨塔」には、これまでの大山劇団の全てが詰め込まれてると言っても過言ではないと。
片瀬 
だといいですね。SNSも最大限活かしながら伝えていけたらいいなと思います。応援して頂いている方は大事にしたいです。
__ 
そうですね。主宰・プロデューサーの清さんはいかがでしょうか。
清  
僕は三栄町LIVEという企画団体を中心に年間20本以上舞台をプロデュースしてるんですけど、大山劇団では主宰なので、特に一番思いを持ってやっています。演劇の公演をやることが日常化している中で、大山劇団に関しては趣味感強くやっている所があります。これまでに覚えた知識や経験をどうおもしろく反映させるか、そういう志向でやってますね。
__ 
三栄町LIVE、興味深いです。
大山 
三栄町には今いろんな人が揃ってってますね。
清  
レギュラーで公演している黒田勇樹君とか、黒薔薇少女地獄の太田守信氏とか、福井しゅんやもそうだし。うまく連動をはかることができればなと。
__ 
どんな感じのうねりになっていくのか楽しみです。三栄町派閥?違うか、三栄町を中心としたMARVEL・梁山泊感が出てきましたね。
清  
そうですね、なんとなくバトル感を出したい。仲良しシャンシャンじゃなくて。各々がお互いをライバルだと思ってやっていて。ここを起点にして広げていけたらいいですね。下北かサンモールか三栄町か、みたいにできたらいいですね。
大山劇団
第一線の商業映画やドラマに携わりつつ、劇団チキンハートの作・演出として活動する大山晃一郎(以下オオヤマ)が立ち上げる新プロジェクト。

普段商業作品の中に身を置いているからこそ感じている「最近何か表現することって息苦しくないですか?」というため息に近い疑問に対しオオヤマなりに「NO忖度」を引っ提げて立ち向かう。
おもしろければ時代がついてくると本気で信じるオオヤマと半信半疑のプロデューサー清弘樹、酔った勢いで盃を交わしてしまった女優片瀬直と加納和可子の四人が織りなす結束力は竹ひごクラス。

これは劇団という枠を超えた一つの「ムーブメント」である。(公式サイトより)
大山劇団「臼い巨塔-Team Medical Dragon+Night-」
■あらすじ20XX年ーアフリシア大陸に蔓延したウィルス。
その圧倒的な感染力と致死率は世界中を恐怖に陥れた。人々が絶望する中、この世界的パンデミックを食い止めるため
特別医療チーム「国境なき医師団-チーム・メディカルドラゴンナイト-」が立ち上がった。出生、経歴、一切不明のならず者で結成された-チーム・メディカルドラゴンナイト-。社会からはじき出された-チーム・メディカルドラゴンナイト-の正体は
医療の各分野におけるスペシャリストで構成されたスペシャル医療チームだった。人々のエゴ、ヒエラルキーをカタストロフィーされて生きてきた
-チーム・メディカルドラゴンナイト-が求めるものはピース。平和だった。世界中の人々の希望を背負い、ならず者達-チーム・メディカルドラゴンナイト-は
世界を救うためにウィルスの蔓延するグラウンド・ゼロ、アフリシア大陸へと向かった。
商人の町、OSAKAが生んだ奇才、大山晃一郎が送る摩訶不思議本格医療冒険アドベンチャー!

■公演日程
2019年5月17日(金)~5月26日(日) 全18ステージ

■会場
新宿 シアターブラッツ

詳細は公式サイトからご確認ください。


何がすごいんだよ

__ 
次回公演「臼い巨塔」。狙いは何ですか?
大山 
いや凄いですよ今回。自分史上最高作ですね。本当にすごいです。
清  
何がすごいんだよ。
大山 
「臼い巨塔」ってそういう意味だったんやって思う筈です。チラシ受け取った人は「こいつらふざけてんな」って思うんですけど、メッセージ性はすごいです。
加納 
うん。
__ 
臼はまあ、お餅をつく道具ですよね。
大山 
今は言うつもりはないですが、気がついたら「なるほど」と思うような方向性です。今回は薄っぺらい何かを見に来た人達を、そうでもなかった、そういう意味かと思わせるようなゴールが見つかったので。抽象的なことしか言ってないですけど。
__ 
あ、じゃあ今は八合目まで来てるんですね!