スーパーマンになりたくて

__ 
いつか、どんな演技ができるようになりたいですか?
藤原 
答えになってるかどうかわからないですけど、スーパーマンになりたくて。
__ 
なんでも出来るようになりたい?
藤原 
そうですね。いろんなジャンルの舞台があって、このジャンルのをするのは得意だけど、こっちは苦手、みたいな感じにはなりたくなくて。喜劇も、アクションも。求められてるんやったらそれもできるようになりたいです。色々なことをやって自分の中に溜めて行って。
__ 
努力さえ、続けていけばですね。
藤原 
今後は、もっといろんなところのオーディションを受けて行こうと思ってます。小劇場も大好きなんですけど、大舞台にも積極的に行きたいと思ってます。

和菓子のアップリケ

__ 
今日はですねお話を伺えたお礼に、プレゼントを持って参りました。
藤原 
ありがとうございます。(開ける)あ、かわいい。わたし、縫い物もできるようになりたいので。新しく、ソノノチに入団した外谷が縫物がすごく得意で。教わりながら付けようとおもいます。どこに付けようかな。

エイチエムピー・シアターカンパニー「アラビアの夜」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。高橋さんは最近、どんな感じでしょうか。
高橋 
よろしくお願いします。最近は、1週間ぐらい前まで、職場が主催している演劇フェスティバルで忙しくしていました。次は、エイチエムピー・シアターカンパニーさんの「アラビアの夜」に出演させて頂くんですが、これで稽古にようやく腰を据えられるな、という状態です。
__ 
お疲れ様でした。お仕事以外のプライベートではどんな感じですか?
高橋 
プライベート。僕は漫画が好きなんですが、最近は忙しかったのであまり読めていなかったんです。買っていたものを消化していこうと思います。
__ 
積読ですか。それぐらい忙しかったんですね。一番最初に読みたいのはどれですか?
高橋 
山田玲司先生の「CICADA」(シカーダ)という作品です。漫画が禁止された世界のお話で、連載時からずっと気になっていたんですけど。すぐ読みたいです。
エイチエムピー・シアターカンパニー 同時代の海外戯曲Ⅲ『アラビアの夜』
作:ローラント・シンメルプフェニヒ 
演出・舞台美術:笠井友仁
翻訳:大塚直
ドラマトゥルク:くるみざわしん(光の領地)

2014年度に演出・笠井友仁が文化庁芸術祭新人賞を受賞した「アラビアの夜」。
今回、新キャストで新たに「アラビアの夜」を上演!
現実とファンタジーが入り混じる「語りの演劇」をぜひお楽しみください。

あらすじ
夏の夜、ある高層マンションの8階でフランツィスカはシャワーを浴びていた。

彼女に記憶はない。

現在の生活も、どうして友達のファティマとこのマンションに越してきたのかも思い出せない。
シャワーを浴び、日が沈むと同時にソファで深い眠りに落ちる彼女の元を3人の男が訪れる

― 向いのマンションに住むカルパチ、
 
  ファティマの恋人カリル、
 
  そしてマンションの管理人ローマイアー。

何気ない現実的な世界に、象徴的なイスラムの幻想空間が入り込む。 
ファンタジーとリアルの境界が融解する。

出演
☆…アラビアチーム
フランツィスカ ― 原由恵
ファティマ ― 水谷有希
カルパチ ― 高橋紘介
カリル ― 藤田和広
ローマイアー ― 澤田誠

★…ナイトチーム
フランツィスカ ― 畑迫有紀
ファティマ ― 石川信子
カルパチ ― 山下裕矢
カリル ― 福田薫
ローマイアー ― 坂本正巳

日程
2017年3月18日(土)~20日(月・祝)
3月18日(土)14:00☆/17:00★/20:00☆
3月19日(日)11:00★/15:30☆/19:00★
3月20日(月・祝)11:00☆/15:30★
※Wキャストで上演します(☆…アラビアチーム、★…ナイトチーム)。
※上演時間は約1時間~1時間15分を予定

会場
in→dependent theatre 1st


チケット
当日 一般3,300円/25歳以下・障がい者2,800円
予約割 一般3,000円/25歳以下・障がい者2,500円
先得決済前日 一般2,600円/25歳以下・障がい者2,100円
先得決済14 一般2,200円/25歳以下・障がい者1,700円
高校生以下 一律500円
(詳細はリンク先をご確認ください。)

vol.506 高橋 紘介

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高橋

モノローグ演劇?

__ 
エイチエムピー・シアターカンパニー「アラビアの夜」、ですね。
高橋 
今回の作品はダブルキャストで、オーディションで集められた方も多いんです。でも僕のいるチームは、結構常連の方が多くて。
__ 
話題の作品ですよね、「アラビアの夜」。
高橋 
僕は映像で見せてもらったんですけど、演出方法が非常に面白くて。でも役者は大変だろうな、と思いました。役者に求められるものが結構多い現場です。
__ 
と言うと?
高橋 
まず戯曲が、語りの演劇という、今回の作家が提唱しているジャンルなんですけど。例えば5人それぞれの一人称の小説が、バラバラに挿入されていると言うか。だからセリフの交わし合いなんかでも、普通の絡みかたをしないんですよ。その辺りが、これまでに無かった想像の掻き立てられ方をしてすごく面白いんですが、それを覚えてやる俳優の方はやっぱり大変で(笑)そこに、エイチエムピー独特の身体表現が絡んできて、フィジカルの大変さも加わってきます。今は各チームの役者が戯曲に対して、それぞれのアイディアで仕掛けていっていますね。
__ 
役者に求められる部分がとても大きいですね。
高橋 
当たり前の事なんですけど、お客さんに内容が伝わるように演技する、その責任が大きいですね。でも、モノローグ、語りを主に用いるんです。自分が今、このシーンでどうしたか、という行動をセリフで説明するんです。例えば「椅子に座る」演技も、実際に俳優が椅子に座らなかったり。ただ、お客さんに「そこで椅子に座った」ことがわかるように語ってくれと。
__ 
それは相当、ややこしそうな演出ですね。ただ、とても刺激的だという事は分かりました。
高橋 
余裕のある方は、是非どちらのチームも見て欲しいと思います。
__ 
意気込みを教えてください。
高橋 
僕、今回初めて大阪で芝居をするんですよ。なので大阪のお客さんに存在感を残せたらいいなと思ってます。

vol.506 高橋 紘介

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高橋

演劇でしかできないことがある

__ 
高橋さんが演劇を始めたのは、どんな経緯だったんですか?
高橋 
高校の演劇部からです。それまでずっと運動部だったんですけど、根が体育会系ではなかったので、しばらくしてやめちゃったんですよ。だからしばらくは帰宅部だったんですけど、クラスの女の子に演劇部に誘われて。その演劇部は当時、部員が女の子4人だけっていう状態だったんですけど、このままじゃ大会に出れないから、助っ人でいいから誰か、って、片っ端から声をかけてたんですね。
__ 
なるほど。
高橋 
そんなに話したこともない女の子だったんですけど、まあ裏方ならいいよと。で、高校演劇あるあるなんですけど、男子が入ってきたら部員達がすごく喜ぶんですね。「せっかく男が来たんだから、当然出てくれ」となって。生まれて初めて演劇をしましたね。そうしたらセリフを言ったりするのも楽しくて。小説や漫画などの物語が好きだったんですが、自分が物語の中に入るというのが面白かったですね。
__ 
今演劇を続けているモチベーションを教えてください。
高橋 
うーん、僕が、演劇でしかできないことがある、と思っているから、ですね。すごく単純に、目の前で生きてる本物の人間が何かをしている、ということ。小劇場を見始めたのが、大学の3回生ぐらいなんですよ。他の大学の学生劇団だったんですけど、想像できないぐらい高いレベルだったんです。自分たちではそうそうできないぐらいしっかりセットを作って、衣装を作って。演技も高いレベルで。小劇場を始めたのはそこからでした。
__ 
そうなんですね。そして、演劇でしかできないこと、とは。
高橋 
空間としてそこに繋がってるから、破壊してしまおうと思えばできるぐらい目の前で、体温を持って、質量を持って汗をかいているという事実。でも、ふっと目をそらすと、照明機材とかがあって、セットがある。目の前の人も本当は大学生だし。全部白々しいくらいに作りごとのはずなのに、でもまた吸い寄せられるように芝居の世界に入っていく。今までに味わったことがないような興奮があったんですね。
__ 
なるほど。
高橋 
舞台上で盛り上がってるシーンがあって、そこに立ち上がって一緒に盛り上がりたいと思うぐらいだったんですよ。もちろん映画や本でしかできないような盛り上がりというのはあると思うんですけど、演劇でしかできないその盛り上がりというのは、ファーストインプレッションとして強かったです。それがある限り、演劇はこの世にあっていいんだろう、と思います。作り手としても、観客としても。

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高橋

地域で演劇をするということ

__ 
そしてしばらく、悪い芝居に入ってましたね。
高橋 
2年ぐらい入っていました。今でもあらゆる面であの時の経験が血肉になっていますね。ずっと大学で演劇をやっていたんですけど、外に出てみようと思って。4回生の頃にビギナーズユニットに参加して。大学卒業後、その年に悪い芝居に入りました。小劇場での経験が全くない状態だったので、悪い芝居の現場は、参加できただけでも良かったです。本当にお世話になりました。
__ 
大学卒業後、山城こみねっとに入ったのは、どんな経緯があったのでしょうか。
高橋 
京都文教大学の劇団二色にいたんですけど、現・山城こみねっとの理事、大橋さんに声をかけられました。うちの大学も、こみねっとの拠点も同じ宇治なので、3回生の頃から時々、活動のお手伝いはしていたんです。ビギナーズユニットの後に演劇を続けようか、就職しようか、悶々と悩んでいるときに、大橋さんから「もしよかったら、卒業したらウチくる?」と声をかけていただいて。
__ 
なるほど。山城こみねっとではどんな活動をしているのでしょうか。
高橋 
演劇を活用して、学校や地域に貢献する、というのが活動のモットーです。小学校に、演劇のワークショップの授業をしに行ったりしています。例えば宇治の小学校に、地域学習として宇治茶に関係する劇をみんなで作ろう、と。後は、国語でやっている文学教材を演劇にしたり。いろんな授業をしてるので、ちょっと演劇からずれることもするんですけど、演劇と宇治と言う2つの柱がありますね。後、地域のイベントに、宇治茶のクイズの出題者として出向いたり。自主企画として、宇治文化センターで市民劇を作ったり。地域の人たちの演劇フェスティバルを企画したり。
NPO法人 山城こみねっと
地域に演劇文化を広げます
演劇を通して学校教育のお手伝いをします
地域産業の活性化に貢献します(公式サイトより)

上記をコンセプトに掲げ、京都府山城地方で活動するNPO法人。2009年設立。

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高橋

市民劇を観に行こう

__ 
高橋さんの活動というか存在は、宇治の演劇活動に有機的に組み込まれてますよね。
高橋 
宇治茶に関わる事ってすごく多いので。お茶の農家さんや、茶問屋さん、組合に関わる人はすごく多いので。その辺りの需要に沿うようにやってる所はあると思います。演劇の企画はこちらが立ち上げるものなんですけど、どういうふうに周りの方に協力してもらうかと言うと、やっぱり、その人たちの関わっている身近なこととして地域の人に投げかけないと、何も繋がらないので。
__ 
市民劇の面白さ、めちゃくちゃわかりますよ。
高橋 
本当に色々な年齢層の方が参加されますので。最終的にはみんな面白くなるんですよ。
__ 
地続きなんですよね、隣に住んでいる知り合いの人達が舞台に立っている時の高揚感。
高橋 
今舞台上で宇治茶の話をしている人達が、本当に宇治に住んでる人達なんだ、ていうのがいいですよね。毎年色々な演出の方に来ていただいてるんですけど、劇団衛星の黒木さんにこれまで何回かお世話になっていて。黒木さんは、普段普通に生活している人たちを魅力的に見せるのがすごく上手いんですよ。黒木さんの演出って、可愛げだなあ、と。地域の人たちがめちゃくちゃ魅力的に見えてくるんです。
__ 
ストレートにその人の等身大をつくのが上手いですよね。
高橋 
確かに。

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高橋

妖怪が趣味です

__ 
高橋さんが興味のある分野を教えてください。
高橋 
完全に趣味の話なんですけど、妖怪が好きなんですよ。生まれが鳥取県で水木しげるがすごく身近で。高校生の頃に京極夏彦にドハマリして。京極夏彦は僕の人格形成にもかなり関わってると思います。京都に来たのも、大学で民俗学ができるというのが大きな理由です。卒論は、節分で追われる鬼について、だとか。
__ 
そうなんですね。私も妖怪には興味があります。頭の中に潜むタイプの妖怪って面白いですよね。京極の「姑獲鳥の夏」で、死体が見えないっていう現象があったじゃないですか。あれも妖怪っていえるんじゃないかなと思って。その正体はよくわからないけれども、明らかに何かの存在だと。
高橋 
意識にかけられる呪い、という感じですかね。
__ 
その理解できなさ、正体不明っぷりが面白い。人間の精神の、不具合なのか、まだ見つかっていない現象なのか、機能なのか。
高橋 
それが、絵師によってキャラクター化されるのが面白いですよね。
__ 
妖怪の本質を捉えようとしても、どこまでも逃げていく感じがある。
高橋 
妖怪をとりあえず説明して安心するんですね。きっと。

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高橋

質問 川本 泰斗さんから 高橋 紘介さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいたから質問を頂いてきております。BokuBorgの川本泰斗さんからです。「服装で大切にしていることは何ですか」。
高橋 
ファッションセンスは全然、からっきしなので。でも、カジュアルよりはフォーマルが好きです。あんまり冒険をしない。シンプルですね。
__ 
まあ、好きなことをするのが一番ですね。

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高橋

二つを近づける

__ 
いつか、挑戦してみたい演技はありますか?
高橋 
アングラ芝居をやってみたいです。個人的に好きなんですよ。そういうのが求められるものに出てみたいなと思ってます。無性にそういう演技がしたくなることがあります。
__ 
ハマると思いますよ。
高橋 
めちゃくちゃ叫ぶような役とか、してみたいですね。
__ 
いや、カッコいいですよ。高橋さんの熱い演技、観たことあります。劇団しようよの「CEREMONY」の完コピVerでやってましたよね。
高橋 
あれはもう、初演の夏目さんの演技を何回も見て。必死でした。
__ 
なるほど。そんな高橋さん、山城こみねっとでいつかやりたいことはありますか?
高橋 
宇治市を中心とした演劇文化は、京都市の演劇文化とは離れていると思っていて。違うシマなんですね。それがひとつになればいいとは思わないんですけど、その上で、京都の演劇の人たちをいろんな仕事で呼べたらいいな、と思っています。いろんな人が。感覚として近くなってほしいですね。
__ 
そもそも近いですからね。
高橋 
精神的な距離と言うか。それぞれの人々が、もっと行き来ができるように。

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高橋

水のような・・・

__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
高橋 
今年は、アラビアの夜のあとには劇団しようよさんの「あゆみ」に出ます。今年の後半は、11月と12月にエイチエムピー・シアターカンパニーさんの鶴屋南北「四谷怪談(仮)」「盟三五大切(仮)」2作連続上演の両方に出演することが決まっています。役者としては、便利な、水のような役者になりたいと思っています。どこにでもハマれるような。「アングラ芝居がやりたい」とはもしかしたら矛盾するかもしれませんが。
__ 
水とは?
高橋 
そうですね、Aという塊とBという塊の間に、ちょうど良く入り込んで隙間を満たすことができる、とか。目立たなくても、いたら絶妙にちょうど良い。そういう便利な役者、ですね。

vol.506 高橋 紘介

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高橋

一保堂茶舗のお茶

__ 
今日はですね、お話を伺えた俺にプレゼントを持って参りました。
高橋 
ありがとうございます。(開ける)お茶ですね。
__ 
もし良かったらお飲みいただければと思います。

vol.506 高橋 紘介

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高橋

二月の夜

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。BokuBorgの川本さんにお話を伺います。川本さんは最近、どんな感じでしょうか。
川本 
よろしくお願いします。最近は稽古したり、バイトしたり。今年の4月から拠点が東京になるんですけど、その準備をしたり。
__ 
そう、東京で就職するんですよね。
川本 
最終的にはいつか戻ってきたいというのはあるんですけど。
__ 
どんな所で働くんですか?
川本 
建築事務所です。地元に帰ってきたいというのも、いつか独立したいというのがあって。それは関西で、と思っていて。
__ 
東京でも頑張ってください。
川本 
はい。はは、なんだか「東京に行ってみる」、みたいなノリなんですけど。
BokuBorg
ボクボルクと読みます。 京都を拠点に活動する川本泰斗(元劇団ケッペキ)のソロユニットです。独りぼっちの豚はヒトに助けられて生きる。(公式Twitterより)

BokuBorg vol.2「幸のナナメ」

__ 
3月17日からBokuBorgの「幸のナナメ」、スタジオヴァリエですね。旗揚げ公演から3年、区切りとしての公演という形ですが、チラシの感覚からしてとても楽しみです。どんな感じの作品になりそうでしょうか。
川本 
ありがとうございます。そうですね、簡単に言うと、幸せというものに執着しすぎてバランスを崩してしまった女の人の話です。身近な女性がモデルになってるんですけど。
__ 
女性の話なんですね。女性、に興味がある?
川本 
そうですね、興味がありますね。好きなんですね、そのままの意味で。なんか、愛憎が深いような気がして。何かしらをすごく嫌いなんだけど同時にぎりぎりのところで好きだったり。
__ 
幸せにこだわっている女性の話。
川本 
いつのまにか「幸せになりたい」、にとりつかれている女性。「幸せになりたい」という言葉って面白いなと思って。漠然としてるけど、結局そういうところに向かって言ってしまう。僕自身、戒めているつもりなんですけど、気づいたらいつのまにかそれに動かされている。
__ 
ええ。悔しいですが。
川本 
例えば、「幸せな家庭」というイメージに対するこだわり。僕自身にも「男たるものデカめの車に乗って週末にはキャンプに行って一軒家を買って庭にブランコがある、そういう家庭を築くものだ」、みたいな。で、僕自身もそうなりたいと思ってるんですよね。そして僕の周りの先輩の男性たちは、そこになりたいと思ってなってるというよりは、やりたい事を自然とやっていたらそうなっていた、みたいなもんで。
__ 
3年前のBokuBorgの旗揚げ公演を拝見しているのですが、またかなりカラーが違うような気がしますね。前回は結構、アバンギャルドな雰囲気だったでしょう。それが、チラシはもちろんタイトルからして・・・そのあたりの変遷がまた楽しみですが。
川本 
そうですね。でもどうなんでしょうね、書きたい話の内容としては、家族愛とか孤独感とか、そういうものなんですよ。あの時と変わらず。違うのは味付けだけ、なんです。今回はもうちょっとホットな感じになると思いますね。味付け自体は結構、コロコロ変わるものなのかなと思います。
BokuBorg vol.2『幸のナナメ』
彼となら、私はごくごく普通の、いたって平穏な、なんでもない幸せとかいうやつを手に入れることができるだろう家族の、幸せに向かうお話。
会期:2017年3月17日(金)~2017年3月20日(月・祝)
出演者:ピンク地底人2号(ピンク地底人)、勝二繁、土肥希理子、野村眞人(劇団速度)、藤居里穂、堀内綜一郎
スタッフ:脚本・演出:川本泰斗
舞台監督:北方こだち(GEKKEN staffroom)
照明:真田貴吉
音響:アーサー
演奏:山田佳弘
イラスト:廣部萌
制作:溝端友香


自分のための場所

__ 
次の「幸のナナメ」が最後の公演になるんでしょうか・・・
川本 
まあでも、一つの節目となる行為なのかなと思います。東京でどんな生活になるのかもまだわからないですからね。でも、語弊があるかもしれないですが、やりたいからやる、というスタンスは常に持っておきたいと思います。一人のユニットなので、僕がやりたいからやりたいと思った時に、ものすごく小さい規模でやるかもしれませんし、人を集めて公演をするかもしれません。
__ 
その時機会があったら是非、拝見したいです。
川本 
ぜひぜひ。BokuBorgは僕が関わる活動全般につけている名前なので、何かでお目にかかれたら嬉しいです。別の媒体で出来てもいいかな、と、
__ 
BokuBorgの由来とは。
川本 
Boku=僕で、Borgはドイツ語で、去勢された豚です。豚が好きなんですよ。豚、可愛いじゃないですか、でも肉とか、欲とかの象徴にされているのに可愛くてポップな存在。なるべく露悪的な表現は避けたいという感覚があります。人間の欲とかのテーマも好きなので、そういう表現も織り交ぜますが。
__ 
確かに露悪的ではないですね。
川本 
当初はそう考えていました。今はどうかわからないです(笑う)。書いてない嫌な事の方がより嫌かなと。
__ 
お客さんが想像してようやく届く嫌さ、ですね。それ、成功したらいいですよね。迂遠な嫌がらせというか。

舞踏を見に行ってから生じた変化

川本 
しばらく前に、舞踏を見に行った時にショックを受けて。
__ 
と言うと?
川本 
まず演劇って、しゃべるじゃないですか。ということは嘘をつくと。すごい嫌いやのに好きやと言えたり。その逆もできるし。それをうまく使うのが演劇の利点なのかもしれない。
__ 
なぜ、演劇でなければならないのか。つまり演劇の蓋然性を問う、と。
川本 
旗揚げ公演で、アフタートークに出て頂いた演出家の方に「よくまとまっている」という言葉を頂いたんです。だから面白くない、という言葉も。ああ、確かになと思ったのは、まとまっていないものを舞台に上げる勇気が無かったんです。あの時は、自分の言葉で100%を説明できるものを完成品として舞台に乗せるのが礼儀だと思っていたんです。でもそれは恐怖感だったのかもしれない。もしかしたら、「何かわからへんけど大切で、説明出来るかどうか自信はないけれども舞台上に上げる必要性を強く感じているもの」、を、なるべくそのまま舞台上にあげるようにしたいなと。そっちの方がしんどいとは思うんですけど。
__ 
「分からないこと」、が舞台に上がっている。それは非常に歓迎すべきことだと思うんですね。説明しようがないものは、大抵、輝いているように見えるんですよ。その瞬間、それまでの上演時間全てが結実したような。そういう美しい瞬間が生まれれば、と思う。ただし、一つでいい。
川本 
僕も、それは一つでいいと思います。明確か不明かはともかく。僕は建築をやってるんですけど、建築の考え方で「Less is More」という言葉があるんです。より少ないことはより良いことである。学生時代の頃に習って、まあ聞き流せてたんですけど。でもダンスとかパフォーマンスをやっている先生がその言葉を使ったんですよ。ああ、ダンスの世界に浸透してるんだな、と。クリエイションをする時の基本概念として、「Less is More」の考え方は敷衍しているんだな、と。舞台上にあげたいと思ったものを過不足なく伝えること、そのために他の要素を削ぎ落とす。それを面白くするためには、周りの諸条件が見えていると面白くない、と。「Less Is More」を言い出したのは20世紀初頭の人々なんです。ある種のクリエイションの答えがそれで、それに対するアンチテーゼも生まれてはいますが、「Less is More」は強いんだなあ、と。演出をするときも、そんな感じにはなりがちですね。もっと言うなら、編集する、みたいな感じですね。だからあまり創作をするっていう感じじゃないんですよ。悪意ある編集をしたらえげつないドキュメンタリーになったりするし。NHKの宮崎駿のドキュメンタリーとかみたいに。

夜を明かし語った日々

__ 
川本さんが演劇を始めた経緯を教えてください。
川本 
京都大学の劇団ケッペキに入ってからです。始めた理由としては、僕はちっちゃい頃からクラシックバレエをやっていて。男の子なのにちょっと嫌やったんですけど、舞台上にいるのは楽しかったんですね。だから大学に入ったら演劇サークルとかに入るんやろうなと思っていました。京都工繊大だったんですけど、近いところに演劇部のある大学といえば京大。劇団ケッペキに入りました。
__ 
そして今は、京大院生ですよね。ケッペキでの一番の思い出を教えてください
川本 
よく飲んでましたね。破滅的な飲み方をしていました。周りから見ればすごく嫌だったんでしょうけど、演出をやってる先輩とかと一緒に、グダグダネチネチと。最後はよくわからなくなって、寝る、みたいな。もっとさらっと俳優をやりたい子達もいたと思うんですけど。あれはあれで。
__ 
それはそうですよ。
川本 
あの輪のなかのひとたちは楽しかったんですよ。
__ 
もし、悔いがあるとすれば?
川本 
途中で楽しくなくなっていた、というのが、悔いですかね。どうだろうな、自己顕示欲の強い役者さんっているじゃないですか。僕も子供の頃は、バレエにしてもピアノにしても自己主張が強くて。自己主張が強い延長で演劇をやっていたのに、いつのまにか、演劇論を考えたり曲解したり。難しいことばっかりやろうとして、特に俳優をやるのが楽しくなくなっていった、というのはありますね。そういうのが、ここ一年ぐらい休憩していたというのもあって、演劇を伸び伸びやるのが面白いなあと思うようになりました。
__ 
ちょっと、休憩するというのは良いと思いますよ。
川本 
実は僕、ダンスをやるようになったんです。コンタクトプロビゼーションのワークショップに行ったりして、ダンサーの人と触れあうことが多いんです。というのがちょっと大きいと思います。俳優さんもワークショップに来ることがあるんですけど、なぜか、俳優さんはできないんですね。なぜかと言うと正解を求めちゃうから。
__ 
はいはい。
川本 
どう動くのが良いのか、ということになってしまう。ダンスをやってる人達は、答えを全然求めていないんです。
__ 
そこですよね。
川本 
言われていることをただやる、ということにちゃんと集中できる。その上で、話し合いをした時に「特に私は何も思いませんでした」という発言をすることに躊躇がない。周りのダンサーさんも、その意見に対して何か言うわけではない。 俳優さんは、そういう話し合いの場で、ウィットに富んだことを言わないといけないような、そういう思いに囚われているように思えるんです。
__ 
前に取材させていただいたかたとそういう話になったんです。ダンスと演劇でどう違うかという話題で、演劇はシーンを固定して、だから観客は俳優の人間を見ている。だが、ダンスの方は、観客とダンサーが、肉体でぶつかりあっている。そういう側面があるなと思って。
川本 
そういうこともあるのかな。感覚的なところなんですけど、ダンサーの方は喋ってて気持ちいいですね。 いい俳優さんもそうなんですけど、ぐじぐじしていないと言うか。テキパキしてるって言うか。

質問 江藤 美南海さんから 川本 泰斗さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、江藤美南海さんから質問を頂いてきております。ちなみに江藤さんも、春から東京だそうで。文学座の研修生になるそうです。
川本 
そうなんですね。
__ 
もしよかったら、何かの機会に見に行ってあげてください。質問は「好きなお酒は何ですか?」
川本 
日本酒ですね。「風の森」という、有機発酵の美炭酸のものです。それと、差し入れをするときはその人の出身地のお酒を手に入れられるなら手に入れてお贈りしています。地元の酒を貰ったら嬉しいかなと思って。
__ 
おしゃれですね!

「あるある」を発見する

__ 
いつか、どんな作品を作りたいですか?
川本 
なるべくいろんな人に当てはまる「あるある」です。マイノリティに向けて、という感じではなくて。やっぱりいろんな人に見てもらわんと、と思ってます。みんなちょっと思っているあるある、ってあるじゃないですか。すごくたくさんの人にも通じる、ニッチな。 あんまり芸術家だから、みたいな敷居が好きじゃなくて。
__ 
最低でもエンターテインメントでありたいと。
川本 
エンターテインメントでなくなっちゃうともったいないな、と思ってしまうんですよね。アバンギャルドな作品でもいいんですけど、お客さんがどんどん引いてしまう。むしろ、お客さんにずっと寄り添って、距離を詰めて、最後に殴る、というようでありたいと思ってます。

100点の演技のために

川本 
努力クラブの佐々木さんが好きで、何回か一緒に飲みに行ったんですよ。その中で盛り上がった話があって。僕はお芝居って、減点方式のゲームだと思っていて。初めは0点から始まって、そこから、「良い演技をする」「プラマイゼロのことをする」「マイナスのことをする」という三択があって。まず最初にマイナス1点の演技をすると、その次にプラス1点のアクションをしても0.5という評価になってしまう。マイナス1点をするとー2.5点。
__ 
面白い。そうですね、ケチが付き始めると良くない、という奴ですね。
川本 
でも、プラスの方にも加速度があるかというとそうではなく、1点ずつの積み上げになんですよ。最終的には、平均点はおしなべてマイナス寄りになっているのでは、という考え方を話したんです。佐々木さんと意見が合わなかったのは、「その状態でも+100点になる演技がある」「そこだけを探してやっている」と言っていて。学生の頃はプラマイ0点をとり続けていたら、 平均点がマイナスになるカルチャーなんだから、相対的に絶対上に行く、と。カチカチな頭だったんですけどね、今はもう少し柔らかくなりました。佐々木さんの言うことも分かるし。
__ 
成長ですね。それはきっと。
川本 
そして今は、お客さんに近づいて、最終的に殴る、ということを目指しています。