生きて

__ 
次の「blue/amber」では、どのような上演を目指していますか?
杉本 
まず、一応私は劇作家なのですが、俳優さん個人が、今までどう生きてきたかというのを聞くところから執筆を始めていまして。俳優さん一人一人の魅力が伝わる上演にできればいいな、と思っています。スポーツをやっている人だったらそれを見せてもらったりだとか、働いている人なら普段の仕事の様子とか。そういう作業から、役者さんの癖とかがつかめてきます。演技指導という意味では、稽古の序盤の方は台詞の音の調子とかしか聞いてなくて。抑揚をつけてゲキゲキしく言わないとか、語尾が消えてしまわないように、とか。全体的なミザンスにはこだわる方なんですけど。
__ 
なるほど。役者をかっこよく思わせようというのはどこから来るんですか?
杉本 
中学の頃、あることがあって。それをきっかけに身近な人と突然会えなくなるみたいなことがあるかもしれないな、というのが今もあって。とにかく居てほしいというのがあるんです。例えば舞台に立つということがあるんだとしたら、その人が指針を持って生きてたりとかするのなら、それが見えるような演出をしたいと思っていて。
__ 
なるほど。
杉本 
「居座りの日」と「月並みに告ぐ」を作った時期に震災があったんです。私自身は被害はなかったんですけど、誰かがいなくなってしまう、という事が・・・ちょっとうまく言えないんですけど。
__ 
それを表現せずにはいられない。
杉本 
「居座りの日」というタイトルを持つ作品については、中学の頃の事を書かないといけないと思っていました。自分が死ぬまでには必ず。ただ、去年の2月のウイングフィールドでの上演ではその執着が剥がれていくようなそういう感覚があって。それは私にとって良いことなのかどうかわからないですが・・・。

道理とロックについて

__ 
「水平と婉曲」は、詩の朗読とか閉鎖的な空間での演出と、色々な要素があって、それぞれひとつずつの道理はわからないけれどとても楽しめる。それが一旦のゴール、としても良いのかなという気がしていて。
杉本 
はい、一旦のゴール。
__ 
アバンギャルドな演出作品は、時としてそれを「単純に楽しんで良いものかどうか」分からなくなってしまう場合もあると思うんですよね。改めて伺いたいのですが、杉本さんは、作品を見て楽しんでもらいたいと思いますか?
杉本 
思いますね。上演を重ねるたびに、中学校の頃にあった事件の記憶が薄れていくところがあって。それが大きいような気がしています。それを笑い飛ばせてしまっているような。例えば私、稽古場でいつも爆笑しながら過ごしているんですけど。「次はウチ、コントやります」って周りに言ってたりします。悪意というか、悪ふざけというのは存分にやらかしたいと思っています。
__ 
最上級の笑うだけを見てみたいですね。体重が乗った悪ふざけ。
杉本 
そうですね、もちろん。
__ 
ロックンロールがあればいいですよね。杉本さんはロックンロールについてはどう思いますか?
杉本 
私、なんか生き方がロックだと言われるんですけど、あんまりそういう自覚はない、後、「ロール」ってどういう意味なんだろう、と思ってます。
__ 
ロールは続けること、ですね。ロックは既存の価値観を壊す、みたいな。「水平と婉曲」で、役者がセリフを忘れる、という演技があったじゃないですか。あれはロックでしたね。
杉本 
あれも悪ふざけで、稽古の最終日ぐらいにできたシーンです。
__ 
8割はわかっていたと思います。突然照明が消えたりとか、面白かったですよ。

レトリックと私と

__ 
ご自身の、詩を作るときのスタイルを説明するとしたら?
杉本 
最近思うのは、あんまり、わざわざ戯曲にして伝えたいという意欲が少なくて。もしかしたら元々なのかな。でも文章を作る楽しさの中で最大なのは、レトリックが上手く行った時。言葉の連なりから想起される表現、その幅を利かせられたりとか、そういうのがうまくいくと単純に嬉しい。そういうことにしかあまり興味がないような気がしていて。twitterとかはやるんですけど。日常で思ったこととかを投稿するだけなんだけど、結局それを書くときも、どこか詩に近づけて、もしくは詩として書いている。練習と言うか訓練というか。そうなっていると思います。
__ 
レトリックは楽しいですからね。わかります。もしかしてそれは他人の反応はどうでもよかったりしますか?
杉本 
どうでもよくは思いますけど、面白いと言ってくれる人がいたら単純に嬉しいです。戯曲は何もない状態から役者さんを元に書くんですけど、役者さんそれぞれに合わせた登場人物を付けたりするんですよね。

解答を求めないで

__ 
役者に対して求めることは何ですか?
杉本 
すぐに回答を求めてこないことですね。結構それは重要です。意外とそれは体力のいることで。で、その、私自身は一応、何通りかの解釈もできるように作品を書いてるので、「たった一つの正解は無い」という事が分かった上で稽古場にいるけれども。実は役者さんから、全く未知の新しい答えが出てくることを期待していて。で実際役者さんの提示の方が面白いことが多い。
__ 
役者と一緒に作るという感じですね。役者にとって、どうしても、縁起はひとつの結果にまとまって行きますから、そういう責任を持つ以上、正解を志すのは当然だと思うんですけれども。正解を聞きに行くというのは・・・。まあ、指示されて作る演技もあるとは思いますが。
杉本 
あると思います。
__ 
ただ、完全に演技指導によって作られる作品なんてものもあるのかもしれませんね。

停滞

__ 
演技を作るにあたって、非常に幅広い選択肢の中からひとつを選び取らなくてはならない。というか、そもそも、その幅が選べる場所に行かなくてはならない、幅を見渡すことのできる目を持たなくてはいけない。そして選ぶ。いくつかの段階があるわけですけれども、そこに厳しさがある。詩を元にした作品の場合、それはどのようなスキームとなるのでしょうか。
杉本 
停滞することが多い、けれどもやり続けるしかなくって。よく稽古場でおしゃべりするんですけど、そういうところからも、その人が何を考えてそこにいるのか、作品との共通自己を見つけ出したりとか。けれども一番重要なのが、俳優同士の関係性で。戯曲自体は既にあるんですけど、それを作る上で彼らがどういった関係を形作っているのか。もしか全くお互いに興味を示さず作っていくのか。そういうところを私は結構見てると思います。
__ 
見た上でどうするか、というと?
杉本 
関係性については、どこの役に当てはめるか、に反映されて。役者さんの演技作りを見ていると、結構、台詞に引っ張られちゃう人が多くいるんですけど。けどやっぱり私はちょっとそうはなって欲しくないというところがあって。かつ、セリフの言葉の意味を一つに収斂させたくないんですね。そうならない動きとかポーズとかを引っ張り上げたい。今私も人生の路頭に迷ってるんですけど、皆さんいろんな選択肢があると思うんですけど、全部言われる人もいるんですけど、どうしてもひとつを選ばなくてならない。そういう立場に立って見ると、俳優さん大変だろうなと思います。
__ 
どうしても一つに選ばなくてはならないですからね。言葉の意味に表裏や幅があるのとは裏腹に。

質問 近藤 千紘さんから 杉本 奈月さんへ

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前回インタビューさせていただいた近藤千紘さんから質問を頂いて来ております。「どうしてもやめられない癖はありますか?」
杉本 
うーん・・・喋っているときに、考え込んでしまう時間が長くなる、そういう癖があります。

見に来てほしい、批評してほしい

__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
杉本 
座組みの人に「今度はコントやります」と言っているのと同じで、結構悪ふざけとかをやるのが好きなカンパニーですよ、というのを知ってもらえたら。飽きたら終わりなんですけど。あと、そうですね、私を含め、同世代の人に見に来てもらって批評しあえたらなあと思ってます。
__ 
見てほしいと。それはなぜ?
杉本 
自分に出自がない、というのがだいぶコンプレックスになっていて。学ばせてもらえる場所というのが少なくて。だからdracomとか缶の階とかで演出助手につかせてもらって。意見とかアドバイスを、もっともらえたらなあと思ってます。そういう話がしたいです。

コーヒー

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
杉本 
ありがとうございます。コーヒー好きなので、飲みます。
__ 
ハウスブレンドだそうです。よろしければ。

七味の一味「家族百景」に向けて

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。柿喰う客「虚仮威」のツアーが先日、大阪で終わりましたね。お疲れ様でした!大変面白かったです。千秋楽から何日か経ちましたが、いかがお過ごしですか。
七味 
ありがとうございます!よろしくお願いします。ツアーは終わりましたが、私は大阪に残り、この度旗揚げする「七味の一味」の大阪公演のオーディションをしていました。
__ 
ついに旗揚げですね。素晴らしい。
七味 
ありがとうございます。右も左も分からないのですが、スタートダッシュの勢いで、今はなんとか進んでいます。自分が先陣切って引っ張らないとと思うのに、まわりの皆さんにたくさん助けて頂いてて。皆さんの思いの強さに、逆にのっかってます。
__ 
私はですね、「七味の一味」はきっと成功すると思っていて。それも今までにない種類の成功の仕方をするんじゃないかなと思ってるんですよ。観客も含めたみんなの力を合わせた成功、みたいなね。
七味 
わぁ、すごく嬉しい。まさにそこを目指していきたいんです。でもね、本当に成功するかどうかはわからないですよね。
__ 
おお、ちょっと不安?
七味 
本当に私、恐がりなんですよ。恐がりというか慎重というか。反面、これと決めたら信じて突っ走る傾向もあって。一番舵を取らせてはいけないタイプの人間だと思ってます、自分のこと。
柿喰う客
2006年1月1日結成。演劇特有の虚構性を重視した躍動感あふれるパフォーマンスが特長。「圧倒的なフィクション」を標榜したオリジナル作品の創作を続ける。また古典作品のアダプテーションや他ジャンルのアーティストとのコラボレーションも実施。国内の様々な地域でのアーティスト・イン・レジデンス(滞在製作)にも定期的に取り組む。さらに「こどもと観る演劇プロジェクト」や「高校生のための演劇プロジェクト」など、幅広い観客層への作品上演も積極的に展開。その活動のスケールは広がり続けている。結成10周年を目前に控えた2015年「観客動員10万人」を宣言。その道のりは、いまだ果てしなく、遠い。(公式サイトより)
七味の一味
演劇界を賑わせ続ける劇団、柿喰う客。その副代表・女優の七味まゆ味が、今回主宰ユニットを立ち上げることになりました。
その名も
「七味の一味」
様々な人と出会い、演劇の輪を広げていくことをコンセプトに第一回目の公演を打ちます。
家族をモチーフにした長編と、七味まゆ味の新作一人芝居の二本立てを予定。
様々なドキドキと様々な挑戦を目指します。
七味の一味「家族百景」
演出/七味まゆ味(柿喰う客) 作/藤丸亮(集団asif~) 関東公演:2017/7/14~17@ラゾーナ川崎プラザソル、大阪公演:2017年8月4日~7日@インディペンデントシアター2nd。

柿喰う客「虚仮威」を終えて

__ 
「虚仮威」ツアー、いかがでしたか。
七味 
劇団でこんなに長く一つの作品に取り組むことが滅多になくて。飛び飛びの本番期間でしたが、2ヶ月で4都市を回りました。本番に入ってから、作品自体がどんどん進化していくのを感じましたね。この13人のメンバーで芝居を作るのは最初で最後だと思うと、感慨もひとしおでした。劇団の10周年で節目でしたし、なおさら。私達にとっては、とても大切な作品になったなと感じています。でも、私達のそういう思いは、お客様には伝わらなくても全く構わないと思っていて。
__ 
そうした考え方はとてもかっこいいですね。
七味 
その言葉は、救いですね、私にとって。
__ 
今回の「虚仮威」はですね、非常にカッコ良かったです。妖術対決の時に音ハメが多用されていたりとか。
七味 
柿っぽかったですかね(笑)。音ハメなどにはエンタメ感が強く出ていたかな。たしかに今回は、そういう遊びもたくさんあったかもしれないです。
__ 
昔はあんまり音響効果とかを駆使した演出をしているってイメージではなかったんですけど、そういう事をやってキレイにかっこよくハマるという才気煥発っぷりがまさに柿らしい。洗練された技術を感じました。ギミックとして凝っていて。
七味 
スタッフさんとも有り難いことにだんだん付き合いが長くなってきて。柿でならこういう遊びができるんじゃないか、というスタッフさんからの挑戦もきっと入っていて。そのへんもうまくマッチしたのかなという印象があります。
柿喰う客 2016-2017新作本公演 「虚仮威」
公演時期:2016/12/2~4(三重)、2016/12/17~18(仙台)、2016/12/28~2017/1/9(東京)、2017/1/19~22(大阪)。

「演劇らしい演劇」

__ 
「虚仮威」は、私にとって特別な〇〇だ。さて、〇〇に当てはまる言葉を教えてください。
七味 
そうですね、難しいなあ。「私にとって特別な演劇だった」かな。うん・・・「演劇らしい演劇だ」。
__ 
演劇らしい演劇。
七味 
演劇にしかできないことをやってるね、と皆さんには言っていただきましたね。
__ 
「虚仮威」は、特別な題材を扱っているわけではないと思うんですよね。日本の話だし、家族とクリスマスの話だし。例えば派手に世界が壊れたりするわけではない。しかしそのテクニック、演出の力がもたらす演劇としての説得力は素晴らしかった。
七味 
そうですね、ストーリーで言えば、すごく身近な題材でした。今まで煙に巻いてきた、あえてストレートには語ってこなかった、家族とか愛とかに、正面から向き合ったような内容で。私達自身は、劇団という存在に対して向き合った作品だったなと思います。作風については、古くから見てくださっているお客様にも新鮮に映ったようでしたが、今回初めて柿喰う客や、演劇を見てくださったお客様にとっても大好評で、柿喰う客をしっかり受け入れてもらえたことに、嬉しくも、驚きがありましたね。初めましての方も結構多かったんですが、この作品が、意外ととっつきやすい作品だったことは、お客様に教えて頂きましたね。
__ 
クリスマスという題材の力もあったのかもしれない。
七味 
でも私達、最終的には題材を気にせず、思いで突っ走れ!というところがありまして。少しでも何かしらの思いが伝わってくれたら、それで良いかな、とも。
__ 
さすが。そういうところこそがカッコイイですよ。今回、MVPを選ぶとしたら?
七味 
えっ、MVP!?・・・選べない・・・みんな最高です。
__ 
素晴らしい。選べないのですね。
七味 
こんなやつです、すみません、ほんとに。

「七味の一味」の旗揚げ!

__ 
さて、「七味の一味」ついに結成!ですね。川崎で今年の7月に、大阪では8月に。タイトルは「家族百景」。家族のお話ですかね?
七味 
はい!出演者も多いですよ。
__ 
集団力を感じさせるものになるのかな。七味さん一人でやるものではないということ、なのでしょうか。
七味 
「家族百景」と、七味まゆ味一人芝居の2本立てを考えてまして。初っ端からやりたい放題です。いや初っ端だからこそ!
__ 
いろんな人がいろんな形で関わる公演になりそうですね。自分の何かを出し合って一つの何かを形作るみたいな。
七味 
いや私もね、本当にそういう理想もこめて、「一味」としていて。あの、私自身は何も持ってないんですけどね。あるとしたら、女優として培ってきたものがほんの少しと、せっかくならドキドキワクワクしたいなぁという思いだけ。こんな小さな人間なのですけれど、こんな私の思いに賛同してくださる方と一緒に作り上げていくことをしてみたいなと。小心者ながら頑固なので、きっと譲れない部分はあるんですけど。いろんな方からアイディアを頂いて、関わってくださる人全員の思いをすべて乗っけた公演にできたらなぁと思ってます。多分、私、謙虚さと傲慢さを持ち合わせてますね。作品自体は絶対に面白いものになるんです。するんです。でも今は、「七味の一味」を立ち上げるなら、ただ面白い作品を作るだけではなく、ひとつのムーブメントにしたいと思ってます。大きな波にしたい。関わる人が多いほうがお祭りみたいになって楽しいだろうなって。みんなが七味の一味でいいじゃないかって。あ、もちろんタカハシさんも、もう「七味の一味」ですよ、インタビューしていただきましたもん。
__ 
いや私は旗揚げ前から一味でしたけどね。
七味 
あっ、そうですよね!ふふ、私、やり出す前から、一味を増やしてた気がしますよ。根を広げていって、満を持して、旗揚げに踏み切ったところがあるかもしれませんね。
__ 
いやあ、なんか、自分も加わりたいと思わせる存在感ですよね。吸引力がある。
七味 
私は、一回だけのものにはしたくないし、続けていかないと意味がないし、今だけの盛り上がりを作ってもしょうがないと思っていて。全力を注ぎ込んで満足して、そこで燃え尽きちゃうのはイヤなんです。より大きなものにしていきたいんです、「七味の一味」を。もちろん、スタートだからこそ華々しくいきたいんですけど、だからこそ慎重に準備もしたくて・・・お世話になった皆さんにはちゃんと旗揚げのお知らせをするとかね。私は自分の怠惰さを知っていて。何もできなかったなぁって悔しさを味わうことがよくあるんです。この第一回公演では、後悔しないように、全力を注ぎたい気持ちと、さらにその先を見据えた公演にすべく、余裕をもって進みたい気持ちがあります。理想論ですけれど。だからずっと恐さがあるんでしょうね。一回で終わらずに、ちゃんと次につなげていけるか、とか。
__ 
なるほど。
七味 
いろんな人のアイディアや協力が必要だと思ってます。そんなこと言いながら、先の目標が明確にあるわけではないのですけれど。
__ 
そっちの方がいいのかもしれませんね。
七味 
七味の一味の絆は強くありたいなと思いつつ。何にでも転化できるようにしたいな、そういう自由さは持っていたいなと。私自身が自由が好きなので。

一緒に楽しんでくれる人

__ 
どんな出会いがあるといいと思いますか?
七味 
すごく単純なので。単純だしわがままなので。七味の味方だよ、と言ってくれる人との出会いかな。でも一番は、一緒に楽しんでくれる人、ですね。今日もオーディションだったんですけど、そんなに「上手さ」は重要視していなくて。役のイメージはあるから、それに沿った選び方はある程度しますけれど、七味の一味に興味があって集まってくれた人は、基本的には全員、七味の一味で良いじゃないか、と私は真剣に思ってるので。お客様も含めね。そんな人が増えたら嬉しいなと思います。
__ 
七味の一味関西支部ですね。
七味 
はい!宜しくお願いします。なんだか関西のほうが、七味の一味手伝ってよって言いやすい感じがあるみたいです私の中で。関西が大好きだからという理由だけで関西公演をしちゃうこの意気込みを、買ってくれたら嬉しいなぁって。
__ 
とても楽しみです。

後ろの七味

__ 
ちなみに、「家族百景」のほうは、七味さんは出演しないで、演出のみなんですよね。演出するのは初めての経験だったりするんですか?
七味 
本格的なのは初めてです。高校生と大学生の頃に一、二回と、三年ほど前に、天王寺にある現オーバルシアターで自分の一人芝居を作ったことはありますが。
__ 
今回はどんなポリシーがありますか?
七味 
演出方法はまだ全く考えていないんです。出演者やスタッフの方々からアイディアをたくさんもらって、それを吟味して選びたい。そして、自分の選んだものに、責任を持ちたいと思っています。今はまだ何も決まっていないし、自分でちゃんと決められるかどうかもわからずふわふわしてるのが正直なところですけれど。私の場合、女優をする時は、いろんなパターンを想定して、試してみて、ベストだろうと思ったものを選んで演じることが多いんですが、今回の演出にしても多分、そのようなやり方になるんじゃないかなとは思います。今回は、私じゃない俳優を演出するということで、自分の思った通りには絶対ならないと思うので、それが怖くもあり楽しみでもあり。皆さんのアイディアから、着想を得て、私が選んで決定したい。そこに責任を持ちたいです、演出家として。
__ 
演技って、どうしても役者当人が主観的に選んだものなんですよね。客観的に決めた演技はありえない。もちろん無限の選択肢がある。その指揮をとる七味さんは、役者全員の、前に立つというよりは後ろに立っているという恰好なのかもしれない。つまり、七味さんの演技を見るという事になるのかもしれない。
七味 
なるほど、そうですね。キャスティングもかなりのこだわりで選考させて頂いてるので、そのへんも私の好みが入ってきちゃいますし、私自身は演じないけれど、私のセンスも垣間見てもらえるような舞台になれば嬉しいな。現場の皆さんのお力にあやかって、七味ワールドが出せるといいなと思います。
__ 
大量に七味さんが見れるかもしれませんね。
七味 
大量の私は怖いかもですが(笑)私が見たい芝居になるような気はします。そうできるように頑張ります。それが受け入れられたら一番嬉しいですね。分かりにくい内容なのはそんなに好きじゃないんです。どちらかというと私、一般目線を持っているお客様の感覚に近いと思いますね、良くも悪くも。

質問 中西 良友さんから 七味まゆ味さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた中西良友さんから質問を頂いております。「本番前の緊張をコントロールする方法を教えてください」。何かありますか。
七味 
いやあ、何もないですね。ごめんなさい!たまに緊張しない時もありますが、わりと緊張してます。そして、緊張しててもそのままやっちゃいます。コントロールできないんでしょうね、私。この間スタニスラフスキーの関連本を読んだんですけど、お客様に見られることを意識すると緊張しちゃうから、目の前の相手に集中することとか、役の気持ちを集中して考えることとか、確かそうやって集中するのが緊張しないコツだ、みたいに書いてあった(そのように解釈した)のですけど、確かにそうだなとは思ったんですけど・・・集中しなきゃと思って集中できたら苦労ないし、集中しなきゃと思ってる時点ですでに意識しちゃってるってことだし・・・。
__ 
ちなみに私は、緊張し過ぎて舞台の上で足がガクガク震えたことがあります。
七味 
私は手がよく震えますよ。高校演劇の審査員をした時なんですけど、舞台上からみんなに向かって最後の総括をしたんですが、いいことを喋ろうとしたのか、マイクの前に立ったら緊張で頭の中が真っ白になっちゃって、何を喋ってるのか全くわからなくなりまして。呼吸も浅くなって。私はこれでも本当に役者なのかと自分を疑いましたね。恥ずかしかった・・・。
__ 
七味さんですら、そういう事があるんですね。

演劇界について何か思うことはありますか?

七味 
頑張ってる奴らはこんなにいるんだってこと、お互いにもっとまわりを見て、もっと知り合って良いんじゃないかと思います。見守ったり応援したり。私自身は、そういうことに敏感でいたいなと思いますね。今は、みんながみんなやってる人たちのことをわかっていないような。自分達のことしか考えていないような。演劇界のことを知ろうとしてないのかなって気がします。面白いことやってるヤツらがいっぱいいるのに、繋がってないのはちょっと寂しいなって。繋がったらどんなことが起こるだろうって、ワクワクしたい。ジャンルがわかれちゃってることもあるんだろうな。日本の演劇界なんてちっちゃいんだから、もっと一丸になっても良いのにな、みたいな事は思います。簡単なことじゃないし、理想論かもですけど。
__ 
昔は私は、バラバラでいいなと思っていました。今もそう思ってる部分はあります。それぞれが距離をおいた方が、何かを守れるようなものもあるんじゃないかなと思ったり。
七味 
私もね、バラバラでいいという気持ちもあるんですけどね。多分、今私がやりたいことが、もっと大きいことなんだろうな。小さな力がまとまった時の大きなエネルギーを信じてみたいのかもしれません。私が描こうとしている形ないものには、沢山の人の力が必要なんだと思います。演劇界全体を、巻き込みたいですね。それには長い時間が必要かもしれませんし、どうなるかわからないですけれど。
__ 
七味さんが踏み出した一歩はきっと大きいと思います。
七味 
怖がりながらも踏み出しちゃいましたね。私こそ、演劇界のこと何もわかってないアマちゃんですけども。希望を失わずにいたいなと思いますね。

一番見てほしい人

七味 
実は、「七味の一味」を立ち上げたきっかけというのがあって・・・すごく私的な事なんですけど、でもそれがなかったら立ち上げていなかったと思います。それは私の家族のこと、なんですね。私はずっと漠然と、おそらく女優しかできないんだろうけれど、いつか演劇人として何か立ち上げてみたいなあ、演出なんかもできたらなあ、なんてふわふわ思ってたんですね。で、この間、あまり面白くない舞台を見まして(私にとって面白くないと感じた舞台)。その後、(「七味の一味」を一緒に立ち上げることになる)集団asif~主宰の藤丸氏と、ポンポンペインシアター主宰の湯口氏と飲んだ時に、「私も演出やってみたいなあ」なんて口走っちゃったんです。そしたら「やったらいいじゃん、やろうよ、なんなら僕書くし。出るし。協力するし。」と後押しされて。ノリで言っちゃったこともあるし、慎重な私なのでだいぶ渋っていたのですが、試しに、「書くならどんな題材で書きたい?」と聞いてみたところ、今の私の興味とガッチリ一致して。つまりそれが、家族や両親のことだったんですね。家族や親はいつまでもあるものじゃない、だから今のうちに自分の思いを作品として残しておきたい、それを見てもらいたい・・・そんな思いが一気に湧き上がりまして。脚本家の、親や家族に対する思いに感化されたこともあり、後押ししてくれる仲間が見つかったこともあり、今作りたいものというのがハッキリ見えたこともあり。動き出すべきさまざまな要素が重なって、今やらなくていつやるのだと、決心できました。私は今まで、自分のためやお客様のために演劇を選んできたけれど、親や家族のために演劇と向き合ったことはありませんでした。初めて、 「親に見せる作品を作る」という意識を持てたので、立ち上げの決断をいたしました。このこと、親はまだ知らないですけどね。
__ 
そうなんですね。その、あまり七味さんのプライベートには突っ込まないつもりでいたんですけどね。ご家族はいないと思ってましたよ。本名だと思ってますし。
七味 
あら!そうですね。本当は天涯孤独の身ですよ。ふふ。
__ 
ご両親は、七味さんの演技をご覧になったことがあるんですか?
七味 
ちょこちょこ見てますよ。でも一番見てくれてたのはおそらく高校生の頃ですね。私が舞台に立つことが日常的になってしまってから、あまり興味を持たれなくなっちゃいました。今は、私が懇願して、母親がなんとか見に来てくれるくらい。父親は面倒くさがって見に来ませんね。悲しいかな、私の舞台姿にそんなに興味がないんです。
__ 
どうしても親には見てもらいたいですよね。演劇をするって親孝行だと思いますよ。
七味 
え? そうですか? 本当に?
__ 
そうですよ、人類としてそう思いますよ。
七味 
まだ続けるの?じゅうぶんやったでしょ、もういいんじゃないの?と言われたりもするんです。やめなさいとはならないですけど、放任されてるので(笑)。認めてもらいたいということでもないんですけどね。私が私の全てを懸けている演劇で、親に対する愛を、親に残せるものを、作りたいなというのがあるんだと思います。私の思いなんてどうでもいいのかもしれませんけどね、親にとっては。そしてお客様にとっても。だからこれは、私にとっての、ケジメだな。
__ 
子供としては、親に、とにかく見てもらいたいですね。
七味 
そうですね。今回だけは、とくに。そんな思いはありますね。

明日からもこの調子で!

__ 
今後、どんな感じで攻めてくれますか?
七味 
今後も相変わらず、七味まゆ味らしく。神出鬼没にフットワーク軽く。普段は省エネなんですけど、出会わないと知ることができないことにもっと出会いたい。人生は短い。せっかくの人生だから、相性のいい人たちと出会って楽しく生きていきたい。いろんなものに興味を持って、自由に生きたいです。
__ 
ありがとうございます。

純喫茶コレクション

__ 
今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントを持って参りました。
七味 
ありがとうございます。8年前ももらったなあ。あれまだ使ってます。ちょっと壊れちゃったのもありますけど。壊れちゃうぐらい使いましたよ。
__ 
ありがとうございます。今回はこれです。
七味 
嬉しい。あ、ここ知ってる。行ったことある。嬉しー。これでぜひ色々とカフェ巡りしたいと思います。
__ 
その本にはですね、一人で行けるお店ももちろん載ってます。一人の時間を大切にしてほしいです。
七味 
まあ私もね、演出家サマになっちゃうわけですから。そういうところでじっくりと考えて、良いアイディアを思いついちゃいましょうかね。ふふ。

中西さんの最近

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。最近中西さんはどんな感じでしょうか。
中西 
最近は、そうですね、大学の卒業研究をやっています。卒業がそろそろ近いので。それとバイトです。コンピュータ関連のバイトをしてます。
__ 
演劇関係はどんな感じですか。
中西 
全然ですね。今年出来るかどうかわからないです。

vol.500 中西 良友

フリー・その他。

2017/春
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中西