ふざけて音楽

池川 
曲ってやっぱり反復して練習するから、その場で作るMC(おしゃべり)よりも自信の強度が高いんですよ。でもMCは、自信のあるネタを持って行ったとしても本番で全然ウケない場合もある。この間も、熊本の震災関係の事で思う事があって。そのMCをスタジオで前日に予行練習したら、もうジーンときたんですよ一人で。「ええこと言うな~」って。でも本番ではMCがド滑りして。
__ 
ええ。
池川 
想定外でした。もっと、自分の中でまとめてくるべきだったんです。お客さんの反応も曲中と比べたらどんどん遠ざかっていく感じで。でも自分の言いたい事は言いたいし。まあでも、何やろう、そうやな。たぶん、話題がその日の自分の一番の出来事じゃなくなってたんですよね。
__ 
お客さんが遠ざかっていった時、池川さんはどう思いましたか?
池川 
怖かった!僕自身、なんかいかにもミュージシャンっぽい人がMCで大言壮語吐いたりするのって見てられないんですよ。このあいだ、ライブハウスで共演した大学の軽音部出身の男の子がすごく真剣な眼差しで「愛について歌わせていただきます」って。でも愛ってものすごく繊細で、個人差があるじゃないですか。「ちょっとテーマがでかすぎひんか?」とは内心思いました。お客さんに見に来てもらってる以上、自分の表現した愛でお客さんの愛を汚す場合だってあると思いますし。震災の話題もそれと同じで。最近、ネットで言葉を世界発信するのに慣れてしまって、言葉の選択力が自分の中でかなり甘くなってる気がするんです。今みたいに、ちゃんと向き合って話せばあの時みたいに自分の話題を一方的に話してお客さんが困るようなことは起こらなかったんじゃないかとは思うんですけど。
__ 
ええ。
池川 
まあ実際あの時はお客さんがいなくて、ほぼ全員共演者だったんですけどね。終演後に感想聞いてみたら「静かに聞いてた」んだそうです。「間違った事は言ってない」「共感してた」とかも言われて。でも確実に距離感はありました。前触れもなく震災の話題に入ったのが良くなかったんかな。
__ 
喋りが上手くいかない事ってありますよね。残念ながら。私も、スピーチで上手く言った経験もド滑りした経験もあります。人に合わせてパッと喋るために、観客とどこまで関係性が築けるか。
池川 
そうですね。いやあ、自分が言うべきセリフなんてそうそう見つからないじゃないですか。世の中に。でも何か、意味はないけど、自分で意味を見出すじゃないですけどそういう風にするのは楽しいなって。そうでもしないと生きててもつらいことばっかりじゃないですか・・・30分間、別にお金にならないのに何でこんなしんどい事をやっているのかっていったら、やっぱ自分の為ですよね。

vol.471 池川 タカキヨ

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2016/春
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池川

演劇を始めたのはいつからですか?

池川 
僕は地方出身で、大学にまぐれで合格して、大学時代は部室が棟の入り口から一番近かった演劇部に入って。役者は今でも続けていて、観にも行きます。昔は「学生劇団の役者だから」という理由で熱心に見てたんですけど、今は肩の力が抜けてきて、単純に劇を楽しめているような気がします。見ていて「ああ、だからこういう演出になるんや」とか思ったりするんですけど、いつも感想がうまく言葉にならないんですよね。でもそれをただぼんやり眺めているのが楽しくって。昔は役者の演技にばっかり気を取られていたけど。僕は生まれも育ちも奈良なんですけど、奈良で小劇場の演劇なんて見たことなくって。奈良だと自分が役者をやってることに対してどっかで気負いがあるんですよ。でも京都は学生の町で、学生演劇が盛んだから、役者を名乗っていても気負いがない。でも若い人が奈良で演劇を始めようとしたら、やっぱり・・・どうしても偏見を持たれやすいというか。テレビで有名な劇団四季とかのイメージで勝手に一括りにされるみたいな。それは良くないなと思っています。僕が奈良にいながら活動するのは、自分の物差しさえあれば、活動拠点が地方だろうと問題がない、というのを見せたいし、見たいんです。この間は「東アジア文化都市2016」の企画発表会で、奈良に維新派が来ることが決まって。会場にはマスコミもたくさん来たんですけど、僕の周りの奈良県民は誰もそんな事知らなくって。そもそも維新派を知らないし。ぜんぜん動きになってないから。動かなかったらそのへんに落ちてる石と変わらないんで。そこは積極的に動かしたいなと。でも僕の周りにそういう人が本当にいないんで。けもの道です。それでも今まで続けてきた成果で、だんだん気負いがなくなって自分のやっていることに自信は持ててきている気はします。
__ 
自分の活動に確信的になっているという事ですね。
池川 
なりたてですけどね。

vol.471 池川 タカキヨ

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2016/春
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池川

好きになればなるほど

__ 
ニットキャップシアターにどんな興味がありますか?
池川 
出演していて(ニットキャップシアター こんなにもお茶が美味い)、現場に入った時から、この劇団の作品を見せたいという欲求が強くあって。主宰のごまのはえさんとよく話すんですけど、本当にあの人、キャラがブレなくて。何を話してもちゃんと返ってくるんですよ。借り物じゃないごまのはえ語で。それがめちゃ好きなんですよ。好きになればなるほど、また好きになるというか。単純に憧れますよね。そういう部分を盗みにいってるところはあります。
__ 
いい出会いですね。
池川 
役者を続けていく上で、いつでもニットの舞台に立てるようなモチベーションは保っておきたいです。
__ 
大切なんですね。ニットキャップとの縁が。
池川 
はい。だから、ニットキャップシアターの「ねむり姫」、凄く見に来てもらいたいです。34名出るんですけど、余すとこなく魅力的な出演陣で、これからどんな風になるのか期待しかしてないです。今はそれくらいで稽古も始まってすぐだし、具体的なことは何も言えないけど、でも、ネットの評判を待たずに来てほしいですね。感性とかで。
ニットキャップシアター 第37回公演「ねむり姫」
華やかさと騒乱渦巻く平安末期の京を舞台に、
劇団史上最大規模で描く夢物語!

ニットキャップシアターがこの夏放つ最新舞台は、
幻想文学の巨匠、澁澤龍彦の短編小説『ねむり姫』を原作に、
34名の出演者が渦を巻く平安群像劇。

当世最新流行歌「今様」をモチーフにした音楽や、雅で優美な舞踊り、
はたまたアイドルダンス、狂犬達にシュプレヒコールも雨あられ。

「ガラパゴスエンターテインメント」を掲げるニットキャップシアターの
新たな進化をごゆるりとお楽しみあれ!
【会場】AI・HALL
【脚本・演出】ごまのはえ
【出演】門脇俊輔、高原綾子、織田圭祐、下川原浩祐、仲谷萌、池川タカキヨ、黒木夏海、佐藤健大郎、佐藤都輝子(劇団とっても便利)、西村貴治、細谷史奈、山岡美穂、山谷一也、山田レイ(Reiworks)、安藤明、石井歩(流刑芝居)、生方友理恵、ガトータケヒロ、楠海緒、越賀はなこ、坂本彩純(演劇集団Q)、私道かぴ、進真理恵、土橋夢子、豊島勇士、にさわまほ(同志社小劇場)、長谷川めぐの、前原一友、松井壮大、道咲とも子、山内庸平、山下多恵子(京都演劇サロン)、Ryosuke、大木湖南〈声の出演〉
【公演日程】
7月8日(金)19:00-
7月9日(土)13:00- / 18:00-
7月10日(日)13:00- / 18:00-
7月11日(月)14:00-
【料金】
一般 前売 3,200円 / 当日 3,500円
ユース・学生 前売 2,200円 / 当日 2,500円
高校生以下 1,000円(前売当日とも)
※ユースは25歳以下。全席自由、日時指定券。

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2016/春
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池川

質問 向井 咲絵さんから 池川 タカキヨさんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、弱男ユニットの向井咲絵さんからです。「ギターを始めたきっかけは何ですか?」
池川 
学生時代、周りがヤンキーばっかりで。どうすればいいかというと、ヤンキーの金魚の糞になるしかないんですよ。ヤンキーはワガママだから、ちょっと柔軟性があるとめっちゃチヤホヤされるんですよ。でもそうしたらヤンキーの思うままじゃないですか? そこでヤンキーにはない何かを始めようと思って、誕生日占いで知った、同じ誕生日の尾崎豊にならってギターを始めて。EmとCで下剋上してやりました。
__ 
「今、音楽をやりたいと思っている?その理由は?」
池川 
やりたいです。理由ですか。やっぱり最初に、テングになってたころのCコードって今と全然違うんですよ。「お前ソレどうやって弾いてんの」ってヤンキーをビックリさせながら弾いたEmは、今と全然違うんですよ。あの時の恍惚感とか幸福感にはなかなかいたれなくて。あの時に弾いたEmの感覚を忘れるまでは続けるでしょうね。思い出したいし。
__ 
その状態には中々行けないでしょうね。高度な悟りが、その人を幸せにするとは限らないじゃないですか。
池川 
関係する人間の数にもよると思うんですよ。一人で生きてたら、自分一人の為の悟りでいいと思うんですけど、芸能人とか会社の社長並に関係する人がたくさんいたら・・・僕がそうじゃないし僕からこれってことはあまり言えないですけど。関係する人がいればいるほど、個人主義では通用しない部分って増えますしね。やっぱし、基本は生きづらいんですよね。
__ 
幸福の絶対量が大きくなればなるほど幸福のレートが上がっていく。関係者数も多くなればなるほど、期待される以上の悟りを得なければならない?
池川 
はい、だからその逆もありますよね。震災関係の話題で、芸能人のSNSに一般人が「不謹慎だ」とかいって炎上するようなニュースを最近よく見かけるんですけど。カロリー使う場所明らかにおかしいですよね。「言葉って一体何のためにあんのや?」みたいな。やっぱりネットは怖いですよ。萌え系アニメのヒロインがアイコンのツイッターアカウントとか・・・

vol.471 池川 タカキヨ

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2016/春
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池川

熱中したい春

__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
池川 
演じた役にそのままなりたいです。そういう熱中できる役を見つけたい。毎回同じような役になるのもそれはそれで構わないんですよ、それは、自分の個性がそうさせているところもありますから。
__ 
そうですね。
池川 
プレーンな人の仕草が好きなんで。あれを、物怖じしないで出来たらいいのにと思っていて。そこを採取出来たらなと。材料の選択肢が演劇界の中だけになってしまうのはなんか嫌ですね。
__ 
演技が退廃する事を恐れている?
池川 
コピーじゃないですか。小劇場界の中ですら、コピーのコピーをずっと見続けていて、だから当時演劇が面白く思えてなかったのかもしれないですけど。結局、モデルの背中を追いかける事が、役者の完成度みたいな事になっていって(今はそこを踏まえて面白く見えているんですけど)。でもそれはモデルを必要としているところでやればいいことで、僕は、誰か一人だけでも、もの凄く心に引っかかる芝居が出来ればそれでいいと思ってます。月並みですけどそんなところです。

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2016/春
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池川

同世代へ

__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
池川 
自分と同世代の人が今どんなふうに活動をしているのかは気になります。今まで年上の人と演劇を作ってきたし。もっと同世代の人と関わって何かがしたいという想いはあります。音楽にせよ。同世代の人にもっと役者として認知してもらえたら。今のところ自称なので。企画とかもやりたいですし。
__ 
なるほど。
池川 
がんばります。

vol.471 池川 タカキヨ

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2016/春
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池川

グレート・ギャツビー

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
池川 
ありがとうございます。(開ける)おお。これ読んでみたかったんですよ。まじか。めっちゃ嬉しいです。まさか自分に村上春樹の翻訳した「グレート・ギャツビー」をプレゼントされる日が来ようとは。

vol.471 池川 タカキヨ

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2016/春
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池川

忙しい向井さん

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。最近、向井さんはどんな感じでしょうか。
向井 
よろしくお願いします。最近ですか。次にAI・HALLのbreak a legの企画で弱男でやる「モノ」の稽古と、その後のいなもり支店という企画があって、それが三都市公演があるのでそのこととかをやっています。大変ですけど、楽しくやっています。
__ 
頑張ってますね。
向井 
まぁそうですね。
__ 
いなもり支店、凄く昔に見た事があるんですけど、それからずっと拝見出来てなくて。
向井 
以前の作品の再演になるんですけど、東京ではこまばアゴラ劇場、京都では元・立誠小学校、広島ではアステールプラザでやります。
__ 
絶対行きます。稲森さんの言葉の感じが好きです。台本欲しいと思った事を思い出しました。
向井 
それ、嬉しいです。稲森さんに伝えておきます。喜ぶと思います。
夕暮れ社 弱男ユニット
2005年村上慎太郎の個人ユニット「弱男ユニット」を結成。砂浜や劇場ロビー、ライブハウス、会議中の事務室前など劇場外での公演を数多く行う。2008年それを前身とし、さらに活動の場を広げていくためにメンバーを募り、「夕暮れ社 弱男ユニット」と名前を改める。過去作品には、観客が舞台上にあげられ、先ほどまで座っていた椅子が目の前で俳優の手によってぶん投げられながら物語が展開していく「現代アングラー」(大阪市主催CONNECT vol.2優秀賞受賞/2008年)や、 劇場の真ん中に客席を設置し、俳優がその客席の周りをグルグルと廻り続け演じるという独自の方法でデモ行進する人々を描いた「教育」(大阪市立芸術創造館/2010年)や、俳優が地面を終始、転がりつづけながら青春群像劇を演じた「友情のようなもの」(2012年/元・立誠小学校)などがある。(公式サイトより)
AI・HALL次世代応援企画break a leg 「モノ」
○開催日時○
2016年5月28日(土)29日(日)

5月28日(土) 15:00/19:00
5月29日(日) 13:00
※開演の60分前に受付開始、30分前に開場
※当日、会場にて受付順に入場整理番号を配布

○会場○
AI・HALL
(伊丹市立演劇ホール)
〒664-0846 兵庫県伊丹市伊丹2丁目4番1号
TEL:072-782-2000

○チケット○
料金

一般/前売2,800円 当日3,300円

  学生/前売2,500円 当日3,000円 (要証明)

【日時指定・全席自由】

作:フィリップ・レーレ(原題:『Das Ding』)
翻訳:寺尾格
演出:村上慎太郎
出演:稲森明日香、向井咲絵、南志穂(以上、夕暮れ社 弱男ユニット)

鎌谷潤吉(僕らの陰謀)、金田一央紀(Hauptbahnhof)、小林欣也、
古藤望(マゴノテ)、松田裕一郎 西マサト国王(B級演劇王国ボンク☆ランド)

舞台監督:浜村修司(GEKKEN staffroom)
照明プラン・オペレーター:吉津果美
照明アドバイザー:筆谷亮也
音響プラン:genseiichi
音響オペレーター:森永キョロ(GEKKEN staffroom)
劇中映像:柴田有麿
映像オペレーター:中野響馬
衣装:若松綾音
チラシ・制作:稲森明日香
票券:池田みのり

共催:伊丹市立演劇ホール
協力:大阪ドイツ文化センター、僕らの陰謀、マゴノテ、Hauptbahnhof、B級演劇王国ボンク☆ランド、徳永のぞみ、山本悟士

京都芸術センター制作支援事業
いなもり支店「ちょっと待って、エントロピー」ツアー2016
京都・広島・東京6月~7月。

稲森さんとコンビ

__ 
向井さんは稲森さんとコンビみたいな感じですよね。
向井 
私たちイコールコンビ、みたいに考えた事はないですけど、でも、言われてみればそうかもです。稲森さんとは、バランスがいいというかお互いに自分に欲しい部分を持っている感じがする。
__ 
呼吸の合い方がものすごく合っているんですよ、二人は。それは弱男ユニット全体で、ほわほわって固まっている感じ?
向井 
なんかそれは感じます。同じような色やな、というのは。
__ 
村上さんに聞いたんですけど、弱男ユニットって、血の通った芝居を作れる人たちなんじゃないかという話になったんです。血の通った、とはどういう事なんだろう、と思っていて。それはもしかして、自分ではない何かになりたいとかいう本能じゃなくて、そのままで舞台に立てる力を持っているのかなと思ったんです。前から思っていたんですけど、彼らは素の部分が非常に強く舞台に出ている。この人達はこの人達なんだなあ、って。
向井 
なるほどなあ。昔から村上さんが言ってる事ってあんまり変わってなくて、器用な人とかよりも、元々が面白い素材の人を持ってきているな、と。だから何かになりたいとかみたいに「役者」としてはあんまり考えてきていなくて。
__ 
なるほど。
向井 
脚本にも関西弁が多いのも私にはやりやすくて。その人の言葉や身体を大事にしているんだなあ、って。
__ 
その、俳優個人の土着的なものがあり、その上でのふわふわしたな何かがあると思うんですよ。浮遊感がある。彼らが人間過ぎて、時たまファンタジーのように感じられる事がある。
向井 
なるほどな。浮遊感がありますか。
__ 
そんな気がする。
向井 
それは感じた事はないけど・・・そうなんかな。変わっているな、とは思いますね自分とこの団体。
__ 
格好付けている人がいないのがいいと思います。

「メガネ」

__ 
次の出演は。
向井 
次はハイタウンに出ます。私は努力クラブの合田君が演出する「道をたずねるコメディ」に出るんですよ。私あんまり客演に出た事はなくて。イエティとユニット美人ぐらいですね。
__ 
楽しみですか?
向井 
お祭りごと好きなので楽しみですけど、緊張はしますね。毎回、やってみたら楽しいですけど。面白い人ばっかりだし。今回のは努力クラブに出てるみたいな人が結構でてるから。それでちょっと、気は楽かなと思っています。合田くん面白いし。
__ 
そうですね。最近の出演で言うと、この間のBRDGのイベントでのメガネのコント面白かったです。向井さんと稲森さんとメガネと彼氏の、ズレをめぐるようなお芝居でしたね。半径、その場でクルクル回るレベルの。
向井 
あれは何度かやっている作品で、一番最初は「弱男ユニット」って短編集の公演で、その後いなもり支店でもやったし、その後外でやる事もあって。弱男ユニットとしては唯一ぐらいの持ちネタで。前日に二人で久しぶりに練習して調整しました。あれ、すごく難しいんです。
__ 
どのあたりが。
向井 
メガネを偶然落とす演技があるんですけど、そのタイミングが。あれ結構、重力に任せてるとこがあって。
__ 
そう、すごく自然な間でした。あの間が抜けているのが、向井さんが演じている女の子の性格だとか生き方とかを端的に表現していたんですよね。あれは本当に面白い演技でした。でもちょっとした掛け違い、例えば少し感情表現の勢いとかトーンが違っただけで別の方向にそれていってしまう。その上で面白い演技が成立するって奇跡だと思う。
向井 
うん。
__ 
ここで聞きたいんだけど「面白い演技とは何か」。
向井 
あー。何でしょうね。面白い演技。
__ 
もちろん追求したら際限無いですけど、じゃあどこまでいったら一旦終わり、に出来るものなの?
向井 
メガネの場合は思い出し稽古でしたから。二人の会話が混ざったりしないように台詞のタイミングを気を付けたりして。私がすごいキャンキャン言うから。
__ 
あのぐらい混乱した掛け合いの激しい芝居でも、調節の末、一つの形にまとめられるって凄い仕事をしていると思う。あんなに不定型な作品なのに。何回もやっている作品なら、お客さんへの訴えかけるポイントだとか、そういう部分も把握しているし。
向井 
ありがとうございます。

ハイアガールの話

__ 
ハイアガール、大変面白かったです。泣きました。お疲れ様でした。ある町の話で、仲の良い女子高生の内一人が銭湯の煙突から飛び降り自殺してしまって、片方が苦しんで、周りの人たちも苦しんで・・・でも、全員が這い上がっていく。暗転が開けて1年後、町が変わるというのが示されるんですけど、私にはその描写の方にこそ泣いてしまって。銭湯の煙突が無くなって、代わりにドイツ製のボイラーが来る。
向井 
劇的な事があっても、周りの人の時間は続いていて。カップルが成立したり子供が出来たりだとか・・・劇的には変わらへんのやろうなって。人間変わらなかったり、お互い寂しくて付き合ったり。生きている人等は生活が続くから。ふつうの生活に戻っていったな。こんな言い方は村上さんに怒られるかもしれないけど、そんなもんなんかな、って思ったりはします。
__ 
村上さんは、「人間はものすごいどん底に落ちてしまっても這い上がってしまう」本能を持っていると言っていましたね。
向井 
ほんますごい、生活は続くんですよねー。落ちても、終わる訳じゃないから。続くからなー・・・って。
__ 
続くのが悔しい?
向井 
続くんのが悔しいとも思わなかったですね、自分の場合は。悔しいというより、それが当たり前というか。立ち止まらないんですよ。自分の身にそうゆうことが起きたとしても、立ち止まってられない。浸っている時間はなくて。次の日になったら、私だって仕事があるかもしれないし、食べていかれへんし。結構、思っているより、自分は中心ちゃうぞ、と。思ったよりも世の中はめちゃくちゃ動いてるぞ、と。
__ 
自分は中心じゃないと思った時、どうだった?悔しかった?
向井 
悔しいというよりは、ハッとした。中心だと思ってしまっていたことにハッとする。中心ちゃうし、そんな余裕ないやろう、と。続くから、流れていくから、だからあの二人は付き合う事になったんちゃうかな。這い上がらざるを得えへんというのは、そういう事なんじゃないかなと思う。お前なんか中心ちゃうぞ、って。浸ってんちゃうぞ、そんな余裕ないぞ、と。
__ 
誰もこの世界の中心じゃないけどね。
向井 
誰もいないと思います。中心人物なんて。
夕暮れ社弱男ユニット演劇公演「ハイアガール」
公演時期:2016/1/20~24。会場:京都芸術センター講堂。

出来るようになりたい

__ 
これまで演劇を続けてきて、決定的な変化ってありますか?
向井 
実は、あんまり無いんですよ。村上さんの芝居に立たせてもらう事が多いから、そのまんまの感じで出る事が多いんです。
__ 
いやそんな向井さんの芝居が好きですけどね。
向井 
でも何年か前に、「あ、お芝居出来るようになりたい」って思ったんですよ。一般的な意味での。でも結局、普通のちゃんとしたお芝居がやりたいんだったら、それは別に弱男じゃなくてもいいんじゃないか、って。クセがあるというのは一つの武器だし、しっかりそれをやっていった方がいいんじゃない?って。ああ、そうかな、と。
__ 
まあ、向井さんに類する役者はいないですからね。
向井 
それは嬉しいんですけど、恐れ多いというか。面白いと思って下さっているのを、大事にしたいなと思っています。でも、今やっている演技体で、最大限やりたいなあと。応えたいと思っています。
__ 
例えば稲森さんは、客演に出ればそこに合わせられる器用さを持っている。向井さんがユニット美人に出た時、向井さんとして出てくれてて。私はそれが凄く嬉しかったです。
向井 
そうなんですよね、私不器用なんですよ。稲森さんとのコンビとのバランスが良いのはそこかもしれないですね。羨ましいんですよ。普通に芝居が上手くなりたいと思ったのも、きっとそこから。バランスは取れていると思いますね。
__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか。
向井 
コメディをちゃんと出来るようになりたいですね。
__ 
やってるじゃないですか。私の中では、ボケを正確にこなす人ですけどね。
向井 
でも器用さはもう、あまり求めないかも。何やろうなあ。自分の特性をもっと分かって、やる事かな。自分の事をまだまだ分かってないんですよね。自分で自分を生かせていない。もっと器用に、自分を生かせられるような・・・面白いことをしていたいなあ。単純に。

質問 河井 朗さんから 向井 咲絵さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂きました、河井朗くんから質問です。「20代でも今でも、どうやって生計を立てていますか?」
向井 
何なとなります。

次回公演「モノ」

__ 
次の5月にAI・HALLでやる「モノ」、楽しみです。壮大な話だそうですね。
向井 
いや、面白いと思いますよ。客演さんも面白いし。前回に引き続きの人もいるし、今回初めての方もいるし。実はこの作品でリーディング公演を行ったんです。その時はものすごい早口でセリフを喋ったんですが、全然不安だったんですけど意外と好評で。なんか、そういうのに自分から気付けるようになりたいですね。演出に、もっと自分から発信出来るようになりたいかな。
__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
向井 
そうですね、今年は結構色々なところに行かせてもらえるし、もっと色々なところに行きたいですね。そんな攻め方ですかね。あとキレイな格好でもしてみようかなと。
__ 
やってみて欲しいです。向井さんは自分が美人である事について無頓着過ぎるのではないか。
向井 
ああそうですか?でもあんまり言われ慣れてないから。恥ずかしいんですよね。
__ 
いや美人ですよ。それを出して行こうとは思わない?
向井 
あんまり。面倒臭がりなんで。
__ 
内面を磨くとか?
向井 
内面ね・・・言葉遣いを丁寧にするとか?でもこれが自分の普通だし、まあ、もっと自分を理解したいかな。

足田メロウのブローチ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
向井 
ありがとうございます。開けていいんすか?
__ 
どうぞ。大したものじゃないんです。
向井 
(開ける)へえ、可愛い。どこに付けようかな。
__ 
そういうのを付けてる印象ないですけど、たまにはいいんじゃないかと思って。
向井 
ありがとうございます。

卒業式

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。最近、河井さんはいかがですか。あ、卒業されたんですよね。
河井 
はい、おかげ様で卒業できました。このあいだの南風盛のインタビューで卒業式の事言ってましたよね。今年も舞台芸術学科は式で色々やったんですよ。
__ 
あ、そうなんですね!ちなみに今年は。
河井 
卒業式は春秋座でだったんですけど、高市に天使の格好させてワイヤーで吊ったり、沙門に悪魔の格好させたり、みんなでCOSMOS歌ったりと、杉原邦生さんの「転校生」のパロディ。これが僕と南風盛との初の共同演出で、映像で見直して、おもんないなぁー言うて二人で呆れてました(笑)。
__ 
いいですね。
河井 
大学サイドにはめちゃくちゃ怒られて。春秋座の人は、まあやっちゃえって感じだったんで、そのまま・・・。
__ 
河井さんの代の造形生は面白い人がたくさんいましたね。
河井 
やっぱり、4年間一緒にやれた同士がいたのは大きかったです。みんなもうバラバラになりましたけど、同じ志で舞台芸術を一緒にやっていた人がどこかにいるというのは心強いです。
ルサンチカ
主宰 河井朗による演劇ユニット。近藤千紘が女優。世間的弱者の鉄筋コンクリート製防御陣地。 (公式Twitterより)

京都造形芸術大学卒業生優秀作品展参加作品 ルサンチカ『霧笛』

__ 
さて、ART ZONEでの「霧笛」。ルサンチカの一区切りとなる公演だったと思います。大変面白かったです。
河井 
ありがとうございます。
__ 
原作はレイ・ブラッドベリで、萩尾望都の漫画版を下敷きに、イトウモさんが脚本。演出は河井さんの、近藤千紘さんが女優。脚本に出て来る「彼」の孤独感と、彼に届くか分からないけれども、届けるしかない呼び声の一途な通信。その寂しい詩のソリッドな横顔を、都会のビルの中で鮮やかに描き出していたと思います。
河井 
実はART ZONEでは昔から上演したくて。今回こういう機会を貰って凄く嬉しかったです。街頭劇というわけじゃないですけど、ああいう不特定多数の人が通りすがる空間でやってみたかった。
__ 
ああ、確かに複合施設みたいな感じですよね。横を通り過ぎていく人が、何だろうって足を止めて見ていましたね。
河井 
もっと巻き込んでいく形に演出出来ればと思ってたんですけど、難しいですね。冨士山アネットの「DANCE HOLE」に共同クリエイションで参加してたんですけれど、あんな感じに巻き込めたらまた違った雰囲気を出せたんじゃにかなと思ってます。
__ 
DANCE HOLE、私が参加した回は、同じビルに入ってるパブで、卒コンのコールが響いてましたねずっと。
河井 
上のライブ会場が海上っていうイメージでした。
__ 
稽古期間はどのくらいでしたか?
河井 
確か、10日無かったです。
__ 
それで台本を覚え、稽古をしたんですね!素晴らしい。卒業特別公演にふさわしいいですよ。女優の近藤千紘さんがとても良かったです。
河井 
良かったでしょう。
__ 
まず存在感自体が良かったですよね。黒い髪と黒い目に、黒のワンピースで、敏捷な動きの可愛い女優。これはもう魅力的ですよね。ルサンチカそのものを象徴する出演者であり、作品になったと思うんです。
河井 
実は企画段階から千紘とちゃんと話し合って作ったのは、この作品が初めてなんですよね。
__ 
あ、そうなんですか。
河井 
というか、これまでお互いの事はあんまり何も知らなくて。この間ようやく話してみたというか。
__ 
仲良いと思ってましたよ。
河井 
仲は良いんですけれど、お互いの活動とか生活とかをそれほど知らない、的な。それと、僕が、女優という存在に対して色々思ったりするからかなあ。
__ 
妬みに近いもの?
河井 
んーそうかもしれません、なんというか、「上手」な女優を見ると、ずっるいわーってなる。まぁそれに演出をつけて更にずるくしていくっていう作業を意識的に僕はするんですけど。
__ 
ああ、うん、男性が「女優」にコンプレックスを持つのは凄く共感出来る話です。私だって広末涼子を殺したいと思ってたからね。
河井 
うわっ。
__ 
暗殺じゃなくて、正々堂々、ナイフ対決で殺したいと思ってた。
河井 
ほーんのちょっとだけ分かりますわ。
__ 
これは一体、何なんだろう。それはもしかしたら少年の美を持つ女性という、コンプレックスを掻き立て続ける女性への懸想かもしれない。自分はどうしても女性になれない、みたいな絶望もあったのかもしれない。技術とか技法に対してこだわるのは、そういうところにも原因があるのかな。
京都造形芸術大学卒業展優秀作品展 出展作品 【霧笛】
公演時期:2016/3/26~27。会場:ARTZONE。

女優の思い出1

撮影:junnosuke
河井 
そうそう、千紘アイツ漫画が読めないんですよ。
__ 
え、どういう事ですか?
河井 
漫画の読み方を知らないみたいなんですよね。普通に右上から左下に読めばいいのに、それが難しいみたいで。
__ 
絵とコマと台詞を適当に飲み込みながらじゃあ萩尾望都なんて読めないじゃないですか。少女マンガなんてものすごい高度な読解能力が必要ですから。
河井 
だから稽古の時に原作の漫画を読み聞かせ会してました。

女優の思い出2

撮影:junnosuke
__ 
この間取材させていただいた中村彩乃さんも、ルサンチカの「楽屋」に出演してましたね。
河井 
彼女も良い女優だと思います、稽古場が刺激的でした。あ、あの時の写真ありますよ。これ。
__ 
おお、これは凄い。
河井 
でしょう。ずるくてとても良いシーンに仕上がりました。

やりたいからやってる

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女優に対しての憧れや反発はありますよねー。何なんでしょうね。
河井 
別に女性になりたいとかじゃないんですよ。女装とかやった事がありますけど。ちょっと違うかもしれないですけど、ドラァグクイーンには興味があります。単純に、パフォーマンスとして興味がありますね。
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ああ、面白いですよね。
河井 
単純に、美しくないですか?憧れじゃないですけど、純粋なものを感じますよね。
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惹かれている?
河井 
昔、川村毅さんに飲みの席で「どうして女装して舞台に立つんですか?」って聞いて、「ばか、やりたいからやるんだよ」って言われた事があります。
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ああ、それで充分なのかもね。
河井 
ほんまにね。