毛糸と私

__ 
ニットキャップシアターとの出会いを教えてください。
市川 
77年企画に、ごまさんが出てるのを見て。面白い人がいるなと。一度、門脇さんに入団希望の連絡をしたんですけど、当時正社員で働いていたので、公演期間が仕事のスケジュールと合わない場合もあって、一旦保留にしたんですよ。で、しばらく後に大阪の某劇団のオーディション付きWSを受けて、そのまま出演するか悩んだ時に、職場の同期が「俳優をしに大阪に来てるんだから、俳優を優先するべきなんじゃないの?」と背中を押してくれて、その舞台に出ることになったんです。そこで、板橋薔薇之介さんがいたんです。
__ 
おおっ。
市川 
「市川に紹介したい劇団が京都にある」と言われたのがニットキャップシアターで。ああ、きっと何かご縁だなあ、って。先の舞台で仕事と稽古と本番の折り合いもついてたので、ニットに入団しました。
__ 
ニットキャップを辞めて、寂しいという気持ちはありますか?
市川 
ないなあ・・・でも何か、凄く、恥じないように行きたいと思います。「ニットにいた方が良かったのに」とは言われたくない。これから功績を残していきたい。
__ 
何者かになってほしいです。ニット時代の市川さんを知っている者としては。では、辞めるとなった時の周囲の反応はどうでしたか。
市川 
どうなんだろう。でもみんな、辞めるのはうすうすと感じていたみたいです。自分が進みたい道が明確にあるので、心配はされませんでしたね。何かを探しに東京に行く訳ではないので。
__ 
そこが違うね。何かを探しに行くわけではない。やることが決まっている。

戦略

__ 
どんな演技が出来るようになりたいですか?
市川 
隙のない演技。戦略的に自分を扱える人になりたい。
__ 
それは、今までの自分には無かった?
市川 
今までは感覚の人間だったから。野生的勘でやっていたものを具現化して、自分で理解して、使っていければと。
__ 
今までは、ある意味無責任。あ、無責任って言うとまた意味がズレるかな。
市川 
いや、巷に溢れる演劇WSとかコミュニケーションゲームとか、色々ありますけど、裏付けされるものを自分が持っているかどうかが気になっていて。それを持たない人が人に何かを教えていいのか、と。
__ 
自分を意識的に使った俳優になる。隙の無い、間のない俳優?
市川 
戦略的に間や隙を作りたいです。

木のお皿

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
市川 
ありがとうございます。(開ける)あ、やったー。これはアクセサリを入れるやつですね。
__ 
お料理を入れても大丈夫だと思います。
市川 
ありがとうございます。

中村さん

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。最近、中村さんはどんな感じでしょうか。
中村 
最近は、飛び道具の本番とエイチエムピー・シアターカンパニーの本番が立て続けにあったんですが、それも終わって。明日が大学の卒業式です。京都女子大学です。
__ 
あれ、京都造形芸術大学だと思ってました。造形の人らと一緒に見かける事が多かったからかな。
中村 
教育学部です。劇団S.F.P.に入って、そこから辞めてフリーになって、この間飛び道具に入団しました。造形大の人たちとは、ルサンチカの「楽屋」に出演したのが縁で。朗くんの演出で。
劇団飛び道具
京都を中心に活動している劇団(公式twitterより)
安住の地
2016年7月に結成。京都を拠点に活動。
安住の地のラジオ「の地ラジ」
https://www.youtube.com/channel/UCLSeKR16QwEmYTTlkXoK2bw
Twitter @nochiradio

劇団飛び道具「アルト-橋島編-」

__ 
「アルト」、大変面白かったです。ある島に住む人達の生活が、時代とともに終わっていく様を丁寧に描かれていました。中村さんは主役でしたね。
中村 
ありがたいポジションで。役もらったときはびっくりしました。藤原大介さんとHauptbahnhofの「ありえないこと、ふつうのこと」で一緒に共演したことがあり、そのご縁で呼んでいただきました。
__ 
藤原さんとは、育ての母親と義理の娘役でしたね。
中村 
なんだかあんまり違和感のない感じでしたね。藤原さんのおばあさん役が、あんまり女おんなしくはないようにさじ加減が絶妙で。私もなんだか絡みやすかったです。
__ 
無理してない感じでしたね。
中村 
私の方は、育ての親を相手にする演技、そこにどんな厚みを持たせられるかを気にかけてました。やっぱり最後の別れのシーンでテンションの掛け方が強くなるのかもしれないと思って、そこは凄く考えました。
__ 
詳しく聞かせてください。
中村 
ト書きに一行、娘が義理の母に抱きつく、とあって。一歩引いて観ると「あるよね、こういうシーン」って思われるかもしれない。でも、生身である二人の関係性が離れるという、そういう瞬間を丁寧にしたいと思っていました。千秋楽にいらしてくださったんでしたっけ。
__ 
はい。泣いてましたね。
中村 
そうなんです。そういうシーンで涙を流すってすごく記号的になってしまうじゃないですか。だからあんまりやりたくは無かったんですが、結果出てしまったんですね。客席の温度も高かったし、役者さんも全員ハマっていたような気がするからあそこにいけて。でも、稽古から本番に至るやり取りの中では、泣こうとかそういう話は無くて。自然に出てきた、とかいうのは嫌いなんですけど、でも千秋楽は出ちゃったなと。
__ 
結果的にはね。
中村 
はい。
__ 
泣いてしまうという事に警戒しているんですか。
中村 
泣いちゃったら、なんだろう、涙という多くの情報をお客さんに渡してしまう。あとちょっと酔っ払っちゃってないか、という疑いが俳優としてはあって。どこか、気持ちに倒れかかっている自分に心地よくなっているのではないか、という心配が。その危険性があるので、そこは狙わずに行こうと思っています。
__ 
涙は演技の一つの結果として出てしまうから、その確定した事実によって視線が固定されてしまうリスクがありますね。
中村 
その時、ちょっとウェットになってしまったかな、と思って。でもその後の藤原さん演じるおばあさんが橋が取り壊されるのを見ているシーンのとき、私の温度を引き受けた芝居をしてくださって。それを袖から見てたとき、琴線に触れる何かはあったのかもしれないな、と思えました。
__ 
なるほどね。
中村 
でも、恐らくですが依(酔)ってないんですよ、多分お客さんとも離れていなくて。そういった他人と何かを共有できているような感覚はさじ加減が凄く難しいけど、舞台では起こる可能性があるんじゃないかと。そんな事を思う公演でしたね。
__ 
私がいざそれを語ろうとすると余計な事になりそうです。
中村 
いえいえ、色々伺えたらと思います。
__ 
いや、本当に、言葉で飾ろうとしたり分析しようとしても無駄だと思う。その時にしか存在出来ない価値がなんじゃないかと思うんですよ。役者二人とも泣いてしまうような、あり得べくもない瞬間だった。
中村 
今後俳優をやる上で、あれを追いかけるじゃないですけど、でも支えになる経験になったと思います。大事にしたいと思います。
劇団飛び道具「アルト-橋島篇-」
公演時期:2016/3/3~6。会場:スペース・イサン。

掘り下げる

__ 
中村さんは京都の22歳を代表する役者だと思っています。
中村 
えぇっ、ありがとうございます。
__ 
「京都」の、役者という感じね。ひと捻り加えるのが好きで、既存の価値観に対して牙を剥くみたいな。まあ、それは勝手に私がそう思っているだけの偏見なんですけど。
中村 
なるほど、ありがとうございます。
__ 
中村さんの場合はさらに捻って、行き過ぎた存在感ではないというところが新時代みたいな。だって就職するし、飛び道具に入るし。
中村 
飛び道具に入団するという報告をさせてもらった時、周りの方にすごくありがたい言葉ばかりを頂いて。
__ 
飛び道具という劇団が素晴らしいのは、きっと調和の力なんですよ。そこに中村さんが入るのは、単純にとても似合っているし、楽しみです。
中村 
なんか、さっき言って下さったように、あんまりこだわりは無いというか。演劇は好きなんですけど、所詮演劇、されど演劇、ぐらいの気持ちでいた方がいいのかな、と。この間飛び道具の先輩達と飲んだ時に、考えてからやるんじゃなくてやってから考えろって言われたんです。自分が何故このタイミングで、この言葉をこの音程で、この間で、この目線でやったのかを、出来るのであればしっかり考えて考えて考え詰めたら、自分の人生の根底とか生い立ちにまで掘り下げられるから。そこまで行った芝居はなかなか簡単には否定されない。そこで否定されたら、その人とは相容れないんだなって諦めがつくから、と。
__ 
・・・。
中村 
私は、誰に対してもあまり否定はしたくない。まずは受け容れてみようというのは、あります。

諦観のこころ

__ 
受け容れてみようとする?
中村 
そうですね、分かるのは無理だと思うんですけど。
__ 
受け容れる・・・。それがキーワードになって10年ぐらい経っていますが、日本は多文化共生社会になろうとしてなれていないじゃないですか。
中村 
はい、はい。
__ 
なりそうもないじゃないですか。
中村 
(笑う)そうですね。
__ 
お互いに受け容れ合ってうまくやっていけるかというとそうでもなく、どこかでショートして、こじれている。いつものこの流れが終わったら、反動で、たぶん次は「論理的であろうとする」が流行るんじゃないかなあ。これインタビューになってないですね。
中村 
反動はありそうですね。ただ、どこかでやっぱり諦観の姿勢を持たないと保たないんじゃないかなと思うんです。実は十代の頃、割りとトゲトゲとした考えを周囲に対して持っていたんです。それが、いつかの時に、言ってもしょうがないんだな、と諦めた瞬間があって。人間って面白いな、くらいの適当さで物事を考えようと出来るようになりました。
__ 
なるほどね。
中村 
まあ、今後とも、ゆるっと楽しんでいきたいなと思っています。起きたことと、出会った人と大事にして。

就職するとどうなるか

__ 
エイチエムピー・シアターカンパニーの「静止する身体」も良かったです。あれは、ご自分で書かれたんでしたっけ。
中村 
そうですね。自分で書くのは稀有な経験で、ありがたいというか。
__ 
あのテキストは本当の事なんですか?
中村 
指示としては、どこかふわついたフィクションの方にゆるやかに行って欲しいという指示でした。私の書いたテキストについては、全くのウソです。
__ 
あ、そうなんですね。電車の中で演出家が話しかけてくるというのは。
中村 
台本を読んでた、までが本当です。
__ 
内定を蹴ったのは?
中村 
願望です。就職します!
__ 
あ、どうしよう。その辺を記事に書くべきか書かざるべきか・・・。
中村 
いや、就職したくないという訳ではなくて。そのあたりもものすごく考えたんですけど、どちらかと言うと、演劇を続けるために就職しようという気持ちがあって。色んな人がいると思うんですよ。一回社会に出ないといいものは作れないと言う人もいれば、就職しようがしまいが関係ないって言う人もいる、みたいな。そういう話もたくさんの人としたんですよ。
__ 
中村さんは、まずは就職すると。
中村 
そうですね、まずは社会に出て頭を打って、公演のチケット代金3000円が、社会の中でどれだけの重さを持っているのか感じた上で演劇に戻るのは、私にとっては良いんじゃないかと思ったんです。まあ、目先の公演に飛びつきたいという気持ちはありましたけどね。
__ 
入社は来月から、ですか。
中村 
3月22日から研修が始まります。
__ 
職種は?
中村 
ホテルなんです。お客さんと直接触れるような仕事も良いかも、と思っています。まだ係は決まってないんですけど。
__ 
おおっ!私、昔京都駅前のホテルでバイトしてましたよ。
中村 
そうなんですね。結構、演劇の人でホテルで働いている人多いですよね。
__ 
多いですね。THE ROB CARLTONもまさに。
中村 
そうですよね!
__ 
ボブマーサムさん曰く、ホテルは非日常の空間ゆえ、非常に演劇的である、と。私は、中村さんは「お客様の陰になって支える」、色んな対応が出来るタイプのホテリエになってほしいです。これは別に中村さんの雰囲気から判断している訳じゃなくて、由緒あるホテルだからこそ、大きな役割をしっかりと果たしてほしい。お客さまにサービスを売りに行くんじゃなく、そっと観察を続け、困っているサインを発したお客さまに近づいて、自分が持っているサービスをご紹介するタイプの寄り添い方が理想的です。
中村 
塩梅ですよね。
__ 
にこやかに、でも鋭くお客さんを見て。そういう地道なサービスを続けたら、見てくれる人は見てくれると思いますよ。
中村 
私、面接とかでもそんな事言ってたと思います。お客さまの支えになって、何を求めているのかを察する事が出来るような。
__ 
あ、そうなんですね。ホテル業界は確かに演劇人いますね。ぜひ、ROB CARLTONに出て欲しいですね。
中村 
そう、まだ女性出演者は出た事がないんですよね。私是非出たいんです、コメディ大好きだから。笑の内閣や和田謙二に出られたと思ったらシリアス担当だったり。楽しかったですけれども。
__ 
なるほど。夢が広がりますね。そして、ホテルマンとしてもキャリアを積み上げて言って欲しいです。この際。めちゃくちゃ応援しています。出来る事があれば何でも言ってください。
中村 
ありがとうございます。とりあえず、やるからには頑張ろうと思います。就職する事に希望を持ち始めました。
エイチエムピー・シアターカンパニー
大阪を拠点に活動する劇団。「エイチエムピー」は“Hamlet Machine Project"の略。1999年にドイツの劇作家ハイナー・ミュラーの『ハムレットマシーン』を上演するための「研究会」を結成。その後、2001年から劇団として活動を始める。その実験的な舞台創作とリアリティを追及する手法が評価され、かなざわ国際演劇祭、大阪現代演劇祭〈仮設劇場〉WA、精華演劇祭、演劇計画2007「京都芸術センター舞台芸術賞」など、数多くの演劇フェスティバルに参加している。「現代美術」とも称される舞台空間と俳優の造形力に定評がある。(公式サイトより)
エイチエムピー・シアターカンパニー『静止する身体』
公演時期:2016/3/11~13。会場:アトリエ劇研。
THE ROB CARLTON
京都で活動する非秘密集団。(こりっちより)

色々な事が出来る

__ 
そういえば笑の内閣『超天晴!福島旅行』で演歌を歌ってましたよね。やたら上手でした。
中村 
あの時は、中村個人としてのパッションはありつつ、それを押し付けるのではなくて。でもそこを嘘付いてしまったらあの役であの歌を歌う意味が無いから。高間さんの「まずは福島に行って欲しい」という意思には賛同出来たので。個人としても役としてもさじ加減を気をつけながら、でもどこか熱いものはあったと思います。
__ 
バランスを崩すと難しいですからね。
中村 
緊張はしました。
__ 
いざとなれば歌えるって、いいですね。
中村 
やれ、となればやります。S.F.P.に入る前には大学で軽音に入ってたんです。ギターボーカルやってました。1年ぐらいしてS.F.P.を見て、バンドをゆるやかに辞めて、演劇に入りました。
__ 
入学と同時に音楽を始めた?
中村 
そうですね。
__ 
それは有能なのか行き当たりばったりなのか。
中村 
何がしたかったんでしょうね。楽しかったからいいんですけど。演劇の方に行っちゃったんです。
__ 
ギターも弾けるんですね。
中村 
まあまあ、軽くは。
__ 
芸達者ですね!
笑の内閣
笑の内閣の特徴としてプロレス芝居というものをしています。プロレス芝居とは、その名の通り、芝居中にプロレスを挟んだ芝居です。「芝居っぽいプロレス」をするプロレス団体はあっても、プロレスをする劇団は無い点に着目し、ぜひ京都演劇界内でのプロレス芝居というジャンルを確立したパイオニアになりたいと、06年8月に西部講堂で行われた第4次笑の内閣「白いマットのジャングルに、今日も嵐が吹き荒れる(仮)」を上演しました。会場に実際にリングを組んで、大阪学院大学プロレス研究会さんに指導をしていただいたプロレスを披露し、観客からレスラーに声援拍手が沸き起こり大反響を呼びました。(公式サイトより)(公式サイトより)
KYOTO EXPERIMENT 2014 フリンジ企画 オープンエントリー作品 第19次笑の内閣 福島第一原発舞台化計画-黎明編-『超天晴!福島旅行』
公演時期:2014/10/16~21(京都)、2014/12/4~7(東京)。会場:アトリエ劇研(京都)、こまばアゴラ劇場(東京)。

質問 長南 洸生さんから 中村 彩乃さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、悪い芝居の長南さんから質問を頂いてきております。ご存じですか?
中村 
そうですね、これも変なご縁で、学生の自主制作映画の現場で一緒になって。お互い名前は知ってて、挨拶はしました。
__ 
「曲げたくないものはなんですか?」という質問です。
中村 
自分の演劇哲学をあまり持たないようにする、という演劇哲学です。
__ 
持たないようにする?
中村 
その時々に合ったものを信用する、現場の他の役者さんの考えを知る、みたいな。
__ 
なるほど。笑の内閣から缶の階まで、色んなところに出られる、と。
中村 
現場によって言われる事も全然違うんですけど。
__ 
中村さんは白いキャンバスという、強烈な個性を持ってますね。
中村 
ありがたいお言葉です。どこまでそれをちゃんと、キャンバスの中に収めていけるか。プラスチックのようなものじゃなくて、ちゃんと色が乗る素材でありたいです。

頭を打つ

__ 
演技を作る時に、どんな手応えを感じたいですか?
中村 
相手役との演技がハマったと思える感覚かな。Recycle缶の階の時、相手役の七井さんと会話がなんとなくハマったときがあって、演出の久野さんもお客さんも良いと言って下さった事があったんです。何かしよう、というより、引き受ける姿勢でしっかりとした方が、私の場合は居られるのかな、と。
__ 
それは完全に、受容の体勢ですね。
中村 
ブッ込むのも好きなんですけどね。
__ 
ブッ込んでいってほしいし、その直後、何か受け容れている、みたいな。
中村 
そうですね、どんどん頭を打って行ければ。

おちょちょ(https://twitter.com/0chox2)に出ます

__ 
何か告知があれば。
中村 
5月に、西一風の岡本昌也君の企画に出演します。ライブの対バンの中で演劇をする枠を設けて、彼の小作品を発表するという感じです。演劇は細々とですけど、勘は鈍らないように続けて行きたいと思ってます。割と評判みたいで、色んな会場から声が掛かっているみたいなんです。
__ 
それは楽しみです。参ります!

春はまだ先

__ 
そうそう、飛び道具に入った経緯を教えて下さい。
中村 
ここ半年くらい、定期的に演劇を作れる場所・帰る場所というので、劇団に所属することについて色々考えていて。その矢先、飛び道具の本番中の呑み会とかで冗談っぽく「うち入る?」みたいな流れがあり、最後の打ち上げで渡辺ひろこさんが「彩乃ちゃんが良いなら、飛び道具に入ったらと思うねんけど、どう?」って。それでもうその場で「入りたいです」と答えて。藤原さんのとこに連れてってもらって「ほんまに入る?」って聞かれて、「いいんですか」「いいよ」「じゃあ」という。
__ 
良かったですね。
中村 
気張らずに、良いバランスで続けていきたいです。
__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
中村 
基本的にはコツコツと、出会った人を大事にして。今日言った事もいつか変わるかもしれないですが、演劇やりたいなと思ってます。

グラノーラ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。どうぞ。
中村 
ありがとうございます。拝見させていただいて。
__ 
どうぞ。
中村 
(開ける)これは。
__ 
グラノーラですね。
中村 
あ、グラノーラめっちゃ好きなんですよ。ヨーグルトに入れて食べるのが好きなんです。明日の朝食にします。

スイッチ総研に出演して

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。最近、長南さんはどんな感じでしょうか。
長南 
最近は、立命館大の映像学部の作品に出させてもらったり、それから、本多劇場でスイッチ総研に関われました。それがすごく大きかったです。
__ 
スイッチ総研!私も大好きです。どんな経験でしたか。
長南 
初めて横浜で見た時から絶対に出たいと思っていまして。今回は東京に二週間滞在して製作に関わりました。本番は2日しかなかったんですけど出られて本当に良かったです。スイッチ総研は、お客さんがスイッチを押したら短い演劇が始まるというものなんですけど、それが楽しくて。
__ 
ええ。
長南 
押す側も面白いし、それを横から見るのも楽しいんです。子どもとかが笑いながらスイッチを押す姿が凄く明るくて。やる側に回りたいなとずっと思っていました。演劇だけど、現実により踏み込んでいるんですよね。関われてよかったです。
__ 
私は道頓堀スイッチを見た事があります。大変面白かったです。スイッチの条件とか、タイミングとかがどうなっているのか、職業柄、興味深かったですね。
長南 
お客さんが、ちゃんと入っていけるタイミングを見計らう。スイッチを押した時に、お客さんが気持よく入っていける呼吸を読む。その演劇的な空気の読み合いがありましたね。スイッチを押して、「あれ、何も起こらへん?」と思わせたら負けで、「何が始まるんだろう」と思った時の空気の掴みあい。
__ 
認識の始まり方、ですね。
長南 
僕だけの認識かもしれないですけど、理想的には、押したお客さんが巻き込まれているような、気付いたら自分も舞台上に立っているような、お客さんも俳優にしているというか、演劇に巻き込むというか・・・。もちろんお客さんに触ったりはダメ、でも巻き込んであげて欲しいと、稽古の時に言われたんです。元来、演劇はお客さんを巻き込めるんですよ、その力を目の当たりにすると凄くワクワクするんです。
__ 
演劇の観客への認識については色んな論じ方がありますよね。例えば、サッカーに例えれば、お客さんもフィールドの上の選手であるという見方もある。
悪い芝居
2004年12月24日、路上パフォーマンスで旗揚げ。京都を拠点にしながら、東京・大阪などでも活動する劇団。メンバーは12名。ぼんやりとした鬱憤から始まる発想を刺激的に勢いよく噴出し、劇世界と現実世界の距離を自在に操作する作風が特徴。「現在でしか、自分たちでしか、この場所でしか表現できないこと」を芯にすえ、中毒性の高い作品を発表し続けている。2009年より、パワープッシュカンパニーとして京都の劇場ARTCOMPLEX1928から2011年まで3年間の支援を受ける。そのパワープッシュカンパニーとしての最初の作品「嘘ツキ、号泣」が第17回OMS戯曲賞佳作を受賞。各メンバーの外部活動や、2011年は、劇団事務所である築80年の京町屋で1ヶ月半26ステージの家屋公演「団欒シューハーリー」を敢行するなど、劇場以外でのパフォーマンスも精力的に行っている。誤解されやすい団体名の由来は、『悪いけど、芝居させてください。の略』と、とても謙遜している。(公式サイトより)
スイッチ総研
「スイッチ」を押すと「何か」が起こる!3秒~30秒の小さな演劇!スイッチの側に書かれている「あるお願いごと」を実行することでスイッチON。スイッチを押したとたん貴方は物語の観客、はたまた主人公に。“オール人力インタラクティブメディアアート”とも称される唯一無二かつ変幻自在な新しい形の演劇。その場所でしか出来得ない作品を目指し、所員達が日夜研究開発を続けている。(公式tumblrより)

ボールのはじまり

__ 
であれば、お客さんがフィールドの上で価値のあるプレイをするにはどうすればいいんだろう?もちろんフィールドに出てもらう事は必要ですが、それ以降、自分の持っている能力であるとか、他の選手(俳優ですね)を信じて走り続けるだとか、パスをトラップする力だとか、特定のポイントに走りこむ決断力だとか。結局は、俳優と観客が、信頼し合える関係性を作る事なんだろうか。一体、それには何が必要だろうか?
長南 
難しいな。
__ 
もちろん、色々な考え方があるとは思いますが。
長南 
僕は、傲慢なのかもしれないですけど、お金を払って席に着いていただいている時点で、信頼する土台は出来ているんじゃないかと思うんですよね。例えば、今からこの喫茶店で何かパフォーマンスをしたところで、他のお客さんにとっては信じられないと思うんですよね。何か変な奴がいる、という状況が出来上がるだけ。でも、これから演劇をします、という準備をしたのなら、そのパフォーマンスが可能になると思うんです。チラシを見て想像する事、劇場に足を運んだこと、チケットにお金を払ったこと。それが、演劇を信じられる土台を作るんじゃないかと思うんです。
__ 
なるほど。
長南 
例えば小劇場なら、お客さんを信じさせるための土台作りを舞台・客席から遊べると思うんですよね。カフェを舞台にするお芝居をするなら、劇場のドアを開けた時にカランコロンと音をならすとか。お客さんが観に来る時点で、信じる気持ちはある。それをどこまで増幅してあげられるか、だと思うんですよね。
__ 
契約があるから。
長南 
そうですね・・・言葉の解釈の違いなんですが、僕のなかでは、それは契約とは少し違うと思っています。お客さんはwantを持っている。願望というか希望というか、見せて欲しいというワクワク感。小学生の言葉みたいですけど、それがあるから、それが支えてくれるから俳優が居られるんだと思っているんです。甘い考えかもしれないですけど。
__ 
願い。それは私の中では「祈り」かな。その観たいという祈りに応える為に、俳優は何をすべきなのか?どう思われますか?
長南 
難しいですね。
__ 
私は「犠牲」を以って応えるのが俳優だと思う。・・・。
長南 
支払う。
__ 
例えば、犠牲を支払わないと出来ない演技もある。どこかから借りてきたみたいな演技には誰も用はないでしょう。面白い演技とは何を指すんだろうか。それは俳優個人が自分の何かを支払って手に入れるもので、それは、お客さんには支払いの重さがきっと分かる。
長南 
何だか、支払う支払わないというのは数学的だなあと思って。凄く分かります、僕も大学が理系だったので。その感覚がいま自分にあるかどうかは置いといて(今は掴めないところにある気がするんですけど)ちゃんと、俳優の胸が痛くなるかならないか、というところだと思うんですよね。それが支払うというところかもしれないですね。あの、支払うという言葉がネガティブに聞こえてしまったので、ポジティブな言葉で捉え直せないかと思って。例えば恋愛のお芝居があったら、ウソでフィクションで、舞台にでっちあげられた恋愛だけども、板の上に立っている二人は、相手を好きになっているはずなんですよ。僕は単純なので。でも終わったらウソになる。でもその時の高揚は、実感として胸に残っている。それをお客さんには、面白く見られたらいいな、興味を持ってくれたらいいなと思います。言葉を借りれば、支払っていないのは、好きなフリをしている演技。それはバレると思います。ある意味本当に、自分の心を動かさない限り、お客さんの心は動かない。僕はどちらかというと、技術よりパッションを愛しているほうなので。
__ 
パッション。

3つの言葉

長南 
どちらかというと技術より気持ちの事をよく言うんですよね。学生劇団で、後輩へのダメ出しが効く時と効かない時があるんですよ。僕の言葉は本番前の方が良いみたいで、気持ちの面の話が良いらしいんですよ。
__ 
パッションをより伝えられるようにするには技術的な面での誘導も必要だろうと思うんですが、その上で何があるべきなんでしょうか。
長南 
僕が演劇を見る時には、3つの感想があるんです。「良いな」「すげえ」「分かる」の3つ。
__ 
ええ。
長南 
「良いな」は憧れ、「すげえ」は尊敬、「分かる」は共感なんですよ。それらをお客さんに言わせた時、お客さんの心を震わせているんです、きっと。僕は少女漫画好きなので恋愛に置き換えがちなんですけど、良い少女漫画ははそういう風に言わせてくれるんです。理想的なそんな道筋を、お客さんと一緒に連れ立っていけるような仕事が出来る俳優が良いと思っています。そして、その真逆でも良いと思うんです。「分からん!」と言わせる。「絶対嫌」と言わせる。なぜそう思わせるかというと、そのお客さんの人生に被っている部分があるからなんですよ。自分はそれを選ばなかった、それを思い起こさせるようでもありたい。一番辛いのは、「へー」とただ無関心に思わせてしまうことだと思うんです。

遠くへ

長南 
僕は何かを見ている時には、感覚的言語なんですけど、遠くに行きたいと思うんです。

カチカンが呼んでいる

__ 
観客個人の価値観を呼び出す一瞬がある。そんな芝居こそが、付き合う芝居と言えるのかもしれない。
長南 
自分を投影させる。それはきっと可能なことなはずで、人生が違っていても、大事にしていることは何かしら近いと思うんですよ。で、全く理解できひん劇団にはお客さんは行かないし、だからこそ劇団はこんなに数多く存在している。ファン層というものもあるんですよね、きっと。
__ 
C言語やったことあります?
長南 
あります。
__ 
不便ですよねあれ。エントリーポイントの前に関数を宣言しないとコンパイル出来なくて、定義はmain()が終わった後にしないといけない。JavaやPHPではそんな構成は考えなくても良い。でも、お客さんが価値観を呼び出すタイミングは、C言語みたいに、芝居が始まる前なのかもしれない。
長南 
お客さんの価値観を呼び出した、という事は、その人自身がそこにいるという事で、そこから一緒にどこかに行けるという事かもしれませんね。
__ 
そういう風に出会えればいい。しかし、俳優が観客を呼び覚ましてくれるのは、実は本当に稀有な事なんですよ。俳優の姿というのは面白いもので、観客がその姿を「見れる」のは、彼が姿を現したその時一瞬限りだ。それはすぐ幻滅し、再生出来ない。「サーファーは、崩れる波にしか乗ることは出来ない」。その一瞬に出会うことの出来た奇跡。逆に言うと、それが、演劇の持っている色々な価値の一つなんじゃないかなと思う。
長南 
そうですね。でも、出会わせられれば最高じゃないですか。その平均点や確率を高められるのが技術だと思うんです。でも、その到達点を技術でやってはいけないんだと思うんです。
__ 
挑戦的な発言ですね。
長南 
いえ、その波の話で言うなら、波とサーファーが最高の到達点だとするなら、どうしても生物はぶれがある。そのブレを調整するために技術がある。舞台に立つにしても、例えば昨日歯を磨いているかいないかだけで何かしらが違うハズなんですよ。そのブレを無視出来るぐらい、水準を持っていくのに技術は必要、お芝居の時間を組み立てるためには。でも、高揚していく気持ちを技術ですべて補おうとするとそれはフィクションなんですよ。それこそ支払いの話だと思うんです。技術は時間を支払って得るもので、高揚に対して支払うのは気持ちなのかな、と思います。支払うというより、使う、動かすということかなと思います。

悪い芝居「メロメロたち」

__ 
さて、悪い芝居「メロメロたち」。7月からということで、あと4ヶ月しかありませんね。意気込みを教えて下さいませんでしょうか。
長南 
僕もまだ、内容とかは詳しく聞かされていないんです。でも、遠くに行けそうな気がします。どこまででも行ける要素があるなあ、と思っています。
__ 
どこまでも行ける要素。
長南 
お客さんに向けて言うべき意気込みというよりも、ワクワクしている気持ちがただ強いんです。お客さんと、連れ立って行ければと思うんです。
__ 
動かないロードムービーという触れ込みが気になりますよね。
長南 
想像力でどこまで行けるんだろう、みたいなことなのかなって。多分恋愛の話が絡むんですけど、人間誰しも通っている道だからこそ、誰しもの気持ちに触れることの出来ることなんじゃないか。「いいな」と思ってくれるお客さんがいると思うし、いたら、僕も「いいな」と思っているし、そういうお客さんと一緒にどこまでも行きたいし、みたいな。なんか上手く言えないなあ。
__ 
それは共感に限界があるからじゃないですか?
長南 
限界か・・・話、ちょっと変えていいですか?
__ 
もちろんです。
長南 
僕、「ウォールフラワー」という映画が好きで。主人公の男の子がスクールカーストの最下層で毎日冴えない学生生活を送っているんですけど、ある日学校で出会った兄妹が自由奔放でスクールカーストなんかに属してなくて、ある日連れ立って外に飛び出そうとするんです。その時にドライブのシーンがあって、妹の方が自分の好きな音楽が流れてきて気分が上がってトラックの荷台で立ち上がって手を広げながらトンネルを抜けるシーンがあったんです。主人公はそれをずっと眺めてて、どうしたと言われて、「無限を感じる」と言ったんです。僕は「ああそうだよ、僕もその為に芝居してる!」って叫んだんですね心の中で。共感って限界はあるかもしれないけれど、これからも歩んでいける余白があるからこそ、どこまでも行けると思うんですよね。それこそ空白がいっぱいある僕らの人生ですけど、そうだよ、そうなっていって欲しいんだよ、というところに無限を感じるんですよね。僕はそこにワクワクを感じるんです。
__ 
ワクワクする要素、か。
長南 
で、人一人の想像力ではどこにも行けないと思うんですよね。自分一人の価値観だけで考えるのは限界がある。僕は、誰かが連れ出してくれることに意義があると思う。別の人だからこそ、自分もどこまでも行けるかもしれない、こうなりたい、という憧れだとか。無限に可能性があるんじゃないかと思うんです。
__ 
トラックの荷台に乗って、無限を感じる。言葉にもならない言葉ですね。
長南 
僕は、何かを与えられるような人間ではないから、誰かに支えてもらわないと生きて行けないと思う。色んな人がいるから、支えてもらっていると感じている一年でした。だからこそ、お客さんと一緒に、知らない場所に行きたいんです。
__ 
その上で問い直したいと思うんですが、お客さんに、そういう「連れ立ってくれる人」として認められるにはどうすればいいのか?
長南 
ああ、どうなんですかね・・・。雑にパッと思いついた事を言うとですけど、汗をかく事ですかね。
__ 
なるほど。
長南 
それは凄くパッション的な事なんですけど、それは気持ちだと思うんです。それから、技術的な事を言うなら違和感を感じさせない事だと思います。地に足を付けて、当然の重心で立って。ちゃんと、こう・・・。汗をかく?いや、もしかしたら、その光景を見て喋っていられるかどうか、なのかもしれません。お客さんに対してのアプローチは僕も全然分かってないですけど、セリフを言う事よりも、聞く事が大事なのかもしれない。誰でもがある種分かっている事かもしれないですけど。どうしても2時間という枠組があるから、そこに没頭させるために、その役に影響を与える相手役の言葉にどれだけ素直に耳を傾けられるか、だと思うんですよね。それが無かったら、お客さんにとっては嘘になるんだと思います。
__ 
そうですね、嘘のある芝居では、人としては認められない。汗も同じですね。
長南 
いま、「そうですね」と言ってもらえて僕はホッとしたんですけど、その反応を舞台上でも出来るようになりたい。それが、お客さんに感じてもらう事に繋がると思います。
悪い芝居vol.18「メロメロたち」
【作・演出】山崎彬
【音楽】岡田太郎

【出演】
植田順平 渡邊りょう 中西柚貴 呉城久美
北岸淳生 畑中華香 長南洸生 岡田太郎
山崎彬
(以上、悪い芝居)

石塚朱莉(NMB48)
大久保祥太郎(D-BOYS)
アツム(ワンダフルボーイズ)

【会場・日程】
●大阪公演
HEP HALL
2016年7月15日(金)~20日(水)
15日(金) 19:00
16日(土) 13:00/18:00
17日(日) 13:00/18:00
18日(月・祝) 13:00
19日(火) 14:00/19:00
20日(水) 14:00

●東京公演
赤坂RED/THEATER
2016年7月26日(火)~31日(日)
26日(火) 19:00
27日(水) 19:00
28日(木) 14:00/19:00
29日(金) 19:00
30日(土) 13:00/18:00
31日(日) 13:00

【チケット】
2016年4月23日、チケット先行発売開始!

●前売
一般 3900円
U25 2900円
高校生以下 2000円

当日券 各500円増

●悪友割(3人以上1組割引)
一般 3500円/人
U25 2500円/人
高校生以下 1000円/人