スヌーピーのマグカップ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
中西 
ありがとうございます。みんながもらっているのを見てました。
__ 
どうぞ。大したものではないですよ。
中西 
(開ける)あ、スヌーピーや。
__ 
年代別でルーシーがどう変わっていったのかがわかりますね。
中西 
私ハーブティーが本当に好きなんですけど、これに入れて飲んだらピッタリだと思います。ありがとうございます。

したため#4「文字移植」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、穐月さんはどんな感じでしょうか。
穐月 
今はしたための「文字移植」の稽古のまっただ中です。実は最近、大阪から京都に引っ越しました。祖母の一軒家を借りてるだけなんですけど。今回東京から来てくれている多田さんはウチに滞在してて。晩ご飯が終わったらそのまま多田さんと台詞の読み合わせをしたり。家で稽古が出来るのが良いですね。
__ 
幸福度高いですね!
穐月 
凄い充実してます。
__ 
何だか、合宿みたいですね。さて、いまおっしゃって頂いた「文字移植」。このチラシカッコいいですよね!モノトーンだけど情報量の多いこのデザイン、印象的なこの何かを言おうとしている4つの唇。
穐月 
これは今回の舞台美術を担当してくれる林葵衣ちゃんの作品で。彼女は美術家で、これ過去に発表した作品らしいんですけど今回「文字移植」用に同じ手法で作ってもらいました。ある言葉の唇拓なんですけど、何だと思います。
__ 
おお、何を言ってるんでしょうね。「うあうい」?「おあうん」?
穐月 
私も最初解らなかったんですけど。是非劇場に来て謎を解いてもらえたら。チラシのデザインは岸本くんがやっているんですけど。
__ 
美術作品とチラシと演劇公演がそれぞれ結びついているんですね。素晴らしい打ち出し方ですね。
したため#4『文字移植』
原作|多和田葉子
演出・構成|和田ながら 
出演|穐月萌 岸本昌也 菅一馬 多田香織(KAKUTA)

わたしはどうしてもこの〈小説〉を翻訳してしまわないといけないと島へ来てからそのことばかり考えているくせに実際にはまだ何もしていなかった。あと一日しか残されていないというのにわたしはまだ何をどう訳せばいいのか見当もつかずにいた。
多和田葉子『文字移植』より(講談社文芸文庫「かかとを失くして|三人関係|文字移植」)


ある物語を翻訳するために訪れた島で、言語と言語のあわいで惑う"わたし"――
言葉はどのように「移植」できるのか、その「移植」をおこなう者の身体とは、
どのような運動のさなかにあるのだろうか。
出演者の日々の生活のドキュメントから演劇をたちあげてきたしたためは、
2016年、テキストと出会う旅をはじめました。
アトリエ劇研創造サポートカンパニーとしての京都公演、
そして創作コンペティション受賞公演としての福岡公演、
したため初の2都市ツアーで臨むのは、日本語とドイツ語、
ふたつの言語を往復しながら精力的に活動し、文芸賞の受賞も続く
作家・多和田葉子の初期作『文字移植』(1993 年、『アルファベットの傷口』より改題)。

言葉と身体が発火するところへ。

■京都公演〈アトリエ劇研創造サポートカンパニー公演〉

日程|2016 年6月10日(金) ~ 13日(月)
10日(金) 19:00*1
11日(土) 14:00/19:00
12日(日) 14:00*2/19:00*3
13日(月) 14:00*4

ポストパフォーマンストーク|
終演後、作品を軸に、演出・和田ながらが同世代のアーティストと
おしゃべりしたり、みた人同士で感想をシェアする場を設けます。 
*1 ゲスト 林葵衣(美術家、本作舞台美術担当)
*2 ゲスト 守屋友樹(写真家)
*3 ゲスト 中川裕貴(演奏家、音楽家)
*4 「余韻の時間」をつくって、いっしょに作品をみた人たち同士で話しながら、
   普段以上にじっくり作品を味わいます。(運営=「Listen, and...」プロジェクト)

会場|アトリエ劇研 >>access
〒606-0856 京都府京都市左京区下鴨塚本町1
TEL 075-791-1966 ( 月~土 9:00-17:00)
http://gekken.net/atelier/

■福岡公演
〈FFAC企画 創作コンペティション「 一つの戯曲からの創作をとおして語ろう」vol.5 最優秀作品賞受賞公演〉

日程|2016 年6月18日(土) ~ 19日(日)
18日(金) 14:00/18:00
19日(土) 14:00*5

ポストパフォーマンストーク|
*5 ゲスト 手塚夏子(ダンサー/振付家)、大澤寅雄(文化生態観察)

会場|ぽんプラザホール >>access
〒812-0038 福岡県福岡市博多区祇園町8-3ぽんプラザ4F
TEL 092-262-5027
http://pomplazahall.jp/

■料金
一般 前売2,500円 当日2,800円
学生 前売1,700円 当日2,000円
高校生以下 無料
※各回、受付は開演の30 分前より開始いたします。

vol.474 穐月 萌

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2016/春
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穐月

どんな公演になりそうですか?

穐月 
そうですね、私がこの1年関ったしたための公演とは違う感じになると思います。
__ 
これまでとは違う?
穐月 
まずビジュアル的に違うというのは大きいです。私が出たのは素舞台で普段着で自分の言葉で喋るというのが多かったけど、今回は林葵衣ちゃんの美術も印象的だし衣装も清川敦子にカッコいいのを作ってもらうんです。これまでになく武器をたくさん持たせてもらってる感じですね。素舞台に丸裸で立たされるのではなく、鎧を。
__ 
この作品のどんなところが好きですか?
穐月 
この作品は多和田葉子さんの小説が原作なんですけど、その小説には読点がなくて。それが気持ちの良いリズムでだらだら続くんです。冒頭で風景描写が続くんですけどその文章の波が気持ちよくて。私、最初良いリズムに酔わされて綺麗な風景を想像してしまったんですけどよく読んだら別に綺麗な風景なんて描写されてなくて。どこかダマされたというか。こういう文体は好きだなと思いました。
__ 
穐月さんをダマす文体なんですね。今回の舞台にその冒頭は出てきますか?
穐月 
出てきます。私も楽しんでやっています。
__ 
原作を読んできた方が楽しめそうですね。さて、「文字移植」は物語のある小説なんですよね。では本当にこれまでのしたためとは違いますね。
穐月 
そうですね。物語のある小説ですけど、どう演劇にするのか悪戦苦闘はしてます。この小説で常に物語りを語っているのは翻訳家である「わたし」という主人公なんですけど、「わたし」もある小説を翻訳することに悪戦苦闘していて。「わたし」と私達の立場が同じなんだと気づいたとき、どう舞台に立ったらいいのかちょっと先が見えたような気がしました。
__ 
つまり、その「わたし」に付き合い続ける作品なんですね。したための作品は、人間の行動そのものについての思考を挑発するところがあるように思います。以前拝見した作品「わたしのある日」は人間の日常行動、とりわけ仕草についてをその人自身の生活から追求する、みたいな観点があって。私はどこまでその点を考えたことがあるのかを問われているような気がして、非常にスリリングでした。
穐月 
そうでしたね。今回の作品も、わざわざ虫眼鏡で視なくてもいいものを虫眼鏡で視てしまうがために、全体をどう説明すれば良いのか収拾がつかなくなって何でか最終的にずっ転けちゃう人達みたいな、例えばですけど。その感じは「わたしのある日」と共通してるような気がします。それと今回の「文字移植」で「わたし」が翻訳している小説自体が、小説と呼んでいいものかどうかさえ見当もつかないものらしくて。どう訳す?ってずっと悩んでるんですけどそれと同じ距離感で、どう演劇にする?て悩みながらここまで来ている気がします。その作り方が案外楽しいなって今回思ってます。
__ 
理解する術がないものに対して向き合い、そして迷う。それは楽しそうですね!
穐月 
作り方が分からないものって、いいですよね。

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穐月

誰も見たことがないものを作っている

穐月 
そういう意味ですごく良いテキストだなと思いました。作り方から迷うのって面白い。
__ 
作り方から作る作品。
穐月 
こんな「かっこいい」今まで知らなかった!ていうものに出会ったときにすごくときめきます。もう出尽くしたとか諦めずにそういうもの作れたら良いなとか思います。

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穐月

気がついたら踊っていたい

__ 
穐月さんの事をこれまでダンサーだと間違って認識してたんです。何でだろう。
穐月 
全然ダンサーじゃないです。でも、ダンサーだって認識されたのはうれしいかもしれないです。台詞を喋っている時でも、あわよくば体が踊りだす瞬間があればいいな、みたいな気持ちがあります。他人の台詞によって、でも同じく。
__ 
体から動きが飛び出したがっている?
穐月 
さて踊るぞっていう意図的なことをしたいのでは無いのですが。
__ 
「ハイアガール」の時の穐月さんのお姉ちゃん役はそんな感じでしたね。
穐月 
ありがとうございます。
__ 
自ら出たがっているその動きとは何なんでしょうね。その人の経験か、時代のもつうねりなのか、もっと大きい自然なのか。人格を無視した話ですが、そういう事はもちろんあるでしょうね。巫女を依代にするように。
穐月 
私は踊るというのがどういう事なのか良く分かってないですけど。台詞を脳味噌につめこんでふぃーって出すだけでは駄目で。台詞がフィットしたとき身体も動いてくれる感覚はあります。
__ 
本番にはお客さんがいて、それぞれに時間軸を持っています。舞台上で、言葉と身体を一致させ続ける事で、それぞれの時間に追いつく可能性がありますね。
穐月 
稽古場で大ヒットすることはあるんですけどね。繰り返せるようになりたいですね。お客さんに伝わらないと意味が無いので。
夕暮れ社弱男ユニット演劇公演「ハイアガール」
公演時期:2016/1/20~24。会場:京都芸術センター講堂。

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穐月

わたしだけの観客

__ 
穐月さんは、どんな表現が出来るようになりたいですか?
穐月 
演劇をやるんだったらありえない身体になりたくって。何があったらそうなるの、でも何かわかるわそういう感じみたいな。ある動きが過剰になるとか、多分そういう事でいいんですけど。
__ 
なぜそうなりたいんでしょうか?
穐月 
何でですかね・・・演劇だからですかね?
__ 
子供の頃はどんな子供でしたか?
穐月 
さっきの質問何でしたっけ?
__ 
「どんな表現が出来るようになりたいですか?」
穐月 
ああ、答えられなくてすみません。子供の頃は演劇が嫌いだったんですよ。おやこ劇場とかありましたよね。見にいかされる奴。ああいうのが凄い嫌いで。他の子達と楽しく観てる空間がイヤで、自分は絶対、騒ぎたくないみたいな気持ち。大人になって演劇を見るようになってからはそういうのは薄れていったんですけど、でも完全に無くしてはいけないと思っています、嫌いだという感覚も。
__ 
京都造形大に入ったのはどのような理由でしたか。
穐月 
芸大に入りたくって画塾に通って、でも何を学べばいいのか分からなくて。画塾の先生に「演劇は総合芸術だからきっと楽しいよ」と言われてそのまま。演劇なんて何も知らないまま入って。でも大学で見させられた演劇がめちゃくちゃカッコいい奴ばっかりで。演劇ってこういうのもあるんだ知らなかったって。地点とかコンテンポラリーダンスとか教えてもらって。
__ 
ご自身を揺さぶった価値観との出会い、ですね。それに出会えた事を、どう思っていますか?
穐月 
感謝しています。
__ 
私はどうだろう・・・最近フルハウスを見てるんですけど、家族の話って面白いですよね。アメリカの家庭なんですけど、どこかお互いへの距離とか見えない部分も作り込まれてる。
穐月 
面白いですよねフルハウス。私、アルフも好きでした。観客の声が聞こえるのがいいですよね。「オー」とか「フー」とか。
__ 
あれ、よく聞いていると、実際のお客さんの声っぽいんですよ。完パケしたものを上映して、そのリアクションを録ってるっぽいんですよどうも。
穐月 
日本にはない発想ですね。面白いですよね。
__ 
少なくとも、日本のドラマではあの演出は想像も出来ない。なぜかは分かりませんが。穐月さんは、その完パケ上映に招かれていたらどんな感じ?
穐月 
あー・・・まあ、外国人の反応は違いますからね。でも、今行ったら「フー」って言うと思います。ちっちゃい頃は出来なかったと思います(フルハウス好きでしたけどね当時から)。子供の頃は本当に乗れなくて。ノってる自分が嫌いでしたね。すごく、自分を傍観してるところがあって。今は大丈夫です。この間もライブに行ってすごくノれたし。変わってきましたね、観客である事に慣れてきた。

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穐月

質問 近藤 和見さんから 穐月 萌さんへ

__ 
前回インタビューさせていただきました、VOGAの近藤和見さんから質問をいただいてきております。「僕はよく、海に行く妄想をするのですが、海と山どちらを思い浮かべますか?」
穐月 
あ、山ですかね。私、小さい頃から山によく行ってたので。父と母が山登りが趣味なので、連れられて行ってました。
__ 
どんな思い出がありますか?
穐月 
初日の出を見に雪山に行くのが恒例で、だから紅白歌合戦を見た事が無くて。紅白観てみたいなと思ってました。あと、雪山に行く格好が自分的にはダサくて、家族4人でそういう格好をするのがイヤでした。
__ 
なるほど。
穐月 
でも雪山の景色はすごく綺麗だったので今でも思い出したりします。

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穐月

似合わない事もやってみたい

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
穐月 
ええと、ノープランですね。色んな作品に出れたら良いなと思ってます。バリバリのお芝居とかもやってみたいし、ダンスもやってみたいです。似合わない事もやってみたいなと。

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穐月

ヘアバンド

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
穐月 
ありがとうございます。(開ける)うわ、可愛い。実用的。
__ 
宜しければお使いください。

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穐月

【5月31日(火)追加公演決定!】VOGA第12回本公演 Social walk

__ 
石清水八幡宮の野外特設舞台前にやってまいりました。本日はVOGA第12回本公演 Social walkが公演間近という事で、脚本・演出・音楽の近藤和見さんにお話を伺います。今日はお忙しい中、お時間を頂き、本当にありがとうございます。
近藤 
よろしくお願いします。
__ 
先ほど、少しだけ稽古を拝見致しました。役者さんだけの稽古でしたが、振付を細かくチューニングしている様子でした。
近藤 
二月ほど前からこの作品の稽古を始めました。最初の1ヶ月は身体表現の稽古を行ったんですよ。身体の素地と、テンポの感覚を身につけて貰わないと振付が出来ないので。基本的な考え方としては、劇団員は大衆食堂のウナギではなくて、専門店のウナギになってほしいんですよね。
__ 
専門的な役者を望んでいる。
近藤 
まず、「VOGAの役者」にしたいんですよね。その為の訓練を脳と身体で吸収したら、どこでも通用するという自負心があります。これをまず一月やったら、別人みたいになっているんです。身体を入り口にして脳が変わっていく。みんな、脳を入り口にして身体が変わっていくと思っているのかもしれないけど。
VOGA
関西を中心に活動する舞台芸術集団。1997年、劇団維新派に在籍中、草壁カゲロヲ・近藤和見が結成。以来、動員1000人規模の本公演を重ねる。古典的物語や現代舞台に必須とされる身体表現も行いつつも、その、演出手法・劇場空間設定の異質さで、他の小劇場劇団や商業劇のいずれとも違う舞台表現が特徴。近年では東西、出身母体の垣根を越えた実力派役者が多数参加する。公演は観客にとって一種の『旅』と考え、「日常から地続きの非日常へ迎え入れる」ことをコンセプトとし、一般劇場の他、神社・教会・現代美術館・ライブハウス・造船所跡地など、屋内、野外を問わず上演。野外公演ではスタッフ・役者、総勢約70名超の一座が組まれ表現者交流のターミナルとしても機能している。2011 年8月より劇団名をLowo=Tar=Voga(ロヲ=タァル=ヴォガ)からVOGA(ヴォガ)に変更。2015年現在、結成19年目を迎えた。(公式サイトより)
VOGA第12回本公演 Social walk
【5月31日(火)追加公演決定!】
<Social walk作品モチーフ>
人は生まれ、社会の中の様々なものと関わりながら歩んで行く。
石清水の荘厳な杜の力を借りて、ひとりの少年の歩みをモチーフにして描く幻想的な叙情詩。音・光・動作・言葉、VOGAが描き出す風景の連なりを感じとって頂ければ幸いです。

□開催日時
2016年5月20日(金) ~5月31日(火)
全日OPEN 18:00 START 19:00
※5月25日26日休演
□会場
京都・石清水八幡宮野外特設舞台
□キャスト&スタッフ
脚本・演出・音楽:近藤 和見
キャスト:
草壁 カゲロヲ/タナカ・G・ツヨシ
足立 昌弥/荒木 輝/野島 健矢
うめいまほ/渡辺 綾子/西村 麻生/小森 ちひろ/長谷川 りか/今道 鮎美
岩本 苑子/石川 信子/日下 七海/ままれ(チムチムサービス)
前田 愛美/香川 由依/佐藤 敦子/清水 風花/西尾 友希

演技をしてしまう身体

__ 
つまり、VOGAのメソッドを身につけてほしいのですね。
近藤 
僕らのメソッドというよりは、一つの体系の中で思考停止をしてほしくない。芝居とは、演技とはってこうやん、みたいな。イマジネーションの仕事をするのであれば、それでは成長しない。そういう思考停止をしない舞台人を集めたいなと思っています。僕は、思考停止してるなと思ったらめちゃくちゃ怒りますね。考 えない事が罪なんです。アホでもいいんですよ、ヘタでもいい、考えてやり続けないといけない。基本、それしか言ってないですね。大まかに言うと。
__ 
私が最近、仕事で考えている事と同じような気がします。依頼された仕事について考え抜いて、お客さんとイメージを合わせて、それで作らないと、良いものは出来ない。
近藤 
カウンターパートナーという考え方があります。クライアントさん側とこちらの能力が対等な状態を言うんですけど、演劇となるとお客さんの方が賢いんですよね。余計な演技をしてしまう役者がいたとして、その人は要らない事ばっかりしてるけど、お客さんにはもう伝わってるでそれはと。むしろお客さんをバカにしているんですよね。お客さんが感想で「分かりにくかった」と仰る事もあるけど、僕はそちらの方が良いと思うんです。静かに胸に、ぐっと秘めて帰ってくれるような演劇が作りたいと思っています。
__ 
お客さんの心に沈むような。

道すがら

近藤 
僕は、印象に残る、大きな筋を強く意識して作っていて。細かい身体の使い方等のディテールは細かく指定しているんですけど、基本的には、何年か後にハッと思い出すような絵を作りたいんですよ。その為には、順序とか流れが残ってないと思い出せない。男山山上線のケーブルカーに乗った辺りからその流れは始まっていて、駅に着くと空気がスッと変わって、「何かいい場所に来たのかもしれない」と、安心感と不安感の入り交じる状態になる。
__ 
私もここに来るのは初めてなんですが、明らかに空気の成り立ち違いますね。
近藤 
不思議な場所だと思います。僕はここ、日本でも5本の指に入る野外劇の環境だと思っています。そこまで辺鄙じゃないですし、意外と近い。大阪からだと、京都市のどこかに行くよりも早いです。歩かなくて済むのがいいですよね。そして何より、音を出してもいい。最後に、誰にでも貸している訳じゃない。
__ 
というと。
近藤 
維新派の松本さんと喋っていて、どうやってこんなところを借りられたんだ、と。松本さんは八幡市とゆかりが深いんですけど、ここは「初めから借りれるものだと思ったことがない」と。それぐらい格式が高い場所なんですね、本来。僕も怖いもの知らずで、お話をさせて頂きました。吉田神社の宮司の方に口添えしていただいたんですよ。「ウチが毎年困ってる企画がある」って(笑う)。石清水八幡宮の方には前回も僕らの取り組みを見ていただいて、今回もやっていただいて結構です、と仰っていただきました。今回のテーマでもあるんですが、縁ですね。

金の雨が降る

__ 
この石清水八幡宮、さきほども申し上げましたが空気が特別な感じがしますね。さっきから何か、金色のものが降ってきてますし。ご自身としては、ここはどんな場所ですか?
近藤 
野外劇という事で、何も無い場所に舞台を建てるんですけど、僕の中ではこの舞台は母胎なんですね。それは喩えではなく母胎で、ここで生まれたイメージが、お客さんの中に産み落とされる。最後にはここには、釘一本残らずに去る。そして、来年もいい子を産んでね、みたいな。
__ 
非常に神聖な場所という気がしてきました。
近藤 
ここの夜、一人でぽつねんと作業をしていると、ざわざわと、人ならぬものが蠢いておるなあ、と。神域だからかもしれません。スピリチュアルな話はおいといて、イメージを喚起してくれる場所なんですよね。お客さんにも、この場所で舞台を作る意味は感じてもらっているんですね。何か、しんどいな、辛いなと思っていても、弱音は吐けへんな、という感じはします。
__ 
半分近くの方は、ここを訪れるのが初めてかもしれませんね。どんな思いを抱くんだろう。
近藤 
八割ぐらいの方は初めてだと思います。僕らがその最初になれる。僕らの作品がどう広がるかは分からないですけどね。ここで演劇を始めた人もいる。
__ 
そう、VOGAの紹介文に「表現者交流のターミナル」とありましたね。多種多様な方が出会う場所ですね。
近藤 
もちろん、繋がりを求めて芝居を作ったらいけないと思うんですけどね、結果的には繋がりになるんですよ、表現活動って。本能として繋がるというのが無かったらあかんし、逆に、繋がらないという可能性も追求せなあかんのかな、と思います。陰と陽を理解しておかないといけないのかもしれない。

「町をお散歩」

__ 
「Social walk」、非常に示唆的なタイトルですね。
近藤 
感覚的には、意訳すると「町をお散歩」なんですよ。世間をお散歩するという感じで。
__ 
誰が歩くのでしょうか。
近藤 
舞台上でみんないっぱい歩き続けるんですけど、それを見ながら色んな歩き方を目の当たりにして、イメージを引き連れて行きたいなというのがあります。「Social」、社会行為は他者がいないと成立しない。関係性に対して何かを投げかける。お客さんに、改めて世間の姿を表現するというイメージがあります。それも、ラジカルに。それから、意趣返しの意もあります。
__ 
意趣返し。
近藤 
ここ石清水八幡宮で上演するという事で、なにか奉納する演劇というイメージが持たれているのかもしれない。刺激のないものをイメージされる人がいるかもしれないけど、違うよ、と。結構、そういう挑戦的な姿勢もあります。
__ 
お客さんも日常を離れる小冒険をするし、VOGAも挑戦してるんですね。石清水八幡宮さんもそうかも・・・。
近藤 
それと、ルソーが社会契約論で言っているんですが、元々みんな何も所有しておらず同じ者なんです。が、「誰もが利益のある暮らしを望んでいる」という前提がある事にされていて、正当さの元に、モノを所有するためのルールが生まれ、それを前提にした世界が成り立っている。今回の主人公は少年なんですけど、彼らはまだ所有するという感覚を持っていない。彼らと大人のルールで動いている世間の対比。その中を優雅に、あるいは苦しみながら歩いている。そういう話なんですよね。
__ 
優雅に、そして苦しみながら散歩する。

いま改めて、丁寧さについて

__ 
この作品で、出演者にどんな事を望んでいますか?
近藤 
やっぱり、丁寧に表現してほしいですね。「丁寧に」って難しい言葉ですがまさに社会的な行為を指しているんですね。自分だけが住んでいる部屋なら散らかっていても良い。なぜなら他者がいないから。他者が存在する社会行為であれば整理をしないといけない。舞台は正に社会行為だと考えているんです。カンパニーは社会の公器だと思っていて、そうでなければ丁寧さは失われる。他者と関係を持つ、社会行為を行う公器。だから何をしても良いという事はなくて、少なくとも関わっている人たち、内部の人の親族一同、納得してもらえる作品じゃないといけない。出演している人に求める丁寧さは、そもそも自分が選んだ事をやっている自己肯定を持ってもらいたいです。それを持つと、人にやらされているというレベルから脱却できるから。そこが大事だと思うんですね。世の中、そこで分かれるんじゃないかなと思うんですね。
__ 
そうですね。言われて作っただけのものと、考え抜いて疑い抜いて作ったものは全然違いますよね。
近藤 
そういう意味での丁寧さで作り続けると、世の中とか周りに流されにくい人になっていくと思うんですよね。そうなると、わざわざこんなめんどくさい、リスキーな野外公演が出来るようになります(笑う)。

誰に見て欲しいですか?

近藤 
正直、いまは難しい時代で。興味を保たない事には持たなくて良い時代だと思うんですね。でも、見てみたら良いなと思える作品だと思います。来年は来ないかもしれない。でも、10年後にはまた来てくれるかもしれない。この場所で公演をやる事の意味を感じています。だからこそ、場所の価値というのはきっと高いと思います。偶然の価値の高さは外国の方は捉え方が違うみたいで。神の仕業というのかな、ビリヤードで難しいボールがポケットに入ったぐらいでは奇蹟とは呼ばない。隣のビルから投げ込まれたボールがポケットに入ったら奇蹟に近い、とか。偶然の価値が高いお客さんが来てくれたら、真の縁やと思いますね。絶対ありえへんようなお客さん。もちろん、いつも見てくれるお客さんには感謝です。
__ 
この石清水八幡宮だからこそ。
近藤 
この場所だからこそ、そんなお客さんも多いのかもしれませんよ。外から見えますからね。
__ 
季節がめぐるたびに思い出すかもしれませんね。
近藤 
今回から10年続けるつもりで、今回は最初の1年目。一番シンプルな形でお客さんに紹介したいと思います。
__ 
素晴らしいと思います。例年行事として定着してほしいです。

質問 山中 秀一さんから 近藤 和見さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂きました、津あけぼの座劇場のテクニカルディレクター、山中秀一さんから質問を頂いてきております。「ぜひスマートフォンに入れておきたいアプリを教えて下さい」。
近藤 
コンパスは必ず入れますね。実は今回の作品、方位を意識して振付をしているんですよ。南を向いてセリフを言って、とか、そこは西を見てほしい、とか。まあ、地球でやってるから。
__ 
素晴らしい。そうですね、劇場内ではなく地球でやってますね。

どんなお客さんに見て欲しいですか?

近藤 
野外劇、もっと言うなら演劇を体験をしたことの無い方。一回、騙されたと思ってみてもらいたいと思います。
__ 
夜のピクニックだと思えばいいですね。意外と近いですし。
近藤 
思い出に残る体験になると思います。僕らの公演に10年前に来てくださった方が、その時の公演を昨日の事のように思い出して下さるんです。
__ 
それぐらいの絵を実現させる流れが、全体を通してこの特別な地に存在している。舞台は役者が自分で選びとった仕事で構成されていて、お客さんの中にイメージとして産み落とされる。
近藤 
見た事で、お客さん自身が少し変わったらいいなと思います。出来るだけ良い影響として。作品が終わった後に、各々の心の中に何かが残されなかったら悲しいですよね。見終わったあと、少し茫然として帰るような、そんな作品が作りたい。
__ 
はい。
近藤 
今回僕は、自分が作ったものを見れる立場にいるんですよ。出演していないから。自分の心に素直になって、これは良いものが出来たと感じています。そもそも、自分の心が動かない作品を見せるのは失礼かなと思うんです。お客さんがどう思うかなんて分からないですけど、自分の心が動いたものであればオススメ出来る芝居です。格闘ですね、作品作りは。技と身体は伝えられるけど、心は伝えにくい。
__ 
そうですね。
近藤 
この間も熊本で震災があって。そんな中僕らは芝居なんか作っているけれど、それを許す社会ではあるんですよ。ありがたいことにね。その許容に甘えるのではなく、しっかり作るというのが報いだと思うんですよ。しっかり、丁寧に仕事する。道徳の授業よりもきっと大切な教育になると思うんですよね。漠然とですけど。作品が面白ければいいや、とは僕はあまり思っていなくて。生きてて甲斐があるな、と実感する場所であってほしい。野外の面白さも、そこにあると思う。僕らがここで見せる生き方や考え方に、お客さんが拍手をしていただくことで、全部報われる。この作品で二十周年を迎えるんですけど、それを一つの区切として、また新たなスタートを切る気分です。
__ 
ありがとうございます。

西陣織のネクタイ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。どうぞ。
近藤 
ありがとうございます。
__ 
西陣織のネクタイです。
近藤 
いいですね。こう着けるのかな。
__ 
おお!とても似合っています。

このしたPosition!!(京都・三重)リーディング公演 安部公房「人間そっくり」 京都・名古屋・長野(上田)ツアー

__ 
今日は津あけぼの座テクニカルディレクターの山中さんにお話を伺います。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。最近、山中さんはいかがお過ごしでしょうか。
山中 
よろしくお願いします。実は今、津市から30分ぐらい離れたところに来ている水族館劇場に出演しています。最初は設営のお手伝いだけのつもりだったのに、話の流れで出演する事になったんですよ。今日は休演日なので、抜け出してきました。
__ 
水族館劇場、噂だけはかねがね伺っていました。観たいと思ってたんです。野外劇なんですよね。
山中 
野外劇場なんですが、とにかく建込みが凄くて。巨大テントを建立し、大量の水が振り、飛行機が飛んだり、客席を増設したり。しかも連日超満員です。毎日台本が増えて、同時にセットも増えていくんです、フェスティバルみたいです。
__ 
その間を縫って、京都に稽古に来られたんですね。来月から三都市ツアーが始まる「人間そっくり」。今日は今回の公演についてのお話を伺えればと思います。
劇団Hi!Position!!
劇作家・演出家・ワークショップデザイナーの油田晃が中心となり2008年2月に結成。以降、津あけぼの座の専属劇団として公演を重ねる。三重県でも希少な「現代演劇の上演を行う」ことを前面に押し出し、演劇の持つ可能性、演劇と社会の接点を探っていくことを劇団の目標とする。劇団システムでは珍しい、油田晃・橋本純司の2名の劇作家・演出家が所属。演劇を作る過程におけるコミュニケーションのメソッドを用いてアウトリーチ活動やワークショップ活動、隔月ペースで名作や古典を舞台上でリーディングする「読み会」も行っている。(こりっちより)
このしたPosition!!(京都・三重)リーディング公演 安部公房「人間そっくり」 京都・名古屋・長野(上田)ツアー
作:安部公房
構成:油田 晃(劇団Hi!Position!!)
演出:山口浩章(このしたやみ)
出演
二口大学(このしたやみ)
広田ゆうみ(このしたやみ)
山中秀太郎(劇団Hi!Position!!)

【京都公演】
2016年6月11日(土)・12日(日)
会場:スペース・イサン
【名古屋公演】
2016年7月1日(金)・2日(土)
【長野(上田)公演】
2016年10月1日(土)・2日(日)

入場料
一般前売・予約・当日共 2000円
U-22割(22歳以下)前売・予約・当日共 1000円