ボールのはじまり

__ 
であれば、お客さんがフィールドの上で価値のあるプレイをするにはどうすればいいんだろう?もちろんフィールドに出てもらう事は必要ですが、それ以降、自分の持っている能力であるとか、他の選手(俳優ですね)を信じて走り続けるだとか、パスをトラップする力だとか、特定のポイントに走りこむ決断力だとか。結局は、俳優と観客が、信頼し合える関係性を作る事なんだろうか。一体、それには何が必要だろうか?
長南 
難しいな。
__ 
もちろん、色々な考え方があるとは思いますが。
長南 
僕は、傲慢なのかもしれないですけど、お金を払って席に着いていただいている時点で、信頼する土台は出来ているんじゃないかと思うんですよね。例えば、今からこの喫茶店で何かパフォーマンスをしたところで、他のお客さんにとっては信じられないと思うんですよね。何か変な奴がいる、という状況が出来上がるだけ。でも、これから演劇をします、という準備をしたのなら、そのパフォーマンスが可能になると思うんです。チラシを見て想像する事、劇場に足を運んだこと、チケットにお金を払ったこと。それが、演劇を信じられる土台を作るんじゃないかと思うんです。
__ 
なるほど。
長南 
例えば小劇場なら、お客さんを信じさせるための土台作りを舞台・客席から遊べると思うんですよね。カフェを舞台にするお芝居をするなら、劇場のドアを開けた時にカランコロンと音をならすとか。お客さんが観に来る時点で、信じる気持ちはある。それをどこまで増幅してあげられるか、だと思うんですよね。
__ 
契約があるから。
長南 
そうですね・・・言葉の解釈の違いなんですが、僕のなかでは、それは契約とは少し違うと思っています。お客さんはwantを持っている。願望というか希望というか、見せて欲しいというワクワク感。小学生の言葉みたいですけど、それがあるから、それが支えてくれるから俳優が居られるんだと思っているんです。甘い考えかもしれないですけど。
__ 
願い。それは私の中では「祈り」かな。その観たいという祈りに応える為に、俳優は何をすべきなのか?どう思われますか?
長南 
難しいですね。
__ 
私は「犠牲」を以って応えるのが俳優だと思う。・・・。
長南 
支払う。
__ 
例えば、犠牲を支払わないと出来ない演技もある。どこかから借りてきたみたいな演技には誰も用はないでしょう。面白い演技とは何を指すんだろうか。それは俳優個人が自分の何かを支払って手に入れるもので、それは、お客さんには支払いの重さがきっと分かる。
長南 
何だか、支払う支払わないというのは数学的だなあと思って。凄く分かります、僕も大学が理系だったので。その感覚がいま自分にあるかどうかは置いといて(今は掴めないところにある気がするんですけど)ちゃんと、俳優の胸が痛くなるかならないか、というところだと思うんですよね。それが支払うというところかもしれないですね。あの、支払うという言葉がネガティブに聞こえてしまったので、ポジティブな言葉で捉え直せないかと思って。例えば恋愛のお芝居があったら、ウソでフィクションで、舞台にでっちあげられた恋愛だけども、板の上に立っている二人は、相手を好きになっているはずなんですよ。僕は単純なので。でも終わったらウソになる。でもその時の高揚は、実感として胸に残っている。それをお客さんには、面白く見られたらいいな、興味を持ってくれたらいいなと思います。言葉を借りれば、支払っていないのは、好きなフリをしている演技。それはバレると思います。ある意味本当に、自分の心を動かさない限り、お客さんの心は動かない。僕はどちらかというと、技術よりパッションを愛しているほうなので。
__ 
パッション。

3つの言葉

長南 
どちらかというと技術より気持ちの事をよく言うんですよね。学生劇団で、後輩へのダメ出しが効く時と効かない時があるんですよ。僕の言葉は本番前の方が良いみたいで、気持ちの面の話が良いらしいんですよ。
__ 
パッションをより伝えられるようにするには技術的な面での誘導も必要だろうと思うんですが、その上で何があるべきなんでしょうか。
長南 
僕が演劇を見る時には、3つの感想があるんです。「良いな」「すげえ」「分かる」の3つ。
__ 
ええ。
長南 
「良いな」は憧れ、「すげえ」は尊敬、「分かる」は共感なんですよ。それらをお客さんに言わせた時、お客さんの心を震わせているんです、きっと。僕は少女漫画好きなので恋愛に置き換えがちなんですけど、良い少女漫画ははそういう風に言わせてくれるんです。理想的なそんな道筋を、お客さんと一緒に連れ立っていけるような仕事が出来る俳優が良いと思っています。そして、その真逆でも良いと思うんです。「分からん!」と言わせる。「絶対嫌」と言わせる。なぜそう思わせるかというと、そのお客さんの人生に被っている部分があるからなんですよ。自分はそれを選ばなかった、それを思い起こさせるようでもありたい。一番辛いのは、「へー」とただ無関心に思わせてしまうことだと思うんです。

遠くへ

長南 
僕は何かを見ている時には、感覚的言語なんですけど、遠くに行きたいと思うんです。

カチカンが呼んでいる

__ 
観客個人の価値観を呼び出す一瞬がある。そんな芝居こそが、付き合う芝居と言えるのかもしれない。
長南 
自分を投影させる。それはきっと可能なことなはずで、人生が違っていても、大事にしていることは何かしら近いと思うんですよ。で、全く理解できひん劇団にはお客さんは行かないし、だからこそ劇団はこんなに数多く存在している。ファン層というものもあるんですよね、きっと。
__ 
C言語やったことあります?
長南 
あります。
__ 
不便ですよねあれ。エントリーポイントの前に関数を宣言しないとコンパイル出来なくて、定義はmain()が終わった後にしないといけない。JavaやPHPではそんな構成は考えなくても良い。でも、お客さんが価値観を呼び出すタイミングは、C言語みたいに、芝居が始まる前なのかもしれない。
長南 
お客さんの価値観を呼び出した、という事は、その人自身がそこにいるという事で、そこから一緒にどこかに行けるという事かもしれませんね。
__ 
そういう風に出会えればいい。しかし、俳優が観客を呼び覚ましてくれるのは、実は本当に稀有な事なんですよ。俳優の姿というのは面白いもので、観客がその姿を「見れる」のは、彼が姿を現したその時一瞬限りだ。それはすぐ幻滅し、再生出来ない。「サーファーは、崩れる波にしか乗ることは出来ない」。その一瞬に出会うことの出来た奇跡。逆に言うと、それが、演劇の持っている色々な価値の一つなんじゃないかなと思う。
長南 
そうですね。でも、出会わせられれば最高じゃないですか。その平均点や確率を高められるのが技術だと思うんです。でも、その到達点を技術でやってはいけないんだと思うんです。
__ 
挑戦的な発言ですね。
長南 
いえ、その波の話で言うなら、波とサーファーが最高の到達点だとするなら、どうしても生物はぶれがある。そのブレを調整するために技術がある。舞台に立つにしても、例えば昨日歯を磨いているかいないかだけで何かしらが違うハズなんですよ。そのブレを無視出来るぐらい、水準を持っていくのに技術は必要、お芝居の時間を組み立てるためには。でも、高揚していく気持ちを技術ですべて補おうとするとそれはフィクションなんですよ。それこそ支払いの話だと思うんです。技術は時間を支払って得るもので、高揚に対して支払うのは気持ちなのかな、と思います。支払うというより、使う、動かすということかなと思います。

悪い芝居「メロメロたち」

__ 
さて、悪い芝居「メロメロたち」。7月からということで、あと4ヶ月しかありませんね。意気込みを教えて下さいませんでしょうか。
長南 
僕もまだ、内容とかは詳しく聞かされていないんです。でも、遠くに行けそうな気がします。どこまででも行ける要素があるなあ、と思っています。
__ 
どこまでも行ける要素。
長南 
お客さんに向けて言うべき意気込みというよりも、ワクワクしている気持ちがただ強いんです。お客さんと、連れ立って行ければと思うんです。
__ 
動かないロードムービーという触れ込みが気になりますよね。
長南 
想像力でどこまで行けるんだろう、みたいなことなのかなって。多分恋愛の話が絡むんですけど、人間誰しも通っている道だからこそ、誰しもの気持ちに触れることの出来ることなんじゃないか。「いいな」と思ってくれるお客さんがいると思うし、いたら、僕も「いいな」と思っているし、そういうお客さんと一緒にどこまでも行きたいし、みたいな。なんか上手く言えないなあ。
__ 
それは共感に限界があるからじゃないですか?
長南 
限界か・・・話、ちょっと変えていいですか?
__ 
もちろんです。
長南 
僕、「ウォールフラワー」という映画が好きで。主人公の男の子がスクールカーストの最下層で毎日冴えない学生生活を送っているんですけど、ある日学校で出会った兄妹が自由奔放でスクールカーストなんかに属してなくて、ある日連れ立って外に飛び出そうとするんです。その時にドライブのシーンがあって、妹の方が自分の好きな音楽が流れてきて気分が上がってトラックの荷台で立ち上がって手を広げながらトンネルを抜けるシーンがあったんです。主人公はそれをずっと眺めてて、どうしたと言われて、「無限を感じる」と言ったんです。僕は「ああそうだよ、僕もその為に芝居してる!」って叫んだんですね心の中で。共感って限界はあるかもしれないけれど、これからも歩んでいける余白があるからこそ、どこまでも行けると思うんですよね。それこそ空白がいっぱいある僕らの人生ですけど、そうだよ、そうなっていって欲しいんだよ、というところに無限を感じるんですよね。僕はそこにワクワクを感じるんです。
__ 
ワクワクする要素、か。
長南 
で、人一人の想像力ではどこにも行けないと思うんですよね。自分一人の価値観だけで考えるのは限界がある。僕は、誰かが連れ出してくれることに意義があると思う。別の人だからこそ、自分もどこまでも行けるかもしれない、こうなりたい、という憧れだとか。無限に可能性があるんじゃないかと思うんです。
__ 
トラックの荷台に乗って、無限を感じる。言葉にもならない言葉ですね。
長南 
僕は、何かを与えられるような人間ではないから、誰かに支えてもらわないと生きて行けないと思う。色んな人がいるから、支えてもらっていると感じている一年でした。だからこそ、お客さんと一緒に、知らない場所に行きたいんです。
__ 
その上で問い直したいと思うんですが、お客さんに、そういう「連れ立ってくれる人」として認められるにはどうすればいいのか?
長南 
ああ、どうなんですかね・・・。雑にパッと思いついた事を言うとですけど、汗をかく事ですかね。
__ 
なるほど。
長南 
それは凄くパッション的な事なんですけど、それは気持ちだと思うんです。それから、技術的な事を言うなら違和感を感じさせない事だと思います。地に足を付けて、当然の重心で立って。ちゃんと、こう・・・。汗をかく?いや、もしかしたら、その光景を見て喋っていられるかどうか、なのかもしれません。お客さんに対してのアプローチは僕も全然分かってないですけど、セリフを言う事よりも、聞く事が大事なのかもしれない。誰でもがある種分かっている事かもしれないですけど。どうしても2時間という枠組があるから、そこに没頭させるために、その役に影響を与える相手役の言葉にどれだけ素直に耳を傾けられるか、だと思うんですよね。それが無かったら、お客さんにとっては嘘になるんだと思います。
__ 
そうですね、嘘のある芝居では、人としては認められない。汗も同じですね。
長南 
いま、「そうですね」と言ってもらえて僕はホッとしたんですけど、その反応を舞台上でも出来るようになりたい。それが、お客さんに感じてもらう事に繋がると思います。
悪い芝居vol.18「メロメロたち」
【作・演出】山崎彬
【音楽】岡田太郎

【出演】
植田順平 渡邊りょう 中西柚貴 呉城久美
北岸淳生 畑中華香 長南洸生 岡田太郎
山崎彬
(以上、悪い芝居)

石塚朱莉(NMB48)
大久保祥太郎(D-BOYS)
アツム(ワンダフルボーイズ)

【会場・日程】
●大阪公演
HEP HALL
2016年7月15日(金)~20日(水)
15日(金) 19:00
16日(土) 13:00/18:00
17日(日) 13:00/18:00
18日(月・祝) 13:00
19日(火) 14:00/19:00
20日(水) 14:00

●東京公演
赤坂RED/THEATER
2016年7月26日(火)~31日(日)
26日(火) 19:00
27日(水) 19:00
28日(木) 14:00/19:00
29日(金) 19:00
30日(土) 13:00/18:00
31日(日) 13:00

【チケット】
2016年4月23日、チケット先行発売開始!

●前売
一般 3900円
U25 2900円
高校生以下 2000円

当日券 各500円増

●悪友割(3人以上1組割引)
一般 3500円/人
U25 2500円/人
高校生以下 1000円/人

待つこと

__ 
話を聞く、か。舞台上の俳優にとって、誰かのセリフとか、世界を待つというのが重要だ、みたいな事かな。
長南 
待つ、ですか。それは自分の中にはない言葉でした。素敵ですね、待つって。
__ 
ものすごく大変ですけどね、待つのは。
長南 
それに目の前の人を突き動かすぐらいの言葉を言いながら、お客さんの心もどこかで意識する。

質問 進野 大輔さんから 長南 洸生さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた進野さんから質問を頂いてきております。「好きな漫画を教えて下さい」。進野さん漫画家ですからね。
長南 
ああ、何かな・・・。高校時代は男子校だったんですけど、恋愛に憧れがあって、片っ端から恋愛モノとか少女漫画とかギャルゲーをやってたんです。一番共感して突き動かされたのは「青春攻略本」というあきづき空太さんの描かれた全2巻の漫画でした。男子校の話で、隣の女子校の女の子に毎日ときめいている男子で、毎日、遠いところから紙でコミュニケーションするんです。ロミオとジュリエットみたいな。その子は先輩なんですけど、卒業するまでに告白したいと。その時にめちゃくちゃをやって、全力で駆けていく。そのがむしゃらさに胸を打たれました。

入団の経緯

__ 
悪い芝居入団の経緯を教えて下さい。
長南 
ワクワクしたからですね。
__ 
何に?
長南 
僕が初めてみたのは「キャッチャーインザ闇」でした。開始15分でドキドキさせられて。あっち側に行きたい、想像上じゃなくて、劇団に入って、そこに行ってみたかったんです。

あなたと輝く

__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
長南 
将来どこまで、というのは分からないですけど。必ず、地に足を付けた演技が出来るようになって、人の力を借りて輝くことも自分の力で人を輝かせる事も出来るようになりたいですね。
__ 
なるほどね。
長南 
どうしても、今は自分のことしか見えてないなと思う事が多くて。この人、こんな凄いところあるんやで、みたいな見せ方が出来るようになりたい。
__ 
それは、どうしてそう思われるのですか?
長南 
自分を見てもらえるというのはもちろん幸せだけれど、単純に、自分が好きな人の凄いところを知ってもらいたいんですね、やっぱり。多分僕は、押し上げるよりは、手を繋いで一緒に行こうとするタイプなんです。幼稚な言い方かもしれないですけど。だからいろんな人の踏み台になる演技がしたいですね。他の俳優や、お客さんが遠くに行くための土台だったり。僕がこういう演技や言い方をしたから、もっと高いところに行けたり、だとか。
__ 
引き出す演技ですね。
長南 
それは日常で、みんなしている事かもしれないんですけどね。僕なんかはセリフが用意されていて、読むという事に集中してしまうんですけど、しかも稽古1ヶ月を過ぎると麻痺してきたりして。メリハリを付けて、技術もちゃんと身につけて。
__ 
色んなものを見すぎて退廃した観客というのが居たとして、そんな人でも傑作に立ち会うと、初めて芝居を見て感動している人と同じになるんですよ。その時、みんな心の汗をかいている。汗をかくことを、忘れてはなりませんね。

出会いに行く

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
長南 
うーん、攻めるっていう表現にヒットするかどうか分からないですけど。僕は結構オーディションとかが苦手なんですけど、いっぱい色んな人と知り合って、その人をより知って、自分の事を知ってもらう機会を増やせたらと思っています。売り込むという事じゃなくて、単純に人生で人と知り合うのは楽しいじゃないですか。演劇って自分の人生も投影されるから、自分の人生を豊かにしていけたらな、と思っています。

キウイのバッジ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。
長南 
ああ、ありがとうございます。
__ 
どうぞ。
長南 
可愛い糸・・・凝った包装ですよね。キレイに破りたいなあ。(開ける)可愛い!
__ 
幻の鳥、キウイですね。
長南 
可愛い。何かに付けられるかな。
__ 
男性が付けていて可愛くなり過ぎないものを選んだつもりです。
長南 
嬉しいです。僕もう、可愛いものとか全然付けるんで。

悪い芝居vol.16『スーパーふぃクション』進野大輔の稽古場潜入漫画

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、進野さんはどんな感じでしょうか。
進野 
よろしくお願いします。最近は事務所で漫画を描いています。いまはまだネーム段階なんでお見せ出来るものはないんですけど・・・
__ 
私は進野さんの稽古場レポート漫画、好きですよ。他の作品もぜひ読みたいです。
進野 
ありがとうございます。
__ 
漫画家にインタビューするのはさすがにこれが初めてですね。
進野 
画家の方はいらっしゃいますよね。でも僕、自分を漫画家と名乗って良いのかどうか。場違いじゃないですかね?
__ 
そんなことはないですよ。あのレポート漫画は素晴らしい。色々な稽古場BLOGはありますが、あれは別格。一つのコンテンツとして価値を持っていると思います。売れるレベルだと思っています。なぜなら進野さんの描く似顔絵は愛に溢れている。愛があるから、人の顔のデフォルメをここまで思い切って出来るんじゃないかなあと。それも、表舞台ではない、稽古場での顔。
進野 
やっぱり公演を見に来てもらいたいという気持ちがあって・・・なんだろうな、これを読んだ人が、知らない出演者の人となりやキャラクターを好きになってくれれば嬉しいです。ゴシップとかネタバレとかじゃなくて。今後、また描けたらなと思っています。次の「メロメロたち」で。
__ 
ものすごく楽しみです。
悪い芝居
2004年12月24日、路上パフォーマンスで旗揚げ。京都を拠点にしながら、東京・大阪などでも活動する劇団。メンバーは12名。ぼんやりとした鬱憤から始まる発想を刺激的に勢いよく噴出し、劇世界と現実世界の距離を自在に操作する作風が特徴。「現在でしか、自分たちでしか、この場所でしか表現できないこと」を芯にすえ、中毒性の高い作品を発表し続けている。2009年より、パワープッシュカンパニーとして京都の劇場ARTCOMPLEX1928から2011年まで3年間の支援を受ける。そのパワープッシュカンパニーとしての最初の作品「嘘ツキ、号泣」が第17回OMS戯曲賞佳作を受賞。各メンバーの外部活動や、2011年は、劇団事務所である築80年の京町屋で1ヶ月半26ステージの家屋公演「団欒シューハーリー」を敢行するなど、劇場以外でのパフォーマンスも精力的に行っている。誤解されやすい団体名の由来は、『悪いけど、芝居させてください。の略』と、とても謙遜している。(公式サイトより)
悪い芝居vol.16『スーパーふぃクション』
公演時期:2014/9/11~16(東京公演)、2014/10/21~26(東京公演)。会場:HEP HALL(東京公演)、赤坂 RED THEATER(東京公演)。
悪い芝居vol.16『スーパーふぃクション』進野大輔の稽古場潜入漫画
悪い芝居メンバーの進野大輔が『スーパーふぃクション』稽古場を勝手に漫画化!(サイトより)

デフォルメに必要なもの

__ 
改めて稽古場レポート漫画を見ていて思うんですが、そうそう、この畑中さんがまず似てるんですよね。
進野 
ちょっと練習して、こんな感じかなと思って描いたら案外似てきましたね。
__ 
本当にですね、凄いと思う。山崎さんも似てる。そうそう、我々が理想としている山埼さんではないけれども。このニヤーっと笑った顔。
進野 
この顔は「ひどいなあ」と言われました。そうですね、身内的な愛というか悪意というか。ギッシー(北岸)も、別にそこまで黒くはないけど真っ黒くしたり。
__ 
そして、Sun!!さん。
進野 
客演さんは難しいですね。会ってからそんなに時間が無いので、どこまで特徴を捉えられるか。
__ 
大塚さんと、田中良子さんも似ていますね。デフォルメされながら。
進野 
顔立ちの整っている人ほど難しいですね。一個特徴を持っていたら、そこをデフォルメすると似てくるんですよね。中西柚貴もちょっと下ぶくれにしたり。
__ 
この、山崎さんの丸っこい目の時とか、信じられないぐらい本人を想起させてくれる。
進野 
たまにこういうギョロッとした目をするんですけど、目力ですよね。女の子は可愛く特徴を捉えて。
__ 
この田中良子さんが可愛いんですよね。
進野 
原画、見ますか?
__ 
えっ、いいんですか。

インクが重い

__ 
これが生原稿ですか!こんなの描かれたら、役者は嬉しくてしょうがないと思いますよ。
進野 
ありがとうございます。
__ 
漫画の生原稿自体、見るのは初めてです。貴重な体験です。へえ、ベタの部分って、実際の原稿だとこんな迫力あるんですねー。描き込みも凄い。飲み会のコマとか、料理なんて、具材一つ一つまで分かるレベルで細かく描くなんて。こんな力作、一つのプロモーションとしてめちゃくちゃ価値が高いと思いますよ。公演会場とかに飾ったらガチの人だかりが出来る。そして、もちろんプロモーションとしても大きい価値がありますよね。今の時代、スマートフォンと漫画は相性がいいからなおさらですよ。
進野 
やってて楽しかったです。
__ 
これ、手で触ってていいんですか。
進野 
全然大丈夫です。
__ 
これは価値がある。
進野 
以前劇団のイベントでオークション的なことやったんですけどそれに出そうかと思っていました。
__ 
6000円くらい行きますよ。
進野 
あはは。

その場にいると和む人

__ 
進野さんは悪い芝居の何なのか今ひとつ掴めないですよね。
進野 
何で残ってるか分からないですからね。漫画描きたいんならやめればいいのに劇団にいる。もちろん何もしてない訳じゃなくて、美術を手伝ったりだとか、小道具作ったり稽古場を取ったりとかは僕がやってるんですけど。
__ 
裏方ではあるんですね。
進野 
というか、演出助手というか・・・山崎さん曰く友達。
__ 
「友達」。
進野 
最初は劇団員だったんですけどね。役者だったし。
__ 
友達か・・・。その、進野さんのポジションにいる人は好きですよ。
進野 
稽古場とかも、「来る?」みたいな。もちろんチラシのクレジットにも載っているし仕事はちゃんとやるんですけど、本番は転換要員として、裏に付いてます。
__ 
サッカーで言うリベロ、みたいな?そもそもこの事務所の主だし、劇団猫のしゃもりとも仲良いしね。遊撃隊として扱うとパフォーマンスを発揮するタイプなのかもしれませんね。
進野 
だから、共演者の方と仲良くなれるのかもしれませんね。気を使わなくてもいい人、みたいな。
__ 
好かれるスタッフ、というポジションはいいですね。
進野 
山崎さんは、「僕がいると和む」と言ってくれるんですけど、それはどういう意味なのかなあ、と。いてもいなくても成立はするんだけど、おってくれた方が助かる、みたいな感じだったらいいなと思うんですけどね。
__ 
和ませる、に関しては高度なスキルなんで、一人でもそういう人がいたら全く違うと思いますよ。だってその人にしか出来ないんですよ。
進野 
稽古場ってね、張り詰めた雰囲気になりがちだから。稽古場のしゃもりかな。
__ 
稽古場の猫。
進野 
適当に言いましたけど。
__ 
観客席にはそこは伝わらないんだけど、稽古場を保つために重要だと思います。緊張で張り詰めた稽古場の劇団は、長く続かないでしょう。

悪い芝居vol.18「メロメロたち」

__ 
次回公演「メロメロたち」。どんな作品になりそうでしょうか。動かないロードムービーだそうですが。
進野 
実は僕らも、まだ詳しくはまだ分かってない状態なので、ゆっくりと待ってもらったらと思います。NMB48の石塚朱莉さんも出演するんです。どんな公演になるのか僕らも楽しみで。全然違うところから客演さんが来ているんですよ、D-BOYSの大久保祥太郎さん、ワンダフルボーイズのギタリスト、アツムさんも。今度ビジュアル撮影があるんですけど、その時に色々分かるかなと思います。
__ 
ありがとうございます。さて、ロードムービーというと、どんなお話かな。旅行記とはちょっと違いますよね。
進野 
調べたら、旅の行く先々での出会いを描く、みたいなジャンルだそうですね。
__ 
そこで出会う人たち、か。ちなみに進野さんは、ロードムービー的な体験をした事はありますか?
進野 
大学生の頃に群馬県に行きました。
__ 
おお。
進野 
その頃は台本を書いてたんですよ。ある事故を題材にした脚本を書くために、その現場にまで一人で行ったんです。誰も降りないようなバス停に止まって、運転手さんに心配されながら、雪の中民宿を目指して歩いてました。熊が出てもおかしくないような場所で。
__ 
自殺じゃないですか。
進野 
その事故の慰霊碑が近くにあるんで。民宿の人たちはみんな親切にしてくれました。雪がすごくて一人で見に行けない現場の近くまで車で送って下さったりして。旅先で出会った人達のあったかさを感じました。それが僕のロードムービーです。
__ 
グラフィティですね。私の考える寂しさとは無縁で。
悪い芝居vol.18「メロメロたち」
【作・演出】山崎彬
【音楽】岡田太郎

【出演】
植田順平 渡邊りょう 中西柚貴 呉城久美
北岸淳生 畑中華香 長南洸生 岡田太郎
山崎彬
(以上、悪い芝居)

石塚朱莉(NMB48)
大久保祥太郎(D-BOYS)
アツム(ワンダフルボーイズ)

【会場・日程】
●大阪公演
HEP HALL
2016年7月15日(金)~20日(水)
15日(金) 19:00
16日(土) 13:00/18:00
17日(日) 13:00/18:00
18日(月・祝) 13:00
19日(火) 14:00/19:00
20日(水) 14:00

●東京公演
赤坂RED/THEATER
2016年7月26日(火)~31日(日)
26日(火) 19:00
27日(水) 19:00
28日(木) 14:00/19:00
29日(金) 19:00
30日(土) 13:00/18:00
31日(日) 13:00

【チケット】
2016年4月23日、チケット先行発売開始!

●前売
一般 3900円
U25 2900円
高校生以下 2000円

当日券 各500円増

●悪友割(3人以上1組割引)
一般 3500円/人
U25 2500円/人
高校生以下 1000円/人

漫画を描く

進野 
「メロメロたち」の稽古場漫画を描きたいです。それと、漫画賞を獲ろうと思います。昔はこんな、目標を口に出して言うのは恥ずかしいと思ってたんですけど。
__ 
目標を言うだけならタダですからね。
進野 
ええ。
__ 
漫画を描くなんて、誰にでも出来る事じゃないですからね。技術と情熱を感じるし、なんだろう、進野さんはこの絵を描く事が許されている人なんだと思う。Sun!!さんの顔をこんな風に描けるのは進野さんだけだと思うんです。いや、もう、似顔絵的にデフォルメされていながらちょうど良く可愛く描けていて、でも進野さんが見たその人の人となりを感じるんですよ。
進野 
その人に似ないと、と思って描いたわけで。そうですね。僕が描いたらこうなりました、という個性は大事にしています。僕なりに、愛を持って描いたつもりでした。描くのに愛は必要だと思ってます。
__ 
本当に、そうですよね。
進野 
前回は舞台美術と、小道具を作っていたので出来なかったんです。結構忙しくてレポート漫画は描けなかったんですよね。

質問 司辻 有香さんから 進野 大輔さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂きました、司辻さんから質問を頂いてきております。「自己紹介をしてください」。
進野 
どうも進野大輔です。悪い芝居という劇団に所属しています。ゆくゆくは、自分の漫画を描いていきたいと思っています。でも劇団員です。猫が好きです。あんまり思いつかなかった・・・こんなんでいいんですか?

愛嬌、どこからきたか

__ 
進野さんが面白いと思う漫画のポイントは?
進野 
やっぱり、漫画を読む理由って、そのキャラクターにどれだけ魅力を感じる事が出来るかだと思っていて。魅力あるキャラクターを描ければ一番いいと思うんですけど・・・
__ 
デフォルメをして、それでも一つの像としてまとめあげる事。例えばワンピースだと、どのキャラクターにも愛嬌がある。でも、愛嬌ってなんでしょうね。
進野 
その人の積み重ねみたいな部分はあるんちゃいます?やってきた事とか、全部。その積み重ねのどこかに、許される部分があったとして、そこが愛嬌なのかもしれない。
__ 
演劇人には全員愛嬌がある。誰も守ってくれない、お金のないこの業界で続けているんだから、それはやっぱり、愛嬌が宿ると思う。

もっと早く・・・

__ 
悪い芝居の中で、何を作りたいですか?
進野 
一つは、みんなで上に行くために努力をする事。それはまずやっていかないといけないなと思っています。その為には僕自身も、劇団に影響を与えられるようになりたい。漫画を描いて、それで観に来るお客さんが出てきたら。そういう風に力を付けられれば、劇団の恩返しになると思っています。漫画家ってポジションの劇団員が一人おるって、面白いと思うんですよ。大人計画ってそういう傾向があると思うんですけど、それぞれがそれぞれの何かを持っていたら、と思います。僕だったら、それは漫画。
__ 
素晴らしい。ていうかそれはもうそうなっていると思いますけどね。こんな稽古場漫画とか描かれたら、それはもう、座組はテンション上がると思いますよ。だって、これに掛けられ時間を想像するだけで元気になる。
進野 
一枚仕上げるのに何時間掛かっとんねん、という時もありましたからね。描き上げる時はバーっと出来るんですけど。次は、もう少し時間を掛けずに上げられるようにする、とか。
__ 
ああ・・・。
進野 
やっぱりNowなものをお届けしたいと思いますから、例えば4コマにするとか、描き込みの量を減らすとか。この時はどこまでやっていいのか分からなくて、気が済むまで描き込んでました。そもそも細かく描き込むのが好きだし。
__ 
飲み会の料理の皿まで描き込んでるからね。でも、この努力の量を私は愛しています。
進野 
美術科のある高校だったから、それが役に立っていると思います。楽しかったらいいかなあと思って。
__ 
私が言える事じゃないですけど、この手間が、質量ともに伝わってくる稽古場レポートなんて、唯一無二だと思います。これだけで、観に来る動機になってしまうと思うんですよ。