僕がやりたい事

__ 
ところで、そうした事情は、昔と違いますか?
土田 
昔も同じように書いていたと思いますよ。でも、ある時期、やたら三谷幸喜さんの事を聞かれたりしたんです。目指しているんですか、って。
__ 
カテゴライズされていたんですね。
土田 
後藤ひろひと君とかは遊気舍で不条理な笑いをやっててとても支持されていた。でも当時の関西には、例えばシチュエーションがあって、ズレや会話で笑わせるというのはあまり無かったんです。三谷さんは素晴らしいと思います。でも僕がやりたいのは少し違う。なんというか、その辺で、ちょっと反発してた部分はあったかも知れませんね。

敵か味方か、そんな単純な話じゃないのに

__ 
人が人を理解する為の「カテゴライズ」。それはもちろん、みんながある一人に対してそれほどズレなくやっている事ですよね。だからどうしても、認識や対応とかを「合わせる」のが発生し、つまり協調性が、同調性になり、そこには圧力が生まれる。ありますよね、同調圧力。会社で働いているとどうしても。私は定時になった瞬間、どうしても感じてしまうんです。周囲の目を。「自分はこのチームの一員なんだから、みんなが帰る空気になるまで帰ってはいけないんだ」、と思う度に心が軋むんですよ、どうしたら・・・。
土田 
(インタビュアーの)印象を言わせてもらうと、人とのコミュニケーションはそれほど得意な人じゃないんだろうなと思ってたんですよ、でも芝居している人にもそういう人は多いからね。でも芝居を創るにはどうしても協調性というのは必要なんです。だから合せる必要はある。でもね、僕は、大きな枠組みだけを共有して、その中での個々は違ってていい。それが認められる社会であって欲しいとは思う。
__ 
私もそう思います。
土田 
例えば、僕は戸籍が日本にあって、日本のパスポートを使うし、だから「日本人と規定をされる事は嫌でもなんでもない。ただ、そんな僕が「日本ってうっとうしいよね」と話してたりすると、「日本嫌いなんですか、土田さん」って。いや待て待て、そんな単純な話じゃないよ。イギリス留学から戻って来て、イギリスの良い所を話してたら「イギリスの方が好きなんですか?」って。イギリスにも日本にも好きな部分、嫌な部分はある。皆が同じように考えなければいけないとか、踏み絵を踏まされるような、そんな今の世の中はとても怖いんですよね。
__ 
何で攻撃しちゃうんでしょうね。
土田 
例えば何か有名人の不倫報道があったら、もう総攻撃でしょう。「気持ちは分かるよね」とか言ったら叩かれる。でも、気持ちくらい想像すれば分かるじゃないですか。不倫は良くないけれど、まるでイジメのような社会ですよね。最近、どんどん息苦しくなっていっていると思います。
__ 
ネットで「まずい事」を言った人を探して槍玉に上げて、責める、みたいな振る舞いが当たり前のように広く存在している。
土田 
芝居でいつも書こうと思っているのは、簡単に敵味方に分けるな、という事なんですよね。やっぱり違う立場の人に対して、想像して共感する力が弱まっている気がします。テロリストに拘束された日本人ジャーナリストに「自己責任だ」とか。その人だって危ないのを分かって行っている。戦争を無くしたいという思いがあって、ジャーナリストとして真実を伝えようとしている。そういう人もいるから社会は厚みを持つ訳でしょ。私たちだってその恩恵を受けている。ネットというのは極端なので、あれが社会の総意だとは思わないけれど、怖いですよね。ストレスのはけ口みたいで。だから、どんなに楽しい芝居を作っていても、そういう事が頭をよぎります。今回、創ってる芝居も、そういうお話なんですよね。

抜かされても石なんか

__ 
そうですね、ネット上で、みんなで何がしかの不祥事をあげつらうという変なレジャーが定着しちゃいましたね。そして不祥事という言葉自体、誰にとって祥ではないのかという。不倫程度はほっとけよと思うんですよね。
土田 
CMに出ていた人が不倫騒動を起こしたら、スポンサーさんが怒るのは分かるんですよ。でも世間が怒っているのが分からない。
__ 
何故攻撃をするんでしょうね。
土田 
それはもう、弱いものいじめ。これはやっぱり経済の問題も大きくて。日本のGDPが中国に抜かれるって大騒ぎしていた時期、僕はいいじゃないかと思っていた。そもそもあんなに人口が違うんだから、簡単に比べられないでしょう。でもあの大騒ぎは、日本が経済大国という事で自分を支えていたアイデンティティが崩壊して行く、つまり自分が攻撃されたみたいに感じてしまったんでしょうね。個々の人生が充実していたら、そこまで国に自分をアイデンティファイすることもないんだと思うんですけどね。いじめられっ子がもっと弱い奴を探していじめる。どこかで、歯を食いしばって止める奴がいないと。自分は辛くても、人を攻撃するのはやめて。
__ 
人に抜かされて、不安だから攻撃する。
土田 
演劇をやっている若い人に、どういうポジションに行ったらいいのか? みたいな相談を受けるんですよ。もちろん僕だって20代の頃はこうなりたいとか思ったり、人と比べてコンプレックスを抱いたりしましたが、それは間違っている事だと分かってはいたんです。もちろん悩みましたけどね。でも、自分の創りたいものを、モチベーションを失わずに創ることだけが大事なんだと必死で言い聞かせていました。で、MONOで作品を創っていたら、その結果が自然と仕事につながり、TVや映画の脚本を書かせてもらったりした。そうなろうとした訳じゃなくてね。だから、あんまり、“演劇村”の中での地位とか、小劇場スゴロクみたいなものは考えて欲しくないですね。そういう風な競争になると、ライバルが自分を追い抜いていく駒のように思えてしまって、その人を恨むようになっちゃう。
__ 
そうですね。
土田 
コンプレックスはね、いい方向に使わないとダメですよね。いい意味での切磋琢磨だったらいいんですよ。昔、別役実さんが、劇作家協会の集まりについて「人集りの試み」と言ったんですね。人が集まるだけで力が生まれるって。京都もアトリエ劇研がなくなったりするけど、やっぱり演劇人が集まる場所や機会がもっと増えればいいですよね。

役者の動き方

__ 
MONOに出演される役者には、どんな仕事を求めますか?
土田 
役の内側の事に入り込むことはあまり言わないかも知れません。演出の時は、どう見えるかだけを問題にします。間を詰めてくれとか、そこは早く喋ってくれとか、奥に立ってて欲しいとか、とか。役者にはそれぞれ動いたり台詞を言う理由があると思うけど、それは役者がつなげてくれればいい。観客にどう映るのかを判断するのが演出の仕事だと思ってます。だから自分でつなげて動いてくれる人が良いですね。音楽と一緒で、芝居は戯曲という譜面があって、演出家という指揮者がいて。役者は演奏をしているんです。だからまずはきちんとメロディは演奏しないとダメなんです。演劇だけですよ、勝手に個性を出して喋っちゃって、それに味があるなんて言ってるのは。いや、もちろん個性は必要だけど、それは出すものじゃなくて出るものだから。
__ 
では、本番では?ある劇団は「全て必ず稽古通りやれ」、またある劇団は「基本は稽古通りだけど、本番で出てきたものが面白いと思ったらそっちに行っても良い、ぐらいの柔軟さで」と、本番直前に指示されるそうですが。
土田 
難しいですね……。ズルい言い方ですけど両方ありますよね。基本的には稽古通りです。お客さんが笑ってくれたりして、引きずられて行ったりするのはイヤです。笑いは必要ない部分もありますし。ただ、ライブとしては楽しまないといけない。だからノリは変わりますよね。本番期間は毎日、細かい修正を続けています。
__ 
そうですね、ライブですよね、演劇は。
土田 
頭の片隅でお客さんとレスポンスを交わし合っているような感じです。ライブならではのうねりが、やっぱりあるんですね。例えば声のトーンを少し上げたりだとか、そういうこと。稽古をしたときのラインは守りつつ、お客さんを感じながら、ライブならではの高揚を感じる。
__ 
心のどこかでお客さんを感じる。
土田 
落語とかだってそうですよね、お客さんの反応を見て調子を少し変える。芝居も同じ。でも、それぐらいのことです。アドリブは一切認めてないですね。

27年、MONO

__ 
ご自身にとってのMONOとは、どんな存在、どんな場所ですか?
土田 
創りたいものが創れる場所。スタートでありゴールという両義的な存在ですね。劇団があってこそ他の仕事が出来るし、外の仕事で得たものも劇団に持って帰れるし。
__ 
基本でありゴールでもある。
土田 
新しい事をやる場所で、かつ成果を見せられる場所ですね。27年やってますからね。
__ 
松原由希子さんが生まれる前ですからね。
土田 
松原さんもよく言ってます、「生まれる前からやってるんですよねー」。同じく出演者の高橋明日香さんとMONOは同い年ですね、だいたい。

質問 岩田 奈々さんから 土田 英生さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、岩田奈々さんから質問をいただいてきております。「何をしている時に一番幸せを感じますか?」
土田 
決まったものはないです。その時の興味によって変わります。急に絵が描きたいと思ったら絵ばっかり書くし、レザークラフトをと思ったらしばらく革ばっかり。その時に興味あることを熱中してやっている間は幸せです。元々オタク気質なんですよね。社交性のあるオタク。
__ 
そうなんですね。今は何に凝っていますか?
土田 
今はね、写真。初めて一眼レフを買ったんですよ。撮るのって楽しいじゃないですか。まあ、これもすぐ飽きると思いますけど。
__ 
あ、そうなんですか。
土田 
はい。飽きたら、また絵に行って、革に戻って、DIYをやって、また写真に戻って。10個ぐらいの趣味をぐるぐる回るんです。
__ 
私も色々趣味はあるんですけど、どれか一つを極めたいと思いながらも、究極的なところにはなかなか……。
土田 
それでいいと思ってます。受験の時なんかでも、僕は参考書を買うと、最初の10Pぐらいをやって、飽きて次の参考書を買ってた。最後までやらないと身につかないよと言いますけど、最初の10ページを一生懸命やったら、その分の知識はつくんですよ。イギリス留学前の英語の勉強も、そんな感じでした。3週間ぐらいで本をを替えると新鮮なままやれる。もうこれ、自分の性格を熟知しているからね。飽き性であることに悩むこともないです。あ……だけど、MONOはやってますからね、ずっと。MONOと演劇だけですね、飽きずに続けてるのは。

これからのお仕事

__ 
今後、どんな仕事をしていかれたいですか?
土田 
MONOはこれからも続けていくと思いますけど、今後は自分で仕事を作っていかないとなあと思ってます。今までは仕事を待っている状態だったんですね。でも、年齢が上になっていくとそれだけじゃダメなんです。テレビなんかでも一緒にやっていたプロデューサーは管理職になっちゃう。で、現場の若いプロデューサーさんは年上の脚本家じゃなく、更に若い人を求めて行く。だから、待つんじゃなくて、自分でコンテンツを作っていくというようなやり方をしていきたいと思っています。
__ 
というと。
土田 
実は、今までお話を頂いていながらも、やっていなかった仕事があるんですね。例えば書き下ろしの小説を書いてください、とか。だけど日々の忙しさにかまけて中々書けなかったんです。でも、今は自分でコツコツ書いてます。ドラマも企画から立てようと。それを持ち込む。そういう風に、能動的な仕事の仕方をしないとダメだと考えてます。
__ 
そうしたお仕事、拝見出来たら嬉しいです。やりたいと思った事が出来たらそれが一番良いですよね。
土田 
やりたいなと思ったらやってみる。それがすぐお金にならなくても、次の仕事につながったりすすんですよね。
__ 
良いものを作っても売れないけど、お客さんにとって買いやすいものを作れば売れる。売りやすいものは何だろう。土田さんの作品は楽しくて優しくて、でも媚びていない。どこかハードボイルドなんだと思うんです。だから、広い層から求められやすいと思うんですよ、私は。
土田 
いやあ、本当に売れる商品は僕には作れない。例えば小林賢太郎君。彼なんか見てると凄くうまくブランディングしていますよね。作品創りの才能はもちろんだけど、マーケットにどう訴えるかまで分かってる気がする。彼ともそういうことは話すんだけど、観客がね、小林賢太郎を好きである自分を好きになれる、そういう、魅力が彼の活動にはある。そういう能力は僕には全くない。正直に言うと、MONOの作品にはもっと観客が入ってもいいと心の中では思ってます。だけど、爆発的にお客さんが増えるということはなかった。でも逆に、減ってもいないんです、MONOは。関西はお客さんが入らなくなったと聞くけど、この15年くらいはコンスタントに毎回1000人以上は来てくれる。まあ、今のところは、ですけど。それでいいとは思ってるんですけどね。
__ 
ブランディングの話ですが、個人的なエアポケットに入ってくれれば、お客さんはその劇団にはずっと固定で見に来てくれると信じています。人の体験に入り込むみたいなのは、鑑賞体験を分解出来る演劇というメディアでこそやれると思うんですよ。例えば大劇場で、ちょっとした細かい仕草にすら精度が求められるんですよ。特に会話劇なんて。そういう事をやっている人にですね、もっと目を向けられるようにしたいと個人的には思っています。

モチベーションを保つ

__ 
ご自身に何を求めますか?
土田 
常にもっと面白いことをやりたりという、モチベーションを保つ事。これが一番ですね。これが下がっていっちゃったら終わりだと思うので。
__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか。
土田 
どの方向に行くかはわからないですけど、現状維持ではなく、興味が湧いたことをやります。特別、何かを変えようとは思ってないんですけどね。まあ、自分が演劇に興味を持ち続けていられるようにはしておきたいです。

久遠チョコレートの詰め合わせ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。つまらないものですが・・・
土田 
ありがとうございます。何だか立派な箱なんだけど・・・
__ 
どうぞ、ビリビリに破っていただいて。
土田 
いいの? そんなヨーロッパ人みたいなプレゼントのもらい方して。(開ける)あ、いいですね。うわあ、女子だねえ。
__ 
チョコレートです。
土田 
僕は趣味がわりと女子っていわれるんです。おいしそう。
__ 
もし宜しければみなさんでどうぞ。
土田 
はい。独り占めはせず、稽古場に持っていきます。

gate リターンズ2016 短距離男道ミサイル「魁!!男道場」

__ 
こんばんわ。gate リターンズ2016に参加された、仙台に拠点を置く短距離男道ミサイルのみなさんにお話を伺います。今回は本当にお疲れさまでした。まずは、いかがでしたか。
澤野 
よろしくお願いします。短距離男道ミサイルとしては、短期間の滞在制作は本当に初めてだったんです。僕ら結構、劇団での公演というのを重視していたんですね。というのは、本公演に集中して、その創作過程の中で、まず自分たち劇団員が鍛えられるのが大事だと信じてやってきたので。
__ 
今回はどんな発見がありましたか。
加藤 
実は、反省の方が多いと思っています。ミサイルに出演するのが初めての人たちに、自分達の「ヤリ方」を教えるというのは中々出来なかったかな。僕らのテンションにガッチリついてきてもらう、みたいな事がしたかったんですけど、それができたかといえば難しかった。
澤野 
一応、言葉にはできたけど、これまでそういう「ヤリ方」みたいなのは本番をやりながらの共有だったから。逆に言うと、自分達がどういうやり方をしているのかという事も、こういう座組でやることで初めて理解出来た部分があって。もちろん楽しかったですし、貴重な体験だったと思います。今後またこうやって、新しい人とやっていくときの指針になったと思います。
短距離男道ミサイル
ミサイルは、広義には投射体全般を指すが、一般に誘導ミサイルの省略形であり、日本語では、ほぼ誘導ミサイルのことを指す。すなわち目標に向かって誘導を受けるか自立誘導によって自ら進路を変えながら、やはり自らの推進装置によって飛翔していく軍事兵器のことである。(公式サイトより)
パイロット版シアターシリーズ「gateリターンズ2016」
■日時 1月21日(木)19:30(A)◎
1月22日(金)19:30(B)◎
1月23日(土)11:00(A)/16:30(B)☆
1月24日(日)11:00(B)/16:30(A)

(A)=したため/Massachusetts/ユニット美人
(B)=ソノノチ/短距離男道ミサイル/ベビー・ピー

※開場は、開演の30分前です。
※上演時間は約95分を予定しています。
◎21日(木)・22日(金)の終演後はアフタートークを予定。
☆23日(土)16:30のステージでは、岩戸山ほぼ2畳大学「感劇学部」イベントあり。

■会場 KAIKA
■料金 前売1,700円/当日2,000円/セット券3,000円(日時指定・全席自由)


男の色

__ 
今回は仙台から京都までの遠征でしたが、実は先週も大阪で「対ゲキだよ!全員集合!でいらしているんですよね。しかも、本公演サイズの作品で。そちらも拝見しましたが、非常に面白かったです。私が男道の身体に魅力を覚えたのはですね、計算を越えたマッドな、侍的な精神性を感じたんですよね。でも演劇の計算も同時に行っている。そのバランスに、どこかセクシーな魅力を感じたんです。マジでやっているのか不真面目なのか分からない。
澤野 
僕らは「かいけつゾロリ」で言う、『マジメにフマジメ』にやっているんです。下らない事を全力でやるというのは、男の一つの姿だと思っています。誰も認めなくても、自分らはこの道を往くんだという馬鹿さ。そこは、「男とは」という考えを構築するに当たって大切にしていた部分ではあります。それと、基本的にはお客さんにカラッと楽しんでほしいというところがあって。実績とかトシとか関係なく、自分たちはあんまり偉そうにしたくないと思っている所もあります。そんな我々だから、今回の滞在製作で、劇団の役者に何か堆積しているものもあるんだな、という所が確認出来たのはかなり大きかったですね。
__ 
今回の作品、役者の振り切りようが素晴らしかったです。荒々しい、なのに正確さを感じる。そこに、仰る通り堆積されたものを感じます。
澤野 
ここしばらくは原作のある作品作りをしてきて、古典的なテクストに拠ってきたんですが、今回は僕ら自身の原点に立ち返るという事になりました。もちろん、これからも僕らと作品の形は変わり続けていくと思いますが、元々のカラーを再確認出来たというのは大きい経験でした。
対ゲキだよ!全員集合!
【公演時期】大阪公演:2016年1月15日(金)~17日(日)@アトリエS-pace、東京公演:2016年4月1日(金)~3日(日)@こまばアゴラ劇場。

質問 岩田奈々さんから 短距離男道ミサイルさんへ

__ 
前回インタビューさせていただきました、岩田奈々さんです。打ち上げ会場にいらっしゃっているので、直接質問をどうぞ。
岩田 
一番幸せを感じるのはどんな時ですか?
__ 
ちなみに岩田さんは?
岩田 
ああ、あたしはどうなんだろう、でも美味しいものを食べている時は幸せです。それと人と喋っている時、舞台に立っている時、かな。
加藤 
僕は珈琲を淹れている時。
__ 
おお、もしかして豆挽きからですか?
加藤 
焙煎からする事もあります。
__ 
凄いですね。
澤野 
彼は珈琲俳優なんです。
神崎(照明) 
打ち上げの前にバラシが終わったときは嬉しいです。何も吊ってないバトンを見たときは嬉しい。その時の本番が上手くいけばなおさら。
梅山(客演) 
初めて会う人と喋って、この人と会話が通じたなと思った時。愛想笑いとかじゃなくて、何気ない笑いが出来た時が一番幸せですね。友達少ないから・・・。
神崎 
友達なってあげるよ。月3,000円で。
澤野 
Wi-Fiか。
マネージャー 
何だろうなあ。普通にお風呂かな。普段は忘れてるけど、お湯の力って凄いですよね。
__ 
シャワーの水圧イコール幸福度、らしいですね。先日、そんな事を言う人がいました。
澤野 
家族といる時は幸せですね。妻と子供といる時。こういう活動をやっているので中々夫らしいこと・父親らしいことが出来ないから。でもこの間の朝、僕がゴミ出しをしたり灯油を入れて、妻が朝ご飯を作っていて子供が玩具で遊んでいる、という風景が久々にあって。不意に泣けてきました。歳とったなあ、と思って。こういう事をしているなりに、そういう時間は大切にしたいなと思っています。演劇の話をすれば、僕は稽古している時がものすごく好きなんです。余りにも幸せ過ぎて、出来るならずっと稽古していたい。他の事を何も考えずに。
__ 
男道の稽古は楽しそうですね。
澤野 
一時期辛かったんですけど、今はすごい楽しくて。それは何故かというと、まあ一個は出演しなくなってから、自分たちのクリエイションを客観的に見るようになったんですね。すると無限の可能性を感じてきて。ミサイルは比較的限られた条件下で作品を作っているんと思っていますけど、それでも毎回、発見があるから。これまでに無いものを作っている感触を味わえるのが凄く楽しいです。

世界を拡張せよ

__ 
村上龍の小説に、「良い父親像とは家庭の事を適当にして、外の世界を拡張し続けている後ろ姿」みたいな事が書いてあって。男道はまさにそうじゃないかと思う。新しい分野を獲得し続けている。
加藤 
どうかな、見たらどう思うかね。「パパ、また裸の人たちに行くの?」
澤野 
本当にそうですよね。僕らは震災後、自分達を拡張しようとしたんです。それがこういう風にgateにも参加させてもらうという形で返してもらって。これから先、どこまで続くかは分からないですけど、五年を一区切りにして次のステップに進む。今回は一つの良いターニングポイントだったと思います。
__ 
先週の大阪での「対ゲキだよ!全員集合!」も良かったです。
澤野 
ありがとうございます。その時の作品の本編を、7月末に仙台でやってやろうと計画中です。全国から来てくれたら嬉しいな。
加藤 
その前に4月の1・2・3日、こまばアゴラ劇場で「対ゲキだよ!全員集合!」の東京公演をやります。名古屋のオレンジスタという劇団と、大阪のコトリ会議という劇団の対ゲキになっています。
__ 
そうですね。
澤野 
今回の滞在制作で初めての人とやるというのが凄く楽しくて。見ていただいたお客さんに「僕も出ておけば良かった」という声を頂きました。出来たら今後もこういう道場という形はやっていきたいと思っています。お気軽に声を掛けて頂ければと思います。

仙台で磨き抜くという事

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
澤野 
全国に僕らの事を知ってもらいたい。僕らを知ってもらうという事は、東北を知ってもらうという事だと思っています。いろいろ飛び回ってきたけど、近々は、仙台を拠点にして究極的に質の高い作品を作る、という事がしたい。もちろんツアーもするんだけど、自分達の拠点においてより優れた作品を作る。これで死んでもいいな、と思えるぐらい。それを持って県外に出られたらなと。
__ 
楽しみにしております。

「問わず語らず名も無き焼酎」

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
澤野 
ありがとうございます。「問わず語らず名も無き焼酎」。かっけー。
__ 
飲んで頂ければ幸いです。

gateリターンズ2016 ユニット美人「Ufo,Nitorogen In Tank , Began Intruiding Japan Intelligently ~ UFO、タンクに窒素を詰め、日本を頭脳的に侵略中」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。kittの岩田奈々さんにお話を伺います。最近、岩田さんはどんな感じでしょうか。
岩田 
最近私は、メイシアターと大阪大学の、芝居の振り付け助手をやらせていただいたりしています。ちなみに、その振付は竹千代さんなんです。そして1月にはユニット美人さん。3月にはエイチエムピー・シアターカンパニーさんに出演予定です。
__ 
そう、ユニット美人に出演されるんですよね。とても楽しみです。
kitt
演劇ユニット。メンバーは高阪勝之、土田英生、高橋明日香、岩田奈々。
ユニット美人
劇団衛星所属俳優の黒木陽子と紙本明子で2003年11月に仮結成。クラブイベントなどでちょこっと『ブルマ人間ブル子』のコントをやる。2004年暮れにあまりに人気がない自分達が嫌になり「絶対モテモテになってやる!」とやけくそになって制作にふくちゃんを迎え正式に結成。 「女性が考える女性の強さ・美しさ・笑い」をテーマに日々精進中。(公式サイトより)
パイロット版シアターシリーズ「gateリターンズ2016」
■日時 1月21日(木)19:30(A)◎
1月22日(金)19:30(B)◎
1月23日(土)11:00(A)/16:30(B)☆
1月24日(日)11:00(B)/16:30(A)

(A)=したため/Massachusetts/ユニット美人
(B)=ソノノチ/短距離男道ミサイル/ベビー・ピー

※開場は、開演の30分前です。
※上演時間は約95分を予定しています。
◎21日(木)・22日(金)の終演後はアフタートークを予定。
☆23日(土)16:30のステージでは、岩戸山ほぼ2畳大学「感劇学部」イベントあり。

■会場 KAIKA
■料金 前売1,700円/当日2,000円/セット券3,000円(日時指定・全席自由)


ユニット美人の演技とサッカーのドリブル技術について

__ 
今回のユニット美人は、どんな経緯で出演が決まったのでしょう。
岩田 
メイシアターの公演の演出助手を紙本さんがしてはった時に、ちょっと、スケジュールが空いていないかと聞いて下さったんです。メイシアターつながりですね。申し訳ないんですけど、実はユニット美人さんは知らなくて。劇団衛星さんは知っているんですけど。
__ 
そうなんですね。実は、ユニット美人は私にとって非常に大きな存在です。(インタビュアーが所属している)劇団衛星内のユニットだし、単純に彼らの事が好きなんですけどね。実は本日、稽古にお邪魔させていただきましたが、もちろん面白かったです。いかがでしたか?
岩田 
そうですね、場数がやっぱり全然違うんですよね、黒木さんも紙本さんも、演技のアイデアがぽんぽん出てくるんです。最初はどうしたらいいのか全然分からなかったです。今はとにかく喰らいついて学ばせてはもらっています。今回の稽古場は、まずやってみる、というのが出来るんですよね。違っていたら違う、と指摘してくれます。
__ 
シーン稽古も少し拝見しましたが、三人で丁寧に作っているという印象でした。台本の台詞を元に、芝居の勘所を探っていくという感じ。台本に寄らずに、現場で作っていくというスタイルなのかな。
岩田 
これまで私が参加していた稽古場では、台本をきっちり表現していったりしたのが多かったですね。戯曲家の苦労して絞りだした言葉を間違えたら駄目だって高校時代から頭にもあったりして。kittでは、土田さんは台本から構想して関係性や呼吸を探っていくという現場だったんですけど、それとは全然違うし(笑う)。もう何か、パワーとリズムみたいなのを大事にしていく人たちなので。難しいなと思いつつ、参加出来て光栄です。。
__ 
どこかで慣れるでしょうね、きっと。ユニット美人のそういうスタイルって、サッカーで例えたらボールをある程度離すタイプのドリブルなんじゃないかと思うんですよ。何なら、ゴール前ですら適当に流すというか。
岩田 
そうですね。
__ 
岩田さんも、どこかのタイミングでふと、足先からボールを離すみたいな瞬間があると思います。本番中に。それが最大の見せ場だと思いますね。楽しみです。
岩田 
うわあー、出来るかなあ。ボールにしがみついてそうで怖い。でも、見つけていこうと思います。

kitt

__ 
またいつの日か、拝見出来ればいいと思っています。
岩田 
はい。いつの日か。是非とも。
__ 
次の公演が楽しみです。個人的には、俳優・高坂さんをもっと見たいです。彼が張っているkittが見たい。岩田さんは、どんな思い入れがありますか?
岩田 
私、団体の立ち上げに携わった事はなくて。初期メンバーとして、どこかにいた、という事はなくて。私なんかでも入らせてもらえるんだ、って感慨がありました。でも、私はここで何をするべきなのかとかが分からなかったんですよね。だいぶ甘えてしまっていたと思います。もっともっと動いていくべきだったと。メンバーの事は大好きだし、本当にお世話になったんです。
__ 
年齢も性別もバラバラの4人ですね。
岩田 
高橋明日香とも大学ではめちゃめちゃ仲が良かった訳では無かったんですけど、kittを始めてからは身近にいてくれる存在になったり。高坂さんもそうだし、土田さんには私たちを引っ張っていってもらいました。もっと私たちも、若い人たちで、やっていきたいと思います。

自分の色を決める力

__ 
岩田さんが近大の演技・演出コースに入ったのは、どんな経緯があるんでしょうか。
岩田 
元々高校演劇をやっていて。大学はどうしようか、と思っていたんですが、AI・HALLの企画で、「ハイスクールプロデュース」という企画がありまして。普通の高校生とプロの演劇家が一緒に舞台を作るという企画なんですね、そこに応募して、オーディションが通って、小原延之さんと出会って一緒に作品を作ったんですよ。福知山線脱線事故を扱った、「鉄塔の上のエチュード」という作品でした。その時に、小さな声の台詞をきちんと自分自身の今の状態で考えて見も知らない大人達の前で喋っていてもいいんや、と。
__ 
そういう意味での自由度があったんですね。
岩田 
で、もうちょっと芝居を勉強したいなと思って。大阪芸大と京都造形大も受けたんですけど、やはり近大に行きたいと思って。
__ 
近大ではいかがでしたか?と申しますか、実は私、近大出身の方に取材するのは初めてではないんです。曰く、近大の演技・演出コースは目的意識を持ち続けないと何も身に付かないとか。
岩田 
間違って入った人とかは多いみたいですよね、でも何かしら近大色に染まっていくと思います、自由に出来るから。自分で責任を持たないとそのままズルズルと勘違いして舞台を続けていく事になるのが、少し怖いかなと。やっぱり。でも軍隊的に、何かのメソッドに染められる訳じゃなくて。舞台やってるのに、画一的なのになるんじゃ意味ないから。
__ 
まさに、そこが問題なんですよね。一つの強いリーダーシップでまとめられた劇団の俳優、その強さがまずあって、で、自由な役者の良さもあって。その中間を探って行けたらと。どちらかに振れていくと思うんですが、大学でそれを決めるなんて、高校生を上がったばっかの大学生には難しい事なんじゃないかなと思う。
岩田 
そうですね。難しいと思います。だから先輩の真似をしたりして、それが正しいと思いこんだり。先生こそが正しいというところに陥る事もあるんですよね。「それは違うよ」としてくれる先輩がいれば話は別ですけど。
__ 
自分の選択をする能力、ですね。それがまた難しいですよね。
岩田 
そうですよね。

食べて覚える

__ 
岩田さんが舞台を続けるモチベーションを教えて下さい。
岩田 
色々な事を知っていく事、なんですよね。私本当にバカだから(笑う)台本に書いてある事を始め、色々な知識を得られるから。それを納得いくまでかみ砕いて体に落として、そして体から出せる場所なんです。ダンスも同じで。苦いものでも辛いものでも、飲み込んで出す、みたいな。知りたいんですよね、その食感が何なのかとかどういう反応があるのかとか。知識を得るだけじゃなく、体を通す事って大切なんじゃないかなと思うんですよね。
__ 
なるほど。ではこれまでに一番、辛かったのは?
岩田 
劇団京芸さんの「天使のかいかた」という、小学生向けの公演をやらせてもらっているんですが、子供達の反応が直接的過ぎるんです。大人の反応とは全然違う。目の前で直接的なリアクションをされるんですよ、私も(ああそうだよね、そう思うよね)みたいに思っちゃうぐらい直接的。
__ 
大人みたいに、いったん飲み込んでくれる訳ではないんですね。
岩田 
もう、嫌なものはイヤ、楽しい時は楽しい、と直接返してくる。大人は丸めて飲み込んでくれるけれども。でも、そう思わせているのは自分なので、頑張ろうと思うしかないですね。
__ 
辛いばかりじゃないですよね?
岩田 
そうですね。素直な感想を返してくれる子もいるんですけどね。
__ 
子供向けのお芝居をするときに、コツみたいなことはありますか?
岩田 
どれだけリラックス出来るか。緊張した大人を見せてもだめなんだな、と。劇団京芸の先輩方にも、頑張らないように頑張れ、とよく言われてます。