諸江さんと片桐さん

__ 
一緒に作品を作ってみたい人や、劇団はいますか?
南風 
地点は、三浦さんの実技の授業は本当に受けてよかったし、またオーディションとかあれば、受けるんだろうなあ。そうだ、諸江翔大朗さん。諸江さんも舞台芸術研究会のメンバーなんですけど。
__ 
あ、そうなんですか。
南風 
大学の先輩だから、卒制のことも色々教えてくれて。もっとお話ししてみたいなと思います、できれば作品を作りながら。みんなのお兄さんですね。
__ 
諸江さんの演技は面白いですからね。
南風 
あと、片桐慎和子さんが好きです。ピンク地底人版の「散歩する侵略者」がよくって、見た当時は片桐さんしか存じ上げてなかったんですけど。今思うとお2人が共演なさってますね、すごく良かったなあ。片桐さんは、AI・HALLのダンスのWSで初めてお会いしました。寺田みさこさんのWSでした。
__ 
片桐さんは凄いですよね。
南風 
お会いしたいですね。出演作品はチェックしているんですけど、完全に片思い状態なので・・・
__ 
いつか三人で作品が作れたらいいですね。きっと。いい感じの雰囲気がするわ。

海に落ちる

__ 
以前のインタビューで、「自分の需要が分からない」みたいな事を仰っていましたね。卒業制作公演を終えた今、何か分かりましたか?
南風 
あ、自分はこういうのが好きなんだなというのが少しは分かりました。
__ 
例えば。
南風 
色んな要素がいっぱい重なっているやつが好きです。色んなレイヤーが重なっていて、それは舞台の空間を作っている各要素が同時進行していて、それぞれのピークは重ならない方がいいらしいんですよ。音響も照明も役者も演出も、全部のピークは一つの瞬間に合わさらない方がよくて、バラバラな方が良いらしいんです。あと、俳優が目立ちすぎるのが好きじゃないらしくて。もっと音とか光とか物とかと俳優が同じ並びになるぐらいのが好きらしいんです。
__ 
ピークをずらす。それこそ大学で学ぶ価値のある知識ですね。
南風 
作品を見る時も、そこを気をつけて見てみようかなと思っています。最後の5分間のためだけの作品もあるのかも。空腹が最高のスパイス、みたいな。
__ 
この間のKIKIKIKIKIKIの、Aプロはそんな感じでしたね。「崩れる波にしか乗れない」も、サーファーがその波に居合わせる事の出来た瞬間の事を言っているんだと思うんだけど。
南風 
そうですね。サーフィンって波を横に滑るんですよ!動画見るまでなぜか縦のイメージだった。うまく波に乗れたら1度も落ちずに陸には辿りつけるって思ってた。でも横だったな~、地球のかたちに沿ってるから波ってああいう崩れ方になるのかな、全然わからない。みんな、絶対海に落ちるんですよ。泣けます。必ず海に落ちるんや、って。

木彫の小鳥

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。今回も大したものではないんですが・・・
南風 
前回は大したものだったじゃないですか!美味しかった~。私、2回飲めました。
__ 
ああ、「悪戯乞ひて」にも出てましたからね。梅!って感じでしたでしょう。
南風 
梅でした。
__ 
何か、フレッシュな梅感じゃなかったですか。
南風 
はい。「梅!」って感じ。
__ 
これ、どうぞ。
南風 
何だろう。(開ける)まだなんか包まれてる・・・あ、トリ。
__ 
単なる置物です。
南風 
雑貨って、買う瞬間の心の豊かさヤバくないですか。
__ 
分かります。
南風 
今年のお正月、一年半振りくらいに雑貨を買ったんです。お金を出して、家で眺めるだけのものに。一回生の頃は京都の雑貨屋を探して買いまくっていたんだけどな。そういうのに囲まれた日々でした。私に似合うかな。飾ります。酉年生まれですし。

学校と私と

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。いま京大の教育学部で学ばれている柳沢さんにお話を伺います。聞くところによると今は節目の時期だと感じておいでとの事で。でも、そんな春先だからこそ伺える事もあるんじゃないかと思っております。さっそくですが、柳沢さんと教育の出会いを教えてくださいますでしょうか。
柳沢 
よろしくお願いします。出会いですね。それは血、ですかね。実は父方の家系に、教師が続いていまして。学校に通っている時代は、何かしら感じてしまっていたんです。血筋が騒いでしまうというのがずっとあったみたいで。
__ 
教室の中で、自分が受けている教育の中身を考えてしまったり?
柳沢 
はい。
__ 
ある意味ふまじめな生徒かもしれませんね(笑う)。という事は、ご家庭でも頻繁に教育に関しての話題はあったんじゃないかと思います。もうお子さんの頃からそうした意識が向いていたのかもしれませんね。これもざっくりとした伺い方ですが、柳沢さんは、教育の事をどう考えていますか?
柳沢 
世代間のギフト、という言葉で今は考えています。教える、という行為はやはり世代を跨いでいて、そして、教える側が上の世代からもらってきた知恵や経験を後の世代の糧にしてほしいと願う行為。その子に一番、なんだかんだ、幸せになってほしい。
__ 
そんな思いが根底にあるんですね。
柳沢 
それから、「ギフト」という言葉には「毒」という意味もあるという。そんな二面性を教育もはらんでいると。私の今いるところの教授がそういう捉え方をしているというのもありますが。
__ 
「世代間のギフト」と聞いて思い出したんですが、児童虐待についての認識-虐待されて育った子供は自分の子供を虐待するようになる-を持つ世代が親になる初めての世代らしいですよ。教育は進化しているという見方もあるかもしれませんね。
柳沢 
確かに。
__ 
教育に対する価値と期待は、この晩婚・晩産・少子化の現代において、どんどん上がっているように思います。情報化社会の中、手法が洗練されていく部分も多いと思うんです。おかげで「最近の子はみんないい子だ、大人しい」という声も多い。そんな感じがしませんか?
柳沢 
最近の子供が大人しいという事は、私自身も感じたりしていましたが、これという理解はなくて。まず、本当にそうなのか、それが果たしていいのかどうか。もちろん割り切れない事なんですけどね。
__ 
そうですね。
ウトイペンコ
主宰、柳澤友里亜。 演劇という表現媒体のユニークさを模索したい。 日頃の本業を問わずに人を集める。詳細未定。

ずっとセンセイ

__ 
確か、教育実習に行かれたそうですね。いかがでしたか。
柳沢 
楽しかったです!クラスの中学生が、とにかく、良いなあと思いました。可愛いというのとは違って、もう、好きで。それから、職員室での先生の、これまで知らなかった仕事や姿にも感銘を受けて。とても嬉しい経験でした。楽しかった・・・不思議と頑張れました。
__ 
素晴らしい。学校はどんな雰囲気でしたか。
柳沢 
なんか、元気ですよね。「最近の子どもは大人しい」というのも分かるんですけど、授業時間内で元気な子も、時間外で元気な子もいました。
__ 
学んできた事を3つ上げるとしたら?
柳沢 
まず生活サイクル、やっぱり24時間、教師として回っている生活なんだなあと思いました。それから舞台裏。先生はこんな事までやるんだなあ、って。それと、生徒たちの顔。この子はこんな顔をするんだ、といちいち感心していました。
__ 
24時間教師でいなくてはならない。教師は生徒に顔を見られる仕事で、同時に、生徒の顔を見る仕事でもあるんですね。生徒が何を感じて、何を考えているのかについてを見つめ続ける仕事なのかもしれませんね。そういう意味では俳優と観客の関係に似ているかもしれませんね。
柳沢 
そうですね。けれど、生徒が観客というよりは、共演者というのが理想的なのかもしれません。教室って、劇場じゃないなあと思います。
__ 
劇場以上に、相互のコミュニケーションがある空間なんですね。考えてみればそうですね(笑う)さて、次に「24時間教師でいる」という事。生徒に姿を見せ続けるという事でしょうか。
柳沢 
いえ、実は逆の事も同時に思っていて。子供は全部を見て、でも勝手に考えて勝手に越えていくじゃないですか。教師がそんなに完璧でいる必要はありませんし、反面教師もありだと思います。でも、嘘は付けないんだなあという事は改めて感じた事の一つでした。私は全然出来ていないなあと感じました。背伸びして言ったところで多分伝わらないだろうし、背伸びしないで甘んじているのも違うし。難しいですね。

記憶の中の笑顔

__ 
どんな先生になって、どんな関係を生徒と築きたいですか?
柳沢 
その先生を思い出した時、笑えるような先生になりたいです。そういう意味では滑稽でも良くて。「あいつしょうもなかったな」と思われて、でも笑ってもらえるような。
__ 
なぜ、そう思われるのですか?
柳沢 
そういう先生が多かったから、いや滑稽という意味じゃないですよ、勇気が湧くような思い出を受け取ったんです。その人の笑顔を、必ずしも思い出さなくても、険しい顔だったとしても、思い出せばキュッと、前向きになれるような気がするんです。
__ 
もう既にそうなっているのかもしれませんよ。ちなみに、科目は何を担当されるお考えですか。
柳沢 
英語です。英語というのは別に長けている訳ではなくて、でも高校の頃は英語劇部だったんです。そこで発音とかを叩きこまれて。面白いなと思って。演劇と教師が繋がってるんです。
__ 
その先生を思い出した時に笑えて、勇気が出るような。
柳沢 
関係性は、あくまで教師と生徒がいいかなあ。あっ、カッコイイ先生になりたい。小学校の卒業文集に、「カッコイイ大人になりたい」という夢を書いていて。その頃からの夢だったんですね、きっと。・・・ここまでの話しで、教師になるという前提で話してますが・・・教師になるというのは、「いつか」なろう、というお話なんです。でも私の核の部分にあるので、それは必ずなると思います。
__ 
私も柳沢先生に習いたかったです。

TV講義ってどう?

__ 
ここからちょっと難しい質問です。ネットでの中継教育についてどう思いますか?
柳沢 
嫌い。ヴァーチャルな教育が嫌いなんですね。その場にいない関係で教育が為されるというのが嫌いだと思う。
__ 
その場にいるというのが大切なんですね。
柳沢 
そうなるとメディアの問題で、究極的には本ってどうなんだってなっちゃいますね。
__ 
TV電話があんまり好きじゃないという事?
柳沢 
あ、それは別に。技術の進歩は素晴らしいと思います。そこに教育が絡むと好きではないですね。何かが違う気がするんです。受験生時代に予備校に行く事があって、周りではTV講義もやっていましたが、ずっと違和感がありました。
__ 
媒介物の無い状態でのコミュニケーションに価値を見出している?こうやって、目と目で、自分を掛けているやりとりの物凄さ。
柳沢 
あ、そうですね。物凄さです。
__ 
じゃあTV授業は違いますね。
柳沢 
もう、無くて良いと思うんです。色々勿体無いです。ブチ切れてますね私、受験生時代はそういうところで切れてました。TV電話だったら画面越しにいる人との関係がまずある。だから一概に否定は出来ないんですけど。
__ 
でも、教育は人間同士の信頼を同時に培っていくものだから、そういう意味で順序がおかしいという事ですね。

私の中のストッパー

__ 
この質問はするかどうか迷っているんですが、いじめ教育についてどう思いますか、まあもちろん難しい問題ですね。子どもの頃にいじめにあったりした経験、誰にでもあると思う。集団の中にいたら、どうしても起きてしまうものなのではないかと思っています。起こってしまう事について、完全に頭から拒否するのはそれこそ難しいと思う。どんな考え方も出来ると思うけど、どうだろう。
柳沢 
今の話、奥深いなあと思います。いじめを抽象的にみるととても人間らしいと思いますし、一方でとても醜いと思います。教育の文脈で語られる事が主ですけど、社会でも大人でも、メディアがやっている事もまさにいじめだと思って反発を覚えます。でもそれは大人がやっている事だから特に嫌なんじゃないかなと思っていて、大人になったらするな、されるな、という事を思います。
__ 
土田英生さんとのインタビューで、みんな浮気をしたタレントをいじめているけど、恋なんだからしょうがないじゃないか、と。陰口を言い募る前に、やっぱりストッパーを持つ事が大事なんじゃないかなと思う。
柳沢 
でもそんな風に思えるのは、子供の頃にそれを経験しているからですよね。それが起こっているからそう思えるのであって、子どものいじめに関しては、大人が口を挟む事もあるとは思いますけど、必ずしも防ぐものではないような気もする・・・でも難しいですよね、難しいって何回言ってるんだ。でも取り返しの付かない事に発展する場合もあるから・・・
__ 
子供の頃のいじめは、誤解を恐れずに言うと、どこかでみんなが経験しないといけないものなのかもしれませんね。

歌う教室

__ 
授業で使いたい、スペシャルな教材とかってありますか?もしあれば教えて下さい。
柳沢 
ああー、歌。歌いたいですね。あと、3つめの言語を使いたいです。日本語、英語のもう一つの言語。ドイツ語とかフランス語とか。何なら自分でも読めない、アラビア語やロシア語とか。
__ 
生徒は少し困惑するかもしれないですけど、やってみてほしいですね。
柳沢 
あ、実はその授業を受けた事があって。一つの言葉に対して、この言語だったらこう表現する、この言語だったらこう、みたいに次から次へと。その時のワクワク感がまだ残っているんです。
__ 
分かります。なんでしょうね、あのワクワク。
柳沢 
モノに付けられた言葉が、そうなる前に戻って別の言葉になる、その感覚が好きなんです。

質問 脇田 友さんから 柳沢 友里亜さんへ

__ 
前回インタビューさせていただきました、脇田友さんから質問です。「もし引越すとしたらどこがいいですか?」
柳沢 
えー、海の傍に憧れます。青い海のそば。
__ 
それはなぜ?
柳沢 
ないものねだり的なものがあると思います。私は埼玉県で育ってきて、祖父母がいるのは長野県、海が無いんですよ。でも好きで。だから憧れます。

ベビー・ピー「ふまじめな絵本」

__ 
さて、そろそろ演劇の事をお話出来ればと思います。ベビー・ピー「ふまじめな絵本」、お疲れ様でした。面白かったです。
柳沢 
ありがとうございます!
__ 
柳沢さんの、お姉ちゃん役と孫娘役が大変良かったです。宇宙遊泳で、孫娘がただただ驚いた顔をしておばあちゃんの歌の世界を漂っている様が良かったです。
柳沢 
あそこはもう、指示は無かったので、もうこっちも楽しもうと思って。
__ 
大熊ねこさんはとても良かったですね。あれはもう、素晴らしかった。
柳沢 
はい、ほんとうに。凄い方に囲まれて。
__ 
しかも最後の方は、日常会話の家族劇だからね。何故あの後にそれが出来るんだろう、って。
柳沢 
ベビー・ピーには、去年は6月から断続的に地方での公演に出させて頂きました。その都度、自分が出来ない事に気付かされるんです。Facebookには「憧れの劇団への参加で、夢叶った」って書いてますけど、でも実際は・・・自分の出来ない事があんまりにもあらわになるので・・・大変ですね。
ベビー・ピー
2002年旗揚げ。拠点は京都。野外テントなど劇場外スペースを活用して、題材も公演自体も「祭り」にこだわった作品を毎回上演している。また、アーティスト・山さきあさ彦が製作するぬいぐるみ(山ぐるみ)を使った人形劇、漫画「ジョジョの奇妙な冒険」を再構築した「ジョジョ劇」など、既存の枠組みにとらわれない活動を全国各地で多数上演。2015年、『山ぐるみ人形劇 桜の森の満開の下』で、愛知人形劇センター主催のP新人賞を受賞。2016年10月、瀬戸内国際芸術祭にて新作を上演予定。
ベビー・ピーの短編集『ふまじめな絵本』
公演時期:2015/12/18~21。会場:元・立誠小学校 音楽室。

選ばないといけない

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか。
柳沢 
去年お世話になったベビー・ピーと、今年も秋の瀬戸内芸術祭まで色々と関われるので。それを、去年悔いが残った分、頑張りたいです。あと・・・。
__ 
はい。
柳沢 
教育の話をこんなにたくさんするとは思っていなかったんです。で、自分が教師になる、という話をこんなに自然にするとも思っていなかったんです。それが不思議で。演劇をやっているという事からすると、それは邪道じゃないか、と思ったりするんですね。でも今日、あ、話していいんだ、と思ったんですよ。新鮮な驚きがあったんです。
__ 
それはどういう事なのでしょうか。
柳沢 
私の勝手な思い込みかもしれないんですが、役者として食べていくのはもちろん厳しい世界で、それが前提でみんな戦っていると思う。そこから半ばドロップアウトするような人生って、演劇に対して失礼なのかなと、結構ど真ん中で思っています。その距離感というか。
__ 
私はプログラマーをやっていて、ざっくりと言うと、プログラミングと演劇の以外な近さに気付いたりして、こういう演劇活動へのフィードバックもあるんですね。柳沢さんも、教育の現場から演劇を見つめなおしたり影響を与えるという事なら、全然演劇辞めてないと思うんですよ。胸を張っていていいと思う。
柳沢 
うーん。辞めてないのかあ。

ジンジャーパウダーとピンクペッパー

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
柳沢 
ありがとうございます。すごーい。(開ける)あ、ジンジャーパウダーとピンクペッパー。ありがとうございます。そうなんですよ、オーガニック系の文化とは縁があるんですよ。うわああい。

深奥からの声(吐血)

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い致します。最近、脇田さんはどんな感じでしょうか。
脇田 
よろしくお願いします。去年の12月いっぱいでNPO劇研を辞めました。というのは、実は10月ぐらいに体調を壊してしまっていて。腰痛いわ、熱あるわ、しかも血を吐いたりしていて。スケジュールの管理が上手くいかなくて、パンクしてしまったんですね。体を休ませろ、という事なのかなと。1月くらいは暇になるかな、と思ってたんですが、声を掛けて下さる方もいて。デザインの仕事とか、舞台監督とか、3月からはスペースイサンの管理スタッフになる事もあり、案外暇ではなかったですね。腰治す暇はなかったです。
__ 
吐血ですか。
脇田 
その晩、夜中の2時ぐらいに気持ち悪くなって、吐いたら血が混じっていて。それがどんどん血の色になっていくんです。これはアカン奴やと思って。今までは、これを頑張ったら山を越えられると思う事にして乗り越えてきたんですけど今回ばかりは無理だと。それをTwitterに書いたら翌朝母親から電話が掛かってきて。母親にTwitterが監視されてた事がわかりました。
__ 
ヤバい時は体が教えてくれるそうですね。
脇田 
そういう話は聞いていましたが、まさか自分がなるとは思わなかったです。それから、腰の痛みはヘルニアのなりかけだったそうなんです。病院で頂いた痛み止めを飲んだら痛みは収まったんですけど、起きたら体がガタガタしてきて。副作用のめまいというレベルではなく。
__ 
肉体は何でも知ってる感じがしますよね。脳みそは絶対急所である精神を知っているから、精神のハンドリングを知っている。そして肉体もやっぱり、絶対急所である内蔵を守るために色々するんでしょうね。
脇田 
自分は体が丈夫だと思ってたんですよ。冬だって裸足同然、サンダルで大丈夫だし。それがまさか、という経験でした。

vol.459 脇田 友

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2016/春
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脇田

脇田さんはカメラマン

脇田 
一昨年の春にちょっとお金が入ったので、一眼レフを買ったんです。最初は劇研の仕事用に考えていて。劇研アクターズラボの稽古風景の撮影。で、その時に出演されていた大阪の女優さんが、自分のプロフィール写真を撮って欲しいという事で撮らせてもらったんです。その後、個人的な仕事としてですが、引き受けるようになりました。普段友達なのに、カメラを向けると照れてしまうのってありますよね。でも、撮っている内に、被写体の人はどうも、カメラのレンズが僕の目線だと気付いてくれるみたいなんです。レンズ越しに僕とコミュニケーションを取ってくれて、結果良い写真が撮れる、みたいな事が多くなって。何かしてくれとかは言わなくてもいい。普通に歩きながら会話しながら、そこで生まれた表情をそのまま撮る、みたいな時がいいですね。
__ 
鑑賞者はたった一枚の写真から、どこまで辿り着く事が出来るんでしょうか。
脇田 
僕が考えている事にどれだけ近づいてもらえるか、という事ですね。難しいですね。実はシャッターを切る時はそんなに深く考えていないんです。良いと思う瞬間という基準だけが自分の中にある。僕が知っているその人のいいところ、凄く素敵な表情を撮りたい。それだけが。それがうまく行けばなんでも上手くいくような感じがする。
__ 
相手の良い所を撮影者が感じる。被写体の良い時というのは例えば角度や動きが織りなすもので、そこから一瞬を切り取る時の価値というのは、一体どこから来るんだろう?そこにしかないユニークさや、閃いた何かはもう絶対的ですよね。でも、こと人物の写真だったら、一体何が手がかりになるんでしょうね?
脇田 
見てもらう人にとって、自分が見せたいと思っているところ。その距離、だと思うんですよね。撮影者とモデルの距離で、大分写真って変わるじゃないですか。構図もそうだし。
__ 
人間関係の距離が、そのまま写真の要素になる。
脇田 
その時の僕らの関係性が、見ている人に疑似体験してもらって、その中で伝えられるんじゃないかなと思っているんです。その人の、「僕が良いと思っているところ」。他にもきっとあると思うんですけど、僕はそこを頼りにしています。この人のこの表情は、この角度が一番良い、ですとか。

vol.459 脇田 友

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脇田

願いは太陽を追いかける

__ 
ものを作る時の姿勢について。撮影とデザインとでは、共通しているところはありますか?
脇田 
どうしても自分語りみたいになってしまうんですけど・・・滋賀県の大学に入るまで、和歌山県に高校卒業まで住んでいたんです。小学校ではいじめられ、中学・高校までスクールカーストの最底辺で。でも、大学に入って一人暮らしを初めた事で、もっとポジティブに色々な事を体感していこうと思うようになったんですね。そこで演劇に出会って。
__ 
ええ。
脇田 
大学で絵の勉強をして、演劇を作って、卒業してもそういった活動を続けて・・・自分が作る作品は、自分のネガティブな部分を踏襲はするけれど、最終的にはポジティブなものになっていければと思うんです。暗くても、最後には希望が持てるような。単純に、自分は明るさを持てないからこそ、その人の明るいところを焼き付けたいなと思うんですね。根っこが暗いんです。
__ 
私も根暗です。
脇田 
まあみんな、そういう部分はあるかもしれないですけどね。死にたいとかたまに口をついて出てしまう、みたいな。
__ 
他人の明るい部分を取り込みたい?
脇田 
そういう部分もあります。その明るい部分を上手く、作品に転化してみたい。
__ 
何故そうなのですか?
脇田 
一つは、単純に、ギャップを付けるという事だと思います。明るい人間が明るい作品を作っても、あんまり面白くないですしね。あとは単純に僕が見てきた作品がそう思わせてくれるものだった、という事だと思います。有り難い事に、友達には恵まれていました。友達が居なかったら引きこもりになっていた可能性は高かったです。高校2年の後半ぐらいから高校にはあまり行っていなくて、理由なく行かなくなってました。でも友達が居たから、ギリギリのところで踏みとどまっていたと思います。単純な話かもしれませんけど。
__ 
明るい人を理解したいと思う?
脇田 
うーん、それは案外思った事はないですね。底なしに明るい人がいたら、その人は魅力的に見えるし、そうなってみたい自分もちょっとあったりするんですけど。でも今の自分がそんなに嫌いでもないし。ところで僕の名前は「友」で妹は「恵」なんです。親が、友達に恵まれますように、という願いを込めてくれたそうで。そういった自分を否定したいわけではないので、だからか、その人に成り代わりたいというのはないですね。

vol.459 脇田 友

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脇田

質問 土田 英生さんから 脇田 友さんへ

__ 
MONOの土田英生さんから質問を頂いてきております。「アトリエ劇研が無くなりますが、どう思われますか。」京都から、演劇の拠点がまた一つ無くなってしまう事。もちろん土田さんも問題に思われているそうで。
脇田 
何となくですが、転換期なのかもしれない、と感じています。その大きな流れは変えられないですよね。移り変わったらまた戻ってくるものじゃないですか。そういう時代がやってきて、新しい拠点が作られるんじゃないかな、と。
__ 
劇場が無くなったからと言って、演劇を辞める奴はいないですからね。
脇田 
集まる場所がなくなるのは辛いですけどね。集うだけで何かが生まれるものだと思うので。
__ 
精華小劇場が無くなった時の寂しさをまた味わうのかな。
脇田 
学生の頃、2回ぐらい行った事はあります。無くなるという事に危機感を持つ若い世代もいるんですよ。まだこれは言えませんが、ちょっと企画もあるみたいで・・・

vol.459 脇田 友

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2016/春
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脇田

焦燥感

__ 
京都に来てまだ数年の脇田さんに伺いたいのですが、京都だからやりやすい事などはありますか?
脇田 
ちょっと行ったら大阪に行ける、みたいな事。田舎者の自分としては、単純に創作の資料を集めやすかったりするんです。反面、押しつぶされてしまうプレッシャーを感じがちですね。それから、朝起きた瞬間、今すぐ一人暮らしを止めたいと思うような瞬間が何回もあるんです。僕が育った田舎は何もなくて、田んぼに囲まれて、自転車で30分行かないとコンビニがないみたいな。でも、何もないという事が豊かだという側面もあるんですよね。たまに18年暮らした実家に帰って、しばらくして京都の自分の部屋に戻った瞬間に、六畳一間のこの部屋の狭さ、壁紙の向こうの何かが自分を押し潰してくる、空を見上げても狭い、みたいな・・・
__ 
東京の人には京都は田舎に見えるのかもしれないですけどね。時間が止まってるみたいな言われ方をしてるらしいし。
脇田 
東京出身の人とか、きっとそうなんでしょうね。
__ 
人口密度が高まれば高まるほど速度が上がっていくのか。

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脇田

演劇に出会う

__ 
成安造形大学に入ったのはどういう経緯でしたか。
脇田 
高校3年生になって、美大入学を意識して、画塾に通うようになって。そこの先生がオススメしてくれたんです。
__ 
何故、美大に?
脇田 
自分が、経済学部とかに入るようなイメージが持てなくなって。面談の時に、そういう大人になりきれない事を言ってしまったんですよね。でも絵が描きたいという気持ちしかないんだ、と自覚して。今思えば子どもだなと。
__ 
いやあ、高校3年生で無理矢理に進路なんて決めきれないでしょう。
脇田 
僕も、何がなんだか分かってないですから。でも、成安に入らなかったら演劇をやってなかったかもしれません。オレは油絵を描くんだと思って入学して。30人ぐらいしかいない教室に劇団しようよの大原渉平がいて、ある日突然「ワッキー、演劇やろうよ」と、急にいきなり言われて。で実際に演劇作品を見てみたら面白くて、演劇ってこんな事がやれるんだ、って。演劇なんて、和歌山で見たのは数少なくて。演劇って、こんなにあるんだ、というのが衝撃的でした。
__ 
その時の芝居が面白かったから、演劇を始める事が出来たんでしょうね、きっと。
脇田 
演劇部のみんなで、唐ゼミを観に行ったんですよ。テントにゴザを敷いて座るし、物が飛んでくるし、なんだこれ、って。衝撃的で、今でもよく覚えています。

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脇田

小林まゆみ10周年記念企画 一人芝居「嫌だ!」

__ 
さて、もうじき小林まゆみの10周年企画ですね。脇田さんは演出をされるんですね。
脇田 
演出と企画全体の舞台監督と、チラシのデザインと、制作アドバイザーみたいな。
__ 
全部ですね。ごまさんの芝居の演出が出来るんですね。
脇田 
1年ぐらい前、そういう企画をやりたいと小林さんが相談してきて。脚本はごまさんで、演出はワッキーがやってほしい、と。
__ 
そんなに前から動いていたんですね。
脇田 
何より、ごまさんの脚本が素晴らしいんですよ。シンプルなんですけど、小林まゆみにとっては課題があり、お話の内容にしても10周年としては「何でこれをやったの?」と言われるかもしれません、が、もっと深みを持たせてお客さんの前で上演する事が出来れば、これこそ10周年でやる意味のある作品になると思います。
__ 
小林さんの、どんな芝居が見れるのかな。
脇田 
色々見れると思います。大きな舞台で大きな演技をするのが彼女の得意とするところなんですけど、今回は繊細な芝居です。
小林まゆみ10周年記念企画 一人芝居「嫌だ!」
小林まゆみ:大学在学中の2006年6月より、京都のフリンジ演劇集団、劇団衛星に入団。入団後は所属劇団やユニット美人、笑の内閣などに出演する。子供向け演劇ワークショップ講師としても活動。2009年8月に同劇団を退団。2011年よりKAIKA劇団 会華*開可の旗揚げメンバーとなる。近年の外部出演作品として、笑の内閣「65歳からの風営法」、ピンク地底人「ココロに花を」、第18回女性芸術劇場「姉妹たちよ」などがある。近年好きなマンガ第一位は「ちはやふる」。公演時期:2016/2/19~21。会場:KAIKA。

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