質問 地案さんから 岩切 千穂さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、舞踏家の地案さんから質問を頂いてきております。「将来のでっかい夢や目標はありますか?」
岩切 
将来は自分で何か出来たらいいなと思ってます。自分を使って何かをする。
__ 
何か、事を起こしたい?
岩切 
というか、自分を使いたい。
__ 
それはもしかして、自分を試したいから?
岩切 
そうなのかな。
__ 
というのは、その地案さんが「中国で踊って、自分を試したい」と仰っていて。それよりも、自分を「使いたい」?
岩切 
そっちの方が近いかもしれません。自分がやった事のないのを味わいたいという方かかもしれない。指でどこかを示そう、指先まで神経が通るってどんな感覚なのかを再確認したいというか。それは家でやれば?なのかもしれないですけど。
__ 
なるほど。
岩切 
分からないですけど、他のところで既にやっている事を試す事になるかもしれないんですけど。でも伝手がないので、自分で試すのもいいのかなあ、と。自分が何をしたいのかまだ分からないんですけど。でも、自分を使いたいんです。

存在のありかた

__ 
座組の中で、どんな存在でありたいですか?
岩切 
あんまり意識した事はないですけど、自分の周りにいた人や、一度関わった人の事はとても大事で、人生の一部になってて。その人が居なくなったらとても悲しいというか。大事にしたいです。変わらず、どこかにいたいです。でもあえていうなら周りの空気くらいでいたいかな。「あ、おるな」くらいで。
__ 
パズルの1ピースでありたい?
岩切 
だから、私が必要ならいつでも呼んで下さいという感じです。たくさんの人の中から、わざわざ自分を呼んでくれたんだったら、全力で向き合う。そんな大げさじゃないですけど。
__ 
縁は大切にしないといけないですね。私も、断ってしまった仕事への後悔ってありますし。
岩切 
きっとそれは、またご縁があると思って。私にもそういうのはあるんですよね、その時は申し訳なくって、でも私じゃない人に決まったら絶対それはそれで良い作品になるし、ちょっとくらいは悔しいという思いはするかもしれないですけど。でも、プラス思考でいこうと思います。
__ 
なるようにしかならないですからね。
岩切 
それを無理矢理やるのは、しんどいんじゃないかと思います。悲しいですけど、無理はしないというほうがいいかもしれない。
__ 
また一緒に、やることがあるかもしれませんしね。
岩切 
もしかしたら今やってたら抱えきれなかったかもしれない、とか。その次が来るまで頑張ろうと思えるみたいな。

撮影アシスタントの岩切さん

__ 
映画のアシスタントとかもされているんですよね。「乱死怒町より愛を吐いて」とか。
岩切 
映画に関わるのは凄く楽しいです。映画は不思議ですよね、自分が作品の一部になっている感覚があって。作品になったら、少し間を置いてから見れる。
__ 
自分が一つの何かになる、というね。
岩切 
全ての人で最後に持っていくみたいな。
__ 
この間は東京にも映画アシスタントとして行ったんですよね。
岩切 
縁があって呼んで頂けて。本番と丸かぶりだったんですけど、本番後の打ち上げ後に夜行バスに飛び乗って、朝起きたら別の土地やってワクワクしたり、カラカラを持って現場に行って。凄い人たちもいたりする現場で、最初は凄く緊張するんですけど、そういう状況の中で焦って、自分が思った通りに動けているのかどうか分からなくて。でも来たからには、と思って。でも結果的には楽しかったです。現場が好きなので。
__ 
仲良くなれましたか。
岩切 
仲良くなれましたね。撮影現場ではスタッフ全員が同じメンバーなので。でも一番の仕事は、邪魔をせずに現場がやりやすいようにすることだし。何もなく空気みたいな感じで動けたらなと思います。
__ 
活躍されたんですね。
岩切 
「乱死怒町より愛を吐いて」でもお世話になりました、島田角栄さんの新作でした。今年中に公開すると思います。あと、実は「乱死怒町」での尾道での撮影の時に、今飼ってるジャンゴを拾ったんですよ。
__ 
あ、あの可愛い黒猫の。岩切さんのブログとかで拝見しました。
岩切 
最初、倉庫の隅みたいなところから猫の鳴き声が聞こえてきて。主演の後藤まりこさんと探ったら黒い子猫がいたんです。何か威嚇してくるんですけど付いてきて。後藤まりこさんが飼う事になったんですけど、私の方に懐いてしまって。今は1歳半くらいで、甘えん坊なんですよ。

心のままに

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
岩切 
次はフルーツケイクがあるんですが、その後は特に何も無いので。無いなら無いなりに、何かをしようと思います。それが何かはまだ分からないですけど。心で動こうと。
__ 
そうですね。心のままに。

黒猫のボールペン

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
岩切 
ありがとうございます。(開ける)何やこれ。
__ 
ボールペンですね。書けますか?
岩切 
大丈夫みたいです!ありがとうございます。

劇団ZTON「覇道ナクシテ、泰平ヲミル」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。劇団ZTONのレストランまさひろさんにお話を伺います。さて、劇団ZTON「覇道ナクシテ、泰平ヲミル」、非常に面白かったです。お疲れ様でした。三国志を下敷きにしたエンターテイメント演劇というと手垢が付いたジャンルのように思われるかもしれませんが、これは本当に現代に演じられるべき作品だったと思います。龍という神的な力によって動かされていた大陸が、本来の人間の力によって糾える歴史に戻っていく。人間の歴史の泥臭さや血みどろの戦いの凄さ。そして、人間一人が生きる事自体の政治性。三国志を題材に、生きる事と政治、その狂おしいまでのドラマを描き出した傑作だったと思います。
レス 
ありがとうございます。そう仰っていただいて、稽古した甲斐があります。
__ 
そして、HEP HALLという狭い空間であれだけ早くて正確でカッコイイ殺陣が見れるとは。レストランさん的にはどんな公演でしたか。
レス 
僕の役は夏侯惇という、まっすぐな男として描かれた曹操の部下でした。為房君の劉備とか、すてらさんの孫尚香とか、泥臭い人物たちに振り回される役割だったんですね。曹操達はあまり苦労をせずに生きてきて、色々な事に巻き込まれながら少しずつ乱世に身を投じていく側だったのですが。泥臭さって、例えば、嘘を付いたりどんな手段を用いても生きていく悪党って事でもあるわけです。今回はそういう彼らが主人公でした。
__ 
言わば、ピカレスクロマンでしたね。
レス 
やっぱり、そういった悪党と対峙する側の人間なので、感想とかで孫尚香とかがカッコイイとかを感想で書かれると、うーんと思っちゃったり(笑)。
__ 
ダークヒーローをカッコイイ、という感想が、もしかしてちょっと違う?
レス 
僕ら曹操チームは必死に生きている彼らを、真っ向から否定するポジションなんですね。劉備や孫尚香が生きていく為に踏みにじった人たちもいる訳で、やり方は歪んでいきますが曹操軍はそういう、見えない人たちの人生を守ろうとしたりしているわけです。それを踏まえた上で、強大な敵である曹操軍の存在を見てもらいたかったですね。僕ら曹操チームは、奸雄達を真っ向から否定するポジションなんです。主人公たちがカッコいいと思うお客さんに疑問を投げかける敵でありたい。誰に視点を置くかで、感じ方も変わっていったりするのが面白いなあと思います。
__ 
そこまでの複雑さを勝ち得ている時点で成功だと思います。二時間弱の大作でしたが、整理して拝見していました。
レス 
もうちょっと短くできたら理想的だったかも。
__ 
いえ、もっと長くても良かったと思います。
レス 
僕は結構、作っている時に、スターウォーズみたいだなあと思っていました。色んな事をめちゃくちゃ盛り込んでましたので長いよ!って思ってました。でも、大河ドラマみたいな所を狙いました。
劇団ZTON
2006年11月立命館大学在学中の河瀬仁誌を中心に結成。和を主軸としたエンターテイメント性の高い作品を展開し、殺陣・ダンスなどのエネルギッシュな身体表現、歴史と現代を折衷させる斬新な発想と構成により独自の世界観を劇場に作りあげ、新たなスタイルの「活劇」を提供している。(以下略)(公式サイトより)
劇団ZTONエンタメストライク005『覇道ナクシテ、泰平ヲミル』【偽蝕劉曹編】・【真王孫権編】
公演時期:2015/12/10~13。会場:HEP HALL。

ZTONの殺陣の特別さ

__ 
さて、そろそろZTONの殺陣について話せたらなと思っています。私は劇団ZTONの殺陣を評する時、「関西最速・最正確」とか「5センチ間違えたらそのまま死ぬ」みたいな過剰な言葉を使っていますが・・・
レス 
(笑う)ああ。
__ 
ただまあそれは多分本当なんですけど、ZTONの殺陣に対するスタンスをここでちょっと伺いたいなあと思っていて。仮説があるんですが、もしかしたらZTONは、殺陣をもったいぶってやっていないんじゃないか、と思っていて。勿体ぶった殺陣ってどういう事かというと、何だか形式化したもののような気がする。すると、どこか固くなるような気がする。ZTONは、パフォーマンスとしての殺陣を進化させ続ける為に、あえて斬り合いの美学を見出そうとしていないんじゃないか、と思っています。高度な意味で、殺陣を見せる事を楽しんでいるんじゃないか。
レス 
それは、僕の考えと少し違うかもしれません。殺陣って殺し合いなので、どちらが死ぬか生きるか、なんだと思うんですよね。そう思ってやると当たり前ですけど重くなりますし。神聖なものになっていくじゃないですか。対して、ZTONの殺陣は仰る通りパフォーマンスの一つなんじゃないか、と思うんですよね。楽しんでもらうためのツールだと考えているんじゃないかと思うんです。他のところで殺陣をやっている人から見たら、刀はあんなやりかたじゃ切れないよ、今のどういう攻撃だよ、とか言われるものをやってると思うんです。それは逆に言うと、殺陣をやっている人ほど「こんな手はないよ」みたいなこだわりに陥ってしまうのかもな、と。
__ 
まず、リアルじゃない。
レス 
殺陣が上手いという訳じゃないんじゃないかな、ZTONって。
__ 
それは・・・爆弾発言ですね。
レス 
ZTONは写実的にではなく、ショーとしてやっているので、固定観念のない人ほどZTONの殺陣はやっていけるんじゃないかなって思います。でも、どちらかというと僕は固定観念に囚われている方なんです。
__ 
あ、そうなんですね。
レス 
今は為房君がメインで殺陣を付けていますけど、僕はある意味、そこに真っ向から立ち向かっている側の人間なんです。縛りになるかもしれないけど僕はショーではなくある程度リアルな殺陣がしたい。だから為房君のつくる殺陣を実際の刀でやるとしたらこうやるわ!とか自分なりにアレンジします。僕みたいなのばっかりだと多分、為房君は困ると思うんですけど。でも一人くらいこういう人がいないと、それはそれで一つの形骸化を招くと思っていて。格好良さを目指しているだけのものになってしまうというか。面白くないものになっていったらいやだな、と。常に疑問は投げかけていきたいなと思っています。僕は僕で、元々武道をしていた人間なので。
__ 
そうそう!レストランさんは武道をやっている人だって、森さんから伺っています。
レス 
ありがとうございます。でも僕はクセの塊なので。僕からしたら、森くんとか為房君の動きは羨ましい。絶対僕には出来ない動きなんです。これまで、自分のところの殺陣は自分で立てるというスタンスだったんですけど、最近は逆に作ってもらってます。二人の殺陣を盗んだりしようと画策していますね。
__ 
なるほど。パターンを増やすという事ですね。

構えの話

__ 
さっきインタビューさせていただいた浅井浩介さんと、構えの話をしていたんです。武道じゃないですけど。その話をしている時に気付いたんですが・・・俳優の仕事を捉えた時、俳優にはINを待ち受けるという仕事があるんじゃないか。観客席はOUTから中間処理を想像するという職掌があるが、俳優のINには責任を持っていない。そして俳優は責任を持ってINに望まなければならない。(逆に、OUTからリバースしての中間以前の洞察には当然、責任を持たない)
レス 
はい。
__ 
待ち受ける。俳優はそのINをなるべく多く想定しておくべきじゃないか、と言っていたんです、浅井さんは。そこで、殺陣におけるINとは?まず、稽古の段階で相手の剣が振り下ろされる演技、それをどう認識すべきだと思われますか?
レス 
僕は相手の剣をほとんど見てないんですよね。
__ 
あ、見てないんですか!
レス 
というか、いつもと違う手で来られた時も「どうしよう」と思ったことはほとんどなくて。何でなんでしょうね?武道やっている人って、相手の目を見ているんですよ。目を見ていたら、どんな手してくるか大体分かるんです。武道の人は、目の動きを察知されない事を戦うための技術を確立していると思うんです。逆に、殺陣の人って、どんな手で行くかというのをある意味表現しないと行けない。だから、目がもう、自分がどんな風に行くかを発信してくれているんです。あ、振ってくるな、というのを見て。だから下手すると僕は殺陣の手は曖昧になっちゃって(笑う)危険なので覚えるようにはしているんですけど。それこそ為房君は凄いなあと思っています。毎回、同じ動きの殺陣が出来るんですよ。僕は毎回変わっちゃう。
__ 
逆に凄いですよ。そうか、目を見る、というのは聞いた事があります。
レス 
殺陣をどう作るのか、色々なやり方はあると思うんです。全てを細かく資料にまとめるようなやり方ももちろんあると思うんで。でも、相手の動きを感じてやるとか、あきらかに本気で殺しに来ている人の気配で来られると自然と出来上がっていきますね。だから僕の手法に近しい人とやっていると楽しいですよね。相手は明らかに僕の目しか見てない。お互いがお互いの動きを感じながらやる殺陣。
__ 
人間の目に宿っている膨大な情報。というか、人間の目が相手の目を見る時の知覚性能はヤバいくらい発達していて、直接に会う場合の様々な距離感の交渉なんてもう、目同士が決めている事なんじゃないか・・・とさえ思う。これはパソコン様でも未来永劫獲得出来ない能力だろう。そして、劇場で観客が俳優のどこを見ているか、というともちろん顔なんですけど、顔のどこを見ているかというとやっぱり目なんですよね。
レス 
ああー。
__ 
つまり観客は俳優の状態を非常に正確に見抜く事が出来る。いま俳優が何を感じているかを、観客の目は察知している可能性すらある。殺陣で言えば、目から相手の手が見えるのは、相手の認識や知覚が伝わるので、手順などは問題ではなくなるのではないかと思う。人間は視認システムに操られている。もしそこに設計ミスがあるとしたら、それは考えるだに恐ろしくはありませんか。

なんでこいつら、戦っているんだろう?

レス 
言葉で言ったら全部ウソになりそうな気がするんですけど、殺陣は所詮ツールだと僕は思っていて。殺陣師の為ちゃんもそう思っているかはアレですけど、お客さんが何を見に来ているかというと「何で戦っているのか」という事だと思うんですよ。舞台には物語を見に来ている訳じゃないですか。なんにも思い入れのない人がいきなり殺陣始めたところで、何も面白く無いと思うんですよ。不条理で面白いのかもしれませんけど。人物たちの戦う理由が、お客さんに合点がいった状態で、剣を交わしている。お互いのどうしても譲れないものが激突している時を僕らが感じて、それでお客さんも感じられたらいんじゃないかと思うんです。何故戦っているのかを示されない限り、剣を持って戦う人ではなく棒を振り回しているだけだと思うんです。木でできた棒を人の命を奪うものとして見せなくては意味がないと思うんです。
__ 
何故戦っているかを、伝える。仰る通りですね。申し訳ありません。ZTONの殺陣が美しすぎて視界が狭くなっていました。彼らの殺陣がカッコイイのは、登場人物達が生き様を掛けて戦っているからなんです。生命を掛けているからだ。速さとか正確さだけじゃないのか。
レス 
速さとか見栄えはお客さんの気持ちを盛り上げていくものなので、ZTONには必要なものだとは思います。それプラス、役の人生だとか、そういうものが必要だと思っています。
__ 
ZTONの良さは、そういう意識にある?
レス 
そうだと思います。やっぱりスピードが早くても、人格が乗ってなければあんまり格好良くないなと思ってしまう。そういうのを見ると逆に白ける人もいるのかなと思います。僕は白けます。戦わせたいだけで殺陣が出てくるってのは、それはちょっと残念だなと思ってしまいます。

質問 浅井 浩介さんから レストランまさひろさんへ

__ 
前回インタビューさせて頂きました、浅井浩介さんから質問を頂いて来ております。彼はわっしょいハウスという、京都から東京に移った演劇ユニットの俳優であり、今は烏丸ストロークロックの次回公演の稽古のため京都に滞在しています。「歳を重ねるという事に対して、どういう気持ちがありますか?」
レス 
僕はそういうの、あんまり難しく考えた事がないですけど、歳取るとそうですね、身体の話ですけど、やっぱりこう衰えとかを感じることもあるんです。昔はもっと早かったのになあ、とか悩んだりして。ジャッキー・チェンもそうなんですけど、昔は凄く早かったんですよね。
__ 
なるほど。
レス 
でも、他のもので見せていく事が出来ていくんじゃないかなと思います。老獪さだとか。それはそれで喜ばしい事で、それは若い人には絶対出来ない事ですよね。ZTONの役者としてこれまで勢いだけでやってきました。昔は感情が100%出ていればいい芝居だなあと思っていたのが、今は自分の後ろに自分がいて「そのセリフの吐き方で気持ちは伝わるのか?」みたいに言ってくるんですね。そうなるまでの28・9歳の時は役者として衰えていくのが怖くて仕方なかったんですが、自分を後ろから見るってことを始めた時から、違うアプローチから頑張れるやり方があるのかなと思うようになったりしました。それは昔の自分からは絶対に出てこない考えです。歳を重ねると体も気持ちもイヤでも変化していくので、そんな自分に追い立てられながら自分と折り合いをつけて昇華する。いつまでも変われる事はすごい楽しい事だなと思います。

僕は僕になりたい

__ 
劇団ZTONという存在の特殊性について。京都唯一のエンターテイメント集団として、やっぱり個人的に気にし続けている部分があって。エンターテイメントと一口に行っても色んなタイプがあると思うんですが、ZTONの場合は人を熱中させるタイプだよなあ、と。殺陣も単純にスリリングで、そういう存在は京都ではZTONだけになってしまった。が、そのレベルはどこと比べても遜色はない。
レス 
劇団ショウダウンさんが旗揚げされた頃に僕は学生していて、あんな事が出来たらいいなあと思っていたんです。新感線を見て河瀬君とすごいなあって言ってたり。でも彼らが目標ではありませんでした。僕らは良くも悪くも自分なりのすごく偏った価値観を持っていたんだと思います。要するに変態なんですよ多分。結局万人に受けるものを作ろうとしても自分が譲れない部分があるんですよ。性なんですね。「新感線になりたいんやろ?」と言われても全然ピンとこなかったり。一時期、僕らはエンターテイメントを目指している訳じゃないと言ってたんです。
__ 
ああ、言ってましたね。
レス 
明らかにエンターテイメントやけど?と思ってましたが(笑う)そこから、ちゃんと河瀬君がエンターテイメントをすると決めてからはやりやすくなりました。でも、いざ脚本書くと河瀬君なりに込めたいものがあって、彼が演出と脚本をやっている以上、絶対に自分なりの価値観やロマンを盛り込んでくるんです。そのロマン偏狭だから!おとなしく万人が喜ぶもの書いておけば良いのに!って思う事もあります(笑)彼は自分にしかかけない脚本を書くのが性なんでしょうね。それが歯がゆかったりしますが、その偏狭さが時々誰にもまねできない感動を作品に生み出したりもします。それがZTONの脚本の魅力かなと思います。なら、僕らもそこをきちんと支えていかないといけないのかな、と。
__ 
そうですね。
レス 
僕もチープな作品に出されたらイヤだな、と思っています。人の感情が動くような作品を目指して、ま、勝手にシーンを増やして見たりだとか(笑う)。色々しながら戦ってます、お互いに。そういう事をしていくから良いんじゃないかなと思っています。どこの劇団もそうだと思いますが。
__ 
まさに、人の感情が動く。たとえば「天狼ノ星」もいいシーンがたくさんありましたよね。レストランさんが演じられたセタが、地の章で最後にハクトを応援するシーンがあったじゃないですか。あれは本当に良いシーンだった。セタは天の章の最後で変な国作っちゃったりするけれど、やっぱり人間としての多面性というか、存在としての重さというか、これも大河ドラマとして本当に十二分な作品だったと思う。
レス 
嬉しいですね。そうなんです、前編にあたる天の章ではシュマリの死により憎悪や悲しみに憑りつかれ、マシラという国を作ってハクトを幽閉してしまうんですけど、別の時間軸である地の章ではシュマリのたった一言で自分の本当の気持ちに気づき、ハクトを心の底から応援するっていう所が、セタにとって一番大切なんじゃないかと思ったんです。実は最初は「コイツ何で応援してんねん」と思っていたんです。天の章の最後に自分の国を作るセンセーショナルを起こすのがセタとしてのゴールだと思ってたんです。でも地の章で、特に目立った活躍はしないけれども、シュマリの一言でハクトを心から応援できるようになるのが最後のゴールなんだ、と。天の章ではハクトを幸せから絶望の底に突き落とすほど憎んでいたけど、それはすべて一番大切にしたい親友への愛情の裏返しだったって思ってから演技が変わりましたね。
__ 
ありがとうございます。素晴らしい役作りをされましたね。そして、変な国とか言って本当に申し訳ありません。
レス 
いえいえ、変な国ですよアレは(笑う)最初に脚本を読んだ時、ビックリしました。一番王にふさわしくないこいつが天の章のジョーカーなのかよ!って。

レストランさんの稽古

__ 
稽古は楽しいですか?
レス 
僕は結構しんどいですね(笑う)。元々一人で色々するのが好きですし、一人で全部上手い事が回るんやったらそうしたい人間なんです。顔を突き合わせて打ち合わせするの、しんどいな、って。でも相手と色々な事を話して、メンバーの中で意見が完全に合致して「それ!」ってなった時は人生で一番うれしいです。その瞬間の為に我慢しています。一番面白い稽古は妥協しない稽古なんですよね。
__ 
妥協しない稽古。
レス 
『まあいいかっ』って妥協した稽古はおもんないなあと思うんですよね。でもやっぱり、面と向かって人に「お前は間違っている」とは言えないじゃないですか。でも何週間・一ヶ月とかが経つと、今言わなければならないという瞬間が絶対にあるので、その時にものすごい喧嘩になる事もあって。でも、そこで普段反論してこない人が反論してくれた時に、あ、いい稽古だなあと。それを言ってくれた時に、この稽古は成功やと思います。
__ 
そういう意味でのコミュニケーションが出来た時、座組はまさに集団そのものとなるのでしょうね。

端っこの役

__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
レス 
何か僕、端っこの役が多いんですよ。言い方が悪いんですけど。主人公みたいな役割じゃなくて、サイドを固める役。だから、こう動けばカッコイイんだけど、主役を立たせなくちゃいけないと思うと。毎回、自分をどう持っていくかを考えた時、悩みますね。レストランまさひろが良かったと言ってもらいたい気持ちももちろんありますので、脇を固める役だったとしても、そう言われるにはどうしたらいいのかなと。立っているだけでも存在感がある役者だったらいいなあと思いますね。
__ 
そうですね。
レス 
三國連太郎と、誰だったか女優が会話するシーンで、まるで楽屋裏の廊下で挨拶を交わすような、そのくらい自然な芝居をしていたらしいんですよね。それが一番すごかったって言っていて。そういうなんでもない事をしているのにアッと息をのむような演技の出来る役者だったら素敵だなあと思うんですよね。そういう芝居がしたいです。
__ 
「覇道ナクシテ、泰平ヲミル」では夏侯惇を演じられましたが、真王孫権編では覇道を歩み始めた曹操をカバーする役回りでした。
レス 
前編の偽蝕劉曹編では優しすぎる曹操を笑ってましたが、孫権編になって非情になっていく曹操の傍で、彼が偽蝕劉曹編で置いてきてしまった優しさが実はとても好きだったと思いたかったんです。過去の曹操が今の曹操を見たらすごい悲しいじゃないかと思ったので、過去の曹操の優しさを夏候惇で体現しようとしていました。まあ、敵対する武将には曹操を守るため殺気ばかり出していたので、そんなに単純にはできませんでしたが。

アマチュアの役者

レス 
僕は、プロの役者じゃないなあと思っていて。「プロ」意識を持つ役者はいますけど、僕自身は絶対にアマチュアだと思うようになったんです。最初は僕もプロたろうと思っていたんです。
__ 
ええ。
レス 
でもいつしか、「プロって何だろう?」って思うようになって。そんなに上手くもないし、凄い役者さんのように上手く出来ない。だったら、アマチュアとして自分の納得のいく演技を追い求め続けようと思うようになりました。ギャラ分働くって事ができないので「自分はアマチュアです!」と言って掛け値なしに全力でやりたい。「あいつプロなのに何も出来ないな」と言われるより「あいつアマチュアだからなあ」と言われる方が僕は悔しいんですね。雑草がどれだけ戦えるのかを見せたいという意識があります。アマチュアだからこそ、「アマチュアだから…」て言い訳をしたらカッコ悪い。全力でいきたい。プロって言いたければ俺を越えていけ!って思いながら、どこまでいつまでもアマチュア意識を持とうと思っています。
__ 
ありがとうございます。素晴らしい。
レス 
でも、ずっと自分は自分の演技には満足はしいひんのやろうなあと思いますね。満足!と思う日が来たら、芝居やめるんちゃうかな、と。

意識を変える

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
レス 
どんな風に芝居をしていくか、で言うと・・・少なくとも、もっと滑舌を良くしたいなとか、そういう初歩的な事に立ち返ろうかなと思っていて。というのも、人にものを伝える為にはどうしたらいいんだろうという、根本的なところを省みないといけないんじゃないかなと。勢いだけとかではなく。凄かったと言われるのを目指して、では何も変わらないなあと。凄いとかだけじゃなく、細かくて緻密なものを伝えられた方が楽しんでもらえるんじゃないかな、表現の幅が広がるんじゃないかと思っています。
__ 
なるほど。
レス 
だから自分の場合はまず滑舌なんですけど、そこを許してしまわれていたZTONもまた問題だったのかなと思っていて。まずは自分の中で意識を変えていこうと思っています。そうすればZTONも変わるかなと。あと、客演を増やしたいと思っています。ずっと同じ劇団の中でやっていると、そこでの王様やらお山の大将みたいになってしまう。呼んでもらえる訳ではないので、外に出ていけるように自分から発信したいです。あとは、元々僕は格闘技をしていたので、一から学び直していきたいなと思っています。
__ 
格闘技とは?
レス 
祖父から剣術を習っていました。剣道とはかなり違う、確実に相手の命削っていく剣術で。もう亡くなったので習えないので、他のところで剣術なり剣道を習ってみたいなあと思っています。

サブレとミニボウル

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
レス 
あ、ありがとうございます。
__ 
どうぞ。実際、大したものではないんですが。
レス 
(開ける)鳩サブレみたいなものですか?僕、鳩サブレ大好きなんですよ。と、これは・・・
__ 
お菓子のボウルですね。
レス 
僕、家でかりんとうとか食べるのが好きなので。ピッタリですね。
__ 
今回、衣裳が青だったじゃないですか。それをイメージしました。

いまは京都に

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。最近、浅井さんはどんな感じでしょうか。
浅井 
来月の末から烏丸ストロークロックに出演する事になりました。僕は東京在住なんですが、12月の前半ぐらいから京都に来て、芸術センターで稽古に参加しております。来月までは結構京都にいるかんじですね。学生時代は京都に住んでいましたので、第二の故郷じゃないですけど、身近な人にはおかえりと言われるようなそんな土地です。烏丸ストロークロックも、京都にいた頃何度か出演していたし、芸術センターで稽古をするのも久しぶりで、色々懐かしいという。
__ 
いいですよね、京都。
浅井 
はい。好きです。京都。
わっしょいハウス
京都にて自然発生的に活動を開始(2007年)。演劇団体。メンバーは劇作家/演出家の犬飼勝哉とわっしょいハウサー浅井浩介(ほか出演者/スタッフは作品ごとに流動的)。2010年に拠点を東京に移し、以降コンスタントに作品を発表している。何気ない日常に妄想や空想や目に見えないもの達がふと侵入してくる幻想的なテキストが特長。「六畳一間」と異界の融合――表現方法はシンプル。ギャラリーやフリースペースでの上演。ここ最近ではアクティングスペースから映像撮影をおこなう撮影パフォーマンスや客席オールスタンディングなど。舞台空間と外の世界との境い目をゆるやかに(そして遠慮がちに)飛びこえる。(こりっちより)
烏丸ストロークロック
1999年京都で旗揚げした、小劇場演劇を手がける劇団。現代人とその社会が抱えている葛藤をモチーフにした作品を各地で精力的に発表している。「演劇(舞台)でしか表現できない」「世代・趣味趣向を超えて心に訴えかける」作品づくりをポリシーに、ひとつのコンセプト・題材を用いた小作品の上演を数年にわたっておこない、その後一つの分厚く上質な作品へと昇華させる創作形態をとっている。2001年「CAMPUS CUP 2001」大賞受賞、2003 年「Kyoto演劇大賞」大賞受賞。(公式サイトより)

烏丸ストロークロック Re :クリエイション・プロデュース「国道、業火、背高泡立草」

__ 
「国道、業火、背高泡立草」。私は神戸のAI・HALLでの初演を拝見したのですが、非常に面白かったです。自分の故郷に戻ってきた男が、自分の町に復讐をするという。もうあの町は元には戻れない、それぐらいの大きな変化。その復讐も、法律に触れない範囲のもので・・・。そういう卑怯さが非常に悲しかった。町のあり方を経済面から捻じ曲げて終わり、みたいな終わり方で、その終末感や寂しさは凄かったです。我々も、彼らと同じように、自分のエゴの為に捨ててはならないものを捨ててきたんじゃないか。全体に巻き込まれて捨てたにせよ、それは共犯じゃないか、と。
浅井 
実は今回は、初演の脚本を書き換えての再演という形になっているみたいで。後半が大幅に書き換えられるらしいんです。
__ 
そうなんですね。初演の絶望がどのように変わるのか、という点と同時に、何があの作品を変えるのか、にも興味があります。
烏丸ストロークロック Re :クリエイション・プロデュース「国道、業火、背高泡立草」
輸送トラックが行き交う、国道9号線沿いの町「大栄町」。 昭和の高度経済成長期に地元出身の国会議員がもたらした土木利権で興ったその町も、時代の移ろいと政治家の死によって過疎化が進んでいた。時は平成。大いなる栄華をもう一度と、次の権力者擁立を企てる町議選に人々が白熱するある日、大栄町に大川祐吉が帰ってくる。
人々は驚いた。なぜなら、20年前に広大な山林を焼失させ、逃げるようにこの町を去っていった、あの“ビンボーのユーキチ” が今ごろになって現れたからだ。
駅に降り立ち、スーツケースを引きずりながら国道を彷徨する男の姿は瞬く間に町中に喧伝され、人々はその不気味な報せに警戒する。みな、ひとえに、祐吉の復讐に怯えていた…。

2013年初演。ツアー各地で賞賛を浴び、劇団初公演地だった広島では追加公演を行うなど大きな話題となった佳作を、2014年「短編 神ノ谷第二隧道」を経て大幅に加筆、さらなる深化を遂げる“Re”クリエイション作品。経済に翻弄され金を追い続けた人物とその業。日本の宿痾を架空の町から透かし見る、烏丸ストロークロックの大栄町シリーズ最新作。

出演者/阪本麻紀 桑折現 今井美佐穂 小熊ヒデジ 新田あけみ 浅井浩介 イトウエリ

作・演出/柳沼昭徳  音楽/山崎昭典、中川裕貴
演出助手/柏木俊彦   舞台監督/山中秀一   舞台美術/杉山至  照明デザイン/魚森理恵  照明操作/尾崎翔  音響/小林祐也  宣伝美術/清水俊洋  制作/富田明日香
協力/有限会社現場サイド、有限会社アトリエ、第0楽章、てんぷくプロ、K.I.T.、わっしょいハウス、有限会社レトル、quinada   京都芸術センター制作支援事業
助成/一般財団法人地域創造  後援/特定非営利活動法人京都舞台芸術協会  製作協力/烏丸ストロークロック
津公演
2016年
1月30日 16:00
1月31日 14:00
伊丹公演
2016年
2月6日 18:00
2月7日 14:00
知立公演
2016年
2月13日 14:00
2月14日 14:00

対話

__ 
稽古は今、どんな感じで進んでいますか?
浅井 
年内は稽古場での対話が多いですね。シーンの稽古をするというより、柳沼さんが考えている事に対し俳優が質問したり、逆も。稽古が始まった時に、みんなでこの作品の舞台である「大栄町」のモデルになっている町に取材に行きまして。烏丸ストロークロックの作品って、そこの風景だとか、土地の人々のニュアンスみたいなものを大切にしていると思うんです。「大栄町」の取り残された感じというか・・・田舎の町にフィールドワークに行って、駅の感じとか風景の感じを見てきました。
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いかがでしたか。
浅井 
やはり実際目で見たり体で感じたものって大きいなあと思います。個人的にも自分がやる役に関係ありそうな場所に自分で行ったりしてて。お客さんに、役や場所のニュアンスが細かいレベルまで伝わるように、その風景の中に何かを見つけようとしています。柳沼さんから、そういうものを繊細に表現できるようにして欲しいというオーダーがあったんですね。今は、その風景や町にどういう感触があるのか話して貯めていくという段階です。来年になったらもっと具体的な稽古になってくるでしょうが。
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浅井さんの役は、どんな人間なのでしょうか。
浅井 
別の土地から来た農業研修生という立場の青年です。お金を貰って、町の農場で働いている。「自分はあえて田舎に来ている」という意識があって、でもその裏にはそこに来るしか無かったという部分がある。本人は、外から来た人間なので周りを田舎者だと見下して、でも、そこで暮らすうちにそこの人間になっているという。内にはどうにもならない鬱屈を抱えつつ。見てくれは田舎のヤンキーなんですよ。田舎ってヤンキーが多いイメージじゃないですか。本人は、その土地で暮らすためにあえてヤンキーっぽく、という意識で演じているが、実際にはそうなってしまっているというか。うん、複雑な田舎のヤンキーです(笑)。
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自分がそこにいるために、周囲を理解しようとしている、という事でしょうか?
浅井 
理解というより、合わせてやっているという感覚で、でもそこから抜け出せなくなっているという感覚ですね。

「入れておけばいい」

浅井 
どんな役でもそうだと思うんですけど、人間だから複雑なんですよね。だから色んな気持ちというのを、出来るだけたくさん入れておくというか。「こういう時はこうする」みたいなのが決まってしまうと、単純になりがちというか。実際に本番が近くなったら色は決まっていくと思うんですけど、いまはとりあえず、「こういうこともあるかも」と、色々な事が出来るようにしといて。それを演出の方と、「そうならないんじゃないか」とか「それがいいんじゃないか」とかを話しつつ、徐々に、その役がどう行動するかの選択肢を絞っていくというか。
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決めていくのではなくて、たくさんの選択肢を取り込んで、徐々に絞っていくんですね。
浅井 
そうですね、だから今は切り捨てていくというよりは、入れておけばいい、と。間違った事も今の内にやっておいた方がいい、と。
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INとOUTがあって、その間の処理部分を作るのが役者の役作りの目的なのかなと思うのですが、そういう事でしょうか?
浅井 
INが少ないと、OUTってそれより少なかったり、単純なものになってしまうというか。INが少ないのにOUTを大きくしようとするとすごくウソっぽくなってしまうんですよね。だからとりあえずINを多く持っておいて、出来るだけ色んなOUTが出来るようにしておくという感覚ですね。小さくも出せるし大きくも出せる、こっちにもあっちにも行ける、その為の様々なINを持てるようにするという感じです。
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INのプールか・・・今気付いたんですが、俳優って、OUTするための役割じゃないですね。OUTするためのINをする(感じる)仕事なんですよね。
浅井 
そうですね、どっちかと言うと出すことより採り入れることの方が重要な仕事な気もしますよね。それが出来るかどうか。
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「見る」「聞く」「感じる」「考える」という仕事。それどころか、セリフを喋っている時もそれらの受容の作業は生き続けている。
浅井 
そうですね、聞くという事は重要視しているのかもしれない。役として舞台に立っている時、情報を初めて貰う瞬間というのは大切にしていますね。それにきちんと驚けるようにしておかないと、すごく、狭まってしまうというか。
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同じ作品を数ヶ月稽古していると、摩耗していくのは想像に難くない。常に驚けるというのはやっぱり凄く大変かもしれない。
浅井 
やればやるほど、逆に繊細な感覚を取りこぼしていってしまうこともあるので、それをいかに乗り越えるかというところは気を付けています。固まってきちゃうんですよね。こうしたら上手く出来そうだ、とか、失敗したくないという気持ちもつい生まれてしまうので。そういう段階は必要だと思うんですけど、毎回の稽古でゼロの状態でいようと思います。鎧を着ないようにして、すぐ死ぬような状態にしておかないと驚けないというか。
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あえて防具を外す。
浅井 
その状態でいないといけないというか・・・稽古とか作品の作り方についても同じことが言えるかもしれません。何もないところから形にしようと積み木みたいに積み上げていって、稽古で完成させたものをお客さんに見せようとするような、固まったものを再現してみせるという事ではなくて、毎回その場で積む為の・積む感覚を得るための稽古。
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大仏を建立してそれを見せにいくパターンと、サッカーの試合を見せに行くパターン、そういう事なのかな。
浅井 
ああ、そうですね。最初から道筋を決めていって、その道筋を覚えるための稽古ではなくて、なんか、毎回その、俳優の道筋によって積み上がるかの稽古。
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その中間に寿司屋は位置している。
浅井 
寿司屋ですか。
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寿司屋なりの味やスタイルが全部決まっていて、他の様々な条件と、お客さんの前に出し、もてなすためのメソッドを手に入れる修行。
浅井 
なるほど。寿司屋パターンもあるかもですね。職人感ありますね寿司屋(笑)。色んなスタイルがあって、どれが良い悪いじゃないと思いますけど。でも根本としては、そういう稽古意識じゃないといけないのかなと思っています。もちろん作品によって違いますけど、でも、サッカー的な感覚でいないと何も面白いことは出来ないんじゃないかと思います。