ユニット美人の演技とサッカーのドリブル技術について

__ 
今回のユニット美人は、どんな経緯で出演が決まったのでしょう。
岩田 
メイシアターの公演の演出助手を紙本さんがしてはった時に、ちょっと、スケジュールが空いていないかと聞いて下さったんです。メイシアターつながりですね。申し訳ないんですけど、実はユニット美人さんは知らなくて。劇団衛星さんは知っているんですけど。
__ 
そうなんですね。実は、ユニット美人は私にとって非常に大きな存在です。(インタビュアーが所属している)劇団衛星内のユニットだし、単純に彼らの事が好きなんですけどね。実は本日、稽古にお邪魔させていただきましたが、もちろん面白かったです。いかがでしたか?
岩田 
そうですね、場数がやっぱり全然違うんですよね、黒木さんも紙本さんも、演技のアイデアがぽんぽん出てくるんです。最初はどうしたらいいのか全然分からなかったです。今はとにかく喰らいついて学ばせてはもらっています。今回の稽古場は、まずやってみる、というのが出来るんですよね。違っていたら違う、と指摘してくれます。
__ 
シーン稽古も少し拝見しましたが、三人で丁寧に作っているという印象でした。台本の台詞を元に、芝居の勘所を探っていくという感じ。台本に寄らずに、現場で作っていくというスタイルなのかな。
岩田 
これまで私が参加していた稽古場では、台本をきっちり表現していったりしたのが多かったですね。戯曲家の苦労して絞りだした言葉を間違えたら駄目だって高校時代から頭にもあったりして。kittでは、土田さんは台本から構想して関係性や呼吸を探っていくという現場だったんですけど、それとは全然違うし(笑う)。もう何か、パワーとリズムみたいなのを大事にしていく人たちなので。難しいなと思いつつ、参加出来て光栄です。
__ 
どこかで慣れるでしょうね、きっと。ユニット美人のそういうスタイルって、サッカーで例えたらボールをある程度離すタイプのドリブルなんじゃないかと思うんですよ。何なら、ゴール前ですら適当に流すというか。
岩田 
そうですね。
__ 
岩田さんも、どこかのタイミングでふと、足先からボールを離すみたいな瞬間があると思います。本番中に。それが最大の見せ場だと思いますね。楽しみです。
岩田 
うわあー、出来るかなあ。ボールにしがみついてそうで怖い。でも、見つけていこうと思います。

kitt

__ 
またいつの日か、拝見出来ればいいと思っています。
岩田 
はい。いつの日か。是非とも。
__ 
次の公演が楽しみです。個人的には、俳優・高坂さんをもっと見たいです。彼が張っているkittが見たい。岩田さんは、どんな思い入れがありますか?
岩田 
私、団体の立ち上げに携わった事はなくて。初期メンバーとして、どこかにいた、という事はなくて。私なんかでも入らせてもらえるんだ、って感慨がありました。でも、私はここで何をするべきなのかとかが分からなかったんですよね。だいぶ甘えてしまっていたと思います。もっともっと動いていくべきだったと。メンバーの事は大好きだし、本当にお世話になったんです。
__ 
年齢も性別もバラバラの4人ですね。
岩田 
高橋明日香とも大学ではめちゃめちゃ仲が良かった訳では無かったんですけど、kittを始めてからは身近にいてくれる存在になったり。高坂さんもそうだし、土田さんには私たちを引っ張っていってもらいました。もっと私たちも、若い人たちで、やっていきたいと思います。

自分の色を決める力

__ 
岩田さんが近大の演技・演出コースに入ったのは、どんな経緯があるんでしょうか。
岩田 
元々高校演劇をやっていて。大学はどうしようか、と思っていたんですが、AI・HALLの企画で、「ハイスクールプロデュース」という企画がありまして。普通の高校生とプロの演劇家が一緒に舞台を作るという企画なんですね、そこに応募して、オーディションが通って、小原延之さんと出会って一緒に作品を作ったんですよ。福知山線脱線事故を扱った、「鉄塔の上のエチュード」という作品でした。その時に、小さな声の台詞をきちんと自分自身の今の状態で考えて見も知らない大人達の前で喋っていてもいいんや、と。
__ 
そういう意味での自由度があったんですね。
岩田 
で、もうちょっと芝居を勉強したいなと思って。大阪芸大と京都造形大も受けたんですけど、やはり近大に行きたいと思って。
__ 
近大ではいかがでしたか?と申しますか、実は私、近大出身の方に取材するのは初めてではないんです。曰く、近大の演技・演出コースは目的意識を持ち続けないと何も身に付かないとか。
岩田 
間違って入った人とかは多いみたいですよね、でも何かしら近大色に染まっていくと思います、自由に出来るから。自分で責任を持たないとそのままズルズルと勘違いして舞台を続けていく事になるのが、少し怖いかなと。やっぱり。でも軍隊的に、何かのメソッドに染められる訳じゃなくて。舞台やってるのに、画一的なのになるんじゃ意味ないから。
__ 
まさに、そこが問題なんですよね。一つの強いリーダーシップでまとめられた劇団の俳優、その強さがまずあって、で、自由な役者の良さもあって。その中間を探って行けたらと。どちらかに振れていくと思うんですが、大学でそれを決めるなんて、高校生を上がったばっかの大学生には難しい事なんじゃないかなと思う。
岩田 
そうですね。難しいと思います。だから先輩の真似をしたりして、それが正しいと思いこんだり。先生こそが正しいというところに陥る事もあるんですよね。「それは違うよ」としてくれる先輩がいれば話は別ですけど。
__ 
自分の選択をする能力、ですね。それがまた難しいですよね。
岩田 
そうですよね。

食べて覚える

__ 
岩田さんが舞台を続けるモチベーションを教えて下さい。
岩田 
色々な事を知っていく事、なんですよね。私本当にバカだから(笑う)台本に書いてある事を始め、色々な知識を得られるから。それを納得いくまでかみ砕いて体に落として、そして体から出せる場所なんです。ダンスも同じで。苦いものでも辛いものでも、飲み込んで出す、みたいな。知りたいんですよね、その食感が何なのかとかどういう反応があるのかとか。知識を得るだけじゃなく、体を通す事って大切なんじゃないかなと思うんですよね。
__ 
なるほど。ではこれまでに一番、辛かったのは?
岩田 
劇団京芸さんの「天使のかいかた」という、小学生向けの公演をやらせてもらっているんですが、子供達の反応が直接的過ぎるんです。大人の反応とは全然違う。目の前で直接的なリアクションをされるんですよ、私も(ああそうだよね、そう思うよね)みたいに思っちゃうぐらい直接的。
__ 
大人みたいに、いったん飲み込んでくれる訳ではないんですね。
岩田 
もう、嫌なものはイヤ、楽しい時は楽しい、と直接返してくる。大人は丸めて飲み込んでくれるけれども。でも、そう思わせているのは自分なので、頑張ろうと思うしかないですね。
__ 
辛いばかりじゃないですよね?
岩田 
そうですね。素直な感想を返してくれる子もいるんですけどね。
__ 
子供向けのお芝居をするときに、コツみたいなことはありますか?
岩田 
どれだけリラックス出来るか。緊張した大人を見せてもだめなんだな、と。劇団京芸の先輩方にも、頑張らないように頑張れ、とよく言われてます。

質問 岩切 千穂さんから 岩田 奈々さんへ

__ 
前回インタビューさせていただきました、岩切千穂さんから質問です。「役者さんの、どういうところが好きですか?」この岩切さんはですね、役者ファンでもあるんですよ。役者の、表現に打ち込んでいる姿が好きだそうです。いかがでしょうか。
岩田 
どういう役者さんが好きか、ということだったら、どれだけ舞台の事を好きなのか、というのが伝わるような役者さんが好きですかね。いまやってるメイシアターの企画で、舞台をやったことがない人とお芝居を作ったりしているんですけど、思いの込めようが凄い人もいて。この作品への愛があるなあ、と。
__ 
作品への愛。
岩田 
稽古場以外での振る舞いとかでこそ、それが伝わるんですよね。でも感情的な思いという訳じゃなくて、どこまで打ち込んでいるか、マニアックになれているかみたいなところが見えるんだと思うんですよ。それは劇中ではっきり見えると思うんです。例えばこうしてコップを持ち上げるような動作一つとっても、どういう風に持つべきなのか、研究している人。
__ 
役者のそういう部分って、いや、人の、意識的に出来ない振る舞いって、ものすごく伝わってしまうものなんですよね。
岩田 
お客さんはさらに厳しい目を持っているので、だからある意味抜かり無くしないといけない。もっと想像しろ、とよく言われます。
__ 
そう、体重が乗っているかどうか、すぐ分かる。

演技の含み、役者の余裕

__ 
いつか、どんな演技が作れるようになりたいですか?
岩田 
どっちとも取れるような、断定の出来ない演技を作りたいですね。
__ 
含みがある、余裕がある、みたいな事?
岩田 
たぶんその役の中では「紅茶が好き」なんですけど、でも実際にはちょっとだけ残しているみたいな。ツッコミの余裕があるような、疑いを持たせるような、そんな演技ですね。見た感じは熊なんだけど、「熊・・・熊?」、みたいな、ちょっと違うような。お客さんがその人物の他の部分も想像出来るような方がきっと楽しいんですよ。ダンスでも同じで。
__ 
ちょっとフェイクが入っているような?
岩田 
フェイク、そうですね、そっちのほうが、見ているお客さんは楽しいやろうなと思います。私はいつもストレートな感じばっかりなので、そういうのが出来たら。ストレートだけど裏切りもある、そんな演技。

これから

__ 
これまでで一番、勉強になった舞台を教えてください。
岩田 
もう、全てです。どれが一番とか無いですね!
__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
岩田 
色んな人に、ダンスと芝居どっちがしたいの?って言われる事が多くなってきて。役者をしていたから呼ばれたダンスの舞台もあり、その逆もあって。器用ではないんですが、どっちもやっていきたいと思っています。
__ 
ありがとうございました。今日のユニット美人の稽古でも、岩田さんの動きのキレは素晴らしかったです。
岩田 
いえいえ、まだまだです。今日の稽古は楽しかったです。あんまり稽古が楽しいと感じた事はないんですけど、ユニット美人さんの稽古は楽しいです。

ブルーのペンケースとブルーのペン

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
岩田 
ありがとうございます。何だろう(開ける)じゃかじゃんーおっ。わおー。好きな色ですよ。こういう青色、好きなんですよ。そしてこれは・・・
__ 
ペンですね。
岩田 
やった。ダメだし書くのに使わせていただきます。

岩切さんの演劇初め

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、岩切さんはどんな感じでしょうか。
岩切 
よろしくお願いします。最近はいい感じです。いい感じというのが合ってるかどうか分からないですけど楽しいです。時々落ちたり上がったりはしてるんですけど、それも含めて。いい感じです。
__ 
何かいい事があったとか?
岩切 
今日かな。このインタビューが今年の演劇初めなので。ワクワクしてます。
__ 
ありがとうございます。さて、岩切さんの参加された演劇ユニット「フルーツケイク」も、去年は火曜日のゲキジョウなどに出演したりと大忙しでしたね。お疲れ様でした。去年を振り返って、いかがでしたか?
岩切 
色んな縁に恵まれてたなあと。役者以外の活動も、ご縁があり様々と出来ましたし。2月には浪花グランドロマンさんの演助をさせていただきます。
__ 
そうそう、最近は助演出としても活躍されていますね。
岩切 
はい。きっかけは、燈座×虚空旅団「界境に踊る」という舞台で初めて演助をさせていただいたのですが、まぁ、ちゃんと出来てたのかは謎ですが、そこの舞台で一緒にさせていただいたのがきっかけで打ち上げの時に声かけてもらいました。
フルーツケイク
The Stone Ageヘンドリックスから飛び出し法善寺横丁で産声をあげた、ちょっとイカれた不動明王系女優【本木香吏×片山誠子×岩切千穂】ユニット。「奇人変人」という意のスラングより命名。(公式Blogより)
フルーツケイク 次回公演「玉乗りマストン」
作・演出/朝田大輝
▼日時
3/29(火)20:00
3/30(水)16:00/20:00
3/31(木)11:00★/16:00
▼料金
前売/2500円
当日/2800円
学生/1500円
リピータ/1500円
★2000円

上演時間約90分

▼場所
インディペンデントシアター1st

▼出演
本木香吏 片山誠子 岩切千穂

浪花グランドロマン ウイングフィールド提携公演 「寝られます―魔女ものがたり・その2―」
作・別役 実 / 演出・浦部 喜行
▼会場 
ウイングフィールド
▼日時 
2016年2月26日(金)20:00
27日(土)17:00/20:00
28日(日)12:00/16:00
※開演40分前より整理券を配布いたします。
※開場は開演の30分前。
▼CAST
関角 直子    上畑 圭市

あらすじ
男が今夜の宿を求めて歩いていくと「寝られます」という看板のついたドアがあったので、声をかけて入ってみた。人形に囲まれた女主人は、男の左足が悪いのを見るなりこう言った。「それ、ありましたよ。あなたの左足…。」
それが、この女主人と男の奇妙な夜のはじまりだったのだ―。不条理と不可思議たっぷりの、別役ワールドな2人芝居をお届けします。
▼料金
前売: 2500円/当日:2800円
中高生:1500円 ※小学生以下は無料
▼予約・お問合せ
予約フォーム  
https://www.quartet-online.net/ticket/neru
浪花グランドロマン
Tel & fax: 06-6245-9599/Mail:info@ngr.jp
▼STAFF
演出助手  岩切千穂
舞台監督  寺岡 永泰
美術 佐野 泰広(CQ)
音楽・音響プラン  響 音次郎
音響 大西 博樹
照明 山本 有香(劇団空組)
宣伝美術  白山 愛
制作  浪花グランドロマン
協力
CQ 流星倶楽部 劇団空組

「タイソン大屋のはいどーも!」

__ 
去年の11月は「はいどーも!」がありましたね。まずはその話から。「はいどーも!」はタイソン大屋さんの即興劇のイベントで、岩切さんは去年の11月の開催に参加されてましたね。錚々たるメンバーでした。非常に楽しかったです。大阪のインプロのイベントならではの空気感だったと思います。岩切さんの思い切りの良さが非常に良く出ていました。
岩切 
他の役者さんみんなが凄いところに、しかも即興のイベントで、私が出てもいいのかと。周りの役者さんは固定ファンもいるぐらいなのに。だから、私が出来ることは振り切ることしかないと思って。もしかしたら振り切ってしまえば、だれも見たことないなにかが出るんじゃないかと思って頑張りました。
__ 
インプロの気構えは「Be in the moment」というのがあって。相手のネタを受け入れるというか、その場にいる事を受け入れるのが大事だそうです。岩切さんと、それを受けるタイソン大屋さんに、それを強く感じました。
岩切 
そうなんですか!嬉しいです。でもやっぱり、共演者の方が凄い方なので、飛び込んでいけたのが良かったです。
__ 
私が見た回は、岩切さん演じる荒れたアイドル志望がタコ星人に身体を乗っ取られるという話になりましたね。あの時の岩切さんの存在感が、「吠え」ともいうべきか、若侍的な居方が印象的でした。ご自身では、どんな思い出がありますか?
岩切 
毎回、ドアを開けたら始まるというルールなんですけど。昼の回で私、そのキッカケをあまり分かっていなくて。外出た瞬間に会場がシーンってなったから、いつ始まるのか混乱して。私、一旦ドアを開けて「いつ始まるんですか?」って確認みたいに言っちゃったんですよね。
__ 
あっ。
岩切 
これが始まったって事かって一瞬ザワッとしたんですけど、タイソンさんが「始まってしまったやないか!」て感じで。あの時、緊張とか色んなものが吹っ切れました。
__ 
度胸が据わったんですね。その回、見たかったですね。
岩切 
そんな感じで作って下さったんですよ。
__ 
素晴らしい。
「タイソン大屋のはいどーも!」
毎回ツワモノなゲストを招き、台本の無い、すじなしバトルをし、役者の限界に挑戦する企画。不定期開催中!(公式サイトより)

人前で芝居をするなんて

__ 
岩切さんが演劇を始めたのは、どういうキッカケだったのでしょうか。
岩切 
バイト先の人が映画の学校に行きだして。そうなんだと思ってたら、学校の課題で撮らないといけないのがあるらしくて。頼んでいた女優さんがいなくなったという事で、私に出てくれへん、と言われて。やった事ないんで、と一度は断ったんですけど、引き受ける事になったんです。
__ 
最初は映像だったんですね。
岩切 
そうですね、人前で芝居をするなんて考えられへんくて。こうやって話したりするのも恥ずかしいのに、人前なんて無理!って。まぁ今は、何とか。
__ 
初演技は。
岩切 
怒る演技でした。ラブホテルの一室で、相手に怒られてキレ返す、みたいな。人生でした事が無かったんです、人にキレるのを見せるなんて事。それが気持ち良かったんですね。あ、何だろこれ、って。
__ 
一番最初の舞台は?
岩切 
その映像で共演した方の劇団に誘われて。

フルーツケイク結成!

__ 
フルーツケイク結成のキッカケは。
岩切 
ストーンエイジさんの「結婚しようよ」の打ち上げで、席の並びが私・誠ちゃん(片山誠子さん)・本木さんがいて、目の前にアサダタイキさんがいて。いきさつは忘れたんですけど、誠ちゃんが「アサダさん、この3人に書いて下さい」って言って、じゃあやろうか、ってなって、ストーンエイジの制作の閑社さんも入って。ってのがキッカケです。
__ 
私が最初に見たのフルーツケイク作品は「吸血姫と透明少女」かな。とにかく本木さんが面白かったですね。
岩切 
本木さんがまた凄いですよね。めっちゃ面白い。
__ 
片山さんもまた面白可愛かったし、岩切さんは役にハマっていた。この3人、まとまった感じがあり、でもそれぞれ特徴があっていいですよね。もっと見たいですね。
岩切 
嬉しいです。

全員が全身で作る

__ 
岩切さんがお芝居を続けているのはどうしてですか?
岩切 
今、一番近くに演劇があるからですかね。まあ自分から求めているんですけど。演劇を作る関係って凄いと思っていて。普段は見ない顔を見るので。私にとって、自分から自分を開くのって凄い事で。普段自分から発言するのが得意じゃなくて。
__ 
自分の全てを注ぎ込まなければならない。
岩切 
それが出来ているかどうかは別として、役に対して、作品に対して、それぐらいの気持ちじゃないと変なのが出来る。変な引っかかりがあったら、自分自身まで止まってしまうんじゃないか。そうすると、見に来ている人にもなにも伝わらないかもしれない。演劇の種類にも寄るかもしれないですけど。
__ 
引っかかりがあると止まってしまう。お客さんに目を見られると、役者は(基本的には)裸にされてしまう。人間の目の精度はとても高いから。そこでは役者の芝居の、精度というか純度の高さが問題なような気がする。
岩切 
そういう演技のやり方が分からなくて苦労しています。演出や、共演者の方に助けていただいてて。自分は見れていない部分がたくさんあるので。
__ 
難しい部分ですよね。自分の責任において演技を作るって。
岩切 
難しい。何やろう、出来る事は全部しようって。勢いじゃないですけど、体当たりで行こうと思います。相手にもちゃんと。でもそうしてたら、次は日常に生きるのがしんどくなってたりします。
__ 
「はいどーも!」で見せた気っぷの良さがあればどこ行っても大丈夫だと思います。
岩切 
いやあれは、自分で進められて、何をしてもOKみたいな芝居なので。実際掛け合いが上手く行かない時とかもあって、普段のコミュニケーション力の弱さが出てしまいました。そこが一番大事やのに。
__ 
良い芝居に近づくのは難しい事ですね。
岩切 
出来たとしても、中身はどうなのか、とか。
__ 
そこへの行き方とかね。
岩切 
そこがまだ、全然。
__ 
パッといけてしまう人もいますけどね。
岩切 
そうですよねどうしているのか全然わかんない。頑張りたいです。でも私のそんなんはどうでもよいかもしれなくて。そこで一緒になった方々とみんなで作品を作りたいです。観に来てくださるお客様がなにを受け取れるように届ければ。
__ 
突然ですが、私は「才能」という言葉が全面的に嫌いなんです。その人の力を、よく分からない向き不向きの事でしか捉えてないんじゃないか。その人の全存在を評価したいんですよね。だから、さきほど岩切さんがあおった「自分を投げ出さないといけない」というのはとても好ましい事だと思う。
岩切 
ありがとうございます。なんだか苦悩ばっかり語ってしまってすみません。

質問 地案さんから 岩切 千穂さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、舞踏家の地案さんから質問を頂いてきております。「将来のでっかい夢や目標はありますか?」
岩切 
将来は自分で何か出来たらいいなと思ってます。自分を使って何かをする。
__ 
何か、事を起こしたい?
岩切 
というか、自分を使いたい。
__ 
それはもしかして、自分を試したいから?
岩切 
そうなのかな。
__ 
というのは、その地案さんが「中国で踊って、自分を試したい」と仰っていて。それよりも、自分を「使いたい」?
岩切 
そっちの方が近いかもしれません。自分がやった事のないのを味わいたいという方かかもしれない。指でどこかを示そう、指先まで神経が通るってどんな感覚なのかを再確認したいというか。それは家でやれば?なのかもしれないですけど。
__ 
なるほど。
岩切 
分からないですけど、他のところで既にやっている事を試す事になるかもしれないんですけど。でも伝手がないので、自分で試すのもいいのかなあ、と。自分が何をしたいのかまだ分からないんですけど。でも、自分を使いたいんです。

存在のありかた

__ 
座組の中で、どんな存在でありたいですか?
岩切 
あんまり意識した事はないですけど、自分の周りにいた人や、一度関わった人の事はとても大事で、人生の一部になってて。その人が居なくなったらとても悲しいというか。大事にしたいです。変わらず、どこかにいたいです。でもあえていうなら周りの空気くらいでいたいかな。「あ、おるな」くらいで。
__ 
パズルの1ピースでありたい?
岩切 
だから、私が必要ならいつでも呼んで下さいという感じです。たくさんの人の中から、わざわざ自分を呼んでくれたんだったら、全力で向き合う。そんな大げさじゃないですけど。
__ 
縁は大切にしないといけないですね。私も、断ってしまった仕事への後悔ってありますし。
岩切 
きっとそれは、またご縁があると思って。私にもそういうのはあるんですよね、その時は申し訳なくって、でも私じゃない人に決まったら絶対それはそれで良い作品になるし、ちょっとくらいは悔しいという思いはするかもしれないですけど。でも、プラス思考でいこうと思います。
__ 
なるようにしかならないですからね。
岩切 
それを無理矢理やるのは、しんどいんじゃないかと思います。悲しいですけど、無理はしないというほうがいいかもしれない。
__ 
また一緒に、やることがあるかもしれませんしね。
岩切 
もしかしたら今やってたら抱えきれなかったかもしれない、とか。その次が来るまで頑張ろうと思えるみたいな。

撮影アシスタントの岩切さん

__ 
映画のアシスタントとかもされているんですよね。「乱死怒町より愛を吐いて」とか。
岩切 
映画に関わるのは凄く楽しいです。映画は不思議ですよね、自分が作品の一部になっている感覚があって。作品になったら、少し間を置いてから見れる。
__ 
自分が一つの何かになる、というね。
岩切 
全ての人で最後に持っていくみたいな。
__ 
この間は東京にも映画アシスタントとして行ったんですよね。
岩切 
縁があって呼んで頂けて。本番と丸かぶりだったんですけど、本番後の打ち上げ後に夜行バスに飛び乗って、朝起きたら別の土地やってワクワクしたり、カラカラを持って現場に行って。凄い人たちもいたりする現場で、最初は凄く緊張するんですけど、そういう状況の中で焦って、自分が思った通りに動けているのかどうか分からなくて。でも来たからには、と思って。でも結果的には楽しかったです。現場が好きなので。
__ 
仲良くなれましたか。
岩切 
仲良くなれましたね。撮影現場ではスタッフ全員が同じメンバーなので。でも一番の仕事は、邪魔をせずに現場がやりやすいようにすることだし。何もなく空気みたいな感じで動けたらなと思います。
__ 
活躍されたんですね。
岩切 
「乱死怒町より愛を吐いて」でもお世話になりました、島田角栄さんの新作でした。今年中に公開すると思います。あと、実は「乱死怒町」での尾道での撮影の時に、今飼ってるジャンゴを拾ったんですよ。
__ 
あ、あの可愛い黒猫の。岩切さんのブログとかで拝見しました。
岩切 
最初、倉庫の隅みたいなところから猫の鳴き声が聞こえてきて。主演の後藤まりこさんと探ったら黒い子猫がいたんです。何か威嚇してくるんですけど付いてきて。後藤まりこさんが飼う事になったんですけど、私の方に懐いてしまって。今は1歳半くらいで、甘えん坊なんですよ。

心のままに

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
岩切 
次はフルーツケイクがあるんですが、その後は特に何も無いので。無いなら無いなりに、何かをしようと思います。それが何かはまだ分からないですけど。心で動こうと。
__ 
そうですね。心のままに。

黒猫のボールペン

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
岩切 
ありがとうございます。(開ける)何やこれ。
__ 
ボールペンですね。書けますか?
岩切 
大丈夫みたいです!ありがとうございます。

劇団ZTON「覇道ナクシテ、泰平ヲミル」

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。劇団ZTONのレストランまさひろさんにお話を伺います。さて、劇団ZTON「覇道ナクシテ、泰平ヲミル」、非常に面白かったです。お疲れ様でした。三国志を下敷きにしたエンターテイメント演劇というと手垢が付いたジャンルのように思われるかもしれませんが、これは本当に現代に演じられるべき作品だったと思います。龍という神的な力によって動かされていた大陸が、本来の人間の力によって糾える歴史に戻っていく。人間の歴史の泥臭さや血みどろの戦いの凄さ。そして、人間一人が生きる事自体の政治性。三国志を題材に、生きる事と政治、その狂おしいまでのドラマを描き出した傑作だったと思います。
レス 
ありがとうございます。そう仰っていただいて、稽古した甲斐があります。
__ 
そして、HEP HALLという狭い空間であれだけ早くて正確でカッコイイ殺陣が見れるとは。レストランさん的にはどんな公演でしたか。
レス 
僕の役は夏侯惇という、まっすぐな男として描かれた曹操の部下でした。為房君の劉備とか、すてらさんの孫尚香とか、泥臭い人物たちに振り回される役割だったんですね。曹操達はあまり苦労をせずに生きてきて、色々な事に巻き込まれながら少しずつ乱世に身を投じていく側だったのですが。泥臭さって、例えば、嘘を付いたりどんな手段を用いても生きていく悪党って事でもあるわけです。今回はそういう彼らが主人公でした。
__ 
言わば、ピカレスクロマンでしたね。
レス 
やっぱり、そういった悪党と対峙する側の人間なので、感想とかで孫尚香とかがカッコイイとかを感想で書かれると、うーんと思っちゃったり(笑)。
__ 
ダークヒーローをカッコイイ、という感想が、もしかしてちょっと違う?
レス 
僕ら曹操チームは必死に生きている彼らを、真っ向から否定するポジションなんですね。劉備や孫尚香が生きていく為に踏みにじった人たちもいる訳で、やり方は歪んでいきますが曹操軍はそういう、見えない人たちの人生を守ろうとしたりしているわけです。それを踏まえた上で、強大な敵である曹操軍の存在を見てもらいたかったですね。僕ら曹操チームは、奸雄達を真っ向から否定するポジションなんです。主人公たちがカッコいいと思うお客さんに疑問を投げかける敵でありたい。誰に視点を置くかで、感じ方も変わっていったりするのが面白いなあと思います。
__ 
そこまでの複雑さを勝ち得ている時点で成功だと思います。二時間弱の大作でしたが、整理して拝見していました。
レス 
もうちょっと短くできたら理想的だったかも。
__ 
いえ、もっと長くても良かったと思います。
レス 
僕は結構、作っている時に、スターウォーズみたいだなあと思っていました。色んな事をめちゃくちゃ盛り込んでましたので長いよ!って思ってました。でも、大河ドラマみたいな所を狙いました。
劇団ZTON
2006年11月立命館大学在学中の河瀬仁誌を中心に結成。和を主軸としたエンターテイメント性の高い作品を展開し、殺陣・ダンスなどのエネルギッシュな身体表現、歴史と現代を折衷させる斬新な発想と構成により独自の世界観を劇場に作りあげ、新たなスタイルの「活劇」を提供している。(以下略)(公式サイトより)
劇団ZTONエンタメストライク005『覇道ナクシテ、泰平ヲミル』【偽蝕劉曹編】・【真王孫権編】
公演時期:2015/12/10~13。会場:HEP HALL。

ZTONの殺陣の特別さ

__ 
さて、そろそろZTONの殺陣について話せたらなと思っています。私は劇団ZTONの殺陣を評する時、「関西最速・最正確」とか「5センチ間違えたらそのまま死ぬ」みたいな過剰な言葉を使っていますが・・・
レス 
(笑う)ああ。
__ 
ただまあそれは多分本当なんですけど、ZTONの殺陣に対するスタンスをここでちょっと伺いたいなあと思っていて。仮説があるんですが、もしかしたらZTONは、殺陣をもったいぶってやっていないんじゃないか、と思っていて。勿体ぶった殺陣ってどういう事かというと、何だか形式化したもののような気がする。すると、どこか固くなるような気がする。ZTONは、パフォーマンスとしての殺陣を進化させ続ける為に、あえて斬り合いの美学を見出そうとしていないんじゃないか、と思っています。高度な意味で、殺陣を見せる事を楽しんでいるんじゃないか。
レス 
それは、僕の考えと少し違うかもしれません。殺陣って殺し合いなので、どちらが死ぬか生きるか、なんだと思うんですよね。そう思ってやると当たり前ですけど重くなりますし。神聖なものになっていくじゃないですか。対して、ZTONの殺陣は仰る通りパフォーマンスの一つなんじゃないか、と思うんですよね。楽しんでもらうためのツールだと考えているんじゃないかと思うんです。他のところで殺陣をやっている人から見たら、刀はあんなやりかたじゃ切れないよ、今のどういう攻撃だよ、とか言われるものをやってると思うんです。それは逆に言うと、殺陣をやっている人ほど「こんな手はないよ」みたいなこだわりに陥ってしまうのかもな、と。
__ 
まず、リアルじゃない。
レス 
殺陣が上手いという訳じゃないんじゃないかな、ZTONって。
__ 
それは・・・爆弾発言ですね。
レス 
ZTONは写実的にではなく、ショーとしてやっているので、固定観念のない人ほどZTONの殺陣はやっていけるんじゃないかなって思います。でも、どちらかというと僕は固定観念に囚われている方なんです。
__ 
あ、そうなんですね。
レス 
今は為房君がメインで殺陣を付けていますけど、僕はある意味、そこに真っ向から立ち向かっている側の人間なんです。縛りになるかもしれないけど僕はショーではなくある程度リアルな殺陣がしたい。だから為房君のつくる殺陣を実際の刀でやるとしたらこうやるわ!とか自分なりにアレンジします。僕みたいなのばっかりだと多分、為房君は困ると思うんですけど。でも一人くらいこういう人がいないと、それはそれで一つの形骸化を招くと思っていて。格好良さを目指しているだけのものになってしまうというか。面白くないものになっていったらいやだな、と。常に疑問は投げかけていきたいなと思っています。僕は僕で、元々武道をしていた人間なので。
__ 
そうそう!レストランさんは武道をやっている人だって、森さんから伺っています。
レス 
ありがとうございます。でも僕はクセの塊なので。僕からしたら、森くんとか為房君の動きは羨ましい。絶対僕には出来ない動きなんです。これまで、自分のところの殺陣は自分で立てるというスタンスだったんですけど、最近は逆に作ってもらってます。二人の殺陣を盗んだりしようと画策していますね。
__ 
なるほど。パターンを増やすという事ですね。