没頭1

___ 
「ポスト-」。ご自身としてはどんな経験でしたか。
にさわ 
私が岡本昌也の作品に初めて出演したのは妖怪SOHOで開催したPLOWでの「impedance mismatch」という3人芝居だったんです。その時に、演技に対する意識がものすごく変わったところがあって。公演中は必死だったんですけど、それが自分にとっては衝撃的でした。このことは次の舞台に絶対に生かそうと思っていたんです。それが「ポスト-」でした。そういうこともあってか、今までと違う感覚で演技が出来たと思います。
___ 
それはどのようなことでしたか?
にさわ 
私は中学高校と演劇部で、大学は同志社小劇場という演劇サークルに入っていて、ずっと同じメンバーの中で作るということをしていました。内輪の悪い癖で、自分の演技に没頭してしまうということが多かったんです。自分の役の感情に。安住の地の座長の中村さんは「自分の演技に酔っ払う」という言い方をよくするんですけど、それを良しとしていた部分が多々あって。恥ずかしいんですけど。それをPLOWの時に、岡本昌也さんに徹底的に「それは違う」、と具体的に言われはしなかったんですけど、ダメ出しの言葉で気付かされることが多くあって。ポスコレの時はできるだけ自分の中に没頭しないようにしようと、できるだけ目の前にいる俳優、舞台上にいる全員との空気感を感じてやろうというテーマが自分の中にありました。
___ 
没頭するというのは、表現をする次元においては、時には良くないことなのかもしれないと?
にさわ 
はい、あんまりよくないなと思いました。特に自分の場合は。没頭していた方がいいんじゃないかなと思っていたんですが、自分のことを客観的に見れていないので・・・今でも客観的に見れているかわかんないんですけど。でもポスコレが終わった後、メンバーに「上手になったね」と言われて。
___ 
直接的やな。
にさわ 
打ち上げには遅れて顔を出したんですけど、その瞬間に「今まほちゃんの話をしてたんだよ、上手になったって言ってたよ」って、謎の盛り上がりをしてました。

没頭2

___ 
自分の創造活動に没頭するということには大きな快楽を感じるものですが、それは逆に言うと、誰にも連絡をしなくなってしまい、コミュニケーションがとりづらくなる、という副作用がありますね。
にさわ 
ありますね、やってしまいます。
___ 
それが実は、制作している内容そのものにも好ましい効果があるとは言えないのではないか。自分の中だけで完結しているだけで、お客さんにはその井戸の中にある物が伝わらなくなるのかもしれない。そういう体制を作ってしまう結果になるのかもしれない。
にさわ 
そうなんですよね、自分の中で作れていたら伝わるんじゃないかと思っていたんですけど、お客さんが見ているものと私の中で動いているものはやっぱり別なので。そういうことに「impedance mismatch」で気付いたんです。それが露骨にお芝居全体の完成度に結びついてしまっていたので。本当にダメだった時は自分の中で没頭していた部分がある。3人のうち誰かがそうなってしまうと崩れてしまう。
___ 
「impedance mismatch
」の場合はセットが複雑でしたからね。場所を生かした演出が面白かったです。
にさわ 
下に張り巡らせている糸に気を取られないように、三人の会話と空気に集中しないといけない。
___ 
そう、シャッターを開け閉めしたり、ビルを出て、道路を渡って行くのが窓の外から見えたりして。
にさわ 
妖怪SOHOでは、いつかまた公演がやりたいです。

没頭3

___ 
雑な質問かもしれませんが、安住の地では、例えばどんな演技が求められますか?脚本・演出家は、岡本昌也さんと私道かぴさんの二人がいらっしゃいますが。
にさわ 
二人とも、最終的に求めているものはそんなに違わないはずで。でもそこに行くまでの道筋の示し方が、岡本さんと私道さんとでは違うんです。私道さんは、最短距離をまず示してくれることが多くて。「こういう風に見せたい」という方針があったらその道をまず示してくれるんです。それがうまくいかない場合はじゃあこっちで、というのを示してくれることが多いんです。岡本さんの方は、「どういうイメージにしたいか」というのをまず示してくれて、でもそこにたどり着くまでの道筋は割と演者に任せているんです。時々、手段としての演出は付くんですが。
___ 
今回の「ポスト-」は岡本さんと私道さんの共同制作でしたね。
にさわ 
だから、二人の言うことがやっぱり途中で食い違うことが時々あって、役者は混乱することもありました。でも道の示し方が二人で違うだけだと気づいてからは自分で行き方を探すしかないなと。俳優それぞれの、道を探す能力が根本的なところで求められている稽古場だったと思います。つまり、上手に行けなくてもいいから自分で道を探してたどり着ける俳優。
___ 
にさわさんのお母さん役の時、お姉ちゃんがVRの世界に行ってしまったじゃないですか。するとお母さんはそのことだけに必死になってしまって、普通の女子校生である妹の姿が全く見えなくなってしまう。見るべきものが見えなくなってしまう。そうした演技を作る時に、にさわさんはどういう道を辿りましたか?
にさわ 
正直なところ、「どういうお母さんなのか」という指定はあんまりもらえていなくて、とにかく台本の中では妹のユーナちゃんが主軸になっていて。とりあえず、妹から見て理不尽な存在であるほうがいいのかなと思っていたんです。そう見えることが最終的な目標で、お母さん視点で作ったら失敗するということに途中で気づいたんです。ユーナからはお母さんはこう見えるというのを主軸にして考えてました。私の感情というのは置いといて。
___ 
お母さんをそういう風に見せたいということについて、どこまで意思の共有をしていましたか?
にさわ 
それ、その確認は結構直前だったんですよね。ぶっつけ本番になってしまった感じで、ゲネの時点で手探り状態だったんです。小屋入り直前の通し稽古で、家族3人で「ちょっとまだ違うね」と話し合ってる段階でした。
___ 
その、お母さんが自発的には妹の方を見ない、という演技が印象的だったんですよ。ふと妹の方を見てしまうということはなかったんです。あれはよい演技プランだったなと思いました。
にさわ 
見ないようにしようとまでは思っていなかったんですが、無関心でいようと思ったわけでもなく。長女のことだけで頭がいっぱいになってしまうという状態であろうとは思っていました。

没頭4

___ 
にさわさんは女子高生も演じてましたね。柳原良平さん演じるおじさんとパパ活をしていた女子高生。どうでしたか。
にさわ 
楽しかったですね。元々安住の地では歳が上の役をやることが多かったので(多分これからもやりますが)、どうしたら若い女子高生に見えるかというのを考えた時に、自分の中のキャッキャッとした部分を開放する形になったので。演じてる時にすごく居心地が良かったです。女子高生の無敵感と言うか。
___ 
キラキラした演技でしたよ。
にさわ 
本当の意味で高校生を再現することなんてできないんだろうなと。結構、自分の中で意図的に幼い部分を卒業しようとしていた時期があったから、今それを再現しようとするとどうしても難しいというのがあったので。本当の女子校生にはやっぱりもう勝てないんですよ。

集団迷子「星の王子さま」

___ 
次は集団迷子「星の王子さま」ですね。
にさわ 
私が主催する企画は毎回、作品とメンバーによって団体名を変えているんです。今回は同世代と下の年代のメンバーで企画しています。このメンバーでもう一度一緒にやることは、ほとんどないだろうと思っています。卒業公演じゃないですけど最後の締めくくりにやろうっていう話になりました。今いるメンバーでこの作品をこのタイミングでやる意味を引き出せたらいいなと思っています。
___ 
どんな公演になったらいいと思いますか?
にさわ 
寺山修司の「星の王子さま」は大人と子供の話で、ちょうど就職したぐらいの私たちのような世代がやるのはちょうどいいんじゃないかなと思って。今この年齢でしかできない作品になったらいいなと思っています。
集団迷子『星の王子さま』

Twitter @maigo_pecora

【日程】
3月23日(土)15:00/19:00
3月24日(日)11:00/14:00


【会場】
東山青少年活動センター
創造活動室


【チケット料金】
前売り:600円/当日:800円
ダブル観劇セット券:1000円

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安住の地第4回本公演「Qu’est-ce que c’est que moi?」

___ 
そして、安住の地の次回公演「Qu’est-ce que c’est que moi?」、どんな公演になるでしょうか。
にさわ 
私、西一風での初演を見ていて。ストーリーを追おうとするとすごく難しいだろうなと思うんです。そもそもストーリーと表現を分けて再構成しているので、私も見ていてよく分からないなと思ったりしたんですけど、そこで話されていた言葉やリズムやビジュアルは凄く印象に残るんです。
___ 
そんな作品なんですね。
にさわ 
ストーリーと、人物の関係性と、作者の意図。普通の演劇はその三つで成り立っているけれども、3つを完全に分けてしまって一つ一つを見せるというコンセプトだったみたいで。ある場面では会話は全然成立していなくて、日本語のセリフだけど日本語のイントネーションで話されないみたいな。
___ 
難易度SSですね。
にさわ 
大変難しいと思うんですが、岡本さんはその作品にすごく思い入れがあって。多分一番自信を持って出す作品なので、きっと面白くなると思います。
___ 
お客さんには、分からない、ということを退屈だという感想に結びつけずに見て欲しいですね。
にさわ 
そうですね。分からないものを分からないままに面白いなと思ってもらえればいいと思います。お客さんの中に、何かわからないけれども残るような物があればいいなと思います。
___ 
その何かが、会場に足を運ぶ苦労に勝てばいいですよね。
安住の地第4回本公演「Qu’est-ce que c’est que moi?」
公演時期:2019年9月13日(金)-16日(月)。会場:Theatre E9 Kyoto。

質問 森谷 聖さんから にさわまほさんへ

___ 
前回インタビューさせていただいた、森谷聖さんから質問をいただいてきております。「京都のおすすめカフェを教えてください」。
にさわ 
難しいことを・・・同志社大学に通っていたので、その近くにあるAMUCAというお店がおすすめです。そこに友達と一緒に行ってました。ドーナツが美味しくて、お店の方も雰囲気が優しくて。

これから

___ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか。
にさわ 
俳優を仕事にできたらいいなとずっと思っています。そのために頑張っていきたいです。

カトラリー・クロック

___ 
今日はお話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
にさわ 
ありがとうございます。(開ける)あ、かわいい。飾ります。

最近

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。京都造形芸術大学の森谷聖さんにお話を伺います。森谷さんは最近、どんな感じでしょうか。
森谷 
よろしくお願いします!最近は卒業制作公演が終わって、卒業制作の展示の準備をしたりしています。
__ 
去年12月の.com(ドットコム)「大感謝祭」とミンストレルズの公演「かわらせくんの研究」ですね。
森谷 
あとは個人研究の発表をやる人も中にはいます。私自身はそんなに関わってはいないんですけど。
__ 
この時期になると、そんな感じなんですね。
森谷 
卒業制作の授業についても、一年間の計画を座組で立ててくださいという感じなんです。月2回、演技トレーナーの先生が様子を見に来てくれるという感じで。

ミンストレルズ「かわらせくんの研究」

撮影:京都造形芸術大学 舞台芸術学科
__ 
森谷さんが出演された卒業制作公演の、ミンストレルズ「かわらせくんの研究」、大変面白かったです。作品前半、とてもコミカルだったからこのまま進むのかなと思っていたんですが、途中からだんだんとシリアスな展開になっていって。森谷さん含め、各世代のかわらせくんはダブルキャストで「実験マウス」という、研究のお手伝いをしてくれる謎の助手達を演じていましたね。
森谷 
いつの時代も一貫して、実験マウスだけはコミカルでいようという共通認識がありました。研究のために映画のミニオンズを見たり、USJに行ったり。
__ 
しかし実験マウスたちだけは謎に包まれていましたね。人型なのか本当のネズミなのかどうかも分からない。最後の5代目になるまで、その存在については言及されないですもんね。
森谷 
作・演出の小林桃佳さんは、アニメとかの物語に影響を受けていて。可愛らしいキャラクターを使って、安心させながらもナイフでグサッと刺すような。そういう作風なので、自分たちも役者としてそこにプラスしていきたい、「これはきっと私たちがどんどん付け加えていいものなんだ」と思ったんです。役者間で、これはこうやらせてくださいというのが結構飛び交っている稽古場でした。自分の中では劇作家の書く物語の中身にもっと迫ろうというテーマがありました。
__ 
実験マウスたちは、すべての時代で大体同じ性格っぽいですね。というか、代替わりはしないんですか?
森谷 
しないですね、半永久的な永遠の命なんです。
__ 
サイボーグとかでもなく?
森谷 
ロボットと言うかドラえもんみたいな感じなんです。猫型ロボットならぬネズミ型ロボット達なんです。意思は持ってるんですがチップが埋め込まれている。
__ 
そういう彼らがかわらせくんについているけれども、かわらせくんの孤独の足しにはならないんですよね。
森谷 
そうなんです。四代目かわらせくんはまるで道具のように扱われている時代で。実験マウスたちも心配はしてるんですが、彼女には響いていないんですよ。孤独で干渉が難しい。
__ 
3代目ぐらいから神として扱われていましたからね。5代目かわらせくんからは実験マウスは去っていて、でも大切な局面に彼らが戻ってくるというね。
ミンストレルズ「かわらせくんの研究」
◎作・演出◎
小林桃佳
◎出演◎
足立功至
嶋崎美都輝
髙島絵里
髙田瑠璃
高橋空
森谷聖
◎スタッフ◎
演出助手:髙田瑠璃
美術:明隅友香
照明:椛島睦未
音響:辻村実央
映像:小林ち乃
衣装:大窪真祐
制作:野田遥

公演時期:2019/1/19~20。会場:春秋座。

「クリエイション」

__ 
森谷さんは静岡出身なんですよね。大学から京都からに来て4年間。どんな経験でしたか。
森谷 
今まで自分のことは何も知らなかったんですけど、京都に行きたいとか、演劇がしたいという直観のままに来たんです。行くだけ行くぞ、って飛び出してきて。でも静岡の人とは違う土地の、演劇をやる人たちと触れ合って、逆に自分のことを知ることができました。自分のことを知らないと演劇ってできないということを痛感しました。
__ 
なるほど。
森谷 
四年間はとても楽しかったです。月並みですけど。自分とは全然違う人がいっぱいいて、仲間といいものができたと思うんです。その仲間も何を考えてるのかわからない、なぜこの人はこういうことをしてるのかわからないみたいなことがたくさんあって、すれ違いながら切磋琢磨していました。でも本当に楽しかったです。楽しかったと言うとあれなんですけどね。
__ 
そんな中、ベスト3の思い出を挙げるとしたら?
森谷 
私は仲間と何かをするということについて重きを置いてたんですが、その仲間の一人がいなくなってしまったことがあって。大学を辞めたのかどうかも分からないんです。生きてるとは思いますけど、それが結構自分の中では大きくて。
__ 
その人に向けて何か一言ありますか。
森谷 
元気に過ごしてくれていれば嬉しいです。まず生きていて欲しい。
__ 
それはおそらく人間関係リセット癖ですね。
森谷 
そういう人は芸術の大学には多いみたいで。芸術関係に進む人って繊細な人が多いから。私は大雑把だから分からないんですけど、何か傷つけてしまったのかもしれない。
__ 
アーティストの方は、自分の位置についてはこだわっているからその人にとってはもしかしたら森谷さんと縁を切ったつもりは全然なくて、いつか再開することもあるかもしれませんよ。
森谷 
そうだったら面白いですね。
__ 
ベスト2は。
森谷 
ああ、迷ってしまう。ベスト2は、N2(エヌツー)さんとの出会いはとても大きなものでした。四年間の思い出ベストに入れていいのかな、杉本さんに怒られないかな。
__ 
きっと大丈夫だと思いますよ。「雲路と氷床」は芸術センターで上演しましたね。
森谷 
芸術センターでクリエイションしたんですけど、クリエイションの意味を初めて理解した経験だったと思います。杉本さんは魅力的でミステリアスな、鋭くもあり柔らかな方でもあって。この人はすごいなという感覚がずっと残っています。相方の益田萌さんとは実は元々、バイト先が一緒で、演劇とは全く関係ないところで知り合っていたんです。顔見知りレベルでしたけど、半年間のクリエイションで関係性を構築して行ったんです。
__ 
偶然ですね。
森谷 
杉本さんもそれを面白がって、バイトでの動きとかをやってみて、って。「雲路と氷床」は、稽古場で話し合うことで作品を作っていったんです。世の中に溢れているものを自分たちでよいしょ、って持ってきて詰めていきましょう、という。演劇の話もしますけど個人的な話もいっぱいして。
__ 
印象的な作品でした。ベスト1は。
森谷 
やっぱりミンストレルズが一番大きかったです。「雲路と氷床」でクリエイションを知って、それから物語演劇から離れていたんですね。見る分には好きなんですけど、やる分にはちょっと抵抗が生まれ始めていて。そこから、物語演劇でもどこでもクリエイションというものはあるということを教えてくれたのがミンストレルズの稽古場でした。気付くのが遅かったんですけど、試してやってみて考えてみて、役とはちょっと違うけれども、やってみたらそれもまた役の演技になるかもしれないという体験をしました。演出と役者で、アイデアを出すと言う仕事については変わらないんだなということを思ったんです。
__ 
演技は一体誰が作ってるのか問題。
森谷 
古典的なイメージとしては、演出家が役者に演技のリクエストをするというのがあると思うんですけど。俳優もそれと同じぐらい「あれがやりたい」「これがやりたい」というのを持っていないといけなくて。50%50%かなと思うんです。作品の責任は役者は追わないですけど、作品の顔にならないといけないということもあります。このアイデアはこの人が持ってきたからこの人のもの、というものでもないですし。それを採用した演出家だっているわけで、でも誰に最終的な責任や功績があるかというと難しいですよね。
__ 
会話劇となると相手役とのやり取りや駆け引きがありますしね。抽象的なところだって会話劇ならできる。きっとそういうのも、造形大なら1回生の時に習うだろうと思うんですが。
森谷 
そこは、うーん、具体的に「こうすべき」とかいうのは習ってはいなくて。でも、「こうあった方がいいですよ」という感じで示されていて、「でも自分で全て決めていいばかりじゃない」とか、逆に、「言いなりになると飲まれてしまって、意思を持たないとつまらない役者になっちゃうよ」て言われていました。
撮影:京都造形芸術大学 舞台芸術学科

モノローグ

__ 
京都造形大の授業で、一番影響を受けた授業は何ですか。
森谷 
私、よく他のクラスの聴講に行ってて。2回生の時に1回生の聴講に行っていたんです。平井愛子先生の授業で、チェーホフのモノローグをやってるんですよ。そこで一つ下の子の演技を見た時の衝撃が一番でした。その当時の私は、先輩だから「スン」って感じで涙は見せまいと頑張っていたんですが裏でボロボロ泣いてて。
__ 
そんなにすごかったんですか。
森谷 
ちょっと悔しくなっちゃったんですよ。元々技術を持って大学に入ってきた生徒がその授業でよく言われることなんですけど、「上手くやろうとしなくていい」。それはスタニスラフスキー・システムなんですけど、1回生の頃はソーニャのモノローグでは分からなかったんです。
__ 
なるほど。
森谷 
大学から演劇を始めた私には、感覚が囚われていないぶんビギナーズラックで何をしてもうまくいってたんですよ。のびのびとやれてたんです。演劇、楽しいなと。でもしばらくして自分が同じことしかできないんじゃないかって、壁に当たったんですね。会話劇だと相手役との共同作業で解消できたことも多々あったんですが、それでも限界に阻まれていて。4年間中、3年間は壁に当たっていましたね。最初の頃は何でもできる気がしていたんですが、それが何もできなくなる。セリフって何だろう、物語って何だろう、みたいな。1回生の頃はそれが何かわからなかったから楽しかった。やればやるほど限界が見えてきたんですよ。
__ 
そんなタイミングで、平井愛子先生のクラスで1回生がやっていたのを見て衝撃だったんですね。
森谷 
のびのびやっていたんです。その姿が役の演技なんですよ。それがまた悔しくて(自分の気持ちと、登場人物の気持ちが噛み合っている。気持ちが噛み合っていればいい演技なのかと言うとそうとも言い切れないんですが)。ある一瞬の、役者自身の感情が、ソーニャみたいに見えたのは何でだろう。
__ 
今回、森谷さんにこのタイミングでインタビューができてよかったですね。壁という言葉が出てきたのは良かったです。
森谷 
今も、壁と共にという感じなんです。先生からのアドバイスで指摘された点は全て潰すようにしているんですが、その上に自分が何ができるかというのを壁と共に考えて行っています。3年生ぐらいになってわかってきたんですが、その最初の授業だったな、と思います。

劇団たんぽぽへ

__ 
森谷さんはこれから劇団たんぽぽに入るんですよね。
森谷 
こんなこと言うとすごく夢物語みたいになっちゃいますけど、小学校の頃に胸をときめかせてたんですよ。見てこんなに面白いんだったら、やったらどれくらい面白いんだろうって。演劇に導いてくれたのが劇団たんぽぽなんです。大学卒業して、社会人として働くということは何なんだろうって考えた時に、たんぽぽが演劇の楽しさを紹介して、嫌いならその理由を考えてもらったりとか、何か別のジャンルの演劇に繋がっていてくれたらいいなと思って。入り口としての役割が大きいのかなと思っていて、それが社会に貢献するということなのかなと。もちろん私も、自分のやりたいことはやりたいと思います。

質問 小林 欣也さんから 森谷 聖さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、小林欣也さんから質問をいただいてきております。「次に旅行するとしたらどこがいいですか?」
森谷 
九州に行きたいです。海外に行きたいんですけまだ手が伸びなくて。あと、広島に行きたいです。祖父が広島出身で被爆者なんですよ。色々な話を聞いていたのでちょっとその場所に行ってみたいと言うか。旅行と言うか、でも美味しいものも食べつつ。

これから

__ 
今後どんな感じで攻めて行かれますか。
森谷 
劇団たんぽぽで演技をしつつ、美味しいご飯を食べながらゆくゆくは結婚したいです。結婚相手を見つけて、子供を産んで。で、子供がちょっと大きくなり始めたらまた演劇を始めたいです。変な話ししてすいませんって感じなんですけど。子供に演劇を是非やらせたいとは思わないんですけど、見るだけでも見せてあげたいと言うか。今まで私がやってきたことを、それ以上に体験させてあげたらいいなと思っています。

プリミアスティーのキャラメルティー

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。宜しければどうぞ。
森谷 
あ、嬉しい。私、紅茶も好きですよ。
__ 
キャラメルティーです。
森谷 
すごい嬉しいです。

吉田寮食堂大演劇 vol.1『三文オペラ』

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。2月に上演される吉田寮大演劇「三文オペラ」のプロデューサー、小林欣也さんにお話を伺います。稽古は今、どんな状況でしょうか。
小林 
よろしくお願いします。稽古はまだ始まっていないんです。明後日が初顔合わせで、僕はまだ全然誰とも会っていないんです。
__ 
今回、参加者がとても多いらしいですね。
小林 
アンサンブルキャストだけで40人ぐらい、スタッフが20人ぐらい。メインキャストが11人、音楽隊が5人で歌手が2人。
__ 
それは、何と言うかビッグプロジェクトなんじゃないでしょうか。
小林 
そうなんです。やっぱり劇団子供鉅人の益山貴司さんと同劇団員の出演者、それに吉田寮食堂での演劇企画ということで、注目度は高いですね。実はチケットの予約もかなり入ってきていて、早めに申し込まないとお席が取れない可能性が高いです。
__ 
ただのお祭りじゃないなあという感じがしますね。もはや全国的にも注目されているのでは。
小林 
そうですね。やっぱり今の吉田寮の状況があって、この話をしないわけにはいかないんですけど、去年の9月に吉田寮生は京都大学当局から退去勧告を受けていて。これを受けて退寮する人もいれば残っている人もいますが、話し合いもなしに廃寮の段階に移った京大に対して、僕は何もしないではいられませんでした。そういう訳で去年、前回の吉田寮大芝居の「今」を企画・上演しました。だから、言ってしまうと今回の「三文オペラ」も、明らかに運動の道具として僕は意図しています。
__ 
分かりますよ。
小林 
サイトにも書いていますが、今回の三文オペラの演出を務める益山貴司は「次は僕がやる」、と。今回はそういうことのために使う芝居であると、最高のエンターテイメントを作るけれども、目的としてはそういう趣旨であるということをはっきり分かった上で芝居をすることに決めているんですね。そういう意味で、普通の芝居とは作品のゴールが違います。稽古に関しては、もう年末に益山貴司が台本の編集を終えて、各参加者に送っているので。最初の稽古から通しが始まります。3週間しかないので、詰め込みで稽古していきます。
__ 
劇団子供鉅人メンバーが、クオリティの低い芝居を持ってくるわけがないですからね。
小林 
はい。最初に「運動としての芝居」みたいな言い方をしましたけど、芝居が面白くなかったら両方に悪く出ちゃいますからね。
__ 
緊張感がありますね。
小林 
めちゃくちゃ厳しくなると思います。参加者やお客さんにも、ご自分の好きなスタンスで来て下さったらいいと思うんですが、この場所と企画自体を体験しに来てほしいなと思っています。そういうスタンスで作っています。一方、前回企画の「今」の時、芝居が終わった後に酒を飲みながら話せるような場を重視していました。お芝居の内容と同じぐらい大事に思っていたんです。今回の場合はさらに豪華に、寮食の前に闇市が7・8店舗並ぶし、出店もあります。お酒とご飯を楽しみながら喋れるような楽しい空間になればいいなと思ってます。
吉田寮食堂大演劇 vol.1『三文オペラ』
舞台は19世紀ロンドン。貧民街の顔役、メッキースは街で偶然出会ったポリーを見初め、その日のうちに結婚式を挙げる。
ところが彼女はロンドンの乞食の元締めの一人娘だった……。
(『三文オペラ』裏表紙のあらすじより)
演目 三文オペラ
作 ベルトルト・ブレヒト
訳 谷川道子
演出 益山貴司(劇団子供鉅人)

入場料  予約 2000円 当日 2500円 小学生以下無料
会場 京都大学吉田寮食堂
上演時間 約2時間15分

2019年2月8日(金)19:00
2019年2月9日(土)18:00
2019年2月10日(日)18:00

メインキャスト! 影山徹 億なつき 地道元春 益山貴司 益山寛司 (以上、劇団子供鉅人) 根本コースケ(ベビー・ピー) 高瀬萌 延命聡子(中野劇団) 花本ゆか わしやみちこ 森脇康貴(安住の地) 日下七海(安住の地) 北川啓太

歌手! 下村ようこ(かりきりん)
演奏! 4日目バンド
イガキアキコ(ヴァイオリン/たゆたう) かんのとしこ(アコーディオン/Ryokan da familiar) 宮田あずみ(ベース/かりきりん) 中林キララ(ギター/オシリペンペンズ) 三原智行(トロンボーン/Green Parade) ワタンベ(ドラムス/PATO LOL MAN)

アンサンブルキャスト!
  石川信子 今泉 治はじめ 金子美咲 神山慎太郎 葛川友理 小林紀貴 酒井そら 佐々木十千 申愛渚 杉林志保 タケダナヲ 田村真澄 西川晴華 狭間要一 はやしやすみ 前島舟 松村珠子 柳澤俊介 李勇雅 草壁カゲロヲ 斉藤 杏奈 高本和美 橘カレン 松田早穂 みかみ 山﨑大夢 山本真莉 尹素香 キサ 南佳菜 林葉月 GEN (1月6日発表分)

吉田寮食堂10月公演『今』

__ 
「今」は、どんなきっかけで企画されたんでしょうか。
小林 
2018年の3月ごろに吉田寮に遊びに行ったんです。その時点で、ちょっと「やばい」という話を寮生から聞いたんです。退去費用としての家賃補助が当局から出ていて、どんどん退去者が増えていると。寮に住んでいる大部分の人はお金がなくて住んでいるわけだから、効果的なやり方だなと思う。でも、今回退去する人はそれでいいと思うんですが、補助を受けられるのはこの代だけなんですよ。来年度からは安く住める寮はなくなってしまう。寮というだけではなく、近所の子供の遊びに来る場所としても、劇団やバンドが活動する文化的な活動の場としても吉田寮並びに吉田寮食堂はあるわけで。
__ 
そうですね。
小林 
それと、吉田寮独自の話し合いの場の形成の仕方もあって。そういう文化みたいなものって、非常に新しいものを発掘していってる場なんですよね。当局の経済事情であっさり無くなって良い訳がないんですよね。僕はそういう危機感を抱いて、何かしないといけないなと思ったんです。でもアジテーションをするみたいなことはできない(僕自身、退寮から十年も経っているので)。だから芝居しかないなと。3月にはどういうお話にするかということは決めて、公演に向けて人とか場所とかを集める作業を丁寧にやっていました。
__ 
めちゃくちゃ面白かったです。
小林 
良かったです。寮の事を知らない、関係ないと思っている人にどこまで届くんだろうか、不安に思いながら頑張っていました。
吉田寮食堂10月公演『今』
公演期間:2018/10/12~14 会場:京都大学吉田寮食堂。

運動のゆくえ・1

小林 
「今」が終わった時に益山貴司が「やる」と言ったんです。その時は驚いたし、それ以上に嬉しかったんです。実は、誰か僕以外にも、ここで公演をする人が増えないかなと期待していたんです。やっぱり運動って、広がっていかないと意味がないんです。
__ 
運動は、広がるべきものだと。
小林 
「三文オペラ」が終わった後も、次のバトンが繋がっていく。どんどんそういう風になっていくというのが理想ですね。
__ 
そうですね。「今」という運動が誰かに伝わったというのが嬉しいですよね。
小林 
ドミノの二個めが倒れたという事ですから。
__ 
最近考えてることがあって、感情の転移って、ネガティブな感情ははっきりと誰かに伝わって、なかなか消えずに継承されていくんですよね。ポジティブな感情も転移するけど、前者よりずっと早く減衰する。運動は基本的にはネガティブにポジティブが複雑に入り混じっている。それがどこまで強く誰かを動かすかは・・・何に依っているんだろう。
小林 
運動の本質はリアクションですからね。
__ 
この作品に参加した人々が、どう反応するか。そんなことも楽しみです。ところで、吉田寮という場所。私個人は、建物が損失してしまうというのに非常に懸念しています。取り壊されてしまったらもう取り返しがつかないので。
小林 
なんて言うんですかね、もちろん建物は大事に思っていますが、やっぱり僕はソフトの方に重点を置いていて。ハードが保証してくれていたソフトでもあるんです。僕の偏った考えですが、ちょっと非衛生的で猥雑なあの場所は人を多少、ふるいにかけてるんですよね。この社会の中で、あの場所でしか受け入れられない人も何パーセントかいるんですよ。そういう人は、吉田寮的な場所が無ければ家に引きこもるしかないんじゃないか。自分が楽にいられる場所がないんだったら、ネットぐらいしか行き場がない。誰でも来ても構わないと言うオープンな場所でありながら、人を逆のふるいにかけている場所でもあるなと思っていました。その場所が担保されていることが素晴らしいことだと思っています。
__ 
ええ。
小林 
建物自体にもやっぱりパワーがあるし、その居やすさを人にもたらしてくれる、考える時間をたっぷり与えてくれる、人とゆっくり話す時間を持っている。そうしたソフトの部分を支えているハードだと思っています。
__ 
これは思ったよりも大問題ですよね。
小林 
僕の話を聞いてくださったら、段々と、高い段階での話も見えてくるのかなと思います。感じてくれるものはあると思います。