寛大さ

__ 
きたまりさんが中国のアーティストレジデンスで作った所作。たぶん私はそれが何であれ、見た瞬間分かると思います。心の拠り所を形にしたものは、論理を越えて伝わる。それを舞台上に上げるというのはとても価値があり、同時にスリルのある事だなあと思うんですよ。特に今回は。
きた 
時々ふざけたりもするから、怒られないかなと思う。人に、じゃないですよ。でも多神教の日本だからこういうことができるなあと思う。例えば私がムスリムだったとして、こういうものは作れないですよ。神を冒涜してるととらえられるかもしれない。日本の場合は宗教史の中で神仏習合の時代が長かったからかな、宗教観というのがミックスなんですよね。で、それぞれの良い(面白い)ところを、宗教の事物を基にこういう風習を作ろう、みたいなのって山ほど溢れてるじゃないですか。それの集合体なんですよね、日本の信仰文化は。その感覚が自分の中にあるんだなという事を発見できましたね。
__ 
アレンジと、ミックスですね。
きた 
これはやっぱり、日本で生まれ育ったから持ってる感覚なんだなと思いますね。私がヒンドゥーで牛は絶対食べられません、っていう日常生活だったらこういう感覚が持てなかったと思う。
__ 
今回取り扱うものは信仰自体ですからね。
きた 
信仰が自由の国の寛大さ。
__ 
寛大さ。
きた 
明治の神仏分離や廃仏毀釈、江戸の踏み絵とかもあったけど、やっぱり、信仰は続いているし美味しい所はちゃんと残っている感じがする。今も愛宕神社の千日詣りでは山伏さんが奉納してるし。

新鮮さについて

__ 
ご自身が振り付けをする時、稽古場でどんなことを大切にしてますか?
きた 
今やってることを信用しすぎないこと。これは自分が振り付けの時でも、ダンサーとして参加する時でも共通かな。
__ 
それは、ものすごい大切ですね。
きた 
特に、ダンスだからね。本当に稽古場だと、嘘みたいな瞬間とかがあるんですよ。だけどこれが答えではないということをちゃんとわきまえて稽古していかないといけない、ということかな。
__ 
何となくですがわかります。辛いでしょうね。
きた 
だけどね、そうなんですよ。うん。
__ 
その時ってきっと、これがいいんだという理由とか、どういう瞬間がどういう構成で素晴らしいんだとかが明晰に分かるしその場でならしばらく再現もできると思うんですよ。でも、それにこだわらない。
きた 
方向性は見つけることができるけど、それを最終地点として目指さない。ダンスで一番必要なのは鮮度だと思うんですよ。それはもちろん、基本的な技術が前提で、鮮度を生むための技術ももちろんあるんですけど、感覚的な鮮度?身体的には同じ経路を辿るけれども、感覚的な鮮度のためにちょっとだけ違う道で行ったりとか、見てる側には分からない鮮度だと思います。もしかしたら伝わるかもしれないけど。
__ 
そうした努力は、見ている側には全てはわからないのが悔しいですね。
きた 
踊りの「今の!」って多様だからね。
__ 
鮮度についてもう少し詳しく伺いたいです。つまりフレッシュネスのことですよね。
きた 
まあそうですね、フレッシュネスのことですね。
__ 
鮮度ってきっと、とても主観的な感覚なんですよ。稽古場で共有出来るぐらい明確なものだけど、それを観客が許容できるかどうかは分からない。それを再現するというのはものすごく奇跡だなと思う。
きた 
うん、難しい。だから最近は振り付けをすごく難しくしてる。
__ 
へえー。
きた 
というのは、ちょっと慣れちゃったら気を抜くと振りを間違えちゃう、みたいなのを振り付けることが多いかな。
__ 
それをすると、ダンサーが振り付けを覚えにくくなる?
きた 
いや、覚えるんだけど、例えば次に足をここに動かす時に重心をどこに置いておかないといけないか、それを間違えたら次の足は出ないよみたいな体を意識するポイントを含めた振り付けはしていますね。自分に対しても。
__ 
それをすることで鮮度を保とうとしていると。
きた 
他に演出的なこととしては、いつどういう言葉をかけるか、ですね。
__ 
それはものすごく難しいやつですね。
きた 
体がその言葉を受け取る状態じゃない時に出された言葉って、受け取れないんですよ。でも、ダンサー自身がそこに違和感を気付いた時に、こちらから言葉を投げかけるとちゃんと響く。その辺のタイミングとかは踊りに出ますね。意識を広げるためにタイミングを計る。場合によりますけど時々すごく失敗するし、でも昔よりは打率は上がった。相手の事を分かった気になるのはダメですけどね。
__ 
人は他人を思い通りに動かすことはできないですからね。
きた 
出来ない出来ない。でもそういうのがよくよく楽しいなと思います。
__ 
色々なことの折り合いの上で成り立つ作品なんですね。

質問 鍵山 千尋さんから きたまりさんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた方から質問をいただいてきております。鍵山千尋さんからです。「表現活動に関わろうと決めたのはいつからですか?」
きた 
表現活動・・・?表現活動って人生の事じゃないかな。うーん。身体表現という事なら、17歳かな。それがたまたま舞踏だったって言う。その前はなんやかんやと写真を撮ったりしていました。ネパールに行ったんですよね、16歳の時に。山に登って、街で色々と経験しました。初めて精神が崩壊した人を間近で見たんですよね。あれは薬かな、赤ん坊を抱いた、意識がもうずれちゃっている女性で、ふと振り向いたら財布を掏られそうだった。そういう経験をして、日本に帰ったら何かをしたいと思って、ボランティアとかをすればいいのかなと思って行った先がDANCEBOXで、そこで「若いんだから体を動かしたほうがいいんじゃない」と言われて。あと由良部正美さんの踊りに出会って、それが舞踏との出会いでした。けど、うら若き乙女が舞踏だけしててもな、と疑問を感じて大学に入ったという流れで、今に至ります。

5年

__ 
今更ですが「あたご」の意気込みを教えてください。
きた 
意気込み。これからの意気込みに近いことかもしれないですけど、調子に乗ってはいけないけど、5年前10年前よりは自分が見たいものを作れるようになったんですね。
__ 
それはすごい。
きた 
舞踊って抽象表現だからさ、具体的にそれをイメージして作っても違うじゃない。それを表してるだけじゃ舞踊にならないから。そんな、頭の中のものを実際にやってもらうだけじゃ。それを分かるようになったし、今見たいもののためにダンサーがどう状態のコントロールをすればいいのかとかが、ちゃんと伝えられるようになった、ということが今までとは違う変化だと思っていて。だから、これから私どんどん良い作品を作り続けると思うんです。
__ 
おおっ。
きた 
自分で言っちゃうなんてすごいよね、でもそう思うんですよ。「あたご」を見てダメだったら、向こう5年は私の作品を見なくていいです。だからとりあえず見に来てくださいと。大体5年の周期で振り付け理論とか舞踊観というのはちょっとずつ変化して作品として見せられるようになっていく。今はちょうどそのタイミングだと思うんですよ。マーラーでやってきたことだとか、アジアに行った経験だとか、東九条で素敵な人と出会ったりとか。それが今回詰まっていると思います。自信作ですよ。だって、この座組を見て?全員信用できるもん。スタッフも本当に素晴らしいし、ダンサーも。これで面白くなかったら私のせい、私の作品性が駄目だということなので。そしてこんな作品を作れるのは、今の私しかいないと思う。「あたご」は東洋的な身体と感覚がちゃんと出ているけれど、古いものをやってる感じでもない。
__ 
ほおー。
きた 
古いものを取り入れた表現にはなっているけど、それをそのままやってるわけではないし、宗教っぽい何かをとりあえずやってるわけでもない。全く新しいというわけではない、けれども色々な時代に色々なものを踏まえている。
__ 
ミックスという訳ですね。
きた 
これでつまらなかった、あるいは古臭いと思うんだったら私が時代を先取りしすぎたということなのですみませんと言う事です。
__ 
作品を見る前に、何か事前に知っておくべきこととかはありますか?
きた 
まあ、予備知識や体験があるとより面白いよね。愛宕山に登ったことがあるだったり、大念佛狂言を見たことがあったり、なんでもいいんですよ。そういうのがあったらより見方が広まると思うけど、何も持ってこなくてもいいよ。予備知識がなければ楽しめないという作品は、面白いものではないじゃない。
__ 
ありがとうございました。

愛宕山の風景

きた 
雲のかかり方とかも、いつも違うんですよ。毎日違う景色、違う山になる。同じなのに違うということのありがたさなんですよね。山の形って、大災害がない限り大きくは変わらないんですよ。ということは何千年も同じ形なんだよ。だけど毎日見え方が違うってすごいことなんじゃないかと思う。身体もそうなんですよね。毎日違う。機能としては一緒のはずなのに感じ方が違う、感度も違う。やっぱり自然と身体というのは近いものなんですね。そこは分けてない。
__ 
変わっている身体と、変わらないはずなのに、いつも異なっている山。
きた 
そうですね、どちらにもそういう面がある。
__ 
そしてフレッシュネス。
きた 
フレッシュネス。でもどちらにも鮮度があるんですよね。何があるとしても、気づかないふりをすれば気づかないで済むじゃない。
__ 
そうですね。
きた 
気付くことによって豊かになる。でも、些細な事でバランスは崩れてしまう。

高揚

__ 
今日の取材、私もたくさん喋ってしまいましたが、何かお話しになっておきたかったことはありますか?「RE/PLAY Dance Edit」の事とか。
きた 
RE/PLAYね、いい企画ですよね。私にとっても、演出家の多田さんにとっても、プロデューサーの岡崎さんにとっても新鮮で大切なプロジェクトだったと思う。この3人が、「もっとこれを見たいね」という気持ちになった作品が、未だに続いているということがすごい。タイミング的には東京公演でひとまず最後だけだったけど、まだまだ3人とも見たいと思っているから、またいつか。この作品に関しては各地のダンサーにありがとうしかないです。
__ 
面白すぎて、しんどいけどもう一度見ないといけないなと思っています。
きた 
そうね、「RE/PLAY Dance Edit」は高揚していく作品じゃない。ダンサーも高揚できなかったらものすごくしんどいんですが、高揚してもしんどいんですよ。なぜ体って高揚するんだろう。
__ 
そうですね。
きた 
でも高揚するからこそ、色々なことがこの世界で起きてきたじゃない。いいことも悪いことも。高揚を止められない、制御できないという事に身体を感じる。やっぱりそこにお客さんが・・・
__ 
ノってくるんでしょうね。
きた 
ノってきたり、ノらなかったりももちろんするし。けどノれなかった時の置いてきぼり感がすごいと思うんですよあの作品は。
国際共同制作『RE/PLAY Dance Edit』東京公演
2019年2月9日[土]・10日[日]・11日[月・祝]
吉祥寺シアター

オリジナルは、多田淳之介率いる東京デスロックが2011年に発表した『再/生』。反復する身体を通して、再生に向かっていこうとする人間を描き出した演劇作品を、本作では、俳優を振付家・ダンサーに置き換えて、リ・クリエーションします。
ダンスバーションは2012年京都にて初演後、横浜、シンガポール、カンボジア・プノンペン、京都、フィリピン・マニラにて各地のダンサーと上演を重ね、2019年に東京に集結。連続で繰り返されるポピュラーな楽曲、サドンデスで踊り続ける8人のダンサーの疲弊していく身体。ダンスの根拠も意味もなぎ倒していくその果てしない構造が、切実な「生」や混沌とした現代社会を浮き彫りにし、ダンスの概念を覆す問題作です。

演出: 多田淳之介
振付・出演:きたまり、岩渕貞太、Aokid、斉藤綾子、シェリダン・ニューマン(シンガポール)、ソポル・ソー(カンボジア)、カリッサ・アデア(フィリピン)、ジョン・ポール・オルテネロ(フィリピン)

これから

__ 
次の4年は。
きた 
今回久々に振付家としても仕事に集中できています。今後はもっともっと振付家としてキャリアアップして仕事に集中していきたいという気持ちが大きいですが、まだ踊れるから踊るんです。でも自分の踊りが好きかと言うと全然好きではないんです。
__ 
あ、そうなんですか。
きた 
うん。自分のいいところも悪いところも分かる。分かったつもりでいても良くないんですけどね。言ってみれば、ずっと修行しているようなものじゃないですか。
__ 
そうですね。
きた 
だから去年、「きたまりダンス食堂」というものをやってみました。即興で毎日違うミュージシャンと1時間戻るということをやってみて反省したんです。
__ 
反省?
きた 
反省と言うか、私の即興は安易だなと思って。即興なのに、時間軸の中で「この辺で盛り上がっておこう」とか考えながら踊っちゃう。何だろうな、思考が届かないくらい踊りをもっと充実させたい。だから今年の1月から修行として、2-3ヶ月に1回の間隔で「きたまりダンス食堂」をアバンギルドでやるんです。どんな音楽がかかるかわからない状態で毎回30分ずつ時間を広げていって、最終的には3時間半~4時間を即興で踊る企画。私は振り付けするのが大好きなので、即興は得手不得手もきちんと判断できない、けれどもとにかくやってみる。何か踊りが変わるかもしれない。
__ 
すげえな。
きた 
本当に今年は頑張ります。これはもう本当に戻れなくなるわというぐらい、ちゃんと頑張ります。気持ち悪いかもしれないけど、ずっと使いたくても使えない言葉があって。
__ 
大丈夫ですよ。
きた 
全身全霊で踊る。今年はこういう感じ。全身全霊じゃないとできません、というところまで追い詰めたい。ダンサーとしてのキャリアの大詰めだなと思っています。体力やコントロールの面からも、ダンサーとして心身が充実の時期は残念ながらもうそろそろ終わっちゃうから・・・
__ 
悲しいことですね。
きた 
しょうがないことです。ダンスなので。そこからはまた違う踊りが生まれるとも思うけどね。

赤いプリンセス「さぬきひめ」

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
きた 
ありがとうございます。何か、大きい。包装紙って何か久しぶり・・・わ、宝石じゃないですかこれ。だってベッドの上に寝てるんだよ。こんな大切に育てられた娘たちを食べちゃうんですよ。凄いね。「赤くて甘いプリンセス」だもん。
__ 
もしよかったらお召し上がりください。

吉田寮食堂春のオールスター感謝祭

鍵山 
最近私は吉田寮食堂春のオールスター感謝祭の準備で忙しくしています。昨日は打ち入りでした。いざ顔合わせをしてみたら、幅広い年齢層の人たちが集まりました。お互い名前は知ってたけど話すのは初めてと言う人が結構いたので良かったです。
__ 
色んな人が集結してますよね!感謝祭当日も賑わいそうですね。
鍵山 
今回の感謝祭は食堂酒場の人にもイベント期間中にお店を出してもらうし、この間の三文オペラの時に闇市マルシェをやって頂いた方にも引き続き行っていただけることになって。最近は本当に、吉田寮にべったりですね。うん、今の状況になってからは特に。
__ 
なるほど。
鍵山 
もちろん学校の仕事も忙しいし、クラブも充実はしてるんですけど。今日はこの話がしたいです。
立命館中高演劇部
立命館中高には、元々演劇同好会が存在していましたが、2003年度に”部”に昇格し、現在の演劇部がスタートしました。発足当時は部員も少なく休部時代もありましたが、徐々に活発になり、現在は常に30人を超える大所帯になっています。2004年度から中学生の受け入れを本格的に開始し、中学の大会にも参加するようになりました。現在では、OB・OGも様々な場所で活躍するようになってきています。 中高一緒に仲良く活動しています!(公式サイトより)
吉田寮食堂春のオールスター感謝祭
2019年3月22日(金)-3月24日(日)、吉田寮食堂にて開催。ご予約はいりません。
カンパ制:本イベントの収益は吉田寮存続のために寄付いたします。


吉田寮の存続が不安な状況の中で、過去・現在・未来の吉田寮食堂使用者団体で集まって演劇を中心としたイベントを行います。吉田寮という場所は、寮生・京大生・大学生のみならず、京都中・関西中の文化活動に関わる人間にとって、はるか以前から文化活動の中心のひとつとなってきました。現在もその役割を果たし、京都の表現活動に貢献し続けています。今もこれからも様々な人を繋げる場であり続けることを発信していきたいと思います。(公式サイトより)

バトン

__ 
吉田寮食堂春のオールスター感謝祭について、是非、三日間続けて拝見したいです。
鍵山 
ぜひー。どの日も本当に素敵で見逃せない演目があるかと思いますので。
__ 
楽しみです。そもそも私、劇団衛星の団員なので必ず行くんですけどね。さて、今回の壮大な企画ですが、経緯を教えていただけないでしょうか。
鍵山 
吉田寮食堂大演劇「三文オペラ」のプロデューサーである小林欣也さんが去年企画した「今」に、陣内幸四郎さんと平林君が受付で初めて会って話したみたいなんですね。陣内さんも吉田寮の今の状況についてずっと心配していたから、僕たちも何とかしようという話になって、そこから企画がスタートしました。だから本当に、欣也さんがバトンを繋いでくれた形なんですよ。子供鉅人の益山さんへのバトンと同じく。
__ 
運動というのは、伝わってこそ。ですね。
鍵山 
もともとあの空間を愛していた人というのは本当にたくさんいるんですけど、いま本当に盛り上がっています。食堂会議に行っても新しい企画がたくさん出ていて。週末に少し顔を出すと絶対に何かイベントをやっているんです。本当に色々な人が出入りしていて、近所の子供もいるし。
__ 
そういう文化のるつぼでもあるんですね。
鍵山 
すごく開かれた場所だと思うんですよ、国籍も文化も入り交じった場所なんですね。誰もがそこではリラックスしていられると思うんです。でも同時に、そこには確かな気遣いもあるんですよね。常に色々なことがアップデートされていて、みんなが冷静に考えを交換してるんです。
__ 
私は吉田寮に2回しか泊まったことがありませんが、でも最初の朝はものすごく印象に残っています。静かで、色々なものがあるのに嘘がなくて、澄んだ場所だった。
鍵山 
吉田寮で気づいたら一晩過ごしていた、なんてことありますよね。玄関先でもゲーム部屋でも。
__ 
吉田寮食堂はリフォームしたから、昔とはかなり雰囲気は違いますけど、中を流れている空気は同じですよね。
鍵山 
そうなんですよね。吉田寮食堂はちゃんと立て替えて安全なのに、先日の通達で立ち入り禁止だなんて言われちゃって・・・前の総長さんの時に、吉田寮食堂を建て替えて現棟にも手を付けるということが決まったはずなのに。

あの場所

__ 
今回の件は、ちょっと辛いですよね。
鍵山 
辛いですよね。一般的なテレビや新聞の報道って大学側のことばっかりしか言わないから。例えば世間一般の人って、寮生が危ないのにわがままでい続けているみたいな捉え方する人が、当たり前だけどいて。それは違うぞという思いがあります。元々、寮生の方から建物の安全性については京大側に訴えていたのに。
__ 
私が知っている限りでは、10年以上前からですね。
鍵山 
今回は話し合いもなくなったのでそれがちょっと悲しいです。この間の大学当局からの声明では、今の自治のあり方が時代に合わないみたいなことを言ってましたけど、いやいや知らないでしょうと。いかに時代や、入寮する人に合わせてやっているかということを知らないんじゃないか。会議に時々参加すると、本当に皆さん穏やかで賢いんですよね。本当に偉いなあと思って。焦って極端な行動に出ようとする人はいないんです。丁寧に議論を積み重ねるんです。昔の学生運動みたいに先鋭化してしまったのとは違う。
__ 
学生自治を軽く扱ってしまうということが、どれだけ酷いことか分からないんだろうかと思っています。大学側がどうこうしていい問題じゃないのに。これは無茶な置き換えかもしれないけど、これが例えばアメリカの伝統のある私大がこんな事をしたとしたら、少なくとも州単位の問題になってるに違いないんですよ。アメリカにおける大学の存在なんて若者だけのものじゃなくて地域にとっての重要な機関なんだから、デモが発生してもおかしくないんですよね。というかそもそも、「自治」の姿は誰に決められるものでもない。自治、ひいては自立が、なぜか管理者から許容されなければ存立出来ないものにいつの間にかなってしまっている気がします。それに反発心を持たない世間一般の人って・・・どうなんでしょうね。
鍵山 
うちの学校(立命館中高)は生徒の自治というものを昔から大事にするという風土があって。中高で発達段階は違うけど、高校生ぐらいになると色々なことを自分たちで全部企画して、それを先生達と交渉しながらやっていくという文化があるんです。教員だったらその大切さをみんなわかってるはずだと思うんですけど。でも、先日大学の教授会の有志による、大学当局への疑問を投げかける声明がありました。やっぱりそう思ってる方は多いと思うんです。大学の中の事は分からないですけどね。
__ 
ええ。
鍵山 
それと、私が学校の先生をやっていて、普段子供たちに関わっているということ、吉田寮の問題に関わっていること、演劇に関わっていること。このモチベーションはすべて一緒なんです。生徒達が色々な価値観に触れて成長していく過程を大事にしたいんですね。そういう環境を保ちたいんです。それは普段の教室でもそうだし、演劇部でもそうだし。吉田寮と吉田寮食堂は理想的な場所だと思うんです。例えば文科省が言ってたりする「多様性の尊重」「共生社会の形成」という意味でも。
__ 
見えてないということはないと思うんですけどね。
鍵山 
ただ、実はちょっと楽観視しているところがあって。人があって場所があったら、いくら大学側が管理を強めたとしても同じものを立ち上げていけるんじゃないかという勝手な希望があって。少なくとも新棟があるので。2月12日の大学側の声明はがっかりしたんですが、新棟もまた徐々に、現棟とは違った、いや一緒と言えば一緒なんですけど、吉田寮の空気になってきていて。麻雀スペースもしっかり出来てて、先日そこで麻雀しました。欣也さんと益山さんがインタビューを受けてたんですが、益山さんが建物を大事に思っていて、欣也さんは自治が大切だと言ってたんです。私も、建物はもちろん素敵なんですけど、やっぱり人がいて場所があれば、と思っています。
__ 
そうなんですね。私は建物大事派だな・・・あそこは保全しないといけないから、本当ならお金を出さんといけないんじゃないかと思う。特に中庭。
鍵山 
そう、中庭はね。
__ 
吉田寮に初めて泊まらせてもらった朝、中庭に足を踏み入れた事を思い出しました。京都であんな場所が!って感じでした。
鍵山 
初めて吉田寮の中に入ったのは大学に合格後に見学に行った時です。廊下を猫が歩いていたのが印象的でした。
__ 
そうなんですね。私が初めて吉田寮食堂に入ったのはケッペキの新人公演だったかな。福田恵さんが出てた。
鍵山 
私、衣装やってました。

伝説

__ 
今回の吉田寮食堂春のオールスター感謝祭。思い入れのあるプログラムを教えてください。
鍵山 
それはもう全部ですね。私が演劇を始めた初舞台が吉田寮食堂だったので、まずその時点で思い入れと思い出があるので。
__ 
ですがまずは、伝説の√12がありますよね。
鍵山 
そうなんですよ。私も演劇を始めたばっかりの頃に√12を見ていて。中身は何も覚えていないのにすごく楽しかったことだけ覚えています。
__ 
私もバリエで一度見たことがあって。もしかしたら初めて劇場で見たシュールギャグだったのかもしれないんです。
鍵山 
今回は昔演劇をやっていた人、もしくは京都じゃないけど今でも演劇をやっている人、とにかく色々な関わり方をしている人に来ていただこうと思っていて。とにかくたくさんの方が二つ返事で引き受けてくださったのがすごく嬉しいです。
__ 
とても楽しみです。
鍵山 
桐山さんとか、三つぐらいに出演されるんじゃないかな。逆に、ニットキャップシアターさんなんかは今まで食堂で一度も公演してなかったんですよ。
__ 
そういえばそうなんですよね!そういえば記憶にないなと思ってて。
出来たらこの感謝祭以降も、バトンをつなぎたいですね・・・。
鍵山 
そうですね、次々とやっていて欲しいです。

吉田寮食堂大演劇「三文オペラ」

__ 
しかし吉田寮食堂大演劇「三文オペラ」面白かったですよね。
鍵山 
人生で三本の指に入るくらい衝撃的でした。安住の地の岡本昌也君は全ステみたそうです。
__ 
それはもうファンですね。
鍵山 
色々なことをひっくるめて、益山さんはすごいなと思ったし欣也さんはすごいなと思いました。子供鉅人は古野くんのおかげでずっと見てきているんですが。
__ 
私もかなり前から見ています。精華小劇場で公演してた頃ぐらいから知ってます。
鍵山 
精華小劇場!
__ 
ねー、劇場というのはあまり残してもらえないものなのかな。
鍵山 
その地域の中でどれだけ価値があるものか、ヨーロッパではものすごく価値のあるものとして受け入れられているのに日本ではあんまりですよね。劇場は芝居の公演会場としてただ使われるというものだけではないのに。

質問 小野村 優さんから 鍵山 千尋さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、小野村優さんからご質問をいただいてきております。「人と関わる時に気を付けてることは何ですか?」
鍵山 
いっぱいあるんだけど、例えば初めて会う人と関わる時、できるだけその方の考え方とか受け止め方とかを素直に受け止めるようにしたいです。一度、自分をまっさらにして。って口で言うのは簡単ですが難しい。
__ 
相手のおっしゃっていることを素直に受け止める。
鍵山 
私もついつい思うところがあって「でもそれはちょっと違うんじゃない」と言ってしまいがちなんですけど、できるだけそうならないように。そうすると自分も広がるし。という事かな。あとは、人に対しての態度ということではないですが、最近はできるだけ色々なタイプの方と関われるといいなと思っています。

質問 にさわまほさんから 鍵山 千尋さんへ

__ 
前々回にインタビューさせていただきました、安住の地のにさわまほさんからも質問を頂いてきております。「これまで作った衣装の中で一番の自信作を教えてください」。
鍵山 
いっぱいあるんですけど、どれか一つと言われたら、二年前にルドルフの公演で二口大学さんに作った狩衣と袴です。二口さんが完全に着こなしてはったからすごいなと思って。完全に馴染んでて、お寺に佇むとちょっとぎょっとすると言うか。そこだけ千年前かな、というぐらいです。二口さんとの共働で出来上がったなという感じです。あれは自信作です。

ジェンガ

__ 
今日はですねお話を伺えてお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
鍵山 
ありがとうございます。嬉しい。何か凄い、大きい。重たい。(開ける)あはは。わー凄い。ありがとうございます。ジェンガや。これは、遊びます。
__ 
よろしければ寮食で遊んでください。
鍵山 
部活の合宿にも持っていきます。

えーびーがた「地球ロックンロード」

___ 
今日はどうぞよろしくお願いします。パフォーマーの小野村優さんにお話を伺います。最近小野村さんはどんな感じでしょうか。
小野村 
よろしくお願いします。最近はもっぱら、えーびーがたの稽古ですね。ちょうど1ヶ月前なので。
___ 
3月14日(木)が初日で、公演は日曜日までですね。稽古はどんな感じでしょうか。
小野村 
まきゃ(真壁愛さん)がしっかり準備をしてきてくれているから、全体的にいいペースだと思うんですけど、私が自分の役をまだつかめていなくて。でも、面白くなる予感というのはみんながずっと持っていて。不安を抱えず、やるべきことをやっていこう、という雰囲気です。意見やアドバイスが終始飛び交い、とてもアクティブです。
___ 
お客さんは、役者の悩んだ形跡とかは結構感じると思いますよ。だからきっと無駄ではないと思います。
小野村 
なんかこう、今悩んでることとかが全部ちゃんと面白いことにつながれば何でもいいなと思っていて。色々取り組んでいます。
___ 
演技には色々な選択肢があるわけじゃないですか。声のトーンの調節であるとか、どこでブレスをするかとか、ここでどんな想念を持つか、とか。お客さんに理解を委ねるかそれとも説明してしまうかとか。やっぱり舞台だと、観客席と演技を共有・同期しているので、お客さん側にもパフォーマンスについてのイニシアティブが握られてるんですよね。だから逆に言うと、役者が悩んだ分、お客さんには解釈しがいのある演技が出来るんじゃないかと思っています。
小野村 
私の役は「うづき」と言って、30×30で上演した「ちゃりんこベイベー」と同じ名前なんです。でもその時と全く違う人間というわけじゃないんだろうけど全く別物だと思った方がいいのかな。「ちゃりんこベイベー」は30分間だけの彼女を切り取れば良かったんですけど、今回はそういうわけにはいかないので。試行錯誤しています。まきゃが過ごしてきた高校生活がベースの、半分フィクション、半分ノンフィクションという作品なんです。私はその世界の中で過ごしてきたわけじゃないから、「うづき」がどんな子なのか全く分かっていないんですよ、多分。
___ 
それは・・・おいそれとは何も言えないですね。
小野村 
でも本当に一つのきっかけで変わるということを知ってるんです。早くそれに出会えるように試したり聞いたり。多分、「うづき」と私の違い、もしくは共通点は何かということをつかめたらいいんじゃないかと思って。
___ 
つまり今、小野村さんは役作りの渦の中にいるということですね。
小野村 
もう自分で自分のことが分からないぐらいテンパってるから、そうかもしれないと思いながら聞いていました。でもこういう、分からん!みたいな事とかも発信してもいいんじゃないかなと。いいんちゃう、って先輩方にも言っていただいて。
___ 
挑んでますね。
小野村 
私個人としては凄くチャレンジな役ですね。絶対楽しくなるはずなんですよ。楽しいと思うためにも、今苦しんだり、準備して稽古しています。刹那的じゃないですか、四日間しか本番の期間がないなんて。お客さんに楽しんでもらうために、今苦しもうという感じですね。
___ 
苦しむって悪いことじゃないですもんね。頭ん中でずっと難しい計算をしていて、ストップモーションじゃないですけど、何かを生み出そうとしている人はそれだけで見応えがあると思います。
小野村 
その時何も進んでいないわけじゃないですからね。
___ 
絶対に進んでいますよね。
小野村 
楽しいばっかりでは全然ないですけど、自分たちで公演を打つというのはこういうことなんだなあと思います。すごくたくさんの人にお力添えを頂いていますが、今までは客演として演劇に関わっていることが多かったんですけど、公演を作るって大変で、作品のことだけ考えていればいいというわけじゃないし。
應典院舞台芸術祭SDN2018参加 えーびーがた 初本公演『地球ロックンロード』
期間:2019/03/14 (木) ~ 2019/03/17 (日)
劇場:
浄土宗應典院 本堂
出演:小野村優、真壁愛、浅雛拓、福田恵(劇団レトルト内閣)、片岡百萬両(片岡自動車工業)
脚本・演出:真壁愛
料金(1枚あたり):2,300円 ~ 2,800円
【発売日】2019/01/15
早割:2500円
前売・当日:2800円
應典院寺町倶楽部:2300円(要証明)
公演日時:
3月14日(木) 19:30
3月15日(金) 19:30
3月16日(土) 13:00/18:00
3月17日(日) 13:00
スタッフ:
【舞台監督】今井康平(CQ)
【音響】八木進(baghdad cafe)
【照明】海老澤美幸
【舞台美術】青野守浩
【スチール】booyon
【宣伝美術】片岡百萬両(103studio)
【映像撮影】ワルタン
【制作】鈴木ありさ(尾崎商店)
【総合プロデューサー】片岡百萬両
【演出部】飯伏裕理
【動画素材】はちろ ゆき(BANZAI FILMS)

【企画・製作】えーびーがた

縁と道と

___ 
小野村さんが舞台を始めたのはいつからですか?
小野村 
何だろうな、一番の元をたどれば幼稚園の頃からピアノをやってて、その発表会が人前に出る機会でした。幼稚園のお遊戯会とか全部好きだったんですけど、小学一年生の時に初めてミュージカルを見たんです。子供ミュージカルで、有名どころだとアニーみたいな。そこから舞台への強い憧れを抱き始めて、でもその頃はいっぱい他の習い事をしていて、ダンスや芝居のレッスンには通えなくて。自分で舞台に立つということを決めたのは、高校選びでした。当時は塾に通っていて、進学校に進むかそれともダンス部のある高校に行くか迷っていたんです。でもどうしてもダンス部のある高校に行きたくて、塾の先生や親を説得して。それが本当の原点だと思ってます。
___ 
どんなダンス部だったんですか?
小野村 
部活を立ち上げた昔の先輩たちが作ったダンスが伝統として残っているんです。自分たちでも作品の振り付けはするんですが。
___ 
それはすごいですね。
小野村 
実は卒業した後に、私の祖母がその高校の卒業生だったと言うことを知りました。しかもそのダンス部がちょっと宝塚を意識してたんですよ。祖母がいた年に、宝塚の男役スターみたいなカッコいい女の先生がいたらしくて、放課後にその先生の所に行って一緒にダンスを踊っていたらしいんですよ。それが原点になってその部活が出来たらしいんです。
___ 
お祖母さまがOBどころか創設者だったんですね!
小野村 
そうですね。舞台に立つ原点はダンスですね。元々はミュージカルに憧れてるから、大学を選ぶときに色々迷っていました。私は目標がないと頑張れないんですけど、行きたい大学が決まっていないから受験勉強というものをあまり頑張れていなくて。で、いくつか日本の大学を回ったんですけど惹かれるところがなくて。海外にも憧れがあって、アメリカの大学のことを調べ始めていたんです。向こうの大学って専攻の幅がものすごく広くて。で、最初からコースをあまり決める必要がなく、2年まで一般教養を学び、その間に自分のやりたいことを決めればいいよという感じなんです。当時私は、日本という世界で自分がプレイヤー側で活躍できると思っていなかったんですよ。小劇場という世界があることも知らなかったし、プロになるしか道はないと思っていたから。それならエンタテイメントの裏側を勉強しようと思って、テーマパーク経営学という学科を学ぶために渡米しました。
___ 
おお。
小野村 
そこの、一般教養のコースとは別に自由に選べるクラスの中で、ダンスとか芝居とかのクラスを取っていたんですが、年齢が40代50代の人達やおじいちゃんやおばあちゃんも普通に受講していて、その人たちはただ勉強したいから来てるんですね。本気でハリウッドやブロードウェイを目指している子たちもいて、それに対して「いやいや無理でしょ」、だなんて誰も言わない。本当に自由なんですよ。自由の国アメリカというのはこういうことなんだと思って。じゃあなんで私は、本当にやりたいことに挑戦していないんだろうと思って。そこで、プレイヤーとしての勉強ができる大学をアメリカで探して、転校しました。
___ 
日本とは違う文化風土ですね。
小野村 
日本だと、成功する可能性がある人だけが挑戦出来て、条件的に無理だったら、そもそも自分からそういうチャレンジを辞めてしまう。今はだいぶ変わってきてると思うんですけど、昔は、少なくとも私の周りの世界はそんな空気だったように感じて。私自身がそういう見方をしてしまっていたのかなとも思っていて。12歳くらいにして、勝手に自分でもう遅いと思ってたんですよ。芸能界はもっと子供の頃からずっとやっているから行ける世界なんだ、みたいな思い込みをしてたから。

「役者のためのダンスワークショップ」

___ 
最近のパフォーマーとしてのテーマは何でしょうか。
小野村 
私色々やってるんですけど、例えば「役者のためのダンスワークショップ」の話。なぜあれをやってるかと言うと、小劇場のダンスシーンの入っている作品、あれがなぜ入ってるかわからないことがあるんです。自然に入っている作品もあるんですが、そうでないものもあって。ダンサーではなく役者が振り付けを覚えて、何度か稽古したら終わりだったのかな、みたいな。その役の演技に関しては一挙手一投足を細かくこだわって作っているのに、ダンスに関しては、踊りになった途端にその役者さんそのものに見えてしまったりして。それを見てるのが辛くて。どれだけ技術が追いつかなくても、その役として動くことに意味があると思うんです。そこを知っている演出家も振付師も役者もダンサーも、関西にはあまり多くいないのではないかなと。そこに、凄い微力ながらも、そこを分かっている人が増えていったらいつか変わるんじゃないかなと思って、始めたんです。振り付けをもらった時に、役そのままで踊る技術。役作りと感情をかみ砕いて演技を作るのと同じように、ダンスについても考えることができたら。
___ 
なるほど。
小野村 
それと最近のテーマとしては嘘がないようにしたいです。嘘がないと感じる役者さんの演技は素敵だなと思っています。ダンスワークショップも一緒なんですよね、きっと。
___ 
きっと、舞台の上で役者の都合や欲や、リアルではない反応が出ると嘘と感じられるのかもしれませんね。
小野村 
私個人は一個一個を考えていかないと作り上げられないぐらい、ものすごく不器用なんです。それを感覚や技術で出来てしまう人もたくさんいて。当たり前の事なんですけどね、その役にとって嘘ではないようにしたいんです。めっちゃ芝居って大変、やればやるほど難しい、って思ってます。ダンスみたいにレッスンに通えるスタジオとかもないし。
___ 
あっても少ないですよね。
小野村 
WSとかも行ってみたけど、基礎から積み上げてもらえるわけではないし。だから人となりがそのまま出ちゃうのかな、と思って。そういう意味で言ったらその役者の素の部分を豊かにして行かないといけないなと思っています。自分が見て素敵だなと思う人たちも、きっとそれぐらい豊かだから。その辺りが私にとってのテーマなのかもしれません。

だから・・・

___ 
あえて難しい話題なんですが、そういう役者の魅力が裏目に出てしまうこともあるのではないでしょうか。
小野村 
確かに、そこが難しいところなんですよね。それでも、私がやる必要はないじゃん、にはしたくない。そして今、私が良かれと思ってやっている演技が悪しかれになっていたりする。が、結局やってるのは私だから、きちんと役をつかんで、自分が滲み出たらいいなと思っています。
___ 
何か一つでも確信に至ったら、それはもう通過することなく確信すると思うんですよ。それはもう手放さずにいるべきだと思います。
小野村 
うん、今は全然自信を持てるとこには行けてないと言うか、何もわからないという状態になってしまってるから、なんでも試せることはやろうとしています。めっちゃ迷惑かけてますけどね。まきゃも大変なのに・・・彼女は初の脚本演出ということに全く甘えていなくて。比べるものでもないですけど、ここから勝負して、観たことのないものを作ろうと言う挑戦をしています。私に関しては、誰も何も待ってくれない。
___ 
そうですね、座組の中できっと、小野村さんが悩んでるということは理解して共有してると思います。
小野村 
去年、すごく静かな会話劇に出演させてもらったんです。あまりにも自分の人生にあった経験と似た役どころだったんですけど、何をしてもダメ出しされたんです。どこに原因があるんだろうとずっと悩んでいたんですが、演出家の方が(私の役は病気の婚約者の心配をし続ける女性なんですが)「病気の彼を責めているんではなくて、病気そのものを責めてるんですよ」と。そもそもそこが原点だと気付いた時に、演技が全部変わったし、やることなすこと良い方向になっていったんです。やり方がおかしいというよりは、そもそもの部分が大事なんですよね。
___ 
それが正解だと理解した瞬間のために、今準備してるんですよ。
小野村 
今日この後の稽古でその正解が見つかったらいいんですけどね。毎回、頭がプシューってなって終わるんですけど。
___ 
近道はないですから。
小野村 
はい、だからやってるのかも知れないです。こんなに苦しくてうまくできないことが、まあこれまでもたくさんありましたけども、芝居こそこんなにも自分に合っていない、得意ではないものだと思っていて。だからやってるのかも知れないです。