載せる

___ 
演技について最近考えていることはありますか?
川久保 
人によって全然、響く場所って違うじゃないですか。だから、脚本家さんが書いている事だったり、演出家さんが考えてることだったりを、自分の中で本当にしっかり消化して、自分なりの立ち上げ方を作り上げて、そこに自分を載せたいと思います。何かしらお客さんに影響を受けてほしいじゃないですか、何かもらって帰ってほしいし。劇団かもめんたるに出演した時が、めっちゃ嬉しかったんですけどものすごく大きな挫折でもあって。皆さんものすごくベテランで、私だけ本当に、言ったら素人で。でも私だけの時間とかたくさんあって、大丈夫だとは言われてたんですけど打ち上げの席でう大さんが(一人褒めて女優さんがいて、その人は)「自分の書いたものを再現する役者ではなくて、越えてくる役者がいい」と。自分が書いたものをただ立ち上げる役者って面白くないじゃないですか。それだったら本を直接読めばいい。私もめっちゃそうやなあと思って。一つ体を通して立ち上げるとなった時に、役者がなにか、その人を超える何かを持って行かないといけない。じゃあそれをどうしたら良いのか考えるようになりましたね。再現が上手い役者にはなりたくない。
___ 
どんな職業でも一緒だと思うんですけど、全く一緒の物って作れないじゃないですか。完璧な設計書が一つあったとして、プログラマー10人がそれぞれ同じものを作ったとする。機能は全て揃っているのは当然として、全ての成果物にはその10人の人格や内面が反映されてるんですよね、一長一短もありつつ。
川久保 
そう!
___ 
と言うか、むしろ、その人が反映されていることが、お客さんの満足度よりも重要なことなんじゃないかなと思う。

自分の面白いを否定するという作業

___ 
INDEPENDENT:18、2次予選通過、おめでとうございます。6月の二次審査、7月の三次審査を経て本戦に出演が決まりましたね。ご自身としてはどんな経験でしたか?
川久保 
やっぱり大きかったのは、2次から3次の間に作品を更新しないといけないという中で、「私は自分の面白いを否定してこなかったんだ、だから自分の笑いが更新されなかったんだ」ということに気づけたことです。
___ 
自分が更新されていないという不安があったということですか?
川久保 
そうです。実は初舞台でも脚本をしていたんですが、また自分で何か書こうとしても以前と同じことを思いついてしまう。そういう既視感を人に言われた時に、うわってなるんですよ。脚本家さんて、自分の既視感と戦うじゃないですか。それをいかに塗り替えて、違うものを産み出していくのかという。
___ 
自分の既視感と戦うと。
川久保 
そういう意識がないと、絶対磨かれていかないし、って思って。ホンマに、自分がいかに狭い場所にいたかって・・・自分の引き出しの少なさというか。私の作品にしても、一人芝居で複数人をやるというのが新しいと思ってたんです。でもそれは全然珍しくなくて、でも、やり方や演出を変えれば一つ、真新しさが出ると思うんですよ。で、私は演出というのをしてないと思ったんですよ。これまで役者をやってきましたけど、作品を書いたり演出をつけたりする部分にも、挑戦していきたいなって思います。そうすれば引き出しも自然と多くなるのかも。
___ 
作演の力を磨くにはどうすればいいんでしょうね。
川久保 
やっぱりとりあえずはインプットですよね。いいものを見るのはもちろんですけど、面白くないものを見たときにもなぜ面白くなかったのかを考えて、自分に重ねたり。
About "INDEPENDENT"
15年以上の歴史をもつ最強の一人芝居フェスティバル
コンセプチュアルな劇場プロデュースとアグレッシブな活動で全国から注目を集める大阪インディペンデントシアターを拠点に、2001年から毎年11月に開催している「最強の一人芝居フェスティバル=INDEPENDENT」。(公式サイトより)
最強の一人芝居フェスティバル INDEPENDENT:18
[日時]11/22(木)~25(日)
[会場]in→dependent theatre 2nd
(出演者等は公式サイトをご覧ください。)

的の話

___ 
引き出しを広げるという話だったら、中村こず恵さんに取材した時に伺ったんですが、親になってからそれまでの役者生活とは全然違う人脈ができて、それがものすごく刺激を与えてくれたと。
川久保 
あー、なるほどな。バイト先とかの別のコミュニティからもらうものってあるなあと思っています。早稲田の演劇研究会の新人の時にカンヅメで稽古してたんですけど、それから初めて外部に出演した時にフワァッと世界が広がって。ホームも大事なんですけど、外部も大切にしたいし、それらとはまた別に自分だけのやりたいことをやる世界も持ちたいです。行き来を大切にしたいですね。お笑いも、なまなかな姿勢ではできないですけど、挑戦した時に何が出来なかったのかとか、
___ 
吸収して、考えて、仮説を立ててテストして。
川久保 
そう、そうなんですよね。試さないといけない。
___ 
作って自分で評価するのではテストにはならない。他の人に必ず見てもらわないといけない。内部や過程を知らない人が見るからこそ生まれる初見性、未読性。そこに仮説をぶつけるからこそのテストなんですよね。
川久保 
ちょっと話が違うかもしれないんですが、かもめんたるさんに出た時に、役柄を演じるとき、その役の正解を見つけようとしてたんですよ。どうしたらその通りになるんだろうと思ってたんです。その時にヨーロッパ企画の石田さんが「晴ちゃんはその的の中心を狙おうとしすぎで、それだとその役の一部しか見えてこない、そりゃそうだ。そうじゃなくて、あえて中心を外してみるんだよ」と言われたんですよ。絶対違うやろうっというギリギリを探す。この役が絶対にやらないであろうことを試していくと、「これは違うんや」というのが分かってくる。中心しか狙わない場合よりも、外側からギリギリの幅を探していくと。めっちゃ面白いなと思ったんです。いままでそういう実験の仕方はしてきてこなくて。演劇って、人一人の描写が2時間に収まるわけないじゃないですか。だから2時間以上のものを見せないといけない。するとその人の一面だけ見せたのではダメで。それが役の幅だと思うんですよ。役に幅をつけるという実験作業を、稽古でするべきだと思うようになりました。
___ 
その「役の幅」って、実際には演技の取捨選択の過程に過ぎないんですけど、でもその厚みというものはお客さんに伝わるんですよね。
川久保 
あー、そうなんですよね。凄い役者さんの演技って、世界がちゃんとあると言うか、生きてる!と思うんですよね。
___ 
外側から埋める、か。
川久保 
もう本当に、石田さんにお世話になりました。あの的の話は一生忘れないと思います。そのころ、範疇に収まりかけてて。脚本とか、演出さんの言うことをコピーするだけの自分になりかけてた自分に気づきました。ああそうか、超えていかないといけないんだ。
___ 
危なかったですね。
川久保 
ひとつずつの舞台で大きなものを得てきていると思います。

質問 地道 元春さんから 川久保 晴さんへ

___ 
前回インタビューさせていただいた、劇団子供鉅人の、最近劇団員になった、地道元春さんから質問です。
川久保 
えっ!子供鉅人さん、めっちゃ好きです。
___ 
「武士道についてどう思いますか?」地道くんは武士道を大切にしたいと言ってますね。
川久保 
難しい。えー。
___ 
命よりも愛や道を大切にする思想だと個人的には思ってます。
川久保 
ロマンですね。うーん、えー・・・難しいですね・・・。

これから

___ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
川久保 
自分がまだ踏んでいない芝生を踏んで行きたいと思っています。私が入っている露と枕って、同期が主宰なんですよ。でも外部だと基本的に皆さん先輩で。上の人から貰うものと、上の立場でやるものと、自分が主宰でやるものと。色々な行き来の中で色々と自分の味を広げていきたいです。阿部サダヲさんみたいに、カメレオンなのに自分であり続けるというのは幅がないとできないと思うんです。違う自分の色を持ちたいです。私らしいと思っている私と、私らしくない私。を取り込んでいきたいと思っています。

ドライフルーツ

___ 
今日はお話を伺いたお礼にプレゼントを持って参りました。
川久保 
えっ!
___ 
どうぞ。
川久保 
ありがとうございます。何ですか。
___ 
ドライフルーツです。
川久保 
嬉しい!私めっちゃドライフルーツ好きなんですよ。

質問 渡邉 裕史さんから 地道 元春さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、渡邊裕史さんから質問を頂いてきております。「劇団に入るきっかけは何ですか?」
地道 
暇やったからです。でも劇団に入れるかどうかは劇団が決めることなんですけど、本質的には暇やったからです。あんまり僕は野心があるわけでもなくて。将来がどうとかは、ある意味現代子なんですけど、無くて。一番身近で見てたこの劇団に入ったら大変やろうなと思ってたんですけど。でも毎日楽しくおれるのは、ここなのかなと。

気合

__ 
今後、どんな感じで?
地道 
いやあ、気合いっすね。
__ 
気合が一番重要ですからね。

スパイスカレーのレシピブック

__ 
今日はですね、お話を頂いたお礼にプレゼントを持って参りました。
地道 
(開ける)カレー。
__ 
カレーは大丈夫ですか?
地道 
いやあ大好きっす。
__ 
ほっとした!

次は「夏の夜の夢」

__ 
夏の夜の夢。意気込みを教えてください。
地道 
いやー、虹の時に舞台に上がられへんかったからね。やっと上がれるわ、と。なかなか稽古時間がシビアなんですよ。
__ 
そりゃ1ヶ月とちょっとしかないからね。
地道 
むちゃくちゃですわ。ハミンンンンンングから数えたら1か月に一本芝居を作ってるからね。
劇団子供鉅人特別公演「夏の夜の夢」
"水しぶきはぜる、祝祭野外演劇!
昨年、本多劇場にて「マクベス」を上演し、大好評を得た100人シリーズの第二弾!
2018年の夏の終わり、水上野外劇場にて上演されるのは、シェイクスピアきっての祝祭劇「夏の夜の夢」!
夏至の夜、魔法の森で人と妖精が繰り広げるロマンス喜劇を子供鉅人が大胆にアレンジ!
100人分の水しぶきとエネルギーが爆発する、超盛り上がり必至の人力スペクタクル!

パルTAMAフェス2018 in 多摩センター ~音楽と演劇を楽しむ2日間~

2018年9月
15日(土)17:30
16日(日)17:30

パルテノン多摩 きらめきの池ステージ

キャスト・スタッフは公式サイトをご確認ください。

きっかけ

__ 
地道さんが演劇を始めたのは?
地道 
ボスや影山さんと同じ高校で、でも学年はいっこもかぶっていないんですけど演劇部に入って。で、一つ上に河井くんが一個上の先輩で仲良くなって。でその後高校辞めて正社員で働いてたんですよ。でその時河井くんがルサンチカを始めて、で声をかけてもらって芝居に出るようになって。その後しばらくしてHELLOHELL!!のワークショップオーディションに誘われて。そこが初めてですね、見たこともないまま行って。なんなら普通の小劇場も見たことがないのな、割りと仲良くなって。で、お客さんで芝居を観に行くのも子供鉅人が最初で。
__ 
なるほど。
地道 
子供鉅人の十周年記念ツアーで、重力の光の後にワークショップオーディションがあって、そこで普通に友達に会いに行くつもりで行ったのにみんなで東京行くぞみたいなことになって。
__ 
連れられて行ったね。
地道 
そうなんですよ。他の劇団を全然知らないんですよ。あんまり見に行かないんでね。未だに結局、劇団は子供鉅人しか知らないんすよ。

ハミンンンンンングの思い出

__ 
ハミンンンンンングの大阪公演はCCOでしたけど、ピッタリでしたね。ムードがあって。
地道 
大変でしたよ、暑かったし。それに照明が。
__ 
あ、照明ってハンガー掛けの蛍光灯ね。
地道 
あれ、基本は全部僕がオンオフやってて。普通にオペをやってました。東京のいつかの回で、電源コードが絡まって動かへんくなって。お客さんにはそんなにバレてないと思うんですけど。ギリギリの作り方をしていました。
__ 
どういうところが好きでしたか?
地道 
小道具が全部抽象的で、近くでよく見ると可愛いんですよ。電話の受話器とかも、よく見たらペンキで塗られているだけで。手作り感満載で。それがハンガーラックと無機質な蛍光灯と合ってて。あとやっぱり大野さんの生演奏。
__ 
かっこよかったですね。
地道 
大野さんはいやマジで熱い男やったんですよ。普通劇団から生演奏をお願いするような時はバラシなんてさせないでしょ。でも大野さんは「いやいいよ、俺もチームの一員やから」と。しっかり手伝って、しっかりメンバーの一人として機能してて。
__ 
いい人というより熱い人やな。
地道 
おもろいしね。変なおっさんですけどね。ギターが何よりも好きなんすね。音楽のライブとかってまずこんなステージ数ないし、こんなに長時間弾き続けることもないし。
__ 
ハミンンンンンングは、子供鉅人の成熟した作品だな。
地道 
いや、みんなですけど、全然まだ成長期と言うか。ここ1年で色々なことがあってスキルも身についてきたけど、まだ全然完成とちゃうなと。全員が成長期だと思います。ハミンンンンンングは現時点での得意技をかましたったって感じだなと思います。虹の再演に繋げる新作という面もあったと思うんですけど。

劇団子供鉅人「ハミンンンンンング」

__ 
ハミンンンンンング。大変面白かったです。地道さんは運送会社の後輩役ですね。あの、どこか謎めいた感じの。
地道 
初めて子供鉅人で名前のある役で出させてもらって。個人的な裏の話になるんですけど、自分にどこが足りていなくて、これを習得しないとここでは戦って行かれへんなっていいのが、薄々わかっていたけどよりはっきりとわかった。自分を知った公演になりました。
__ 
というと。
地道 
自分ではそんなに自覚がないんですけど、小さい、細かい芝居は得意らしいんですよ。でも、子供鉅人ではよくやる、中空に飛ばすお芝居の仕方は、僕は全然ない。これはどうにかしやんと、と。焦りはありますね。
__ 
まず、細かい演技が得意というのは私も思いました。あれ?地道ってこんなに、粘度のある演技してたっけ?と思っていました。そんな人だったかなと思って。この人から目を離そうとは思えない、みたいな役者。
地道 
いやでも、特にね、ボスがモブが動いてるのが好きな人だから。あれなんですよね、フォーカスが上がっていない時に力を抜くというのがもってのほかで。アンサンブル芝居でやってきて、劇団員もそこが強いから、緊張感を解かない。普段の稽古でもよく言われますね。だらしなくなってんぞみたいな、もっと派手に、テンションをかけるというのはどの稽古でも言われますね。
__ 
子供鉅人、個人的には期待が高いから、厳しい目で見てるところがあるかもしれない。
地道 
ボスの演劇論として、徒労が大事なんですよね。負荷を掛け続ける事が見世物であるという考え方を持っていて。僕を始め、たぶん全員そこは賛同していて。勝手に体がそれを理解しているのかな。ぬるい動きはしていないと思います。
__ 
ちょっと気を抜いているとすぐわかるな。
地道 
僕とかはそうなんですけど、アンサンブルの演技を見るのは割と好きで。メインよりも。事細かに演技が付けられているわけじゃないから、やり放題やってるんですよね。でも好き放題やれるといっても、脱力していいというわけではなく、めっちゃしんどいことを誰に言われるでもなく意味不明にやってるというのが面白い。それが悪目立ちしていたらあかんけど、それが馴染んでいたら、舞台上に緊張感が生まれる。僕も、どこかのマニアックな奴の目は俺を見ているから、面白いテンションをかけ続けないといけない。
__ 
お客さんの目は面で処理してるから、全部見てると思いますよ。舞台の上の役者の集中力が高かったらなおさら。どこか一点に注意を見てた瞬間に、そのアンサンブルの演技の履歴を取り出して鑑賞するみたいな仕組みもきっとあるよ。というより、気を抜いた群舞は引っかかるものが無くて流れてしまう。
地道 
それこそ、子供鉅人のアンサンブルの芝居はめっちゃ面白いですね。ぶっ飛んでるけれども、一個も気を抜いてない。楽しい見世物になってると思います。メインの役者も基本的にはアンサンブルをやるというのがボスの芝居には多いです。
劇団子供鉅人「ハミンンンンンング」
公演時期:東京公演 2018/5/16~20(原宿VACANT)、大阪公演 2018/5/26~27(北加賀屋 クリエイティブセンター大阪 4F)。

劇団子供鉅人「真夜中の虹」

__ 
「真夜中の虹」。大変面白かったです。今回は地道さんは出演されなかったですが・・・
地道 
いややっぱり、先輩たちのおもろい芝居を見てるとやっぱり僕も表に出たいですね。
__ 
そう思わせるためかもしれんな。
地道 
いや僕が入る入らんという以前から、このタイミングで上演するというのが決まってたから。僕もその辺りまではっきり、劇団に入るって言い切ってなかったから。
__ 
地道くんが真夜中の虹に出演してたらどんな感じなのかなって思ってましたよ。しかし面白かった。
地道 
僕もそんなに昔から、子供鉅人を知ってるわけじゃないけど。後輩なりに、なんせ上手なってるなと思います。
__ 
細い演技なんだけど、きっちりと意味が固定された芝居ではなくて、ちょっと遊びと言うか余白と言うか、そういうのがある芝居だったかな。
地道 
そうなんです。今回の稽古が始まったばっかりの時は、最初から台本があるから詰めて作ったんです。けど、やっぱりそうするとお芝居が重たくなって。それこそ東京のゲネの時に「ちょっとこれは良くない」と。全体的にもっと、初演の荒くたく作ったあの感じを大事にしやんと、ちょっと重たすぎる、本来の虹ではなくなってると。演技が上手になって、時間があるがゆえにそうなってしまったと。でもアレすよ、そこから速攻で調節して。すげえなこの人ら、って。引き出しの多さに経験の数が物を言わせたんすよね。
__ 
そういうのって、自分の演技をどうすればどう思われるかとかの感覚があるからなのかもしれませんね。
地道 
普段は普通に友達みたいな感じなんですけど、やっぱり見てたら先輩やなあと思いますね。
__ 
いや地道くんもそのうちそうなるけどね。
地道 
焦りますよ、僕としたら早く追いつかないと、と感じますよ。
劇団子供鉅人「真夜中の虹」
2018年 真夜中の虹 ツアー 公演時期:東京公演 2018/7/1~8(下北沢 駅前劇場)、大阪公演 2018/7/26~30(HEP HALL)、仙台公演 2018/7/21~22(せんだい演劇工房10-BOX)、福岡公演 2018/8/4~5(ぽんプラザホール)。

たまには休んで

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。地道さんは最近、どんな感じでしょうか。
地道 
劇団子供鉅人に入ったんですけど、やることが多いので大変ですね。休みないっすね。たまに休みがあってもバテバテでマジで体を休めて1日が終わるみたいな。
__ 
うわあ。
地道 
遊びにそんなにガッツリ行くこともなく。ついついお酒を飲む量が増えてしまいますよね。までも全然楽しいですけどね。楽しいからやってるから。
劇団子供鉅人
05年益山貴司・寛司兄弟を中心に大阪で結成。「子供のようで鉅人、鉅人のようで子供」の略。関西タテノリ系のテンションと 骨太な物語の合わせ技イッポン劇団。団内公用語関西弁。人間存在のばかばかしさやもどかしさをシュールでファンタジックな設定で練り上げ、黒い笑いをまぶして焼き上げる。生バンドとの音楽劇から4畳半の会話劇までジャンルを幅広く横断。3度に及ぶ欧州ツアーやF/T13参加。CoRich舞台芸術まつり!2012準優勝。関西でほんとに面白い芝居を選ぶ「関西ベストアクト」二期連続一位など勢力拡大中。(公式サイトより)

これから

渡邉 
今、公演単位で関わるお仕事をいただく事は多いのですが、団体として関わっているのはソノノチだけなので。ある意味、そこからは一番厳しい目で見られているし、一番助けてもらっているんじゃないかなと思っています。この間MONOさん・劇団衛星さんにも新入団員が入ったりしていましたが、演劇団体がどのように継続していくのか、ということを考える事も多くなってきました。継続して団体として活動することは、創作面にしても、今後の活動を考えるにしてもすごくプラスになっています。外部制作からは、劇団の活動方針についての意見なんて、大小問わずなかなか言いにくいですよね。一つ拠点があることで、自分の仕事の内容や姿勢を律することに繋がっています。今度、初めてソノノチで「つながせのひび」という作品で三都市ツアーをするのですが、継続して一から関わってやれる事が、自分の成長の糧にさせてもらっているのかなと思いますね。
__ 
いまのベースは、そういうインプットの方向なんですね。
渡邉 
劇団付きの制作、劇場付きの制作、公演制作の大きく3つのパターンがあると思うのですが、それぞれの立場を経験させて頂いていて。様々な目線での制作のお仕事から、自分のできることを増やし、またどれだけ知らない事があるかを感じて、成長していきながら、自分の下の世代の方々にも引き継いで伝えていくことができたらいいなと思っています。

茶碗

__ 
今日はお話を伺いたお礼にプレゼントを持って参りました。
渡邉 
ありがとうございます。頂戴します。(開ける)あ、茶碗ですね。お米大好きなので、常々、お米に合うものを食べたいと思ってます。ありがとうございます。めっちゃ米炊きます。

制作の目指す方向

__ 
渡邉さんが演劇を始めた経緯を教えてください。
渡邉 
大学に入る時に、元々興味はあったんですけど、でも大学では陸上部に入っていて。で、陸上部の先輩のお友達の人が劇団を立ち上げたから、興味があれば話を聞いてみればと言っていただいて。そのご縁でお話を聞いて、出演することになって。そこで初めて役者として演劇に関わらせてもらった時に、「これはもうちょっと本気で突き詰めてやってみたい」と思いました。ちょうど大学生が就職活動を始める時に演劇を始めた感じです。
__ 
それは究極のパターンですね。
渡邉 
そして演劇では食えないということは、初めて出演した公演で教えてもらったんですけど。でもなぜ食えないのか、どうやったら食えるようになるのかということを大学4年時から考えていました。
__ 
今興味のあることは何ですか?
渡邉 
小さい頃から興味の対象が変わっていないんですが、それは演劇ではないんです。僕はもともとスポーツニュースを追いかける人で、それはほぼほぼ野球で、主に阪神タイガースなんですけど、興味というよりは日課に近くて、常々興味がありますね。
__ 
それは阪神タイガースの情報だけ?
渡邉 
阪神タイガースのことを知ろうと思ったら、他の球団の動きも知っておかなくてはならないので野球全般のニュースを読みますし、すると他のスポーツニュースも目に入るので、そういうのも全部追いかけたりして。
__ 
分野に対する興味が広がっていくんですね。
渡邉 
それはまあ一つとして。もう一つ、今興味あることとして、これは演劇を始めたときから変わってないのですが、どうやったら演劇をやっていけるかと思った時に、大学生の時に思っていたのが、どこに需要があるのかということなんですよね。需要と供給が合うところに行けばいいと。いろいろ調べている時に、たまたまワークショップというものに出会って。教育関係や企業の研修でも使われているらしいと。そこに需要を作れるんじゃないかと思ったんです。大学では、社会学や人間学や教育学も少しやっていたり、塾講師のアルバイトもしていたんです。人との関わりとか教育分野に興味関心があって。演劇教育ということを軸にしつつ、そこから演劇をスタートしたというのがあります。
__ 
なるほど。
渡邉 
KAIKAでもそうした活動や仕事をしていましたが、そこを離れた今、改めて演劇と社会との関わりをどのように作っていけるのかを模索しています。日本では、芸術の中で音楽や美術の学校で授業があっても演劇の授業がないですからね。出会わずに過ごしてしまえるのが演劇なんだなと。興味を持つか持たないかは置いといて、そこに触れないまま終わってしまうのは、なんだかもったいなんじゃないかなと思っています。演劇は、人と関わる一つの形態なんですよね。自分ではない誰かの事を考える、なりきって考える。他者を意識するきっかけになると。体験することで、知識だけでは得られなかった実感が身体で得られる感覚もあって、そこに気づきが生まれる。学生から社会人になる時に、演劇に触れたことがあるかどうかは、柔軟性の指標の一つになるんじゃないかなと思っているんです。この社会のなかで演劇がどう関わっていけるのか、興味があるんですよね。
__ 
潜在的に興味を持ってる人だっていますからね。
渡邉 
ただ例えば、表現活動しているアーティストと出会いたいと思ったとして、なかなかどこにどうアクセスしていいかわからないですよね。そこにマッチングの機会をどのようにすれば設けることができるのか。
__ 
大々的にそうした広告を打ったとしても、真のニーズがなければ忘れますからね・・・真のニーズと呼べるのは行動に結びつくもので、他人に煽られた興味は、その本人のものではない故に単なる消費で終わってしまうこともある。

転換点

__ 
今の仕事の転換点はありますか?
渡邉 
全く制作の経験がなかった頃から、KAIKAで劇団衛星さんの公演に関わったことです。初めては、衛星さんが15周年を迎えたころで、自分は何もできなかったという悔しい思いがあって。悔しくて影でこっそり泣いたんですけど(笑)。悔しいと思うということは、向上心を持てたということかなと思うのですけど、そこから、制作と言う仕事に関わるようになっていったという転換期だったと思います。結果としてそこから9年経って、今はフリーの制作者として活動していますからね。
__ 
様々な現場を渡り歩くといいと思います。個人的には。
渡邉 
どういう人とご一緒するかによって自分の感じることや姿勢も違うし、それによって自分の活動を見直す事もありますしね。

「勢い」考

__ 
企画というものは一体どうすれば盛り上がるのかについて、先日、井上向日葵さんにインタビューした時に話したんですよ。例えばnidone.worksを例にすると、彼らは非常に勢いがある。その勢いは何かと言うとチームワークの力ではないかと井上さんはおっしゃったんですね。私は、それに加えて、彼らのチームワークが、企画に対する信頼に立脚しており、さらに、信頼を寄せるに足る何かがどれだけ確固として存在しているか、という強度の問題だと感じたんです。それはある種の正しさだったりするのかもしれない。単純な考え方ですが。
渡邉 
いえいえ、的を得ていると思います。
__ 
何に対しての正しさなのか、それは簡単には言い切れませんが。ただし、確かにチームワークというのは必要な気がします。絶対に。
渡邉 
チームワークはもちろん大事だと思っています。それに加えて、企画をどう進めるかにあたって、いま自分が思っている事としては、如何に関わる人を増やすことができるかどうか、なんじゃないかなと思っています。企画の集団があって、そこに関わる人が当然いて、そこから様々な発信をしていて、その情報に興味がある層から、次にもういっちょ外に届けようとすると、例えば、ツアー公演で自分たちの地元以外の土地で公演をする時に、地元からの声はなかなかツアー先では届かなかったりします。
__ 
うーん、情報を完全に外に出すのは難しいですね。
渡邉 
SNSだと、フォローされていないとなかなかそうした情報は届かない。どうすべきかというと、自分達以外の人を巻き込んでいけるかどうかというところにかかってるんじゃないかと思います。関わる人を同心円状に増やしていくことで、広がりを増やすきっかけになるんじゃないか。SNS以前はマスコミや新聞で取り上げられる事でしたが、いまは、身近にそういう状況が発生しやすいと思うんですね。例えば口コミにしても、「この人が言うなら」というのがあったり、ご飯食べにいく時に食べログを参考にしたり。まず知ること自体にあると思うんですね。自分たちの中だけで留まらないように。巻き込むことと巻き込まれることと。
__ 
巻き込まれる?
渡邉 
自分が企画したもの以外でも、巻き込まれることで便乗できるものってあると思うんですよね。例えば、SNSのハッシュタグとか、ですかね。