夏って感じがしない夏

__ 
今日はどうぞ、宜しくお願いします。アガリスクエンターテイメントの塩原さんです。最近はいかがお過ごしでしょうか。
塩原 
そうですね、最近は充実してますね。お芝居に関しては。特に、先月に出た黄金のコメディフェスティバルでは賞も頂いたりしたんです。これまで頑張って来たことが形になったなあ、報われたなあ、と。その副賞として作品を丸々一本TV放映して頂いたので、それを見たよと声を掛けられたりしたのも嬉しかったですね。充実はしていると思います。
__ 
演劇を抜いたら?
塩原 
昼夜逆転気味で、だいぶガタガタですね。でも、今だけはふんばりどころかなと。友達とも遊びに行ってないですね。夏は全然遊んでない。今年は海に行けなかったので、夏って感じがしないですね。
__ 
海にはどんな思い出がありますか?
塩原 
自分は千葉の内房側の出身で、東京湾の、言ってしまえば汚い海で。海に行くとしたら船橋の海浜公園でした。みんなでチャリで行って遊んだり、野球部の時、別荘を持ってる奴がいて。そこで夜通し遊んだりしてましたね。
__ 
ありがとうございます。青春ですね。
アガリスクエンターテイメント
屁理屈シチュエーションコメディ劇団。一つの場所で巻き起こる事件や状況で笑わせる喜劇、シチュエーションコメディを得意とする。「東京大空襲前日の下町」「高校の文化祭のための代表者会議」などを舞台に“笑えそうにない設定で笑えるコメディ”をつくる。また「床に間取りの線だけを書いて舞台セットにする」「5人芝居を2人で上演することでコントにする」など、なりふり構わない方法でシチュエーションコメディをスマートに上演する実験も行っている。演劇公演以外にも、コントライブの開催やFLASHアニメーションの製作などを手がけるなど、活動範囲は多岐にわたる。また、隔月程度の頻度で新宿シアター・ミラクルにて開かれる「演劇」と「笑い」を自認する複数のユニットによるコントライブシリーズ、新宿コントレックスを主催する。「アガリスクエンターテイメント」及び「Aga-risk Entertainment」が正規表記。「アガリクス」では無い。(公式サイトより)

ナイゲン(全国版)

__ 
ナイゲン」は再演という事で、今回は京都公演もあるんですね。
塩原 
ナイゲン」はまだ関西には上陸してないですけど、「ナイゲン」自体のファンがいらっしゃるぐらい、僕らとしても大きな作品で。高校を舞台にした結構ノスタルジックな感じなんですが、あくまでもコメディです。実はこのメンバーでやるのは、これが最後なんです。まあ、高校の話なので、年齢的にそろそろ辛いんですよ(笑)。でも、最後の再演ですし、もう一度アイツらに会いたいと思って下さってる方たちにも応えたいですよね。公演自体は、東京は新宿のFACE、京都は元・立誠小学校です。東京は今までで一番大きな劇場なんですが、爆発したいですね。やべーもん見ちゃったなと言ってもらえるような、伝説を作りたいです。京都だとまさに学校なので、その空気感を感じてもらえたら。あと「学校の、学生による自治の話」なのでそれをここ京都という場所で演れるという意味も考えたいです。
__ 
やっぱり32、3歳で高校生は辛いですか。
塩原 
そうですね、芝居の嘘としてもそろそろ・・・作品のリサーチの為にこの作品のモデルである高校に行ったりしたんですけど、ああやっぱり違うなあ、と。彼らの持っている無敵感というのは、あれはもう出ねえなあと思いますね。
__ 
実際に年下からタメ口で接されると、確かに違和感を感じますよね。
塩原 
彼にしたら純粋な、この人と喋りたいという表れだと思いますけどね。
__ 
そうした、もう我々が持ち得ない「無敵感」「勢い」を象徴する作品?
塩原 
そうですね、例えばこの「ナイゲン」に出てくる、自分が演じる「どさまわり」という役はものすごく特徴的な考えを訴える、世界中探してもいないくらいニッチな考え方をする奴がいるんですけど。せっかくなので、そんな奴の事を訴えたいですね。
ナイゲン(全国版)
傑作青春群像会議コメディ、最後の再演&ツアー公演決行!!
屁理屈シチュエーションコメディ劇団・アガリスクエンターテイメントが上演する、高校の文化祭の代表者会議を舞台にした会議コメディ。
脚本・演出:冨坂友
東京試演会:2015年10月3日(土)~4日(日)@にしすがも創造舎(教室での試演会)
京都公演:2015年10月9日(金)~12日(月・祝)@元・立誠小学校 音楽室(教室公演)
東京公演:2015年11月13日(金)~14日(土):@新宿FACE(ホール公演)(公式サイトより)

引き寄せられ合う原理主義者たち

__ 
ニッチな考え?それは、若気の至り的な感じ?
塩原 
いえ、単純にニッチですね。聞いたこともないような。学校の会議を舞台にした作品というと、愛校心とか自治がテーマになる事が多いと思うし、実際にそれも語っていますが、彼の考えはほとんど宗教に近い原理主義的なものなんですよ。
__ 
原理主義的。
塩原 
理屈が通用しない、そこには理由も存在しない、質問も成立しない。そういう考えを持っているんですね。
__ 
彼らとは分かり合えないんでしょうか。
塩原 
いちおう会話劇なので、対話の中に救いがあるよね、という方向にはなります。結局、すり合わせるのを見せる、という側面はあります。
__ 
でも、分かり合えるとは限らない。このサイトでよく扱うテーマの一つに「対話と相互許容」があります。対話→許容というようにセットで考える事が多いのですが、実はここには落とし穴がある。対話をしたら許容だなんて、そんな流れを当然のように考えすぎではないか、と。それこそ原理主義的ではないか。
塩原 
そうですね確かに。
__ 
それは非常に日本人的な、甘くて危険な発想のような気がする・・・。
塩原 
そうですね、それが別に最後じゃないですね。「ナイゲン」、結構そういう感じなんですよ。最終的な結論は出るんです。でもそれは、言ってしまえば屁理屈で終わってる。アンサーに屁理屈というガジェットをブチ込んでしまうんですね。ウチが「屁理屈シチュエーション劇団」と銘打ってるのもあって。でも、最後に屁理屈でまとめるのが、結構人間的なんじゃないかと思うんですね。一般的にはシニカルな事をやっていると取られちゃうと思うんですけど、僕らは純粋に屁理屈でベロを出す、というのをやりたいんですね。シニカルな事をやりたいという訳じゃなくて。人間的な事を結局やりたいのかな、と。

色褪せない屁理屈たち

__ 
屁理屈の面白さ。アガリスクエンターテイメントがそこに出会ったのはどんな経緯があるのでしょうか。
塩原 
メンバーがめんどくさい奴らばっかりなんですよ。シナリオ会議とかでも「??じゃね?」口調で屁理屈をぶつけ合う展開になって。そういうのが元々好きなんでしょうね。それと、世の中で市民権を得ているものを見ていても僕らはムカつく事が割と多いんですよ。ずっと低空飛行していた劇団なので、マジョリティに対して「ケッ」と言う。その為の武装としての屁理屈。
__ 
なるほど。ユニット美人という凄まじいコントユニットが劇団衛星内にあるんです。三十を越えた女性達がブルマ姿で踊ったりコントをする演劇なんですが、彼らは「モテ」を追求するんですよ。その下地には「モテなさ」が絶対原理としてある。モテないが故に重力を増しているのではないか。そこで、アガリスクの屁理屈はどうか。同じく、「モテなさ」を基点としてはいないか。
塩原 
いや、結構あると思います。モテない要素は。でもそれを全面に出した童貞コメディをやったとき、「いや、別にこれは一番言いたい事じゃないな」と気付いちゃったんですよ。元々僕らはヨーロッパ企画さんが好きで、影響されて男がわちゃわちゃするコメディをやったんですが、ウケなかったんですよね(笑)。
__ 
それよりは、屁理屈が渦巻く世界に身を投じ、今は屁理屈という手段自体が目的になっている?
塩原 
そうですね。だんだんと、自分達がやりたい事ばかりをやってたら、屁理屈ばかりやってる事に気付きました。実はウチ、10年ぐらいやってて。最初の5、6年ぐらいはくすぶってたんです。東京の小劇場シーンさえも知らなくて、千葉の公民館とかで300円のチケット代で全然面白くないコメディ作ってたんです。だから、モテなさの純度自体は高いと思います。シュッとするぐらい、言いたい事しか言ってないですね。

質問 西山 真来さんから 塩原 俊之さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、西山真来さんから質問を頂いてきております。「お金について、3分間語って下さい」。
塩原 
まあ、一言で言えば「欲しい」です。お金は本当に欲しいです。瞬発的に、ランキング一位で欲しいです。ハマショーじゃないですけど、純白のメルセデスに乗ってプール付きのマンションに住んで、最高の女とベッドでドンペリニヨンしたいです(笑)でも、お金が無いからこそ、追いつめられれば追いつめられるほど凄いものが出来ますしね。現状お金を持って無いんだったら、せめて凄い芝居を作りたいです。

スベる事は悪だ

__ 
いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
塩原 
僕はコメディアンなので、笑いが取れる人になりたいですね。もう、その劇場で一番。「ナイゲン」でやる役は全然違うので申し訳ないんですが、やっぱりコメディをやるからには、絶対にウケを取らないといけないと思っているので。極論ですけどコメディと謳いながらスベる事は悪だと思っています。もちろん演出として意図したものは別ですけど。とにかく取れる人。エースストライカーになりたいです。客演先もコメディが多いですし。笑いに関しては譲りたくないですね。
__ 
前々回インタビューさせて頂いた青木道弘さんがですね、「笑いをフックとして使う」と言って。それは、例えば友達同士での内輪的な感覚がそのヒントではないか、と。特定の人が特定の言動をするから、それが気に入ったりツボに入るからウケるってなる。青木さんの作品でも、内輪的な笑いが発生するという事は、お客さんが特定の文脈をきちんと踏まえてくれるから、という事に尽きるそうです。
塩原 
うんうん、まさにそうです。
__ 
シチュエーションコメディでも同じ、と言えますでしょうか。
塩原 
ええ、そうです。
__ 
青木さん曰く、そうしたフックとしての笑いが、次のシーンにつながっていく。観客席を内輪に取り込む力を笑いに見いだしているとの事でした。アガリスクではどのような感じで笑いを捉えていますか?
塩原 
そうした考えに凄く近いです。かなり同じように考えてて。大事なのはその「内輪」を広げていくことかなと。コメディと謳った演劇で笑わせるという行為は、その場にいるお客さんを共犯関係にさせてしまうし、許容させるんですよね。舞台上のそいつに笑っちゃったという事は、少なくともそいつに乗ってきちゃうんですよ。物語が一つ上に行くんですよね。役が言ってない事まで読み解こうとしてくれるんですよね。「こいつ、何を言ってるんだろう」って。僕らはそれを、「作品の飛距離が出る」って言ってるんですけど。それがコメディというジャンルの強みだと思っています。ぶっちゃけ、瞬発力で言ったらお笑いの方が凄いじゃないですか。舞台に出てきて5秒で笑わせてくる。一方コメディはアイドリングに時間がかかる。でも、その分お話に飛距離が出るんです。「ナイゲン」はそれが特に顕著で。お客さんが、僕らの描いている以上の事を想像して話し合ってくれるんですよ。会議のコメディだからなおさら。もちろんその為になるべく想像出来る「余地」を残すことも大事だと思いますが。
__ 
笑いを足掛かりにして、ですね。しかし、その飛距離を出す為には「役作り」が必要ではないかと思います。内面的な意味では「役の人間を研究する」こと。しかし外面的には「お客さんがどう見るかを研究する」事が大切だと思う。それはまあ、「型」の発想かもしれませんが。
塩原 
そうですね。役作りも大事だし、笑いに敏感なアンテナを張ることも同じくらい大事だと思います。笑いを取るというのはまさにお客さんの生理を突く行為なんで、「笑いのツボ」って良く出来た言葉だと思っていて、まさにツボなんですよ。コメディをずっとやってると、笑いを取る時にお客さんの生理を突く感覚が生まれる事があるんです。確実にほしい笑いを取れた時とか、確実に客席に手が伸びている感覚があるんですよ。

ずっと欲しいと思っている

塩原 
ウチはコメディをやってるんで、やっぱりウチが一番ウケるものをやってますよと胸を張って言えるようにならなきゃなと思います。ちょうどコメディフェスティバルで賞を取ったというのもあって、そこに恥じないようにしたいと思います。「コメディ」と銘打っていながら劇場で笑い声より空調の音の方が目立っている作品もありますが(笑)だったらコメディと言わない方が良いと思うんですよ。
__ 
ええ。
塩原 
お客さんは笑いに来たのに、誰も笑っていないというのは、それは全然達成していないんじゃないかと、やっぱり思っちゃうんですよね。僕らは自戒を込めて、「シチュエーションコメディをやります」と言って、かつそれを達成するという事に注視してやっています。絶対にウチが一番ウケるという気持ちでいます。

ノックか、ヒットか、ホームランか

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
塩原 
正直に言うと、「ナイゲン」以降の予定が決まってないんですよね。それに賭けちゃってて。もちろんコメディを作り続けていくんですが。それから、僕らの作ったものもいつかクラシックになっちゃうんで、常にアップデートしないといけないというのはぼんやりとあります。でも、僕らが今後どうしていくかというビジョンは無いんです。今はこの「ナイゲン」を僕らの手から離して、色んな人達の手でやってもらえるとようになったらと思います。
__ 
モチベーションを保ち続ける。
塩原 
重要ですよね。

ショッピングバッグ

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
塩原 
ありがとうございます。京都の思い出として。
__ 
どうぞ。
塩原 
これは。ショッピングバッグ。イチゴ柄。カワイイですね。
__ 
どうですか、使えますか?
塩原 
使います。こういうビビッドな小物好きなんですよ。


映画を撮った夜

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。西山さんは最近どんな感じでしょうか。
西山 
一昨日までHauptbahnhofをやって、昨日今日はこっち(大阪)で映画を撮って、明日東京に帰ります。
__ 
弾丸ですね。お忙しい中お時間を頂いて申し訳ありません。
西山 
いえいえ。
__ 
Hauptbahnhof Greis6「Scale」、お疲れさまでした。ご自身にとってはどんな作品でしたでしょうか。
西山 
あんまりやった事ない感じというか。
__ 
確かに、過激な表現もなく、いわゆる誰でも見やすいものでしたね。
西山 
そうですね、ちっちゃい子もお年寄りも来て下さって楽しめるみたいな。お話はすごくハッキリしていて分かるけれども、考えさせられたって。大先輩の武田暁さんが、泣いて笑ったみたいなことを言って下さって、嬉しかったです。
__ 
全体的なタッチが優しかったですね。人や物事の扱い方があって、それぞれが一度集まっては別々の道に分かれていくという、それだけのお話。お話の筋をきっちりと整合立てている訳ではないというのがミソだと思うんですよ。無理矢理繋ぎあわせるのではなくて、気持ちいいくらい省略していたんじゃないか。
西山 
ああ、そうですね。品のある方だなあと思いました、金田一さん。作品外の事ですけど、本当にやった事のない人たちと一緒にやれたのが貴重でした。岡さん、伊丹さん、御厨さん。全然違うところから集まった、年齢もキャリアも技術も重ねた方々が「演劇はチームだからね」と言って下さって、丁寧にやり取りして作り上げていけたのが本当に嬉しかったです。これ以上のものを絶対やらなきゃという水準が常に高い人たちなんです。上演中も、心の預けあいがあって、毎回、ラストがどう終わるかわからないくらい自由度を持って作れる信頼感があって楽しかったです。
__ 
ありがとうございます。「演劇はチームワーク」。そして、心を預けあって本番を作った。
西山 
本当にそうです。有り難かったです。
__ 
私も客席で拝見していて、上演者の間の心のつながりなるものを感じていました。関係性がすべてきっちりと詰まっている訳ではなくて、そこここにズレが可愛らしく存在している。全ての意味で丁度良かったです。
西山 
あと、俳優は東京で稽古していて、スタッフさんは京都で作業していて。それが当初不安だったんですけど、京都で本番の準備を始めたら全然大丈夫で。そういうところ、金田一さんはすごいなと思いました。集まってんなあ、と思いました。
Hauptbahnhof/ハウプトバンホフ(略称Hbf.)
Hauptbahhof(ハウプトバンホフ)は、金田一央紀によって2010年末に結成されたパフォーマンス団体です。読みにくいのと書きにくいので、「Hbf」と呼んでいただいてもかまいません。Hauptbahnhofはドイツ語で「中央駅」という意味。演劇といってもどんなものを見ていいのかわかんないという人たち、演劇とは全く縁のないところにいた人たちや、これまでもこれからも演劇に携わっていく人たちにとって、とりあえず集まって自分の位置を確認したり、自分の活動の拠点にしたりする場所を作ろう、という気概で設立されました。演劇のジャンルを問わずに劇空間のグルーヴを求めて演劇作品を作り続けていきます。(公式サイトより)
Hauptbahnhof Gleis6 Hauptbahnhof presents アトリエ劇研共催公演『スケール Scale』
公演時期:2015/8/28~30。会場:アトリエ劇研。

vol.435 西山 真来

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西山

「乃梨子の場合」

__ 
それから、西山さんが主演の映画「乃梨子の場合」も拝見しました。とても面白かったです。不倫の末の殺人、というとても単純なエピソードでしたが、この作品の主眼は「生々しい吐息」に尽きると思うんですよね。殺人シーンもものすごく、こう、適当というか抽象的で。
西山 
ああ、そうですね、あれね。あれは何だったんだろう。
__ 
包丁を取り出して、刺して、気が付いたら死んでいて。その後の死体遺棄からラストまでずっと起伏なく生々しさだけを映している。しかし本来、それ以上のものを求めてはいけないんじゃないか・・・そんな事を思いました。
西山 
ありがとうございます。
__ 
あれは、西山さんの映画なんだなと思いましたね。
西山 
私も、あの映画はお客として本当好きです。演出がキレッキレで。映画を撮る時、私は「何かをやりたい、演じたい」というのはないことが多くて、特に今回の場合はそうでした。演劇は俳優の手渡すものが最終的には全て、て感じありますけど、あの撮影時は起こっている事に対処するのが精一杯、でそれが記録された、ていう感じでした…。
__ 
現場の大変さも画に表れてたんでしょうか。
西山 
私は、映画にしても演劇にしても、その時の事が全部出ちゃうなあというタイプなんですよ。他の出演者との関係性とかも。そういう意味では、旦那役と不倫相手役の俳優さんが、めちゃくちゃ曲者のすごい出来る俳優さんで、私は凄い出来なくて、やってこられる事に対処してたら終わったみたいな。
__ 
なるほど。
西山 
実際大変な状況で撮影してたんですが、何とかそれと被ってくれたら嬉しいです。
__ 
切実さはものすごく伝わりました。そして今、「西山さんはドキュメンタリー俳優なんだなあ」とふと思いました。
西山 
私も、そこは捨てきれない感じです。
__ 
そこはもう、マレビトの会と相性が良いですね。
西山 
そうですね(笑う)。
__ 
象、鯨。の時もね。
西山 
ああ、そうですね。やってましたね。私、プロフィールに劇団主宰だったとかを載せてたら、「君はとてもそうは思えない」と言われて。いや本当、自分でもそうは思えないですけど。
映画「乃梨子の場合」
監督:坂本礼。制作:国映株式会社。2014年/カラー/71分/デジタル
マレビトの会
2003年、舞台芸術の可能性を模索する集団として設立。代表の松田正隆の作・演出により、2004年5月に第1回公演『島式振動器官』を上演する。2007年に発表した『クリプトグラフ』では、カイロ・北京・上海・デリーなどを巡演。2009, 10年に被爆都市である広島・長崎をテーマとした「ヒロシマ―ナガサキ」シリーズ(『声紋都市―父への手紙』、『PARK CITY』、『HIROSHIMA―HAPCHEON:二つの都市をめぐる展覧会』)を上演。2012年には、前年の3月に発生した震災と原発事故以後のメディアと社会の関係性に焦点を当てた『アンティゴネーへの旅の記録とその上演』を発表した。
「ヒロシマ―ナガサキ」シリーズ以降、集団創作に重きを置くとともに、展覧会形式での上演や、現実の街中での上演、インターネット上のソーシャルメディアを用いた上演など、既存の上演形式にとどまらない、様々な演劇表現の可能性を追求している。
<マレビトの会 活動方針>
・無償で無尽蔵な実験精神をもつこと。
・あらゆる既存の価値観にとらわれず、理解し難い特殊な場所や状況を受け入れ、作品を創作すること。
・わたしたち自身や鑑賞者の立ち位置をゆるがすような「絶対的なもの」へ捧げる作品を創作すること。
・国家や共同体などの中心性を持つ情報管理社会に搾取されることのない周縁性をもつこと。
・誰もが参加可能なゆるやかでささやかな祝祭空間を演劇の場に出現させること。
・演劇における「時間」のことを考えること。
(公式サイトより)
象、鯨。
主に京都で活動する劇団。2008年現在、活動休止中(公式サイトより)

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西山

「ドキュメンタリー女優」

__ 
Hauptbahnhofでの西山さんも、「ドキュメンタリー女優」だったような気がします。
西山 
「ドキュメンタリー的な」、というのは、つまり・・・?
__ 
西山さんそのものを見ているみたいな感じ。相手が役者でいる事、自分がお客さんでいる事を忘れているような感覚があるんですよ。ふと、具体的な関係が消えて、どういう関係でもなくなるみたいな。
西山 
そういう感じは常に欲しいところでもありますね。その方が見ていられるというか。普通に喋っていて、次に何を喋るのか分からないこの感じの時の脳味噌を分析して演技するときに再現する。
__ 
え、凄い。
西山 
え、単に好みなんです。
__ 
それを見ているお客さんは、その人の考え方がとてもよく理解できるので、つまりは味方になりますね。
西山 
あー、そういう風に、私の考えている事を分かって欲しさというのは自分の最近の流行ですね。今までは脳味噌の中の事に興味がありすぎて、出てくるかたちにはあまり興味が無かったんです。それだと、当たり前ですけど全然分かってもらえなくて。日常生活でも同じですけど。分かってもらう為の形にするということ、につい最近、興味を持つようになりました。
__ 
役者個人の生き方によって、形も違ってきますよね。
西山 
あと、色んな人の発言やアイデアに対して、昔はものすごくとんがってたんですけど、今は「やってみよ~」と思うようになってきました。
__ 
昔は批評的な目で見ていたのが、今は違う。
西山 
若気の至りで、良かった事もありますけど、その時よりも、社会とか人の考えている事に興味が持てるようになってきました。

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西山

質問 青木 道弘さんから 西山 真来さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂いた、ArtisitUnitイカスケの青木道弘さんから質問を頂いてきております。「年上なら何歳までつき合えますか?」
西山 
うーん・・・70歳ぐらいのめっちゃセクシーな方を想像していました。上限とかはないのかな。でも、付き合ってすぐ死んじゃったらいやだなと。えー。結構、そんな事を抜きで言ったら「上限なし」です。

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西山

脳で悩む

__ 
役者として、今興味あるのは「今思っている事を分析して、再現する」という事?
西山 
あ、ちょっと微妙に違うくて。脳味噌の中の作用を観察はするんですけど、自分と役、それぞれの脳味噌の回路の出会うところを探すのが楽しいですね。
__ 
なるほど。
西山 
二つの回路は絶対違うよなあ、と。例えば「後ろから声を掛けられる演技」の時、自分だったらこのタイミングで振り返るけど、役の人だったらそのタイミングでは振り返らないだろうなあ、とか。
__ 
役の生の認識と、役者の認識のおとしどころ。
西山 
人間の生理とかに興味があって。
__ 
私も実はそこに興味があって。人間の行動ってものすごくたくさんの段階があるじゃないですか。あんまり上品な話でなくて申し訳ないのですが、近くの通学路に「夜道に気を付けよう」みたいな看板があるんですけど、そこに「レイプ」って落書きがされてるんですよ。赤いスプレーで。それを書いた犯人の段階を想像すると楽しくなってくるんですよね。赤いスプレーを選んだ瞬間の彼の身体や認識はどうなっていたのか。その選択肢が浮かぶ瞬前は。看板の前に立ちスプレー缶を握った時、ノズルを押す瞬間の彼は果たして迷っていなかったのか、赤インキが着弾する瞬間の看板と、その時彼のどこが汚れたのか、「レ」のハネを始めた時、終わった時、次の文字に取り掛かる時、終わった時、その場を離れる時・・・どの段階にも分析の余地があり、シーンを切り出す度に想像が始まる。
西山 
へー。
__ 
行動はものすごくたくさんの段階に分かれている。
西山 
かなりそれに近い事を考えていると思います。自分のやった事を見る。私、その人は意外と行動を先にしてしまったんじゃないかと思います。そういう人との分かりあえなさも含めて面白いなあと思いますね。演劇とかだったら、そういう再現を複数人でするから、それぞれ全然違う事を考えていて、もう複雑!ってなる。けど、稽古を進めていくと「あーそうなるよね」って、すっといく瞬間もあるのが不思議。マレビトの会みたいにそれを求めない、「そこにあるだけ」を大事にするところもあるし。
__ 
全てに共通するのはお客さんがいるという事。それぞれの感動があって、中にはとても訳の分からない感動もある。
西山 
お客さんて私、あんまりよく分かってなくて。ちゃんとエンターテイメントするっていうのをこれまでやってこなかったからかもしれないけど・・・映画は「その場でそういう事が本当に起こった」としてやるけど、演劇だと「そういう事が起こったことをお客さんに伝える」ってする。それって全然違う事だなあと思います。Hauptbahnhofの時はそれが凄く上手くいった時がありました。それが大きな収穫だったんですね。それが何なのかというのはまだちょっと分からないですけど。

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西山

やりとりに愛してる

__ 
西山さんが相手役の方と会話を演じる時、どんな事に気を配っていますか?
西山 
うーん。相手役との関係って、すごく細かい目盛りまで見てる人に伝わっちゃうと思うんです。なので・・・。稽古場では、心の柔らかい部分をお互いに渡し合うような作業をすると思うんですけど。相手が柔らかい部分を渡してくれるなあ、そして自分も渡す…。あ、だから、相手の人をめっちゃ好きになっちゃうんですよ。男女問わず。
__ 
なるほど。
西山 
別に、必ずそういう関係になろうとはしていないですけど、いつの間にか。
__ 
「乃梨子の場合」の時は?
西山 
うーん、あの時は余裕もなかったので・・・全部対処するぞ、みたいな。ロケだったら環境から受ける事もあるし。感想を持つ間も無かったような。

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西山

いつかのこと

__ 
いつか、こんな演技が出来るようになりたいとかはありますか。
西山 
いっぱいあるんですけど・・・いまパッと思いついたのだけ言うと。この2、3年で、「この人すげーな」と思う先輩に出会いまくってて。そのお一人が・・・この八月に、喋れない大先輩の俳優さんと映画でご一緒する機会を得て・・・。言葉も大きな動きもないのに、シーンがパンッと始まった瞬間に、「あっ違う人になった」と分かったんです。まとってるオーラが違うというか。すげえなと。
__ 
その人のその瞬間。
西山 
何が起こったのか分からないんですよ。何で?みたいな感じ。そういうのが、演劇っておもしろいなあ、脳味噌って面白いなあと。出来る事がたくさんあるんだなあと思って。
__ 
脳同士が、その持ち主達の意志とは関係なく、形にならない情報を送りまくっててしかもリアルタイムで情報整理を続けて、未来予測もしている。
西山 
そうですよね。不思議ですよね。お芝居にしても、ウソをわざわざ見に行って、何の根拠もない事件を観て。何なんだよ、と思う。
__ 
嘘の状況を楽しんだり、もしかしたら必要とするのかもしれませんね。
西山 
うーん。そうですね。あと、また全然別の話で、俳優ではなくパフォーマーの人の演技に憧れる部分があります。パフォーマーの人の演技は、その人自身がやりたいこととして成立していながら、魅せる演技としても成立している。フィクションの中でそんな演技が出来るようになりたいです。でも、もうちょっとジャンプもしていきたい。

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西山

憧れ

__ 
いつか、一緒に仕事をしたい人や劇団はありますか?
西山 
同世代で、この時代を、どの土地で、どうお金とか精神をつかって生きてくかを作品で示唆してくれた、映画監督の濱口さんとかヒスロムとか空族とか三宅さんとか鈴木さんとか木村さんとか山崎さんとか佐藤零郎とか小沢さんとか荒木さんとか・・・もうほんといっぱい居るんですけど、そういう人たち。でも自分が理想を持って動いてれば出会うべき人には出会うという実感があるので、縁があったら、ガガガガっとやる!て感じです。マレビトの会もわっしょいハウスも鳥公園も必然だったし。人には多すぎもせず少なくもない、キャパってもんがあると思ってるんで。

vol.435 西山 真来

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西山

景色

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
西山 
続けていって、いく内に見える景色がみたいです。
__ 
ありがとうございます。西山さんならきっと見えると思います。

vol.435 西山 真来

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2015/春
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西山

キャラメルみたいな携帯用石鹸

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。つまらないものですが。
西山 
ありがとうございます。開けていいですか。
__ 
もちろんです。
西山 
ハッピータイムですね。プレゼントをもらうことなんてないです。(開ける)へー。16個入りという事は、小さい石鹸が入っているという事でしょうか。
__ 
そうですね。
西山 
キャラメルのにおいがする。


vol.435 西山 真来

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西山

茶屋町サミットだ!

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。青木さんは最近、どんな感じでしょうか。
青木 
よろしくお願いします。最近は月イチでイベントを継続できるように頑張ってます、あ、来て下さってましたよね。
__ 
ええ、茶屋町サミット。面白かったです。
青木 
ありがとうございます。あれ、意外と内容以外で時間と手間が掛かるんですよ。必要な手続きと書類を毎回教えて頂きながら、迷惑かけながらやってます。
__ 
え、司会だけじゃなく!?
青木 
そうなんです。基本、全部なんですよ。企画から構成からゲストとの打ち合わせまで・・ある意味、泳がせてもらってるのかも知れませんが。勉強になってます。
__ 
もの凄い量の実務があるんですね。そりゃまあ、TV局の1階で実施するイベントですもんね。そしてそのおかげか、毎回楽しいイベントです。茶屋町サミット
青木 
以前から、不特定多数の人に向けたプロモーションの場を作れないかなと思ってまして。まさか、MBSの1Fでやらせてもらえるとは思ってもなかったですが。言ってみるんもんです。勿論、TVに出るのが一番手っ取り早いので、そこは貪欲にいきたいのですが、今の段階でもあそこは知らない人もいっぱい来るので、プロモーションという意味では効果は出始めてます。
__ 
あ、そんなに手が掛かってるんですね。私あれ、社屋の1Fを勝手に使ってるゲリライベントだと思ってました。よく考えればそんな訳ないですよね。
青木 
許可は頂いてます。常に打ち切りと戦ってますよ。それと、来年の2月には武術太極拳の世界選手権のメダリストの方々と、何故か関西小劇場の面々が一緒に芝居をしようというプロジェクトが立ち上がったんです。お相手が凄すぎて、規模も大きいので準備もめちゃくちゃ掛かるんですよ。
__ 
それは凄そうですね!詳しく伺えたらと思います。
ArtistUnitイカスケ
過去に漫才コンビ「ザビエル」として活動していた青木道弘と櫻井心平が、2010年に立ち上げた多角的なエンターテイメントを掲げた演劇主体のユニット。メンバー全員が役者経験をもちながら、それぞれにジャンルの違う得意分野を有するのが特徴。(公式サイトより)
茶屋町サミット
お客巻き込み型の新しいイベント!関西演劇界には、多才なエンターテイナー達が潜んでいます。彼らは芝居以外に漫才、コント、ショートコメディ、ダンス、歌、マジック等、「目の前の観客を楽しませる」ことに特化した才能を持ちながら、劇場という、どちらかというとアンダーグラウンドな場所で演劇活動をしています。本企画では、そんな彼らが、アンダーグラウンドとは対極のメディアが所有するステージ、「ちゃプラステージ」へ集結。テレビ出演、番組ゲットという、大それた夢に挑みます。なんのつてもない彼らが頼るのは、観に来て下さるお客さん一人ひとり。SNS発信による口コミ力を頼りに、MBSの1Fであからさまにライブを行い、MBSに番組枠を直談判することをめざします。MBSには一切話を通していないこの企画。これは、「SNSというツールを活用する事で、新たなスターへの道を切り開く事ができるのか」という、観客を巻き込んだ新たな試みでもあるのです。(公式サイトより)