劇団みゅーじかる.321「ファーマーズROCK」

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まずは、7月に上演された劇団みゅーじかる321.の「ファーマーズROCK」。青木さんは作・演出でしたね。めちゃくちゃ面白かったです。
青木 
ありがとうございます。
__ 
色んなところから人が集まってきて、一つの作品を作る。そうした公演は私も数限りなく拝見してきましたけど、「ファーマーズROCK」はとてもいい塩梅に仕上がった作品でした。出演者の演技とチームワークがちゃんと出ていて、演劇作品としてもまとまっていて、でも役者の個性がキレイな感じに出ている。脚本もまとまっていて。
青木 
ありがとうございます。やっぱり、プロデューサーさんの意向もありますので、ある程度人を出した上で見せ場を作らないといけない。そんな主役っぽいのを全員に与えたらあかんでと言われるんですが、うまいことそれを逆手にとられへんかなと思って。
__ 
大変ですよね、多人数キャストは。見応えはその分、増えますが・・・
青木 
そこはそこで成立させつつ、自分のやりたい事もある、と。いつもはもう少しストーリーを大事にするんですけど、今回は尺の関係でどこを削ってどこを残すかに気を使ってたんですよ。本音を言うと、本番はめちゃくちゃ不安だったんです。でも出演もしますから、そうは言ってられなくて。
__ 
そうなんですね。でも、お客さんの満足度はとても高かったと思います。この間吉田青弘さんとのインタビューで、稽古場の雰囲気が影響してたんじゃないかなと思ったんです。ガチガチと決めていくような感じではなく、でもユルいという訳でもない。それぞれが自分の個性を引き出す為の稽古をしていたかのような。作品からはそんな雰囲気を感じました。
青木 
実は、僕の今回の仕事はキャスティングの時点で半分終わってるんですね。自分のホンで大事な部分以外は、役者さんに繋いでいってもらうというか。今まで僕の作品はストーリーを褒められる事が多かったんです。でも今回に限ってはそういう形にしてしまうとおそらくコケるんではなかろうか、と。役者さんも忙しい方ばかりですから稽古期間も短いですし。なので、大きな流れを大事に、細かい流れを書き換えて、吉田青弘とか、役者によっては自由にやってました。やっぱり、当時の農民という、あの当時は立場が弱いとされていた人達を生き生きと描くという事もあって、それは関西小劇場の役者達にハマればいいなと思いながら。
__ 
それはもちろん。そして、一人一人、それぞれに魅力と見所のある作品でしたね。私、全員覚えてます。全員好きな人物です。
劇団みゅーじかる.321「ファーマーズROCK」
公演時期:2015/7/10~12。会場:in→dependent theatre 2nd。

今日だけの内輪が生まれている

__ 
今回の作品を例に取っていただいてもいいんですが、どういう事が出来たらお客さんを楽しませる事が出来るとお考えでしょうか。
青木 
そうですね、うーん、ありきたりですが・・。僕の中でいつも意識しているのは、やっぱり「前のものをどう生かすか」ですかね。僕は笑いを入れたがるんですけど、その「笑い」というものがどこにまた大きくなって帰ってくるかを意識します。やっぱりそこって、一回目で笑いを取ると、それを見てくれたお客さんには少なくとも「内輪」という状態になるんですよ。見てくれたからこそ、分かるもの。で、内輪という状態が出来たら、それを利用して別の笑いに行くのか、逆に感動させる方向にいくのか。そこはジャンルによって違いますけど。そこは構成演出の考え方でもありますけど、次の手に繋げる「内輪の状態」を、いつも意識していますね。「内輪」って、言葉がアレですけど。
__ 
「内輪」。劇場が一体になる、という事を別の角度から言い表したみたいな事ですよね。何でしょうか、途中から入ってきたお客さんは分からない、みたいな・・・?
青木 
まあ、その危険性はありますよね。でも、例えば笑いを起こすと、お客さんからのアクションを頂けますよね。その時の一体感かな。
__ 
舞台があって観客席がいて、舞台の上での人物が起こす事故、への共通認識といったらいいんですかね。
青木 
そう、ですかね。或いは、お客さんのキャラクターへの認識というのでもいいんです。初対面から気心知れる、一歩進むというか。友達同士の関係の中で、特定の友達の特定の言動で笑うが起こる。それが劇場で起こっているという事は、お客さんはそのキャラクターに何かしらの理解をまず持っているという状態。それは、もの凄く言葉は悪いけれども、学校でやる発表会的な雰囲気を作れたという事のかな、と。
__ 
よく分かります。そういう関係性を作るのが大事なんですね。
青木 
そうですね、その状態を作り出すために笑いを使う事が多いです。笑いを取る為だけに笑いを取るってのも良いのですが、僕は元々が漫才師ですので、もう少し、笑いの出し方、活かし方にこだわりたいな、と思ってます。
__ 
モックとしての笑いではなくて、物語に組み込まれている笑い。では、どんな笑いの好みがありますか?
青木 
そうですね、タイプでいくとシチュエーションコメディが基本になっています。この場所で何が起こったのか、を次のシーンの変化によって想像させるのが好みですね。
__ 
そこに役者同士の組み合わせがあって、内輪というものがまた深まっていくように思えるんですよね、私には。
青木 
そういう意味でも、今回の作品はまさにキャスティングを本当に深く考えましたね。スケジュール上、みなさんの稽古参加が凄く遅くなるという事がわかっていたので、そこを踏まえてお願いしたという事もあります。
__ 
ありがとうございます。では、そうした作品を作る上で、どんな事を役者に求めますか?
青木 
求めるというより、そこは役者と一緒に探していくという感じです。自分だったらここでこうやって笑いを取るなあと思って書くんですけど、それを役者さんにやってもらったらどこか無理をしているように見えるというか。そう思えた時はズレが発生しているんですね。僕が脚本を書く時には、その台詞の感情というよりは、結果としての笑いを求めたりするので。そういうズレには、役者さんの個性を生かす方向で。あなたを生かしたいというか。
__ 
そういう意味で探していくんですね。
青木 
とりあえず振り切ってやってもらいます。ふざけるならとことんふざける。滑稽なまでに怒るという演技があったらとことん怒ってもらう。そこを徹底するためにそういうのに長けてるThE2VS2の演出の徳山君に演出助手に入ってもらってます。
__ 
例えば忍者衆が、台詞を喋る前に必ず地面に「しゅたっ」って着地するじゃないですか。
青木 
はい、それも徳山君に演出助手に入ってもらった賜物です。

茶屋町の内輪

__ 
茶屋町サミットの「内輪」について。当初思っていたよりも遙かに、いわゆる内輪ウケ感が無いんですよ。あえて会場外には仰々しいチラシやポスターが貼ってある訳ではない、誰でも入っていけるゲリライベントというまとめ方になっている。雰囲気的にも、言葉は悪いですがダラダラやっている感触がある。見事な場所作りだと思います。
青木 
ありがとうございます。
__ 
でも、少し見ていると全く飽きさせない作りになっている。ユルいように見えて、結構ギチギチに作ってますよね。司会が繋いで繋いで、1秒程度も間が空いていない。
青木 
「内輪」って言葉は僕がふっと出してしまった言葉なんですけれども、でも劇場に来るのが初めての人ばかりでも、ふと輪が出来ているみたいな。僕も、この2・3年でこの方法論でもいいのかなと思うようになっていて。
__ 
話がそれますけど・・・茶屋町サミットって、よく知らん奴らが勝手にマイペースでやってる感があり、しかし実際は司会が息も付かせないペースで進行している。
青木 
そうですよね、逃がさないという気持ちはありますし。単純に時間が長いですし。4時間半。ぶっ続けに観れる時間じゃないですが、ぶっ続けでも観たいと思わせたいし、通りすがりの人を一人でも多く繋ぎ止めたい。まあ、とにかく必死です。
__ 
しかも毎月1回。もう感覚としてはいつもの面々がレギュラーで当然のようにやってるぐらいの受けとめ方なのに、実際は凄く大変。
青木 
はい。構成や進め方にはもちろん手が掛かってます。ただ、僕としての理想は、今をファーストシーズンとして。僕らがあそこで一番にやって、欲を言うと、次の世代の子たちが不特定多数の人にアピール出来る場を残したいなとも思っています。僕もいい歳なので。
__ 
次代に。
青木 
やっぱりあの場所は良い場所だと思います。業界人の方にも観て頂けるわけですし。演劇関係者は実はそんなに多くなくて。
__ 
貴重な場ですよね。
青木 
そうですね。出来るだけ長く続けて、何とか結果を出したいです。番組枠を取るぞ、という目標も、何とかして・・・
__ 
1万ツイートあればMBS上層部に直談判出来るんですもんね。
青木 
非公式ですが。でも、達成して直談判してみたいです。MBSの社員さん方も見に来てくださってるようです。
__ 
そりゃあ1階でイベントがあれば気になるでしょうね。
青木 
おかげさまで、わりと、関西小劇場もやるじゃないか、と思ってくださってるようで・・・。変な話、関西小劇場の役者さんって、フリーでやってる方多いじゃないですか。これまで僕も、素晴らしい役者が金銭的な事情で辞めていくのを見てきているので。あと1日あれば辞めずに済んだのに、という事もありうる世界なので。なんとか、直接メディアや制作会社さんとやりとりする、そんなスタイルが確立したら、それはそれで新たな可能性も少しは広がるのかなと。この際、自分を生け贄にしてでもって思ってます。
__ 
いいですね。そういう、企んでいるような様子がまた魅力的に思えるんですよね。

質問 新良 エツ子さんから 青木 道弘さんへ

__ 
前回インタビューさせていただきました新良エツ子さんから質問です。「貧乳派ですか巨乳派ですか?」
青木 
新良さんには申し訳ないんですけど、僕は貧乳派なんですよ。何ですかね、僕は巨乳にトラウマがあって・・・。

作り方の変遷

__ 
作品を作る上でお客さんと共有する事を大事にする。そう思われるようになったのはどのような経緯があるのでしょうか。
青木 
僕は漫才をやっていて、当時いた事務所が潰れて、相方は東京へ。僕は大阪でそれぞれやってみようとなったんですね。M1で決勝まで残れれば良かったんですけど。さて、どうしようと思ってたんですが、売れるという目標よりも、まず飯を食おうと思って、だったらまず必要とされる人になろうと。そこから僕はたまたま演劇というものに出会って作るようになって。それが僕が30歳ぐらいだったんですね。
__ 
なるほど。
青木 
当初、僕は演劇ってもっと凛としているものだと思ってたんですよ。作品を上手くやろうだとか、ちょっと哲学を入れてみようとか、当初は笑いも入れていなかったんですね。見せよう見せようみたいな。そういう作品を3年くらい続けて、事務所劇団とかの作演を任されてたんですけど、ある公演で初めてダブルコールを頂いたんですよ。その時をキッカケにもう一度、さてどうしようと思って。で、演劇の作り方について自分でもう一度考える事にしたんです。事務所の作演も辞めて、再びフリーになった時に、窪木さんの芝居に出まして・・・
__ 
窪木さん!?
青木 
あ、窪木さんです。まだギアを始める前、BLACK CHAMBERがある時代の。_BIRTHDAYCAKEの_「歯車のアルカ」、ですね。窪木さんの芝居の作り方、言葉はアレですけど、ふわふわ作るなあこの人、と。でも何か、僕が思う「見せてはいけないところ」を見せてるんですよね。それ以降も色んな演出家さんの下で芝居させてもらい、色々影響を受けて、4・5年前にイカスケを作って、シチュエーションコメディを作ろうと。
__ 
窪木さん、知り合いです・・・。昔出演した芝居で、ソロのダンスを振り付けして頂いた事があります。インタビューもしました。
青木 
そうなんですね!
__ 
窪木さんのように、アバウトに作ってしまってもいいんだ、と。
青木 
アバウトというと言い過ぎですが、でも、見せよう見せようとしていたんですが、そうでなくてもいい。僕は雅楽をやってるんですが、漫才とは正反対の、形式の世界なんですよね。演劇も、例えば暗転を明るい中でやる見せ転も美しく見せないといけないみたいな。芝居を始めた頃にお世話になった方々も、きっちり作る方々で。一方窪木さんはもっと、歩み寄る作り方。固くなっていた頭をほぐしてもらったみたいな感じですね。
__ 
歩み寄る。
青木 
僕の場合ですけど、自分という人間が一生懸命背伸びして作ると頭打ちが来ると。たまたまダブルコールをもらったとしても、それ以上の事、それ以上の事ってどんどん視野が狭くなる感覚に陥る。

演劇の凄さで泣く

__ 
お芝居を始めた頃に見た、衝撃を受けた経験を教えてください。
青木 
始める前に見たものでも良ければ。実は僕は今でも演劇があまり好きではなくて、だから演劇の良さや凄さがより分かると思ってるんですが・・・
__ 
ええ。
青木 
東京の親戚に会いに行った時、たまたま、野田秀樹さんの「赤鬼」を見せられて。その最後のシーンで赤鬼が台詞をぶわーっと捲し立てるんですけど、その時意味が分からないけど涙が出て止まらなかったんです。それが、僕の演劇に対する畏敬の始まりだったかもしれないです。あれが印象的ですね。
__ 
そうなんですね。何故、その時泣いたのか・・・。
青木 
何故なんでしょうね。もう十何年も前ですけど、迫力ですかね。言葉じゃない何かで伝えて来るものが伝わったのかもしれないですね。演劇の凄さというものを知った日かもしれません。いずれ伝えたいと思いますね。

外の世界を目指す

__ 
いつか、どんな芝居を作りたいですか?
青木 
その影響かもですが、どうせなら海外で上演出来る芝居を作りたいですね。自分の中ではもう東京を目指すというのじゃなくて、漠然としてますけど、海外で通用する作品を作りたいと思っていますね。
__ 
自分の作品の価値を問いたい。
青木 
僕はどちらかというと、口で先に言っちゃうタイプなんですよ。一番最初に作演をやったのも仕事が欲しかったからで、「出来ます」って言っちゃってからウンウン悩み続けて。来年の武術太極拳の企画も、プロデューサーさんに「出来ます、海外に持っていけるものを作ります」と。そうしたらプロデューサーさんが「東京でウケたらマカオに持っていくから」って。
__ 
先に目標を言葉にしてしまって、それから・・・
青木 
どっちかというと、目標がないと動けないタイプかもしれません。
__ 
ユニークさを求める関西小劇場の独特の文化が、海外でどう受け止められるのか楽しみです。
青木 
そうですね、それをどうにかして創りたいです。これから苦悩します。その、武術太極拳の方々はもう本当に凄くて、分野の第一人者なんですね。国際的にも通じる金メダリスト相手で、でも僕らも負けたくはないですね。いい意味で、圧倒的な差。僕としたら、最後まで「海外いくぞ」という気持ちです。今回はあえて、同じぐらいの年齢の小劇場の役者さんたちを連れていこうと思います。
__ 
おお!
青木 
もう、海外や武術太極拳の方の目線で見たら関西小劇場の人たちなんてベテランも若手も一緒なんですよね、きっと。どうせなら勢いを持って。もしダメだったとしても失うものなんか無いんで。やってみたいなと思います。もし失敗しても、また地道にやっていけばいいんで。
__ 
いや、大丈夫だと思いますよ。世の中は常にジャイアントキリングの物語を求めてる訳じゃないですか。
青木 
そうですよね。そして僕は、そんなに演劇を好きじゃなくて良かったなと思ってます。酔い知れてしまうと良くなくて。自分を動かしたいというか、とりあえず、毎日、自分の演出感や思考さえ疑ってます。あまり才能がない僕が創作に向いている唯一の点だと思います。

効果のある場所で必要な事をしよう

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
青木 
どうやって新しい人に見てもらうか。その為に必要な事は何かを、出来る出来ないの軸ではなく考えていきたいと思います。一つは茶屋町サミットもそうだし、海外を目指すのも同じで。出来る出来ないで言うとその時の僕では出来ないんですよ、でも必要かどうかと言えばそれは必要なので。そう思ったらやってみる。
そういうようであり続けたいですね。
__ 
必要な、伝わる場所で宣伝すれば人は来てくれますからね。
青木 
そうですね。サミットに参加した劇団も、自分達に還元される部分があると感じてくれてるみたいなので。昔僕は手売りを200枚ぐらい売ってた事もあるんですよ。
__ 
えっ!
青木 
最初の事務所劇団の時、集客は1000前後だったんですけど、その時も手売りはもの凄い時間が掛かる部分で。でも茶屋町サミットは一日で集客も出来るし、たくさんの人に見てもらえる。もう一つ言うと、あそこに出ている連中は戯曲のなんちゃら賞とは関係の無い連中なので、それに相当する可能性を秘めた道もあわよくば作りたいと思ってます。コント集団ばっかりですから。

皮革製品のクリーナー

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。つまらないものですが・・・
青木 
ありがとうございます。開けてもいいですか。
__ 
どうぞ。
青木 
(開ける)あ、これは。嬉しい。革の消しゴムですか。
__ 
皮革製品を使われている印象があったので・・・。司会者ですし。
青木 
まさに今、そういう磨くものがなかったんですよ。ありがとうございます。


エツ子倶楽部だ!

__ 
お久しぶりです。お元気ですか。
新良 
元気ですよ!いつでも変わらず。飲んでます。飲みまくってます。
__ 
安心しました。そして今日はエツ子クラブですね。これだけは本当に行きたいと、楽しみにしてきました。
新良 
うふふ、ただ飲んで喋ってるだけですけど、あ、でもリクエストソングを歌いますので。
__ 
新良さんがホストとしてお客さんと交わるんですよね。そういうイベントに参加する機会はあまり無かったので楽しみです。
新良 
私も楽しいです。
__ 
そういえば、昔私が新良さんにさせてもらったインタビューで、「演劇辞めたら私、結局最後はホステスになってるかもしれない」って仰ってたじゃないですか。ピッタリですね。
新良 
言ってましたね。今でも思ってますけどね。
__ 
そうなんですね。どちらにせよ、お客さんと仲良くなるって凄い力だよなあと思う。それはものすごく尊敬出来る。
てらりすと
モーニング娘。、Juice=Juice、杏子、星野源、RIP SLYME Ryo-Z、SUPER☆GiRLSなどへの楽曲提供や出演舞台の劇伴を手がける音楽ユニット。メンバーはボーカル・新良エツ子とコンポーザー・和田俊輔。『一人ミュージカル』という唯一無二の音楽ジャンルを展開。新良エツ子が様々なキャラクターに扮し、時にポップに時にマニアックに歌い踊るその斬新なパフォーマンスは、多くの人々に衝撃を与え楽曲共々各所から高い評価を得ている。(公式サイトより)
8月21日エツ子倶楽部
日程:8月21日(金) 時間:19:30 Open/20:00 Start/22:00 Close予定 会場:magicians Red(マジシャンズレッド)

ユウキの話

__ 
私が一番最近新良さんを見たのは、3月末の一人ミュージカル、「アナーキー・インザダーク」でした。とても面白かったです。どの役も可愛かったですが、特に閻魔大王が可愛かったですね。
新良 
え、閻魔大王ですか。うれしー。あれの衣装、自作なんですよ。
__ 
そうなんですね。とても面白可愛かったです。小道具の、舌べろが付いてるペンチを三方向に振るやつが凄く良かったです。
新良 
「たんー」ってヤツですよね。あれのモデルは伊藤えん魔さんですよ。
__ 
そうなんですね!歌の終わりで、満足げにニヤリとするのが天才的に良かったです。あと、バンギャとビジュアル系の二人の破綻っぷりが面白かったです。あの公演は本当に盛り上がったなあ。ライブが盛り上がるって、実はとても難しいことじゃないですか。最後の独身女ショーで、新良さんが妖怪ウォッチ体操の替え歌で「酔うてる酔うてる酔うてる酔うてる」て歌ってて、それが最高に盛り上がった。
新良 
「酔うてないせいなのねそうなのね」って。あんまり覚えてないけど、でもあれは元ネタがあるんですよ。堂山にガチンコってゲイバーがあって、そこで私が一番仲良いチーママのユウキがやってくれたんですよそれを。私もうろ覚えなんですけど。元ネタはあの子です。その後作った「てら×てら×てら」という小さな作品で、ユウキが主役の話を作りました。事実に基づいた話だと書きやすいのかな。着ぐるみ着て、パペットを使った人形劇とか。同じようなのは「人デナシノ唄」でもやってましたね。
__ 
ああ、あの一人芝居人形劇はとても可愛いですね。新良さんの、演技そのもののセンスが花開きますよね。二人一役をああした形で演じる時に、呼吸をどう処理するかとかがひたすら重要なんだなあと思ったんですよ。
新良 
「人デナシノ唄」の時に初めてやって、「あ、あたしこれ得意なんだ」って思いました。自分のCDを後で聞いたときにそう思いました。
__ 
ちゃんと会話が出来ているように呼吸を組み込まないといけなくて、その大筋の中で細かい感情表現を行う。一つ一つの細かい意味が明確に伝わるきちんとした演技。しかもそれをミュージカルで歌いながらやってるっていう。あれは凄かったなあ。

質問 中村 真利亜さんから 新良 エツ子さんへ

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前々前回インタビューさせていただいた、TAKE IT EASY!の中村真利亜さんから質問を頂いてきております。「お酒が好きなのにその美声、どうやって保ってるんですか?」
新良 
え、理性?
__ 
美声です。美しい声。
新良 
あ、声か。びっくりした、理性は保ってねえと思って。
__ 
(笑う)
新良 
あっはっは(笑う)「お酒を飲んでてどうして歌ってられるの」って事ですよね。すごい聞かれるんですけど、私、お酒飲まないと歌えなくて。
__ 
ええっ!
新良 
多分、そういう体質なんだと思います。人によっては栄養ドリンクや水を飲むと歌いやすいって人もいると思いますけど、あたしの場合はそれがお酒なんです。血流が良くなって体があったまって歌いやすいというか。それと、私はアップをしないんですけど、お酒がアップ代わりになってるんじゃないかな。
__ 
つまり、酔拳ですね。
新良 
そういう事ですね、つまり。

質問 市原 佐都子さんから 新良 エツ子さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、Qの市原佐都子さんから質問です。「30代になってどうですか?」市原さんはまだ30歳ではないんですが、想像が付かないみたいなんですよね。
新良 
人によってはそういう悩みにぶち当たりますよね。私も、何だろう。最終地点を自分で決めてはいて、それは水商売をやってるんだろうなと。今やってる活動、つまり歌と舞台と歌の先生、が潰れたとしても、私は水がやりたいと思ってるので。それぐらいぽわーっと、芝居出来なくなったら水行こう、としか思ってなくて、それは今でも思ってる。でも、30になって変わったとしたら、強いて言えば結婚の事は考えるようになった。
__ 
ああ・・・演劇人やってなかったら今頃結婚してマンションくらい買えてたのかなとか、思いますよね・・・。
新良 
そりゃそうですよ、演劇関わってたらお金にならないですから。でもお芝居に関わる事が心の支えになっている人もいるから、一概には言えないでしょうね。
__ 
そう、心の中に築きあげてきたものがある。

因果!

__ 
新良さんが歌っていた歌詞で「因果応報まじこえー」というのがあって。新良さんの作品にもたびたび、因果応報って出てくる気がするんですが、よくよく考えると凄い仕組みですよね。因果応報。
新良 
ホントにそう思います、怖い。悪い事したら絶対還ってくるし、良い事も絶対還ってくるし。
__ 
人類の頭数分の因果応報が隙間無く動いていて、全体を形作っていて、ちょっと怖くなる。そこで、新良さんはこの中でどんな因果応報を演じたい?
新良 
そうだなあ・・・私スーパーポジティブなんですけど、ポジティブに考えていると、良い因果応報が多くて。もちろん悪いのもありますけど、ネガティブに生きないようにしたいなと思ってます。ネガティブだと悪い事ばっかり考えて、「あれがあれで、これがこれで、ウワーッ」となってしまうので。
__ 
ああ、疲れますよねそんな生き方は。人の評価ばかりを気にして。
新良 
ていうか裏切られるのは裏切られるので私の人徳の至らなさで、そうかそりゃしょうがないわ、と。あんまりぐちぐち言ってると、私の事を好きと言ってくれる人が離れていく気がするというか。
__ 
ああ、そうですよね。
新良 
悩みとかも、自然に面白おかしく言うような癖が付いてるから、だから私はポジティブでいられるんだろうな、と。
__ 
目の前を見る、という事ですね。しかし、それを続ける事の難しさですよ。
新良 
私、向上心はあるけど野心は無いんです。「絶対これをやってやるんだ、売れてやるんだ」とかの気持ちがなくて、今の現状すげー楽しいなーと思っちゃってるので。大きな舞台に出れた時でも「俺の実力だぁ!」とか思わなくて、やったあ良かったなあと思ってる。
__ 
そこはやっぱり、男性である私とは少し違う感覚ですね。
新良 
うん、私も、男だったらそうあるべきではないと思う。いやホントは女もそう思わないといけないのかな。まだ甘いと思います。私も。ポジティブもいいけど。
__ 
調子に乗らない程度にはね。
新良 
もし結婚したパートナーが、そういう風に自分の仕事や役割に自負心を持たない男だとして、それはどうなのと。私もいつか子供を持つとして、もう32ですしね。そろそろ、あなた、と。

子供とあそび、の話題

__ 
子供はいいですよね。私には8ヶ月になる姪がいるんですが、最近は大人を威嚇するのが面白いらしくて。
新良 
威嚇する?
__ 
「シャーっ」って。
新良 
かわいー。でも人間の子供に、威嚇っていう習性あります?
__ 
分からないです。今日も姪と遊んできまして。眼鏡を取られると弱る鬼ごっこをしてきました。
新良 
(笑う)凄い楽しそう。
__ 
そう、新良さんは何かのプロフィールの欄に「趣味:子供」て書いてましたね。
新良 
子供大好きです。本当に好き。お酒と歌とどっこいどっこいぐらい好きです。
__ 
うん。・・・子供って、しばらくは子供じゃないですか。大人からすれば子供時代は一瞬だけど、でも、これから10年は子供なんだろうな、と。その時間の長さが凄いなあと思うんですよね。訳わかんないですよね。母親になったら、それとずっと付き合い続ける。
新良 
そう。凄い。親になったときに、多少しっかりしないといけないじゃないですか。ボケとツッコミみたいな。私はしっかり出来るのかな、と。
__ 
母親になったら分かるんですかね?
新良 
今の自分ではいられなくなる、それがちょっと寂しいですかね。まだ、自分は子供でいたいという願望が強いから。
__ 
ただ、いつか母になる。
新良 
うん。

死因はなんだろう

__ 
新良さんはどんな死に方をしたいですか?ちなみに私は後ろから演劇人に刺されて死にたい。
新良 
私の死因は酒じゃないですかね。
__ 
あ、酒か・・・。肝臓がいかれて?
新良 
事故とかでぽっくりいきそうですね。泥酔中に。「ビターン!ウワーッ!」って。
__ 
いいですね!
新良 
願望で言ったら、もう絶対に世界が救えない状態になって敵とかが現れて。その敵を歌で倒さないといけないってなって。何の話してるんだろ私、でもそうなって。で、私しかいない。私が行かないといけなくて、自分の子どもとか好きな人の為に、歌いにいく為に飲むみたいな。飲んで酔拳発動して死ぬ。刺し違えて死ぬくらいがいい。
__ 
最後のラスト1分でその女の熱唱が始まって、ラスト15秒で敵に圧倒されて歌が終わって死んだのか生きてるのか分からなくなるんだけど、ラスト5秒でもう一度歌とも絶叫ともつかない声が聞こえるみたいなね。
新良 
壮絶な心情の中で死んでいきたいですね。でも結局はゆるやかに死んでいくだろうけど。
__ 
89歳で「厄年だねー」とかいいながら死ぬみたいなね。ま、私は刺し違えて死んでほしいです。プリキュアみたいに魔物に取り憑かれた電車に向かって、アルコールに臓器を八割持っていかれた新良エツ子が妄想を歌いながら突っ込んでいってほしい。
新良 
(笑)

やっぱりライブ感

__ 
歌ってる時は何を考えてますか?
新良 
歌ってる時・・・歌詞を思い出してます。あたしホント歌詞間違えるから。間違えた自分に笑っちゃうから。例えば感情をのせて歌ってる事なんてほぼないと思います。
__ 
あ、そうなんですね。
新良 
頭の中は次の段取りの事でいっぱいです。でも、段取りを必死で追ってる方が演技しようとしてないというか。自分のやり方で自分のセンスを、無になって出来るというか。「こうしてやろうああしてやろう」みたいなのは無いですね。
__ 
良く分かります!私も、話をよく聞いて相槌打ってる時の方がうまくいく気がします。インタビュー前に「今日はこうしてやろう」とか「芸術的なインタビューにしてやろう」みたいなことは考えるんですが、そんなの邪念ですね。そういえば去年の「アナーキー・インザダーク」の時も、もの凄い数の段取りがあって。歌の準備をしている時の生感が素晴らしかったです。
新良 
なんか、舞台裏みたいな感じがね。
__ 
そうそう、舞台上に箱が4つくらい無造作に置かれて、中に衣裳と小道具が全部入ってて、そこで着替えて、衣裳が変わったらそこからミュージカルが始まるんですよ。ものすごい手作り感がありましたね。
新良 
まあ、単純にハケてたら間に合わなかったんだけど。

今夜もサバイバル

__ 
新良さんが最近興味のある事は何ですか?
新良 
もう年がら年中そうですけど、基本的には子どもがいるところに積極的に行っています。例えばアンパンマンミュージアムとか。とにかく子どもと遊ぶのが好きなんです。ほっぺ触ったり。
__ 
分かります。あの感触は凄いですよね。
新良 
最高に気持ちいいですよね。私の全てを形成しているのは子どもと遊ぶ事。それと、とにかく飲みに行く事ですね。
__ 
おお。
新良 
朝の4時に呼び出されようが、面白そうな飲み会なら行く。結構危険だと思うんですよ。飲んで、酔って、吐いて意識無くなって。その危険な事をしているのがサバイバル感があって。でも、結局私は色んな人と喋るのが好きなので。
__ 
例えば?
新良 
自分とは全然違う人生を歩んだ人。例えばアイドルの子とか、子役からずっとお仕事している人とかを教えてるんですけど、例えば13歳ぐらいから働いて家にお金入れて。凄いでしょ。あたしもあたしで、その子達とは全然違う人生を歩んできたけど。だから人種は違う、そして足りない部分を補い合ってるというか。

棒しばり♪

__ 
いま、どんな歌が歌いたいですか?
新良 
そうだなあ、私基本は和モノが好きなので。日本らしい曲が歌いたい。
__ 
演歌とか?
新良 
演歌もだし、メロディが和のもの。かつ、激しくて難しいみたいな。昔から日本にある古典とかも歌いたいし。私、大学で狂言を勉強してたんですけど、謡(うたい)が入っている作品もあって。私が好きな狂言で「棒縛(ぼうしばり)」というのがあって、これは和製ミュージカルコメディだと思っていて。どういう話かというと、自分のお酒を飲まれるのが心配な主人が自分の留守中に家にいる家人を縛るんですね。後ろ手に縛られた二人が、でもどうしてもお酒が飲みたくなって、お互いに後ろ手で酒を飲ませ合って、したら段々面白くなっちゃって、歌ったり踊ったり始めるんですよ。
__ 
それは超面白いですね。
新良 
それはほぼミュージカルじゃないですか。「棒縛」はマジで面白い。
__ 
うん。縛られてるのに歌ったり踊ったりする、その精神が面白い。
新良 
そう、ホントに面白い。舞は本来、扇を使うのに手が使えないから、てんで何をやってるのか分からないんですよ。
__ 
その状態で彼らが出来る最大限の遊びをやってるという事ですね。
新良 
そうそう、しかも酔ってるから、一曲謡い終わる毎に爆笑してるんですよ。「なんとやら~うわっひゃっひゃっひゃ」って。結局、そういうシチュエーションが好きなんですね。私、狂言がやりたいのかな。棒縛、もう一回やりたい。
__ 
花見の席でやってほしいですね。
新良 
一人だと出来ないからなあ。二瓶とやったら楽しそうだなあ。「一応夫婦」とかで。
__ 
あ、いいですね、それは。

縁ってホントにあるんだね

__ 
次に出演される大きな舞台がミュージカル「HEADS UP!」ですね。ラサール石井さんが演出される。
新良 
はい。それはもう、凄い繋がりがあって。神だったんです。まず、去年に大空祐飛さんと「La Vie」という、祐飛さんを囲んで色んな人が作品をやるという公演に出演出来て。
__ 
ええ。
新良 
そのキッカケが実は、とある舞台に出演出来なくなって一ヶ月空いてしまった事なんです。空いてしまったから、祐飛さんのオーディションを受けられたんですね。その時は私と同じぐらいの実力の人がいたみたいで、で何故私の方を取って下さったかというと、私が趣味の欄に酒と書いたのを見て「この子面白いね」、どうせやるなら面白い子と・・・となったらしくて。
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素晴らしい。
新良 
もちろん実力で選んで下さったと思うんですけど祐飛さんの事だから。で、その時に祐飛さんがHEADS UP!に出られる事は決まっていたので、演出のラサール石井さんが観に来て下さって、「この子を使いたい」と仰って下さったらしいんですよ。まさかそんな事になるとは思わなかった。誰かが紹介して下さったのかと。でも単純にそう仰って下さったんですよね。その上、ラサール石井さんが一人ミュージカルを観に来て下さったんですよ。
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おおう。
新良 
そこでお求めになったCDの中に「恋の討ち入りガール」って曲が入ってて。それをラサール石井さんが聞いて、舞台のEDに使いたいと。それが伊東四朗さんの記念公演「吉良ですが、なにか?」に使われたんですよ。本多劇場で。戸田恵子さんが出てて、ラサール石井さんも出てて、三谷幸喜さんが脚本の。その作品のEDに使われたんですよ。凄い繋がりじゃないですか、これ。
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酒から始まった、ものすごい繋がりですね。
新良 
出れる舞台が出れなくなった、いわば不幸から始まったんですけど、それがキッカケになったんですね。最初のは私に何かしら理由があったと思うんですよ、タイミングもそうですけど。でも結果ね、転じて転じて、良いことしか起こってないんで。因果応報ではないですけど、人生楽ありゃ苦もあるさ、と。悪い事があったら良い事もあるさ、と。落ちたら上がるし、上がったら落ちるんですね。最初は、舞台に出れなくなった時はかなり腐ってたんですよ。
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ああ・・・
新良 
でも落ち込んでる時に周りの友達が励ましてくれて、オーディションを受けてみたら、と言ってくれて。そうじゃなかったら受けてなかったと思う。今はその事も幸せにしか思ってないから。でもそれも、ポジティブになれたからだと思います。自分、運いいなーと思っちゃいますよね。持ってる!マジで良かった。
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分かる分かる。周りにいる人の存在がとても大きいですよね。その人達が助けてくれたから。
新良 
だから「HEADS UP!」は本当に感謝しながら頑張ります。そういう流れがとても嬉しい。以前出た「ショーシャンクの空に」の時も、「チョンガンネ」を観に来てくださったキャラメルボックスのプロデューサーの方が「新良さんはアンサンブルじゃなくてメインで使いたい」と言って頂いてて。
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ええ。
新良 
私、動く事が一番大事だなと思う。動かないと、一人でぐるぐる同じ事をウジウジ考えてるだけになる。動く事が好きだから、飲みに行くのも好きだし。
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なるほど。
新良 
なにせ、「HEADS UP!」を一番頑張ります。それと、「エツ子倶楽部」の大きい版もやろうと思っています。それも飲めるイベントにしたい。何せ、飲むのが好きだから。
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飲みながら輝き続けてほしいです。周りを信じて。
新良 
自分の大事な人達を、ちゃんと本当の意味で大事にしながら、今のまま生きていきたいなと思います。本当に。