これからどうするの

__ 
しかし、アーティストとして一番ノリにノっているであろう時期に卒業をしないといけないってものすごく惜しいですよね。そこから就活しないといけないだとか、創作に振り切るにしても、もう学生の身じゃないから肩身が狭いだとか・・・。みなさんはどうするんですか?
南風 
演劇を続けたいというよりかは、続けよう、って感じですね。演劇じゃなくても楽しい事があればそっちを続けるし。そもそも大学を選ぶ時だって、書道か演劇かしか選択肢が無かったんですが、まあ演劇にして。今も、バイトの方が楽しかったら演劇やめてバイトする(笑う)。無印良品が好きなんですけど、そこが楽しかったら演劇やめて店員さんになると。
__ 
柔軟ですね。河井さんは?
河井 
うーん。なんだろう。どうするかとかの具体的な事はあんまり無くって。でも、今までも演劇を選ばなくても良いタイミングはいくつもあったんです。高校がビジュアルデザイン学科という専門的なところで、だから一応手に職はいくつか持っていてそのまま働きにいくことは出来たんですけど、僕も当時演劇部だったから、演劇を続けたいなと思ってこのまま来ちゃって。これまでも子供鉅人さんとかに関わって、普通に「演劇面白いな」、と。大学時代は小屋入りしていない時期が無かったんですよ。楽しくて楽しくて、演劇無しの生活を当分味わってなくて、そうじゃない生活が想像出来ないですね。言い聞かせみたいなもんですけど。地点の三浦さんと「演劇無しで生きていけるか」みたいな事をしゃべってたんですけど、俺は無理かも。根拠無いですけど。
__ 
藤井さんは、続ける続けないで言うと?
藤井 
続けないですね。続けられないな、と在学中に思ったんです。自分の中の区切りで、「舞台さよなら」という企画なんです。今回の卒制は。続けるつもりだったら、わざわざ企画はしていなくて。私の場合はその時興味のある事に突き進んでしまうタイプの人間なんで。高校3年の時は一番がダンスだったんですよ。その方向で考えてたんです。今は服飾に興味があります。

進路の先には

__ 
これまでの大学での学びが、どのような形で卒制に生かせると思いますか?
南風 
たまーになんですけど、いまだに、バカにされる事があるんですよ。「何で演劇をやるのに大学行ったの?」って。他の大学の演劇部の公演を見に行っても、「ウチのサークルは誰々を輩出しているのに、何で高いお金を払って大学行ったの?」とか。サークルでも演劇は出来るじゃん、卒業後の進路も芸術系は不利じゃん、って。でもこの卒制で「大学を挟んだからこそこの公演が出来たんやで」って言えたらいいです。って、これを大学に入った頃から思っています。2年ぐらい前に、木ノ下歌舞伎の公演に渡邊守章さんが寄せていらっしゃった文章に「木ノ下裕一と杉原邦夫は、大学を卒業したからこそこうした創作を続けている。そういう意味で、彼らの背負っているのものは、彼らが考えているより重い」みたいなことが書いてて。カッコいいなあと思いました。「大学出身」を背負っている2人。あ、社会と作品の関わりとかを考えるのは大学の方が強く学べると思います。
__ 
背負っているもの、ね。京都で演劇を教えている大学は、ここだけですよね。
南風 
実技だけで行ったらここだけですよね。邦生さんが「演出家が個人的に思っているもの、個人のエゴを、社会の問題としてまで、無理矢理にでも引き上げてしまう能力」について話してたことがあって。「そこまで出来る能力が必要だと思う」、と。カッコいいですね~。
__ 
今回の会話劇では、どんな意識で演出をしていますか?
南風 
演技の上で、俳優が実際にそう思っていなくても、見る側にそう見えればOKなんじゃないか、という事を意識して作っています。ウチの学科の演技トレーニングではスタニフラフスキーシステムを使ってて、それを参照してもいいんですけど、でも俳優は深刻なシーンの時に深刻な事を考えていなくてもいいんじゃないかと思う。そこに感情が無くても、技術や状況でその感情であるように見せられるという事が分かってきたし、私はそこに何かがあると思っていて。だから、今回は役者には完全燃焼しないようにしてほしいと思っています。昔は私も、感情がそこに無ければと思っていたんですが。タイミングとかを学んだのは邦夫さんと三浦さんが大きいですね。役柄の気持ちに関わらず、「そのタイミングのその状態」で言った方が良い、みたいな。「言っている」ではなく、「状況に、言わされている」ということもありますからね。

今、今

__ 
河井さんは、この作品に4年の学びをどのように生かしますか?
河井 
劇団って何だろう、という事を考えた4年でした。僕らはサークルとかに所属して作品を作ってきたんじゃなくて、プロデュースユニットみたいな形で、やりたい人達に声を掛けて作品を作ってきました。僕は、「みんな」で作品を作るということを心がけるようにしてきて、やっぱり演出家だけでは作品は作れない。そういうことを教えてくれたのは照明家の岩村原太さんで、「何で君たちは作品を作るの?」とか、「社会に対してどう思ってるの?」とか、「劇団とは何?」とか。そういった事が僕の作品づくりをする上での基盤になっています。今回の公演では、いつも参加してる地道元春がいないんですよ、ここの学生じゃないんで。「春のめざめ」の登場人物は38人くらいなんですけど、僕らの代の卒制メンバーにそんなに人数がいないんですよ。そうなると今の限られている座組で一体何が出来るのか?したいのか?と。もう僕だけの考えでは作れない。だから限られた集団で作品を作るという事が、今回の作品には生かされるんじゃないかなと思っています。
__ 
具体的には、どんな作品作り?
河井 
みんなそれぞれが持っているしたい事とか、理想とかは全然別でもよくて、ただ目的地は一緒にしたいなあと思っています。稽古場ではみんなで話す事に重点を置いて稽古をしています。まず僕自身がどんな考えを持っているかを話すんですよ。社会の話だとか、僕自身の話だとか、僕からみたあなたの話だとか。で、この作品をみんなで今やる・ルサンチカというユニットが春秋座でやる、というのはどういう意味があるんだろう。それぞれ、やり方が違っていてもいいんですよ。でも、目的地が一緒だと、志が一緒になる。
__ 
それぞれ別々でも、ね。
河井 
その方が、劇団もユニットも成立するんじゃないかなあと思うんです。
__ 
今はどうですか。煮詰まってますか。
河井 
煮詰まってますね。昨日、ピキーンって来たんですけど、稽古場でやってみたら面白くなくって。実は「春のめざめ」という戯曲は100年前に書かれた戯曲なんですが、検閲に合ってるんですよ。棒線で台詞が消されている部分が凄くたくさんあって、ここに台詞があっったはずなのに、今はもう分からないんです。4つぐらい翻訳されている版を見たんですけど、何が書かれていたのか全部は分からない。でも、検閲に遭ったというのが大きな社会的な事件だったんだろう、と。これこそが届かない声、ひいては言論の自由というものに引っかかってくるんじゃないかと思うんですね。子供たちが親とか世界に訴え掛けたいもの。それを構成したいと思っているんですが、今のところは上手くいっていなくて。
__ 
すてきにまとまるといいですね。楽しみにしております。
河井 
ありがとうございます。

藤井さんのビッグマウス

__ 
藤井さんは、大学で学んだ事は活かせそうですか?
藤井 
生かせそうです。というよりは、この大学に入ってたくさん感じた事が絶対に作品の大部分になると思うんですけど。学んだ事を生かせるかと言うと、私は物理的に学べてないので・・・
南風 
演出の授業は無いもんね。
藤井 
本来だったら参加したかったダンスの授業発表公演のあるクラスが午前中だったため、私が物理的に起きれなくて参加出来なくて。あともう一つあったんですが、単位の都合でどうしても履修出来なくて。
河井 
それ二つとも自分の問題でしょう(笑う)。
南風 
あはは。
藤井 
そこに参加出来てたら、学べました生かせますって言えるけど。でも、先生と同期に受けた影響で、高校3年生の時とは170度は違う考え方になってるんです。作品づくりは高校からしていましたが、これまででは絶対出来ない作品になると思います。
__ 
見所を教えてください。
藤井 
いやもう、瞬きせずに見てほしいぐらいなんですよ。いいのかな、こんなに大口叩いちゃって。
__ 
あ、全てが見所なんですね。そういえば、造形大からはダンスコースが無くなったんですよね。
河井 
僕らより下の代からはいないんですよ。演技・演出の科目に含まれる形で。
藤井 
だから、私が最後の、学んだものを生かせる最後のチャンスなんですけど・・・
__ 
そこは作品で示して頂きたいですね。
藤井 
ハードル上がるなあ。あんまりいじめないでください。
河井 
そこは自分のせいじゃん。
南風 
あはは。
__ 
どんなテイストの作品ですか?
藤井 
なんだコレ?何なんだおまえたちは、みたいな感じです。稽古場でいつも、ダンサーに聞いてます。何なんだおまえたちはって。公演はクリスマスにやるんですけど、ちょっとまあ・・・みんなのサンタさんになろうかな、と。
河井 
俺を見て言うの辞めてくれる?それは、みんなを幸せにしたいとか?
藤井 
クリスマスにあやかって男女で成就してんじゃねえよって作品です。おいジャパニーズ!みたいな、ロックな作品です。
__ 
パンクですね。
河井 
彼女はバンドをやってるんですよ。
藤井 
ドラムをしているんです。マキシマムザホルモンのコピーバンドだったんです。大学の軽音部に入って、ロックでパンクな作品です。
河井 
メルヘンロックな感じかも。
藤井 
メリケンファックな感じです。
__ 
それを、クリスマスに?
藤井 
イヴもクリスマスもです。殺しにきています。

社会に出る

__ 
大学時代をインプットの機会と捉えた時に、何を得ましたか?そして、卒業後に何をアウトプットしたいですか?
河井 
僕自身はいま社会と関わっているつもりではあるんですが、僕の母はいま病気で家から出られないんですね。精神疾患で、外から話し声が聞こえると発作を起こしてしまう。演劇を見にだけは外に出られるんですけど。社会が原因で母がこういう事になったと思うと、人に優しく生きていこう、難しいけど、と思うようになりました。それが僕の作品の根幹にあって、こぼれ落ちちゃった人たちへの目の向け方にはよく考えます。でも、アウトプットとインプットってテーマ、難しいね。
南風 
こないだ、それ系で後輩と喧嘩したんですよ。その子とは同じWSを受けたんですけど、「学んだ事は何かの形でアウトプット出来ないと絶対にダメだ」と。私は「それは『絶対に』ではない」っていう言い合い。
河井 
でもアウトプットって何してもいいからな。何に生かしてもいいし。藤井さんだったら、服飾?
藤井 
そうですね。それに尽きますね。
南風 
私はなんだろう。でも、「へ~」とは思うようになったんです。
__ 
ああ、人の話を聞けるようにはなったんですね。インプットが出来るようになった。
南風 
昔は「これ好き」「これやだ」に直結したんですが、今はまず「へ~」と思うようになった。ホントかな。どうなんだろう。造形大に来てから、宇宙の本や生物の本に手を伸ばすようになったんですけど、でもイルカと性行為する人の本とか読んで何かアウトプット出来ると思えない・・・
河井 
でもそれはそういう人を許容出来るという事じゃない?僕もそうなるまで、「絶歌」読もうとは思えへんかったわ。
南風 
この間TVで、赤一色で塗られた絵が紹介されて、この絵はいくらでしょう?って。ゲストが「すばらしいですね~高いんじゃないですか?」とか「僕にはこの絵の価値がわかります」って、知ったかぶりして、笑いを取るみたいな。で、正解が発表されて、億がついてる絵で、「やっぱりね」「アハハー」ってそれで終わってたんですよ。どういう理由があって、そんな値段がついているのか、には触れないんです。私はその理由が知りたかったんですけど…。演劇やってなければそんな風に思わなかったんですよきっと。
__ 
前衛芸術の価格。まあもちろん色んな要素があって決まるとは思うんですけど、その時代にそのアーティストが何をどう見つめていたのか、そのもの凄さに価格がつくんだと私は考えています。南風盛さんも結局、その作業に興味があるからそう思われたんじゃないですか?
南風 
そうですね。私、稽古場で俳優とかに言っている半分以上が誰かの言葉なんですよ、誰かの喋っている言葉を7割ぐらい借りてて、自分の演劇を語る時は無口になってしまうと思う。
__ 
無口になっているという事は何かを既に得ているのかもしれませんね。ま、みなさんはあと8年したら30歳になるんですよね。その時、また世界は変わります、きっと。責任というものを持たないといけなくなったり。
南風 
あー。
河井 
俺ははよ年取りたいわ。3、40過ぎになりたい。絶対、その世代の方がなんとなく自分というものが見えてくるじゃないですか。きっと確立されて、したらその確立したものを守ったり戦ったりするんだろうなあ、と。面白いんだろうなあと。今は僕は何も確立されていないから、俺は誰と何をしているんだろうなあ、と思う。さっさと自分を見つけてしまいたい。今のいろんな吸収する時間は早く終わりたい。
南風 
そうなんや。私は50歳くらいになりたい。自分の需要とかが分かってくる、自分にそばに要るものだけが揃ってきそうな気がする。これも授業で先生に聞いたんですけど、需要と供給が成り立たないと芸術は成り立たないそうなんです。需要が無ければ、演劇なんて発表会に過ぎないと。なるほど、と思いました。だから、私たちがそこに理由を見つけないといけない。自分に需要を見つけて、お客さんの需要を探して。今は不安です。
__ 
藤井さんは何歳になりたいですか?
藤井 
一番幼稚な意見なんですけど、私、両親の事が好き過ぎて。私は親が40歳の時の子供で。私が40の時、お母さんは結構高い確率でいないんです、それを考えると毎晩、結構ギャン泣き出来るぐらい。私自身は何歳でも楽しいんですけど、親の事だけを考えると、明日そうなってしまうかもしれないと思うと・・・
__ 
心の柔らかい部分ですし、いますぐ踏ん切りなんて付けられないでしょうね。
南風 
死から十年ぐらい経ったら立ち直るかもしれないけど。
河井 
俺今おかん死んだら作品作れへんと思うわ。リアルに。
藤井 
じゃろ?お母さんに「家を出てくわ、あんたの卒制行けん」て言われる夢を見て、泣きすぎて脱水症状起こしたことがあって。顔から色んな液が出たんです。寝てる時ぐらい休めよ自分、と思いました。

共犯性

__ 
自分たちらしい作品のあり方を教えてください。
河井 
ごちゃごちゃしている。
南風 
記憶に残らなくてもいい。
藤井 
ダンサーが可哀想。
南風 
藤井 
私の作る作品、毎回、私以外の人が可哀想なんですよ。
__ 
ひどい目に合わせるって事ですか?
藤井 
肉体的にも精神的にも。私が出来ない事を押しつけたり。自分にやさしく他人にやさしくが私のモットーなんですけど、作品に関しては他人にだけ厳しいくずなんです。
__ 
では、どんな風に自分の公演を見てもらいたいですか?
河井 
語り合ってほしいというのが大きいです。やっぱり地点の影響が大きいのかもしれませんけど、現在の事を考えるという作品づくりの仕方をずっとしてきたから、お客さんが自分達自身の考え方を聞かせてもらいたいし、それがやっぱり演劇の共犯性だと思うから。共感してもらわなくてもいいんですよ。喋ってもらいたいんです。僕は。
南風 
さっき「記憶に残らなくてもいい」と言ったんですけど、それは役者の顔が記憶に残らなくてもいいという意味で、言葉とかが残っている方が絶対良いと思っていて。匿名性と代替性、「誰でもいい誰か」を持って帰ってほしい。共有しづらい感想を抱いて誰とも喋らずに黙って帰ってほしい。
藤井 
私は別に、どう見てもらっても構わないです。そうですね。こう思って貰いたいとかは作品に入れているので、見方は強要したくない。

質問 あごうさとしさんから 皆さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、アトリエ劇研ディレクターのあごうさとしさんからです。「役者をやっているときは何が楽しいですか?」
河井 
やっぱり、終わった後にお客さんが良かったよ、と言ってくれた時は嬉しいです。
南風 
舞台上でやる事がある時は楽しいです。台詞とか演技がない時は飛び降りたくなる。そういう時間は恥かくしかなくてやだなあ。
藤井 
えー、私は楽しくない。私にそれを聞くのは高校生に盆栽が楽しいか聞くようなもの。
河井 
盆栽が趣味の高校生に失礼だよそれ。

明日朝、わたしたちはどこにいるんだろう

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?生きるうえでの意気込みを教えてください。
河井 
人に優しくなりたい。願望。
__ 
今はそんなに優しくない?
河井 
当たりキツいよな。
藤井 
ね。優しくない。
河井 
何でお前が言うんやお前の方が優しくないだろ。
藤井 
私はお金持ちになりたい。バイト先には金持ちが多くて、こういう生き方をしたいなと。結局、お金があればこういう余裕があるんだなあ、と。自分は一生出来ないだろうなあみたいな事を話されるんですよ。お金があれば、人生の楽しい事は一定以上は保証されるんだろうなあと思うと、絶対金持ちになってやりたいなと思います。
__ 
なるほど。私は植物系なので分からないなその感性は。
河井 
植物系いいですね。日光には強そう。
__ 
ああ、草食系か。
南風 
植物系、それいいですね。セルフで生きていける。
__ 
自分で自分の孤独を癒せるとか?
南風 
ああ、それいいですね。それ使わせてください。
河井 
また人の言葉使った!

梅酒

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
河井 
うわめっちゃ楽しみやってんコレ。俺、ずっとこのインタビュー読んでるから。何が貰えるか楽しみやってん。
南風 
開けてもいいですか。
河井 
あ出た出た。「開けてもいいですか」。俺言ってみたかった。
__ 
ええとですね、今回のプレゼントは特別です。
南風 
毎回やってるけど、今回は特別なんですね。
__ 
割れ物なのでお気をつけください。
南風 
(開ける)
__ 
藤井さん、警戒していますね。
藤井 
タランチュラとか出てきたらどうしようと思って。
河井 
お?ピクルス?
南風 
お?
__ 
梅酒です。
藤井 
えー!
南風 
やった。3人で飲もう。
__ 
なにが特別かと言うと、まずこの梅酒は私が作ったものです。
全員 
おぉ。(拍手)
__ 
それにはエピソードがあって。10年以上前、私が田中遊さんの正直者の会に出演させてもらった時、稽古後にスタッフの先輩の方の家で宴会をする事になって。その時に先輩から飲ませて貰った梅酒がなんと10年ものとかで、めちゃくちゃ美味しかったんですよ。それに感動し、2005年6月に漬けたのがこの梅酒です。
藤井・南風 
河井 
えっ。バリ嬉しいんですけど。
藤井 
まだウチらが小6のガキんちょだった時に漬けられた?めっちゃ正直に言うと扱いに困る。重い(笑う)。
南風 
確かに(笑う)。
河井 
ロッカーで保管せな。
__ 
あと、もうちょっとだけ特別なのは、このプレゼントは今回の卒公に参加する卒業生の方にお贈りしたものです。ですので、お飲みになれるのはその方たちだけです。申し訳ないのですが、たとえ手伝ってもらったからと言って講師の方や後輩の方等には絶対に飲ませないでください。
河井 
じゃあ地道飲まれへんわ・・・
南風 
分かりました。絶対に飲ませないです。
河井 
分かりました。僕らの座組の4回生メンバーだけなんですね。ちょっと匂ってみていいですか?
__ 
すみません、今はダメです。
河井 
公演終わってから?
南風 
どのタイミングがいいですか?
__ 
それはちょっと難しいな。各公演の打ち上げでお願いしても。
河井 
じゃあはえもりさん、ちゃんと残しといてな。
藤井 
酒飲みがおるけえな。伊藤萌があけるでなコレ。
__ 
2リットル弱はあるから、たぶん全員に行き渡るとは思うんですが・・・。
藤井 
どんな飲み方がいいですか?
__ 
まずはストレートがいいと思います。氷も入れない方がいいかな。味については今は敢えて言わないです。ただ、正直私はこんなに沢山手放したくないです。あともうこの瓶の半分くらいしか残ってないので。
河井 
半分しかないんですか。ちょっとこれは、やばいわ。普通に憧れるわこういうの。
南風 
いや、いいなー。
藤井 
ヤバい。私も明日にでも10年後の自分に向けて漬けたいわ。
河井 
俺、卒公終わった次の日が誕生日なんですよ。22歳の初飲み酒はこれにしよう。めっちゃ楽しみやねんけど。
藤井 
10歳!
南風 
嬉しい。楽しみー。


外に出たい本能?

__ 
もし、予算が300億あったらどういう作品を作りたいですか?
大原 
一度、路上パフォーマンスの企画でつぶれたのが、50人ぐらいでブブゼラを吹く、だとか、町全体や星全体で演劇を上演したいみたいな事を考えた事があって。演劇のダイナミズムって時間や場所を越えていける事だと思っているので、実際にもの凄く巨大な規模でやってみたいなと。外でやってみたいですね。
__ 
いつか、どんな作品が作れるようになりたいですか?
大原 
さっきも言った、日本人以外にも通用する、地球人向けの作品を作りたいというのが一つあります。それから、新しい価値基準を作りたいというのもあります。面白い劇作家・演出家の方はたくさんいらっしゃいますけど、その中に自分が、新しい面白さを、すっと提示出来たらという野望はありますね。

迷い

__ 
若者に一言いただけますか。
大原 
そうかあ……僕もだんだん若者じゃなくなっていきますからね……。僕はあんまり、就活とかは考えてなかったんですよ。卒業後は演劇をしようと思っていたので。でも、自分の道は迷いなく行ったらいいんじゃないか、と。迷いがないうちは。とはいえ、僕自身も迷いながらつくってはいるんですけどね。でも、自分より若い方がどんどん出てこられると思うと、お互い作品を作りながら、作品外の世界でもコミュニケーションを取り合うようになれたらと思います。
__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
大原 
まずは本公演を成功させたいと思います。芸術センターでの公演ですし、これまでと大きさが全然違う空間で上演する機会も出てくるので、自分の出来る事を精一杯やるしかないのかな、と。

レターセット

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
大原 
ありがとうございます。(開ける)レターセットですか。かわいい。いいですね。母親とかに手紙書いてみようかな。ありがとうございます。大事にします。


誰かにとどけ

__ 
劇団しようよの作品の主題は「やさしさ」なんじゃないかと思っています。ざくっとした伺い方ですが、そう言われてどう思われますか?
大原 
ああ、そう感じてもらえるのはすごく嬉しいなと思います。1年前、僕は「優しい作品」がいい作品だ、とよく周りにも言っていて。話が明るいかとか、子供向けだとかどうではなく、見ている人が、舞台上に自分に関係するものを見つけられるのが優しい作品だと。自分の人生を使って作品を見る瞬間が、いい演目だな、と。
__ 
自分の人生を使って見る。
大原 
自分の人生が見える瞬間というか。僕は、そういう事が見ているすべての人に起こるのが優しい演劇なんじゃないかと思っていて。人の気持ちを分かろうとして、触れ続けるのはすごくエネルギーのいる事だけれど、しんどい事だけど、それが優しさなんじゃないかと思うんですよね。

言葉の通じない君

__ 
しようよのオリジナリティは、そういう部分にあるんですね。
大原 
ああ、どうなんでしょう。昔は、山崎彬さんの影響を受け過ぎている、悪い芝居フォロワー、とか言われている時期があったんですけど。
__ 
ありましたね。
大原 
でもいつからかあまり自分でも考えなくなって、オリジナリティって何やろうと考えてたんですけど。今はもう変な事せんと、徹底的にシンプルにやろうと思うようになりました。そこで最後に残った部分、それがオリジナリティやと思えるようになったんです。他とどう違うかとかではなく、今やっている事がお客さんにとってどう作用するか、で作品を作っていると思います。
__ 
では、どんな観客に出会いたいですか?
大原 
うーん……日本語の通じない人ですね。やっぱり海外に行きたいとも思っているんですが、でも今はまだ、今の自分にはきっと無理。たとえば自分には演出論がまだないので、日本語の通じるお客さんにしか通じないんですね。で、もっと本音を言うと、海外に行くのが直行の目的というよりは、5年10年を掛けて確実なものを作って、そしていつか日本語の通じない人にも関係できる作品を作りたいです。
__ 
言葉が通じない人々にも、ですね。
大原 
例えば『パフ』という作品は、災害についての作品なんですけど、日本人が見るのとブラジル人が見るのとでは違うと思ってつくりました。今の日本人に見てほしい作品を作っているので。だから、いつか日本人を含めた、地球人に見ても耐えうる作品を、じっくりと頑張って作りたいと思います。

挑める劇場

__ 
全国の話が出たので・・・「gateディレクターとしての事も伺えればと思います。「gateは今や、全国各地から京都という地域への受け入れの機会となっていますね。
大原 
そうですね。そういったことは意識しています。KAIKAというのは不思議な空間で。劇研のようにブラックボックスという訳ではないですから、むしろ、この空間に挑みがいを感じる方に来ていただきたいなという気持ちがありますね。
__ 
そうですね。
大原 
作品をつくって、それをKAIKAの空間に流し込んでみたら、不思議なことにいろんなことがずれてくると思うんです。そりゃそうですよね、稽古場とKAIKAはまた違うから。でも、そこでやりたいことをおいかけていくうちに、作品がいい意味で変わったり、また、それでも変わらなかった部分が作品の核やなと思います。それがKAIKAという場所で上演する意味だと思うんですよね。KAIKAを遊ぶというか。

質問 稲田 真理さんから 大原 渉平さんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、伏兵コードの稲田真理さんからです。「自分にとって逃れられないもの・目を背けたいものを作品に滲ませたいと思いますか?」
大原 
そうですね、そういうことってすでに作品に入ってしまってるんじゃないかと思います。
__ 
「茶摘み」もそうでしたね。
大原 
最近、作品を作る上でのもう一つのテーマで「避けられなかった、どうしても抗えなかったこと」というのがあるんです。そういうものに対してどう立ち向かうか・関係するか、という事を作品の中で結構考えていて。たとえば、明日母親が亡くなるかもしれない、友人がどこかにいってしまうかもしれない。そういう避けられないこと、運命と言ってもいいかもしれないんですけど、それが最近の作品の主題のひとつになっているかもしれません。そういうものを潜ませながら存分に作品を作りたいと思うのはありますね。
劇団しようよvol.2「茶摘み」
公演時期:2011/9/2~2011/9/4。会場:アトリエ劇研。

誰かのために

__ 
劇団しようよは東京でも公演をされていて、存在感を増しつつありますね。
大原 
ありがとうございます。でも、きちんと京都をアトリエとして活動していきたいと思っていて。最近はKAIKAさんに応援してもらったり、京都芸術センターさんで稽古や公演をさせてもらったりしていますが、もともとすごくいい創作環境だと思うんです。それに甘える事なく、ちゃんと実のあるものを作って、東京はもちろん九州にも北海道にも、愛知にも三重にも、その他いろんな地域に行きたいと思っています。
__ 
『こんな気持ちになるなんて』は「第6回せんがわ演劇コンクール」でオーディエンス賞を受賞しましたね。
大原 
そうですね、ありがたい事に。案外、演劇を見慣れていないお客さんにも楽しんでもらえる演目だったみたいで。「せんがわ演劇コンクール」は地元の方が多かったみたいで、老若男女の方に面白かったよと言ってもらえたんです。そういう作品を作るのは自分の目標の一つだったので、いい経験になったなと思います。

優しい演劇を見たいのです

__ 
他人の気持ちが分からない。それは、テレパシーが実現しても変わらないでしょうね。
大原 
他人の事を理解するには、その人に触れ続けたり、対峙し続けなきゃいけないと思うんですよ。理解出来たとしても、次の瞬間その人は変容していくと思うんです。といっても触れ続けたり対峙し続けるのはとても疲れる事で、僕たちは往々にしてそれを止めてしまう。カッコつけるんじゃなくて、人と人とは向き合わなければいけないんじゃないかという事を考えていきたいですね。
__ 
そういうものを作ろうと思ったのは、世の中の・・・?
大原 
世の中の、分かる事分からない事の中で、自分は演劇をしているから、こういうことを考えていったのかもしれないです。やっぱり今までの路上パフォーマンスとか、自分勝手な表現があって、でも今はそうありたくない。今、作品の中でそれができているかわからないですけど、観客とコミュニケーションをとるということに非常に関心が高いです。実際にお客さんをいじるという事じゃないですけどね。なんか、お客さんはいま何を観て、何を想像しているのか、僕たちの演目がお客さんに触れていて、お客さんは僕たちの演目に触れられているか。そういう瞬間があればいいなと思っています。お客さんには、ふと、「これは、全然関係ない話だけれども、自分の物語なんじゃないか」と思えるというか。だから、間口の広い作品をつくりたいと思いますし、誰にとっても関係の出来る作品というのが、最近僕が考える「いい演劇」なんじゃないかなと思っています。

ほどけない事が多すぎて

__ 
『ドナドナによろしく』は感情移入演劇だそうですが、そもそも「感情移入」とはどういう事なんでしょう。どう思われますか。
大原 
…ね。どういうことなんでしょう……。(笑)「感情移入」は、僕も良く分からないんですよ。よくドラマを見ている人が「感情移入出来たわ」とか言いますけど、僕にはそれが結構分からなくて。それはその人を否定している訳じゃないんですけどね。もともと僕は国語が苦手で、30点以上取れなかったんですよ。作者の意図とか、登場人物の気持ちを分からない(笑)。今から思い返したら、その裏返しで路上パフォーマンスとかやっていたのかもしれません。相手の感情を、さも自分が体験したかのように感じるって、どういう事なんだろう。相手の事を分かりきるみたいなイタコ的な事が出来ないという前提で、僕らはどう生きていくのか、という事ですかね。
__ 
難しいですよね、人の気持ち。
大原 
人のことを分かった、と思ったとしても、それはもう過去の事だと思うんですよ。先月の「gateで上演した作品『ここに居たくなさ過ぎて』も、いなくなった人物について話す二人芝居でしたが、ふたりとも自分にとって大切な人の話をしているはずが、じつは固執しているだけで、その人自身について本当は話せていないんじゃないか、みたいな。
__ 
感情移入そのものを考えたい?
大原 
それはキッカケなのかな、と思っています。相手の事を分かった気になる、というのは、全ての問題に繋がっていく可能性があるのかな、と。人が集まって議論していて、でも、本当にみんなそこに参加出来ているんだろうか?とか。物事の本質と、自分の理想みたいなものに区別がついているのか、とか。そこに想像力を働かせたとしても、その奥まで及んでいるんだろうか?だから、「他人の気持ちを考える」という事が、今の僕たちがやらなければいけないと思っています。本当に、陳腐なアーティストの使命感なんですけど。
__ 
いえいえ。
大原 
それが、想像力を使って見る演劇というジャンルでやらないといけない事なんじゃないかと思うんですよね。

誰か

大原 
よく言われている事ではありますけど、演劇って、目の前にある事だけじゃなくて、イメージを膨らませて楽しむものだと思います。だから余計に、作品を通して、見てくれている人の人生だとか歩まれてきた道だとかを思い起こして下さったら嬉しいな、と。こういう事は2年前から思っていました。ストーリーとは関係ないレイヤーをあえて用意する事で、そういう事が出来ないか、と。
__ 
物語と、例えばフリップが喚起させる思い出が交差する瞬間をお客さんが体験するような?
大原 
劇団しようよの作品って、ここにあること・ないこと、を意識させる作品だったなあと思っていて。大なり小なり、誰でもそういう経験を迎えるものなので、そこに触れられる作品にしたいと思っていました。次の『ドナドナによろしく』は、他人の気持ちを考えられる作品にしたいなと思っています。だから、さっき「道徳」と言われてドキッとしたんですけど。
__ 
ええ。
大原 
他人の気持ちって、突き詰めれば分からないものだし、分からないのなら我々はどうすればいいのか、というのを考えたいなと思っています。「他人の気持ち」を理解する、ってよく言いますけど、僕にはそれがすごく、よく分からない。